(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355994
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】制御装置の防水構造
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
H05K5/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-141077(P2014-141077)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-18905(P2016-18905A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100076196
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 寛治
(72)【発明者】
【氏名】福江 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 充
【審査官】
石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−152355(JP,A)
【文献】
特開平07−321478(JP,A)
【文献】
特開2004−031417(JP,A)
【文献】
特開2008−282965(JP,A)
【文献】
特開2012−142435(JP,A)
【文献】
特開2008−124456(JP,A)
【文献】
特開2004−248426(JP,A)
【文献】
特開2013−021005(JP,A)
【文献】
特開2012−069646(JP,A)
【文献】
特開2011−119960(JP,A)
【文献】
特開平06−223604(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0133409(US,A1)
【文献】
米国特許第05574254(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部材である電気部品を設けたプリント基板が内装された制御装置の防水構造において、
前記制御装置の装置ケースは、第1ケースと、この第1ケースの開口部を塞ぐ第2ケースとで形成し、
さらに、前記第1ケースと第2ケースとの連結部には防水手段を備えると共に、前記第2ケースには、前記プリント基板を外部装置と電気接続する接続部材を引き出すコネクタ部を設け、
前記防水手段は、前記第1ケースの開口側となる周側面に圧接させる第2ケースに設けた第1シール部と、前記プリント基板に対する前記コネクタ部の対向面に設けた第2シール部とから形成し、
前記第2シール部には、前記プリント基板と前記接続部材との電気接続部を囲って前記プリント基板に圧接させるリブを形成し、さらに、前記電気接続部を覆う封止樹脂を前記コネクタ部の内部に充填させたことを特徴とする制御装置の防水構造。
【請求項2】
請求項1に記載した防水構造において、
前記第2ケースには、その周囲に沿って前記第1ケースの開口側となる周側面を嵌入させる溝状部を形成し、この溝状部の溝面に沿って前記第1シール部を設けたことを特徴とする制御装置の防水構造。
【請求項3】
請求項2に記載した防水構造において、
前記防水手段の第1、第2シール部を第2ケースと一体形成するために、シール材を供給するゲート孔を前記溝状部に設けたことを特徴とする制御装置の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御部材である電気部品を設けたプリント基板が内装された制御装置の浸水を防止する防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、第1従来例として示した制御装置で、前面の意匠面11にスイッチ操作部12を有する制御装置となっており、装置ケース13の内部には、タクトスイッチ14やLED15などの電気部品を設けたプリント基板16がねじ止めなどによって配設されている。
【0003】
そして、この制御装置の内部には、装置ケース13の裏側から供給されたポッティング剤(封止樹脂)17を充填させて浸水を防ぐ防水構造となっているが、ポッティング剤の付着によってタクトスイッチ14が動作不良となったり、LED15の発光が遮られる等の支障があるため、これら電気部品にポッティング剤の付着を防ぐためのラバー18が設けられている。
【0004】
図10は、第2従来例として示した制御装置で、装置ケース21内には、電気部品22を設けたプリント基板23が配設され、また、装置ケース21内がポッティング剤(封止樹脂)24によって充填されている。
この制御装置の場合は、ポッティング剤が付着しても問題とならない電気部品がプリント基板23に搭載されてることから、ポッティング剤24が各電気部品22に接触する状態で装置ケース21内に充填されている。
【0005】
上記第2従来例の制御装置は、ポッティング剤24によって浸水が防止されるが、その他に、プリント基板23にハンダ付けされた電気部品22を外部雰囲気から保護する目的をもっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−121780号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した第1、第2従来例の制御装置は、装置ケース内の多くの部分にポッティング剤を充填させて防水する構造となっているため、ポッティング剤を大量に使用したものとなっている。
したがって、プリント基板に設けるスイッチやLEDなどの電気部品が多くなったり、各電気部品の間隔が狭くなると、ラバーだけではポッティング剤の付着を防ぐことが困難となる。
【0008】
さらに、大量のポッティング剤を使用するために、制御装置の重量が増すばかりでなく、ポッティング剤のコストもアップすることになる。
そこで、本発明では、封止樹脂としてのポッティング剤の使用量を可能なる限り少なくして防水性能を高めた制御装置の防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明では、第1の発明として、制御部材である電気部品を設けたプリント基板が内装された装置ケースの防水構造において、 前記装置ケースは、第1ケースと、この第1ケースの開口部を塞ぐ第2ケースとで形成し、さらに、前記第1ケースと第2ケースとの連結部には防水手段を備えると共に、前記第2ケースには、前記プリント基板を外部装置と電気接続する接続部材を引き出すコネクタ部を設け、前記防水手段は、前記第1ケースの開口側となる周側面に圧接させる第2ケースに設けた第1シール部と、前記プリント基板に対する前記コネクタ部の対向面に設けた第2シール部とから形成したことを特徴とする制御装置の防水構造を提案する。
【0010】
第2の発明としては、上記した第1の発明の防水構造において、前記第2ケースには、その周囲に沿って前記第1ケースの開口側となる周側面を嵌入させる溝状部を形成し、この溝状部の溝面に沿って前記第1シール部を設けたことを特徴とする制御装置の防水構造を提案する。
【0011】
第3の発明としては、上記した第2の発明の防水構造において、前記防水手段の第1、第2シール部を第2ケースと一体形成するために、シール材を供給するゲート孔を前記溝状部に設けたことを特徴とする制御装置の防水構造を提案する。
【0012】
第4の発明としては、上記した第1〜第3の発明のいずれかの防水構造において、前記第2シール部には、前記プリント基板と前記接続部材との電気接続部を囲って前記プリント基板に圧接させるリブを形成し、さらに、前記電気接続部を覆う封止樹脂を前記コネクタ部の内部に充填させたことを特徴とする制御装置の防水構造を提案する。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明は、プリント基板を内装させた装置ケースが第1ケースと第2ケースとで形成され、第1、第2ケースの接合部には第1シール部からなる防水手段が設けられている。
そして、第1シール部が、第1ケースの開口側となる周側面に圧接させる第2ケースに設けたシール部構成となっているので、装置ケースの周囲からの浸水が防止される。
【0014】
また、プリント基板を外部装置と電気接続する接続部材を引き出すコネクタ部については、プリント基板に対するコネクタ部の対向面に第2シール部を設けた防水構造としてある。
したがって、本発明の制御装置は、第1、第2ケースと、第1、第2シール部である防水手段とによって、装置ケース内が閉塞されるので、外部からの浸水が確実に防止される。
【0015】
このことから、特に、ポッティング剤(封止樹脂)を使用しないで防水が可能になるから、従来例のように、ラバーだけではポッティング剤の付着が困難になったり、また、大量のポッティング剤の使用により制御装置の重量が増したり、ポッティング剤のコストもアップするなどの問題がない。
【0016】
第2の発明は、第2ケースの周囲に沿って第1ケースの開口側となる周側面を嵌入させる溝状部を形成し、この溝状部の溝面に沿って前記したところの第1シール部を設けた構成の防水構造が特徴となっている。
【0017】
第3の発明は、第1、第2シール部を第2ケースと一体形成するために、シール材を供給するゲート孔を前記溝状部に設けたことが特徴となっている。
このように構成すれば、第1、第2のシール部を組付ける作業がいらないし、第1、第2のシール部を一回の形成工程で製造できるので、製造工程を簡素化することができる。
【0018】
第4の発明は、第2シール部にリブを設けてプリント基板に圧接させる構成としたので、シール性能を高めることができる他、プリント基板を確実に固定させることができる。
また、コネクタ部内部には封止樹脂を充填するが、上記のリブにより制御装置内への封止樹脂の漏れを防ぐことができる。
さらに、封止樹脂はコネクタ部の内部に充填するだけで足りるので、従来例の制御装置の封止樹脂の使用量に比べ大幅に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態として示した制御装置の斜視図である。
【
図2】背面側から見た上記制御装置の斜視図である。
【
図4】
図3に示す鎖線部分Zを拡大して示した部分断面図である。
【
図5】上記制御装置に備える第2ケースの内面図である。
【
図6】コネクタ部分を拡大して示した上記第2ケース内面の部分的な斜視図である。
【
図9】第1従来例として示した制御装置の縦断面図である。
【
図10】第2従来例として示した制御装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を農作業機に搭載する制御装置として実施する一実施形態について図面に沿って説明する。
図1は、制御装置の斜視図、
図2は同制御装置を背面側から見た斜視図、
図3は
図1に示すA−A線の拡大断面図である。
【0021】
図1に示すように、制御装置50の前面側の意匠板50aには複数のスイッチ操作部51を備えている。
これらスイッチ操作部51はそれらを押圧操作することで、
図3に示すところのタクトスイッチ52をスイッチ動作させることができる。
タクトスイッチ52はその他の電気部品と共にプリント基板53に設けてある。
【0022】
そして、プリント基板53は、第1ケース(前側ケース)54と第2ケース(後側ケース)55とからなる装置ケース内に配設してある。
すなわち、このプリント基板53は第2ケース55内面にねじ止めによって取り付けてある。
【0023】
また、第2ケース55には、横長断面形状とした中空のコネクタ部55aを一体形成してあり、このコネクタ部55aが内部から外部に連通して後方に向かって突出している。
コネクタ部55aは、プリント基板53を外部装置に電気接続するハーネス(接続部材)56を装置ケース外に引き出す部所である。
なお、第1ケース54と第2ケース55はABS樹脂材により形成してある。
【0024】
一方、第2ケース55には、
図3、
図4、
図5に示したように、その後方周囲に一連に設けた溝状部57が一体に形成してある。
なお、
図4は、
図3に示す鎖線部分Zを拡大して示した部分断面図、
図5は、第2ケース55の内面図である。
この溝状部57は、第2ケース55の周側面である内壁57aと、この内壁57aから横方向に張り出させたフランジ部57bと、このフランジ57bの先端部から内壁57aに平行させて折り返した外壁57cとで形成してある。
【0025】
そして、溝状部57の内壁57aの外面と、フランジ57bの内面と、外壁57cの内面とには、第1シール部58を形成するエラストマ(弾力ゴム)59が一体的に設けてある。
また、エラストマ59は、
図3、
図4、
図5、
図6に示す如く、プリント基板53に対向するコネクタ部55aの内端面(プリント基板との対向面)55bにも第2シール部60として一体的に形成してある。
なお、
図6は、コネクタ部分55aを拡大して示した第2ケース55の内面の部分的な斜視図である。
【0026】
さらに、第1シール部58には、
図4、
図7に示すように、エラストマ59と一体形成した一対のリブ59a、59bが溝状部57の内向きとして突出形成してある。
そして、これら一対のリブ59a、59bの先端間隔は、第1ケース54の側面54aの板厚に比べ多少狭い間隔としてある。
同様に、第2シール部60には、
図4、
図8に示すように、エラストマ59と一体形成したリブ59cがプリント基板53に向かって突出形成してある。
なお、
図7は、
図5上のB−B線断面図、
図8は、
図5上のC−C線断面図である。
また、本実施形態では、
図2、
図5、
図7に示した通り、溝状部57の底面には装置外に連通させた空気流通孔62が設けてある。
【0027】
上記した第1シール部58と第2シール部60を形成するエラストマ59は、第2ケース55に形成したゲート孔55cからエラストマ樹脂剤を供給してインサート形成し、第2ケース55と一体化してある。
なお、防水手段を形成する第1シール部58と第2シール部60は、エラストマ59以外の他の弾性部材で形成することもでき、また、エラストマ59はインサイート成形に限らず、二色成形などによって第2ケース55に一体化することもできる。
【0028】
上記のように構成した制御装置50は、プリント基板53を第2ケース55に組付け、さらに、プリント基板53に接続したハーネス56をコネクタ部55aから引き出した後、第1ケース54に第2ケース55を組付けて固定する。
すなわち、
図4に示すように、第2ケース55の溝状部57内に第1ケース54の開口側となる側面54aを嵌入させた状態で、第2ケース55を第1ケース54にねじ止めする。
【0029】
上記のように、第2ケース55を第1ケース54に組付ければ、第1シール部58のリブ59a、59bが第1ケース51の側面54aに圧接するため、第1ケース54と第2ケース55との連結部からの浸水が第1シール部58によって防水される。
【0030】
また、第2ケース55を第1ケース54に組付ければ、第2シール部60のリブ59cがプリント基板53に圧接するから、プリント基板53が第1ケース54と第2ケース55によって挟持保持されて安定する。
さらに、第2ケース55を第1ケース54に組付けた後に、ハーネス56を引き出したコネクタ部55a内にポッティング剤(封止樹脂)61を充填させて防水構造としてあるが、上記第2シール部60のリブ59cが装置内へのポッティング剤61の侵入を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
農作業機などに搭載するスイッチ装置などの制御装置として適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
50 制御装置
53 プリント基板
54 第1ケース
54a 側板
55 第2ケース
55a コネクタ部
55b 内端面
55c ゲート孔
56 ハーネス
57 溝状部
57a 内壁
57b フランジ部
57c 外壁
58 第1シール部
59 エラストマ
59a、59b、59c リブ
60 第2シール部
61 ポッティング剤