(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0016】
また、断面図および平面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。また、断面図と平面図が対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら本実施の形態の半導体装置について詳細に説明する。
【0018】
[構造説明]
図1は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図2は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す平面図である。
図1の断面図は、例えば、
図2のA−A断面に対応する。
【0019】
本実施の形態の半導体装置は、窒化物半導体を用いたMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電界効果トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)である。この半導体装置は、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)やパワートランジスタとも呼ばれる。本実施の形態の半導体装置は、いわゆるリセスゲート型の半導体装置である。
【0020】
本実施の形態の半導体装置においては、
図1に示すように、基板S上に、チャネル層CHおよび障壁層BAが順に形成されている。なお、トランジスタが形成される活性領域ACは、素子分離領域ISOにより区画されている(
図2参照)。
【0021】
そして、障壁層BA上には、絶縁膜(IF1、IF2)が形成されている。この絶縁膜は、2層の絶縁膜よりなる。障壁層BA上に、下層の絶縁膜IF1が形成され、下層の絶縁膜IF1上に上層の絶縁膜IF2が形成されている。
【0022】
この絶縁膜(IF1、IF2)は、ゲート電極GEをパターニングする際のエッチングストッパーとしての役割を有する。また、この上層の絶縁膜IF2は、下層の絶縁膜IF1よりバンドギャップが小さい膜である。そして、上層の絶縁膜IF2は、後述するゲート絶縁膜GIよりバンドギャップが小さい膜である(
図15参照)。
【0023】
ゲート電極GEは、絶縁膜(IF1、IF2)および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで到達する溝Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。チャネル層CHや障壁層BAは窒化物半導体よりなり、障壁層BAは、チャネル層CHよりバンドギャップが広い窒化物半導体である。
【0024】
チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍のチャネル層CH側に、2次元電子ガス2DEGが生成される。また、ゲート電極GEに閾値電位(電位V2>0、駆動電位ともいう)が印加された場合には、ゲート絶縁膜GIとチャネル層CHとの界面近傍には、チャネルが形成される。
【0025】
上記2次元電子ガス2DEGは次のメカニズムで形成される。チャネル層CHや障壁層BAを構成する窒化物半導体(ここでは、窒化ガリウム系の半導体)は、それぞれ、バンドギャップ(禁制帯幅)や電子親和力が異なる。このため、これらの半導体の接合面に、井戸型ポテンシャルが生成される。この井戸型ポテンシャル内に電子が蓄積されることにより、チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍に、2次元電子ガス2DEGが生成される。
【0026】
ここで、チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍に形成される、2次元電子ガス2DEGは、ゲート電極GEが形成されている溝Tにより分断されている。このため、本実施の形態の半導体装置においては、ゲート電極GEに閾値電位が印加されていない状態においてオフ状態を維持でき、ゲート電極GEに閾値電位を印加した状態においては、チャネルが形成され、オン状態を維持できる。このように、ノーマリーオフ動作を行うことができる。
【0027】
本実施の形態の半導体装置の構成について、さらに詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置は、基板S上に、窒化物半導体からなるチャネル層CHが形成され、チャネル層CH上に、窒化物半導体からなる障壁層BAが形成されている。なお、基板Sとチャネル層CHとの間に、基板S側から核生成層、歪緩和層やバッファ層などを設けてもよい。これらの層は、窒化物半導体からなる。核生成層は、歪緩和層などの上部に形成される層が成長する際の結晶核を生成させるために形成する。また、上方に形成される層から基板Sに、上部に形成される層の構成元素(例えば、Gaなど)が拡散して、基板Sが変質することを防ぐために形成する。また、歪緩和層は、基板Sに対する応力を緩和して、基板Sに反りやクラックが発生することを抑制するために形成する。バッファ層は、チャネル層CHと歪緩和層との間に位置する中間層である。
【0028】
ゲート電極GEは、絶縁膜(IF1、IF2)および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで掘り込まれた溝(トレンチ、リセスともいう)Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。
【0029】
絶縁膜(IF1、IF2)は、開口領域(OA1)に開口部を有する(
図5参照)。この開口部に対応して、溝Tが形成されている。
【0030】
この溝T内および絶縁膜(IF1、IF2)上に、ゲート絶縁膜GIが形成されている。このゲート絶縁膜GI上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEの上面から見た形状(以下、平面形状という)は、例えば、矩形状である(
図2参照)。ここでは、ゲート絶縁膜GIとゲート電極GEとは、同じ平面形状である。
【0031】
このゲート電極GEは、一の方向(
図1中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状である。この張り出し部は、フィールドプレート電極(ファラデーシールド電極ともいう)と呼ばれる。このフィールドプレート電極は、ドレイン電極DE側の溝Tの端部からドレイン電極DE側へ延在するゲート電極GEの一部の領域である。
【0032】
また、ゲート電極GEは、ソース電極SE側の溝Tの端部からソース電極SE側へも延在している。そして、ドレイン電極DE側またはソース電極SE側へ張り出だしている(延在している)ゲート電極部の下には絶縁膜(IF1、IF2)が配置されている。
【0033】
また、ゲート電極GEの両側の障壁層BA上には、ソース電極SEおよびドレイン電極DEが形成されている。障壁層BAとソース電極SEは、オーミック層を介してオーミック接続されている。また、障壁層BAとドレイン電極DEは、オーミック層を介してオーミック接続されている。ソース電極SEは、層間絶縁膜IL1中に形成されたコンタクトホールC1S中に位置する接続部(プラグ)と、この接続部上の配線部とからなる。また、ドレイン電極DEは、層間絶縁膜IL1中に形成されたコンタクトホールC1D中に位置する接続部(プラグ)と、この接続部上の配線部とからなる。ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、保護絶縁膜PROにより覆われている。ソース電極SEおよびドレイン電極DEの平面形状は、例えば、矩形状である(
図2参照)。
【0034】
なお、前述したゲート電極GEは、層間絶縁膜IL1中に形成されたコンタクトホールC1G中に位置する接続部(プラグ)を介してゲート配線GLと接続される(
図2参照)。
【0035】
このように、上層の絶縁膜IF2を、下層の絶縁膜IF1よりバンドギャップが小さい膜で構成することにより、後述するように、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)を蓄積することができ、溝の角部における電界強度が向上する。その結果、溝の角部においても、チャネルが十分に形成され、オン抵抗を低減し、オン電流を大きくすることができる。このように、トランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0036】
[製法説明]
次いで、
図3〜
図13を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図3〜
図13は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0037】
図3に示すように、基板S上に、チャネル層CHを形成する。基板Sとして、例えば、低効率1Ω・cmで、(111)面が露出しているシリコン(Si)からなる半導体基板を用い、その上部に、チャネル層CHとして、窒化ガリウム(GaN)層を、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などを用いてヘテロエピタキシャル成長させる。このチャネル層CHの膜厚は、例えば、1μm程度である。なお、基板Sとしては、上記シリコンの他、SiCやサファイアなどからなる基板を用いてもよい。また、基板Sとチャネル層CHとの間に、基板S側から核生成層、歪緩和層やバッファ層を設けてもよい。例えば、核生成層として、窒化アルミニウム(AlN)層、歪緩和層として、窒化ガリウム(GaN)層と窒化アルミニウム(AlN)層との積層膜(AlN/GaN膜)、バッファ層として、AlGaN層などを用いる。これらの層は、有機金属気相成長法などを用いて形成することができる。この場合、基板Sの表面からチャネル層CHの表面までの膜厚は、3〜5μm程度である。
【0038】
次いで、チャネル層CH上に、障壁層BAとして、例えば、AlGaN(Al
XGa
(1−X)N層)を、有機金属気相成長法などを用いてヘテロエピタキシャル成長させる。AlGaN層の膜厚は、例えば、0.03μm程度である。
【0039】
このようにして、チャネル層CHおよび障壁層BAの積層体が形成される。この積層体は、上記ヘテロエピタキシャル成長、即ち、[0001]結晶軸(C軸)方向に積層するIII族面成長により形成される。言い換えれば、(0001)Ga面成長により上記積層体が形成される。この積層体のうち、チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍には、2次元電子ガス2DEGが生成される。
【0040】
次いで、障壁層BA上に、カバー膜として絶縁膜(IF1、IF2)を形成する。例えば、絶縁膜IF1として、酸化シリコン膜(SiO
2膜、酸化シリコンを含有する膜)を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、障壁層BA上に、0.02μm程度の膜厚で堆積する。次いで、絶縁膜IF1上に、絶縁膜IF2として、窒化シリコン膜(Si
3N
4膜、窒化シリコンを含有する膜)を、CVD法などを用いて、絶縁膜IF1に、0.02μm程度の膜厚で堆積する。下層の酸化シリコン膜のバンドギャップは、8.9eV程度であり、上層の窒化シリコン膜のバンドギャップは、4.5eV程度である。このように、上層の窒化シリコン膜のバンドギャップは、下層の酸化シリコン膜のバンドギャップより小さい(
図15参照)。
【0041】
次いで、
図4に示すように、絶縁膜(IF1、IF2)上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、素子分離領域を開口するフォトレジスト膜PR1を形成する。次いで、このフォトレジスト膜PR1をマスクとして、ボロン(B)または窒素(N)を打ち込む。このボロン(B)または窒素(N)は、絶縁膜(IF1、IF2)を介して、チャネル層CHおよび障壁層BA中に注入される。このように、ボロン(B)や窒素(N)などのイオン種が、チャネル層CHおよび障壁層BA中に打ち込まれることにより、結晶状態が変化し、高抵抗化する。このようにして、素子分離領域ISOを形成する。この後、フォトレジスト膜PR1を除去する。この素子分離領域ISOで囲まれた領域が活性領域ACとなる(
図2参照)。
【0042】
次いで、
図5に示すように、絶縁膜IF2上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA1に開口部を有するフォトレジスト膜PR2を形成する。次いで、フォトレジスト膜PR2をマスクとして、絶縁膜(IF1、IF2)をエッチングする。なお、このように、フォトリソグラフィ(露光、現像)により所望の形状に加工したフォトレジスト膜、または、ハードマスク膜などをマスクとして、エッチングを行うことにより、下層の材料を所望の形状に加工することをパターニングという。窒化シリコン膜および酸化シリコン膜のエッチングガスとしては、例えば、CF
4やCHF
3などのガスを用いることができる。これにより、障壁層BA上に、開口領域OA1に開口部を有する絶縁膜(IF1、IF2)が形成される。言い換えれば、開口領域OA1において、障壁層BAが露出する(
図5)。
【0043】
続けて、
図6に示すように、フォトレジスト膜PR2をマスクとして、障壁層BAおよびチャネル層CHをエッチングすることにより、絶縁膜(IF1、IF2)および障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝Tを形成する。エッチングガスとしては、例えば、ハロゲン系のガス(Cl
2、HBr、BCl
3など)を用い、プラズマ雰囲気下でドライエッチングを行う。プラズマ源としては、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)などを用いることができる。開口領域OA1において、2次元電子ガス2DEGを確実に除去するため、0.03μmの膜厚の障壁層(AlGaN)BAを用いた場合、障壁層(AlGaN)BAの表面から0.04μm程度の深さまでエッチングする。言い換えれば、障壁層(AlGaN)BAの底面と溝Tの底面との高低差は、0.01μm程度である。これにより、開口領域OA1の障壁層(AlGaN)BAおよびチャネル層(GaN)CHの表面部が除去され、開口領域OA1からチャネル層(GaN)CHが露出する。次いで、フォトレジスト膜PR2を除去する。
【0044】
次いで、
図7に示すように、溝T内および絶縁膜(IF1、IF2)上に、ゲート絶縁膜GIを形成する。例えば、ゲート絶縁膜GIとして、酸化アルミニウム膜(アルミナ、Al
2O
3)をALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて、溝T内および絶縁膜(IF1、IF2)上に0.1μm程度の膜厚で堆積する。このゲート絶縁膜GIのバンドギャップは、その下層に位置する絶縁膜(窒化シリコン膜)IF2のバンドギャップより大きい(
図15参照)。酸化アルミニウム膜のバンドギャップは、6eV程度であり、その下層の窒化シリコン膜のバンドギャップは、4.5eV程度である。
【0045】
ゲート絶縁膜GIとしては、例えば、上記酸化アルミニウム膜の他、酸化シリコン膜や、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を用いてもよい。高誘電率膜として、酸化ハフニウム膜(HfO
2膜)、ハフニウムアルミネート膜、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)、HfAlO膜のような他のハフニウム系絶縁膜を用いてもよい。このようなハフニウム系絶縁膜のバンドギャップは、窒化シリコン膜のバンドギャップより大きい。
【0046】
ゲート絶縁膜GIの膜種や膜厚は、回路動作で必要とされる動作電圧、信頼性および破壊耐圧などを考慮して設計される。例えば、ゲート絶縁膜GIとして、酸化アルミニウム膜や酸化シリコン膜を用いる場合、2MV〜4MV/cmの電界で設計することで、実用上充分な長期信頼性が得られる。したがって、20V〜40V程度で動作させたいトランジスタを設計する場合、ゲート絶縁膜(酸化アルミニウムや酸化シリコン膜)GIの膜厚が、0.1μm程度必要であるということとなる。
【0047】
多くの場合、ゲート絶縁膜GIの膜厚(0.1μm)は、溝Tの深さより大きいこととなる。ここで言う溝の深さとは、第1深さとして、障壁層BAの表面と溝Tの底面との高低差(本実施の形態の場合、0.04μm)により定義される。また、第2深さとして、上層の絶縁膜IF2の表面と溝Tの底面との高低差(本実施の形態の場合、0.08μm)により定義される。本実施の形態において、ゲート絶縁膜GIの膜厚が0.1μmの場合、ゲート絶縁膜の膜厚は、第1深さより大きく、また、第2深さよりも大きい。
【0048】
次いで、ゲート絶縁膜GI上にゲート電極GEとなる導電性膜を形成する。例えば、ゲート絶縁膜GI上に、導電性膜として、例えば、ニッケル(Ni)膜と、その上部の金(Au)膜からなる積層膜(Au/Ni膜ともいう)を、スパッタリング法などを用いて堆積する。
【0049】
次いで、
図8に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、ゲート電極GEおよびゲート絶縁膜GIをパターニングすることによりゲート電極GEを形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート電極GEの形成領域を覆うフォトレジスト膜PR3を形成し、このフォトレジスト膜PR3をマスクとして、ゲート電極GEおよびゲート絶縁膜GIをエッチングする。エッチングガスとしては、例えば、ハロゲン系のガス(Cl
2、HBrなどやこれらの混合ガス)を用い、プラズマ雰囲気下でドライエッチングを行う。プラズマ源としては、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)などを用いることができる。この後、フォトレジスト膜PR3を除去する。
【0050】
なお、このエッチングの際、絶縁膜(IF1、IF2)がエッチングストッパーの役割を果たす。絶縁膜(IF1、IF2)を形成せず、障壁層BA上に直接形成されたゲート電極GEおよびゲート絶縁膜GIをフォトレジスト膜PR3をマスクにドライエッチングした場合、障壁層BAにダメージが生じる。特に、プラズマ雰囲気下で処理を行った場合には、プラズマダメージが生じる。このようなダメージにより、2次元電子ガスが良好に形成されなくなる。さらに、例えば、障壁層BAが厚い場合には、結晶性の低下とともにデバイス動作に好ましくない転位が顕著に発生し、逆に薄い場合には2次元電子ガスの濃度が低下する。このため、障壁層BAは、適切な厚さ(例えば、0.02μm〜0.04μm程度の膜厚)で形成することが好ましい。このように、障壁層BAが薄い場合、障壁層BAがエッチング雰囲気に晒されると、部分的にエッチングが生じ、その膜厚のばらつきが大きくなる、また、部分的に膜が消失する恐れがある。このような場合には、2次元電子ガスが良好に形成されず、例えば、2次元電子ガスの抵抗が上昇する。このように、トランジスタの動作特性が劣化してしまう。
【0051】
これに対し、本実施の形態においては、絶縁膜(IF1、IF2)がエッチングストッパーとして機能するため、2次元電子ガスが良好に形成され、トランジスタの特性を向上させることができる。
【0052】
なお、絶縁膜(IF1、IF2)はエッチングストッパーとして機能するため、ゲート電極GEの両側に露出した絶縁膜(IF1、IF2)の表面が後退する場合がある。このように、ゲート電極GEの両側に露出した絶縁膜(IF1、IF2)の表面が後退してもよい。但し、エッチング終了時に、上層の絶縁膜IF2が残存していることが好ましい。例えば、ゲート絶縁膜GIとして酸化シリコン膜を用い、かつ、下層の絶縁膜(酸化シリコン膜)IF2が露出した場合には、エッチングが急激に進み、下層の障壁層BAがエッチング雰囲気に晒されることとなり、エッチングダメージが加わる。このため、上層の絶縁膜が残存している状態でエッチングをストップすることが好ましい。絶縁膜(IF1、IF2)をエッチングストッパーとして機能させるための絶縁膜IF1、IF2の好ましい膜厚については、エッチング条件や絶縁膜の種類によっても変化し得るが、例えば、本実施の形態においては、絶縁膜IF1とIF2のトータル膜厚を、0.03μm〜0.1μm程度とすることが好ましい。また、上層の絶縁膜IF2をエッチング終了時にできるだけ残存させるためには、絶縁膜IF2の膜厚を、0.02μm〜0.07μm程度とすることが好ましい。また、絶縁膜IF1の膜厚は、後述するトンネル現象を生じやすくすることを考慮すると、0.01μm〜0.03μm程度とすることが好ましい。
【0053】
また、ゲート電極GEのパターニングの際、ゲート電極GEを、一の方向(
図8中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状にパターニングする。言い換えれば、ゲート電極GEの一部として、フィールドプレート電極を設けるようにパターニングを行う。フィールドプレート電極は、ゲート電極GEの一部の領域であり、ドレイン電極DE側の溝Tの端部からドレイン電極DE側へ延在する電極部分を指す。なお、ゲート電極GEは、他の方向(
図8中では左側、ソース電極SE側)へも張り出している。但し、張り出し量は、ソース電極SE側よりドレイン電極DE側の方が大きい。
【0054】
次いで、
図9に示すように、ゲート電極GE上に、層間絶縁膜IL1を形成する。ゲート電極GEおよび絶縁膜(IF1、IF2)上に、層間絶縁膜IL1として、例えば、酸化シリコン膜をCVD法などを用いて0.7μm程度の膜厚で堆積する。
【0055】
次いで、
図10に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、層間絶縁膜IL1中にコンタクトホールC1S、C1Dを形成する。例えば、図示しないフォトレジスト膜をマスクとして、ソース電極SEの形成領域の層間絶縁膜IL1をエッチングすることにより、コンタクトホールC1Sを形成し、ドレイン電極DEの形成領域の層間絶縁膜IL1をエッチングすることにより、コンタクトホールC1Dを形成する。このエッチングの際、層間絶縁膜IL1の下層の絶縁膜(IF1、IF2)も除去する。これにより、コンタクトホールC1SおよびコンタクトホールC1Dの底部から障壁層BAが露出する。このように、コンタクトホールC1SおよびコンタクトホールC1Dは、ゲート電極GEの両側の障壁層BA上にそれぞれ配置される。なお、コンタクトホールC1SおよびコンタクトホールC1Dの形成の際、ゲート電極GE上にもコンタクトホール(C1G)が形成される(
図2参照)。
【0056】
次いで、
図11に示すように、コンタクトホールC1S、C1D等の内部を含む層間絶縁膜IL1上に、導電性膜CLを形成する。まず、コンタクトホールC1S、C1Dの内部を含む層間絶縁膜IL1上に、オーミック層を形成する。例えば、チタン(Ti)膜を、スパッタリング法などを用いて、コンタクトホールC1S、C1D内を含む層間絶縁膜IL1上に0.05μm程度堆積する。次いで、オーミック層上に、金属膜として、アルミニウム膜を、スパッタリング法などを用いて0.6μm程度の膜厚で堆積する。次いで、障壁層BAとオーミック層との接続抵抗を低減するため、熱処理を行う。例えば、窒素雰囲気中、650℃、30秒程度の熱処理を行う。なお、金属膜としては、アルミニウムの他、アルミニウム合金を用いてもよい。アルミニウム合金としては、例えば、AlとSiの合金(Al−Si)、AlとCu(銅)との合金(Al−Cu)、AlとSiとCu(Al−Si−Cu)などを用いることができる。
【0057】
次いで、
図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、Ti/Al膜をパターニングすることにより、コンタクトホールC1S、C1D内およびその上に、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて、導電性膜CL上に、ソース電極SEの形成領域およびドレイン電極DEの形成領域を覆うフォトレジスト膜PR4を形成し、このフォトレジスト膜PR4をマスクとして、導電性膜CLをエッチングする。これにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。この際、ゲート電極GE上のコンタクトホールC1G内にも導電性膜CLが埋め込まれ、その上にゲート配線GLが形成される(
図2参照)。この後、フォトレジスト膜PR4を除去する。
【0058】
次いで、
図13に示すように、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上を含む絶縁膜IL1上に、保護絶縁膜(表面保護膜ともいう)PROを形成する。ソース電極SEおよびドレイン電極DE上を含む層間絶縁膜IL1上に、保護絶縁膜PROとして、例えば、酸窒化シリコン(SiON)膜を、CVD法などを用いて堆積する。
【0059】
以上の工程により、
図1に示す半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0060】
このように、本実施の形態においては、上層の絶縁膜IF2を、下層の絶縁膜IF1よりバンドギャップが小さい膜で構成することにより、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)を蓄積することができ、溝の角部における電界強度が向上する。その結果、溝の角部においても、チャネルが十分に形成され、オン抵抗を低減し、オン電流を大きくすることができる。このように、トランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0061】
図14(A)〜(D)は、本実施の形態の効果を説明するための溝の底面の端部近傍の模式図である。
図14(A)に示すように、カバー膜として単層の絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜)IFを用いた場合、絶縁膜IFの底面とゲート電極GEの底面との間に位置する等電位曲線の間隔が広くなる。これに対し、本実施の形態のように、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)が蓄積されている場合は、
図14(B)に示すように、絶縁膜IF2の底面とゲート電極GEの底面との間に位置する等電位曲線の間隔が狭くなる。このように、ソース端の電界を高めることによって、オン電流を大きくすることができ、トランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0062】
特に、溝Tの底面の端部(角部)においては、ゲート絶縁膜GIの膜厚が大きくなり、ゲート電極GEに印加された電圧が緩和されチャネルが形成され難い状況になり得る。さらに、
図14(C)に示すように、ゲート絶縁膜GIが厚く、その膜厚が溝Tの深さ(第1深さ、第2深さ)より大きい場合には、さらに、チャネルが形成され難い状況になる。例えば、
図14(C)に示すように、ゲート絶縁膜GIが厚く、その膜厚が溝Tの深さ(第1深さ、第2深さ)より大きい場合には、
図14(D)に示すゲート絶縁膜GIが薄く、その膜厚が溝Tの深さより小さい場合と比較し、溝Tの底面の端部(角部)のゲート絶縁膜GIの膜厚が相対的に大きくなり易く、さらに、チャネルが形成され難い状況になり得る。なお、CPは、電流経路を示す。
【0063】
このゲート絶縁膜GIの厚さについては、トランジスタの耐圧を考慮し、例えば、20V程度以上の電圧で駆動しようとした場合、耐圧が良好な絶縁材料(例えば、酸化アルミニウムや酸化シリコン)を選定したとしても、前述したように0.1μm(1000A)以上の膜厚が必要になる。一方、溝Tの深さを深くしすぎると、次のような不具合が生じる恐れがある。溝Tの深さを深くしすぎると、溝Tのエッチングが困難となる。また、チャネル層CHを深く掘り込むと、トランジスタ動作時の電流経路(
図14(C)のCP参照)における溝Tの側壁の占める割合が大きくなり、抵抗が上昇してしまう。このため、溝Tの底部は、障壁層BAとチャネル層CHの境界(2次元電子ガス2DEG)から0.01μm〜0.02μm程度(本実施の形態においては、0.01μm程度)の深さであることが好ましい。また、障壁層BAを厚くし、溝Tの深さを深くすることも可能であるが、この場合、ソース電極SEと障壁層BAとのオーミック接続、ドレイン電極DEと障壁層BAとのオーミック接続が取り難く、これらの間の接続抵抗が上昇してしまう。また、障壁層(AlGaN)BAを結晶性よく形成するためには、その膜厚は、0.02μm〜0.04μm(200〜400A)の範囲で調整することが好ましい。
【0064】
このように、ゲート絶縁膜GIの膜厚は大きく、溝Tの深さは小さくなる傾向にあり、前述したチャネルが形成され難くなるという問題への対策はますます重要となる。
【0065】
これに対し、本実施の形態によれば、上層の絶縁膜IF2を、下層の絶縁膜IF1よりバンドギャップが小さい膜で構成することにより、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)を蓄積することができ、溝の角部における電界強度が向上する。これにより、ソース端においても、電界を高めることができ、チャネルを効果的に形成することができる。
【0066】
次いで、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)が蓄積する理由と、電荷の蓄積方法について、
図15および
図16を参照しながら説明する。
図15(A)〜(D)は、電荷注入の様子を示すバンド図である。
図16は、トランジスタの上層の絶縁膜への電荷注入ステップおよびトランジスタの駆動ステップを示すタイミングチャートである。
【0067】
上層の絶縁膜IF2への電荷の注入は、ゲート電極GEに、下層の絶縁膜IF1にトンネル電流が流れる程度の高電圧(電位V1)を与えることにより行うことができる。例えば、本実施の形態において説明した0.02μm程度の膜厚の絶縁膜IF1を用いた場合、30V〜50V程度の電位をゲート電極GEに印加すると、2次元電子ガス2DEGから絶縁膜IF1を介して上層の絶縁膜IF2への電荷を注入することができる。なお、絶縁膜IF1の膜厚が0.01〜0.02μm程度であれば、30V〜50V程度の電位により、絶縁膜IF2への電荷を注入することができる。
【0068】
図15(A)に示すように、ゲート電極GEに印加される電位が小さい(例えば、10V程度)の場合には、トンネル現象は生じない。これに対し、
図15(B)に示すように、ゲート電極GEに、高電位(例えば、40V程度)を印加すると、トンネル現象が生じ、絶縁膜IF1を介して上層の絶縁膜IF2へ電荷が注入される。そして、上層の絶縁膜(SiN)IF2のバンドギャップが、下層の絶縁膜(SiO
2)IF1のバンドギャップより小さいため、トンネル注入された電子(e
−)は、上層の絶縁膜(SiN)IF2に蓄積される。さらに、上層の絶縁膜(SiN)IF2のバンドギャップより、ゲート絶縁膜(Al
2O
3)のバンドギャップが大きいため、注入された電子(e
−)は、上層の絶縁膜(SiN)IF2中に保持される。そして、
図15(C)に示すように、電荷が十分に注入されると、電荷の注入により矢印間の電位差は小さくなる。そして、注入された電荷は、ゲート電極GEに電位を印加していない状態においても保持される。また、
図15(D)に示すように、トランジスタの動作時、即ち、ゲート電極に閾値電位(例えば、10V程度)を印加し、トランジスタを導通状態とする場合には、トンネル現象は生じないため、新たな電荷は注入されず、また、注入された電子(e
−)は、上層の絶縁膜(SiN)IF2中に保持されたままとなり、トランジスタのオン動作に支障をきたすことはない。
【0069】
例えば、
図16に示すように、スタンバイ期間Stにおいて、ゲート電極GEに電位(電荷注入電位)V1を期間t1印加する。この際、例えば、ソース電位は、0V、ドレイン電位は、0Vである。これにより、上層の絶縁膜IF2に電荷を蓄積する。この後、トランジスタをオン/オフ動作させるスイッチング期間Swにおいて、ゲート電極GEに、電位(閾値電位)V2を期間t2印加し、トランジスタをオン状態とする。この際、例えば、ソース電位は、0V、ドレイン電位は、0〜10Vである。電位V1は、電位V2より大きい。電位V1は、30〜50Vであり、電位V2は、5〜15Vである。期間t1は、1〜10秒程度であり、期間t2は、10
−8〜10
−4秒程度である。
【0070】
このようにして、上層の絶縁膜IF2に電荷を蓄積することができ、ソース端において等電位曲線の間隔を狭くすることができる。そして、ソース端の電界を高めることによって、オン電流を大きくすることができ、トランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0071】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、ゲート電極GEを利用し、ゲート電極GEに高電位を印加することにより、上層の絶縁膜IF2に電荷を蓄積したが、電荷注入用電極CIEを設け、この電荷注入用電極CIEを用いて上層の絶縁膜IF2に電荷を蓄積してもよい。
【0072】
以下、図面を参照しながら本実施の形態の半導体装置について詳細に説明する。なお、本実施の形態において、電荷注入用電極CIE以外の構成は、実施の形態1の半導体装置と同様である。よって、実施の形態1の場合と同様の構造および製造工程については、その説明を簡潔に記載する。
【0073】
[構造説明]
図17および
図19は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図18は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す平面図である。
図17の断面図は、例えば、
図18のA−A断面に対応し、
図19の断面図は、例えば、
図18のB−B断面に対応する。
【0074】
本実施の形態の半導体装置も、実施の形態1の場合と同様に、窒化物半導体を用いたMIS型の電界効果トランジスタである。本実施の形態の半導体装置も、いわゆるリセスゲート型の半導体装置である。
【0075】
本実施の形態の半導体装置においては、
図17に示すように、基板S上に、チャネル層CHおよび障壁層BAが順に形成されている。なお、トランジスタが形成される活性領域ACは、素子分離領域ISOにより区画されている(
図18参照)。
【0076】
そして、障壁層BA上には、絶縁膜(IF1、IF2)が形成されている。この絶縁膜は、2層の絶縁膜よりなる。障壁層BA上に、下層の絶縁膜IF1が形成され、下層の絶縁膜IF1上に上層の絶縁膜IF2が形成されている。
【0077】
この絶縁膜(IF1、IF2)は、ゲート電極GEをパターニングする際のエッチングストッパーとしての役割を有する。また、この上層の絶縁膜IF2は、下層の絶縁膜IF1よりバンドギャップが小さい膜である。そして、上層の絶縁膜IF2は、後述するゲート絶縁膜GIよりバンドギャップが小さい膜である。
【0078】
さらに、本実施の形態においては、絶縁膜IF2上に、電荷注入用電極CIEが形成されている。
【0079】
ゲート電極GEは、電荷注入用電極CIE、絶縁膜(IF1、IF2)および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで到達する溝Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。チャネル層CHや障壁層BAは窒化物半導体よりなり、障壁層BAは、チャネル層CHよりバンドギャップが広い(電子親和力が小さい)窒化物半導体である。また、電荷注入用電極CIEは、導電性膜よりなる。
【0080】
チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍のチャネル層CH側に、2次元電子ガス2DEGが生成される。また、ゲート電極GEに閾値電位(電位V2>0)が印加された場合には、ゲート絶縁膜GIとチャネル層CHとの界面近傍には、チャネルが形成される。
【0081】
本実施の形態の半導体装置の構成について、さらに、詳細に説明する。
図17に示すように、本実施の形態の半導体装置は、基板S上に、窒化物半導体からなるチャネル層CHが形成され、チャネル層CH上に、窒化物半導体からなる障壁層BAが形成されている。なお、基板Sとチャネル層CHとの間に、基板S側から核生成層、歪緩和層やバッファ層などを設けてもよい。
【0082】
ゲート電極GEは、電荷注入用電極CIE、絶縁膜(IF1、IF2)および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで掘り込まれた溝Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。
【0083】
電荷注入用電極CIEおよび絶縁膜(IF1、IF2)は、開口領域OA1に開口部を有する(
図21参照)。この開口部に対応して、溝Tが形成されている。
【0084】
この溝T内、電荷注入用電極CIEおよび絶縁膜(IF1、IF2)上に、ゲート絶縁膜GIが形成されている。このゲート絶縁膜GI上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEの平面形状は、例えば、矩形状である(
図18参照)。ここでは、ゲート絶縁膜GIとゲート電極GEとは、同じ平面形状である。そして、電荷注入用電極CIEは、後述するように、ゲート電極GEの下方に位置する矩形状の部分と、この部分から引き出されたコンタクト部(引き出し部ともいう)とを有する。但し、溝Tの部分においては、電荷注入用電極CIEは形成されていない(
図29参照)。
【0085】
このゲート電極GEは、一の方向(
図1中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状である。この張り出し部は、フィールドプレート電極と呼ばれる。また、ゲート電極GEは、ソース電極SE側の溝Tの端部からソース電極SE側へも延在している。そして、ドレイン電極DE側またはソース電極SE側へ張り出だしている(延在している)ゲート電極部の下には、電荷注入用電極CIEが配置され、さらに、この電荷注入用電極CIEの下には、絶縁膜(IF1、IF2)が配置されている。
【0086】
また、ゲート電極GEの両側の障壁層BA上には、ソース電極SEおよびドレイン電極DEが形成されている。障壁層BAとソース電極SEまたはドレイン電極DEとは、オーミック層を介してオーミック接続されている。ソース電極SEは、層間絶縁膜IL1中に形成されたコンタクトホールC1S中に位置する接続部(プラグ)と、この接続部上の配線部とからなる。また、ドレイン電極DEは、層間絶縁膜IL1中に形成されたコンタクトホールC1D中に位置する接続部(プラグ)と、この接続部上の配線部とからなる。ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、保護絶縁膜PROにより覆われている。ソース電極SEおよびドレイン電極DEの平面形状は、例えば、矩形状である(
図18参照)。
【0087】
なお、前述したゲート電極GEは、層間絶縁膜IL1中に形成されたコンタクトホールC1G中に位置する接続部(プラグ)を介してゲート配線GLと接続される(
図18参照)。また、電荷注入用電極CIEは、ゲート電極GEの下方から引き出され、層間絶縁膜IL1中に形成されたコンタクトホールC1CI中に位置する接続部(プラグ)を介して電荷注入配線CILと接続される(
図18、
図19参照)。
【0088】
このように、上層の絶縁膜IF2を、下層の絶縁膜IF1よりバンドギャップが小さい膜で構成することにより、実施の形態1の場合と同様に、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)を蓄積することができ、溝の角部における電界強度が向上する。その結果、溝の角部においても、チャネルが十分に形成され、オン抵抗を低減し、オン電流を大きくすることができる。このように、トランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0089】
また、上層の絶縁膜IF2上に電荷注入用電極CIEを設けたので、実施の形態1の場合と比較し、より低電圧で絶縁膜IF2中に電荷を注入することができる。また、ゲート電極GEと電荷注入用電極CIEとを個別に制御することができるため、電荷注入ステップとトランジスタの駆動ステップを個別に実行することができる。
【0090】
[製法説明]
次いで、
図20〜
図31を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図20〜
図31は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図または平面図である。
【0091】
図20に示すように、実施の形態1の場合と同様の基板Sを用い、実施の形態1の場合と同様にして、基板S上に、チャネル層(GaN)CH、障壁層(AlGaN)BA、絶縁膜(酸化シリコン膜)IF1および絶縁膜(窒化シリコン膜)IF2を順次形成する。下層の酸化シリコン膜のバンドギャップは、8.9eVであり、上層の窒化シリコン膜のバンドギャップは、4.5eVである。このように、上層の窒化シリコン膜のバンドギャップは、下層の酸化シリコン膜のバンドギャップより小さい。
【0092】
次いで、絶縁膜IF2上に電荷注入用電極CIEを形成する。例えば、絶縁膜IF2上に、導電性膜として、例えば、タングステン(W)膜を、スパッタリング法などを用いて堆積する。電荷注入用電極CIEとしては、Wの他、TiN(窒化チタン)など、W以外の金属やその化合物(但し導電性のもの)を用いてもよい。
【0093】
次いで、電荷注入用電極CIE上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、素子分離領域を開口するフォトレジスト膜PR1を形成する。次いで、実施の形態1の場合と同様に、このフォトレジスト膜PR1をマスクとして、ボロン(B)または窒素(N)を打ち込むことにより、素子分離領域ISOを形成する。この後、フォトレジスト膜PR1を除去する。この素子分離領域ISOで囲まれた領域が活性領域ACとなる(
図18参照)。
【0094】
次いで、
図21に示すように、電荷注入用電極CIE上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA1に開口部を有するフォトレジスト膜PR2を形成する。次いで、フォトレジスト膜PR2をマスクとして電荷注入用電極CIEおよび絶縁膜(IF1、IF2)をエッチングする。電荷注入用電極CIEのエッチングガスとしては、例えば、Cl
2やCF
4などのガスを用いることができる。また、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜のエッチングガスとしては、例えば、CF
4やCHF
3などのガスを用いることができる。これにより、障壁層BA上に、開口領域OA1に開口部を有する電荷注入用電極CIEおよび絶縁膜(IF1、IF2)の積層膜が形成される。言い換えれば、開口領域OA1において、障壁層BAが露出する(
図21)。
【0095】
続けて、
図22に示すように、フォトレジスト膜PR2をマスクとして、障壁層BAおよびチャネル層CHをエッチングすることにより、電荷注入用電極CIE、絶縁膜(IF1、IF2)および障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝Tを形成する。エッチングガスとしては、例えば、ハロゲン系のガス(Cl
2、HBr、BCl
3など)を用い、プラズマ雰囲気下でドライエッチングを行う。プラズマ源としては、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)などを用いることができる。開口領域OA1において、2次元電子ガス2DEGを確実に除去するため、0.03μmの膜厚の障壁層(AlGaN)BAを用いた場合、障壁層(AlGaN)BAの表面から0.04μm程度の深さまでエッチングする。これにより、開口領域OA1の障壁層(AlGaN)BAおよびチャネル層(GaN)CHの表面部が除去され、チャネル層(GaN)CHが露出する。次いで、フォトレジスト膜PR2を除去する。
【0096】
次いで、
図23に示すように、溝T内および電荷注入用電極CIE上に、ゲート絶縁膜GIを形成する。例えば、実施の形態1の場合と同様に、ゲート絶縁膜GIとして、酸化アルミニウム膜(アルミナ、Al
2O
3)をALD法などを用いて、溝T内および絶縁膜(IF1、IF2)上に0.1μm程度の膜厚で堆積する。このゲート絶縁膜GIのバンドギャップは、下層に位置する絶縁膜(窒化シリコン膜)IF2のバンドギャップより大きい。酸化アルミニウム膜のバンドギャップは、6eVであり、その下層の窒化シリコン膜のバンドギャップは、4.5eVである。
【0097】
ゲート絶縁膜GIとしては、実施の形態1で説明した、酸化シリコン膜や、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を用いてもよい。なお、ここでは、実施の形態1の場合と同様に、ゲート絶縁膜(酸化シリコン膜)GIの膜厚(0.1μm)は、溝Tの深さ(第1深さおよび第2深さ)より大きい。
【0098】
次いで、ゲート絶縁膜GI上にゲート電極GEを形成する。例えば、実施の形態1の場合と同様に、ゲート絶縁膜GI上に、導電性膜として、例えば、ニッケル(Ni)膜と、その上部の金(Au)膜からなる積層膜(Au/Ni膜ともいう)を、スパッタリング法などを用いて堆積する。
【0099】
次いで、
図24〜
図26に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、ゲート電極GEおよびゲート絶縁膜GIをパターニングすることによりゲート電極GEを形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート電極GEの形成領域を覆うフォトレジスト膜PR3を形成し、このフォトレジスト膜PR3をマスクとして、ゲート電極GEおよびゲート絶縁膜GIをエッチングする。エッチングガスとしては、例えば、ハロゲン系のガス(Cl
2、HBr、BCl
3などやこれらの混合ガス)を用い、プラズマ雰囲気下でドライエッチングを行う。プラズマ源としては、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)などを用いることができる。この後、フォトレジスト膜PR3を除去する。これにより、
図26に示すように、矩形状のゲート電極GEを形成することができる。そして、このゲート電極GEの周囲には、電荷注入用電極CIEが露出している(
図24〜
図26)。
【0100】
次いで、
図27〜
図29に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、電荷注入用電極CIEをパターニングする。例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて、電荷注入用電極CIEの形成領域を覆うフォトレジスト膜PR32を形成し、このフォトレジスト膜PR32をマスクとして、電荷注入用電極CIEをエッチングする。エッチングガスとしては、例えば、Cl
2やHBrを用い、プラズマ雰囲気下でドライエッチングを行う。プラズマ源としては、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)などを用いることができる。この後、フォトレジスト膜PR32を除去する。これにより、
図29に示すように、ゲート電極GEの下方に位置する矩形状の部分と、この部分から引き出されたコンタクト部(引き出し部ともいう、
図29中左側の突出部)とを有する電荷注入用電極CIEを形成することができる。なお、溝Tの部分においては、溝Tの形成工程において、電荷注入用電極CIEは除去されている。よって、
図29に示すドットのハッチング部が、電荷注入用電極CIEの形成領域となる。
【0101】
なお、電荷注入用電極CIEのエッチングの際、絶縁膜(IF1、IF2)がエッチングストッパーの役割を果たす。絶縁膜(IF1、IF2)を形成せず、障壁層BA上に直接形成された電荷注入用電極CIEをフォトレジスト膜PR32をマスクにドライエッチングした場合、実施の形態1の場合と同様に、障壁層BAにダメージが生じ、トランジスタの動作特性が劣化してしまう。
【0102】
これに対し、本実施の形態においては、絶縁膜(IF1、IF2)がエッチングストッパーとして機能するため、トランジスタの特性を向上させることができる。
【0103】
また、絶縁膜(IF1、IF2)について、ゲート電極GEの両側に露出した絶縁膜(IF1、IF2)の表面が後退していてもよい。但し、エッチング終了時に、上層の絶縁膜IF2が残存していることが好ましい。例えば、ゲート絶縁膜GIとして酸化シリコン膜を用いる場合には、下層の絶縁膜(酸化シリコン膜)IF2が露出した場合には、エッチングが急激に進み、さらに、下層の障壁層BAがエッチング雰囲気に晒されることとなり、エッチングダメージが加わる。この障壁層BAは前述したように薄いためエッチングダメージが生じた場合、2次元電子ガスに影響を及ぼし易い。このため、上層の絶縁膜が残存している状態でエッチングをストップすることが好ましい。
【0104】
また、ゲート電極GEのパターニングの際、ゲート電極GEを、一の方向(
図24中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状にパターニングする。言い換えれば、ゲート電極GEの一部として、フィールドプレート電極を設けるようにパターニングを行う。フィールドプレート電極は、ゲート電極GEの一部の領域であり、ドレイン電極DE側の溝Tの端部からドレイン電極DE側へ延在する電極部分を指す。なお、ゲート電極GEは、他の方向(
図24中では左側、ソース電極SE側)へも張り出している。但し、張り出し量は、ソース電極SE側よりドレイン電極DE側の方が大きい。
【0105】
次いで、
図30および
図31に示すように、ゲート電極GE上に、層間絶縁膜IL1、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。例えば、実施の形態1の場合と同様にして、層間絶縁膜IL1を形成した後、コンタクトホールC1SおよびコンタクトホールC1Dを形成する。なお、この際、ゲート電極GE上にコンタクトホール(C1G)が形成され、電荷注入用電極CIE上にコンタクトホールC1CIが形成される(
図18、
図31参照)。
【0106】
次いで、実施の形態1の場合と同様にして、コンタクトホールC1S、C1D等の内部を含む層間絶縁膜IL1上に、導電性膜CLを形成し、パターニングすることにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。この際、ゲート電極GE上のコンタクトホールC1G内およびその上には、ゲート配線GLが形成され、電荷注入用電極CIE上のコンタクトホールC1CI内およびその上には、電荷注入配線CILが形成される(
図18、
図31参照)。
【0107】
次いで、実施の形態1の場合と同様にして、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上を含む絶縁膜IL1上に、保護絶縁膜PROを形成する(
図17等参照)。
【0108】
以上の工程により、
図17に示す半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0109】
このように、本実施の形態においても、実施の形態1の場合と同様に、上層の絶縁膜IF2を、下層の絶縁膜IF1よりバンドギャップが小さい膜で構成したので、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)を蓄積することができ、溝の角部における電界強度が向上する。その結果、溝の角部においても、チャネルが十分に形成され、オン抵抗を低減し、オン電流を大きくすることができる。このように、トランジスタの駆動能力を向上させることができる(
図14、
図15参照)。
【0110】
図32(A)および(B)は、本実施の形態の効果を説明するための溝の底面の端部近傍の模式図である。
図33は、トランジスタの上層の絶縁膜への電荷注入ステップおよびトランジスタの駆動ステップを示すタイミングチャートである。
【0111】
図32(A)に示すように、カバー膜として単層の絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜)IFを用いた場合、絶縁膜IFの底面とゲート電極GEの底面との間に位置する等電位曲線の間隔が広くなる。これに対し、本実施の形態のように、上層の絶縁膜IF2に電荷(ここでは電子)が蓄積されている場合は、
図32(B)に示すように、絶縁膜IF2の底面とゲート電極GEの底面との間に位置する等電位曲線の間隔が狭くなる。このように、ソース端の電界を高めることによって、オン電流を大きくすることができ、トランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0112】
上層の絶縁膜IF2への電荷の注入は、電荷注入用電極CIEに、下層の絶縁膜IF1にトンネル電流が流れる程度の高電圧(電位V1)を与えることにより行うことができる。例えば、本実施の形態において説明した0.02μm程度の膜厚の絶縁膜IF1を用いた場合、30V〜50V程度の電位を電荷注入用電極CIEに印加すると、2次元電子ガス2DEGから絶縁膜IF1を介して上層の絶縁膜IF2への電荷を注入することができる。なお、絶縁膜IF1の膜厚が0.01〜0.03μm程度であれば、15V〜30V程度の電位により、絶縁膜IF2への電荷を注入することができる。
【0113】
例えば、
図33に示すように、スタンバイ期間Stにおいて、電荷注入用電極CIEに電位V1を期間t1印加する。この際、例えば、ソース電位は、0V、ドレイン電位は、0Vである。これにより、上層の絶縁膜IF2に電荷を蓄積する。この後、トランジスタをオン/オフ動作させるスイッチング期間Swにおいて、ゲート電極GEに、電位V2を期間t2印加し、トランジスタをオン状態とする。この際、例えば、ソース電位は、0V、ドレイン電位は、0〜10Vである。電位V1は、15〜30Vであり、電位V2は、5〜15Vである。期間t1は、期間t2より長い。期間t1は、1〜10秒程度であり、期間t2は、10
−8〜10
−4秒程度である。
【0114】
このようにして、上層の絶縁膜IF2に電荷を蓄積することができ、ソース端において等電位曲線の間隔を狭くすることができ、ソース端の電界を高めることによって、オン電流を大きくすることができ、トランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0115】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0116】
なお、上記実施の形態1(
図15参照)においては、絶縁膜IF1、絶縁膜IF2およびゲート絶縁膜GIの組み合わせとして、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化アルミニウム膜の例を示した。これに対し、これらの膜のバンドギャップ(Eg(IF1)、Eg(IF2)、Eg(GI))について、Eg(IF1)>Eg(IF2)、Eg(GI)>Eg(IF2)の関係を満たす他の組み合わせを用いてもよい。例えば、絶縁膜IF1、絶縁膜IF2およびゲート絶縁膜GIの組み合わせとして、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜の組合せとしてもよい。
【0117】
また、上記実施の形態においては、スタンバイ期間Stにおいて、電荷の注入を行い、その後のスイッチング期間Swにおいて、トランジスタの駆動(オン/オフ動作)を行ったが、スタンバイ期間Stは、初期の1回のみでもよいし、また、スイッチング期間Swにおいて、定期的(所定の期間ごと)に設けてもよい。また、1回のオン/オフ動作ごとにその前に絶縁膜IF2への電荷の注入を行ってもよい。