(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356043
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】歯車研削盤による歯車製造方法
(51)【国際特許分類】
B23F 5/04 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
B23F5/04
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-219624(P2014-219624)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2016-83748(P2016-83748A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 正志
(72)【発明者】
【氏名】大内 久生
【審査官】
宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−144148(JP,A)
【文献】
特開2003−266241(JP,A)
【文献】
特開昭48−088588(JP,A)
【文献】
特公昭35−011147(JP,B1)
【文献】
特許第4824947(JP,B2)
【文献】
特開平11−264453(JP,A)
【文献】
特開2009−255276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00−23/12
B24B 53/00−57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを垂直軸周りに回転可能に支持するワークテーブルと、
上記ワークテーブルに対し、水平方向であるX方向、垂直方向であるZ方向、該X方向及びZ方向に直交するY方向に移動可能で、YZ平面でA方向に旋回可能で、且つ砥石中心軸を中心にB方向に回転可能なネジ状砥石とを備えた歯車研削盤による歯車の製造方法において、
上記ネジ状砥石をB方向に回転させると共に、該回転に合わせて上記ワークを上記垂直軸周りに回転させながら研削する際に、通常の上記ワークの回転角度に対し、ランダムに誤差を加え、歯面の歯筋方向に延びる規則的な凹凸の発生を防ぐ
ことを特徴とする歯車研削盤による歯車の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ状砥石を有する歯車研削盤による歯車製造方法に関し、特に研削した歯車の噛み合い騒音の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外周面に螺旋状のネジ山を有するネジ状砥石を用いてワークの歯面(平歯車、はすば歯車など)を研削する歯車研削盤が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような歯車研削盤は、ネジ状砥石のX軸、Y軸、Z軸の位置及び回転速度並びにワークテーブルの回転速度などをNC制御することにより、歯車を所望の形状に研削する。また、ドレッシング装置を有し、所定量の歯車を研削した後、ネジ状砥石を再生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4824947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の歯車研削盤で製造した歯車は、ネジ状砥石そのものの表面にある凹凸により、
図1(a)に示すように、歯筋方向に直線状に延びる突条が歯形方向に間隔を空けて並ぶ、歯面に規則的な表面パターンが形成される。このような規則的な表面パターンを有する歯車を使用すると、噛み合い時に騒音が発生することがわかっている。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歯面に規則的な表面パターンが形成されるのを防いで、噛み合い騒音を低減した歯車を製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、ワークの表面に規則的ではなく不規則な表面パターンを意図的に形成するようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、
ワークを垂直軸周りに回転可能に支持するワークテーブルと、
上記ワークテーブルに対し、水平方向であるX方向、垂直方向であるZ方向、該X方向及びZ方向に直交するY方向に移動可能で、YZ平面でA方向に旋回可能で、且つ砥石中心軸を中心にB方向に回転可能なネジ状砥石とを備えた歯車研削盤による歯車の製造方法において、
上記ネジ状砥石をB方向に回転させると共に、該回転に合わせて上記ワークを上記垂直軸周りに回転させながら研削する際に、通常の
上記ワークの回転角度に対し、ランダムに誤差を加え、歯面の歯筋方向に延びる規則的な凹凸の発生を防ぐ構成とする。
【0008】
すなわち、ネジ状砥石の表面には、ドレッサによる規則的な表面の凹凸が形成されている。このため、ネジ状砥石を用いて歯車の表面を研削すると、同様に歯先に規則的な凹凸が形成されてしまう。このような規則的な凹凸は、歯車を駆動させたときの騒音の原因となる。しかし、上記の構成によると、歯車の研削時にワークの回転角度に故意に微小の誤差を加えて表面に規則的ではなく不規則に凹凸を形成することができる。表面に不規則な微小な凹凸を有する歯車を用いたときには、規則的な微小な凹凸を有する歯車で発生していた騒音の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、ネジ状砥石をB方向に回転させると共に、この回転に合わせてワークを垂直軸周りに回転させながら研削する際に、通常の回転角度に対し、ランダムに誤差を加え、歯筋方向に延びる規則的な凹凸の発生を防ぐようにしたことにより、噛み合い騒音を低減した歯車を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】歯車表面の凹凸を誇張して示した拡大斜視図であり、(a)が通常の研削による歯先表面を示し、(b)が本発明の実施形態に係る、ランダムな誤差を加えた研削による歯先表面を示す。
【
図2】歯車表面の凹凸を模式的に示す平面図であり、(a)が通常の研削による歯先表面を示し、(b)が本発明の実施形態に係る、ランダムな誤差を加えた研削による歯先表面を示す。
【
図4】ワークテーブルとネジ状砥石との位置関係を示す斜視図である。
【
図5】ドレッサとネジ状砥石との位置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図3〜
図5は、本発明の実施形態の歯面研削盤1を示し、この歯面研削盤1は、ワーク20である例えば、はすば歯車、平歯車等を研削するための機械であり、台状のベッド2を有する。このベッド2の上には、歯車の半径方向(X方向)に移動可能なXスライダ3が載置されている。このXスライダ3の上には、コラム4が載置され、このコラム4には、歯車の軸方向(Z方向)に移動可能な軸スライダ5が取り付けられ、この軸スライダ5に砥石中心軸方向(Y方向)に移動可能なYスライダ8が取り付けられている。Yスライダ8には、A方向(ねじり角の正逆両方向)に旋回可能な旋回スライダ6が設けられ、その旋回スライダ6に円筒形状のネジ状砥石7が砥石中心軸7aを中心にB方向(正逆両方向)に回転可能に取り付けられている。ネジ状砥石7は、リング状の本体の外周に例えばねじれ角γの3条のネジ山7bが形成され、それらネジ山7b間に合計3本の溝7cを有する。
【0013】
ベッド2上のコラム4に対向する位置には、カウンタコラム9が設けられている。このカウンタコラム9は、ワーク20を垂直方向(W方向)から押さえる心押し台10を有し、この心押し台10の下方にワーク20を保持するワークテーブル11が設けられている。ワークテーブル11は、そのテーブル垂直軸11aを中心にC方向(正逆両方向)に旋回可能となっている。
【0014】
そして、カウンタコラム9には、ネジ状砥石7をドレッシングするドレッサ12が設けられている。
図5にも示すように、ドレッサ12は、ドレッサ回転軸12aを中心に回転する円板状のドレッシング工具12bを有し、ネジ状砥石7の切れ味が低下したときに、そのネジ山7bのフランクに接触させて再生させるものである。本実施形態では、ドレッシング工具12bは1枚であるが、一対のものとしてもよい。
【0015】
そして、ネジ状砥石7の位置及びその回転並びにワーク20の回転は、NC制御により精密に制御されるようになっている。
【0016】
ドレッサ12を用いてネジ状砥石7のドレッシングを行うと、ドレッサ12そのもの表面にある凹凸が原因で、ネジ状砥石7には凹凸が転写される。このネジ状砥石7を用いて歯車の製造を行うと歯車の表面に
図1(a)及び
図2(a)のような歯筋方向に直線状に延びる突条7dが並ぶ規則的な凹凸模様が形成される。このような凹凸模様を有する歯車を機械に組み込んで駆動すると、騒音が発生しやすい。
【0017】
そこで、本発明では、通常のワーク20の回転角度に対し、ランダムに微小な誤差を加えながらネジ状砥石でワーク20の表面を研削させるようにした。
【0018】
具体的には、例えば、歯車諸元として、モジュール2、歯数56、ねじれ角30度及び圧力角20度のものを研削する場合を考える。加工条件として、5条のネジ状砥石7を4700rpmで回転させる。
【0019】
通常は、ネジ状砥石7のB方向の回転に合わせ、ネジが進むようにワーク20を垂直軸11a周りに所定の角度で回転させる必要がある。NC制御では、所望の歯車形状に研削されるように、ネジ状砥石7及びワーク20の回転、スライド移動等を最適に制御するが、本実施形態では、通常のワーク20の最適な回転角度に対し、例えば±0.001度/秒の誤差をあえて加える。
【0020】
すると、
図1(b)及び
図2(b)に示すように、歯筋方向に不規則な凹凸のある表面形状となる。特に
図2(b)に示すような、凸部7eが互い違いに(千鳥足状に)並ぶのが望ましい。
【0021】
このような方法で歯車を研削すると、従来発生していた
図1(a)及び
図2(a)のような突条7dによる規則的な凹凸模様の形成が確実に防止され、歯車駆動時の騒音を低減することができる。
【0022】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明したように、本発明は、平歯車、はすば歯車などをネジ状砥石を用いて研削する歯車研削盤による歯車の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0024】
1 歯面研削盤
2 ベッド
3 Xスライダ
4 コラム
5 軸スライダ
6 Yスライダ
7 ネジ状砥石
7a 砥石中心軸
7b ネジ山
7c 溝
7d 突条
7e 凸部
8 旋回スライダ
9 カウンタコラム
10 心押し台
11 ワークテーブル
11a テーブル垂直軸
12 ドレッサ
12a ドレッサ回転軸
12b ドレッシング工具
20 ワーク