(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと駆動輪とを前記エンジンの停止時に切り離し、前記エンジンの始動時に係合する摩擦係合手段が設けられる自動変速機と、前記エンジンの停止時にブレーキペダルで踏み込まれたブレーキ力を保持するブレーキ保持手段とを備えた車両の制御装置であって、
前記ブレーキペダルが踏まれたことを含む所定の停止条件が成立したとき前記エンジンを自動停止させ、前記自動停止中に前記ブレーキペダルの解放を含む所定の始動条件が成立したとき前記エンジンを再始動させるエンジン制御手段と、
前記ブレーキペダルの踏み込みが弱まったことを含む所定の解除条件が成立したとき前記ブレーキ保持手段のブレーキ力の保持を解除する解除制御手段と、を備え、
前記解除制御手段は、前記エンジン制御手段による前記エンジンの再始動時において、
前記摩擦係合手段の係合状態が開放状態から係合力を発生する所定状態となるまでにアクセルペダルの操作が無い場合には、前記摩擦係合手段の係合状態が前記所定状態のときに前記ブレーキ力の保持を解除し、
前記摩擦係合手段の係合状態が前記開放状態から前記所定状態となるまでに前記アクセルペダルの操作がある場合には、前記摩擦係合手段の係合状態が前記所定状態での係合力よりも弱い係合力を発生する状態のときに前記ブレーキ力の保持を解除する
ことを特徴とする、車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
[1.装置構成]
[1−1.駆動系]
図1に示すように、本実施形態の制御装置は、エンジン(内燃機関)1を駆動源とした車両に適用される。車両の駆動系には、エンジン1及び自動変速機2が設けられ、自動変速機2の出力軸2bは駆動輪3に接続される。自動変速機2は、トルクコンバータ20と、前後進切替機構30と、ベルト式無段変速機構40(以下、CVT40という)と、ギア対50とがトランスミッションケース2c内に収納されて構成される。また、車両には、エンジン1を駆動源とした機械式のオイルポンプ5が設けられる。
【0020】
エンジン1は、例えば一般的なガソリンエンジンやディーゼルエンジンであって、所定の停止条件が成立した場合に自動的に停止し、その後、所定の始動条件が成立すると自動的に再始動するアイドルストップ機能を有する。所定の停止条件及び始動条件は、後述のエンジン制御部11で判定される。エンジン1は、エンジン制御部11からの指令に基づいて燃焼噴射が停止されることで自動停止し、エンジン制御部11からの指令に基づいて作動する始動モータ(図示略)によりクランキングされるとともに燃料噴射が再開されて再始動する。
【0021】
トルクコンバータ20は、トルク増大機能を有する発進要素であり、例えばエンジン1の出力軸1b(自動変速機2の入力軸2a,トルクコンバータ20の入力軸)にコンバータハウジングを介して連結されたインペラと、トルクコンバータ20の出力軸20b(前後進切替機構30の入力軸30a)に連結されたタービンライナと、ケースにワンウェイクラッチを介して設けられたステータとを有する。なお、トルクコンバータ20は、トルク増大機能を必要としないときに、トルクコンバータ20の入力軸と出力軸20bとを直結可能なロックアップクラッチを有していてもよい。
【0022】
前後進切替機構30は、CVT40への入力回転方向を前進時の正転方向と後退時の逆転方向とに切り替える機構である。前後進切替機構30は、例えばエンジン1側とCVT40側との動力伝達経路を切り替えるダブルピニオン型の遊星歯車31と、フォワードクラッチ(摩擦係合手段)32と、リバースブレーキ(摩擦係合手段)33とを有する。フォワードクラッチ32(以下、単にクラッチ32という)は、車両の前進時に、図示しない油圧室に供給される油圧によって遊星歯車31に係合される前進用の摩擦係合要素である。一方リバースブレーキ33は、車両の後進時に、図示しない油圧室に供給される油圧によって遊星歯車31に係合される後進用の摩擦係合要素である。なお、クラッチ32は後進時に開放され、リバースブレーキ33は前進時に開放される。
【0023】
CVT40は、自動変速機2の入力回転速度と出力回転速度との比(すなわち変速比)を連続的に(無段階に)変更する機構であり、プライマリプーリ41と、セカンダリプーリ42と、これら二つのプーリ41,42に架け渡されたベルト43とを有する。プライマリプーリ41は、前後進切替機構30を介して入力軸30aに接続されたプライマリ軸40a(前後進切替機構30の出力軸30b)に装備され、セカンダリプーリ42は、プライマリ軸40aと並列して設けられたセカンダリ軸40bに装備される。
【0024】
プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42は、対向配置された固定プーリ及び可動プーリと、可動プーリを軸方向に移動させる油圧シリンダ41c,42cとを有する。各油圧シリンダ41c,42cにはオイルポンプ5からそれぞれ油圧が供給される。これにより、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42の各可動プーリが移動し、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42へのベルト43の巻付き半径が変更することで、変速比が連続的に変化する。なお、セカンダリ軸40bは、ギア対50を介して自動変速機2の出力軸2bと接続されており、自動変速機2により変速された回転は駆動輪3に伝達されて、駆動輪3の回転によって車両が駆動される。
【0025】
オイルポンプ5は、エンジン1によって駆動されて、油圧回路へオイルを圧送する。油圧回路上には、例えば複数の電磁弁で構成された調圧装置4が設けられる。調圧装置4は、後述の油圧制御部12からの指令に応じて、オイルポンプ5から圧送されたオイルを適切な圧力に調圧する。例えば、車両の前進時であれば、オイルポンプ5から圧送されたオイル(元圧)を、クラッチ32を遊星歯車31に係合するための油圧(以下、クラッチ圧CPという)に調圧し、クラッチ圧CPをクラッチ32用の油圧室に供給する。
【0026】
なお、オイルポンプ5は、エンジン1の作動中のみ駆動されるため、エンジン1の停止中はオイルポンプ5も停止し、油圧回路からオイルが抜けることになる。そのため、エンジン1が自動停止された場合は、前進用のクラッチ32用の油圧室に繋がる油圧回路からも油圧が抜け、クラッチ32が開放される。したがって、エンジン1の自動停止後の再始動時には、クラッチ32を再度係合する必要がある。
【0027】
[1−2.制動系]
車両には、運転者によるブレーキペダル61の操作に応じて車両にブレーキ力を与えるブレーキ装置(ブレーキ保持手段)6が設けられる。ブレーキ装置6は、一般的な油圧式のディスクブレーキであり、ブレーキブースタ62,マスタシリンダ63,ブレーキパッド64等を有する。ブレーキペダル61に与えられた踏力はブレーキブースタ62で倍増されたのちマスタシリンダ63に入力され、マスタシリンダ63の内部に充填されているブレーキフルードに圧力として伝わり、ブレーキ圧を発生させる。このブレーキ圧は、各車輪に設けられるブレーキパッド64に供給され、ブレーキパッド64がブレーキディスクを挟むことで各車輪に摩擦制動力(ブレーキ力)が与えられる。
【0028】
また、ブレーキ装置6は、運転者によるブレーキペダル61の操作量にかかわらず、後述の解除制御部14からの指令に基づいてブレーキ力を保持する機能を有する。例えば、エンジン1が自動停止した場合には、解除制御部14からブレーキ装置6へブレーキ力を保持する指令が発せられ、ブレーキペダル61が解放されたのちもブレーキ力が保持される。また、ブレーキ装置6は、解除制御部14からブレーキ力の保持を解除する指令を受けた場合には、一定の傾きKでブレーキ力を徐々に低下させ、ブレーキ力の保持を解除する。
【0029】
[1−3.検出系,制御系]
エンジン1には、クランクシャフトの回転速度NE(単位時間あたりの回転数、以下、エンジン回転速度NEという)を検出するエンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)21が設けられる。また、自動変速機2には、トルクコンバータ20の出力軸20bの回転速度NTout(以下、トルコン出力回転速度NToutという)を検出する出力回転速度センサ(トルコン出力回転速度検出手段,クラッチ入力回転速度検出手段)22と、プライマリ軸40aの回転速度NCoutを検出するプライマリ回転速度センサ(クラッチ出力回転速度検出手段)23とが設けられる。
【0030】
なお、トルコン出力回転速度NToutは、前後進切替機構30の入力軸30aの回転速度NCin(以下、クラッチ入力回転速度NCinという)と同一である(NTout=NCin)。また、プライマリ軸40aの回転速度NCoutは、前後進切替機構30の出力軸30bの回転速度に相当し、以下、クラッチ出力回転速度NCoutという。これらの回転速度センサ21〜23は、随時回転速度NE,NTout(NCin),NCoutを検出し、後述の制御装置10へ出力する。
【0031】
ブレーキ装置6には、ブレーキペダル61の踏み込みの有無を検出するブレーキスイッチ(BK_SW)24が設けられる。ブレーキスイッチ24は、ブレーキペダル61が踏み込み操作されているときに制御装置10へオン信号を出力し、ブレーキペダル61が解放されている(踏み込み操作されていない)ときに制御装置10へオフ信号を出力する。
【0032】
また、図示しないアクセルペダルの近傍には、アクセルポジションセンサ(APS)25が設けられる。アクセルポジションセンサ25は、アクセルペダルの踏み込み量に相当するアクセル開度APを検出するものであり、このアクセル開度APは運転者の要求する出力の大きさ(要求出力や発進意図)に対応する。アクセルポジションセンサ25は、検出したアクセル開度APを制御装置10へ出力する。
【0033】
車両には、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート、時間をカウント(計測)するタイマー等を備えた制御装置10(Electronic Control Unit)が設けられる。制御装置10の入力側には、上記の各種センサ21〜25が接続され、制御装置10の出力側には、エンジン1,調圧装置4及びブレーキ装置6が接続される。
【0034】
[2.制御構成]
本実施形態に係る制御装置10は、エンジン1の自動停止後の再始動時に、クラッチ32の油圧室へ供給されるクラッチ圧CPを制御する油圧制御と、ブレーキ装置6によるブレーキ力の保持解除タイミングを制御するブレーキ解除制御とを実施する。
図1に示すように、制御装置10には、このような制御を実施するための要素として、エンジン制御部11,油圧制御部12,判断部13及び解除制御部14が設けられる。
【0035】
これらの各要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。なお、ここでは一つの制御装置10に全ての要素が設けられている場合を例示しているが、これらの要素が複数の制御装置に分けて設けられ、各制御装置が情報伝達可能に構成されていてもよい。
【0036】
[2−1.エンジンの自動停止及び再始動制御]
エンジン制御部(エンジン制御手段)11は、エンジン1に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御するものであり、具体的には、エンジン1の各シリンダに対して供給される空気量や燃料噴射量,各シリンダの点火時期,過給圧等を制御する。本実施形態では、エンジン1の自動停止及び再始動制御について説明する。
【0037】
エンジン制御部11は、走行中に所定の停止条件が成立したときに燃焼噴射を停止することでエンジン1を自動停止させ、自動停止中に所定の始動条件が成立したときに始動モータを作動させてエンジン1をクランキングするとともに燃料噴射を再開することでエンジン1を再始動させる。所定の停止条件は、例えば以下の(A)〜(C)のすべてを満たすことである。
(A)アクセル開度APがゼロである(AP=0,アクセルオフ)
(B)ブレーキスイッチ24がオンである(ブレーキオン)
(C)車速Vが所定車速V
0以下である(V≦V
0)
【0038】
すなわち、エンジン制御部11は、アクセルペダルの操作が無く、ブレーキペダル61が踏まれていて、さらに車速Vの条件を満たした場合に、エンジン1を自動的に停止させる。なお、上記の(C)に関して、車速Vはクラッチ出力回転速度NCoutから算出してもよいし、車速Vを検出する車速センサを設けてもよい。また、所定車速V
0は、予め設定された停止許可車速であって、エンジン1を停止させることが可能な車速である。
【0039】
一方、所定の始動条件は、例えば上記の(A)〜(C)の何れか一つを満たさないことである。すなわち、アクセルペダルが踏み込まれた場合やブレーキスイッチ24がオフになった場合、車両が何らかの原因で動き出した場合などである。エンジン制御部11は、所定の始動条件が成立した場合は、始動条件が成立したことを油圧制御部12及び解除制御部14に伝達する。
【0040】
[2−2.油圧制御]
油圧制御部(油圧制御手段)12は、エンジン制御部11から始動条件成立という情報が伝達されると、車両を発進させるためにクラッチ圧CPを制御してクラッチ32を係合させる。これは、上述したようにエンジン1の自動停止に伴ってオイルポンプ5も停止することから、クラッチ32が開放されてしまうためである。
【0041】
クラッチ32が開放されている間は駆動力が駆動輪3へ伝達されない(エンジン1と駆動輪3とが切り離されている)ため、始動条件成立からクラッチ32の係合開始までの時間が長いほど、駆動力の発生するタイミングが遅延することになる。そのため、油圧制御部12は、始動条件の成立後、運転者の発進意図に応じて速やかにクラッチ32の係合を開始させるとともに、クラッチ32の入出力回転の同期までの時間ができるだけ短くなるようにクラッチ圧CPを制御する。なお、クラッチ32の係合開始から回転同期までを係合後半ともいう。
【0042】
以下、油圧制御部12による油圧制御について、
図5(a)〜(e)及び
図6(a)〜(e)に示すタイムチャートを用いて説明する。
図5(a)〜(e)は、始動条件成立後にアクセルペダルの操作がある場合、すなわち再始動時において運転者に発進意図がある場合のタイムチャートであり、
図6(a)〜(e)は、始動条件成立後にアクセルペダルの操作がない場合、すなわち再始動時において運転者に発進意図がない場合のタイムチャートである。なお、ここでいう「再始動時」とは、始動条件成立時点(すなわち再始動開始)からクラッチ32の回転が同期するまでの期間〔例えば、
図5(c)の時刻t
0〜t
3や、
図6(c)の時刻t
0〜t
7の期間〕をいう。
【0043】
油圧制御部12は、
図5(d)及び
図6(d)に示すように、始動条件が成立した時点(時刻t
0)からエンジン1が完爆する時点(時刻t
1)までの間、クラッチ圧CPを初期油圧P
0に制御する。始動条件が成立してエンジン1のクランキングが開始されると、オイルポンプ5も作動を開始するため、油圧制御部12は、この期間にクラッチ圧CPを初期油圧P
0に制御して、クラッチ32用の油圧室に繋がる油圧回路へオイルを込める。
【0044】
なお、初期油圧P
0は、クランキング中にクラッチ32がトルク容量を持たない程度の小さな圧力であり、クランキング中にクラッチ32が急に係合しない程度に油圧回路へオイルを込めるためのものである。この初期油圧P
0を設けることで、後述の第1フェーズを毎回同じ状態でスタートさせることができ、クラッチ32の急掴みによるショックを防止するとともにクランキング中にエンジン1に対して負荷をかけないようにすることができる。
【0045】
エンジン1が完爆したか否かは、
図5(c)及び
図6(c)に示すように、エンジン回転速度NEが所定の閾値速度Ne
0以上になった時点で完爆したと判定される。この判定は、上記のエンジン制御部11で行い、エンジン制御部11から油圧制御部12へ完爆したという情報を伝達してもよいし、油圧制御部12が直接行ってもよい。以下、エンジン1の始動条件成立時点(再始動開始時点)からエンジン1の完爆時点までの制御期間(制御フェーズ)を初期フェーズという。
【0046】
油圧制御部12は、エンジン1の完爆後は、所定の第1時間T
1が経過するまでの間、クラッチ圧CPを初期油圧P
0よりも高い第1油圧P
1に制御して、クラッチ32の係合を開始させる。つまり、第1時間T
1が経過した時点はクラッチ32の係合開始時点〔
図5(c)の時刻t
2及び
図6(c)の時刻t
5〕となる。以下、エンジン1の完爆時点からクラッチ32の係合開始時点までの制御期間(制御フェーズ)を第1フェーズという。
【0047】
本実施形態では、油圧制御部12は、初期フェーズでの運転者の発進意図に応じて、例えば
図2(a)及び(b)のようなマップを用いて第1油圧P
1及び第1時間T
1を取得する。
図2(a)及び(b)は、それぞれアクセル開度APに対する第1油圧P
1及び第1時間T
1の関係を設定したマップである。
図2(a)に示すように、第1油圧P
1は、アクセル開度APが所定値D未満では比較的低めの一定値に設定され、所定値D以上ではアクセル開度APが増大するほど増大するように設定される。
【0048】
一方、
図2(b)に示すように、第1時間T
1は、アクセル開度APが所定値D未満では比較的長めの一定値に設定され、所定値D以上ではアクセル開度APが増大するほど短くなるように設定される。なお、所定値Dは、予め設定された運転者の発進意図の有無を判定するための閾値開度であり、ゼロに近い小さな値である。ここでは、アクセル開度APが所定値D未満ではアクセルオフ(発進意図なし)、所定値D以上になるとアクセルオン(発進意図あり)とする。
【0049】
したがって、油圧制御部12は、
図6(b)及び(d)に示すように、初期フェーズでのアクセル開度APが所定値D未満(AP<D)である場合は、運転者の発進意図がないものとして、クラッチ圧CPを比較的低めの第1油圧P
1に制御して、比較的長めの第1時間T
1をかけてクラッチ32の係合を開始させる。一方、
図5(b)及び(d)に示すように、初期フェーズでのアクセル開度APが所定値D以上(AP≧D)である場合は、運転者の発進意図があるものとして、クラッチ圧CPをアクセル開度APに応じた高めの第1油圧P
1に制御して、短い第1時間T
1の間にクラッチ32の係合を開始させる。つまり、アクセル開度APが大きいほど、短い時間の間に高い油圧がクラッチ32に供給されることになる。
【0050】
なお、初期フェーズでのアクセル開度APが所定値D未満であり、その後の第1フェーズにおいてアクセルペダルが踏み込まれ、アクセル開度APが所定値D以上になることがある。このような場合、油圧制御部12は、アクセル開度APが所定値D以上になった時点以降においてクラッチ圧CPを増圧補正する。すなわち、油圧制御部12は、初期フェーズでのアクセル開度APが所定値D未満であり、かつ、第1フェーズでのアクセル開度APが所定値D以上である場合には、例えば
図2(a)に示すマップに第1フェーズでのアクセル開度APを適用して、新たな第1油圧P
1を取得する。そして、クラッチ圧CPを新たな第1油圧P
1に制御する。
【0051】
また、初期フェーズにおいてアクセル開度APが所定値D以上である場合に、第1フェーズにおいてさらにアクセルペダルが大きく踏み込まれることがある。このような場合、油圧制御部12は、第1フェーズでのアクセル開度APに基づいて第1油圧P
1を増圧補正してもよいし、初期フェーズでのアクセル開度APから取得した第1油圧P
1を維持してもよい。前者の場合は、クラッチ32の係合開始時点をさらに早めることができ、後者の場合は制御構成を簡素化できる。
【0052】
油圧制御部12は、クラッチ32の係合開始後は、クラッチ32の入出力回転が同期するまでの間、クラッチ圧CPを所定の傾き(増加量)Gでランプ状に高める。言い換えると、油圧制御部12は、クラッチ32の係合を開始させた後、クラッチ圧CPを徐々に高めることでクラッチ32の係合を進め、クラッチ32の入出力回転を同期させる。以下、クラッチ32の係合開始時点からクラッチ32の入出力回転が同期した時点までの制御期間(制御フェーズ)を第2フェーズという。
【0053】
油圧制御部12は、初期フェーズ及び第1フェーズの少なくとも何れかでアクセル開度APが所定値D以上になった場合(アクセルオンの場合)は、比較的大きな傾きG
Lでクラッチ圧CPを徐々に高める。一方、初期フェーズ及び第1フェーズの何れでもアクセル開度APが所定値D未満の場合(アクセルオフの場合)は、傾きG
Lよりも小さい傾きG
Sでクラッチ圧CPを徐々に高める。
【0054】
油圧制御部12は、クラッチ32の入出力回転の同期後は、クラッチ圧CPを最終圧力P
Fに制御して、クラッチ32の係合を完了させる。この最終圧力P
Fは、クラッチ32を完全に係合させ、係合状態を維持できる油圧に予め設定されており、アクセル開度APによらず一定値とする。以下、クラッチ32の入出力回転の同期時点から係合完了までの制御期間(制御フェーズ)を終了フェーズという。なお、油圧制御部12は、制御フェーズを解除制御部14へ伝達する。
【0055】
[2−3.ブレーキ解除制御]
解除制御部(解除制御手段)14は、エンジン制御部11によりエンジン1が自動停止された場合に、車両に対してブレーキ力を保持するようにブレーキ装置6に対して指令を発する。さらに、解除制御部14は、所定の解除条件が成立したときに、ブレーキ装置6に対してブレーキ力の保持を解除する指令(以下、保持解除指令という)を発し、ブレーキ力の保持を解除する。所定の解除条件には、少なくともブレーキペダル61の踏み込みが弱まったことが含まれる。解除制御部14は、判断部13で判断されたクラッチ32の係合状態とアクセル開度APとに応じて保持解除指令を発するタイミングを変更する。
【0056】
本実施形態では、判断部13は、エンジン回転速度NEとトルコン出力回転速度NToutとに基づいて、クラッチ32の係合状態を判断し、判断結果(すなわち係合状態)を解除制御部14に伝達する。トルコン出力回転速度NToutは、クラッチ32の係合が開始される前はエンジン回転速度NEの上昇に伴って上昇し、クラッチ32の係合が開始された後は係合状態が進むほど(係合の進行度合いが大きいほど)、クラッチ出力回転速度NCoutに近づいていく。言い換えると、トルコン出力回転速度NToutは、クラッチ32の係合力が強いほどエンジン回転速度NEから離れていく。そこで、判断部13は、例えばエンジン回転速度NEに対するトルコン出力回転速度NToutの割合R(すなわち、トルコン前後の回転比R)から、クラッチ32の係合状態(係合力)を判断する。
【0057】
解除制御部14は、エンジン1の再始動時において、クラッチ32の係合状態が所定状態となるまでにアクセルペダルの操作が無い場合(アクセルオフの場合)には、クラッチ32の係合状態が所定状態のときに保持解除指令を発し、ブレーキ力の保持を解除する。
一方、解除制御部14は、エンジン1の再始動時において、クラッチ32の係合状態が所定状態となるまでにアクセルペダルの操作がある場合(アクセルオンの場合)には、クラッチ32の係合状態が所定状態よりも弱い係合状態のときに保持解除指令を発し、ブレーキ力の保持を解除する。
【0058】
なお、クラッチ32の係合状態は、上記の判断部13で判断され、クラッチ32の係合の進行度合い(係合開始からどの程度係合が進行したか)やクラッチ32の係合力に相当するものである。また、上記の所定状態とは、少なくともクラッチ32の係合力が発生している状態(すなわち、クラッチ32の係合が開始された後の状態)であり、本実施形態ではクラッチ32の係合後半に設定されている。判断部13は、ここでは、エンジン回転速度NEに対するトルコン出力回転速度NToutの割合R(トルコン前後の回転比R)が所定割合以下になったときにクラッチ32の係合状態が所定状態となったと判断する。以下、具体的に説明する。
【0059】
解除制御部14は、クラッチ32の係合状態が所定状態となるまでにアクセルペダルの操作がある場合、クラッチ32の係合力が発生している状態でブレーキ力の保持を解除する。具体的には、
図5(a)〜(e)に示すように、エンジン1の始動条件成立時点(再始動開始時点,時刻t
0)からクラッチ32の係合開始時点(時刻t
2)以前においてアクセル開度APが所定値D以上になった場合(アクセルオンの場合)は、解除制御部14はクラッチ32の係合開始時点(時刻t
2)で保持解除指令を発する。言い換えると、解除制御部14は、クラッチ32の係合力が発生していない状態で(油圧制御部12による制御フェーズが初期フェーズ又は第1フェーズのときに)アクセルオンになると、クラッチ32の係合力が発生した時点(第2フェーズへの移行時点)で保持解除指令を発する。
【0060】
このように、運転者に発進意図がある場合には、クラッチ32の係合開始時点(すなわちクラッチ32が容量を持ち始めた時点)でブレーキ力の保持解除指令を発することで、車両に対するブレーキ力が徐々に解放され、車両の発進性が確保される。一方で、クラッチ32の係合開始時点までブレーキ力を保持することで、車両が坂道に停止している場合に、車両の自重によるずり下がりが防止される。
【0061】
また、解除制御部14は、クラッチ32の係合開始時点(時刻t
2)からクラッチ32の係合状態が所定状態になるまでの間に(第2フェーズで)アクセル開度APが所定値D以上になった場合は、その時点(すなわち、AP≧Dになった時点)で保持解除指令を発する。つまり、クラッチ32の係合開始後に運転者によるアクセルペダルの操作があった場合には、アクセルオンとなった時点でブレーキ力の保持解除指令を発することで、車両に対するブレーキ力が徐々に解放され、車両の発進性が確保される。
【0062】
一方で、解除制御部14は、
図6(a)〜(e)に示すように、エンジン1の始動条件成立時点(再始動開始時点,時刻t
0)からクラッチ32の係合状態が所定状態になるまでに、アクセルペダルの操作が無い場合(アクセル開度APが所定値D未満の場合)は、クラッチ32の係合状態が所定状態のとき(時刻t
6)に保持解除指令を発する。これにより、ブレーキ装置6は、クラッチ32の係合状態が比較的進行した状態で(すなわち、係合力が強い状態で)ブレーキ力の保持を徐々に解除することになり、クラッチ32の回転同期時点までブレーキ力が残存した状態となる。
【0063】
これは、クラッチ32の係合を開始する際(特に入出力回転が同期する際)に少なからず係合ショックが発生することが知られており、係合ショックが生じうる時点までブレーキ力を残しておくことで係合ショックをブレーキ力でカバーし、ショックが直接運転者に伝わることを防ぐためである。つまり、クラッチ32の係合状態が所定状態になるまでアクセルペダルの操作が無い場合は、運転者の発進意図が弱いため、発進性よりもショック低減を優先させ、アクセルペダルの操作があるときよりもブレーキ力の保持解除タイミングを遅延させる。
【0064】
[3.フローチャート]
次に、
図3及び
図4(a)〜(c)を用いて、制御装置10で実行される油圧制御及びブレーキ解除制御の手順の例を説明する。
図3はメインフローチャートであり、
図4(a)〜(c)は
図3のサブフローチャートである。このフローチャートは、エンジン制御部11によりエンジン1が自動停止された後、始動条件が成立した時点から、所定の演算周期で繰り返し実施され、クラッチ32の係合完了まで実施される。
【0065】
図3に示すように、ステップS10では、フラグFがF=0であるか否かが判定される。ここで、フラグFは油圧制御部12による制御フェーズを示すものであり、F=0は初期フェーズ、F=1は第1フェーズ、F=2は第2フェーズにそれぞれ対応する。フローチャートのスタート時はF=0に設定されているため、ステップS20へ進む。ステップS20では、
図4(a)に示す初期フェーズのフローチャートを実施する。
【0066】
図4(a)に示すように、ステップX10では、エンジン制御部11によりエンジン1のクランキングが実施される。続くステップX20では、油圧制御部12によりクラッチ圧CPが初期油圧P
0に制御される(CP=P
0)。そして、ステップX30では、エンジン回転速度NEとアクセル開度APとが検出され、ステップX40では、ステップX30で検出されたアクセル開度APが初期アクセル開度AP
0として記憶されて(AP
0=AP)、このフローチャートを終了する。
【0067】
図3のステップS30では、ステップX30で検出されたエンジン回転速度NEが所定の閾値速度Ne
0以上(NE≧Ne
0)であるか否かが判定される。エンジン回転速度NEが閾値速度Ne
0未満であればこのフローチャートをリターンし、再び初期フェーズのフローチャートを実施する。エンジン1が完爆すると(NE≧Ne
0となると)、ステップS40へ進み、フラグFがF=1に設定される。そして、ステップS50では、
図4(b)に示す第1フェーズのフローチャートを実施する。
【0068】
図4(b)に示すように、ステップY10では、タイマTがカウント中であるか否かが判定される。最初にステップY10へ進んだ場合にはタイマTのカウントが開始されていないため、ステップY20へ進み、タイマTのカウントが開始される。続くステップY30では、油圧制御部12により、初期フェーズで記憶された初期アクセル開度AP
0に応じて、第1油圧P
1及び第1時間T
1が取得される。そして、ステップY40では、クラッチ圧CPが第1油圧P
1に制御される(CP=P
1)。
【0069】
続くステップS50では、アクセル開度APが検出され、ステップY60ではこのアクセル開度APが第1アクセル開度AP
1として記憶される(AP
1=AP)。ステップY70では、初期アクセル開度AP
0が所定値D未満であり、かつ、第1アクセル開度AP
1が所定値D以上であるか否かが判定される。つまり、第1フェーズにおいて初めてアクセル開度APが所定値D以上になったか否かが判定され、この条件を満たす場合には、ステップY80において第1アクセル開度AP
1に応じて、第1油圧P
1が再度取得される。つまり、第1フェーズにおいて初めてアクセル開度APが所定値D以上になった場合は、クラッチ圧CPが増圧補正される。
【0070】
一方、初期フェーズにおいてすでにアクセル開度APが所定値D以上である場合、又は、初期フェーズ及び第1フェーズにおいてアクセル開度APが所定値D未満である場合は、このフローチャートを終了する。
図3のステップS60では、タイマTのカウント値がステップY30で取得された第1時間T
1以上(T≧T
1)であるか否かが判定される。つまり、第1フェーズを第1時間T
1実施したか否かが判定され、第1時間T
1未満であればこのフローチャートをリターンし、ステップS10の判定を実施する。この場合は、フラグFがF=1に設定されているため、ステップS10からステップS45へ進み、フラグFがF=1であるか否かが判定され、ステップS50へ進む。
【0071】
図4(b)に示すように、次の制御周期では、タイマTのカウント中であるためステップY40へ進み、上記の処理と同様の処理が繰り返し実施される。そして、
図3のステップS60において、タイマTのカウント値が第1時間T
1以上になると、ステップS70においてタイマTのカウントが停止されるとともにリセットされる。続くステップS80では、フラグFがF=2に設定され、ステップS90では、
図4(c)に示す第2フェーズのフローチャートが開始される。
【0072】
図4(c)に示すように、ステップZ10では、エンジン回転速度NE及びトルコン出力回転速度NToutが検出される。ステップZ20では、フラグBK
OFFがBK
OFF=0であるか否かが判定される。ここで、フラグBK
OFFは、解除制御部14によるブレーキ力の保持解除指令が発せられたか否かをチェックするための変数であり、BK
OFF=0は保持解除指令を発していない状態に対応し、BK
OFF=1は保持解除指令を発した状態に対応する。
【0073】
フローチャートのスタート時はBK
OFF=0に設定されているため、ステップZ30へ進み、初期アクセル開度AP
0又は第1アクセル開度AP
1が所定値D以上(AP
0≧D又はAP
1≧D)であるか否かが判定される。すなわち、初期フェーズ又は第1フェーズにおいて、アクセル開度APが所定値D以上であったか否かが判定される。初期フェーズ又は第1フェーズでのアクセル開度APが所定値D以上であった場合はステップZ40へ進み、第2フェーズでのクラッチ圧CPの傾きGが比較的大きな傾きG
Lに設定される。
【0074】
そして、ステップZ90では、解除制御部14によりブレーキ力の保持解除指令が発せられ、これによりブレーキ装置6は一定の傾きKでブレーキ力を徐々に低下させ、ブレーキ力の保持を解除する。ステップZ100では、フラグBK
OFFがBK
OFF=1に設定され、ステップZ110では、クラッチ圧CPが前回周期でのクラッチ圧CPにステップZ40で設定された傾きGを加算した値に制御される。そして、このフローチャートを終了する。
【0075】
一方、ステップZ30の判定で、初期アクセル開度AP
0及び第1アクセル開度AP
1が所定値D未満(AP
0<DかつAP
1<D)である場合は、ステップZ50においてアクセル開度APが検出され、続くステップZ60において、このアクセル開度APが所定値D以上(AP≧D)であるか否かが判定される。つまり、初期フェーズ及び第1フェーズでのアクセル開度APが所定値D未満であった場合は、第2フェーズにおいてアクセルペダルが踏み込まれたか否かが常に判定される。
【0076】
ステップZ50で検出されたアクセル開度APが所定値D未満であれば、ステップZ70へ進み、第2フェーズでのクラッチ圧CPの傾きGが比較的小さな傾きG
Sに設定される。ステップZ80では、ステップZ10で検出されたエンジン回転速度NEとトルコン出力回転速度NToutとの割合R(トルコン前後の回転比R)が所定割合以下であるか否かが判定される。トルコン前後の回転比Rが所定割合よりも大きい場合は、ステップZ110へ進み、クラッチ圧CPが前回周期でのクラッチ圧CPにステップZ70で設定された傾きGを加算した値に制御される。そして、このフローチャートを終了する。
【0077】
図3のステップS100では、クラッチ32の入出力回転が同期したか否かが判定され、同期していなければこのフローチャートをリターンする。この判定は、例えばトルコン出力回転速度NTout(すなわちクラッチ入力回転速度NCin)とクラッチ出力回転速度NCoutとを用いて行う。次の制御周期では、
図3のステップS10,ステップS45において何れもNOルートとなり、ステップS90へ進んで、
図4(c)の第2フェーズのフローチャートが実施される。
【0078】
ステップZ10において、再びエンジン回転速度NE及びトルコン出力回転速度NToutが検出され、ステップZ20においてフラグ判定が行われる。前回周期において、すでにブレーキ力の保持解除指令を発した場合は、ステップZ20からステップZ110へ進み、クラッチ圧CPのみが制御される。
【0079】
一方、未だブレーキ力の保持解除指令を発していない場合は、ステップZ20及びステップZ30の判定を経て、ステップZ50においてアクセル開度APが検出される。そして、ステップZ60においてアクセル開度APが所定値D以上であると判定された場合は、ステップZ40へ進み、クラッチ圧CPの傾きGが比較的大きな傾きG
Lに変更され、ステップZ90においてブレーキ力の保持解除指令が出される。つまり、第2フェーズにおいてアクセルペダルが踏み込まれた場合は、アクセル開度APが所定値D以上になった時点でブレーキ力の保持が解除され、ステップZ110で制御されるクラッチ圧CPの増加量が増大される。
【0080】
ステップZ60において、アクセル開度APが所定値D未満であると判定された場合は、ステップZ70を経て、再びステップZ80の判定が行われる。クラッチ32の係合が進行し、トルコン前後の回転比Rが所定以下となると、クラッチ32の係合状態が所定状態となったことになるため、ステップZ90へ進んでブレーキ力の保持解除指令が発せられる。つまり、クラッチ32の係合状態が所定状態になるまでにアクセル開度APが所定値D以上にならなかった場合は、クラッチ32の係合状態が所定状態になった時点でブレーキ力の保持が解除される。
【0081】
図3のステップS100の判定で、クラッチ32の入出力回転が同期した場合は、ステップS110へ進み、クラッチ圧CPが最終圧力P
Fに制御される。そして、ステップZ120では、フラグFがF=0にリセットされるとともに、フラグBK
OFFもBK
OFF=0にリセットされて、このフローチャートを終了する。
【0082】
[4.作用]
次に、
図5(a)〜(e)及び
図6(a)〜(e)を用いて、エンジン1の自動停止中に始動条件が成立した場合の油圧制御及びブレーキ解除制御について説明する。まず、
図5(a)〜(e)に示すように、初期フェーズにおいてアクセルペダルが踏み込まれ、アクセル開度APが所定値D以上になった場合の制御内容について説明する。
【0083】
ブレーキスイッチ24がオンからオフに切り替わり、始動条件が成立した時刻t
0から、エンジン1のクランキングが開始される。これにより、オイルポンプ5が作動を開始するため、初期フェーズにおいてクラッチ圧CPが初期油圧P
0に制御される。エンジン1は、エンジン回転速度NEが閾値速度Ne
0以上になった時刻t
1で完爆したと判定され、この時点から油圧制御部12による制御フェーズが初期フェーズから第1フェーズに切り替えられる。
【0084】
ここで、
図5(b)に示すように、エンジン1の再始動開始時点t
0から完爆時点t
1までの間の時刻t
10において、アクセル開度APが所定値D以上になった場合は、初期フェーズでのアクセル開度(すなわち、初期アクセル開度)AP
0に応じて、第1油圧P
1及び第1時間T
1が取得される。
図5(b)に示す例では、アクセルペダルが徐々に踏み込まれ、時刻t
10でアクセル開度APが所定値D以上になり、所定値Dよりも大きな開度で一定になっている。そのため、この場合は一定の開度が初期アクセル開度AP
0として記憶され、この開度に基づいて第1油圧P
1及び第1時間T
1が取得される。なお、アクセル開度APが所定値D以上であって
図5(b)のように一定でない場合は、完爆直前のアクセル開度APが初期アクセル開度AP
0として記憶される。
【0085】
図5(c)及び(d)に示すように、第1フェーズでは、取得された第1時間T
1が経過するまでの間、クラッチ圧CPが第1油圧P
1に制御され、第1時間T
1が経過した時刻t
2で第2フェーズへ移行する。この時刻t
2は、係合開始時点となる。第2フェーズでは、油圧制御部12によりクラッチ圧CPが所定の傾きG
Lで徐々に高められ、クラッチ32の係合が進められる。そして、時刻t
3でクラッチ32の入出力回転が同期する。つまり、時刻t
3が同期時点となる。時刻t
3以降の終了フェーズでは、クラッチ圧CPが最終圧力PFに制御され、クラッチ32の係合が完了する。
【0086】
解除制御部14は、係合開始時点t
2までブレーキ力を保持し、係合開始時点t
2でブレーキ装置6に対して保持解除指令を発してブレーキ力の保持を解除する。これにより、
図5(e)に示すように、ブレーキ力は一定の傾きKで低下し始め、時刻t
4においてブレーキ力はゼロとなる。つまり、クラッチ32の係合開始時点t
2以前においてアクセル開度APが所定値D以上になった場合は、クラッチ32の係合開始時点t
2でブレーキ力の保持が解除される。これにより、運転者の発進意図がある場合には、アクセル操作のレスポンスが優先され、車両の発進性が確保される。また、クラッチ32の回転同期付近で係合ショックが発生しても、
図5(c)に示すように、車両はすでに発進しているので運転者が体感するショックは低減される。
【0087】
次に、
図6(a)〜(e)に示すように、アクセルペダルの操作がなく、アクセル開度APが所定値D未満の場合の制御内容について説明する。
図5(a)と同様、時刻t
0において始動条件が成立すると、エンジン1のクランキングが開始され、初期フェーズにおいてクラッチ圧CPが初期油圧P
0に制御される。エンジン1は、エンジン回転速度NEが閾値速度Ne
0以上になった時刻t
1で完爆したと判定され、この時点から油圧制御部12による制御フェーズが初期フェーズから第1フェーズに切り替えられる。
【0088】
ここでは、
図6(b)に示すように、アクセル開度APが所定値D未満のままであるため、
図6(d)に示すように、クラッチ圧CPは、
図5(d)の第1時間T
1よりも長い第1時間T
1の間、
図5(d)の第1油圧P
1よりも低い第1油圧P
1に制御される。そして、
図6(c)及び(d)に示すように、第1時間T
1が経過した時刻t
5で第2フェーズへ移行する。この時刻t
5は、係合開始時点となる。第2フェーズでは、油圧制御部12によりクラッチ圧CPが所定の傾きG
Sで徐々に高められ、クラッチ32の係合が進められる。なお、この時点t
5では、未だブレーキ力の保持解除指令は発せられていない。
【0089】
解除制御部14は、トルコン前後の回転比Rが所定割合以下となり、クラッチ32の係合状態が所定状態となった時刻t
6でブレーキ装置6に対して保持解除指令を発する。これにより、
図6(e)に示すように、ブレーキ力は一定の傾きKで低下し始め、時刻t
8においてブレーキ力はゼロとなる。そして、ブレーキ力が低下し始めてからゼロとなるまでの間(時刻t
6〜t
8の間)の時刻t
7において、クラッチ32の入出力回転が同期する。この同期時点t
7付近では、クラッチ32の入出力回転の同期に伴う係合ショックが発生しうるが、時刻t
7付近ではブレーキ力が残存した状態となるため、運転者に伝わるショックが低減される。つまり、運転者の発進意図がない(あるいは発進意図が弱い)場合には、車両の発進性よりもショックの低減が優先される。
【0090】
[5.効果]
(1)上記の車両の制御装置によれば、アクセルペダルの操作がない場合、すなわち運転者の発進意図が弱いときは、アクセルペダルの操作がある場合、すなわち運転者の発進意図が強いときと比較してクラッチ32の係合状態が高い(クラッチ32の係合力が強い)状態でブレーキ力が解除される。つまり、発進意図が弱いときは少なくともクラッチ32が係合を開始してからブレーキ力の保持が解除されるため、クラッチ32が係合を開始する際や回転同期付近で発生しうる係合ショックをブレーキ力でカバーでき、エンジン1の再始動時に乗員に伝わるショックを抑制することができる。
【0091】
一方で、運転者の発進意図が強いときは、発進意図が弱いときよりも早期にブレーキ力の保持が解除されるため、発進性を向上させることができる。したがって、上記の制御装置10であれば、エンジン1の自動停止中にクラッチ32の係合が解除されても、すなわち係合を維持しておくための電動のオイルポンプを省略しても、クラッチ32の係合ショックの抑制と発進性の確保とを両立することができる。また、電動のオイルポンプを省略することができるため、コストを低減することができる。
【0092】
(2)上記の車両の制御装置によれば、エンジン1の再始動時において、クラッチ32の係合状態が所定状態になるまでにアクセルペダルの操作がある場合には、クラッチ32の係合力が発生している状態でブレーキ力の保持が解除される。言い換えると、クラッチ32の係合開始時点まで(係合力が発生するまで)はブレーキ力が保持されるため、車両が坂道に停止している場合等に、車両の自重によるずり下がりを抑制することができ、車両の信頼性を向上させることができる。
【0093】
(3)上記の車両の制御装置によれば、クラッチ32の係合力が発生していない状態でアクセルペダルの操作がある場合は、クラッチ32の係合力が発生した時点でブレーキ力の保持が解除されるため、車両のずり下がりを抑制することができるとともに、運転者の発進意図が強い再始動時に車両をより速やかに発進させることができる。
【0094】
(4)上記の車両の制御装置によれば、エンジン1の再始動時において、クラッチ32の係合状態が所定状態となるまでにアクセルペダルの操作がある場合、アクセルペダルの操作が無い場合よりもクラッチ圧CPが高圧にされるため、クラッチ32が係合する際の時間を短縮することができ、車両の発進性をより向上させることができる。
【0095】
(5)さらに、上記の車両の制御装置によれば、アクセルペダルの踏み込み量が大きいほどクラッチ圧CPが高くされる(増圧補正される)ため、アクセル開度APが大きいほどクラッチ32が係合する際の時間を短縮することができ、車両の発進性をさらに向上させることができる。
【0096】
(6)また、上記の車両の制御装置では、判断部13が、エンジン回転速度NEとトルコン出力回転速度NToutとに基づいてクラッチ32の係合状態を判断している。エンジン回転速度NEは、上記の油圧制御やブレーキ解除制御にかかわらず通常検出する回転速度である。つまり、判断部13は、既存のセンサ値であるエンジン回転速度NEを用いてクラッチ32の係合状態を判断することで、クラッチ32の入出力回転を直接検出する必要がなくなり、備品点数の増加を抑制してコストを低減することができる。
【0097】
(7)なお、本実施形態では、クラッチ32の係合状態が所定状態になるまでにアクセルペダルの操作が無い場合、係合状態が所定状態になった時点でブレーキ力を一定の傾きKで低下させ、クラッチ32の回転同期時点においてブレーキ力が残存した状態とする。これにより、クラッチ32の回転同期付近で確実にブレーキ力を残しておくことができ、クラッチ32の係合ショックが乗員に伝わることを抑制することができる。
【0098】
[6.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、エンジン1の再始動時においてアクセルペダルの操作がある場合に、ブレーキ力の保持を解除するタイミングは、上記したものに限られない。上記実施形態では、解除制御部14は、初期フェーズ又は第1フェーズで(すなわち係合開始までに)アクセル開度APが所定値D以上になった場合は、係合開始時点でブレーキ力の保持解除指令を発することで、車両のずり下がりを防止しているが、例えば車両が停止している路面の傾きを検出し、車両が平坦な路面に停止している場合には係合開始時点よりも早いタイミングで保持解除指令を発してもよい。これにより、車両の発進性をより向上させることができる。
【0099】
また、解除制御部14は、クラッチ32の係合開始から係合状態が所定状態になるまでの間にアクセルペダルの操作がある場合には、アクセルペダルの操作があった時点(AP≧Dの時点)でブレーキ力の保持を解除し、発進性を確保しているが、少なくともクラッチ32の係合力が発生している状態でブレーキ力が解除されればよい。言い換えると、エンジン1の再始動時において、クラッチ32の係合状態が所定状態になるまでにアクセルペダルの操作がある場合には、クラッチ32の係合状態が所定状態よりも弱い係合状態(少なくともクラッチ32の係合力が発生している状態)のときに、ブレーキ力の保持が解除されればよい。
【0100】
また、上記実施形態では、所定状態がクラッチ32の係合後半に設定されている場合を説明したが、所定状態はこれに限られず、少なくともクラッチ32の係合力が発生している状態(すなわち、クラッチ32の係合が開始された後の状態)であればよい。
また、解除制御部14は、アクセル開度APが所定値D以上でブレーキ力の保持解除指令を発する場合は、ブレーキ力を徐々に低下させるのではなく、ステップ状にブレーキ力を低下させてもよい。
【0101】
また、判断部13によるクラッチ32の係合状態の判断手法は上記したものに限られない。例えば、クラッチ入力回転速度NCinとクラッチ出力回転速度NCoutとに基づいて、クラッチ32の係合状態を判断するように構成されていてもよい。
図6(c)に示すように、エンジン1の再始動時におけるクラッチ32の開放時は、クラッチ入力回転速度NCin(トルコン出力回転速度NTout)はエンジン1の完爆後から上昇する一方、クラッチ出力回転速度NCoutはゼロのまま変化しない。クラッチ32の係合が開始されると、クラッチ32の入力軸30aの回転は出力軸30bの回転に引きずられるためクラッチ入力回転速度NCinが低下し始め、クラッチ32が同期するとクラッチ入力回転速度NCinとクラッチ出力回転速度NCoutとが一致する。
【0102】
そのため、判断部13は、例えばクラッチ出力回転速度NCoutに対するクラッチ入力回転速度NCinの割合(クラッチ入出力回転比)から、クラッチ32の係合状態(係合力)を判断するように構成されていてもよい。このように、クラッチ32の入出力回転NCin,NCoutを直接検出する構成であれば、クラッチ32の係合状態をより確実に判断することができる。この他にも、例えばクラッチ入力回転速度NCinのみを検出し、クラッチ入力回転速度NCinが所定の回転速度を下回ったときにクラッチ32の係合状態が所定状態になったと判断してもよいし、係合開始時点からの経過時間を用いたりして判断してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、エンジン1の完爆から第1時間T
1が経過した時点をクラッチ32の係合開始時点としているが、クラッチ32の係合が開始されたか否かについて、第1時間T
1の代わりにクラッチ入力回転速度NCinをモニターしてもよい。クラッチ32の係合が開始されるとクラッチ32が容量を持ち始めるため、
図5(c)及び
図6(c)に示すようにクラッチ入力回転速度NCinは低下し始める。そのため、クラッチ入力回転速度NCinの変化率がゼロになった時点、あるいは変化率が正から負に変化した時点で、クラッチ32の係合が開始されたと判定してもよい。
【0104】
なお、ブレーキ装置6は上記した構成に限られず、少なくともエンジン1の停止中に車両に対してブレーキ力を保持する機能を有するものであればよい。例えば、ブレーキ装置6が解除制御部14からの指令に応じて、ブレーキ力を低下させる傾きを変更できるように構成されていてもよい。なお、上記実施形態では、ブレーキペダル61の操作をブレーキスイッチ24により検出しているが、ブレーキ液圧を検出することでブレーキペダル61が踏み込まれているか否かを判定してもよい。
【0105】
また、油圧制御部12によるクラッチ圧CPの制御内容は上記したものに限られない。例えば、第1時間T
1の代わりにクラッチ入力回転速度NCinをモニターしてクラッチ32が係合開始したか否かを判定する場合、クラッチ入力回転速度NCinの変化率や変化量をチェックして第1油圧P
1をフィードバック制御する構成としてもよい。また、第2フェーズにおいても所定の傾きGを設定する代わりに、クラッチ入力回転速度NCinをモニターして第2油圧P
2をフィードバック制御する構成としてもよいし、傾きGをアクセル開度APの関数として与えてもよい。なお、エンジン1の完爆から係合開始時点の間にアクセルペダルが踏み込まれたとしても、第1油圧P
1を一定に保持してもよい。
【0106】
上記実施形態で説明したエンジン1の停止条件及び始動条件は一例であって、上記したものに限られない。少なくとも、エンジン1の停止条件にブレーキペダル61が踏まれたこと、すなわち上記の(B)が含まれていればよい。また、上記の所定値Dをゼロに設定し、アクセルオンとアクセルオフとを、単にアクセルペダルの操作の有無で判断してもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、自動変速機2がトルクコンバータ20,前後進切替機構30,CVT40及びギア対50から構成されるものを例示したが、自動変速機はこれに限られない。例えば、前後進切替機構30の代わりに、CVT40のセカンダリ軸40b側に、複数段の前進用の摩擦係合手段と、後進用の摩擦係合手段とからなる変速機構(いわゆる副変速機構)が接続された自動変速機でもよい。また、CVT40の代わりに多段式の自動変速機であってもよい。つまり、前進用の摩擦係合手段は上記のクラッチ32に限られない。