(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係るミラーデバイスを示す断面図である。
【0011】
図1においては、ミラーデバイスMはセル化されたエレクトロデポジション方式のデバイスであり、ガラスもしくはポリカーボネートよりなる平行な透明基板1、2と、透明基板1、2の内面に形成されたITOよりなる透明電極層3、4と、透明シール部5と、透明電極層3、4間に封入され、透明シール部5によってシールされた電解液6とにより構成されている。
【0012】
図1のミラーデバイスMにおいては、透明電極層3、4間が電圧無印加状態では、透明状態となる。他方、透明電極層3、4間に1.5〜8V程度の正バイアス直流電圧を印加すると、負電位側に還元によりAg膜が表面に形成されてミラー状態となる。つまり、ミラーデバイスMは透明状態とミラー状態との切替可能なデバイスとなる。この場合、ミラー状態は電解液6中に含まれている銀イオンが負電位側の透明電極層付近で金属の銀に変化して析出(エレクトロデポジション)することによって発生する。透明状態に戻すには、電圧無印加状態にするが、逆バイアス直流電圧たとえば-1Vを印加すれば、迅速に透明状態に戻る。
【0013】
たとえば、
図1のミラーデバイスMをAgが析出する透明電極層の反対の透明基板からハロゲン光源による測定光を入射して分光器で反射光を測定した結果を
図2の(A)に示す。他方、
図1のミラーデバイスをAgが析出する透明電極層側の透明基板よりハロゲン光源による測定光を入射して分光器で透過光を測定した結果を
図2の(B)に示す。
図2によれば、電圧無印加状態では、反射率Rが低く透過率Tが高い透明状態となり、他方、たとえば2.5Vの電圧印加状態では、反射率Rが高く透過率Tが低いミラー状態となる。
【0014】
図1のミラーデバイスの製造方法を
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0015】
始めに、透明電極層形成工程301にて、各透明基板1、2上にITOよりなる透明電極層3、4をマグネトロンスパッタリング法、化学的気相成長(CVD)法あるいは蒸着法により形成する。必要に応じて透明電極層3、4をSUSマスクを用いたエッチング法あるいはフォトリソグラフィ/エッチング法によりパターン化する。
【0016】
次に、ギャップ制御剤散布工程302にて、一方の透明基板上に20μm〜数100μmたとえば100μmのギャップ制御剤を1〜3個/mm
2散布する。尚、ギャップ制御剤の代りに、リブ等の突起でもよい。また、小型のセルの場合、後述のシール部にフィルム状のスペーサを設けてもよい。
【0017】
次に、シールパターン形成工程303にて、一方の透明基板上にシールパターンを形成する。シールパターンは、透明かつ光散乱しない紫外線及び熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂もしくは熱硬化型樹脂よりなる。この場合、電解液に耐える樹脂が好ましい。
【0018】
次に、電解液滴下工程304にて、シールパターンが形成された透明基板上に電解液を液晶滴下(ODF)法により滴下する。尚、滴下方法は、ディスペンサ、インクジェットを含む各種の印刷法を用いることができる。
【0019】
電解液としては、溶媒中に50mMのAgNO
3等のAgを含むエレクトロクロミック剤を添加し、また、250mMのLiBr等の支持電解質を添加し、10mMのCuCl
2等のメディエータを添加する。
【0020】
尚、溶媒は、エレクトロクロミック剤等を安定的に保持することができるものであれば限定されない。たとえば、水や炭酸プロピレン等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、あるいはイオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等である。具体的には、炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を用いることができる。
【0021】
また、支持電解質は、エレクトロクロミック剤のAgの酸化還元反応等を促進するものであれば限定されず、たとえば、LiCl、LiBr、LiI、LiBF
4、LiClO
4等のリチウム塩、KCl、KBr、KI等のカリウム塩、NaCl、NaBr、NaI等のナトリウム塩が好ましい。支持電解質の濃度は、たとえば10mM以上1M以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0022】
さらに、メディエータはAgよりも電気化学的に低いエネルギーで酸化還元を行う材料であって、メディエータの酸化体がAgから随時電子を授受することによって酸化による消色反応を補助する。メディエータの材料はこのような機能を発揮する材料であれば限定されないが、銅(Cu)イオンの塩が好ましい。メディエータの濃度はたとえば5mM以上20mM以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。CuイオンとAgイオンとの濃度比は0.1〜0.3が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0023】
電解質をゲル化する場合には、ビニルブキラール(PVB)等の10wt%ホストポリマを添加する。
【0024】
次に、基板貼合せ工程305にて、真空中、大気中もしくは窒素雰囲気で電解液が滴下された一方の透明基板に他方の透明基板を貼合せる。
【0025】
最後に、シールパターン硬化工程306において、たとえばエネルギー6J/cm
2の紫外線を照射してシールパターンを硬化させて透明シール部5を形成する。この場合、シールパターンのみに紫外線が照射されるように、SUS等よりなるマスクを用いる。
【0026】
図4、
図5は本発明に係る照明装置の第1の実施の形態を示し、
図4はオフ状態の断面図、
図5はオン状態の断面図である。
【0027】
図4、
図5の照明装置は車両のリアウィンドウW1のシースルーストップランプに適用され、ミラーデバイスM1及びミラーデバイスM1上に積層された面発光ユニットU1により構成されている。
【0028】
ミラーデバイスM1は
図1のミラーデバイスMと同一のセル化構造であり、つまり、透明基板1、2、矩形状にパターン化された透明電極層3、4、透明シール部5、及び電解液6によって構成される。
【0029】
面発光ユニットU1は、導光板であって、たとえばポリカーボネートよりなる平行な透明基板11、12、透明基板12上に設けられた突起状のローレット13、及び透明基板11、12の光入射端F1に設けられた光源たとえば砲弾型の赤色発光ダイオード(LED)素子14によって構成される。ローレット13の密度は光入射端F1から離れる程、高くなり、従って、光出射面F2から出射される光が均一となる。このとき、ローレット13を最適化することによりLED素子14の光がLED素子14の反対側の導光板の終端F3に到達するまでにすべての光を光出射面F2から出射されるようにできる。尚、面発光ユニットU1はローレットを形成した導光板によって構成しているが、出射面F2から出射される光が均一となる他の導光板でもよい。
【0030】
ミラーデバイスM1及び面発光ユニット(導光板)U1は制御回路C1によって制御される。制御回路C1はたとえばマイクロコンピュータにより構成される。尚、制御回路C1はLED素子14と共にリアウィンドウW1以外の車両部分に配置され、運転者の視界に入らないようにする。
【0031】
図4においては、ミラーデバイスM1及び面発光ユニット(導光板)U1は共に制御回路C1によってオフ状態となっている。この場合、ミラーデバイスM1の透明基板1、2、透明電極層3、4、透明シール部5及び電解液6(わずかに黄色味)は全体として透明である。他方、面発光ユニット(導光板)U1においては、ローレット13による凹凸は微細であるので、透明基板11、12はほぼ透明であり、また、LED素子14はリアウィンドウW1の下、上もしくは横の車両の透明でない場所に配置されているので、面発光ユニット(導光板)U1の全体は透明である。従って、ミラーデバイスM1及び面発光ユニット(導光板)U1は素通しであり、運転者の視界を遮らない。この結果、運転者の後方視界を確保できる。
【0032】
他方、
図5においては、運転者がブレーキを踏むと、制御回路C1はこれを検出してミラーデバイスM1及び面発光ユニット(導光板)U1をオン状態とする。この場合、面発光ユニット(導光板)U1においては、LED素子14がオンとされてLED素子14から出射した光は光入射端F1からローレット13を反射して反射角度を変えながら導光板内を進み、光出射面F2よりブレーキランプ光L1として出射する。このとき、導光板内のローレット13で反射されなかった光が下の透明基板12から光L2として車内側に向かう。この光L2はそのまま車内に入ってしまうと運転者にとって運転の妨げとなって危険である。
図5においては、この光L2はミラーデバイスM1によって反射されてリアウィンドウW1へ戻される。すなわち、ミラーデバイスM1においては、透明電極層3、4間に正バイアス直流電圧を印加する。たとえば、透明電極層3に接地電圧が印加され、透明電極層4に正の電圧が印加される。この結果、透明電極層3上にAg膜が形成されてミラー状態となる。従って、光L2はミラーデバイスM1の透明電極層3上のAg膜によって反射されてリアウィンドウW1側へ戻されて導光板の光出射面F2から出射される。この結果、光L2が運転者の視界を遮ることはない。また、同時に、ブレーキランプの輝度を光L2の分だけ大きくできる。
【0033】
尚、運転者がブレーキを踏んだときには、制御回路C1はミラーデバイスM1及び面発光ユニット(導光板)U1を同時にオンにするが、一般に、ミラーデバイスM1の応答速度は面発光ユニット(導光板)U1の応答速度より0.1〜0.5秒程度遅いので、一瞬、光L2が車内に入る。これを防止するために、面発光ユニット(導光板)U1の点灯時間を一瞬だけ遅らせることもできる。
【0034】
また、運転者がブレーキを戻すと、制御回路C1はミラーデバイスM1の透明電極層3、4間の電圧を0Vとするが、上述のごとく、一般に、ミラーデバイスM1の応答速度は遅い。ミラーデバイスM1を迅速にオフとするために、制御回路C1は透明電極層3、4間に負バイアス直流電圧を瞬時印加することもできる。たとえば、透明電極層3に接地電圧を印加し、透明電極層4に−1Vを印加する。
【0035】
さらに、
図4、
図5においては、ミラーデバイスM1の透明基板1と面状発光ユニット(導光板)U1の透明基板12とを共用つまり単一の透明基板とすることもできる。
【0036】
図6、
図7は本発明に係る照明装置の第2の実施の形態を示し、
図6はオフ状態の断面図、
図7はオン状態の断面図である。
【0037】
図6、
図7の照明装置は車両のリアウィンドウW2のシースルーストップランプに適用され、ミラーデバイスM2及びミラーデバイスM2上に積層された面発光ユニット
U2により構成されている。
【0038】
ミラーデバイスM2は
図1のミラーデバイスMと同一のセル化構造であり、つまり、透明基板1、2、透明電極層3、4、透明シール部5、及び電解液6によって構成される。但し、透明電極層3、4は矩形状にパターン化されているが、文字や図形などの所望の形状にすることも可能であり、また、後述するごとく、必要に応じて透明電極層3、4は交差するストライプ状にパターン化される。
【0039】
面発光ユニットU2は、ガラスあるいはポリカーボネートよりなる2枚の透明基板21、22、各透明基板21、22の内側に形成されたITOよりなる2つの透明電極層23、24、及び透明電極層23、24間に電気的接続され、マトリクス状に配列された複数の光源たとえば下側にp側電極、上側にn側電極を有す
るベアタイプの赤色LED素子25によって構成される。この場合、LED素子25以外は透明であり、しかも、LED素子25は近くで観察しないと視認できない程度に非常に小さい。従って、面発光ユニットU2は透明光源と称することができる。但し、透明電極層23、24は矩形状にパターン化されているが、文字や図形などの所望の形状にすることが可能であり、また、後述するごとく、必要に応じて透明電極層23、24は交差するストライプ状にパターン化される。また、LED素子25は面発光ユニット(透明光源)U2内に存在するので、
図4、
図5の光入射面F1は存在しない。
【0040】
ミラーデバイスM2及び面発光ユニット(透明光源)U2は制御回路C2によって制御される。制御回路C2はたとえばマイクロコンピュータにより構成される。尚、制御回路C2はリアウィンドウW2以外の車両部分に配置されるので、運転者の視界に入らない。
【0041】
図6においては、ミラーデバイスM2及び面発光ユニット(透明光源)U2は共に制御回路C2によってオフ状態となっている。この場合、ミラーデバイスM2は全体として透明である。他方、面発光ユニット(透明光源)U2全体も透明である。従って、ミラーデバイスM2及び面発光ユニット(透明光源)U2は素通しであり、運転者の視界を遮らない。この結果、運転者の後方視界を確保できる。
【0042】
他方、
図7においては、運転者がブレーキを踏むと、制御回路C2はこれを検出してミラーデバイスM2及び面発光ユニット(透明光源)U2をオン状態とする。この場合、面発光ユニット(透明光源)U2においては、LED素子25がオンとされてLED素子25から四方八方に出射した光は光出射面F2よりブレーキランプ光L1として出射する。このとき、LED素子25からの光の一部は光L2として車内側に向かう。この光L2はそのまま車内に入ってしまうと運転者にとって運転の妨げとなって危険である。
図7においては、この光L2はミラーデバイスM2によって反射されてリアウィンドウW2へ戻される。すなわち、ミラーデバイスM2において、透明電極層3、4間に正バイアス直流電圧を印加する。従って、光L2はミラーデバイスM2のAg膜によって反射されてリアウィンドウW2側へ戻されて透明光源の光出射面F2から出射される。この結果、光L2が運転者の視界を遮ることはない。また、同時に、ブレーキランプの輝度を迷光の分だけ大きくできる。
【0043】
尚、運転者がブレーキを踏んだときには、制御回路C2はミラーデバイスM2及び面発光ユニット(透明光源)U2を同時にオンにするが、一般に、ミラーデバイスM2の応答速度は面発光ユニット(透明光源)U2の応答速度より0.1〜0.5秒程度遅いので、一瞬、光L2が車内に入る。これを防止するために、面発光ユニット(透明光源)U2の点灯時間を一瞬だけ遅らせることもできる。
【0044】
また、この場合も、運転者がブレーキを戻すと、制御回路C2はミラーデバイスM2の透明電極層間の電圧を0とするが、上述のごとく、一般に、ミラーデバイスM2の応答速度は遅い。ミラーデバイスM2を迅速にオフとするために、制御回路C2はミラーデバイスM2の透明電極層間に負バイアス電圧を瞬時印加することもできる。
【0045】
さらに、
図6、
図7においても、ミラーデバイスM2の透明基板1と面状発光ユニット(透明光源)U2の透明基板
22とを共用つまり単一の透明基板とすることもできる。また、ミラーデバイスM2及び面発光ユニットU2の透明基板は平板状の基板のみならずフィルム状の基板を用いてもよい。特に、すべての透明基板をフィルム状とすることでフレキシブルな装置とすることができる。
【実施例】
【0046】
次に、
図6、
図7の第2の実施の形態の実施例について説明する。
【0047】
図8は第1の実施例を示し、(A)−1はミラーデバイスM2の上面図、(A)−2は(A)−1のA−A線断面図、(B)−1は面発光ユニット(透明光源)U2の上面図、(B)−2は(B)−1のB−B線断面図、(C)−1はミラーデバイスM2上に面発光ユニット(透明光源)U2を貼り合せた後の照明装置の上面図、(C)−2は(C)−1のC−C線断面図である。
【0048】
図8の(A)−1、(A)−2のミラーデバイスM2においては、透明電極層3、4は透明基板1、2に表示面内全体に広がる矩形状にパターン化されており、従って、ミラー可能領域Rは透明電極層3、4が重複する広い領域となる。
【0049】
他方、
図8の(B)−1、(B)−2の面発光ユニット(透明光源)U2においては、透明電極層23、24は異なる方向たとえば直交する方向でストライプ形状にパターン化されており、透明電極層23、24の重複部分に12(=4×3)個のLED素子25が挿入されている。
【0050】
図8の(C)−1、(C)−2に示すように、
図8の(A)−1、(A)−2のミラーデバイスM2上に
図8の(B)−1、(B)−2の面発光ユニット(透明光源)U2を貼り合せると、LED素子25はミラー可能領域Rに完全に入る。従って、ミラーデバイスM2がオンとされたミラー状態にあっては、面発光ユニット(透明光源)U2のLED素子25から車内側に向かう光はミラーデバイスM2のミラー可能領域Rのミラー状態によって完全に反射されて面発光ユニット(透明光源)U2から出射される。
【0051】
尚、
図8においては、製造の便宜上から、ミラーデバイスM2の透明基板1、2及び面発光ユニット(透明光源)U2の透明基板21、22は同一の大きさとする。
【0052】
図8の第1の実施例においては、所定の透明電極層23、24を選択してLED素子25を部分的に発光させることができる。
【0053】
図9は第2の実施例を示し、(A)−1はミラーデバイスM2’の上面図、(A)−2は(A)−1のA−A線断面図、(B)−1は面発光ユニット(透明光源)U2の上面図、(B)−2は(B)−1のB−B線断面図、(C)−1はミラーデバイスM2’上に面発光ユニット(透明光源)U2を貼り合せた後の照明装置の上面図、(C)−2は(C)−1のC−C線断面図である。
【0054】
図9の(B)−1、(B)−2に示す面発光ユニットU2は
図8の(B)−1、(B)−2に示す面発光ユニットU2と同一である。
【0055】
図9の(A)−1、(A)−2のミラーデバイスM2’においては、透明電極層3’、4’は互いに異なる方向たとえば直交方向でストライプ形状にパターン化されており、従って、ミラー可能領域R’は透明電極層3’、4’が重複する狭い領域となる。この場合、透明電極層3’、4’のストライプ形状は面発光ユニット(透明光源)U2の透明電極層23、24のストライプ形状と同一である。従って、透明電極層3’、4’の重複部分つまりミラー可能領域R’は12(=4×3)個となる。
【0056】
図9の(C)−1、(C)−2に示すように、
図9の(A)−1、(A)−2のミラーデバイスM2’上に
図9の(B)−1、(B)−2の面発光ユニット(透明光源)U2を貼り合せると、LED素子25が中心に存在する透明電極層23、24の重複部分とミラー可能領域R’とが一致し、しかも、LED素子25のサイズを透明電極層3’、4’、23、24の幅より十分小さくすることにより、LED素子25はミラー可能領域R’に完全に入る。従って、ミラーデバイスM2’がオンとされたミラー状態にあっては、面発光ユニット(透明光源)U2のLED素子25から車内側に漏れる光はミラーデバイスM2’のミラー可能領域R’のミラー状態によって完全に反射されて面発光ユニット(透明光源)U2から出射される。
【0057】
図9の第2の実施例においては、
図8の第1の実施例と同様に、所定の透明電極層23、24を選択してLED素子25を部分的に発光させることができる。また、同時に、透明電極層23、24と同様の選択により透明電極層3’、4’を選択することにより、発光するLED素子25に対応するミラー可能領域R’のみをミラー状態にできる。これにより、必要最小限のミラー状態により運転者の後方の視認性が悪くなることを最小限に抑えることができる。さらに、ミラー状態とする透明電極層3’、4’の面積が小さくなるので、ミラーデバイスM2’の応答速度を大きくたとえば0.1sec程度にできる。また、ミラー状態としない領域は透明なままにすることができる。
【0058】
図10は第3の実施例を示し、(A)−1はミラーデバイスM2”の上面図、(A)−2は(A)−1のA−A線断面図、(B)−1は面発光ユニット(透明光源)U2の上面図、(B)−2は(B)−1のB−B線断面図、(C)−1はミラーデバイスM2”上に面発光ユニット(透明光源)U2を貼り合せた後の照明装置の上面図、(C)−2は(C)−1のC−C線断面図である。
【0059】
図10の(B)−1、(B)−2に示す面発光ユニットU2は
図8の(B)−1、(B)−2に示す面発光ユニットU2と同一である。
【0060】
図10の(A)−1、(A)−2のミラーデバイスM2”においては、
図9の(A)−1、(A)−2のミラーデバイスM2’に対して、透明基板1と透明電極層3’との間のミラー可能領域R’に同心微小レンズ7を追加した。
【0061】
図10の(C)−1、(C)−2に示すように、
図10の(A)−1、(A)−2のミラーデバイスM2”上に
図10の(B)−1、(B)−2の面発光ユニット(透明光源)U2を貼り合せると、LED素子25はミラー可能領域R’の同心微小レンズ7に対向する。従って、ミラーデバイスM2”がオンとされたミラー状態にあっては、面発光ユニット(透明光源)U2のLED素子25から車内側に漏れる光はミラーデバイスM2”のミラー可能領域R’の同心微小レンズ7によるミラー状態によってより完全に反射されて面発光ユニット(透明光源)U2から出射される。
【0062】
図11は
図10の同心微小レンズ7の拡大図であって、(A)は斜視断面図、(B)は下面図である。
図11の(A)に示すように、断面形状は中央に向かって片鋸歯状をなし、また、
図11の(B)に示すように、平面視では同心円状をなしている。また、同心微小レンズ7の三角プリズム状断面の高さは数10μmである。すなわち、
図12に示すように、LED素子25から斜めに出射した漏光L2であっても、同心微小レンズ7上の透明電極層3’のミラー状態によって効果的にミラーデバイスM2”に対して法線方向に反射できる。従って、第2の実施例に比較して、ミラーデバイスM2”内の光伝播距離を効果的に抑えることができ、この結果、ミラー可能領域R’の面積を小さくできる。
【0063】
面発光ユニット(透明光源)U2から車内側に漏れた光が臨界角より大きい場合には、ミラーデバイスM2”のミラー可能領域R’以外でも反射できる。従って、ミラー可能領域R’の大きさは、透明基板1、22の厚さに依存するが、LED素子25の数倍程度あればよく、面発光ユニット(透明光源)U2から車内側に向かう光を確実にリアウィンドウW2側へ出射することができる。この場合、ミラー可能領域R’を小さくするには、透明基板1、22の厚さをできるだけ薄くすればよい。たとえば、透明基板1、22が約0.2mmであれば、ミラー可能領域R’のサイズは、LED素子25のサイズ+0.2mm程度でよい。このように、ミラー可能領域R’の面積を小さくすることにより、応答速度が大きくでき、また、視認性、消費電力の点でも有利となる。
【0064】
図10の可視光源の製造方法は、
図3に示す製造方法とほぼ同一であるが、透明電極層形成工程301の前に同心微小レンズ形成工程が付加される。この同心微小レンズ形成工程において、透明基板1に同心微小レンズ7を形成する。以下に、これを詳述する。
【0065】
始めに、透明基板1上に紫外線硬化性樹脂を滴下する。次いで、透明基板1の裏側に厚い石英ガラス板で補強し、同心微小レンズ7の反転パターンを有する金型を用いてプレスし、1分間放置する。次いで、石英ガラス板の方から紫外線を5J/cm
2で照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させる。次いで、金型及び石英ガラス板を外し、同心微小レンズ7が形成された透明基板1を洗浄機で洗浄する。洗浄方法は、アルカリ洗剤を用いたブラシ洗浄、純粋洗浄、エアーブロー、UV照射、IR乾燥の順に行う。但し、洗浄方法はこれに限らない。高圧スプレー洗浄やプラズマ洗浄などを行ってもよい。
【0066】
尚、上述の第2の実施の形態においては、透明電極層3、4の交差する領域に1つのLED素子25を設けているが、2以上のLED素子25を設けてもよい。
【0067】
また、上述の実施の形態においては、面発光ユニットの光源を赤色LED素子としたが、他の色のLED素子でもよく、レーザダイオード(LD)素子でもよい。
【0068】
本発明は、上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。