(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体の水性成分と、20℃において液体である油剤を含有し且つHLB7以上の非イオン性界面活性剤を10質量%以下含有した液体の油性成分と、を合流させる合流ステップと、
前記合流ステップで前記水性成分と前記油性成分とを合流させた後の流体を、孔径が0.1〜1.5mmの細孔に流通させる細孔流通ステップと、
を含み、
前記合流ステップにおいて、流路径が2〜20mmの流路から流出した前記水性成分に、その全周から前記油性成分を合流させる、前記水性成分中に乳化液滴の平均粒子径が前記細孔の孔径の1/100以下である前記油性成分が分散した乳化物の製造方法。
前記細孔流通ステップにおいて、前記合流ステップで前記水性成分と前記油性成分とを合流させた後の流体を、前記細孔に流通させて、最大流路径が前記細孔の孔径の3〜50倍である流路拡大部に流出させる、請求項1又は2に記載の乳化物の製造方法。
前記合流ステップにおいて、合流させる前の前記水性成分の前記油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)を1/1〜200/1とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係る乳化物の製造方法は、液体の水性成分と、20℃において液体である油剤を含有し且つHLB7以上の非イオン性界面活性剤を10質量%以下含有した液体の油性成分とを合流させる合流ステップと、合流ステップで合流させる前の水性成分、合流ステップで合流させる前の油性成分、及び合流ステップで水性成分と油性成分とを合流させた後の流体のうち1つ又は2つ以上を、孔径が0.1〜3mmの細孔に流通させる細孔流通ステップを含む。そして、本実施形態に係る乳化物の製造方法では、水性成分に平均粒子径が細孔の孔径の1/100以下である油性成分の液滴が分散した乳化物を製造する。
【0015】
一般に、皮膚等に塗布する化粧料等の分野では、少量の界面活性剤で油剤を乳化することが望まれている。これに対し、本実施形態に係る乳化物の製造方法によれば、少量の界面活性剤を用いて、平均粒子径が小さい油性成分の液滴が分散した乳化物を製造することができる。
【0016】
これは、本実施形態に係る乳化物の製造方法では、合流ステップで合流させる前の水性成分、合流ステップで合流させる前の油性成分、及び合流ステップで水性成分と油性成分とを合流させた後の流体のうち1つ又は2つ以上を、孔径が0.1〜3mmの細孔に流通させるため、特定の非イオン界面活性剤を含有する油性成分と水性成分との合流時又は合流後の乱流による攪拌効果により、乳化に用いられる特定の非イオン界面活性剤が乳化される油性成分から油水界面に効率的に供給されるためであると考えられる。即ち、本実施形態に係る乳化物の製造方法では、非イオン界面活性剤が、乳化に寄与することなく、油性成分から水性成分中に拡散することを効率的に抑制することができる。
【0018】
本実施形態に係る乳化物の製造方法は、合流ステップと細孔流通ステップとを含む。
【0019】
合流ステップでは、液体の水性成分と液体の油性成分とを合流させる。
【0020】
水性成分は、典型的には水であるが、その他に、例えば、水に塩等の溶質を溶解した水溶液、水と水溶性有機溶媒との混合液であってもよい。水性成分における水の含有量は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上であり、実質100質量%であってもよい。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3のアルコールなどが挙げられる。
【0021】
水性成分は界面活性剤を含有していてもよい。その界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。水性成分における界面活性剤の含有量は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、実質0質量%であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。
【0022】
油性成分は、少量の界面活性剤で乳化する観点から、20℃において液体である油剤(以下「液体油」ともいう。)を含有する。
【0023】
液体油としては、例えば、液体の炭化水素油、液体のエステル油、液体のジアルキルエーテル、液体の油脂、液体の高級アルコール又は高級脂肪酸、液体のシリコーン類、液体の機能性油剤(例えばセラミド、有機紫外線吸収剤、スフィンゴ脂質)、及び液体の香料等が挙げられる。液体油は、これらの群から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。液体油は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、エステル基、水酸基、エーテル基、及びカルボニル基からなる群から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有する油剤を含むことが好ましい。
【0024】
液体の炭化水素油としては、パラフィン、スクアレン、スクワラン等が挙げられる。
【0025】
液体のエステル油としては、液体のエチレングリコールジ脂肪酸エステル(脂肪酸の好ましい炭素数は8〜22)、脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸トリグリセライド等の液体の脂肪酸グリセライド(脂肪酸の好ましい炭素数は8〜22)等が挙げられる。
【0026】
液体のジアルキルエーテルとしては、好ましい炭素数は8〜22の飽和もしくは不飽和の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するエーテルが挙げられる。
【0027】
液体の油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、パーム核油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油等の植物油等が挙げられる。
【0028】
液体の高級アルコール又は高級脂肪酸としては、飽和もしくは不飽和の直鎖又は分岐鎖の液体のアルコール(好ましい炭素数8〜22);オレイン酸、カプリル酸等の飽和もしくは不飽和の直鎖又は分岐鎖の液体の脂肪酸(脂肪酸の好ましい炭素数は8〜22)が挙げられる。
【0029】
液体のシリコーン類としては、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。また、液体の機能性油剤としては、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルなどの有機紫外線吸収剤;1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノールなどの液体のスフィンゴ脂質が挙げられる。液体の香料としては、従来から使用されている一般的なものが挙げられる。
【0030】
液体油として、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらのうち、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、液体のエステル油、液体の高級アルコールを用いることがより好ましく、液体の脂肪酸グリセライドがより好ましい。なお、液体油は、HLB7未満、好ましくはHLB5以下の非イオン性界面活性剤であってもよい。HLBは後述する方法で求めることができる。
【0031】
液体油は、揮発性及び不揮発性のいずれであってもよい。
【0032】
液体油の粘度は、送液を良好に行う観点から、油性成分と水性成分とを合流させる際の油性成分の温度において、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、また、液滴を小粒径化する観点から、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、更に好ましくは300mPa・s以下である。ここで、液体油の粘度は、ブルックフィールド型(B型)回転粘度計を用い、ローターNo.3を標準使用し(粘度が測定できない場合は、ローターをNo.1、2、又は4に変更する。)、回転数30r/min及び測定時間1分間の条件により測定される。
【0033】
液体油の分子量は、送液を良好に行う観点から、好ましくは40以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは150以上であり、また、乳化液滴を小粒径化する観点から、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下である。
【0034】
液体油の融点は、油性成分と水性成分とを良好に合流させる観点から、好ましくは15℃以下であり、更に好ましくは10℃以下であり、より更に好ましくは5℃以下であり、より更に好ましくは0℃以下である。なお、液体油の融点は、示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定することができる。
【0035】
液体油の20℃の水100gへの溶解量は、分散を良好に行う観点から、油性成分と水性成分とを合流させる際の油性成分の温度において、好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは3g以下、特に好ましくは1g以下である。
【0036】
油性成分における液体油の含有量は、液体油の乳化物を得る観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは92質量%以上であり、また、油性成分に非イオン界面活性剤を含有させて微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.5質量%以下、より更に好ましくは99質量%以下、特に好ましくは98質量%以下である。
【0037】
油性成分は、HLB7以上の非イオン性界面活性剤を10質量%以下含有し、各成分が均一に溶解していることが好ましい。なお、油性成分に非イオン性界面活性剤が溶解していることは目視により確認することができる。
【0038】
HLB7以上の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物;ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の高級アルコールのオキシアルキレン付加物;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド等のアルキル(ポリ)グルコシド;脂肪酸モノアルキロールアミド等が挙げられる。HLB7以上の非イオン性界面活性剤として、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0039】
これらのうち、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物、高級アルコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グルコシド及びポリグリセリンの脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物がより好ましく、ポリオキシエチレン基を有する硬化ヒマシ油がより好ましい。
【0040】
多価アルコールは、炭素数3〜6のものが好ましく、例えば、グリセリン、ソルビトール、グルコース等が挙げられる。脂肪酸の炭素数は、好ましくは8〜22、より好ましくは8〜18である。高級アルコールの炭素数は、好ましくは8〜22、より好ましくは8〜18である。
【0041】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の高級アルコールのオキシアルキレン付加物としては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【0042】
R
1−O−(R
2O)
p−H (I)
(式中、R
1は炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R
2はエチレン基を示す。pは1〜12、好ましくは1〜6の数で、平均付加モル数を意味する。)
脂肪酸モノアルキロールアミドとしては、例えば、下記(II)で表されるものが挙げられる。
【0043】
R
3CO−NH−R
4OH (II)
(式中、R
3は炭素数7〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R
4はエチレン基を示す。)
HLB7以上の非イオン性界面活性剤として、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0044】
非イオン性界面活性剤のHLBは、7以上であるが、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、更により好ましくは12以上であり、また、油性成分を乳化する観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下である。
【0045】
油性成分におけるHLB7以上の非イオン性界面活性剤の含有量は、10質量%以下であるが、少量の界面活性剤で乳化物を得る観点から、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、また、油性成分を微細に乳化する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましく1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上である。
【0046】
油性成分は、液体油及びHLB7以上の非イオン性界面活性剤以外に、合流時に液体状態を保ち、また、後述のような微細な液滴の乳化物の製造を阻害しない範囲で、固体脂等を液体油に溶解させることで含有することができる。
【0047】
尚、HLBは、「乳化・可溶化の技術」工学図書(株)(昭59−5−20)p.8−12に記載の計算式に基づいて求められる。より具体的には、多価アルコール脂肪酸エステルの場合、式:〔HLB〕=20(1−S/A)(式中、Sはエステルのケン化価、Aは脂肪酸の酸価を示す)に基づいて求められる。
【0048】
多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物の場合、式:〔HLB〕=(E+P)/5(式中、Eはオキシエチレン含量(質量%)、Pは多価アルコール含量(質量%)を示す)に基づいて求められる。
【0049】
高級アルコールのオキシエチレン付加物の場合、式:〔HLB〕=E/5(式中、Eは前記と同じ)に基づいて求められる。ここで、酸価、ケン化価は、JISK0070−1992により求めることができる。
【0050】
これら以外の非イオン性界面活性剤の場合、式:〔HLB〕=7+11.71log(Mw/Mo)(式中、Mwは界面活性剤の親水性基の分子量、Moは界面活性剤の疎水性基の分子量、logは底が10の対数を示す)に基づいて求められる。
【0051】
非イオン性界面活性剤として、HLB7以上の界面活性剤AとHLB7以上の界面活性剤Bの2種類を併用する場合、それぞれのHLBをHLB
A及びHLB
Bとすると、両者を混合した非イオン性界面活性剤のHLBは、それぞれの質量分率(%)をW
A、W
Bとすると、式:〔HLB〕=[(W
A×HLB
A)+(W
B×HLB
B)]÷(W
A+W
B)に基づいて求められる。また、非イオン性界面活性剤として3種類以上の界面活性剤を併用する場合、前記と同様にしてそれらを混合した非イオン性界面活性剤のHLBを求めることができる。
【0052】
少量の界面活性剤で油性成分を微細に乳化する観点から、油性成分は水性成分に対して自己乳化性を有することが好ましい。ここで、自己乳化性の有無は、次のようにして判断することができる。まず、水性成分90mlと油性成分10mlとをそれぞれ計量する。次いで、注射針(外径:1.58mm、内径:0.25mm)を用いて油性成分を10ml/minの速度で水性成分中に投入する。なお、このとき、注射針の先端を水性成分に浸した状態とし、また、攪拌を行わない。油性成分の全量を投入した後、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、堀場製作所社製 装置名:LA−910)を用い、レーザー散乱/回折法により水性成分中の油性成分の体積基準の平均分散粒径を測定する。そして、測定した平均分散粒径が注射針の内径0.25mmより小さい場合には「自己乳化性が有る」と判断し、一方、大きい場合には「自己乳化性が無い」と判断する。
【0053】
油性成分及び水性成分の粘度は、いずれも、送液を良好に行う観点から、油性成分と水性成分とを合流させる際の各成分の温度において、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、また、乳化液滴を小粒径化する観点から、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、更に好ましくは300mPa・s以下である。油性成分の粘度と水性成分の粘度とは、同じであっても異なっていてもどちらでもよい。油性成分及び水性成分の粘度の測定方法は、上記の液体油の粘度の測定方法と同一である。
【0054】
合流ステップにおいて、合流させる前の水性成分の流量は、乱流による効果を高めて、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは0.1L/h以上、より好ましくは1L/h以上であり、また、合流後の混合性を高めて、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは300L/h以下、より好ましくは200L/h以下であり、更に好ましくは100L/h以下、より更に好ましくは30L/h以下である。合流させる前の油性成分の流量は、乱流による効果を高めて、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは0.01L/h以上、より好ましくは0.1L/h以上であり、また、合流後の混合性を高めて、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは150L/h以下、より好ましくは100L/h以下であり、更に好ましくは50L/h以下、より更に好ましくは2L/h以下である。合流させる前の水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は、少量の界面活性剤で乳化する観点から、好ましくは1/1以上、より好ましくは2/1以上であり、更に好ましくは5/1以上であり、また、乳化物中の油性成分量を高める観点から、好ましくは200/1以下、より好ましくは100/1以下、更に好ましくは50/1以下である。水性成分と油性成分との混合質量比は、少量の界面活性剤でO/W型の乳化物を得る観点から、好ましくは1/1以上、より好ましくは2/1以上であり、更に好ましくは5/1以上であり、また、乳化物中の油性成分量を高める観点から、好ましくは200/1以下、より好ましくは100/1以下、更に好ましくは50/1以下である。
【0055】
合流ステップにおいて、合流させる前の水性成分の温度は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは50℃以下である。合流させる前の油性成分の温度は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは50℃以下である。合流させる前の水性成分の温度と油性成分の温度とは同一であってもよく、任意に設定可能である。
【0056】
合流ステップにおいて、水性成分と油性成分との合流の態様は特に限定されるものではない。
【0057】
水性成分と油性成分との合流させる際の衝突の態様(角度)としては、例えば、両方を正面衝突させて合流させる態様、一方を他方に直交する方向から衝突させて合流させる態様、一方を他方に斜め後方から衝突させて合流させる態様、一方を他方に斜め前方から衝突させて合流させる態様、一方を他方に沿うように接触させて合流させる態様が挙げられる。
【0058】
また、水性成分と油性成分との合流させる際の合流方式の態様(数等)としては、例えば、両方をそれぞれ複数の方向から衝突させて合流させる態様、一方を他方に複数の方向から衝突させて合流させる態様、一方を他方の全周から衝突させて合流させる態様が挙げられる。両方をそれぞれ複数の方向から衝突させて合流させる態様では、それぞれ好ましくは2方向以上の方向から衝突させることが好ましく、また、上限は特にないが生産性の観点からそれぞれ4方向以下の方向から衝突させることが好ましい。一方を他方に複数の方向から衝突させて合流させる態様では、一方を好ましくは2方向以上の方向から他方に衝突させることが好ましく、また、上限は特にないが生産性の観点から一方を4方向以下の方向から他方に衝突させることが好ましい。
【0059】
これらのうち、合流させる際の衝突の態様としては、水性成分に対し、直交する方向又は斜め後方から油性成分を衝突させる態様が好ましく、合流方式の態様としては、水性成分の全周から油性成分を衝突させて合流させる態様が好ましい。
【0060】
細孔流通ステップでは、合流ステップで合流させる前の水性成分、合流ステップで合流させる前の油性成分、及び合流ステップで水性成分と油性成分とを合流させた後の流体のうち1つ又は2つ以上を細孔に流通させる。ここで、「合流させる前」とは合流直前を意味する。
【0061】
従って、合流前の水性成分と合流前の油性成分とのいずれをも細孔に流通させず、合流後の流体のみを細孔に流通させる第1の態様であってもよい。合流前の油性成分を細孔に流通させず、合流前の水性成分と合流後の流体とをそれぞれ細孔に流通させる第2の態様であってもよい。合流前の水性成分を細孔に流通させず、合流前の油性成分と合流後の流体とをそれぞれ細孔に流通させる第3の態様であってもよい。
【0062】
また、合流前の水性成分と合流前の油性成分とをそれぞれ細孔に流通させ、合流後の流体を細孔に流通させない第4の態様であってもよい。合流前の水性成分のみを細孔に流通させ、合流前の油性成分と合流後の流体とのいずれをも細孔に流通させない第5の態様であってもよい。合流前の油性成分のみを細孔に流通させ、合流前の水性成分と合流後の流体とのいずれをも細孔に流通させない第6の態様であってもよい。
【0063】
更に、合流前の水性成分と合流前の油性成分と合流後の流体とをそれぞれ細孔に流通させる第7の態様であってもよい。
【0064】
これらのうち、合流ステップで水性成分と油性成分とを合流させた後の流体を、細孔に流通させる工程を有する第1〜3及び7の態様が好ましい。
【0065】
細孔の横断面形状は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、円形であることが好ましいが、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等の非円形であってもよい。細孔の横断面形状は、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。
【0066】
細孔の延びる方向は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、水性成分の流動方向及び/又は油性成分の流動方向と同一であることが好ましい。
【0067】
細孔の孔径は、高い生産性を得る観点から、0.1mm以上であるが、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上である。乱流の発生により微細な液滴の乳化物を得る観点から、細孔の孔径は3mm以下であるが、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下である。ここで、細孔の孔径は、細孔の横断面形状が円形の場合には直径であるが、細孔の横断面形状が非円形の場合には等価水力直径(4×流路面積/断面長)である。
【0068】
細孔の長さは、圧力損失を高めて油性成分と水性成分との混合性を高める観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.3mm以上であり、また、油性成分と水性成分とを合流後に瞬時に混合し、微細な液滴の乳化物を製造する観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。
【0069】
細孔の流路面積は、過大な圧力損失が生じて機器に障害をもたらすことを防ぐ観点から好ましくは0.01mm
2以上、より好ましくは0.03mm
2以上であり、また、圧力損失を高めて油性成分と水性成分との混合性を高める観点から、好ましくは7mm
2以下、より好ましくは2mm
2以下である。
【0070】
細孔の長さの孔径に対する比(長さ/孔径)は、乱流の発生により微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1以上であり、また、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下である。
【0071】
細孔流通ステップにおいて、合流ステップで水性成分と油性成分とを合流させた後の流体を細孔に流通させる方法としては、水性成分と油性成分とを液溜め部で一旦合流させ、それらが混在状態となった流体を細孔に流通させてもよいが、少量の界面活性剤で乳化する観点から、水性成分と油性成分との合流部を細孔の直前に設けるか、又は細孔内で合流させることが好ましい。
【0072】
細孔流通ステップにおいて、合流ステップで水性成分と油性成分とを合流させた後の流体を細孔に流通させる際の流量は、圧力損失を高めて微細な液滴の乳化物を製造する観点から、好ましくは0.1L/h以上、より好ましくは1.0L/h以上であり、また、過大な圧力損失が生じて機器に障害をもたらすことを防ぐ観点から、好ましくは300L/h以下、より好ましくは250L/h以下、更に好ましくは100L/h以下、より更に好ましくは50L/h以下、より更に好ましくは20L/h以下、より更に好ましくは10L/h以下である。
【0073】
細孔流通ステップにおいて、水性成分と油性成分とを乱流条件で細孔に流通させることが好ましい。このときのレイノルズ数は、細孔流通後の油相成分と水相成分との撹拌効率を高める観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上であり、また、同様の観点から、好ましくは150000以下、より好ましくは100000以下である。ここで、レイノルズ数は、細孔内の平均流速u(m/s)、細孔径d(m)、流体の粘度μ(Pa・s)、及び流体の密度ρ(kg/m
3)の値を用いた一般的な配管流れのレイノルズ数算出式(レイノルズ数Re=duρ/μ)により求めることができる。
【0074】
細孔流通ステップにおいて、合流ステップで水性成分と油性成分とを合流させた後の流体を、細孔に流通させて流路拡大部に流出させることが好ましい。これにより両成分による乱流が発生することで液滴を微小化することができる。
【0075】
特に、水性成分と油性成分とを合流させた後の流体を、孔径が0.1〜3mmの細孔に流通させる場合、細孔流通後に流路拡大領域で、両成分を乱流により撹拌させることにより、油性成分から油水界面に非イオン界面活性剤がより効率的に供給される。その結果、より少ない非イオン界面活性剤量で、微細な液滴の乳化物を得ることができる。
【0076】
流路拡大部の流路の横断面形状は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、円形であることが好ましいが、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等の非円形であってもよい。流路拡大部の横断面形状は、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましいが、長さ方向に沿って異なる形状が含まれていてもよい。
【0077】
流路拡大部は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、細孔から最大流路径を有する部分までコーン形状に拡大するように形成されていることが好ましい。このコーン拡大角は、好ましくは90°以上、より好ましくは100°以上であり、また、好ましくは180°以下、より好ましくは170°以下、更により好ましくは150°以下である。
【0078】
流路拡大部の最大流路径は、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、細孔の孔径の好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上であり、また、好ましくは50倍以下、より好ましくは40倍以下、更により好ましくは20倍以下である。ここで、流路拡大部の最大流路径は、流路の横断面形状が円形の場合には直径であるが、流路の横断面形状が非円形の場合には等価水力直径である。
【0079】
そして、本実施形態の方法によって製造される乳化物は、水性成分に平均粒子径が細孔の孔径の1/100以下である油性成分の液滴が分散するものである。ここで、上記第1の態様の場合、油性成分の液滴の平均粒子径は、水性成分と油性成分との合流後の流体が流通する細孔の孔径の1/100以下である。上記第2の態様の場合、油性成分の液滴の平均粒子径は、水性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下であり、且つ水性成分と油性成分との合流後の流体が流通する細孔の孔径の1/100以下でもある。上記第3の態様の場合、油性成分の液滴の平均粒子径は、油性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下であり、且つ水性成分と油性成分との合流後の流体が流通する細孔の孔径の1/100以下でもある。
【0080】
上記第4の態様の場合、油性成分の液滴の平均粒子径は、水性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下であり、且つ油性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下でもある。上記第5の態様の場合、油性成分の液滴の平均粒子径は、水性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下である。上記第6の態様の場合、油性成分の液滴の平均粒子径は、油性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下である。
【0081】
上記第7の態様の場合、油性成分の液滴の平均粒子径は、水性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下であり、且つ油性成分が流通する細孔の孔径の1/100以下でもあり、且つ水性成分と油性成分との合流後の流体が流通する細孔の孔径の1/100以下でもある。
【0082】
上記第1〜第7の態様のいずれの場合でも、上記の通り、製造される乳化物中の油性成分の液滴の平均粒子径は、微細な液滴の乳化物を得る観点から、細孔の孔径の1/100以下であるが、好ましくは1/200以下、より好ましくは1/300以下であり、下限は、生産性の観点から、好ましくは1/10000以上、より好ましくは1/3000以上、更に好ましくは1/1000以上である。
【0083】
具体的には、製造される乳化物中の油性成分の液滴の平均粒子径は、微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下であり、下限については、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。ここで、乳化物中の油性成分の液滴の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、堀場製作所社製 装置名:LA−910)を用い、レーザー散乱/回折法により測定される油性成分のメジアン径である。
【0084】
製造される乳化物中の液体油の含有量は、乳化物中に液体油を含有させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、また、少ない界面活性剤で乳化すると共に油性成分の液滴の平均粒子径を小さくする観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。
【0085】
製造される乳化物中の非イオン界面活性剤の含有量は、油性成分の液滴の平均粒子径を小さくする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、少ない界面活性剤で乳化する観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以下である。
製造される乳化物中の全界面活性剤の含有量は、油性成分の液滴の平均粒子径を小さくする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0086】
製造される乳化物における液体油の含有量に対する非イオン界面活性剤の含有量の質量比(非イオン界面活性剤/液体油)は、油性成分の液滴の平均粒子径を小さくする観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上であり、また、少量の界面活性剤で微細な液滴の乳化物を得る観点から、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.06以下である。
【0087】
製造される乳化物中の水の含有量は、乳化物中に液体油を含有させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、また、乳化物中に液体油を含有させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下である。
【0088】
本実施形態に係る乳化物の製造方法における水性成分と油性成分との乳化操作は、後述する方法で求められるセグリゲーション指数(Segregation index(Xs))が、油性成分の液滴の平均粒子径を小さくする観点から、0.1以下となる条件で行うことが好ましく、0.08以下となる条件で行うことがより好ましく、0.06以下となる条件で行うことがより好ましく、0.04以下となる条件で行うことがより好ましく、0.02以下となる条件で行うことがより好ましく、0.01以下となる条件で行うことがより好ましく、0.008以下となる条件で行うことがより好ましく、0.005以下となる条件で行うことがより好ましく、0.004以下となる条件で行うことがより好ましい。下限については特にないが、0.0001以上であれば充分であり、0.001以上であってもよい。ここで、セグリゲーション指数(Xs)は、本実施形態に係る乳化物の製造方法おける油性成分と水性成分との混合攪拌効果を示すものであり、値が小さいほど混合性が高いことを示す。学術的に混合器の混合性能評価に汎用的に用いられる指標であり、Villermaux/Dushman reactionを用いて下記式から導出することができる。なお、本反応系の詳細については、P. Guichardon and L. Falk, Chemical Engineering Science 55 (2000) 4233-4243に記載されている。
【0089】
具体的には、まず、混合により反応する2つの水溶液として、0.171N硫酸とほう酸緩衝液とをそれぞれ準備する。ほう酸緩衝液の組成は、ほう酸0.045mol/L、水酸化ナトリウム0.045mol/L、よう素酸カリウム0.00313mol/L、及びよう化カリウム0.0156mol/Lとする。そして、この2液を混合すると、下記の中和反応(I)と、よう素が生成する酸化還元反応(II)とが同時に進行する。なお、2液の混合は、混合後の状態でアルカリが過剰となる条件で実施する。
【0092】
以上の本実施形態に係る乳化物の製造方法によれば、液体の水性成分と、20℃において液体である油脂を含有し且つHLB7以上の非イオン性界面活性剤を10質量%以下含有した液体の油性成分とを合流させ、その合流前の水性成分、合流前の油性成分、及び合流後の流体のうち1つ又は2つ以上を所定の細孔に流通させることにより、少量の界面活性剤を用いて、水性成分に平均粒子径が小さい油性成分の液滴が分散した乳化物を製造することができる。
【0093】
図1は、本実施形態に係る乳化物の製造方法に用いることができる乳化物製造システムAの一例を示す。
【0094】
この乳化物製造システムAは、第1の構成のマイクロミキサー100と流体供給系等の付帯部とで構成されている。
【0095】
図2及び3は、第1の構成のマイクロミキサー100を示す。この第1の構成のマイクロミキサー100では、上記第1の態様、つまり、合流前の水性成分と合流前の油性成分とのいずれをも細孔に流通させず、合流後の流体のみを細孔に流通させる態様により乳化物を製造する。
【0096】
第1の構成のマイクロミキサー100は、流体流路部110と、その下流側に連続して設けられた流体合流縮流部120と、更にその下流側に連続して設けられた流体流出部130とを備える。
【0097】
流体流路部110は、小径管111と大径管112とを有する。大径管112は小径管111を収容しており、それらは長さ方向を共通にし且つ同軸に配置されている。これにより、流体流路部110には、小径管111内部に第1流路111aが構成され、また、大径管112内部で且つ小径管111外部に第2流路112aが構成されている。なお、小径管111内の第1流路111aは装置一端に設けられた水性成分供給部101に連通しており、また、大径管112内の第2流路112aは装置側面に設けられた油性成分供給部102に連通している。
【0098】
小径管111の外形及び孔の横断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。大径管112の孔の横断面形状も、特に限定されるものではなく、小径管111と同様、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。但し、小径管111の外形及び孔並びに大径管12の孔のいずれの横断面形状も円形であることが好ましい。また、小径管111と大径管112とは、横断面形状が対称となり且つ同軸となるように設けられていることが好ましい。従って、小径管111と大径管112とは、
図3に示すように、第1流路111aの横断面形状が円形で且つ第2流路112aの横断面形状がドーナツ型形状となるように設けられた構成であることが好ましい。
【0099】
小径管111の外形及び孔のいずれの横断面形状も、後述の管端部分111bを除いて、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。大径管112の孔の横断面形状も、小径管111の管端部分111bに対応する部分を除いて、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。
【0100】
小径管111の外形及び孔のいずれの横断面形状も円形である場合、その外径D
1は、好ましくは1.6mm以上、より好ましくは3mm以上であり、また、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下である。小径管111の内径D
2、つまり、第1流路111aの流路径は、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは2mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。大径管112の孔の横断面形状が円形である場合、その内径D
3は、好ましくは1.8mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下である。また、小径管111と大径管112と間の第2流路112aの隙間Δは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、また、好ましくは12.5mm以下、より好ましくは6mm以下である。
【0101】
小径管111の下流側の管端部分111bは、
図2に示すように、その外周部がテーパ形状に形成されていることが好ましく、厚さ方向の横断面形状が内周側で尖った尖塔形状に形成されていることがより好ましい。
【0102】
大径管112の管内壁と小径管111の管端部分111bとの間に構成される第2流路112aの一部分となる隙間δは流体流動方向で均一であることが好ましい。その隙間δは、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上、特に好ましくは0.3mm以上であり、また、好ましくは12.5mm以下、より好ましくは6mm以下である。
【0103】
流体合流縮流部120には、小径管111の管端前方に流体合流域121が構成されており、その流体合流域121に連続して細孔122が穿孔されている。流体合流域121では、第1流路111aを流通した水性成分と第2流路112aを流通した油性成分とが合流し、細孔122では、流体合流域121で合流した直後の水性成分及び油性成分が流通する。
【0104】
流体合流域121は、特に限定されるものではないが、
図2に示すように、細孔122に向かって収束した先細ったコーン形状に形成されていることが好ましい。このコーン収束角θ
1は、好ましくは90°以上、より好ましくは100°以上であり、また、好ましくは180°以下、より好ましくは170°以下である。コーン収束角θ
1は、後述の流路拡大部131のコーン拡大角θ
2と同一であることが好ましい。流体合流域121の小径管111の管端、つまり、流体流路部110の終端から細孔122までの距離Lは、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.2mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは3mm以下、更により好ましくは1mm以下である。
【0105】
細孔122の横断面形状、延びる方向、孔径d、長さl、流路面積s、及び長さlの孔径dに対する比(長さl/孔径d)は既述の通りである。
【0106】
流体流出部130は、細孔122の前方に流路拡大部131が構成されている。流路拡大部131には、細孔122を流通した流体が流出する。なお、流路拡大部131は装置他端に設けられた乳化物回収部103に連通している。
【0107】
流体流出部130の流路の横断面形状、形状、コーン拡大角θ
2、及び流路拡大部131の最大流路径D
4は既述の通りである。
【0108】
マイクロミキサー100は、各々、金属やセラミックス、樹脂等で形成された複数の部材で構成されていてもよく、そして、それらの部材の組合せによって流体流路部110、流体合流縮流部120、及び流体流出部130が構成されていてもよい。
【0109】
なお、上記第1の構成のマイクロミキサー100では、1本の小径管111を大径管112に収容した構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、
図4(a)及び(b)に示すように、複数本の小径管111を大径管112に収容した構成であってもよい。
【0110】
このマイクロミキサー100は、第1流路111aに連通した水性成分供給部101に、水性成分貯槽41aから延びた水性成分供給管42aが接続されている。水性成分供給管42aには、水性成分を流通させる第1ポンプ43a、水性成分の流量を検知する第1流量計44a、及び水性成分の夾雑物を除去する第1フィルタ45aが上流側から順に介設されており、第1流量計44aと第1フィルタ45aとの間の部分に水性成分の圧力を検知する第1圧力計46aが取り付けられている。第1ポンプ43a、第1流量計44a、及び第1圧力計46aのそれぞれは、流量コントローラ47に電気的に接続されている。
【0111】
第2流路112aに連通した油性成分供給部102には、油性成分貯槽41bから延びた油性成分供給管42bが接続されている。油性成分供給管42bには、油性成分を流通させる第2ポンプ43b、油性成分の流量を検知する第2流量計44b、及び油性成分の夾雑物を除去する第2フィルタ45bが上流側から順に介設されており、第2流量計44bと第2フィルタ45bとの間の部分に油性成分の圧力を検知する第2圧力計46bが取り付けられている。第2ポンプ43b、第2流量計44b及び第2圧力計46bのそれぞれは、流量コントローラ47に電気的に接続されている。
【0112】
流量コントローラ47は、水性成分の設定流量及び設定圧力の入力が可能に構成されていると共に演算素子が組み込まれており、水性成分の設定流量情報、第1流量計44aで検知された流量情報及び第1圧力計46aで検知された圧力情報に基づいて第1ポンプ43aを運転制御する。同様に、流量コントローラ47は、油性成分の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、油性成分の設定流量情報、第2流量計44bで検知された流量情報及び第2圧力計46bで検知された圧力情報に基づいて第2ポンプ43bを運転制御する。
【0113】
流路拡大部131に連通した乳化物回収部103からは乳化物回収管48が延びて乳化物回収槽49に接続されている。
【0114】
次に、この乳化物製造システムAの動作について説明する。
【0115】
乳化物製造システムAが稼働すると、第1ポンプ43aは、連続相となる水性成分を、水性成分貯槽41aから水性成分供給管42aを介し、第1流量計44a及び第1フィルタ45aを順に経由させて流体流路部110の小径管111の第1流路111aに継続的に供給する。第1流量計44aは、検知した水相の流量情報を流量コントローラ47に送る。また、第1圧力計46aは、検知した第1圧力計46aの圧力情報を流量コントローラ47に送る。
【0116】
第2ポンプ43bは、分散相となる油性成分を、油性成分貯槽41bから油性成分供給管42bを介し、第2流量計44b及び第2フィルタ45bを順に経由させて流体流路部110の大径管112と小径管111との間の第2流路112aに継続的に供給する。第2流量計44bは、検知した油相の流量情報を流量コントローラ47に送る。また、第2圧力計46bは、検知した第2圧力計46bの圧力情報を流量コントローラ47に送る。
【0117】
流量コントローラ47は、水性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第1流量計44aで検知された流量情報及び第1圧力計46aで検知された圧力情報に基づいて、水性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第1ポンプ43aを運転制御する。それと共に、流量コントローラ47は、油性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第2流量計44bで検知された流量情報及び第2圧力計46bで検知された圧力情報に基づいて、油性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第2ポンプ43bを運転制御する。
【0118】
そして、マイクロミキサー100において、流体流路部110では、水性成分が第1流路111aを流通すると共に、油性成分が第2流路112aを流通する。このとき、水性成分の圧力は例えば0.01〜5MPaである。油性成分の圧力は例えば0.01〜5MPaである。そして、水性成分の流量設定及び圧力設定により、水性成分の流速は例えば0.05〜2m/sとされ、また、油性成分の流量設定及び圧力設定により、油性成分の流速は例えば0.05〜2m/sとされる。
【0119】
流体合流縮流部120では、流体流路部110から流出した水性成分及び油性成分は、流体合流域121において、水性成分に対し、斜め後方から且つその全周から油性成分が衝突する態様で合流する。このとき、流体合流縮流部120では、水性成分及び油性成分を合わせた流体の流速は例えば0.05〜2m/sである。この流速は、水性成分及び油性成分のそれぞれの流量設定及び圧力設定により制御することができる。
【0120】
流体合流域121において合流した水性成分及び油性成分は細孔122を流通する過程で混合される。このとき、流体合流域121で合流させた水性成分及び油性成分の流動条件は、水性成分及び油性成分のそれぞれの流量設定及び圧力設定により制御することができる。
【0121】
流体流出部130では、流路拡大部131において、細孔122を流通した水性成分及び油性成分を含む流体が流出し、水性成分と油性成分との間の対流混合により、油性成分の液滴の平均粒子径が細孔122の孔径の1/10以下である乳化物が製造される。
【0122】
流路拡大部131に連通した乳化物回収部103からは、製造された乳化物が乳化物回収管48を介して乳化物回収槽49に回収される。このとき、マイクロミキサー100の前後の圧力損失は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、また、好ましくは5MPa以下、より好ましくは3.0MPa以下である。この圧力損失は、水性成分及び油性成分のそれぞれの流量設定及び圧力設定により制御することができる。
【0123】
図5は、第2の構成のマイクロミキサー200を示す。この第2の構成のマイクロミキサー200では、上記第7の態様、つまり、合流前の水性成分と合流前の油性成分と合流後の流体とをそれぞれ細孔に流通させる態様により乳化物を製造する。
【0124】
この第2の構成のマイクロミキサー200は、一方の管端が水性成分供給部201及び他方の管端が油性成分供給部202とされた直線管部分210と、その直線管部分210の中央部分から分岐して直交方向に延び且つ管端が乳化物回収部203とされた分岐管部分220とからなるT字管により構成されている。T字管による第2の構成のマイクロミキサー200は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0125】
直線管部分210は、中央部分の流路が狭くなっており、その中央部分のうち、水性成分供給部201側が第1流路211aに、また、油性成分供給部202側が第2流路212aにそれぞれ構成されている。従って、水性成分供給部201に水性成分供給管42aが接続され、また、油性成分供給部202に油性成分供給管42bが接続される。
【0126】
分岐管部分220には、管軸に沿って延びて直線管部分210内に連通した細孔222が形成されている。そして、直線管部分210の中央部、つまり、分岐管部分220への分岐部の管内が細孔222に連続する流体合流域221に構成されている。第1流路211a及び第2流路212aのそれぞれは、流路断面積、つまり、孔面積が細孔222と同一乃至同程度であることが好ましく、また、圧損を小さく抑えることができるように流路長さ、つまり、孔長さも細孔222と同一乃至同程度であることが好ましい。分岐管部分220には、細孔222に連続して流路断面積が拡大した流路拡大部231が構成されている。なお、分岐管部分220の乳化物回収部203に乳化物回収管48が接続される。
【0127】
第2の構成のマイクロミキサー200は、水性成分の第1液と油性成分の第2液とを正面衝突させて合流させ、また、第1液及び第2液の流体合流域221に向かうそれぞれの流動方向と細孔222の延びる方向とが相互に異なる構成となっている。
【0128】
なお、
図5に示す第2の構成のマイクロミキサー200は、直線管部分210の中央部分の流路が狭くなった構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、
図6に示すように、流路が狭くなった部分がなく、水性成分供給部201から油性成分供給部202まで一様な流路を有する構成であってもよい。この
図6に示す変形例の第2の構成のマイクロミキサー200では、上記第1の態様、つまり、合流前の水性成分と合流前の油性成分とのいずれをも細孔に流通させず、合流後の流体のみを細孔に流通させる態様により乳化物を製造する。
【0129】
また、
図5に示す第2の構成のマイクロミキサー200は、分岐管部分220に細孔222が形成された構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、分岐管部分に連続して細孔が形成された部材を別途接続した構成であってもよい。
【0130】
図7(a)〜(c)は、第3の構成のマイクロミキサー300を示す。
【0131】
この第3の構成のマイクロミキサー300は、配管経路に設けられた流体流路部310とその液流出側に連続して設けられた流体合流縮流部320とその液流出側に連続して設けられた流体流出部330とを備えている。
【0132】
流体流路部310は、小径管311と大径管312とを有する。大径管312は小径管311を収容しており、それらは長さ方向を共通にし且つ同軸に配置されている。これにより、流体流路部310には、小径管311内部に第1流路311aが構成され、また、大径管312内部で且つ小径管311外部に第2流路312aが構成されている。そして、小径管311の管端が水性成分供給部(不図示)に構成され、流体流路部310の外部に露出した大径管312の管端が油性成分供給部(不図示)に構成されている。従って、水性成分供給部に水性成分供給管42aが接続され、また、油性成分供給部に油性成分供給管42bが接続される。二重管構造の流体流路部310を有するこのようなマイクロミキサー300は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0133】
流体合流縮流部320は、流体流路部310の液流出端に連続して内部領域を形成している。この内部領域は、流体流路部310から流出した第1液及び第2液が接触する流体合流域321に構成されている。流体合流縮流部320には、流体合流域321に連続して設けられた細孔322が穿孔されている。細孔322は、第1流路311a及び第2流路312aの延びる方向と同一方向に延びるように形成されている。
【0134】
流体流出部330は、細孔322に連続して設けられた筒状の乳化物回収部303で構成されている。乳化物回収部303には、細孔322に連続して流路断面積が拡大した流路拡大部331が構成されている。なお、乳化物回収部303に乳化物回収管48が接続される。
【0135】
第3の構成のマイクロミキサー300は、第1液及び第2液の流体合流域221に向かうそれぞれの流動方向、並びに細孔322の延びる方向がいずれも同じ構成となっている。
【0136】
ところで、流体流路部310から流出して流体合流域321で接触した第1液及び第2液は、最終的には細孔322により混合される。このとき、より高速な混合性能を得るためには、流体合流域321でのそれらの混在状態が、各液の微小なセグメントが構成されたものであることが好ましい。従って、第1流路311aの数はより多いことが好ましく、小径管311が1本である場合よりも、
図8(a)及び(b)に示すように、小径管311が複数本である場合の方が、より高速な混合特性を得ることができる。また、このように流路311a,311bの数が3個以上ある場合、第1液及び第2液とは異なる第3液をいずれかの流路311a,311bに流通させることも可能である。
【0137】
なお、この第3の構成のマイクロミキサー300において、第1流路311aに油性成分の第1液を流通させると共に、第2流路312aに水性成分の第2液を流通させて使用することもできる。
【0138】
上述した実施形態に関し、更に以下の乳化物の製造方法を開示する。
【0139】
<1>液体の水性成分と、20℃において液体である油剤(液体油ともいう)を含有し且つHLB7以上の非イオン性界面活性剤を10質量%以下含有した液体の油性成分と、を合流させる合流ステップと、
前記合流ステップで合流させる前の前記水性成分、前記合流ステップで合流させる前の前記油性成分、及び前記合流ステップで前記水性成分と前記油性成分とを合流させた後の流体のうち1つ又は2つ以上を、孔径が0.1〜3mmの細孔に流通させる細孔流通ステップと、
を含む、前記水性成分に乳化液滴の平均粒子径が前記細孔の孔径の1/100以下である前記油性成分が分散した乳化物の製造方法。
【0140】
<2>前記細孔流通ステップが、少なくとも前記合流ステップで前記水性成分と前記油性成分とを合流させた後の流体を前記細孔に流通させる工程を有する、<1>に記載の乳化物の製造方法。
【0141】
<3>前記非イオン性界面活性剤のHLBが、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、より好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下である、<1>又は<2>に記載の乳化物の製造方法。
【0142】
<4>前記液体の油性成分中、前記非イオン性界面活性剤の含有量が、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、また、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましく1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上である、<1>乃至<3>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0143】
<5>前記細孔の孔径が、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1mm以下である、<1>乃至<4>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0144】
<6>前記乳化液滴の平均粒子径が、前記細孔の孔径の、好ましくは1/200以下、より好ましくは1/300以下であり、また、好ましくは1/10000以上、より好ましくは1/3000以上、より更に好ましくは1/1000以上である、<1>乃至<5>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0145】
<7>製造される乳化物における前記液体油の含有量に対する前記非イオン界面活性剤の含有量の質量比(非イオン界面活性剤/液体油)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上であり、また、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.06以下である、<1>乃至<6>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0146】
<8>前記細孔流通ステップにおいて、前記合流ステップで前記水性成分と前記油性成分とを合流させた後の流体を、好ましくは0.1L/h以上、より好ましくは1.0L/h以上、また、好ましくは300L/h以下、より好ましくは250L/h以下、更に好ましくは100L/h以下、より好ましくは50L/h以下、より更に好ましくは20L/h以下、より更に好ましくは10L/h以下の流量で、前記細孔に流通させる、<1>乃至<7>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0147】
<9>前記細孔流通ステップにおいて、前記合流ステップで前記水性成分と前記油性成分とを合流させた後の流体を、前記細孔に流通させて、最大流路径が前記細孔の孔径の好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上であり、また、好ましくは50倍以下、より好ましくは40倍以下、更により好ましくは20倍以下である流路拡大部に流出させる、<1>乃至<8>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0148】
<10>前記合流ステップにおいて、合流させる前の前記水性成分の前記油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)を、好ましくは1/1以上、より好ましくは2/1以上、更に好ましくは5/1以上とし、また、好ましくは200/1以下、より好ましくは100/1以下、更に好ましくは50/1以下とする、<1>乃至<9>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0149】
<11>前記合流ステップにおいて、前記水性成分に、その全周から前記油性成分を合流させる、<1>乃至<10>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0150】
<12>製造される乳化物中の前記油性成分の乳化液滴の平均粒子径が、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下であり、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である、<1>乃至<11>いずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0151】
<13>前記油性成分が前記水性成分に対して自己乳化性を有する、<1>乃至<12>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0152】
<14>前記水性成分と前記油性成分との乳化操作を、セグリゲーション指数(Xs)が、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.08以下、より好ましくは0.06以下、より好ましくは0.04以下、より好ましくは0.02以下、より好ましくは0.01以下、より好ましくは0.008以下、より好ましくは0.005以下、より好ましくは0.004以下、また、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上となる条件で行う、<1>乃至<13>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0153】
<15> 前記細孔の延びる方向が、前記水性成分の流動方向及び/又は前記油性成分の流動方向と同一である、<1>乃至<14>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0154】
<16>前記細孔の長さが、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.3mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である、<1>乃至<15>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0155】
<17>前記細孔の流路面積が、好ましくは0.01mm
2以上、より好ましくは0.03mm
2以上であり、また、好ましくは7mm
2以下、より好ましくは2mm
2以下である、<1>乃至<16>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0156】
<18>前記細孔の長さの孔径に対する比(長さ/孔径)が、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1以上であり、また、好ましくは40以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下である、<1>乃至<17>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0157】
<19>前記細孔流通ステップにおいて、前記水性成分と前記油性成分とを乱流条件で前記細孔に流通させる、<1>乃至<18>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0158】
<20>前記流路拡大部が、前記細孔から最大流路径を有する部分までコーン形状に拡大するように形成されている、<9>に記載の乳化物の製造方法。
【0159】
<21>前記流路拡大部のコーン拡大角が、好ましくは90°以上、より好ましくは120°以上であり、また、好ましくは180°以下、より好ましくは170°以下、更により好ましくは150°以下である、<20>に記載の乳化物の製造方法。
【0160】
<22>前記水性成分と前記油性成分とをマイクロミキサーに供給し、前記マイクロミキサーにおいて前記合流ステップと前記細孔流通ステップとを行い、前記マイクロミキサーから乳化物を回収するように構成され、前記マイクロミキサーの前後の圧力損失が、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、また、好ましくは5MPa以下、より好ましくは3.0MPa以下である、<1>乃至<21>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0161】
<23>油性成分における液体油の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは92質量%以上であり、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.5質量%以下、より更に好ましくは99質量%以下、特に好ましくは98質量%以下である、<1>乃至<22>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0162】
<24>前記液体油が、好ましくはエステル基、水酸基、エーテル基、及びカルボニル基からなる群から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有する油剤を含み、また、好ましくは液体の炭化水素油、液体のエステル油、液体のジアルキルエーテル、液体の油脂、液体の高級アルコール、液体の高級脂肪酸、液体のシリコーン類、液体の機能性油剤(例えばセラミド、有機紫外線吸収剤、スフィンゴ脂質)、及び液体の香料からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくは液体のエステル油及び/又は液体の高級アルコールを含み、更に好ましくは液体の脂肪酸グリセライドを含む、<1>乃至<23>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0163】
<25>前記非イオン性界面活性剤が、好ましくは多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物、高級アルコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グルコシド及びポリグリセリンの脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくは多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物を含む、<1>乃至<24>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0164】
<26>水性成分における水の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上であり、実質100質量%である、<1>乃至<25>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0165】
<27>製造される乳化物中の液体油の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である、<1>乃至<26>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【0166】
<28>製造される乳化物中の非イオン界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以下である、<1>乃至<27>のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【実施例】
【0167】
[試験評価1]
(乳化物の製造)
以下の実施例1〜3及び比較例1〜4の乳化物の製造実験を行った。実施例1〜3及び比較例2〜4では、上記実施形態における
図1に示す乳化物製造システムAにおいて、
図2及び3に示す第1の構成のマイクロミキサー100を用いた。それぞれの内容については表1〜3にも示す。
【0168】
なお、セグリゲーション指数(Xs)については以下のようにして算出した。
【0169】
水性成分に代替するほう酸緩衝液と油性成分に代替する0.171N硫酸とをそれぞれ準備した。ほう酸緩衝液の組成は、ほう酸0.045mol/L、水酸化ナトリウム0.045mol/L、よう素酸カリウム0.00313mol/L、及びよう化カリウム0.0156mol/Lとした。これらの2液を各実施例或いは各比較例と同一の条件で混合し、混合1分後の溶液の波長353nmの光に対する吸光度を測定した。吸光度は、分光光度計(島津製作所社製 装置名:UVmini-1240)を用いて測定した。そして、その吸光度の測定結果から上記(IV)式に従ってセグリゲーション指数(Xs)を算出した。
【0170】
<実施例1>
実施例1では、マイクロミキサー100として、小径管111の外径D
1:3mm、小径管111の内径D
2:2mm、大径管112の内径D
3:4.71mm、小径管111と大径管112との隙間Δ:0.855mm、小径管111と大径管112との隙間δ:0.25mm、流体流路部110の終端から細孔122までの距離L:0.68mm、流体合流域121のコーン収束角θ
1:120°、細孔122の孔径d:0.22mm、細孔122の長さl:0.55mm、細孔122の流路面積s:0.038mm
2、細孔122の長さl/細孔122の孔径d:2.5、流路拡大部131のコーン拡大角θ
2:120°、流路拡大部131の最大流路径D
4:2mm、及び最大流路径D
4/細孔122の孔径d:9.1の構成のものを用いた。
【0171】
水性成分としてイオン交換水を準備して水性成分貯槽41aに仕込んだ。
【0172】
油性成分として、脂肪酸モノグリセライド(花王社製 商品名:ホモテックスPT(カプリル酸モノグリセライド)、HLB=5.9、ケン化価:274.6KOHmg/g、酸価:388.8KOHmg/g)を51.6質量%、高級アルコール(花王社製 商品名:カルコール200GD(2−オクチルドデカノール))を40.4質量%、及びHLBが13.8の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王社製 商品名:エマノーンCH−60,ケン化価:44KOHmg/g,EO平均付加モル数:60)を8.0質量%それぞれ含む均一溶液を準備して油性成分貯槽41bに仕込んだ。この油性成分は、常温(20℃)において液体であり、また、水性成分のイオン交換水に対して自己乳化性を有するものであった。
【0173】
そして、乳化物製造システムAを稼働させ、常温下(20℃)において、水性成分/油性成分の混合質量比が95/5となるように、水性成分の流量を1.71L/h及び油性成分の流量を0.09L/hとし、それらをマイクロミキサー100で混合して乳化物を得た。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は19であった。細孔122を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は1.80L/hであった。マイクロミキサー100の前後の圧力損失は0.3MPaであった。
【0174】
得られた乳化物では、脂肪酸モノグリセライドの含有量が2.58質量%、高級アルコールの含有量が2.02質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.40質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0175】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は0.32μmであった。これは、細孔122の孔径dの1/688である。ここで、乳化物中の油性成分の液滴の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製 装置名:LA−910)を用い、レーザー散乱/回折法により測定した油性成分のメジアン径である(以下、実施例2〜3及び比較例1〜4でも同様)。
【0176】
また、実施例1の乳化操作におけるセグリゲーション指数(Xs)は3.4×10
−3であった。なお、混合1分後のI
3−イオンは、波長353nmの光に対する吸光度から求めた値で、3.94×10
−6mol/Lであった。また、[H
+]
0及び[I
2]はそれぞれ0.171mol/L及び3.13×10
−7mol/L、並びにV
混合後/V
硫酸水は20であったので、Yは9.95×10
−4であった。また、[IO
3−]
0及び[H
2BO
3−]
0はそれぞれ0.00313mol/L及び0.045mol/Lであったので、Y
STは0.294であった。これは次の実施例2も同じである。
【0177】
<実施例2>
実施例2では、油性成分の組成を下記の通り変更したことを除いて実施例1と同様にして乳化物を得た。
【0178】
実施例2の油性成分として、脂肪酸モノグリセライド(花王社製 商品名:ホモテックスPT)を53.8質量%、高級アルコール(花王社製 商品名:カルコール200GD)を42.2質量%、及びHLBが13.8の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王社製 商品名:エマノーンCH−60)を4.0質量%それぞれ含む均一溶液を準備して油性成分貯槽41bに仕込んだ。この油性成分は、常温(20℃)において液体であり、また、水性成分のイオン交換水に対して自己乳化性を有するものであった。
【0179】
そして、乳化物製造システムAを稼働させ、常温下(20℃)において、水性成分/油性成分の混合質量比が95/5となるように、水性成分の流量を1.71L/h及び油性成分の流量を0.09L/hとし、それらをマイクロミキサー100で混合して乳化物を得た。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は19であった。細孔122を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は1.8L/hであった。マイクロミキサー100の前後の圧力損失は0.3MPaであった。
【0180】
得られた乳化物では、脂肪酸モノグリセライドの含有量が2.69質量%、高級アルコールの含有量が2.11質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.20質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0181】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は0.58μmであった。これは、細孔122の孔径dの1/379である。
【0182】
<実施例3>
実施例3では、マイクロミキサー100として、小径管111の外径D
1:8mm、小径管111の内径D
2:4mm、大径管112の内径D
3:10mm、隙間Δ:1mm、隙間δ:0.5mm、流体流路部110の終端から細孔122までの距離L:1.29mm、流体合流域121のコーン収束角θ
1:120°、細孔122の孔径d:0.68mm、細孔122の長さl:1.725mm、細孔122の流路面積s:0.363mm
2、細孔122の長さl/細孔122の孔径d:2.5、流路拡大部131のコーン拡大角θ
2:120°、流路拡大部131の最大流路径D
4:7mm、及び最大流路径D
4/細孔122の孔径d:10.3の構成のものを用いた。
【0183】
水性成分としてイオン交換水を準備して水性成分貯槽41aに仕込んだ。
【0184】
油性成分として、脂肪酸モノグリセライド(花王社製 商品名:ホモテックスPT)を51.6質量%、高級アルコール(花王社製 商品名:カルコール200GD(2−オクチルドデカノール))を40.4質量%、及びHLBが9.8の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王社製 商品名:エマノーンCH−25,ケン化価:75KOHmg/g,EO平均付加モル数:25)を8.0質量%それぞれ含む均一溶液を準備して油性成分貯槽41bに仕込んだ。この油性成分は、常温(20℃)において液体であり、また、水性成分のイオン交換水に対して自己乳化性を有するものであった。
【0185】
そして、乳化物製造システムAを稼働させ、常温下(20℃)において、水性成分/油性成分の混合質量比が95/5となるように、水性成分の流量を17.1L/h及び油性成分の流量を0.9L/hとし、それらをマイクロミキサー100で混合して乳化物を得た。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は19であった。細孔122を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は18.0L/hであった。マイクロミキサー100の前後の圧力損失は0.31MPaであった。
【0186】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は0.87μmであった。これは、細孔122の孔径dの1/345である。
【0187】
また、実施例3の乳化操作におけるセグリゲーション指数(Xs)は5.3×10
−3であった。なお、混合1分後のI
3−イオンは、波長353nmの光に対する吸光度から求めた値で、6.19×10
−6mol/Lであった。また、[H
+]
0及び[I
2]はそれぞれ0.171mol/L及び4.92×10
−7mol/L、並びにV
混合後/V
硫酸水は20であったので、Yは1.56×10
−3であった。また、[IO
3−]
0及び[H
2BO
3−]
0はそれぞれ0.00313mol/L及び0.045mol/Lであったので、Y
STは0.294であった。
【0188】
<比較例1>
実施例1と同様の水性成分及び油性成分を準備した。
【0189】
そして、水性成分760.0gと油性成分40.0gとをビーカーで混合した後、ホモミキサー(プライミクス社製 商品名:TKホモミクサーMARKII2.5)を用い、8000r/minの回転数で1分間混合して乳化液を調製した。
【0190】
得られた乳化物では、脂肪酸モノグリセライドの含有量が2.58質量%、高級アルコールの含有量が2.02質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.40質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0191】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は3.1μmであった。
【0192】
また、比較例1の乳化操作におけるセグリゲーション指数(Xs)は2.3×10
−1であった。なお、混合1分後のI
3−イオンは、波長353nmの光に対する吸光度から求めた値で、2.68×10
−4mol/Lであった。また、[H
+]
0及び[I
2]はそれぞれ0.171mol/L及び2.13×10
−5mol/L、並びにV
混合後/V
硫酸水は20であったので、Yは6.76×10
−2であった。また、[IO
3−]
0及び[H
2BO
3−]
0はそれぞれ0.00313mol/L及び0.045mol/Lであったので、Y
STは0.294であった。
【0193】
<比較例2>
比較例2では、油性成分の組成を下記の通り変更したことを除いて実施例1と同様にして乳化物を得た。
【0194】
比較例2の油性成分として、合成セラミド(花王社製 商品名:スフィンゴシピッドE)を88.0質量%、及びHLBが13.8の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王社製 商品名:エマノーンCH−60)を12.0質量%含む80.0℃に調温した均一溶液を準備して油性成分貯槽41bに仕込んだ。この油性成分は、常温(20℃)において固体であり、また、水性成分のイオン交換水に対して自己乳化性を有するものであった。
【0195】
そして、乳化物製造システムAが稼働させ、80℃において、水性成分/油性成分の混合質量比が95/5となるように、水性成分の流量を1.71L/h及び油性成分の流量を0.09L/hとし、それらをマイクロミキサー100で混合して乳化物を得た。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は19であった。細孔122を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は1.8L/hであった。マイクロミキサー100の前後の圧力損失は0.3MPaであった。
【0196】
得られた乳化物では、合成セラミドの含有量が4.40質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.60質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0197】
得られた乳化物を冷却したところ、ミリメートルオーダーの結晶が沈殿していた。
【0198】
<比較例3>
比較例3では、水性成分及び油性成分の組成を下記の通り変更したことを除いて実施例1と同様にして乳化物を得た。
【0199】
比較例3の水性成分として、HLBが13.8の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王社製 商品名:エマノーンCH−60)の0.42質量%水溶液を準備して水性成分貯槽41aに仕込んだ。
【0200】
比較例3の油性成分として、脂肪酸モノグリセライド(花王社製 商品名:ホモテックスPT)を56.1質量%、及び高級アルコール(花王社製 商品名:カルコール200GD)を43.9質量%含む均一溶液を準備して油性成分貯槽41bに仕込んだ。この油性成分は、常温(20℃)において液体であり、また、水性成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油水溶液に対して自己乳化性を有さないものであった。
【0201】
そして、乳化物製造システムAを稼働させ、常温下(20℃)において、水性成分/油性成分の混合質量比が95.4/4.6となるように、水性成分の流量を1.72L/h及び油性成分の流量を0.08L/hとし、それらをマイクロミキサー100で混合して乳化物を得た。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は21.5であった。細孔122を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は1.8L/hであった。マイクロミキサー100の前後の圧力損失は0.3MPaであった。
【0202】
得られた乳化物では、脂肪酸モノグリセライドの含有量が2.58質量%、高級アルコールの含有量が2.02質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.40質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0203】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は3.5μmであった。これは、細孔122の孔径dの1/63である。
【0204】
<比較例4>
比較例4では、油性成分の組成を下記の通り変更したことを除いて実施例1と同様にして乳化物を得た。
【0205】
比較例4の油性成分として、脂肪酸モノグリセライド(花王社製 商品名:ホモテックスPT)を51.6質量%、高級アルコール(花王社製 商品名:カルコール200GD)を40.4質量%、及びHLBが5.4の非イオン性界面活性剤であるソルビタン脂肪酸エステル(花王社製 商品名:レオドールAO−10V、ケン化価:147KOHmg/g、酸価:201KOHmg/g)を4.0質量%それぞれ含む均一溶液を準備して油性成分貯槽41bに仕込んだ。この油性成分は、常温(20℃)において液体であり、また、水性成分のイオン交換水に対して自己乳化性を有さないものであった。
【0206】
そして、乳化物製造システムAが稼働させ、常温下(20℃)において、水性成分/油性成分の混合質量比が95/5となるように、水性成分の流量を1.71L/h及び油性成分の流量を0.09L/hとし、それらをマイクロミキサー100で混合して乳化物を得た。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は19であった。細孔122を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は1.8L/hであった。マイクロミキサー100の前後の圧力損失は0.3MPaであった。
【0207】
得られた乳化物では、脂肪酸モノグリセライドの含有量が2.58質量%、高級アルコールの含有量が2.02質量%、ソルビタン脂肪酸エステルの含有量が0.40質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0208】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は5.3μmであった。これは、細孔122の孔径dの1/42である。
【0209】
【表1】
【0210】
【表2】
【0211】
【表3】
【0212】
(結果考察)
イオン交換水の水性成分と、20℃において液体である油剤を含有し且つHLB7以上の非イオン性界面活性剤を10質量%以下含有した油性成分とをマイクロミキサーによって乳化させた実施例1〜5では、得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径がいずれも1μm以下であった。
【0213】
一方、ホモミキサーによって乳化させた比較例1、油性成分及びそれに含まれる合成セラミドが20℃において固体である比較例2、水性成分に非イオン性界面活性剤を含有させた比較例3、油性成分にHLBが5.4のソルビタン脂肪酸エステルを含有させた比較例4では、得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径がいずれも3.0μm以上であった。
【0214】
[試験評価2]
以下の実施例4及び5の乳化物の製造実験を行った。実施例4では、上記実施形態における
図1に示す乳化物製造システムAにおいて、
図5に示す第2の構成のマイクロミキサー200を用い、実施例5では、
図7(a)〜(c)に示す第3の構成のマイクロミキサー300を用いた。それぞれの内容については表4及び5にも示す。
【0215】
<実施例4>
図9(a)は、実施例4で用いた第2の構成のマイクロミキサー200の寸法構成を示す。第2の構成のマイクロミキサー200では、細孔222が円筒孔であり、その孔径が0.3mm及び孔長さが0.9mmであった。
【0216】
第2の構成のマイクロミキサー200を用い、水性成分の流量を3.42L/h及び油性成分の流量を0.18L/hとした以外は、実施例1と同様の条件で乳化物を作製した。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は19であった。細孔222を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は3.6L/hであった。マイクロミキサー200の前後の圧力損失は0.27MPaであった。
【0217】
得られた乳化物では、脂肪酸モノグリセライドの含有量が2.58質量%、高級アルコールの含有量が2.02質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.40質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0218】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は0.58μmであった。これは、細孔222の孔径dの1/379である。
【0219】
また、実施例4の乳化操作におけるセグリゲーション指数(Xs)は8.1×10
−2であった。なお、混合1分後のI
3−イオンは、波長353nmの光に対する吸光度から求めた値で、2.4×10
−5mol/Lであった。また、[H
+]
0及び[I
2]はそれぞれ0.171mol/L及び1.9×10
−6mol/L、並びにV
混合後/V
硫酸水は20であったので、Yは2.4×10
−2であった。また、[IO
3−]
0及び[H
2BO
3−]
0はそれぞれ0.00313mol/L及び0.045mol/Lであったので、Y
STは0.294であった。
【0220】
<実施例5>
図9(b)は、実施例5で用いた第3の構成のマイクロミキサー300の寸法構成を示す。第3の構成のマイクロミキサー300では、細孔322が円筒孔であり、その孔径が0.3mm及び孔長さが0.9mmであった。
【0221】
第3の構成のマイクロミキサー300を用い、水性成分の流量を3.42L/h及び油性成分の流量を0.18L/hとした以外は、実施例1と同様の条件で乳化物を作製した。このとき、水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は19であった。細孔322を流通する水性成分と油性成分とを合流させた後の流体の流量は3.6L/hであった。マイクロミキサー300の前後の圧力損失は0.26MPaであった。
【0222】
得られた乳化物では、脂肪酸モノグリセライドの含有量が2.58質量%、高級アルコールの含有量が2.02質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.40質量%、及びイオン交換水の含有量が95.00質量%であった。
【0223】
得られた乳化物における油性成分の液滴の平均粒子径は0.31μmであった。これは、細孔322の孔径dの1/710である。
【0224】
また、実施例5の乳化操作におけるセグリゲーション指数(Xs)は3.5×10
−2であった。なお、混合1分後のI
3−イオンは、波長353nmの光に対する吸光度から求めた値で、1.0×10
−5mol/Lであった。また、[H
+]
0及び[I
2]はそれぞれ0.171mol/L及び8.0×10
−7mol/L、並びにV
混合後/V
硫酸水は20であったので、Yは1.0×10
−2であった。また、[IO
3−]
0及び[H
2BO
3−]
0はそれぞれ0.00313mol/L及び0.045mol/Lであったので、Y
STは0.294であった。
【0225】
【表4】
【0226】
【表5】