(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷を吊り下げるロード索が掛けられた駆動輪と、手動索が掛けられた手動輪と、該駆動輪の回転を支援する電動補助モータとを備え、前記手動索を手引きすることにより発生する前記手動輪の回転力を駆動軸を介して前記駆動輪に伝達し、前記ロード索に吊り下げられた荷を巻上げ下げすると共に、荷の巻上げ時の前記手動輪の回転力が所定以上の場合或いは重量検出手段で検出した前記荷の重量が所定以上の場合、制御手段の制御によりモータドライバから前記電動補助モータに所定の駆動電流を供給して該電動補助モータを運転し、前記駆動輪の回転を支援する電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置であって、
前記制御手段は、前記荷の重量を検出する重量検出手段を備え、該重量検出手段で検出された前記荷の重量が当該手動巻上機の製品定格の重量値を超える場合に前記モータドライバから前記電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、前記駆動輪の回転支援を停止することを特徴とする電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置。
荷を吊り下げるロード索が掛けられた駆動輪と、手動索が掛けられた手動輪と、該駆動輪の回転を支援する電動補助モータとを備え、前記手動索を手引きすることにより発生する前記手動輪の回転力を駆動軸を介して前記駆動輪に伝達し、前記ロード索に吊り下げられた荷を巻上げ下げすると共に、荷の巻上げ時の前記手動輪の回転力が所定以上の場合或いは前記荷の重量が所定以上の場合、前記電動補助モータに所定の駆動電流を供給して該電動補助モータを運転し、前記駆動輪の回転を支援する電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止方法であって、
前記荷の重量が当該手動巻上機の製品定格の重量値を超える場合に前記電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、前記電動補助モータによる駆動輪の回転支援を停止することを特徴とする電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手動チェーンブロックは、後に詳述するように、ハンドホイール、ロードシーブ、減速機構、及びブレーキ機構等の部品やメカニカル機構で構成されている。これらの部品やメカニカル機構はそれぞれ耐久性を有することから、チェーンブロックとして扱う荷の重量を制限するため製品定格を設けている。そしてこの製品定格を超える重量の荷を昇降(移動)させた場合、手動チェーンブロックを構成する各メカニカル機構の部品の破損や磨耗等により安全性が毀損されたり、手動チェーンブロックの寿命が短縮される等の問題が発生する。特に電動補助モータ付き手動チェーンブロックでは、電動補助モータによりハンドホイールの回転力を補助(支援)するため、操作員は無意識のうちに、製品定格を超える重量の荷物の巻上げを行ってしまうという問題がある。
【0005】
また、電動補助モータ付き手動チェーンブロック等の巻上機では、昇降させる荷の重量を作業員の手引き力と電動補助モータの回転力で負担するため、ロードチェーンに吊り下げられた荷の重量を容易に且つ精度良く検知することが困難で、簡単で精度良く吊り荷の重量を検知して、過負荷を防止できる過負荷制限装置を構成するのが困難であるという問題もあった。
【0006】
本発明は上述に鑑みてなされたもので、昇降させる荷の重量を簡単な構成で精度よく検出でき、製品定格を超える重量の荷の巻上げを確実に防止できる電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置、及び過負荷防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、荷を吊り下げるロード索が掛けられた駆動輪と、手動索が掛けられた手動輪と、該駆動輪の回転を支援する電動補助モータとを備え、前記手動索を手引きすることにより発生する前記手動輪の回転力を駆動軸を介して前記駆動輪に伝達し、前記ロード索に吊り下げられた荷を巻上げ下げすると共に、荷の巻上げ時の前記手動輪の回転力が所定以上の場合或いは重量検出手段で検出した前記荷の重量が所定以上の場合、制御手段の制御によりモータドライバから前記電動補助モータに所定の駆動電流を供給して該電動補助モータを運転し、前記駆動輪の回転を支援する電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置であって、前記制御手段は、前記荷の重量を検出する重量検出手段を備え、該重量検出手段で検出された前記荷の重量が当該手動巻上機の製品定格の重量値を超える場合に前記モータドライバから前記電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、前記駆動輪の回転支援を停止することを特徴とする電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置にある。
【0008】
また、本発明は、上記電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置において、前記重量検出手段は、前記手動索の手引きによって前記手動輪に加わる回転力と回転方向を検出するトルクセンサと、前記電動補助モータに供給される駆動電流を検出する電流センサとを備え、前記制御手段は前記トルクセンサで検出された手動輪の回転方向が巻上げ方向の場合に、前記トルクセンサで検出された手動輪の回転力と、前記電流センサで検出された駆動電流とから前記荷の重量を算出し、該算出した荷の重量値が前記製品定格の重量値を超えた場合に前記モータドライバから前記電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、前記電動補助モータによる駆動輪の回転支援を停止することを特徴とする電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置にある。
【0009】
また、本発明は、上記電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置において、前記制御手段は、前記トルクセンサで検出された手動輪の回転方向が巻下げ方向の場合に、前記電動補助モータによる駆動輪の
回転支援をリセットし、該回転支援をすることを特徴とする電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止装置にある。
【0010】
また、本発明は、荷を吊り下げるロード索が掛けられた駆動輪と、手動索が掛けられた手動輪と、該駆動輪の回転を支援する電動補助モータとを備え、前記手動索を手引きすることにより発生する前記手動輪の回転力を駆動軸を介して前記駆動輪に伝達し、前記ロード索に吊り下げられた荷を巻上げ下げすると共に、荷の巻上げ時の前記手動輪の回転力が所定以上の場合或いは前記荷の重量が所定以上の場合、前記電動補助モータに所定の駆動電流を供給して該電動補助モータを運転し、前記駆動輪の回転を支援する電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止方法であって、前記荷の重量が当該手動巻上機の製品定格の重量値を超える場合に前記電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、前記電動補助モータによる駆動輪の回転支援を停止することを特徴とする電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止方法にある。
【0011】
また、本発明は、上記電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止方法において、前記手動索の手引きによって前記手動輪に加わる回転力と回転方向を検出するトルクセンサと、前記電動補助モータに供給される駆動電流を検出する電流センサとを備え、前記トルクセンサで検出された手動輪の回転方向が巻上げ方向の場合に、前記トルクセンサで検出された手動輪の回転力と、前記電流センサで検出された駆動電流とから前記荷の重量を算出し、該算出した荷の重量が前記製品定格の重量値を超えた場合に前記電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、前記電動補助モータによる駆動輪の回転支援を停止することを特徴とする電動補助モータ付き手動巻上機の過負荷防止方法にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重量検出手段で検出された荷の重量が当該手動巻上機の製品定格の重量値を超える場合にモータドライバから電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、駆動輪の回転支援を停止するので、製品定格の重量値を超える重量の荷を電動補助モータの支援のもとに巻上げることが禁止され、当該手動巻上機を構成する部品等の破損等が防止でき、安全性が維持されると共に、寿命を短縮することもない。
【0013】
また、本発明によれば、制御手段はトルクセンサで検出された手動輪の回転方向が巻上げ方向の場合に、トルクセンサで検出された手動輪の回転力と、電流センサで検出された駆動電流から荷の重量を算出し、該算出した荷の重量値が製品定格の重量値を超えた場合にモータドライバから電動補助モータに供給する駆動電流を停止し、電動補助モータによる駆動輪の回転支援を停止する。通常この種の電動補助モータ付き手動巻上機は、上記トルクセンサや電流センサを備えているから、例えば制御手段がマイクロコンピュータで構成されている場合、ソフトウエアを変更するのみで、既存の電動補助モータ付き手動巻上機に過負荷防止装置を設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本実施形態例では巻上機としてチェーンブロックを例に説明するが、本発明に係る電動補助モータ付き手動巻上機はチェーンブロックに限定されるものではなく、ホイスト等の手動索やロード索にロープ等を用いる手動巻上機等でもよいことは当然である。
【0016】
図1は、本発明に係る電動補助モータ付き手動巻上機(電動補助モータ付き手動チェーンブロック1)の過負荷防止装置の概略システム構成を示すブロック図である。図示するように、手動輪であるハンドホイール3が結合された駆動軸5は減速機構4を介してロードシーブ2に接続され、ハンドホイール3に係合する手動索であるハンドチェーンC2を手引き力で回転させることにより、その回転力は駆動軸5及び減速機構4を介してロードシーブ2に伝達されるようになっている。ロードシーブ2にはロード索であるロードチェーンC1が係合しており、ロードシーブ2が回転することにより、該ロードシーブ2が上昇(巻上げ)又は下降(巻下げ)方向に移動し、ロードチェーンC1に吊り下げられた荷Lが昇降する。6は駆動軸5の回転を制動するブレーキ機構である。なお、ここで減速機構4は必ず必要なものではなく、電動補助モータ付き手動チェーンブロックによっては無い場合もある。
【0017】
駆動軸5には結合部Jを介して電動補助モータ9の回転軸が連結されている。電動補助モータ9はインバータを具備するモータドライバ8から駆動電力(交流電力)を得て回転駆動する、例えばDCブラシレスモータ等の電動モータである。Nsは電動補助モータ9の回転速度を検出する回転速度センサ、Isはモータドライバ8から電動補助モータ9に供給される電流を検出するモータ電流センサ、7はハンドホイール3の回転力(回転トルク)を検出するトルクセンサである。これら回転速度センサNs、モータ電流センサIs、及びトルクセンサ7の各検出出力N
9、I
9、T
7は制御部200に入力される。モータドライバ8はインバータを具備し、該制御部200の制御により、蓄電池Btから直流電力を所定周波数の交流電力に変換し、該交流電力を駆動電力としてモータドライバ8から電動補助モータ9に供給し、電動補助モータ9を運転するようになっている。
【0018】
制御部200は、モータ電流センサIs、及びトルクセンサ7からの各検出出力I
9、T
7により、後述するように荷Lの重量を算出し、算出した重量値が所定以上の場合に電動補助モータ9へ供給する支援分電流I
A9を算出してその支援分電流を電動補助モータ9に供給する。これにより電動補助モータ9から荷Lの重量値の所定割合に相当するトルクを発生させ、ハンドホイール3の回転を補助(支援)する。又はトルクセンサ7の検出出力T
7からハンドホイール3の回転力を算出し、その回転力の所定割合に相当するトルクを発生す支援分電流I
A9を電動補助モータ9に供給し、電動補助モータ9によりハンドホイール3の回転力を補助する。これにより本手動チェーンブロック1を操作する操作者のハンドチェーンC2の手引き力を軽減し、操作者は比較的小さい手引き力でその何倍もの重量の荷Lの上昇(巻上げ)が可能となる。
【0019】
上記のように電動補助モータ付き手動チェーンブロック1は、ロードシーブ2、ハンドホイール3、減速機構4、駆動軸5、ブレーキ機構6、後述する軸受B1〜B9等から構成され、これらの部材及び機構はそれぞれ寿命及び耐久性を有することから、電動補助モータ付き手動チェーンブロック1の製品としての安全性及び製品寿命を維持する観点から巻上げする荷Lの重量の上限値を製品定格として規定している。特に電動補助モータ9の回転力により、ハンドチェーンC2の手引き力を支援するため、製品定格の重量値を超えた荷Lの巻上げを行う虞が多く、これが手動チェーンブロック1を構成する各部品及び機構の破損や故障の原因となり、安全性を脅かし、ひいては製品寿命を短縮させるという問題がある。
【0020】
この問題を解決するため、手動チェーンブロックの所定部位に昇降させる荷Lの重量を直接検知する重量センサを設け、該重量センサの重量検出出力を制御部200に入力し、制御部200は荷Lの重量が所定の上記製品定格の重量値を超えた場合、電動補助モータ9に供給する駆動電流を遮断して、電動補助モータ9の運転を停止する。これによって荷Lの巻上げはハンドチェーンC2の手引き力のみとなるため、この製品定格の重量値を超える荷Lの巻上げは事実上不可能となる。但しこのように荷Lの重量を直接検知する重量センサを設ける方法は、手動チェーンブロック1の何れかの所定部位に荷Lの重量を直接検知する重量センサを設ける必要があり、重量センサにどのような方式のセンサを用いるか、センサをどの位置に設置するかのセンサ設置部位の選定の問題もある。そして場合によっては手動チェーンブロックの大きな改造を必要とするという問題が生じる。そこで本実施形態では、更に既存の電動補助モータ付き手動チェーンブロックでも制御部200のソフトウエアの変更のみで容易に装備できる過負荷防止装置を説明する。
【0021】
上記電動補助モータ付き手動チェーンブロックにおいて、駆動軸5にはハンドホイール3が連結され、該ハンドホイール3の回転力が駆動軸5に伝達されるようになっている。また、電動補助モータ9の回転軸も結合部Jを介して駆動軸5に連結され、その回転力も駆動軸5に伝達されるようになっている。駆動軸5が巻上げ方向に回転している間は、荷Lの重量をM、ロードシーブ2の半径をr、減速機構4の減速比をi(i=(駆動軸5の回転数)/(ロードシーブ2の回転数))とすると、
M・r/i=(ハンドチェーンC2の手引き力)+(電動補助モータ9の回転力)
となる。ハンドホイール3の手引き回転力は、トルクセンサ7の検出出力をT
7とすると、K
1・T
7となる。電動補助モータ9の回転力はモータ電流センサIsで検出されるモータ電流をI
9とするとK
2・I
9となり、
M・r/i=K
1・T
7+K
2・I
9
となる。ここでK
1:比例定数(トルクセンサ7の検出出力T
7を回転力に変換する定数)、K
2:比例定数(モータ電流I
9を回転力に変換する定数)である。
【0022】
ここで電動補助モータ9による荷Lの重量Mに対する支援率をK
3(0≦K
3≦1)とする(K
3=0は電動補助モータ9により回転力支援がない場合、K
3=1は電動補助モータ9の回転力のみで巻上げする場合を示す)。支援荷重Waは、
Wa=K
3・M=K
3・(K
1・T
7+K
2・I
9)・i/r
となり、電動補助モータ9の支援分電流I
A9は、
I
A9=Wa・r/i/K
2=(K
3/K
2)・(K
1・T
7+K
2・I
9)
となる。なお、定数K
1、K
2は機械効率等を含め実験から求められる。
【0023】
制御部200には前記のようにモータ電流センサIsで検出した電動補助モータ9へのモータ電流I
9とトルクセンサ7で検出した検出出力T
7が入力されている。制御部200は上記演算を行って、電動補助モータ9の支援分電流I
A9を算出し、モータドライバ8を介して電動補助モータ9に供給される電流が支援分電流I
A9になるように制御し、電動補助モータ9の回転力が支援荷重Waとなるように制御する。即ち荷Lの重量Mの一定割合(支援率K
3)に対応する回転力を電動補助モータ9から出力する。このためモータドライバ8から電動補助モータ9に供給される電流を検出するモータ電流センサIsを設け、検出されたモータ電流I
9を制御部200に入力し、制御部200はモータドライバ8から電動補助モータ9に供給される電流が支援分電流I
A9=(K
3/K
2)・(K
1・T
7+K
2・I
9)になるようにモータドライバ8を制御するのである。
【0024】
上記電動補助モータ付き手動チェーンブロックにおいて、巻上げ時の荷Lの重量Mは、
支援分電流I
A9による電動補助モータ9の回転力と、ハンドチェーンC2の手引き力によるハンドホイール3の回転力との合計であることに着目し、下式を演算して荷Lの重量Mを算出する。
M=(K
1・T
7+K
2・I
9)・i/r
制御部200には、当該電動補助モータ付き手動チェーンブロック1の製品定格の重量値Msが記憶されており、制御部200は上記演算を行い荷Lの重量Mを算出し、該算出した重量Mの値が製品定格の重量値Msを超えた場合(M≧Ms)、モータドライバ8を制御してモータドライバ8から電動補助モータ9に供給される電流を遮断して電動補助モータ9の支援を停止する。これにより、荷Lの巻上げはハンドチェーンC2の手引き力によるハンドホイール3の回転力のみとなり、事実上荷Lの巻上げは不可能となる。
【0025】
上記のように、制御部200により荷Lの重量Mの値が製品定格の重量値Msを超えた場合(M≧Ms)に電動補助モータ9の支援を停止することにより、電動補助モータ付き手動チェーンブロック1は、製品定格の重量値Msを超えて運転されることはない。これにより手動チェーンブロックの安全性や製品寿命が損なわれることがない。また、ハンドホイール3の回転力を検出するためのトルクセンサ7、モータ電流I
9を検出するためのモータ電流センサIs及び制御部200は、この種の電動補助モータ付き手動チェーンブロック1では通常装備されている。また、制御部200は通常マイクロコンピュータを具備しているから、上記過負荷防止装置は、制御部200のソフトウエアを変更することで対処できる。従って、荷Lの重量Mを測定するための格別な重量測定手段を設ける必要もない。よって、既存の電動補助モータ付き手動チェーンブロック1にも容易に装備することが可能となる。
【0026】
次に、上記構成の過負荷防止装置を用いる電動補助モータ付き手動チェーンブロックの機械的構成の一例を説明する。
図2は本発明に係る電動補助モータ付き手動チェーンブロックの概略構成例を示す側断面図、
図3は
図2の電動補助モータ付き手動チェーンブロックのハンドホイールよりもケース本体側の構成を示す側断面図である。なお、以下の説明においては、
図2において右側をX1側(一方側)とし、左側をX2側(他方側)とし、ロードチェーンC1から見て上フックFuが位置する側をZ1側(上側)、上フックFuから見てロードチェーンC1が位置する側をZ2側(下側)とする。
【0027】
図2及び
図3に示すように、本電動補助モータ付き手動チェーンブロック1は、上フックFuと、図示は省略する下フックFdと、ロードシーブ2と、ハンドホイール3と、減速機構4と、駆動軸5、ブレーキ機構6、トルクセンサ7と、モータドライバ8、電動補助モータ9とを主要な構成要素としている。ロードシーブ2は第1フレーム11と第2フレーム12の間に配置され、ハンドホイール3及びブレーキ機構6は第2フレーム12と第3フレーム13の間に配置されている。また、第1フレーム11のX1側にはギヤケース14が配置され、該ギヤケース14内に減速機構4が配置されている。また、第3フレーム13のX2側にはカバー15が配置され、該カバー15内で第3フレーム13のX2側にはモータドライバ8が配置され、更にそのX2側には電動補助モータ9が配置されている。
【0028】
ロードシーブ2を構成するロードシーブ中空軸20は、第1フレーム11及び第2フレーム12を貫通して配置され、軸受B1、B2を介して第1フレーム11及び第2フレーム12に軸支されている。ロードシーブ中空軸20は、一対のフランジ部21、21を有し、該一対のフランジ部21、21の間にチェーンポケット22が形成され、該チェーンポケット22にはロードチェーンC1が嵌り込むようになっている。これにより、ロードシーブ中空軸20の回転に伴って、ロードチェーンC1が巻上げ・巻下げ方向(Z1,Z2方向)に移動し、図示しない下フックFdに吊り下げられた荷の昇降が可能となる。また、チェーンポケット22のZ1側には、繋ぎ軸16が位置し、この繋ぎ軸16を介して上フックFuが上側に向かって突出している。
【0029】
また、ロードシーブ中空軸20には、中空孔23が形成されており、該中空孔23には駆動軸5が挿入されるようになっている。また、中空孔23の第2フレーム12側の端部には、軸受配置凹部が形成され、該軸受配置凹部に駆動軸5を軸支する軸受B3が配置されている。また、ロードシーブ中空軸20のX1側端の部位にはギヤ嵌合部が設けられ、該ギヤ嵌合部には減速機構4を構成するロードギヤ31がスプライン結合により固定されている。この減速機構4は、前述のようにギヤケース14内に配置され、ロードギヤ31以外に、図示は省略する小径ギヤや大径ギヤ32を備えている。該小径ギヤはロードギヤ31に噛み合い大径ギヤ32は駆動軸5のピニオンギヤ33と噛み合っている。
【0030】
駆動軸5は、後述するハンドホイール3及び電動補助モータ9の駆動力(回転力)を減速機構4を介してロードシーブ中空軸20に伝達する部材である。そのため駆動軸5は、ギヤケース14側(X1側)からカバー15側まで延伸している。上述したように、駆動軸5はその中央部をロードシーブ中空軸20の中空孔23内で軸受B3により回転自在に軸支され、駆動軸5のX1側の端部は軸受B4によりギヤケース14に軸支されている。
【0031】
また、駆動軸5のロードシーブ中空軸20の中空孔23からカバー15側(X2側)にはみ出した部分には多条ネジ42が形成されている。該多条ネジ42はブレーキ機構6を構成するブレーキ受51の雌ネジ部51aやホイール支持部材52の雌ネジ部52aが捩じ込まれる。この多条ネジ42よりもX1側に向かうと、駆動軸5のうちロードシーブ中空軸20の手前の位置には、段部43が設けられており、この段部43を境に駆動軸5のX1側よりX2側が小径になっている。多条ネジ42の捩じ込みにより段部43にブレーキ受51が係合(押圧)すると、以後ブレーキ受51は駆動軸5と一体的に回転するようになっている。
【0032】
また、駆動軸5のX2側端部には嵌合凸部57が設けられ、該嵌合凸部57が電動補助モータ9のアウターロータ92の嵌合凹部92dに嵌り込む。この嵌合凸部57と嵌合凹部92dで
図1の結合部Jが構成されている。なお、嵌合凸部57と嵌合凹部92dは、キー、スプライン、非円形(例えば多角形)の嵌め合い等、電動補助モータ9のアウターロータ92の回転力が駆動軸5に伝達可能であれば、どのような嵌め合い構造であっても良い。
【0033】
図2に示すように、ブレーキ機構6はブレーキ受51、ホイール支持部材52、一対のブレーキ板53a、53b及び爪車54を構成要素としている。ブレーキ受51は、上述した雌ネジ部51a以外に、フランジ部51bを有しており、該フランジ部51bにはX2側からブレーキ板53aが接触し、爪車54との間で該ブレーキ板53aを挟持する。
【0034】
ホイール支持部材52も
図3に示すように、雌ネジ部52a以外に、フランジ部52bを有し、該フランジ部52bにはX1側からブレーキ板53bが接触し、爪車54との間に該ブレーキ板53bを挟持する。また、ホイール支持部材52は筒状部52cを有し、該筒状部52cはホイールハブ62のハブ筒部62aの内部に位置し、このホイールハブ62を支持する。なお、筒状部52cのX2側端部には、スプライン52dが設けられており、ホイールハブ62のスプラインと嵌合して、ホイールハブ62と一体的に回転可能となっている。また、筒状部52cのX2側端部は、ハブ筒部62aから飛び出している。
【0035】
また、ブレーキ受51の外周側には、爪車54が配置されている。爪車54は、ブレーキ板53a,53bとの係合によってブレーキ機構6の一部として機能するが、図示しない爪部材と係合してワンウエイクラッチとしても機能する。なお、ロードシーブ中空軸20が荷を巻下げる方向に回転しようとして、減速機構4を介して駆動軸5を回転させようとしても、爪車54の爪部材によって回転が阻止される。ここで、ホイール支持部材52に対して駆動軸5が回転しようとすると、雌ネジ部52aと多条ネジ42との噛合により、フランジ部52bがブレーキ板53bを介して爪車54を圧接する。その圧接の力は、ブレーキ板53aを介してブレーキ受51にも作用し、ブレーキ受51は駆動軸5と共にその回転が阻止される。
【0036】
また、ハンドホイール3は、ホイールリング61と、該ホイールリング61を固定しているホイールハブ62とを有している。環状のホイールリング61は、チェーンポケット61aを有していて、該チェーンポケット61aには、ハンドチェーンC2が嵌まり込んでいる。これによりハンドチェーンC2を手引きすることにより、ハンドホイール3は荷の巻上げ方向または荷の巻下げ方向のいずれかの方向に回転させられる。
【0037】
ホイールハブ62は、X2側に向かって延伸するハブ筒部62aを有していて、該ハブ筒部62aは、カバー15の内部に入り込む。ハブ筒部62aは、後述する円筒部材80の内筒側で、軸受B5、B6を介して回転自在に支持されている。なお、軸受B5、B6は、所定の間隔を隔てて位置し、ホイールハブ62及びハンドホイール3を回転自在に支持する。また、ハブ筒部62aの内筒側には、スプライン52dと噛み合うスプライン62bが設けられている。
【0038】
ここで、ハブ筒部62aの外周側には、磁歪部分62cが設けられている。該磁歪部分62cは、トルクセンサ7を構成する部分である。磁歪部分62cは、軸受B5、B6によって、センサコイル71に対して回転可能に支持されている。磁歪部分62cは少なくとも表面は磁歪材で構成され、同じくトルクセンサ7を構成するセンサコイル71に非接触で対向している。磁歪部分62cに捩れが生じると、この捩れが生じた部分の透磁率に変化が生じ、この透磁率の変化をセンサコイル71でインダクタンスの変化として磁歪部分62cに非接触で検出(
図1のT
7を参照)している。なお、トルクセンサ7はスリップリング方式のような接触式のものでもよい。また、トルクセンサ7としては磁歪方式に限定するものではなく、ホイールリング61に加わるトルクを検出できるものであればよい。
【0039】
また、第3フレーム13には、円筒部材80が取り付けられている。円筒部材80の内筒側には、上述した軸受B5、B6が所定の間隔を隔てて配置され、該軸受B5、B6でホイールハブ62が回転自在に支持されると共に、軸受B5、B6の間にセンサコイル71も配置されている。これにより円筒部材80の内筒側では、ホイールハブ62(ハンドホイール3)が回転自在に支持され、磁歪部分62cはセンサコイル71に非接触で回転する。なお、円筒部材80の内筒側には、軸受B5、B6を収容する軸受収容部が形成されている。
【0040】
円筒部材80のX2側には、電動補助モータ9のステータ91が固定されている。該ステータ91は、図示は省略するが、ステータコイルが巻回されている。該ステータ91は周方向に所定の個数が配置されている。また、ステータ91の径方向の中心には、孔部91aが設けられ、該孔部91aには電動補助モータ9のアウターロータ92の中心軸部92cが挿通されている。中心軸部92cは、アウターロータ92のX2側端面よりもX1側に向かって延伸部分である。この中心軸部92cは、ネジ93等を介してアウターロータ92に固定されている。また、中心軸部92cは、円柱状の部分であり、孔部91aに挿入される部分である。そして、この孔部91aにおいて、中心軸部92cは、軸受B7、B8を介して円筒部材80に支持されている。
【0041】
また、中心軸部92cのX1側の端部には、X2側に向かって窪む嵌合凹部92dが設けられている。該嵌合凹部92dは駆動軸5の嵌合凸部57が嵌まり込む部分であり、かかる嵌まり込みによって電動補助モータ9のアウターロータ92の駆動力は、ブレーキ機構6の動作により、少なくとも巻上げ時には、ハンドホイール3と一体的に回転する。なお、嵌合凹部92dにおいて、駆動軸5の嵌合凸部57は、軸線方向に若干の移動を可能としている。それにより、駆動軸5がスラスト方向に大きな荷重を受けた場合に、若干のガタ付き(軸線方向の移動)を可能としている。中心軸部92cのX2側端部は、軸受B9(スラスト軸受)で支持される部分であり、中心軸部92cに駆動軸5側又は筒状部52c側から押込力が加えられても、その荷重を受け止めることが可能となっている。
【0042】
また、第3フレーム13には、カバー15が取り付けられ、該カバー15と第3フレーム13とによって、ケース本体100を構成している。該ケース本体100によって外部から気密に閉塞される内部空間Pが形成されている。該内部空間Pには、上記のように電動補助モータ9、モータドライバ8、及びトルクセンサ7が配置される。カバー15は外観がカップ状でその周壁端部(X1側端部)が第3フレーム13に当接して取り付けられている。カップ状のカバー15の底部であるX2側内壁面には径方向中心に、軸受B9を収容する軸受支持部が設けられている。
【0043】
次に、上記構成の電動補助モータ付き手動チェーンブロック1の動作について説明する。図示を省略する下フックFdに荷を掛けた状態で、ハンドチェーンC2を巻上げ方向に手引き力で操作すると、ハンドホイール3が回転する。該ハンドホイール3の回転に伴い、該ハンドホイール3と一体的に回転するホイールハブ62とスプライン結合されている、ホイール支持部材52も回転する。これによりホイール支持部材52は雌ネジ部52aでの多条ネジ42への噛合により、X1側に向かって移動する。この移動によりホイール支持部材52のフランジ部52bは、X2側のブレーキ板53bを押圧し、更に爪車54はX1側のブレーキ板53aを押圧する。この押圧により駆動軸5と共に非回転状態にあるブレーキ受51は、ホイール支持部材52及びハンドホイール3と共に回転する状態となる。
【0044】
ブレーキ受51は雌ネジ部51aでの多状ネジ42への噛合により、X1側に向かって移動し、暫くしてブレーキ受51が段部43に当接して、これ以上のX1側への移動が阻止される。これにより、ブレーキ受51が駆動軸5と駆動的に結合する状態となり、ハンドホイール3の回転に伴って駆動軸5も回転する。このハンドホイール3の回転により、ハブ筒部62a及び磁歪部分62cが捩じられる。これにより磁歪部分62cの透磁率が変化し、該透磁率の変化に対応するインダクタンスの変化がセンサコイル71で検出され、
図1に示すように、トルクセンサ7から検出出力T
7として、制御部200に入力される。
【0045】
制御部200には、
図1に示すように、モータ電流センサIsで検出した電動補助モータ9への電流I
9、トルクセンサ7の検出出力T
7(センサコイル71の磁歪部分62cの捩れによる透磁率の変化に起因するインダクタンスの変化)が入力されている。制御部200は該検出出力T
7から、ハンドホイール3の回転力が所定以上の場合に電動補助モータ9を起動すると共に、上記のようにモータ電流センサIsで検出された電動補助モータ9への電流I
9とトルクセンサ7の検出出力T
7から上記のように荷Lの重量Mを算出する。そして該重量Mに対する支援割合から、電動補助モータ9に供給する支援分電流I
A9を決定し、モータドライバ8を制御して、電動補助モータ9に支援分電流I
A9を供給する。
【0046】
なお、上記例では荷Lの重量Mに対する支援割合から支援分電流I
A9を決定しているが、トルクセンサ7の検出出力T
7からハンドホイール3の回転力を算出し、この回転力の何割を支援するかで支援分電流I
A9を決定し、支援分電流I
A9を電動補助モータ9に供給する場合もある。
【0047】
上記のように支援分電流I
A9を電動補助モータ9に通電することにより、電動補助モータ9のアウターロータ92は、該支援分電流I
A9に対応したトルクにて回転し、該回転力が駆動軸5に与えられる。この駆動軸5の回転力は、減速機構4を介してロードシーブ中空軸20に伝達され、ロードシーブ中空軸20が回転させられる。これによりロードチェーンC1は荷Lを上昇させる方向に送られる。
【0048】
次に、吊り上げられている荷を降ろす場合、ハンドチェーンC2を荷を上昇させる時とは逆向きに手引きする。これにより、ハンドホイール3と共に回転するホイール支持部材52は、ブレーキ板53b、53aに対する圧接を緩めることになる。この緩めた分だけ駆動軸5が荷Lの重量によって、巻上げ方向とは逆の方向に回転する。これにより荷Lが徐々に下降されていく。
【0049】
ここで、巻上げ時、又は巻下げ時にハンドチェーンC2から手を離しても、荷は落下しない。この場合、荷Lの重力によって駆動軸5を逆転させようとする回転力が作用しても、ハンドホイール3が回転しない状態では、ホイール支持部材52も回転しない。またホイール支持部材52における雌ネジ部52aでの多条ネジ42への噛合により、ホイール支持部材52がX1側に向かって移動しようとする。すると、ホイール支持部材52がブレーキ板53a,53bを爪車54に押し付け、更に爪車54の回転が阻止されるので、ブレーキ受51は駆動軸5と共に回転せず、ブレーキ受51は段部43に当接する。この当接後は駆動軸5の回転は阻止される。これにより荷の落下が防止される。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。特に、電動補助モータ付き手動チェーンブロックの機械的構成は、
図2及び
図3に示す構成に限定されるものではない。また、電動補助モータ9にアウターロータ型DCブラシレスモータを用いたが、これに限定されるものではなく、インナーロータ型DCブラシレスモータであってもよい。また、他の電動モータ、例えば誘導型電動モータであってもよい。
【0051】
電動補助モータ付き手動チェーンブロック(電動補助モータ付き手動巻上機も同様)は、上記のように、電動補助モータ9でハンドホイール3の回転を支援することから、巻上機の機械的構成をより簡略化することができる。例えばチェーンブロックの減速機構4を省略することも可能である。この場合は、減速機構4がないことから、手動チェーンブロック(手動巻上機)の機械的構成は更に簡単なものとなる。