(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
光ファイバを配置する配置方向と交差する曲げ方向に移動して、前記光ファイバに曲げを付与する曲げ部と、前記曲げ部、及び、磁石を支持する支持部と、前記磁石とは異なる移動用磁石を備えるマグネット支持部と、を備える光ファイバ短瞬断切替装置であって、前記磁石と前記移動用磁石との間に生じる磁力によって前記支持部が前記曲げ方向に移動するのに伴って、前記曲げ部が前記曲げ方向に移動する、ことを特徴とする光ファイバ短瞬断切替装置。
【0011】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、磁力を利用することで、曲げ部に対して何時でも同じ力を作用させることができる。これにより、光ファイバの短瞬断切替動作を行う際に、光ファイバに付与される曲げの精度を均一に保ちやすくなる。すなわち、光ファイバに曲げを付与する動作が安定性及び再現性の点で良好なものになる。
【0012】
かかる光ファイバ短瞬断切替装置であって、前記磁石と前記移動用磁石とが引っ張り合う引力によって、前記支持部が前記曲げ方向に移動するのに伴って、前記曲げ部が前記曲げ方向に移動する、ことが望ましい。
【0013】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、磁石同士の引力を利用することで、光ファイバに曲げを付与する際に、曲げ部を曲げ方向に移動させる動作を確実に実行することができる。また短瞬断切替動作を短時間で完了させることができる。
【0014】
かかる光ファイバ短瞬断切替装置であって、前記磁石と前記移動用磁石が反発し合う斥力によって、前記支持部が前記曲げ方向と反対の方向に移動するのに伴って、前記曲げ部が前記曲げ方向と反対の方向に移動する、ことが望ましい。
【0015】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、磁石同士の斥力を利用することで、短瞬断切替装置に光ファイバをセットする際に、曲げ部を開く動作を確実に実行することができる。
【0016】
かかる光ファイバ短瞬断切替装置であって、第1の移動用磁石と第2の移動用磁石とを支持するマグネット動作部を備え、前記第1の移動用磁石は、前記磁石と対向する位置において斥力を発生するように磁極の向きを調整されており、前記第2の移動用磁石は、前記磁石と対向する位置において引力を発生するように磁極の向きを調整されており、前記マグネット動作部は、前記第1の移動用磁石及び前記第2の移動用磁石のうちのどちらか一方を前記磁石と対向させることにより、前記支持部に対して引力、若しくは斥力を作用させる、ことが望ましい。
【0017】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、マグネット動作部を動かすだけで、曲げ部(支持部)に作用する磁力を自在に変更することができるようになるため、シンプルな構成の装置で安定した曲げ付与動作を実現しやすくなる。
【0018】
かかる光ファイバ短瞬断切替装置であって、前記移動用磁石を支持するマグネット動作部を備え、前記マグネット動作部は、前記磁石と対向する位置において前記移動用磁石の磁極の向きを反転させることにより、前記支持部に対して引力、若しくは斥力を作用させる、ことが望ましい。
【0019】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、マグネット動作部を動かすだけで、曲げ部(支持部)に作用する磁力を自在に変更することができるようになるため、シンプルな構成の装置で安定した曲げ付与動作を実現しやすくなる。また、マグネット動作部に支持されるマグネットが一つですむため、部品点数が少なくなり、コストも低く抑えることができる。
【0020】
かかる光ファイバ短瞬断切替装置であって、前記磁石及び前記移動用磁石が永久磁石である、ことが望ましい。
【0021】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、曲げ付与動作を行う際に、電力等の動力源が不要であり、シンプルな構成で安定して動作可能な短瞬断切替装置を実現することができる。また、電気回路が不要で故障等が生じにくいためメンテナンス作業の負担を軽減することができる。
【0022】
かかる光ファイバ短瞬断切替装置であって、前記曲げ部は、前記曲げ方向に移動した後、前記曲げ方向の所定の位置で一旦停止し、前記所定の位置において前記磁石と前記移動用磁石との間に生じる磁力の作用を受けることにより、前記曲げ方向にさらに移動して前記光ファイバに曲げを付与する、ことが望ましい。
【0023】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、曲げ部が移動を開始してから光ファイバと接触するまでの距離が短くなるため、曲げ部の動作が安定しやすくなり、曲げ動作を行う際の光ファイバの位置ずれが生じにくくなる。また、短瞬断切替動作を完了するまでの時間をより短くすることができる。
【0024】
かかる光ファイバ短瞬断切替装置であって、前記曲げ部によって前記光ファイバに曲げを付与する際に、前記配置方向及び前記曲げ方向とそれぞれ交差する押さえ方向に前記光ファイバを押さえる押さえ部材を備える、ことが望ましい。
【0025】
このような光ファイバ短瞬断切替装置によれば、光ファイバに曲げを付与する際に、光ファイバの位置ずれを生じにくくすることができる。これにより、光ファイバに対して正確に曲げを付与しやすくなる。
【0026】
===第1実施形態===
<瞬断装置の基本的構成>
第1実施形態では、光ファイバに「曲げ」を付与することにより、光ファイバによるデータ伝送を瞬断(短瞬断)して迂回用の伝送路に切り替えることが可能な短瞬断切替装置1について説明する。
図1は、第1実施形態の短瞬断切替装置1の全体斜視図である。
図2は、クランプガイド20の3面図である。
図3は、短瞬断切替装置1の内部構造について説明する図である。また、説明のため
図1に示すように各方向を定義する。すなわち、短瞬断切替装置1の横方向に沿った方向を「X方向」、短瞬断切替装置1の縦方向に沿ってX方向と直行する方向を「Z方向」、X方向及びZ方向と直行する方向を「Y方向」とする。また、X方向は上流側と下流側とを有し、Y方向は表側と裏側とを有し、Z方向は上側と下側とをそれぞれ有する。
【0027】
短瞬断切替装置1は、筐体10と、クランプガイド20と、光ファイバ曲げ機構30と、光ファイバ曲げガイド機構40と、マグネット動作機構50と、光ファイバプローブ60とを備える。
【0028】
(筐体10)
筐体10は、短瞬断切替装置1の外装を構成する部材である。筐体10の内部には
図3に示される光ファイバ曲げ機構30、光ファイバ曲げガイド機構40、及びマグネット動作機構50が収容されている。筐体10は、表側カバー11と上方カバー12と裏側カバー13とを有する。
【0029】
表側カバー11は短瞬断切替装置1のY方向表側(以下、単に「表側」とも呼ぶ)の外装部材である。上方カバー12は、短瞬断切替装置1のZ方向上側において表側から光ファイバ曲げ機構30を保護するために設けられる外装部材である。裏側カバー13は短瞬断切替装置1のY方向裏側(以下、単に「裏側」とも呼ぶ)の外装部材である。表側カバー11及び上方カバー12は、複数の固定用ビスによって裏側カバー13に固定される。
【0030】
本実施形態の短瞬断切替装置1では、
図1に示されるようにZ方向上側の領域が下側の領域よりもX方向の幅が狭くなっており、当該上側の領域に光ファイバをセットして「曲げ」を付与することができる。上方カバー12のX方向両端部には、短瞬断切替装置1に光ファイバをセットする際のガイド壁となる上側ガイド部121が設けられている。
【0031】
(クランプガイド20)
クランプガイド20は、短瞬断切替装置1に光ファイバをセットして曲げを付与する際に、セットした位置がずれないように光ファイバを押さえる押さえ部材である。また、クランプガイド20は、光ファイバをセットしていない状態において、光ファイバ曲げ機構30及び光ファイバ曲げガイド機構40が外部からの衝撃等を受けないように保護する保護カバーとしての機能を有する。
【0032】
図2に示されるように、クランプガイド20は、カバー部21と、プッシュ部22と、押さえ部23と、爪部24a〜24cと、フック部25と、軸受溝28と、スプリング支持部29とを有する。カバー部21はクランプガイド20のZ方向上方側に形成され、筐体10の内部に収容されている光ファイバ曲げ機構30等をカバーする。プッシュ部22は、クランプガイド20のZ方向下方側に形成され、当該プッシュ部22をY軸方向の表側から裏側に向かって押し込むことにより、軸受溝28を基点としてクランプガイド20がYZ平面上で回転するように動作し、カバー部21がY軸方向の表側に持ち上げられる(
図1参照)。本明細書では、カバー部21が表側に持ち上げられた状態(すなわちプッシュ部22が押し込まれた状態)を「開状態」と呼び、逆にプッシュ部22が表側に持ち上げられている状態を「閉状態」と呼ぶ。
【0033】
カバー部21の裏側には、押さえ部23及び、爪部24a〜24cが形成されている。押さえ部23はクランプガイド20のX方向両端部に設けられ、「閉状態」のときに短瞬断切替装置1にセットされた光ファイバをY軸方向に押さえつけ、光ファイバの位置がずれないようにする。爪部24a〜24cは押さえ部23と同様に、「閉状態」のときに短瞬断切替装置1にセットされた光ファイバをY軸方向に押さえつける。押さえ部23及び爪部24a〜24cによる光ファイバの押さえ動作については後で説明する。
【0034】
フック部25は、後述する光ファイバ曲げ機構30に設けられた調整ピン331と係合し、クランプガイド20を「閉状態」から「開状態」にする動作に連動して光ファイバ曲げ機構30をZ方向の上下に移動させる。この動作についても詳細は後で説明する。
【0035】
軸受溝28は、光ファイバ曲げガイド機構40に設けられたクランプガイド支持軸481を受けるための溝であり、上述したように軸受溝28を基点としてクランプガイド20がYZ平面上で回転するように動作する。スプリング支持部29は、プッシュ部22の裏側に設けられ、スプリング49を支持する。当該スプリング49の弾性力によって、プッシュ部22はY軸方向の表側に付勢される。これにより、クランプガイド20に対して外部からの力が作用していない場合には、プッシュ部22が表側に持ち上げられた状態となる。すなわち、クランプガイド20(短瞬断切替装置1)は平常時において「閉状態」となっている。
【0036】
(光ファイバ曲げ機構30)
光ファイバ曲げ機構30は、短瞬断切替装置1にセットされた光ファイバの所定の領域に「曲げ」を付与する。光ファイバ曲げ機構30(以下、単に「曲げ機構30」とも呼ぶ)は、迂回用曲げ部31と、損失印加用曲げ部32と、曲げ部支持部33と、を有する。
図3では、光ファイバ曲げ機構30と光ファイバ曲げガイド機構40との間に光ファイバをセットした状態が示されている。
【0037】
迂回用曲げ部31は、X方向に沿ってセットされた光ファイバをZ方向の下側に押圧することにより、光ファイバに対してZ方向の曲げを付与する。
図3、及び後述する
図4に示されるように、迂回用曲げ部31のZ方向下側には、所定の曲率を有する円弧状に形成された押圧面311が形成されており、当該押圧面311の円弧形状にあわせて光ファイバが曲げられる。また、押圧面311には、光ファイバをセットした際に光ファイバのY方向の位置を固定するための迂回用溝部312が設けられている(
図9A参照)。
【0038】
損失印加用曲げ部32は、迂回用曲げ部31よりもX方向の下流側に設けられ、X方向に沿ってセットされた光ファイバをZ方向の下側に押圧することにより、光ファイバに対してZ方向の曲げを付与する。損失印加用曲げ部32も迂回用曲げ部31と同様に、Z方向下側に所定の曲率を有する円弧状の押圧面321が形成されている。また、当該押圧面321には光ファイバをセットした際に光ファイバが損失印加用曲げ部32から外れることを抑制するための損失印加用溝部322が設けられている(
図9B参照)。
【0039】
曲げ部支持部33は、迂回用曲げ部31及び損失印加用曲げ部32を支持しつつ、光ファイバ曲げ機構30を光ファイバ曲げガイド機構40に対してZ方向の上下にスライド移動させる。これにより、迂回用曲げ部31及び損失印加用曲げ部32をZ方向の上下に移動させることができる。曲げ部支持部33のX方向上流側の側面には上述した調整ピン331が設けられ、当該調整ピン331によって曲げ機構30のZ方向の上下位置が調整される。また、曲げ部支持部33のZ方向の下端部には、後述する曲げ機構側マグネット71が設けられている(
図8A,
図8B参照)。
【0040】
(光ファイバ曲げガイド機構40)
光ファイバ曲げガイド機構40は、光ファイバに曲げを付与する際に、光ファイバ曲げ機構30の迂回用曲げ部31及び損失印加用曲げ部32をガイドする。光ファイバ曲げガイド機構40(以下、単に「ガイド機構40」とも呼ぶ)は、迂回用曲げガイド41と、損失印加用曲げガイド42と、曲げガイド支持部43と、第1〜第3クランプ台45〜47と、クランプガイド支持部48と、スプリング49とを有する。
【0041】
迂回用曲げガイド41は、迂回用曲げ部31に対応するガイド部材である。迂回用曲げガイド41のZ方向上端部が凹となるように形成されているガイド面411は、迂回用曲げ部31の押圧面311と同じ曲率を有する円弧状の曲面を有し、光ファイバに曲げを付与する際には、迂回用曲げ部31の押圧面311と迂回用曲げガイド41のガイド面411とで光ファイバをZ方向に挟み込むことにより、当該ガイド面411(押圧面311)の曲率に応じて光ファイバに「曲げ」が付与される。なお、曲げを付与された光ファイバから漏洩した光を透過させて光ファイバプローブ60に導くために、迂回用曲げガイド41は透明な樹脂によって形成される。
【0042】
損失印加用曲げガイド42は、損失印加用曲げ部32に対応するガイド部材である。損失印加用曲げガイド42のZ方向上端部が凹となるように形成されているガイド面421は、損失印加用曲げ部32の押圧面321とほぼ同等の曲率を有する円弧状の曲面を有する。また、損失印加用曲げガイド42は透明に形成される必要は無く、不透明な樹脂によって形成されるのであっても良い。
【0043】
曲げガイド支持部43は、迂回用曲げガイド41、損失印加用曲げガイド42、第1〜第3クランプ台45〜47、及びクランプガイド支持部48を支持する部材である。第1クランプ台45,第2クランプ台46,第3クランプ台47は、短瞬断切替装置1に光ファイバをセットする際に、当該光ファイバをY方向に支持する支持台であり(
図3参照)、短瞬断切替装置1の閉状態においてクランプガイド20の押さえ部23及び爪部24a〜24cと第1〜第3クランプ台45〜47とで光ファイバをY方向に挟み込むことで、光ファイバの位置ずれを抑制する。クランプガイド支持部48はクランプガイド20を支持する部材であり、X方向両端部に設けられた支持軸481がクランプガイド20の軸受溝28に挿入されることにより、当該軸受溝28を基点としてクランプガイド20を回転可能に支持する。スプリング49は、クランプガイド支持部48とクランプガイド20との間に縮められた状態で設けられる弾性部材であり、当該スプリング49の復元力により、クランプガイド20のプッシュ部22がY方向の表側に付勢される。
【0044】
(マグネット動作機構50)
マグネット動作機構50は、マグネットの磁力によって光ファイバ曲げ機構30をZ方向の上下に移動させる。マグネット動作機構50は、マグネット支持部51と、切り替えスイッチ52と、接続部53とを有する。
【0045】
マグネット支持部51はZ方向上面側に第1動作機構側マグネット81及び第2動作機構側マグネット82の2つのマグネットを支持しつつ、X方向にスライド移動可能な支持部材である。第1動作機構側マグネット81及び第2動作機構側マグネット82は曲げ機構30をZ方向に沿って移動させるための移動用磁石であり、互いにX方向に並んで支持されている。本実施形態では、曲げ機構側マグネット71と第1動作機構側マグネット81とがZ方向において対向する位置関係となるマグネット支持部51の位置を「OPEN」位置とする(
図8A参照)。そして、「OPEN」位置において、第1動作機構側マグネット81は、光ファイバ曲げ機構30に設けられた曲げ機構側マグネット71との間で反発しあう「斥力」を発生させるように磁極の向きが調整されている。一方、曲げ機構側マグネット71と第2動作機構側マグネット82とがZ方向において対向する位置関係となるマグネット支持部51の位置を「CLAMP」位置とする(
図8B参照)。そして、「CLAMP」位置において、第2動作機構側マグネット82は、曲げ機構側マグネット71との間で引き付けあう「引力」を発生させるように磁極の向きが調整されている。
短瞬断切替装置1では、マグネット支持部51をX方向に移動させて「OPEN」位置と「CLAMP」位置とを切り替えることにより、曲げ機構側マグネット71との間に発生する「斥力」と「引力」とを反転させ、光ファイバ曲げ機構30をZ方向に上下移動させることができる。
【0046】
切り替えスイッチ52は、マグネット動作機構50をX方向にスライド移動させて「OPEN」位置と「CLAMP」位置とを切り替えるための操作用スイッチであり、接続部53を介してマグネット動作機構50と接続されている。使用者は、当該切り替えスイッチ52よってマグネット動作機構50を操作することができる。
【0047】
(光ファイバプローブ60)
光ファイバプローブ60は、曲げが付与されることによって光ファイバから漏洩した光を集光して迂回用の伝送路へと導くためのプローブである。光ファイバプローブ60自体の構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
<短瞬断切替動作について>
続いて、短瞬断切替装置1を用いて短瞬断切替動作を行う際の動作について説明する。
図4は、短瞬断切替装置1による短瞬断切替動作について説明する図である。
【0049】
短瞬断切替装置1では光ファイバに曲げを付与することにより、現状の伝送路から光ファイバの外部へ光を漏洩させ、短瞬断切替動作を行う。短瞬断切替動作を行う際には、まず、短瞬断切替装置1の所定の場所に曲げを付与する対象である光ファイバをセットする。本実施形態の短瞬断切替装置1では、上述の
図3に示されるように曲げ機構30とガイド機構40との間にX方向に沿って光ファイバが配置される。すなわち、X方向は光ファイバの配置方向である。このとき、光伝送方向がX方向の上流側から下流側へと向かう方向となるように、光ファイバが配置される。この状態でガイド機構40に対して曲げ機構30をZ方向下側に移動させる。
【0050】
図4Aは、曲げ機構30の移動前の状態を表している。同
図4に示されるように、曲げ機構30においては、迂回用曲げ部31のZ方向下端部が損失印加用曲げ部32のZ方向下端部よりもZ方向の低い位置となるように、両曲げ部が支持されている。そのため、曲げ機構30がZ方向の下側に移動を開始すると、迂回用曲げ部31の押圧面311が損失印加用曲げ部32の押圧面321よりも先に光ファイバと接触する。光ファイバと接触した迂回用曲げ部31は、当該接触部分を中心に押圧面311の曲面に沿って光ファイバをZ方向下側に曲げながらZ方向下側に移動する。すなわち、Z方向は光ファイバを曲げる曲げ方向である。また、迂回用曲げ部31に遅れて損失印加用曲げ部32が光ファイバと接触し、押圧面321の曲面に沿って光ファイバをZ方向下側に曲げながらZ方向下側に移動する。本実施形態では、迂回用曲げ部31の押圧面311が損失印加用曲げ部32の押圧面321よりも先に光ファイバに曲げを付与し始めるため、曲げ動作の開始時に迂回用曲げ部31と損失印加用曲げ部32との間で光ファイバが引っ張られることが抑制される。これにより、光ファイバに損傷が加わることを抑制しつつ、押圧面311に沿って正確な曲率で光ファイバに曲げを付与することが可能となる。
【0051】
図4Bは、曲げ機構30がZ方向の下端まで移動した状態を表している。迂回用曲げ部31(曲げ機構30)がZ方向の下端まで移動することにより、光ファイバは、迂回用曲げ部31の押圧面311と迂回用曲げガイド41のガイド面411とによって挟み込まれ、押圧面311(ガイド面411)の曲面に沿った「曲げ」が付与される。一般に、光ファイバは、「コア」の屈折率を「クラッド」の屈折率よりも高くすることによってコア内で光を全反射させながら、外部に漏洩しないように光を伝送する。このような光ファイバに対して「曲げ」が付与されると、コアからクラッドへの光の入射角度が大きくなる。そして、光ファイバに対して所定の大きさ以上の曲率で曲げが付与されると、コアからクラッドへの光の入射角度が臨界角を超え、コア内において光が全反射しなくなってコアの外部へ光が漏洩するようになる。迂回用曲げ部31では、このような性質を利用して、光ファイバに対して臨界角を超えるような曲率の曲げを付与し、強制的に光を漏洩させる。
図4Bの例では、迂回用曲げ部31及び迂回用曲げガイド41によって光ファイバに湾曲部B1を形成し、当該湾曲部B1から光を漏洩させる。なお、漏洩した光は、迂回用曲げガイド41を透過して
図4Bの矢印で示される方向に導かれ、矢印の方向の先に設けられた光ファイバプローブ60で集光された後、迂回用の伝送路へ伝送される。
【0052】
このとき、光ファイバ内を伝送される光の一部が湾曲部B1において漏洩せず、そのまま伝送方向(すなわちX方向)の下流側へと伝送される場合がある。言い換えると、現状の伝送路による光の伝送を完全に遮断することができない場合がある。この場合、現状の伝送路と分岐後の迂回用伝送路の2つの伝送路から光が伝送されることになり、互いの干渉によってノイズが発生し、正確な通信を行うことができなくなるおそれがある。そこで、短瞬断切替装置1では迂回用曲げ部31に加えて損失印加用曲げ部32を設けることで光ファイバによる光の伝送を遮断して、ノイズの発生を抑制するようにしている。
【0053】
図4Bに示されるように、損失印加用曲げ部32は迂回用曲げ部31と共にZ方向の下側に移動して、湾曲部B1の伝送方向(X方向)下流側において光ファイバに湾曲部B2を形成する。湾曲部B2は、湾曲部B1と同様に全反射の臨界角よりも大きな曲率で曲げられており、当該湾曲部B2において光を漏洩させることができる。つまり、湾曲部B2においてデータ伝送に損失を印加することで、湾曲部B1において漏洩しなかった分の光を湾曲部B2において漏洩させ、それ以降の伝送路下流側への光の伝送を遮断することができる。
【0054】
なお、曲げ機構30がZ方向の下端まで移動した状態において、損失印加用曲げ部32の押圧面321と損失印加用曲げガイド42のガイド面421との間には
図4Bに示されるような隙間が形成される。これは、迂回用曲げ部31と損失印加用曲げ部32とを同時に動作させる際に、光ファイバに大きな張力が作用するのを抑制するためである。本実施形態の短瞬断切替動作では、湾曲部B1において迂回用曲げ部31及び迂回用曲げガイド41によって光ファイバが挟み込まれて固定される。仮に、湾曲部B2において損失印加用曲げ部32及び損失印加用曲げガイド42によって光ファイバが挟み込まれて固定されるとすると、湾曲部B1と湾曲部B2との間で大きな張力が発生し、光ファイバが損傷するおそれがある。そこで、損失印加用曲げ部32及び損失印加用曲げガイド42との間に光ファイバ径より大きな隙間を設け、湾曲部B2では光ファイバが固定されないようにすることにより、光ファイバに過度の張力が作用することを抑制している。湾曲部B2は、データ伝送に損失を印加することを目的として形成されるため、湾曲部B1と比較して湾曲部B2では曲げを付与する際の曲率を厳密に規定する必要性が低く、このように隙間を設けたとしても問題は生じにくい。
【0055】
また、短瞬断切替装置1では、迂回用曲げガイド41と損失印加用曲げガイド42とがX方向に隣り合って配置されているため、湾曲部B1と湾曲部B2との間に湾曲部B3が形成される(
図4B参照)。湾曲部B3は、迂回用曲げガイド41のガイド面411及び損失印加用曲げガイド42のガイド面421に沿って形成され、コア内の全反射の臨界角よりも大きな曲率で曲げられている。そのため、当該湾曲部B3でも光を漏洩させることが可能である。したがって、本実施形態では湾曲部B1において漏洩しなかった光を湾曲部B3及び湾曲部B2の2箇所で漏洩させることにより、光の伝送をより確実に遮断することができるようになっている。
【0056】
<光ファイバ曲げ動作の具体的説明>
光ファイバに曲げを付与する際の短瞬断切替装置1の操作について具体的に説明する。短瞬断切替装置1を用いて光ファイバに曲げを付与する動作は、曲げを付与する対象である光ファイバを短瞬断切替装置1にセットする工程と、セットされた光ファイバに曲げを付与する工程とに分けて考えられる。以下、各工程について説明する。
【0057】
(光ファイバセット工程)
上述したように、短瞬断切替装置1は平常時においてクランプガイド20のカバー部21が閉じた「閉状態」となっている。使用者は、まず、クランプガイド20を「開状態」として短瞬断切替装置1に光ファイバをセットする必要がある。なお、光ファイバセット工程において、マグネット動作機構50は「OPEN」位置として、曲げ機構側マグネット71と第1動作機構側マグネット81との間には反発しあう斥力が働くようにしておく。つまり、光ファイバセット工程では、光ファイバ曲げ機構30がマグネット動作機構50に対してZ方向の上側に押し上げられた状態となっている。
【0058】
図5Aは、クランプガイド20が開状態のときの各部の関係を表す側面図である。
図5Bは、クランプガイド20が閉状態のときの各部の関係を表す側面図である。
図6Aは、クランプガイド20が閉状態のときの各部の関係を表す正面図である。
図6Bは、クランプガイド20が開状態のときの各部の関係を表す正面図である。
【0059】
使用者が、クランプガイド20を「開状態」とするためにプッシュ部22をY方向裏側に向かって押し込むと、クランプガイド20が軸受溝28を中心として回転し、カバー部21がY方向表側に開く。このとき、曲げ機構30側に設けられている調整ピン331とクランプガイド20側に設けられているフック部25との関係に応じて曲げ機構30のZ方向位置が変動する。
図5Aにおいて、曲げ機構30にはマグネットの斥力によってZ方向上側へ向かう力が作用しているが、調整ピン331がフック部25の下端部と係合しているため、曲げ機構30のZ方向上側への移動は当該フック部25制限される。この状態でプッシュ部22が押し込まれると、
図5Bに示されるように、クランプガイド20の回転に応じてフック部25の下端部がZ方向上側に持ち上げられる。これにより、調整ピン331もフック部25の下端部と係合しながらZ方向上側に移動する。つまり、フック部25がZ方向の上下に移動するのに連動して曲げ機構30(調整ピン331)もZ方向の上下に移動する。
【0060】
このようにしてクランプガイド20が開状態となると共に、曲げ機構30の迂回用曲げ部31及び損失印加用曲げ部32がZ方向の上側に持ち上げられ、曲げガイド機構40の迂回用曲げガイド41及び損失印加用曲げガイド42との間の距離(Z方向の間隔)が広くなる。例えば、
図6Aにおいて、クランプガイド20が閉状態のときの迂回用曲げ部31の押圧面311下端部位置と、迂回用曲げガイド41のガイド面411の上端部位置との間隔はh1で表されている。これに対して、
図6Bにおいて、クランプガイド20が開状態のときの迂回用曲げ部31の押圧面311下端部位置と、迂回用曲げガイド41のガイド面411の上端部位置との間隔はh2に開いている(h1<h2)。このようにクランプガイド20を閉状態から開状態にすることによって、迂回用曲げ部31(損失印加用曲げ部32)と迂回用曲げガイド41(損失印加用曲げガイド42)との間隔が広くなり、光ファイバをセットしやすくなる。なお、
図6Bのように曲げ機構30がZ方向の上側に持ち上げられた状態において、迂回用曲げ部31(及び損失印加用曲げ部32)のZ方向下端部は、上方カバー12の上側ガイド部121よりも高い位置となる。言い換えると、クランプガイド20が開状態のとき、迂回用曲げ部31は上方カバー12の中に隠れた状態となる。したがって、開状態において、使用者は迂回用曲げ部31(及び損失印加用曲げ部32)と迂回用曲げガイド41(損失印加用曲げガイド42)との間のスペースをはっきりと視認することができ、光ファイバを正しい位置にセットしやすくなる。
【0061】
使用者は、光ファイバが迂回用曲げ部31(損失印加用曲げ部32)と迂回用曲げガイド41(損失印加用曲げガイド42)との間に正しくセットされたことを確認した後、クランプガイド20のプッシュ部22を解放し、クランプガイド20を再び「閉状態」とする。このとき、クランプガイド20が光ファイバをY方向に押さえつけ、光ファイバの位置ずれを生じにくくする。すなわち、Y方向は光ファイバの押さえ方向である。
図7は、クランプガイド20が光ファイバを押さえつける動作について説明するである。同
図7は、光ファイバがセットされた場合における
図5AのA−A断面を表しており、クランプガイド20とガイド機構40との位置関係が示さている。
【0062】
第1〜第3クランプ台45〜47によってY方向に支持されている光ファイバに対して、クランプガイド20の裏面側のX方向両端部に形成されている押さえ部23,23によってY方向裏側向きの力が加えられる。これにより、クランプガイド20のX方向両端部において、光ファイバがY方向に押さえつけられる。さらに、押さえ部23,23のX方向の間において、爪部24a〜24cによって光ファイバに対して同様の力が加えられる。その結果、光ファイバは爪部24aによって第1クランプ台45に押し付けられ、爪部24bによって第2クランプ台46に押し付けられる。つまり、光ファイバは迂回用曲げ部31のX方向両側において、Y方向に押さえつけられる。同様に、光ファイバは爪部24cによって第3クランプ台47に押し付けられる。つまり、光ファイバは損失印加用曲げ部32のX方向片側において、Y方向に押さえつけられる。このように、X方向の複数の箇所を押さえることにより、光ファイバを安定して保持することができるため、光ファイバの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0063】
ここで、迂回用曲げ部31のX方向両側が押さえられているは、迂回用曲げ部31によって曲げ動作を行う際に光ファイバの位置ずれを生じにくくすることで、迂回用曲げ部31の押圧面311に沿って正確にファイバに曲げを付与するためである。一方、損失印加用曲げ部32ではX方向片側のみが押さえられているが、これは敢えて片側を押さえずにフリーにしておくことで、光ファイバの多少の位置ずれを許容して、曲げ動作を行う際に光ファイバに過度の張力が作用しないようにするためである。
【0064】
また、クランプガイド20を「開状態」から「閉状態」にすると、フック部25の下端部がZ方向下側に下降するのに連動して曲げ機構30もZ方向下側に移動し、迂回用曲げ部31及び損失印加用曲げ部32が
図6Aに示される位置まで下降した後、一旦停止する。これにより、迂回用曲げ部31及び損失印加用曲げ部32と、第1〜第3クランプ台45〜47及びクランプガイド20によって保持されている光ファイバとのZ方向位置が近くなる。例えば、
図6Aの場合、光ファイバと迂回用曲げ部31とのZ方向間隔はh1以内となる。このように迂回用曲げ部31と光ファイバとの間の距離をなるべく小さくしておくことで、次工程の曲げ付与動作を安定的に行うことができる。
【0065】
(曲げ付与工程)
短瞬断切替装置1に光ファイバが適正にセットされたことを確認した後、使用者は、光ファイバに曲げを付与する操作を行う。
【0066】
図8Aは、第1実施形態でマグネット動作機構50がOPEN位置にあるときの様子を表す平面図である。
図8Bは、第1実施形態でマグネット動作機構50がCLAMP位置にあるときの様子を表す平面図である。短瞬断切替装置1によって光ファイバに曲げを付与する動作を行う直前の状態において、迂回用曲げ部31(及び損失印加用曲げ部32)と迂回用曲げガイド41(損失印加用曲げガイド42)とは
図8Aに示されるような位置関係となっている。上述したように、OPEN位置では光ファイバ曲げ機構30に設けられた曲げ機構側マグネット71とマグネット動作機構50に設けられた第1動作機構側マグネット81との間に働く斥力により、迂回用曲げ部31はZ方向上側に押し上げられている。
【0067】
曲げ付与動作に際して、使用者は切り替えスイッチ52を介してマグネット動作機構50をOPEN位置からCLAMP位置にスライド移動させる。CLAMP位置では、第1動作機構側マグネット81と極性が反対になるように配置された第2動作機構側マグネット82と曲げ機構側マグネット71との間に引力が働き、迂回用曲げ部31(光ファイバ曲げ機構30)はZ方向下側に一気に引き寄せられる。その結果、
図8Bのように、迂回用曲げ部31及び損失印加用曲げ部32によって光ファイバに対して曲げが付与されて光の伝送を遮断することができる。
【0068】
また、短瞬断切替装置1では、迂回用曲げ部31の押圧面311に形成された迂回用溝部312によって光ファイバの位置がずれないようにしながら曲げを付与することができる。
図9Aは、
図7のB−B断面を表し、迂回用曲げ部31に形成された迂回用溝部312について説明する図である。
図9Bは、
図7のC−C断面を表し、損失印加用曲げ部32に形成された損失印加用溝部322について説明する図である。光ファイバに曲げを付与する際には、まず迂回用曲げ部31の押圧面311が光ファイバと接触し、光ファイバを押圧面311に沿わせた状態で迂回用曲げ部31と光ファイバとが一体的にZ方向下側へ移動する。このとき、押圧面311に形成された迂回用溝部312に光ファイバが嵌まることにより、Z方向下側への移動中に光ファイバのY方向位置がずれないようにする。迂回用溝部312は、
図9Aに示されるように押圧面311の表面にV字型に形成された溝であり、Y方向について光ファイバの外周面が第2クランプ台46(及び第1クランプ台45)の表面と接する位置において光ファイバを保持することができるように調整されている。光ファイバのY方向位置を固定した状態で当該光ファイバをZ方向下側に移動させることにより、迂回用曲げ部31による曲げ付与動作において、光ファイバの位置ずれを抑制することができる。
【0069】
一方、損失印加用曲げ部32に形成された損失印加用溝部322は、損失印加用曲げ部32の押圧面321から光ファイバが離脱しない程度の移動を許容しつつ光ファイバを保持する。損失印加用溝部322は、
図9Bに示されるように押圧面321の表面に矩形状に形成された溝であり、当該矩形状の溝が形成された範囲内で光ファイバのY方向への移動が許容される。この移動可能な範囲が、Y方向についての「あそび」として機能する。したがって、光ファイバのY方向位置を固定させない状態で当該光ファイバをZ方向下側に移動させることにより、損失印加用曲げ部32による曲げ付与動作において、光ファイバに過度の張力がかかることを抑制し、光ファイバが損傷することを抑制する。
【0070】
また、短瞬断切替装置1では、クランプガイド20を閉状態にすることで、迂回用曲げ部31(光ファイバ曲げ機構30)をZ方向下端の位置(
図6A参照)に移動させてから、光ファイバに曲げを付与する動作を開始する。したがって、迂回用曲げ部31(光ファイバ曲げ機構30)をZ方向上端の位置(
図6B参照)から下降させる場合と比較して、迂回用曲げ部31が下降を始めてから光ファイバに接触するまでの距離が短くなる。これにより、光ファイバが損失印加用溝部322に嵌まりやすくなる、また、曲げ付与動作時における迂回用曲げ部31の移動距離が短くなるため、動作が安定しやすく、光ファイバの位置ずれを生じにくくすることができる。さらに、迂回用曲げ部31と曲げ対象たる光ファイバとの距離を近くすることにより、短瞬断切替動作完了までの時間をより短くすることができる。但し、迂回用曲げ部31をZ方向上端の位置、すなわち開状態における位置から直接Z方向下側に加工させる場合であっても、光ファイバに曲げを付与することは可能である。
【0071】
なお、光ファイバの「短瞬断切替動作」を行う場合、光ファイバに曲げを付与する動作を開始してから、1.5〜100ms程度の時間で動作が完了することが望ましい。本実施形態の短瞬断切替装置1では、切り替えスイッチ52を操作することによってマグネット動作機構50を「CLAMP」位置に移動させた後、50ms程度の時間で、光ファイバに曲げを付与することができる。
【0072】
また、本実施形態の短瞬断切替装置1において、曲げ機構側マグネット71,第1動作機構側マグネット81,及び第2動作機構側マグネット82は、いずれも永久磁石によって形成されており、例えば、ネオジム磁石等が使用される。そして、マグネット動作機構50によってこれらの磁石の位置を変化させることにより、光ファイバの瞬断を行うことができる。永久磁石を使用することにより、電力等を必要としないシンプルな構成で、安定して動作可能な短瞬断切替装置を実現することができる。また、短瞬断切替動作を行う際に電力等を消費しないためコストが安く、故障等の不具合も生じにくいためメンテナンス作業等の負担も軽減することができる。但し、本明細書中で記載したような機能を実現できるのであれば、永久磁石ではなく電磁石を用いた構成とすることも可能である。
【0073】
===第2実施形態===
第2実施形態では、マグネット動作機構50の構成が第1実施形態とは異なる短瞬断切替装置について説明する。マグネット動作機構50以外の他の構成については、基本的に第1実施形態と同様である。また、光ファイバに曲げを付与する際の動作のうち光ファイバセット工程については第1実施形態と同様であり、曲げ付与工程の動作が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0074】
第2実施形態のマグネット動作機構50は、マグネット支持ロール55を有する。マグネット支持ロール55は、X方向に沿った回転軸55Cを中心としてYZ平面上を回転可能な円筒状のロール体であり、ロール体の周面には所定の角度をなす位置に第1動作機構側マグネット81及び第2動作機構側マグネット82がそれぞれ支持されている。例えば、後述の
図10Aでは、マグネット支持ロール55の周面において第1動作機構側マグネット81と第2動作機構側マグネット82とのなす角度が約90°程度となるように、2つのマグネットが配置されている。マグネット支持ロール55において、第1動作機構側マグネット81は、光ファイバ曲げ機構30に設けられた曲げ機構側マグネット71との間で互いに反発しあう斥力を生じさせるように磁極の向きを調整して配置されている。一方、第2動作機構側マグネット82は、曲げ機構側マグネット71との間で互いに引っ張り合う引力を生じさせるように磁極の向きを調整して配置されている。
【0075】
(曲げ付与工程の動作説明)
図10Aは、第2実施形態でマグネット動作機構50がOPEN位置の時の状態について説明する図である。同
図10Aに示されるように、OPEN位置では、曲げ機構側マグネット71と第1動作機構側マグネット81とがZ方向において対向する位置関係となる。このとき、光ファイバ曲げ機構30は斥力によってZ方向上側に押し上げられている。
【0076】
図10Bは、第2実施形態でマグネット動作機構50がCLAMP位置の時の状態について説明する図である。第2実施形態において、使用者はマグネット支持ロール55を回転させることによって、OPEN位置からCLAMP位置に切り替えることができる。その結果、同
図10Bに示されるように、CLAMP位置では曲げ機構側マグネット71と第2動作機構側マグネット82とがZ方向において対向する位置関係となる。このとき、光ファイバ曲げ機構30は引力によってZ方向下側に一気に引き付けられる。これにより、光ファイバ曲げ機構30に設けられた迂回用曲げ部31と迂回用曲げガイド41との間に光ファイバが挟み込まれ、迂回用曲げ部31の押圧面311に沿って光ファイバに曲げが付与される。
【0077】
第2実施形態の短瞬断切替装置では、マグネット動作機構50を回転動作させることにより、短瞬断切替動作を行う際の操作性を良好なものにすることができる。
【0078】
===第3実施形態===
第3実施形態では、マグネット動作機構50の構成が第1実施形態及び第2実施形態とは異なる短瞬断切替装置について説明する。マグネット動作機構50以外の他の構成については、基本的に第1実施形態と同様である。また、光ファイバに曲げを付与する際の動作のうち光ファイバセット工程については第1実施形態と同様であり、曲げ付与工程の動作が第1実施形態と異なる。
【0079】
第3実施形態のマグネット動作機構50は、マグネット反転部56を有する。マグネット反転部56は第1動作機構側マグネット81を支持する。第1動作機構側マグネット81、X方向に沿った回転軸56Cを回転させることにより、Z方向における磁極の向きが反転するように支持されている。また、第1動作機構側マグネット81は、Z方向について光ファイバ曲げ機構30に設けられた曲げ機構側マグネット71と対向する位置関係となるように支持されている。
【0080】
(曲げ付与工程の動作説明)
図11Aは、第3実施形態でマグネット動作機構50がOPEN位置の時の状態について説明する図である。同
図11Aに示されるように、OPEN位置では、第1動作機構側マグネット81の磁極の向きが、曲げ機構側マグネット71との間で斥力を発生させる方向に支持されている。そのため、光ファイバ曲げ機構30はZ方向上側に押し上げられている。
【0081】
図11Bは、第3実施形態でマグネット動作機構50がCLAMP位置の時の状態について説明する図である。第3実施形態において、使用者は回転軸56Cを回転させることによって、OPEN位置からCLAMP位置に切り替えて第1動作機構側マグネット81の磁極の向きを反転させることができる。その結果、CLAMP位置では、光ファイバ曲げ機構30に対して引力が作用してZ方向下側に一気に引き付けられる。これにより、光ファイバ曲げ機構30に設けられた迂回用曲げ部31と迂回用曲げガイド41との間に光ファイバが挟み込まれ、迂回用曲げ部31の押圧面311に沿って光ファイバに曲げが付与される。
【0082】
第3実施形態の短瞬断切替装置では、マグネット動作機構50に設けられる磁石が一つだけであり、短瞬断切替装置の構成がより単純となり、また、製造コストを安くすることができる。
===その他の実施形態===
【0083】
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0084】
<光ファイバの曲げ付与装置>
上述の各実施形態では、光ファイバに対して曲げを付与することによって短瞬断切替動作行う短瞬断切替装置について説明されていたが、上述の曲げ付与方法は、短瞬断切替装置以外の光ファイバ曲げ付与装置としても適用可能である。例えば、上述の方法によって光ファイバに曲げを付与することによって当該曲げ部から光を漏洩させ、漏洩した光を検出素子によって受光して光の強度を測定するテスターや、光ファイバの上流側から入射させた心線対照用光信号を光ファイバ外に漏洩させ、漏洩した対照用光信号を検出する心線対照用光信号受光装置等に適用することができる。