【文献】
宮越 昭彦ら,マイクロ波加熱を利用するメタン転換プロセスの開発 −金属/HZSM−5混合触媒に対する窒化処理の効果−,第112回触媒討論会 討論会A予稿集,2013年 9月11日,講演番号2E08
【文献】
宮越昭彦他,マイクロ波加熱を利用するメタン転換プロセスの開発−金属炭化物担持HZSM-5触媒の加熱特性とメタン分解性能−,第108回触媒討論会 討論会A予稿集,2011年,p. 83
【文献】
宮越昭彦ら,マイクロ波加熱を利用するメタン直接水素転換反応,石油・石油化学討論会講演要旨集,2012年10月11日,42,17,講演番号1A02
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記触媒が、前記炭化ケイ素を含み、マイクロ波を吸収して加熱される発熱部と、ニッケルおよびゼオライトを含み、前記発熱部と隣り合う位置に配置され、加熱された前記発熱部から供給される熱によって活性化されて前記炭素化合物を基質とする反応を促進する反応促進部とを含んで構成される請求項2に記載のグラフェン製造装置。
前記触媒が、前記炭化ケイ素を含み、マイクロ波を吸収して加熱される発熱部と、ニッケルおよびゼオライトを含み、前記発熱部と隣り合う位置に配置され、加熱された前記発熱部から供給される熱によって活性化されて前記炭素化合物を基質とする反応を促進する反応促進部とを含んで構成される請求項8に記載のグラフェンの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、炭素を含む原料ガスのほかにプラズマ源となる窒素ガスやアルゴンガス、水素ガス等を反応容器内に導入させてプラズマの維持を図っている。
また、特許文献2の手法もまた、炭素ガスと共にヘリウムを導入してグラフェン形成を行っている。したがって、いずれもプラズマを発生させるためのガスを反応容器内に導入するための付随装置などが必要となり、機器の構成が複雑となったりしやすいほか、製造、管理にコストがかかる。
【0007】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、グラフェンの製造に係る新規な装置および製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] その内部に炭化ケイ素、ニッケルおよびゼオライトを含む触媒が装填されており、炭素化合物を含むガスが供給される反応器と、
前記反応器内の前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、を備え、
前記マイクロ波照射部によるマイクロ波照射によって加熱されることにより活性化された前記触媒の存在下で前記炭素化合物を基質とする反応を進行させてグラフェンを得るグラフェン製造装置。
[2] 前記マイクロ波照射部はマルチモードでマイクロ波を前記反応器内の前記触媒に照射する[1]に記載のグラフェン製造装置。
[3] 前記触媒が、前記炭化ケイ素を含み、マイクロ波を吸収して加熱される発熱部と、ニッケルおよびゼオライトを含み、前記発熱部と隣り合う位置に配置され、加熱された前記発熱部から供給される熱によって活性化されて前記炭素化合物を基質とする反応を促進する反応促進部とを含んで構成される[2]に記載のグラフェン製造装置。
[4] 前記反応促進部が前記炭素化合物を含むガスが流れる方向に沿って前記発熱部に積層されている[3]に記載のグラフェン製造装置。
[5] 前記触媒が、前記ゼオライトとしてHZSM−5ゼオライトを含む[1]から[4]のいずれか1つに記載のグラフェン製造装置。
[6] 前記炭素化合物がメタンである[1]から[5]のいずれか1つに記載のグラフェン製造装置。
[7] 炭化ケイ素、ニッケルおよびゼオライトに対してマイクロ波を照射することにより加熱して前記触媒を活性化し、
活性化された前記触媒の存在下で前記触媒に接触するガスに含まれる炭素化合物を基質とする反応を進行させてグラフェンを生成することを含む、グラフェンの製造方法。
[8] 前記触媒に対してマルチモードでマイクロ波を照射する[7]に記載のグラフェンの製造方法。
[9] 前記触媒が、前記炭化ケイ素を含み、マイクロ波を吸収して加熱される発熱部と、ニッケルおよびゼオライトを含み、前記発熱部と隣り合う位置に配置され、加熱された前記発熱部から供給される熱によって活性化されて前記炭素化合物を基質とする反応を促進する反応促進部とを含んで構成される[8]に記載のグラフェンの製造方法。
[10] 前記反応促進部が前記炭素化合物を含むガスが流れる方向に沿って前記発熱部に積層されている[9]に記載のグラフェンの製造方法。
[11] 前記触媒が、前記ゼオライトとしてHZSM−5ゼオライトを含む[7]から[10]のいずれか1つに記載のグラフェンの製造方法。
[12] 前記炭素化合物がメタンである[7]から[11]のいずれか1つに記載のグラフェンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グラフェンの製造に係る新規な装置および製造法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の1つについて詳細に説明する。
図1は、本実施形態のグラフェン製造装置10(以下、単に装置10ともいう)の概要を示すブロック図である。
本実施形態の装置10は、炭化ケイ素、ニッケルおよびゼオライトを含む触媒2が装填されており炭素化合物を含むガスが供給される反応器1と、反応器1内の触媒2にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部3と、を備える。本実施形態のグラフェン製造装置10においては、マイクロ波照射部3によるマルチモードでのマイクロ波照射によって加熱されて活性化された触媒2の存在下で炭素化合物を基質とする反応を進行させて、グラフェンを生成させる。また、本実施形態の装置10においては、触媒2が、炭化ケイ素を含み、マイクロ波を吸収して加熱される発熱部21と、ニッケルおよびゼオライトを含み、発熱部21と隣り合う位置に配置され、加熱された発熱部21から供給される熱によって活性化されて炭素化合物を基質とする反応を促進する反応促進部23とを含んで構成される。
【0012】
本実施形態の装置10の構成について、より詳細に説明する。また、
図1において、供給される炭素化合物を含むガスおよび反応後のガスの流れを実線で示す。
本実施形態の装置10は、その内部空間15内に納められた反応器1を備えている。反応器1は、炭素化合物を含むガスの導入部1Aと、反応後のガスの導出部1Bに連通している。
この反応器1内には、触媒2が装填されている。反応器1の形状や大きさ、構成は、内部の触媒2に対してマイクロ波の照射を行なうことができ、且つ内部において触媒2の存在下における炭素化合物の熱分解、およびグラフェンの生成を進行させることが可能である限り特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、反応器1は、石英によって構成することができる。
また、本実施形態においては、理解を容易とするために反応器1を装置10において1つ備える構成を示しているが、反応器1が装置10において複数設けられる構成としてもよい。
また、装置10は、放射温度計17を備えている構成とすることができる。当該放射温度計17を用いてマイクロ波照射によって加熱される触媒2の温度(表面温度)を測定することができる。放射温度計17も特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0013】
本実施の形態のグラフェン製造装置10は、反応器1内の触媒2にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部3を備えている。本実施形態の装置10において、マイクロ波照射部3は、触媒2にマルチモードでマイクロ波を照射する。マイクロ波照射部3から放射されたマイクロ波は、装置10の内部空間15において反射しながら進行し、反応器1内部の触媒2に到達する。
マイクロ波照射部3は装置10に内蔵される電源部5からマイクロ波励起電流が供給される回路構成とすることができる。また、マイクロ波照射部3から照射されるマイクロ波の出力や周波数は、装置10に内蔵される制御部7によって制御される回路構成とすることができる。なお、これらマイクロ波照射部3と電源部5、制御部7の構成は従来知られているものを使用でき、当業者が適宜設定することができる。例えば、マイクロ波照射部3は、マグネトロン等によって構成することができる。
【0014】
図2は、本実施形態のグラフェン製造装置10の、
図1において破線mで囲む領域を示す図である。
反応器1に装填され、マイクロ波が照射される触媒2は、ニッケル(Ni)、炭化ケイ素(SiC)、およびゼオライトを含んで構成される。
ゼオライトとしては、ベータ型ゼオライト、フェリエライト、モルデナイト、Y型ゼオライト、HZSM−5ゼオライト等を挙げることができ、例えばこれらのうち1種または2種以上が含有されるようにすることができる。また、グラフェンの生産効率の観点から、ゼオライトとしてHZSM−5ゼオライトが触媒2に含有されることが好ましい。
ここで、本実施形態において、触媒2は、発熱部21と、反応促進部23とを備える。発熱部21は、炭化ケイ素を含み、マイクロ波照射部3から放射されたマイクロ波を吸収して加熱される。
また、反応促進部23は、ニッケルおよびゼオライトを含み、加熱された発熱部21から供給される熱によって活性化され、炭素化合物を基質とする反応を促進する。
反応促進部23は、反応器1内において、発熱部21と隣り合う位置に配置される。具体的には、例えば
図2に示すような、反応促進部23(23a、23b)が炭素化合物を含むガスが流れる方向に沿って発熱部21(21a、21b、21c)に積層されている構成とすることができる。
なお、本明細書において、隣り合う位置に配置されるとは、発熱部21と反応促進部23とが直接的に接している場合のほか、伝熱可能である仕切り25を介して発熱部21と反応促進部23とが隣り合っている場合も含む概念である。当該仕切り25は、例えば石英ウールなどを用いて構成することができる。
【0015】
触媒2において発熱部21と反応促進部23とを設けることにより、例えば炭化ケイ素、ニッケル、およびゼオライトを均一に混合して触媒2を構成している場合等と比較して、触媒2のグラフェン生成の促進作用をより長く維持できる。また、生成されるグラフェンが反応促進部23およびその近傍に蓄積しやすいので、例えば炭化ケイ素、ニッケル、およびゼオライトを均一に混合して触媒2を構成している場合等と比較して、グラフェンの回収がより容易となる。
【0016】
触媒2の製造方法は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、反応促進部23が炭素化合物を含むガスが流れる方向に沿って発熱部21に積層されている構成とする場合は、反応器1内において炭化ケイ素を含む粉末体とニッケルを含む粉末体とを炭素化合物のガスが流れる方向に沿って積層することにより構成することができる。
また、炭化ケイ素粉末と無機系接着材とを混ぜ、耐熱性セラミックに塗布したものを得、これを発熱部21としてニッケルを含む反応促進部23に隣り合う位置に配置してもよい。
【0017】
また、本実施形態においては、ニッケル、炭化ケイ素、ゼオライトに加えて他の成分が含有されていてもよい。具体的には、触媒の成形性を高めることができる炭化モリブデンなどを挙げることができる。当該炭化モリブデンは、例えば反応促進部23に含有されるようにすることができる。
本実施形態において、触媒2を構成する成分の比率は特に限定されず当業者が適宜設定することができる。反応器1に装填される触媒2の量なども特に限定されない。また、触媒2を例えば
図2に示すような複数の反応促進部23や複数の発熱部21によって構成する場合の、これらの重量や体積での比率も、適宜設定することができる。なお、触媒2の活性をより長く維持できるようにする観点から、触媒2は、炭化ケイ素を含む発熱部とニッケルおよびゼオライトを含む反応促進部を含み、且つ触媒2全体に対しニッケルの割合が20質量%以上(より好ましくは30質量%以上)であることが好ましい。
【0018】
本実施形態のグラフェン製造装置10では、原料として、炭素化合物を含むガスを用いる。炭素化合物として、具体的には、メタン(CH
4)、エタン(C
2H
6)、プロパン(CH
3CH
2CH
3)、ブタン(C
4H
10)、ベンゼン(C
6H
6)、トルエン(C
7H
8)、キシレン(C
6H
4)等の炭化水素化合物や、メタノールやエタノールなど揮発性有機溶媒を気化させた成分などを挙げることができる。また、本実施形態のグラフェン製造装置の反応器1内に供給されるガスは、炭素化合物を1種または複数種含んでいてもよい。
【0019】
本実施形態において、炭素化合物を含むガスを反応器1に供給する態様については特に限定されず、ガスボンベやパイプラインから供給する形式など、適宜設定することができる。
【0020】
図3は、本実施形態のグラフェン製造装置10においてグラフェンを製造する際の処理フローの一例を示す図である。
まず、ステップS1において、導入部1Aから反応器1内に炭素化合物を含むガスを供給し、反応器1の内部の空気をすべて当該ガスに置き換える。反応器1内に流入させる炭素化合物を含むガスの圧力は、ガスの種類や反応容器1内に装填される触媒2の体積、反応器1の大きさ等に応じて適宜設定することができる。
次に、ステップS2において、マイクロ波照射部3からマルチモードでマイクロ波を反応器1内の触媒2に対して照射し、触媒2を加熱によって活性化するとともに、当該活性化された触媒2の存在下において接触するガスに含まれる炭素化合物を基質とする反応を進行させる。
マイクロ波照射部3から照射されるマイクロ波の出力および周波数については、マルチモードでの照射であって触媒2を活性化して炭素化合物を熱分解できる限り特に限定されず、当業者が適宜設定できる。例えば、発振出力を1000Wと、発振周波数を2.45GHzとすることができる。
また、触媒2は、マイクロ波照射により、炭素化合物の種類等にも因るが、例えば500〜800℃に加熱される。なお、本実施形態に係る炭素化合物を基質とする反応においては、当該触媒2の表面温度を反応温度とすることができる。当該反応温度は、例えば装置10が備える放射温度計17によって測定することができる。
グラフェンが生成される反応機構については現在のところ必ずしも明確ではないが、例えば以下のようにしてグラフェン生成が進行するものと考えられる。まず、マイクロ波を吸収し自己発熱して周囲に伝熱させるサセプタ成分として寄与する炭化ケイ素から伝えられた熱により、ニッケルが活性化され、炭素化合物の熱分解が促進される。続いて、芳香環程度の細孔径を有するゼオライトの鋳型構造によってグラフェン骨格をなす炭素構造体の合成が誘導されるとともに、ニッケルの炭素成長作用によりグラフェンの6員環炭素構造物の成長が促され、グラフェンが生成されるものと考えられる。
続いて、ステップS3において、触媒2内に蓄積したグラフェンを含む生成物を反応器1から回収する。回収する方法は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0021】
本実施形態のグラフェン製造装置は、グラフェンの製造効率が極めて高く、例えばメタンを原料として用いた場合には反応開始から30時間経ても90%以上の炭素転換率を維持することができる。
また、従来のグラフェン製造は1500〜3000℃の超高温下で実施されるものが多いが、本実施形態のグラフェン製造装置においては、より低温(例えば1000℃以下)の温度条件でグラフェンの効率的合成を行うことができる。
【0022】
また、炭素化合物としてメタン等を用いる場合には、副生物として水素が生成されるが、副生する水素の純度も極めて高く、COやCO
2、エチレンやエタン等のC2成分はほとんど生成しない(触媒2の構成によっても変化するが、例えば生成ガス中の水素選択性は30時間経時時点でも95%以上を示す)。このため、この水素を燃料電池等の高純度水素を原料とするエネルギー発生機に供給することが可能である。すなわち、メタン等の炭化水素の分解反応において、不要な成分が実質的に生成せず、全生成分を利用することができる。以下に、メタンを炭素化合物として用いた場合の反応式を示す。換言すると、化学反応の原理上、無駄が非常に抑えられた反応を進行させることができる。
【0024】
また、本実施形態はメタン等に直接適用できるものであり、近年、重大な課題である温室効果ガスの排出削減にも多大に貢献できる。メタンのグラフェンとしての固定化と高品位原料としての活用,水素社会の実現に向けての応用、そしてCO
2やCOガスを排出させない理想反応の実現プロセスとして、地球規模の問題に対しても全世界的な先駆けプロセスの代表に発展する可能性がある。
加えて、本実施形態は例えばメタン分解反応に有効であることから、メタンを主成分とする天然ガス、メタンハイドレート、シェールガス、バイオガスなど多くの低炭素原料からのグラフェン製造技術として広く応用が期待される。とくに本実施形態はバイオガスのメタンにも適用可能であり、天然ガス精製設備がある海浜地域のみならず、都市部や山間部などに点在する下水処理施設や畜産農家などから生じるガスにも応用でき、広くグラフェン原料の供給先を得ることができる。このように国内・外の産業発展に対しても大きく寄与する可能性がある。
【0025】
以上、本実施形態のグラフェン製造装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の態様とすることも、もちろん可能である。
例えば、触媒の構成について、反応促進部23が炭素化合物を含むガスが流れる方向に沿って発熱部21に積層されている場合を挙げて説明したが、発熱部21と反応促進部23の配置は、他の構成とすることも、もちろん可能である。
例えば、炭素化合物を含むガスが流れる方向とは垂直な面(
図1における破線bb’に沿った面)において、反応促進部23と発熱部21とが例えば同心円状または同心の多角形状等で交互に繰り返し配置されるようにしてもよい(
図4、
図5)。さらにまた、炭素化合物を含むガスが流れる方向とは垂直な面において、円形あるいは多角形状の反応促進部23が発熱部21中に点在するように配置することもできる(
図6)。さらにまた、炭素化合物を含むガスが流れる方向とは垂直な面において、反応促進部23と発熱部21とが円周方向に交互に並び、反応促進部23と発熱部21それぞれが放射状に延びる配置とすることもできる(
図7)。
また、本実施形態においてはマイクロ波照射部によるマイクロ波照射として、マルチモードで行う態様を挙げて説明したが、これに限定されず、例えば触媒に対しシングルモードでマイクロ波が照射される態様とすることももちろん可能である。一方、得られるグラフェンの純度の観点、および生成されたグラフェンの回収の観点から、マイクロ波照射部によりマルチモードでマイクロ波照射を行う態様とすることがより好ましい。
【実施例】
【0026】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例のみに限られるものではない。
以下に示すように、本実施形態のグラフェン製造装置に係る触媒を調製し、グラフェン生成に係る試験に供した。
【0027】
実施例1に係る触媒
ニッケル(Ni)粉末、HZSM−5ゼオライト(HZSM−5)粉末、および炭化モリブデン(Mo
2C)粉末を物理混合した(当該粉末を以下NHM粉末と称す)。次いで、反応器1としての反応管内において、NHM粉末と炭化ケイ素(SiC)粉末を炭素化合物を含むガスが流れる方向に沿って、仕切り25としての石英ウールを介し、
図2に示すとおり積層し、触媒を構成した。
各成分の比率は、触媒全体に対して、SiC:30質量%、Mo
2C:2.1質量%、Ni:30質量%、HZSM−5:37.9質量%である。
また、触媒における発熱部(21a、21b、21c)および反応促進部(23a、23b)の重量は以下のとおりである。
21a:0.65g、21b:2.8g、21c:2.61g、23a:7.4g、23b:4.78g
【0028】
実施例1に係る反応試験
マルチモード式のマイクロ波反応装置(四国計測工業(株)μ Reactor Ex)を用いて反応試験を行なった。当該マイクロ波反応装置のスペックを以下に示す。また、炭素化合物を含むガスとして、メタンガスを用いた。
発振周波数:2.45GHz
出力:1000W
温度検出:放射温度計によりマイクロ波の出力を制御
寸法・重量:
外形寸法 520W×425D×439H(25kg)
庫内寸法 280W×280D×250H
【0029】
実施例1に係る触媒を装填した反応管をマイクロ波反応装置に設けた炭素化合物を含むガスの導入部および生成ガスの導出部に装着した。
導入部からメタンガスを10 ml/minで導入するとともに、マルチモードで反応管内の触媒に対しマイクロ波照射を行い、30時間―間欠運転でのべ5日間反応させた。反応温度は触媒の表面温度を放射温度計で計測し、650℃に設定した。
5日間経過後、生成物を触媒の構成粒子とともに回収し、試料とした。試料をエタノールへ懸濁させ、当該懸濁液の入った容器ごと超音波洗浄機に供し、試料粉末を分散させた。当該分散液をマイクログリッド(コロジオン膜)上に滴下して乾燥させ、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を実施したところ、ニッケル粒子の周囲にグラフェンが生成されていることが確認された。そのTEM写真を
図8に示す。
【0030】
実施例2に係る触媒
炭化ケイ素(SiC)、HZSM−5ゼオライト(HZSM−5)、炭化モリブデン(Mo
2C)、およびニッケル粉末(Ni)を物理混合し、次いで混合物をプレスで錠剤成形(20mmΦ×2mm)し、触媒とした。混合した各成分の比率は、触媒全体に対して、SiC:30質量%、Mo
2C:2.1質量%、Ni:30質量%、HZSM−5:37.9質量%である。
【0031】
実施例2に係る反応試験
シングルモードでのマイクロ波照射を行った。
マイクロ波発振器(2450 MHz)を導波管で接続したプラズマ発生炉に、実施例2の触媒を、石英製の触媒床(20mmΦ)を用いて装填した。プラズマ発生炉の反応管上部から炭素化合物を含むガスとしてのメタンを10 ml/minで導入するとともに、ダウンブローで反応させた。反応温度は触媒の表面温度を放射温度計で計測し、マイクロ波発振器への印加電圧をスライダックで調節して650℃に設定した。反応は、6時間連続運転で行った。
反応終了後、生成物を触媒の構成粒子とともに回収し、実施例1と同様にTEM観察を行ったところ、グラフェンの生成が確認された。
【0032】
また、実施例1、2により得られた生成物について、そのラマンスペクトルを測定した。
図9に、本実施例により得られた生成物のラマンスペクトルを示す。いずれも、主要なラマン活性モードであり、SP2結合の平面性を表すGバンドが表れており、グラフェンの生成が確認された。