(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一態様にしたがって、整形外科用器具は、A/P大腿骨切削ブロックを含み、このブロックは、前方切削面、後方切削面、前方切削面と後方切削面との間に配置された面取りアクセス窓、及び締まりばめコネクタを含む。整形外科用器具は、面取りアクセス切削窓に配置される楔形の面取り切削面を有する面取り大腿骨切削ブロックと、面取り大腿骨切削ブロックをA/P大腿骨切削ブロックに取り外し可能に固定するためにA/P大腿骨切削ブロックの締まりばめコネクタに接続された締まりばめコネクタもまた含む。
【0004】
面取り大腿骨切削ブロックの締まりばめコネクタは、その内部に形成された細長い穴を有する雌コネクタとして具現化され得、A/P大腿骨切削ブロックの締まりばめコネクタは、面取り大腿骨切削ブロックの雌コネクタの細長い穴に受容される細長いボスを有する雄コネクタとして具現化される。
【0005】
A/P大腿骨切削ブロックの雄コネクタの細長いボスの遠位端は、多数のクラッシュリブを含み得る。
【0006】
細長いボスは、それを通って形成された穴を有し得、A/P大腿骨切削ブロックの雄コネクタの細長いボスの穴は、面取り大腿骨切削ブロックの雌コネクタの細長い穴と整列して、ピン案内穴を画定する。
【0007】
面取り大腿骨切削ブロックは、楔形の切削面の外側端に固定された外側ハンドルもまた有することができ、この外側ハンドルは、A/P大腿骨切削ブロックの最も外側の縁から外方に離れる方向に延在する。面取り大腿骨切削ブロックは、楔形の切削面の内側端に固定された内側ハンドルもまた有することができ、この内側ハンドルは、A/P大腿骨切削ブロックの最も内側の縁から外方に離れる方向に延在する。
【0008】
A/P大腿骨切削ブロック及び面取り大腿骨切削ブロックの双方は、ポリマー製の切削ブロックとして具現化され得る。整形外科用器具は、前方切削面に固定された金属製の前方切削案内、後方切削面に固定された金属製の後方切削案内、及び面取り切削面に固定された金属製の面取り切削案内もまた含み得る。
【0009】
面取り大腿骨切削ブロックは、外面もまた含み得、楔形の切削面がこの外面に画定され得る。面取り大腿骨切削ブロックは、外面の反対側の骨係合面もまた含み得、多数のスパイクが、骨係合面から外方に離れる方向に延出している。
【0010】
別の態様によると、整形外科用器具は、前方切削面及び後方切削面を有するポリマー製のA/P大腿骨切削ブロックを含む。この器具はまた、前方切削面に固定された金属製の前方切削案内と、後方切削面に固定された金属製の後方切削案内と、を含む。この器具は、ポリマー製のA/P大腿骨切削ブロックに取り外し可能に固定されたポリマー製の大腿骨面取り切削ブロックを更に含む。ポリマー製の大腿骨切削ブロックは、面取りアクセス切削窓に配置される楔形の面取り切削面を有する。ポリマー製の大腿骨切削ブロックは、A/P大腿骨切削ブロックの最も外側の縁から外方に離れる方向に延在する、楔形の切削面の外側に固定された外側ハンドル、及びA/P大腿骨切削ブロックの最も内側の縁から外方に離れる方向に延在する、楔形の切削面の内側に固定された内側ハンドルもまた含む。この器具はまた、面取り切削面に固定された金属製の面取り切削案内も含む。
【0011】
ポリマー製のA/P大腿骨切削ブロックは、締まりばめコネクタを更に有し、ポリマー製の面取り切削ブロックは、面取り大腿骨切削ブロックをA/P大腿骨切削ブロックに取り外し可能に固定するためにA/P大腿骨切削ブロックの締まりばめコネクタに接続される締まりばめコネクタを更に有する。
【0012】
面取り大腿骨切削ブロックの締まりばめコネクタは、その内部に形成された細長い穴を有する雌コネクタとして具現化され得、A/P大腿骨切削ブロックの締まりばめコネクタは、面取り大腿骨切削ブロックの雌コネクタの細長い穴に受容される細長いボスを有する雄コネクタとして具現化される。
【0013】
A/P大腿骨切削ブロックの雄コネクタの細長いボスの遠位端は、多数のクラッシュリブを含み得る。
【0014】
細長いボスは、それ自体を通って形成された穴を有し得、A/P大腿骨切削ブロックの雄コネクタの細長いボスの穴は、面取り大腿骨切削ブロックの雌コネクタの細長い穴と整列して、ピン案内穴を画定する。
【0015】
面取り大腿骨切削ブロックは、外面もまた含み得、楔形の切削面がこの外面に画定され得る。面取り大腿骨切削ブロックは、外面の反対側の骨係合面もまた含み得、多数のスパイクが、骨係合面から外方に離れる方向に延在する。
【0016】
別の態様にしたがって、膝関節置換術の実施中に患者の大腿骨遠位端を切除する方法は、患者の大腿骨遠位端に整形外科用器具を固定することを含み、整形外科用器具は、A/P大腿骨切削ブロックと、このA/P切削ブロックに取り外し可能に固定される面取り大腿骨切削ブロックと、を有する。この方法はまた、A/P大腿骨切削ブロックを使用して、患者の大腿骨遠位端の前方及び後方の切削を実施すること、及び次いで、面取り大腿骨切削ブロックが患者の大腿骨遠位端に固定されたまま残るように、面取り大腿骨切削ブロックからA/P大腿骨切削ブロックを取り外すことも含む。この方法はまた、面取り大腿骨切削ブロックを使用して、患者の大腿骨遠位端の面取り切削を実施することもまた含む。
【0017】
大腿骨切削ブロックを面取り大腿骨切削ブロックから分離するために面取り大腿骨切削ブロックに衝撃を及ぼすことによって、A/P大腿骨切削ブロックを面取り大腿骨切削ブロックから取り外すことができる。
【0018】
また、面取り大腿骨切削ブロックに衝撃を及ぼすことで、面取り大腿骨切削ブロックの多数のスパイクを患者の大腿骨の遠位端に打ち込むことができる。
【0019】
締まりばめ接続は、A/P大腿骨切削ブロックを面取り大腿骨切削ブロックから取り外す間に分離され得る。
【0020】
A/P大腿骨切削ブロックは、面取り大腿骨切削ブロックからの分離の間に一対の外科用ピンから取り外されるが、面取り大腿骨切削ブロックは一対の外科用ピンに残る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の概念には様々な改変及び代替的形態が考えられるが、その特定の代表的な実施形態を図面に例として示し、本明細書において詳細に述べる。ただし、本開示の概念を開示される特定の形態に限定することを何ら意図するものではなく、その逆に、本発明は、添付の「特許請求の範囲」において定義される発明の趣旨及び範囲に包含されるすべての改変物、均等物、及び代替物を網羅することを意図するものである点は理解されるべきである。
【0023】
解剖学的参照を表す、前、後、内側、外側、上、下などの用語は、本明細書の全体を通じて、本明細書において述べられる整形外科用インプラント及び外科器具に関して、並びに患者の自然の解剖学的構造に関して使用され得る。これらの用語は、解剖学的構造の研究及び整形外科学の分野のいずれにおいても広く理解された意味を有するものである。明細書及び特許請求の範囲におけるこれらの解剖学的基準を表す用語の使用は、特に断らないかぎりは、それらの広く理解されている意味と一貫性を有するものとする。
【0024】
図1〜6を参照すると、膝関節置換術中に患者の大腿骨遠位端を切除するための整形外科用器具10の一実施形態が示されている。本明細書に記載の例示的な実施形態では、整形外科用器具10は、使い捨ての整形外科用器具として具現化される。その名前が示唆するように、使い捨ての整形外科用器具10は、1回の整形外科手技での使用後に廃棄されるように意図されている。本明細書に記載の例示的な実施形態では、整形外科用器具10は、患者の遠位大腿骨において2つの面取り切削を実施するときに外科医が使用するための分離可能な面取り切削ブロック14と共に、患者の遠位大腿骨において前方及び後方の切削を実施するときに外科医が使用するためのA/P大腿骨切削ブロック12と、を有する、使い捨てのフォー・イン・ツー型外科器具として具現化されている。換言すると、フォー・イン・ツー型整形外科用器具10の2つの切削ブロック12、14は、患者の遠位大腿骨に4つの切削(前方切削、後方切削、及び2つの面取り切削)を行うために使用される。
【0025】
使い捨ての器具として、A/P大腿骨切削ブロック12と面取り大腿骨切削ブロック14は、例えば、ポリアミド、ポリフェニルスルホン、又はポリケトンのようなポリマー材料から形成され得る。そのような実施形態では、ドリル及び外科用ピンのための切削案内面及びブッシングのような外科用器具を案内するために使用される表面は、例えば、鋼、チタン合金、又はコバルトクロム合金などの金属材料で形成される。そのような金属コンポーネント又は「インサート」の使用は、外科用ツールが器具のブロックのポリマー材料と接触するのを防ぐ。
【0026】
本明細書に記載の金属コンポーネントは、多くの異なる仕方でポリマー製の切削ブロックに固定され得る。例えば、金属コンポーネントをポリマー製の切削ブロックにオーバーモールドするか、別の何らかの方法で、ブロックの成形プロセスの一環としてそれに固定することができる。金属コンポーネントは、切削ブロックに溶接されてもよく、それらに接着剤で固定されてもよい。金属コンポーネントを固定する他の方法もまた使用され得る。
【0027】
A/P大腿骨切削ブロック12は、外面20、及び外面20の反対側に配置された骨係合面22を含む。A/P大腿骨切削ブロック12は、その前端26上に形成された前方切削面24を有する。前方切削面24は、内側/外側方向に延在する細長い面である。前方切削面24は、A/P大腿骨切削ブロック12の厚さ全体を通じて延在している。つまり、前方切削面24は、切削ブロックの外面20からその骨係合面22まで延在している。
図1及び2に見られるように、金属製の前方切削案内部28は、ポリマー製のA/P大腿骨切削ブロック12の前方切削面24に固定されている。前方切削案内部28は前方切削面24を裏打ちしており、捕捉されていない(つまり全ての面が閉じていない)切削案内部として具現化される。前方切削案内部28は、外科用のこぎり又は他の切削器具の刃(
図10を参照)を支持及び案内し、整形外科手術中に患者の大腿骨の前面を切除するために刃を配向するような大きさ及び形をしている。
【0028】
A/P大腿骨切削ブロック12は、その後端32の近くに形成された後方切削面30を有する。後方切削面30は、内側/外側方向に延在する細長い面である。後方切削面30は、A/P大腿骨切削ブロック12の厚さ全体に延在している。つまり、それは、切削ブロックの外面20から骨係合面22まで延在している。
図1に見られるように、金属製の後方切削案内部34は、ポリマー製のA/P大腿骨切削ブロック12の後方切削面30に固定されている。後方切削案内部34は、外科用のこぎり又は他の切削器具の刃(
図10を参照)を支持及び案内し、整形外科手術中に患者の大腿骨の後面を切除するために刃を配向するような大きさ及び形をしている。本明細書に記載の例示的な実施形態では、後方切削案内部34は、捕捉されていない切削案内部として具現化される。
【0029】
A/P大腿骨切削ブロック12は、その中間の近くに形成された面取りアクセス窓36を有する。具体的には、面取りアクセス窓36は、前方切削面24の後方及び後方切削面30の前方に位置づけられている。面取りアクセス窓36は、内側/外側方向に延在する細長い開口部である。面取りアクセス窓36は、A/P大腿骨切削ブロック12の厚さ全体を通じて延在している。つまり、それは、切削ブロックの外面20から骨係合面22まで延在しており、その結果、両方の表面に対して開いている。面取りアクセス窓36は、A/P切削ブロック12の側壁38によって画定される。
図1及び2に見られるように、側壁38の内側縁40及び外側縁42はV形であり、V形の縁40、42の「ポイント」は、A/P大腿骨切削ブロック12の外面20に画定される。そのような構成は、面取り大腿骨切削ブロック14の楔形の切削面(以下に説明)が面取りアクセス窓36内に入れ子状になることを可能にする。
【0030】
A/P大腿骨切削ブロック12は、その内部に形成された一対の細長いボス56、58を有する。内側ボス56は、面取りアクセス窓36の内側の近くに配置され、外側ボス58は、面取りアクセス窓36の外側の近くに配置される。ボス56、58は円筒形であり、それぞれが、それ自体を通って延在する細長い穴60を有する。
図1に示すように、ボス56、58の一端62は、A/P大腿骨切削ブロック12の外面20上に配置される。
図2及び5に見られるように、ボス56、58のそれぞれの遠位端64は、ブロックの骨係合側面22のV形の部分から外方に離れる方向に延在する。多数のスリット66が、ボス56、58の遠位端64に形成されて、畳み込まれることが可能なフランジすなわちクラッシュリブ68を形成する。以下に詳述するように、かかるクラッシュリブ68は、A/P大腿骨切削ブロック12を面取り大腿骨切削ブロック14に取り外し可能に固定するための例示的な雄コネクタを画定する。
【0031】
A/P大腿骨切削ブロック12は、一対の固定ピン又は案内ピン78を受容する大きさをした、その内部に画定された複数の案内穴76を有する。穴76は、前方切削面24と面取りアクセス窓36との間に配置され、切削ブロック12の外面20と骨係合面22との間に延在する。以下に詳述するように、穴76は、固定ピン78を取り外す必要なしに、外科医が患者の大腿骨上の切削ブロック12の位置を変えることを可能にするようにずれたパターンで配置される。
【0032】
A/P大腿骨切削ブロック12は、面取り切削窓36と後方切削面30との間に配置された別の複数の案内穴80もまた含む。案内穴80のそれぞれは、案内穴76と同様の仕方で固定ピン78の1つを受容する大きさをしており、したがって、切削ブロック12の外面20と骨係合面22との間に延在する。案内穴76と同様に、案内穴80は、固定ピン78を取り外す必要なしに、外科医が患者の大腿骨上の切削ブロック12の位置を変えることを可能にするようにずれたパターンで配置される。
【0033】
図2及び4に最もわかりやすく示されているように、面取り切削ブロック14は、A/P大腿骨切削ブロック12の骨係合面22に取り外し可能に固定される。面取り大腿骨切削ブロック14は、楔形の切削面82を有する。楔形の切削面82の「先行」端部84は、面取りアクセス窓36内に延び、A/P大腿骨切削ブロック12の骨係合面22の対応するV形の表面に収まるか、又は別の方法で接触する。面取り大腿骨切削ブロック14は楔形の切削面82の前面88に固定された金属製の平面の切削案内86を有し、金属製の平面の切削案内90は楔形の切削面82の後面92に固定されている。平面の切削案内86、90は、楔形の切削面82を裏打ちするように、互いに対して斜角に配置される。平面の切削案内86、90の長手方向軸は、内側/外側方向に延在する。
図12に示すように、切削案内86は前方の面取り切削の実行中ののこぎり刃を支持及び案内し、切削案内90は後方の面取り切削の実行中ののこぎり刃を支持及び案内するために使用される。
【0034】
面取り大腿骨切削ブロック14は、それ自体から外方に延在する一対のハンドル102を有する。ハンドル102の一方は、楔形の切削面82の内側端部104に固定され、もう一方のハンドル102は、その反対側の、楔形の切削面82の外側端部106に固定される。
図1及び3に示すように、A/P大腿骨切削ブロック12と面取り切削ブロック14とが互いに対して固定されているとき、内側ハンドル102はA/P大腿骨切削ブロック12の最も内側の縁108を外方に越えてそれから離れる方向に延在し、外側ハンドル102はA/P大腿骨切削ブロック12の最も外側の縁110を外方に越えてそれから離れる方向に延在する。以下に詳述するように、外科医は、面取り大腿骨切削ブロック14を用いた面取り切削の実行中にハンドル102を把持することができる。
【0035】
図2及び6に見られるように、面取り大腿骨切削ブロック14の外面112は、それ自体の内部に形成された一対の細長い穴114を有する。細長い穴114は、A/P大腿骨切削ブロック12のボス56、58の遠位端64を受容する大きさ及び配置を有する。具体的には、ボス56、58の遠位端64の外径は、面取り大腿骨切削ブロック14の細長い穴114の内径よりわずかに大きく、したがって、ボス56、58の遠位端64が細長い穴114内に配置されたときに、クラッシュリブ68はわずかに内方に偏向される。これは、A/P大腿骨切削ブロック12と面取り大腿骨切削ブロック14との間に締まりばめ接続を作り出す。換言すると、上述のように、本明細書に記載の例示的な実施形態では、ボス56、58の遠位端64に形成されたクラッシュリブ68は、A/P大腿骨切削ブロック12を面取り大腿骨切削ブロック14に取り外し可能に固定するための例示的な雄締まりばめコネクタを画定する。かかる実施形態では、細長い穴114及びそれらの穴を画定する側壁116は、それに対応する雌締まりばめコネクタとして機能する。
【0036】
図7及び8に見られるように、面取り大腿骨切削ブロック14の細長い穴114は、A/P大腿骨切削ブロック12のボス56、58に形成された細長い穴60と整列する。そのようにして、それらの2つの穴セットは、患者の遠位大腿骨(
図9を参照)に整形外科用器具10をピン止めするための固定又は案内ピンを受容するピン案内穴として、及び所望により、外科医が望む場合に案内ピンの設置の前に患者の大腿骨を予め穴ぐりし得るドリルとして、機能する。
【0037】
上述のように、ボス56、58の遠位端64に形成されたクラッシュリブ68は例示的な雄締まりばめコネクタを画定し、このコネクタは、A/P大腿骨切削ブロック12を面取り大腿骨切削ブロック14に取り外し可能に固定するために、面取り大腿骨切削ブロック14の細長い穴114(及び穴を画定する側壁116)によって画定される雌締まりばめコネクタと係合する。A/P大腿骨切削ブロック12を面取り大腿骨切削ブロック14から分離するには、外科医は、外科用槌又は同様の物を用いて面取り大腿骨切削ブロックの楔形の切削面72の「先行」縁74に衝撃を及ぼす。
図1に見られるように、外科用槌を用いて及ぼすそのような衝撃を可能にするために、A/P大腿骨切削ブロックの面取りアクセス窓36を通じて楔形の切断面72の先行縁74にアクセス可能である。槌で衝撃を与えることは、2つの切削ブロック12、14間の締まりばめを破壊し、それにより、ボス56、58の遠位端64に形成されるクラッシュリブ68が面取り大腿骨切削ブロック14の細長い穴114から取り外される。そのような衝撃はまた、面取り大腿骨切削ブロック14の骨係合表面120から外方に延在する一対のスパイク118を患者の遠位大腿骨の骨組織内に打ち込む。外科医の衝撃によっていったん分離されたら、A/P大腿骨切削ブロック12を面取り大腿骨切削ブロック14から取り外すことができる。
【0038】
本明細書に記載のクラッシュリブ構成の代わりに、他の型式の締まりばめコネクタを使用し得ることを理解されたい。本明細書に記載の実施形態は、本質的に例示的なものであり、スナップ嵌め合い構成などのような多くの他の締まりばめ構成を使用し得る。締まりばめコネクタの使用は、2つのブロック12、14を単一の予め設置された器具として提供することを可能にし、A/P大腿骨切削ブロック12の使用による前方及び後方の切削を実施中に両方のブロック12、14が設置され得る一方で、面取り切削の実施のために面取り大腿骨切削ブロック14を使用中に、A/P大腿骨切削ブロック12を比較的容易に取り外すこともまた可能にする。そのような予め設置された器具は使い易く、面取り切削による前方切削と後方切削の整列の改善を可能にする。
【0039】
手術中、外科医は、整形外科用器具10を使用して、人工大腿骨コンポーネントを受容するように患者の大腿骨18の遠位端16を準備することができる。そのために、外科医は整形外科用器具10を患者の大腿骨18に固定し、その後、器具10の金属製の切削案内を使用して、患者の大腿骨18の遠位端16の一連の4つの切除を行うために、切削のこぎり刃を案内することができる。
【0040】
整形外科手技中、外科医は最初に患者の大腿骨18の遠位端16を切除して、外科的に準備された遠位表面122を作り出す。次いで外科医は、
図9に示すように、患者の大腿骨18の外科的に準備された遠位表面122に一対の固定ピン78を固定し得る。そうするために、外科医は、人工大腿骨コンポーネントに対して患者の大腿骨18のサイズ調整をし、大腿骨の回転を設定し得る。大腿骨のサイズ調整及び回転設定手技中に固定ピンを位置づけるための代表的な1つの手技は、参照により本明細書に明示的に組み込まれるSIGMA(登録商標)Fixed Reference Surgical Technique(DePuy Orthopaedics,Inc.(2010))に記載されている。大腿骨コンポーネントのサイズ調整及び回転設定の後、外科医は固定ピン78を患者の大腿骨18の外科的に準備された遠位表面122に取り付けることができる。
【0041】
固定ピン78を取り付けた後、外科医は、整形外科用器具10(A/P大腿骨切削ブロック12と面取り大腿骨切削ブロック14との両方を含む)を患者の大腿骨18の外科的に準備された遠位表面122に配置し得る。そうするために、外科医は、固定ピン78のシャフト124をA/P大腿骨切削ブロック12の一対の案内穴76と整列させることができる。次いで、外科医はA/P大腿骨切削ブロック12(及びしたがって、それに固定されている面取り大腿骨切削ブロック)を、患者の大腿骨18の外科的に準備された遠位表面122に向かう方向に、シャフト124の上で進めることができる。A/P大腿骨切削ブロック12の骨係合面22は、
図10に示すように、器具10が患者の大腿骨18の遠位端16上に配置されたときに、外科的に準備された遠位表面122と接触する。外科医がA/P大腿骨切削ブロック12の場所を変えることを望む場合、外科医は案内穴76の別の組み合わせを使用して、患者の大腿骨18上の切削ブロック12の位置を変えることができる。追加的な固定が必要な場合、外科医は、A/P大腿骨切削ブロック12に画定されている案内穴80を通じて追加の固定ピン78を挿入することができる。
【0042】
そのようにしていったん設置されたら、外科医はA/P大腿骨切削ブロック12を使用して、患者の大腿骨18の遠位端16の多くの切除を行うことができる。例えば、
図10に示すように、前方切削案内28は、患者の大腿骨18の遠位端16を通じて延在する切除平面を画定する。外科医は、例えば、外科用切削のこぎり126のような切削ツールを前方切削案内28に沿って進めて、患者の大腿骨18に係合させ、外科用のこぎり96を操作して、人工大腿骨コンポーネントを受容するように患者の大腿骨18の前面を外科的に準備することができる。外科医は、同様に、患者の大腿骨18の後方顆128を切除するために後方切削案内34を使用し、人工大腿骨コンポーネントを受容するように患者の大腿骨18の後面を外科的に準備することができる。
【0043】
図11及び12に示すように、外科医はまた、整形外科用器具10、とりわけ面取り大腿骨切削ブロック14を使用して、患者の大腿骨18を面取り切削することもできる。そのために、外科医は最初に金属製ブッシング56、58の細長い穴60を通じて固定ピン78を挿入し得る。そのようにすることはまた、面取り大腿骨切削ブロック14の細長い穴114を固定ピン78に通過させる。案内穴76、80内に配置されている固定ピン78は面取り切削プロセスの邪魔になるので、次いで外科医は、案内穴76、80から固定ピン78を取り出すことができる。
【0044】
次いで外科医は、外科用槌又は同様の物を用いて、面取り大腿骨切削ブロックの楔形の切削面72の「先行」縁74(A/P大腿骨切削ブロックの面取りアクセス窓36を通じてアクセス可能である)に衝撃を及ぼすことができる。そのような衝撃が、2つの切削ブロック12、14間の締まりばめを破壊することにより、ボス56、58の遠位端64に形成されたクラッシュリブ68が面取り大腿骨切削ブロック14の細長い穴114から外される。そのような衝撃はまた、面取り大腿骨切削ブロックのスパイク118を患者の遠位大腿骨の骨組織に打ち込む。
図11に示すように、外科医の槌の衝撃によっていったん分離されたら、A/P大腿骨切削ブロック12は大腿骨ピン78に沿って摺動し得るようになり、その結果、面取り大腿骨切削ブロック14からの取り外しが可能になる。
【0045】
図12に示すように、次いで外科医は、前方の面取り切除の実施中に金属製の切削案内86に沿ってのこぎり126を支持及び案内するために、及びその後に、後方の面取り切削を実施中に金属製の切削案内90に沿ってのこぎり126を支持及び案内するために、外科用切断のこぎり126を進めることができる。そのような面取り切削の実施中に、外科医はハンドル102を把持して切削プロセスを更に安定させることができる。
【0046】
以上、図面及び上記の説明文において本開示内容を詳細に図示、説明したが、こうした図示、説明はその性質上、例示的なものとみなすべきであって、限定的なものとみなすべきではなく、あくまで例示的実施形態を示し、説明したものにすぎないのであって、本開示の趣旨の範囲に含まれる変更及び改変はすべて保護されることが望ましい点は理解されるであろう。
【0047】
本開示は、本明細書において述べた方法、装置、及びシステムの様々な特徴に基づく多くの利点を有するものである。本開示の方法、装置、及びシステムの代替的実施形態は、ここで述べた特徴のすべてを含むわけではないが、こうした特徴の利点の少なくとも一部から利益を享受するものであることに留意されよう。当業者であれば、本発明の1つ又は2つ以上の特徴を取り入れた、特許請求の範囲において定義される本開示の趣旨及び範囲に包含される方法、装置、及びシステムを独自に容易に実施することが可能である。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 整形外科用器具であって、
(i)前方切削面、(ii)後方切削面、(iii)前記前方切削面と前記後方切削面との間に配置された面取りアクセス窓、及び(iv)締まりばめコネクタを有する、A/P大腿骨切削ブロックと、
面取り大腿骨切削ブロックであって、(i)前記面取りアクセス切削窓に配置される楔形の面取り切削面、及び(ii)前記面取り大腿骨切削ブロックを前記A/P大腿骨切削ブロックに取り外し可能に固定するために前記A/P大腿骨切削ブロックの前記締まりばめコネクタに接続される締まりばめコネクタを有する、面取り大腿骨切削ブロックと、を備える、整形外科用器具。
(2) 前記面取り大腿骨切削ブロックの前記締まりばめコネクタが、それ自体の内部に形成された細長い穴を有する雌コネクタを備え、
前記A/P大腿骨切削ブロックの前記締まりばめコネクタが、前記面取り大腿骨切削ブロックの前記雌コネクタの前記細長い穴に受容される細長いボスを有する雄コネクタを備える、実施態様1に記載の整形外科用器具。
(3) 前記A/P大腿骨切削ブロックの前記雄コネクタの前記細長いボスの遠位端が、多数のクラッシュリブを備える、実施態様2に記載の整形外科用器具。
(4) 前記細長いボスが、それ自体を通って形成された穴を有し、
前記A/P大腿骨切削ブロックの前記雄コネクタの前記細長いボスの前記穴が、前記面取り大腿骨切削ブロックの前記雌コネクタの前記細長い穴と整列して、ピン案内穴を画定する、実施態様2に記載の整形外科用器具。
(5) 前記面取り大腿骨切削ブロックが、更に、
前記楔形の切削面の外側端に固定された、前記A/P大腿骨切削ブロックの最も外側の縁から外方に離れる方向に延在する外側ハンドル、及び
前記楔形の切削面の内側端に固定された、前記A/P大腿骨切削ブロックの最も内側の縁から外方に離れる方向に延在する内側ハンドルを有する、実施態様1に記載の整形外科用器具。
【0049】
(6) 前記A/P大腿骨切削ブロックがポリマー製のA/P大腿骨切削ブロックを備え、
前記面取り大腿骨切削ブロックがポリマー製の面取り大腿骨切削ブロックを備える、実施態様1に記載の整形外科用器具。
(7) 前記前方切削面に固定された金属製の前方切削案内、
前記後方切削面に固定された金属製の後方切削案内、及び
前記面取り切削面に固定された金属製の面取り切削案内を更に備える、実施態様6に記載の整形外科用器具。
(8) 前記面取り大腿骨切削ブロックが、更に、
前記楔形の切削面が画定されている外面、
前記外面の反対側の骨係合面、及び
前記骨係合面から外方に離れる方向に延在する多数のスパイクを有する、実施態様1に記載の整形外科用器具。
(9) 整形外科用器具であって、
前方切削面及び後方切削面を有するポリマー製のA/P大腿骨切削ブロックと、
前記前方切削面に固定された金属製の前方切削案内と、
前記後方切削面に固定された金属製の後方切削案内と、
前記ポリマー製のA/P大腿骨切削ブロックに取り外し可能に固定されたポリマー製の面取り大腿骨切削ブロックであり、(i)前記面取りアクセス切削窓に配置される楔形の面取り切削面、(ii)前記楔形の切削面の外側端に固定された、前記A/P大腿骨切削ブロックの最も外側の縁から外方に離れる方向に延在する、外側ハンドル、及び(iii)前記楔形の切削面の内側端に固定された、前記A/P大腿骨切削ブロックの最も内側の縁から外方に離れる方向に延在する内側ハンドル、を有する、ポリマー製の面取り大腿骨切削ブロックと、
前記面取り切削面に固定された金属製の面取り切削案内と、を備える、整形外科用器具。
(10) 前記ポリマー製のA/P大腿骨切削ブロックが、締まりばめコネクタを更に有し、
前記ポリマー製の面取り切削ブロックが、前記面取り大腿骨切削ブロックを前記A/P大腿骨切削ブロックに取り外し可能に固定するために前記A/P大腿骨切削ブロックの前記締まりばめコネクタに接続される締まりばめコネクタを更に有する、実施態様9に記載の整形外科用器具。
【0050】
(11) 前記面取り大腿骨切削ブロックの前記締まりばめコネクタが、それ自体の内部に形成された細長い穴を有する雌コネクタを備え、
前記A/P大腿骨切削ブロックの前記締まりばめコネクタが、前記面取り大腿骨切削ブロックの前記雌コネクタの前記細長い穴に受容される細長いボスを有する雄コネクタを備える、実施態様10に記載の整形外科用器具。
(12) 前記A/P大腿骨切削ブロックの前記雄コネクタの前記細長いボスの遠位端が、多数のクラッシュリブを備える、実施態様11に記載の整形外科用器具。
(13) 前記細長いボスが、それ自体を通って形成された穴を有し、
前記A/P大腿骨切削ブロックの前記雄コネクタの前記細長いボスの前記穴が、前記面取り大腿骨切削ブロックの前記雌コネクタの前記細長い穴と整列して、ピン案内穴を画定する、実施態様11に記載の整形外科用器具。
(14) 前記面取り大腿骨切削ブロックが、更に、
前記楔形の切削面が画定されている外面、
前記外面の反対側の骨係合面、及び
前記骨係合面から外方に離れる方向に延在する多数のスパイクを有する、実施態様9に記載の整形外科用器具。
(15) 膝関節置換術の実施中に患者の大腿骨の遠位端を切除する方法であって、
前記患者の大腿骨の前記遠位端に整形外科用器具を固定することにおいて、前記整形外科用器具が、A/P大腿骨切削ブロックと、前記A/P大腿骨切削ブロックに取り外し可能に固定される面取り大腿骨切削ブロックと、を備える、ことと、
前記A/P大腿骨切削ブロックの使用によって前記患者の大腿骨の前記遠位端の前方切削及び後方切削を実施することと、
前記面取り大腿骨切削ブロックが前記患者の大腿骨の前記遠位端に固定されたまま残るように、前記面取り大腿骨切削ブロックから前記A/P大腿骨切削ブロックを取り外すことと、
前記面取り大腿骨切削ブロックの使用によって、前記患者の大腿骨の前記遠位端の面取り切削を実施することと、を含む、方法。
【0051】
(16) 前記A/P大腿骨切削ブロックを前記面取り大腿骨切削ブロックから取り外すことが、前記大腿骨切削ブロックを前記面取り大腿骨切削ブロックから分離するために前記面取り大腿骨切削ブロックに衝撃を及ぼすことを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記A/P大腿骨切削ブロックを前記面取り大腿骨切削ブロックから取り外すことが、(i)前記面取り大腿骨切削ブロックから前記A/P大腿骨切削ブロックを分離し、(ii)前記面取り大腿骨切削ブロックの多数のスパイクを前記患者の大腿骨の前記遠位端に打ち込むために、前記面取り大腿骨切削ブロックに衝撃を及ぼすことを含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記A/P大腿骨切削ブロックを前記面取り大腿骨切削ブロックから取り外すことが、前記A/P大腿骨切削ブロックと前記面取り大腿骨切削ブロックとの間の締まりばめ接続を分離することを含む、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記A/P大腿骨切削ブロックを前記面取り大腿骨切削ブロックから取り外すことが、前記面取り大腿骨切削ブロックが一対の外科用ピン上に残るように、前記A/P大腿骨切削ブロックを前記一対の外科用ピンから取り外すことを含む、実施態様15に記載の方法。