(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機を示す図である。
図1に示す射出成形機は、フレームFr、型締装置10、射出装置40、およびコントローラ70などを有する。コントローラ70は、CPU(Central P
rocessing Unit)71と、メモリなどの記憶媒体72とを有する。コントローラ70は、記憶媒体72に記憶されたプログラムをCPU71に実行させることにより、型締装置10および射出装置40を制御する。
【0012】
次に、型締装置10について説明する。型締装置10の説明では、型閉時の可動プラテン13の移動方向(
図1中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン13の移動方向(
図1中左方向)を後方として説明する。
【0013】
型締装置10は、金型装置30の型閉、型締、型開を行う。型締装置10は、固定プラテン12、可動プラテン13、リヤプラテン15、タイバー16、トグル機構20、型締モータ21および運動変換機構25を有する。
【0014】
固定プラテン12は、フレームFrに対して固定される。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型32が取り付けられる。
【0015】
可動プラテン13は、フレームFr上に敷設されるガイド(例えばガイドレール)17に沿って移動自在とされ、固定プラテン12に対して進退自在とされる。可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型33が取り付けられる。
【0016】
固定プラテン12に対して可動プラテン13を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。
【0017】
リヤプラテン15は、固定プラテン12と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、リヤプラテン15は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。リヤプラテン15のガイドは、可動プラテン13のガイド17と共通のものでもよい。
【0018】
尚、本実施形態では、固定プラテン12がフレームFrに対して固定され、リヤプラテン15がフレームFrに対して型開閉方向に移動自在とされるが、リヤプラテン15がフレームFrに対して固定され、固定プラテン12がフレームFrに対して型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0019】
タイバー16は、固定プラテン12とリヤプラテン15とを間隔をおいて連結する。タイバー16は、複数本用いられてよい。各タイバー16は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー16には型締力検出器18が設けられる。型締力検出器18は、歪みゲージ式であってよく、タイバー16の歪みを検出することによって型締力を検出する。
【0020】
尚、型締力検出器18は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取り付け位置もタイバー16に限定されない。
【0021】
トグル機構20は、可動プラテン13とリヤプラテン15との間に配設される。トグル機構20は、クロスヘッド20a、複数のリンク20b、20cなどで構成される。一方のリンク20bは可動プラテン13に揺動自在に取り付けられ、他方のリンク20cはリヤプラテン15に揺動自在に取り付けられる。これらのリンク20b、20cは、ピンなどで屈伸自在に連結される。クロスヘッド20aを進退させることにより、複数のリンク20b、20cが屈伸され、リヤプラテン15に対して可動プラテン13が進退される。
【0022】
型締モータ21は、リヤプラテン15に取り付けられ、クロスヘッド20aを進退させることにより、可動プラテン13を進退させる。型締モータ21とクロスヘッド20aとの間には、型締モータ21の回転運動を直線運動に変換してクロスヘッド20aに伝達する運動変換機構25が設けられる。運動変換機構25は例えばボールねじ機構で構成される。
【0023】
型締装置10の動作は、コントローラ70によって制御される。コントローラ70は、型閉工程、型締工程、型開工程などを制御する。
【0024】
型閉工程では、型締モータ21を駆動して可動プラテン13を前進させることにより、可動金型33を固定金型32に接触させる。
【0025】
型締工程では、型締モータ21をさらに駆動させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型33と固定金型32との間にキャビティ空間34が形成され、キャビティ空間34に液状の成形材料が充填される。キャビティ空間34内の成形材料は、固化され、成形品となる。
【0026】
型開工程では、型締モータ21を駆動して可動プラテン13を後退させることにより、可動金型33を固定金型32から離間させる。
【0027】
次に、射出装置40について説明する。射出装置40の説明では、型締装置10の説明と異なり、充填時のスクリュ43の移動方向(
図1中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ43の移動方向(
図1中右方向)を後方として説明する。
【0028】
射出装置40は、フレームFrに対して進退自在なスライドベースSbに設置され、金型装置30に対して進退自在とされる。射出装置40は、金型装置30にタッチされ、金型装置30内に成形材料を充填する。射出装置40は、例えばシリンダ41、ノズル42、スクリュ43、計量モータ45、射出モータ46、および圧力検出器47を有する。
【0029】
シリンダ41は、供給口41aから供給された成形材料を加熱する。供給口41aはシリンダ41の後部に形成される。シリンダ41の外周には、ヒータなどの加熱源が設けられる。
【0030】
ノズル42は、シリンダ41の前端部に設けられ、金型装置30に対して押し付けられる。
【0031】
スクリュ43は、シリンダ41内の成形材料を送り出す送出部材である。スクリュ43は、シリンダ41内において回転自在に且つ進退自在に配設される。
【0032】
計量モータ45は、スクリュ43を回転させることにより、スクリュ43の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ41からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られシリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退させられる。
【0033】
射出モータ46は、スクリュ43を進退させる駆動装置である。射出モータ46は、スクリュ43を前進させることにより、スクリュ43の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置30のキャビティ空間34に充填させる。その後、射出モータ46は、スクリュ43を前方に押し、キャビティ空間34内の成形材料に圧力をかける。不足分の成形材料が補充できる。射出モータ46とスクリュ43との間には、射出モータ46の回転運動をスクリュ43の直線運動に変換する運動変換機構が設けられる。
【0034】
圧力検出器47は、例えば射出モータ46とスクリュ43との間に配設され、スクリュ43が成形材料から受ける圧力、スクリュ43に対する背圧などを検出する。スクリュ43が成形材料から受ける圧力は、スクリュ43から成形材料に作用する圧力に対応する。
【0035】
射出装置40の動作は、コントローラ70によって制御される。コントローラ70は、充填工程、保圧工程、計量工程などを制御する。
【0036】
充填工程では、射出モータ46を駆動してスクリュ43を設定速度で前進させ、スクリュ43の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置30内に充填させる。スクリュ43の位置や速度は、例えば射出モータ46のエンコーダ46aにより検出される。
【0037】
保圧工程では、射出モータ46を駆動してスクリュ43を設定圧力で前方に押し、金型装置30内の成形材料に圧力をかける。不足分の成形材料が補充できる。成形材料の圧力は、例えば圧力検出器47により検出される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間34内の成形材料の固化が行われる。冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0038】
計量工程では、計量モータ45を駆動してスクリュ43を設定回転数で回転させ、スクリュ43の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られシリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退させられる。スクリュ43の回転数は、例えば計量モータ45のエンコーダ45aにより検出される。
【0039】
計量工程では、スクリュ43の急激な後退を制限すべく、射出モータ46を駆動してスクリュ43に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ43に対する背圧は、例えば圧力検出器47により検出される。スクリュ43が所定位置まで後退し、スクリュ43の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が終了する。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態による充填工程でのスクリュ速度を示す図である。
図2において、横軸は時刻、縦軸はスクリュ速度である。
図3は、本発明の一実施形態による充填工程および保圧工程でのスクリュが成形材料から受ける圧力を示す図である。
図3において、横軸は時刻、縦軸は圧力である。
図2および
図3において、一点鎖線は、圧力が再上昇する場合の様子を示す。
【0041】
時刻t
0において充填工程が開始され、スクリュ43の設定速度がV
0(>0)に設定される。スクリュ43の速度が正であることはスクリュ43の前進を表し、スクリュ43の速度が負であることはスクリュ43の後退を表す。
【0042】
時刻t
0において、スクリュ43が設定速度V
0で前進され、スクリュ43の前方に蓄積された成形材料が金型装置30内に充填される。スクリュ43が成形材料から受ける圧力が徐々に上昇する。この圧力は、圧力検出器47によって検出できる。
【0043】
充填工程の途中の時刻t
1において、スクリュ43の位置が速度切換位置に達すると、スクリュ43の設定速度がV
0からV
1(V
0>V
1>0)に低下される。スクリュ43は微速前進され、主に残圧等によって成形材料が流動される。充填工程における成形材料のピーク圧が低減でき、バリの発生が低減でき、型締力も低減できる。型締力の低減によって、金型装置30内のガス逃げも良好になり、転写不良も低減できる。
【0044】
尚、
図2ではV
1は正とされるが、ゼロまたは負でもよい。V
1の絶対値はV
0の絶対値よりも小さくてよく、スクリュ43は停止または微速後退されてもよい。これらの場合も、充填工程における成形材料のピーク圧が低減できる。
【0045】
スクリュ43の設定速度がV
0からV
1に低下される時刻t
1(以下、「速度切換時刻t
1」ともいう)の後、スクリュ43が成形材料から受ける圧力は降下するが、
図2および
図3に一点鎖線で示すように再上昇する場合がある。例えば成形材料の流動先端が終点に達する場合に、圧力が再上昇する。圧力が再上昇し過ぎると、成形品の品質が低下しうる。
【0046】
そこで、速度切換時刻t
1の後、コントローラ70は、圧力が再上昇し過ぎないように、圧力検出器47の検出値の変化量に基づいてV/P切換を行う。圧力の再上昇は、例えば、圧力検出器47の検出値の時間微分に基づいて検知できる。圧力が再上昇する場合、上記時間微分は負から正に転じる。
【0047】
例えば、コントローラ70は、圧力検出器47の検出値が減少し、且つ、上記時間微分が基準値を超える場合に、V/P切換を行う。基準値は略ゼロとされる。基準値は、ゼロであることが最適であるが、ある程度の許容幅を有し、正、負のいずれでもよい。基準値が正の場合、
図3に実線で示すように検出値が再上昇し始めた直後の時刻t
2において、V/P切換が行われる。基準値が負の場合、検出値が再上昇し始める直前に、V/P切換が行われる。基準値が負の場合、上記時間微分が基準値に達してから、V/P切換が行われるまでの間に待ち時間を設定してもよい。
【0048】
尚、V/P切換に用いられる検出器は、成形材料の圧力に関する情報を検出するものであればよく、圧力検出器47に限定されない。例えば、圧力検出器47の他に、ノズル圧検出器48が使用できる。ノズル圧検出器48は、ノズル42内の成形材料の圧力を検出する。これらの検出器は、1つで用いられてもよいが、任意の組合せで用いられてもよい。
【0049】
速度切換時刻t1の後、圧力が低下し過ぎることを防止するため、コントローラ70はスクリュ43を微速前進させることが好ましい。
【0050】
尚、速度切換時刻t
1の後、成形材料の圧力が降下し続ける場合、成形材料の圧力が所定の切換設定圧力に達した場合に、コントローラ70はV/P切換を行ってよい。
【0051】
尚、
図2では、充填工程の開始時の時刻t
0から速度切換時刻t
1まで、スクリュ43の設定速度が一定であるが、変更されてもよい。充填工程においてスクリュ43の設定速度の切換が複数回行われる場合、最後の切換の時刻が速度切換時刻t
1であってよい。
【0052】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態の射出装置40は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式でもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。この場合、プランジャが特許請求の範囲に記載の送出部材に対応し、射出シリンダが特許請求の範囲に記載のシリンダに対応する。
【0054】
上記実施形態の型締装置10は、駆動源として、型締モータ21を有するが、型締モータ21の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置10は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。