特許第6356060号(P6356060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356060
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】有機イオン性機能材料
(51)【国際特許分類】
   C07C 49/83 20060101AFI20180702BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20180702BHJP
   A61K 41/00 20060101ALI20180702BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180702BHJP
   C07C 309/32 20060101ALI20180702BHJP
   C07C 309/42 20060101ALI20180702BHJP
   C07D 235/28 20060101ALI20180702BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180702BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20180702BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20180702BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C07C49/83 ACSP
   A61K31/4184
   A61K41/00
   A61P43/00 121
   C07C309/32
   C07C309/42
   C07D235/28 Z
   C09K11/06 690
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 250Z
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
【請求項の数】9
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2014-500269(P2014-500269)
(86)(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公表番号】特表2014-511832(P2014-511832A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2012000860
(87)【国際公開番号】WO2012126566
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年2月27日
【審判番号】不服2017-364(P2017-364/J1)
【審判請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】11002481.7
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】パン、ジュンヨウ
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミア・ホサイン
【合議体】
【審判長】 樋口 信宏
【審判官】 宮澤 浩
【審判官】 清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−233162(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0215879(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/158069(WO,A1)
【文献】 特開2001−291593(JP,A)
【文献】 特表2005−536832(JP,A)
【文献】 特開2006−45314(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/015265(WO,A2)
【文献】 BERNARDS,D.A.et al., OBSERVATION OF ELECTROLUMINESCENCE AND PHOTOVOLTAIC RESPONSE IN IONIC JUNCTIONS,SCIENCE ,米国,AMERICAN ASSOCIATION FOR THE ADVANCEMENT OF SCIENCE,米国,AMERICAN,ASSOCIATION FOR THE ADVANCEMENT OF SCIENCE,2006年9月8日,V313,P1416−1419
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H05B33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層内に以下の式(1)を有する非ポリマー状有機イオン性化合物を含む有機発光電子化学電池(OLEC):
【化1】
ここで、記号は、以下の意味を有する:
Mは、ベンズイミダゾールおよびその誘導体から選ばれるマトリックス基を含む機能性有機を含む単荷電有機カチオン性またはアニオン性化合物であり;
Nは、単荷電有機もしくは無機のカチオン性またはアニオン性化合物であり;
ここで、MとNは、カウンターイオンである。
【請求項2】
Nが、6〜1000g/molの範囲の分子量を有することを特徴とする、請求項1記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【請求項3】
Mがカチオンであり、Nが、[HSO、[NO、[BF、[(R)BF、[(RBF、[(RBF]、[(RB]、[B(CN)、[HPO、[(アルキル-O)PO、[(アルキル)PO、[(RPO、[RSO、[HOSO(CFSOO]、[アルキル-SO、[HOSO(CHSOO]、[アルキル-OSO、[アルキル-C(O)O]、[HO(O)C(CHC(O)O]、[RC(O)O]、[HO(O)C(CFC(O)O]、[(RSON]、[(FSON]、[((RP(O))N]、[(RSOC]、[(FSOC]、P、[PF(C、[PF(CF、[B(COOCOO)、[(CFSON]、[(CSON]、[(CFSO)(CSO)N]、[(CN)N]、[CFSOC]および[(CN)C]を含む基から選ばれることを特徴とし、ここで、kは、1〜8の整数であり、Rはフッ素化アリールもしくはアルキルアリール基または式(C2O−X+1))のフッ素化アルキルであり、ここで、oは1〜12の整数であり、xは0〜7の整数であることを特徴とする、請求項1または2記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【請求項4】
Mがアニオンであり、Nが、K、Na、アンモニウム-、ホスホニウム-、チオウロニウム-、チオキソニウム-、グアニジミウム-カチオン、ヘテロ環カチオンおよびその誘導体を含む基から選ばれることを特徴とする、請求項1または2記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【請求項5】
マトリックス、蛍光もしくは燐光エミッター、染料、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子注入材料および電子輸送材料より成る群から選ばれる機能性有機化合物とを含む請求項1〜4何れか1項記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【請求項6】
Mの機能性有機基の機能が、機能性有機化合物の機能とは異なることを特徴とする、請求項5記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【請求項7】
マトリックス化合物および蛍光もしくは燐光エミッター化合物を含む、請求項5または6記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【請求項8】
イオン伝導性化合物をさらに含む、請求項5〜7何れか1項記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【請求項9】
マトリックス化合物と染料を含む、請求項5〜8何れか1項記載の有機発光電子化学電池(OLEC)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックス基、正孔注入基、正孔輸送基、電子注入基および電子輸送基から選ばれるイオン性有機機能基と有機イオン性化合物を含み、フィルム中で可動性イオンとして機能するほど小さい別のイオンを好ましくはカウンターイオンとして含む新規な非ポリマー状有機イオン性化合物に関する。さらに、本発明は、新規な有機イオン性化合物と別の機能性化合物を含む組成物に関する。新規な有機イオン性化合物または組成物は、マトリックス材料等の機能性材料として、または電荷輸送層中で、電子素子で使用されてよい。得られた電子素子も、本発明の目的である。
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)等の有機電子素子は、その無機競合品(発光ダイオード−LED)を超える多くの優位性を有しており、それらは、本来フレキシブルであり、たとえば、インクジェット印刷およびスクリ−ン印刷等の印刷技術により、広い領域を被覆することができる。
【0003】
しかしながら、OLEDにおいては、BaおよびCa等の活性金属が、カソードとして使用される。酸素と湿気は、カソードまたは有機機能層を攻撃することによって、OLEDの機能を阻害または破壊することができる。したがって、OLEDは、貯蔵中および駆動中の双方で長い寿命を確保するために良好な封止を必要とする。環境に対してより敏感でないカソードをもつ代替素子は、OLED製造を容易にすることだろう。
【0004】
さらに、OLEDでの機能層は、通常非常に薄く、典型的には100nm未満または50nm未満であり、これらは高度な均質性が必要とされ、表面が曲面のみならず、平坦基板でさえも印刷技術の未だ大きな挑戦である。
【0005】
さらに、多層構造をもつOLED製造は、いまだに手の込んだ、そして費用のかかる仕事である。
【0006】
OLEDと比べると、いわゆるOLEC(有機発光電子化学電池)は、典型的には二個の電極の間に挟まれた唯一つまたは二個の機能層から成り、はるかにより簡単である。そして、発光層は非常により薄く作成することができ、それゆえに、OLEDよりもはるかにより故障許容性がある。これにより、より広範なプロセスに道を開き、OLED製造用の確立された印刷技術を採用することを可能とさえする。したがって、製造費用、特に、大量生産費用は、OLEDのものと比べてはるかにより低廉であることが期待される。
【0007】
さらに、OLECは、空気増感性電荷注入層または電子注入用BaもしくはCa等の金属に依存することがなく、さらに、OLEDと比べその調製をさらに単純化し、より費用対効果を高める。これは、OLECのより厳しくない封止条件に基づく。
【0008】
OLECの基礎技術は、OLEDもしくはLEDのものとは異なる。OLEDとLED両者は、順方向バイアスと逆方向バイアスを持つダイオードである。OLECとは対照的に、OLEDとLED両者のI-V(電流-電圧)曲線は、非対称である。それらは半導体技術であり、OLECは、基本的に電子化学電池またはより正確には電解質電池である。正孔と電子が再結合していわゆる励起子、すなわち、電子-正孔-対を生成するまで、OLEDにおける電荷輸送が、分子から分子への正孔と電子の移動を介して生じる。励起子が放射減衰すると発光する。OLECにおいては、電圧を印加すると、電解質はアノードで酸化され、カソードで還元される。分子のカチオンおよび/またはアニオンは電場下を拡散し、一緒に会合していわゆるp-n接合を生じるまで、その間有機発光材料をドープする。さらに、励起子は、p-n接合において有機発光化合物上に形成される。励起子の放射減衰は、発光をもたらす。OLEDの元来の働きと原理は、Qibing Pei et al., Science, 1995, 269, 1086-1088による論文を参照することができる。OLEDは、原則として、対称I-V曲線を示し、低い駆動電圧を有し、カソードとしての活性金属の必要はない。
【0009】
イオン性材料を含む発光電子化学素子の第二のタイプは、Daniel A. Bernards, et al., Science 2008, 313, 1416により報告されたとおりのイオン性p-n接合をもつ素子であり、ここで、二個の層はともに積層されている。層の一方は移動性アニオンを、他方は移動性カチオンを有し;イオン交換によって、イオン性p-n接合が、二層間の界面に形成される。ここで、イオン性p-n接合は、電圧が印加される前に形成される。次いで、発光は、p-n接合中で生じることができる。同様の発光素子が、US2007/0157662 A1にも開示された。
【0010】
発光電子化学素子の第三のタイプは、いわゆる有機発光電子化学トランジスター(OLEET)であり、Yumusak et al., Appl. Phys. Lett. 97, 033302 (2010)により最初に報告された。OLEETは、有機電界効果トランジスターと同じ素子構造を有し、電源とドレーンおよびゲート電極を有するが、電源とドレーン間に有機発光材料とイオン性化合物の組成物をもつ。
【0011】
しかし、OLEDを凌駕する電子化学素子の優位性が明らかに存在し、性能、特に、寿命と効率を向上するために、OLEC等の有機発光電子化学素子用の材料を提供する大きな需要が未だに存在する。これは、他の有機電子素子、たとえば、有機太陽電池等にも有益でもあろう。
【0012】
したがって、本発明は、以下の式(1)を有する新規な非ポリマー状有機イオン性化合物を提供する:
【化1】
【0013】
式(1)中のMは、マトリックス基、正孔注入基、正孔輸送基、電子注入基および電子輸送基から選ばれる機能性有機基を含む。機能性有機基を含む単荷電有機カチオン性またはアニオン性化合物Mが、さらに好ましい。この場合、機能性有機基自体が単荷電有機イオンである。
【0014】
式(1)中のNは、単荷電有機もしくは無機のカチオン性またはアニオン性化合物であり、MとNは、カウンターイオンである。
【0015】
式(1)による非ポリマー状有機イオン性化合物は、MとN両者が非ポリマー状有機化合物であると理解することができ、好ましくは、小分子の群から選ぶことができる。
【0016】
ここで使用される用語小分子は、ポリマー、オリゴマー、デンドリマーもしくはブレンドではない分子と定義される。本発明の文脈での小分子は、モノマー状もしくはダイマー状化合物である。特に、反復構造は、小分子中には存在しない。小分子の分子量は、典型的には少数の反復単位をもつポリマーの範囲であり、オリゴマー以下である。
【0017】
小分子の分子量は、好ましくは、5000g/モル未満、特に、好ましくは、4000g/モル未満および非常に、特に、好ましくは、3000g/モル未満である。本発明でさらにより好ましいのは、Mが1000g/モル未満の分子量を有し、Nが1000g/モル未満の分子量を有する小分子である。
【0018】
MもNも何れも燐光発光金属錯体を含まない式(1)の化合物が好ましい。
【0019】
式(1)のさらに好ましい化合物は、MもNも何れも燐光発光金属錯体を含まず、Mが1000g/モル未満の分子量を有し、Nが1000g/モル未満の分子量を有する化合物である。
【0020】
好ましいものは、Mがアニオン性化合物であり、Nがカチオン性化合物である。
【0021】
好ましくは、中性のさらなるポリマーおよびオリゴマーは、式(1)の化合物と混合することもできる。本発明で使用され得るオリゴマーは、好ましくは、3〜9の反復単位を有する。オリゴマーの分岐度は、0(直鎖オリゴマー、分岐なし)と1(完全に分岐したデンドリマー)との間である。ここで使用される用語デンドリマーは、M. Fischer et al. in Angew. Chem., Int. Ed. 1999, 38, 885で定義される。本発明に適するオリゴマーまたはデンドリマーの分子量は、3000g/モル〜10000g/モル、好ましくは、8000g/モル未満、および非常に、好ましくは、7000g/モル未満であり得る。
【0022】
本発明で使用され得るポリマーは、好ましくは、10〜10000の、特に、好ましくは、20〜5000の、非常に、特に、好ましくは、50〜2000の反復単位を有する。ポリマーの分子量Mは、好ましくは、10000〜2000000g/モルの範囲、特に、好ましくは、100000〜1500000g/モルの範囲、および非常に、特に、好ましくは、200000〜1000000g/モルの範囲である。Mの決定は、当業者に知られた標準的方法により、たとえば、内部標準としてポリスチレンをもつゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して実行することができる。
【0023】
最も単純な場合には、単荷電有機カチオンまたはアニオンMは、それ自身が荷電した化合物である機能性有機基から成る。別の場合には、単荷電有機カチオンまたはアニオンMは、少なくとも二個の基、すなわち、機能性有機基と電荷基とを含む。以下に、本発明の多くの化合物が、示されるであろう。これらの化合物は、異なる方法で構築することができ、一つの典型的方法は、有機機能性材料の一つの水素原子を電荷基により置き代えることである。適切な電荷基は、式(1)中のNに対して以下に説明されるアニオンまたはカチオン基から選ばれる。
【0024】
本発明の一つの態様では、式(1)のMは、マトリックス基を含む。この場合には、単荷電有機カチオンまたはアニオンMは、いわゆる(コ)ホストまたは(コ)マトリックス材料として機能する。すなわち、マトリックス基は、ホスト材料により形成されるマトリックス中でゲストとして機能する他の材料のためのマトリックスもしくはホスト材料の機能を、本発明の有機イオン性化合物に付与する。
【0025】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、ホスト材料は、通常マトリックス中でゲストであるエミッター化合物と組み合わせて使用される材料であり、一般的に、エミッター材料と比べて、HOMOとLUMOとの間により大きなエネルギーギャプを有する。さらに、ホスト材料は、好ましくは、電子もしくは正孔輸送特性の何れかを有してよい。ホスト材料は、電子もしくは正孔輸送特性の両者を有することもできる。一重項発光が、エレクトロルミネッセンス素子でのフォトルミネッセンスに支配的に機能する場合には、ホスト材料のフォトルミネッセンススペクトルとエミッターの吸収スペクトルとの間の最大の重複が、好ましくは、望ましい。これは、ホスト材料からエミッターへのエネルギー移動を確保し得る。
【0026】
上記言及したとおりに、ホスト材料は、特に、ホストが燐光エミッターと組み合わせて使用されるならば、マトリックスまたはマトリックス材料とも呼ばれる。
【0027】
式(1)のM中に含まれることができるマトリックス基は、OLEDのために適した任意のホストまたはマトリックス材料から選ぶことができる。好ましくは、適切なホスト/マトリックス基は、ケトン、カルバゾール、トリアリールアミン、インドロカルバゾール、インデノフルオレン、インデノカルバゾール、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、トリアジン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、トリアゾール、オキサゾール、イミダゾール、アザカルバゾール、オリゴフェニレン、シラン、アザボロール、ジアザホスホール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、ジスチリルピラジン、チオピランジオキシド、フェニレンジアミン、三級芳香族アミン、スチリルアミン、アミノ置換カルコン、インドール、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、アントラセン、ベンズアントラセン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、アイソマーおよびその誘導体から選ばれる。
【0028】
蛍光エミッター化合物用に適切な好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンズアントラセン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、スチルベン、フェニレンジアミン、三級芳香族アミン、スチリルアミンおよびその誘導体から選ばれる。
【0029】
蛍光エミッター化合物用に適切なホスト材料のさらなる例は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461にしたがう2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、たとえば、フェナントレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレン、スピロフルオレン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、デカシクレン、ルブレン等の縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1’-ビフェニル(DPVBi))もしくはEP 676461にしたがう4,4’-ビス-2,2-ジフェニルビニル-1,1-スピロビフェニル(スピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 2004/081017にしたがう)、特に、8-ヒドロキシキノリンの金属錯体、たとえば、アルミニウム(III)トリス(8-ヒドロキシキノリン)(アルミニウムキノリノラート、Alq)もしくはビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノリノラート)アルミニウムとイミダゾールキレートを有するもの(US 2007/0092753 A1)およびキノリン-金属錯体、アミノキノリン-金属錯体、ベンゾキノリン-金属錯体、正孔伝導化合物(たとえば、WO 2004/058911にしたがう)、電子伝導化合物、アトロプ異性体(たとえば、WO 2006/048268にしたがう)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 2006/177052にしたがう)またはベンズアントラセン(たとえば、DE102007024850)のクラスから選択される。特に、好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。非常に、特に、好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の目的のためにオリゴアリーレンは、少なくとも三個のアリールもしくはアリーレン基が互いに結合した化合物を意味するものと解される。
【0030】
蛍光エミッター化合物用に好ましい、さらに好ましいホスト材料は、特に、式(2)の化合物から選ばれる。
【化2】
【0031】
ここで、
Ar、Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、モノもしくはポリ環式の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、6〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換芳香族炭化水素環状基、5〜50個の非水素原子を有する置換もしくは非置換芳香族ヘテロ環状基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルキル基、3〜50個の核炭素原子を有する置換もしくは非置換シクロアルキル基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルコキシ基、6〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アラルキル基、5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリールオキシ基、5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリールチオ基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換シリル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基から選ばれる一以上の置換基により置換されてよい。
【0032】
pは、1、2または3であり、
Ar、ArおよびAr中のΠ電子の合計は、p=1ならば少なくとも30であり、p=2ならば少なくとも36であり、p=3ならば少なくとも42である。
【0033】
さらに好ましい態様では、式(2)の化合物中のpは、0である。
【0034】
モノあるいはポリ環式の芳香族環構造は、5〜60個の芳香族炭素原子、より好ましくは、6〜30個、さらにより好ましくは、6〜10個の炭素原子を有する。モノあるいはポリ環式の複素環式芳香族環構造は、5〜60個の芳香族炭素原子、より好ましくは、5〜30個、さらにより好ましくは、5〜14個の環原子を有する。複素環式芳香族環構造は、N、OおよびSから選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む(残りの原子は、炭素である。)。
【0035】
好ましい芳香族環構造は、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラシル、フェナントリル、ジヒドロフェナントリル、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレンおよびインデンである。
【0036】
好ましい複素環式芳香族環構造は、たとえば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール等の五員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン等の六員環、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、ベンズイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェン等の縮合基またはこれらの基の組み合わせである。
【0037】
式(2)のホスト材料で、特に、好ましいのは、基Arは、アントラセンであって、6〜50個の炭素原子を含む置換もしくは非置換芳香族炭化水素環状基、5〜50個の非水素原子を有する置換もしくは非置換芳香族ヘテロ環状基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルキル基、3〜50個の核炭素原子を有する置換もしくは非置換シクロアルキル基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルコキシ基、6〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アラルキル基、5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリールオキシ基、5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリールチオ基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換シリル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基から選ばれる一以上の置換基により置換されてよく;
および基Arおよび基Arは、9および10位に結合する。非常に、特に、好ましくは、Arおよび/または基Arの少なくとも一つは、1-もしくは2-ナフチル、2-,3-もしくは9-フェナントリルまたは2-,3-,4-,5-,6-もしくは7-ベンズアントラセニルであり、夫々は、6〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換芳香族炭化水素環状基、5〜50個の非水素原子を有する置換もしくは非置換芳香族ヘテロ環状基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルキル基、3〜50個の核炭素原子を有する置換もしくは非置換シクロアルキル基、1〜50個の炭素原子を含む置換もしくは非置換アルコキシ基、6〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アラルキル基、5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリールオキシ基、5〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリールチオ基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基、1〜50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換シリル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基から選ばれる一以上の置換基により置換されてよい。
【0038】
アントラセン系化合物は、US 2007/0092753 A1およびUS 2007/0252517 A1に記載されており、たとえば、2-(4-メチルフェニル)-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、9-(2-ナフチル)-10-(1,1’-ジフェニル)アントラセンおよび9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル) フェニル]アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセンおよび1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)ベンゼンである。特に、好ましいものは、二個のアントラセン単位を含むホスト材料(US 2008/0193796 A1)、たとえば、10,10’-ビス[1,1’,4’,1’’]テルフェニル-2-イル-9,9’-ビスアントラセニルである。
【0039】
さらに好ましいホスト材料は、アリールアミン、スチリルアミン、フルオレセイン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、シクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾオキサゾリン、オキサゾン、ピリジン、ピラジン、イミン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール(US 2007/0092753 A1)、たとえば、2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール]、アルダジン、スチルベン、スチリルアリーレン誘導体、たとえば、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンおよびジスチリルアリーレン誘導体(US 5121029)、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ジケトピロロピロール、メロシアニン、アクリジン、キナクリドンおよび桂皮酸エステルである。
【0040】
特に、好ましいものは、アリールアミンおよびスチリルアミン誘導体、たとえば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)である。
【0041】
蛍光エミッター化合物用のために好ましいホストとしてオリゴアリーレンをもつ好ましい化合物は、たとえば、US2003/0027016 A1、US7326371 B2、US2006/043858 A、US7326371 B2、US2003/0027016 A1、WO2007/114358、WO2008/145239、JP3148176 B2、EP1009044、US2004/018383、WO2005/061656 A1、EP0681019B1、WO2004/013073A1、US5077142、WO2007/065678およびUS2007/0205412 A1に記載されている。特に、好ましいオリゴアリーレン系化合物は、式(3)〜(9)を有する化合物である。
【化3-1】
【化3-2】
【0042】
蛍光エミッター化合物用に好ましいさらなるホスト材料は、スピロビフルオレンとその誘導体、たとえば、EP0676461に記載されたスピロDPVBiおよびUS6562485に開示されたインデノフルオレンから選ぶことができる。
【0043】
燐光エミッター化合物用に適した好ましいホスト材料、すなわち、マトリックス材料は、ケトン、カルバゾール、インドロカルバゾール、トリアリールアミン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾールおよびその誘導体から選ばれる。いくつかの好ましい誘導体は、以下により詳細に説明される。
【0044】
燐光エミッター化合物がホスト材料として使用されるならば、蛍光エミッター化合物用に使用されるホスト材料と比べると、むしろ異なる特性を満たす必要がある。燐光エミッター化合物用に使用されるホスト材料は、エミッターの三重項準位と比べてエネルギー的により高い三重項準位を有することが要求される。ホスト材料は、電子もしくは正孔の何れかまたは双方を輸送することができる。さらに、エミッターは、一重項-三重項混成を十分に促進するために、大きいスピン軌道カップリング定数を有すると仮定される。これは、金属錯体を使用することによって、容易にすることができる。
【0045】
三重項マトリックス材料のさらなる例は、N.N-ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)、カルバゾール誘導体(たとえば、WO 2005/039246、US2005/0069729、JP 2004/288381、EP1205527もしくはWO 2008/086851にしたがう)、アザカルバゾール(たとえば、EP1617710、EP1617711、EP1731584、JP 2005/347160にしたがう)、ケトン(たとえば、WO2004/093207にしたがう)、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン(たとえば、WO 2005/003253にしたがう)、芳香族アミン(たとえば、US2005/069729にしたがう)、バイポーラーマトリックス材料(たとえば、WO 2007/137725にしたがう)、シラン(たとえば、WO2005/111172にしたがう)、9,9-ジアリールフルオレン誘導体(たとえば、DE 102008017591にしたがう)、アザボロールもしくはボロン酸エステル(たとえば、WO 2006/117052にしたがう)、トリアゾール誘導体、オキサゾールおよびオキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フェニレンジアミン誘導体、芳香族三級アミン、スチリルアミン、インドール、アントロン誘導体、フルオレン誘導体、フルオニレニリデンメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、カルボジイミド誘導体、ジフェニルキノン誘導体、フタロシアニン誘導体、8ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、たとえば、Alq、8ヒドロキシキノリン錯体は、トリアリールアミノフェノールリガンドを含んでもよい(US 2007/0134514 A1)。
【0046】
特に、好ましいマトリックス材料は、インドロカルバゾールおよびその誘導体(たとえば、式(10)〜(16))から選ばれ、たとえば、DE102009023155.2、EP0906947B1、EP0908787B1、EP906948B1、WO2008/056746A1、WO2007/063754A1、WO2008/146839A1およびWO2008/149691A1.に開示されている。
【化4-1】
【化4-2】
【0047】
好ましいカルバゾール誘導体の例は、1,3-N,N-ジカルバゾールベンゼン(=9,9’-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール)(mCP)、9,9’-(2,2’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス-9H-カルバゾール)(CDBP)、1,3-ビス(N,N’-ジカルバゾール)ベンゼン(=1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニルおよび式(17)〜(21)の化合物である。
【化5】
【0048】
さらに好ましい化合物は、たとえば、マトリックス材料としての式(22)〜(27)のSiテトラアリール化合物である(US2004/209115、US2004/0209116、US2007/0087219、US2007/0087219A1)。
【化6-1】
【化6-2】
【0049】
ホスト材料がエミッター化合物用のマトリックスとして機能するならば、エミッター化合物は、ホスト化合物と比べてより小さなバンドギャップを有する必要がある。一般的に、より小さなバンドギャップは、共役分子系のΠ電子系を拡張することにより達成することができる。したがって、エミッター化合物は、ホスト分子よりも、より拡張された共役Π電子系を持つ傾向にある。多くの例が公開されており、たとえば、JP2913116BおよびWO2001/021729 A1に開示されたスチリルアミン誘導体とWO2008/006449およびWO2007/140847に開示されたインデノフルオレン誘導体である。
【0050】
ホスト/マトリックス化合物の上記言及された例が、イオン性化合物である場合には、それらは、単荷電有機カチオンまたはアニオンM自身として機能してよい。この場合Mは、機能性有機基から成る。
【0051】
ホスト/マトリックス化合物の上記言及された例が、中性化合物である場合には、それらは、単荷電有機カチオンまたはアニオンMの一部である。この場合ホスト/マトリックス化合物は、単荷電有機カチオンまたはアニオンM中に含まれる上記言及した機能性有機基であり、Mの荷電部分に結合し、そこでは、一つの水素原子は上記言及した化合物には存在せず、化合物は、水素が存在しないこの位置を介してMの荷電部分に結合する。
【0052】
マトリックスもしくはホスト基を含む適切なカチオンまたはアニオンの例は、以下にあげられる。さらに適切な例は、上記説明したとおりのホスト基と以下に説明されるアニオンとカチオンとの組み合わせにより容易に製造することができる。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【化7-6】
【化7-7】
【0053】
本発明の別の態様では、単荷電有機カチオンまたはアニオンMは、正孔注入基もしくは正孔輸送基を含む。この場合に単荷電有機カチオンまたはアニオンMは、正孔注入材料(HIM)もしくは正孔輸送材料(HTM)として機能し得る。すなわち、正孔注入基もしくは正孔輸送基は、有機イオン性化合物内で正孔(正電荷)を注入するか輸送する能力を、本発明の有機イオン性化合物に与える。HTMは、正孔注入材料もしくはアノードから注入された正孔(すなわち、正電荷)を輸送することができる材料もしくは単位であることを特徴とする。多くの場合、HIMは、隣接する層に応じて、HTMとしても機能することができる。
【0054】
原則として、OLED分野で当業者に知られた任意のHTMもしくはHIMが、式(1)のM中で正孔注入基もしくは正孔輸送基として含まれることができる。適切な正孔注入基もしくは正孔輸送基は、好ましくは、芳香族アミン、トリアリールアミン、テトラアリールパラ-フェニレンジアミン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノフルオレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ピロール、チアントレン、フェノキサジン、フェノチアジン、ジヒドロフェナジン、そのアイソマーおよびその誘導体から選ばれる。好ましくは、中性型の正孔注入基もしくは正孔輸送基は、真空エネルギー準位と比べて、5.8eV超のエネルギー準位を有する。
【0055】
有機機能性基または化合物は、その分子フロンティア軌道、すなわち、最高被占軌道(HOMO)(時々価電子帯とも呼ばれる)と最低空軌道(LUMO)(時々伝導帯とも呼ばれる)により特徴付けることができる。HOMOおよびLUMO準位は、たとえば、XPS=X線光電子分光分析法、UPS=紫外線光電子分光分析法もしくはCV=シクロボルタンメトリーにより、いつものとおり測定し、または当業者に知られた(時間依存性)DFT=密度関数理論等の量子化学的方法により計算することができる。当業者は、これらのエネルギー準位の絶対値は、使用される方法に顕著に依存するという事実に気付いてもいる。有機機能性材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位の信頼できる比較は、同じ測定法または計算法の使用を必要とする。
【0056】
本発明の化合物に含まれることができる適切なHTMもしくはHIMは、たとえば、フェニレンジアミン誘導体 (US 3615404)、アリールアミン誘導体(US 3567450)、アミノ置換カルコン誘導体(US 3526501)、スチリルアントラセン誘導体(JP-A-56-46234)、フルオレン誘導体 (JP-A-54-110837)、ヒドラゾン誘導体(US 3717462)、スチルベン誘導体(JP-A-61-210363)、シラザン誘導体(US 4950950)、チオフェンオリゴマー、ポリフィリン化合物(JP-A-63-2956965)、芳香族ジメチリデン型化合物、たとえば、CDBP、CBP、mCP等のカルバゾール化合物、芳香族三級アミンおよびスチリルアミン化合物(US 4127412)、モノマートリアリールアミン(US 3180730)である。さらにより多いトリアリールアミノ基が、分子中に存在してもよい。
【0057】
好ましいものは、たとえば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)(US 5061569)もしくはMTDATA(JP-A-4-308688)、N,N,N’,N’-テトラ(4-ビフェニル)ジアミノフェニレン(TBDB)、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-3-フェニルプロパン(TAPPP)、1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノフェニル(TTB)、TPD、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’’’ジアミノ-1,1’,4’,1’’,4’’,1’’’-クオーターフェニル等のような少なくとも二個の三級アミン単位を含む芳香族三級アミン、同様に、たとえば、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゼンアミン(TCTA)等のカルバゾール単位を含む三級アミンである。同様に、好ましいものはUS 2007/0092755 A1にしたがうヘキサアザトリフェニレン化合物である。
【0058】
特に、好ましいものは、以下の置換されてもよい式(94)〜(99)のトリアリールアミン化合物であり、EP 1162193 A1、EP 650955 A1、Synth.Metals 1997, 91(1-3), 209 、DE 19646119 A1、WO 2006/122630 A1、EP 1860097 A1、EP 1834945 A1、JP 08053397 A 、US 6251531 B1およびWO 2009/041635に開示されている。
【化8-1】
【化8-2】
【0059】
ここで他で言及されたHIMに加えて、適切なHIMは、フェニレンジアミン誘導体 (US 3615404)、アリールアミン誘導体(US 3567450)、アミノ置換カルコン誘導体(US 3526501)、スチリルアントラセン誘導体(JP-昭和-54-110837)、ヒドラゾン誘導体(US 3717462)、アシルヒドラゾン、スチルベン誘導体(JP-昭和-61(1986)-210363)、シラザン誘導体(US 4950950)、ポルフィリン化合物(JP 昭和63 (1988) 2956965、US4720432)、芳香族三級アミンおよびスチリルアミン(US 4127412)、ベンジリデン型のトリフェニルアミン、スチリルアミン型のトリフェニルアミンおよびジアミン型のトリフェニルアミンである。アリールアミンデンドリマー(JP平成8 (1996) 193191)を使用することもでき、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体またはブタジエン誘導体も適切である。
【0060】
好ましくは、HIMは、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリンおよびそれらの誘導体から選ばれる。
【0061】
特に、好ましいものは、芳香族三級アミン(US 2008/0102311 A1)、たとえば、N,N’-ジフェニル- N,N’-ジ(3-トリル)ベンジジン(= 4,4’-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)(US 5061569)、N,N’-ビス-(N,N’-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(TPD232)および4,4’,4’’-トリス[3-メチルフェニル)フェニルアミノ]-トリフェニルアミン(MTDATA) (JP-平成4(1992)-308688)またはフタロシアニン誘導体(たとえば、HPc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、ClSiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc)である。
【0062】
特に、好ましいものは、以下の置換されてもよい式(100)(TPD232)、101、102および103のトリアリールアミン化合物であり、さらなる化合物は、US7399537 B2、US2006/0061265 A1、EP1661888 A1およびJP08292586 Aに開示されている。
【0063】
HIMとして適切なさらなる化合物は、EP0891121 A1およびEP1029909 A1.に開示されている。
【化9】
【0064】
HTMおよびHIM化合物の上記言及された例が、イオン性化合物である場合には、それらは、単荷電有機カチオンまたはアニオンM自身として機能してよい。この場合、Mは、機能性有機基から成る。
【0065】
HTMおよびHIM化合物の上記言及された例が、中性化合物である場合には、それらは、単荷電有機カチオンまたはアニオンMの一部である。この場合、HTMおよびHIMは、単荷電有機カチオンまたはアニオンM中に含まれる上記言及した機能性有機基であり、Mの荷電部分に結合し、そこでは、一つの水素原子は上記言及した化合物中には存在せず、化合物は、水素が存在しないこの位置を介してMの荷電部分に結合する。
【0066】
HTMもしくはHIM基を含む適切なカチオンまたはアニオンの例は、以下に挙げられる。さらに適切な例は、上記説明したとおりのHTMおよび/またはHIMと以下に説明されるアニオンとカチオン基との組み合わせによって容易に製造することができる。
【化10-1】
【化10-2】
【0067】
本発明の別の態様では、単荷電有機カチオンまたはアニオンMは、電子注入基もしくは電子輸送基を含む。この場合に単荷電有機カチオンまたはアニオンMは、電子注入材料(EIM)もしくは電子輸送材料(ETM)として機能する。すなわち、電子注入基もしくは電子輸送基は、有機イオン性化合物内で、電子を注入するか輸送する能力を本発明の有機イオン性化合物に与える。ETMは、電子注入材料もしくはカソードから注入された電子を輸送することができる材料もしくは単位であることを特徴とする。EIMは、隣接する層に応じて、ETMとしても機能することができる。
【0068】
原則として、OLED分野で当業者に知られた任意のETMが、式(1)のM中で電子孔輸送基として含まれることができる。ここで他で言及したETMに加えて適切な電子輸送基は、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンズアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンズイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリン、トリアリールボランおよびその誘導体並びにO-、S-もしくはN-含有へテロ環から選ばれる。好ましくは、ETMは、真空エネルギー準位と比べて、−1.9eV未満のエネルギー準位でLUMOを有する。
【0069】
さらに適切な電子輸送基は、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンズアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンズイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリンおよびトリアリールボランから選ばれる。
【0070】
さらに適切なETMは、8-ヒドロキシキノリン(q)(たとえば、Liq、Alq、Gaq、Mgq、Znq、Inq、Zrq)、BAlq、4-アザフェナントレン-5-オル/Be錯体(US 5529853 A、たとえば、式(125))、ブタジエン誘導体(US 4356429)、ヘテロ環光学的光沢剤(US 4539507)、たとえば、1,3,5-トリス(2-N-フェニルベンズイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)(US 5766779、式(126))等のベンズアゾール、1,3,5-トリアジン、ピレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、スピロビフルオレン、デンドリマー、テトラセン、たとえば、ルブレン誘導体、1,10-フェナントロリン誘導体(JP 2003/115387、JP 2004/311184、JP-2001/267080、WO 2002/043449)、シルアシル-シクロペンタジエン誘導体(EP 1480280、EP 1478032、EP 1469533)、ピリジン誘導体(JP 2004/200162)、フェナントロリン、たとえば、BCPおよびBphenまた、ビフェニルもしくは他の芳香族基を介して結合した種々のフェナントロリン(US-2007-0252517 A1)またはアントラセンに結合したフェナントロリン(US 2007-0122656 A1、たとえば、式(127)および(128))、1,3,4-オキサジアゾール、たとえば、式(129)、トリアゾール、たとえば、式(130)、トリアリールボラン、たとえば、Siをもつもの(たとえば、式(25))、ベンズイミダゾール誘導体および他のN含有ヘテロ環化合物(たとえば、US 2007/0273272 A1)、シルアシルシクロペンタジエン誘導体、ボラン誘導体、Gaオキシノイド錯体である。
【0071】
好ましいものは、2,9,10-置換アントラセン(1-あるいは2-ナフチルおよび4-あるいは3-ビフェニルをもつ)もしくは二個のアントラセン単位を含む分子である(US2008/0193796 A1)(式(125)〜(130))。
【化11】
【0072】
同様に好ましいものは、アントラセン-ベンズイミダゾール誘導体であり、たとえば、式(131)〜(133)の化合物および、たとえば、US6878469 B2、US2006/147747 AおよびEP1551206 A1に開示されたものである。
【化12】
【0073】
原則として、OLED分野で当業者に知られた任意のEIMが、式(1)のM中で電子注入基として含まれることができる。ここで他で言及したEIMに加えて、適切なEIMは、8-ヒドロキシキノリンの金属錯体、ヘテロ環有機化合物、フルオレン、フルオレニリデンメタン、ペリレンテトラカルボン酸、アントラキノンジメタン、ジフェノキノン、アントロン、アントラキノンジエチレンジアミン、アイソマーおよびその誘導体から選ばれる少なくとも一つの有機化合物を含み、その誘導体を本発明に使用することができる。
【0074】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体、たとえば、AlqおよびGaqは、本発明の有機イオン性化合物中で有機機能性基用のEIMとして使用することができる。
【0075】
ヘテロ環有機化合物、たとえば、1,10-フェナントロリン誘導体、ベンズイミダゾール、チオピランジオキシド、オキサゾール、トリアゾールまたはイミダゾールが、同様に適している。適切な窒素を含む五員環の例は、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾールおよびUS2008/0102311 A1に開示された化合物である。
【0076】
好ましいEIMは、置換されても非置換でもよい式(134)〜(136)をもつ化合物から選ばれる。
【化13】
【0077】
有機化合物、たとえば、フルオレン、フルオレニリデンメタン、ペリレンテトラカルボン酸、アントラキノンジメタン、ジフェノキノン、アントロンおよびアントラキノンジエチレンジアミンも、たとえば、ETMもしくはEIMとして使用することもできる(式(137)および(138))。
【化14】
【0078】
ETMおよびEIM化合物の上記言及された例が、イオン性化合物である場合には、それらは、単荷電有機カチオンまたはアニオンM自身として機能してよい。この場合、Mは、機能性有機基から成り、機能性有機基自身はMである。
【0079】
ETMおよびEIM化合物の上記言及された例が、中性化合物である場合には、それらは、単荷電有機カチオンまたはアニオンMの一部である。この場合ETMおよびEIM化合物Hは、単荷電有機カチオンまたはアニオンM中に含まれる上記言及した機能性有機基であり、Mの荷電部分に結合し、そこでは、一つの水素原子は上記言及した化合物には存在せず、化合物は、水素が存在しないこの位置を介してMの荷電部分に結合する。
【0080】
以下の荷電化合物が、機能性有機基として電子輸送もしくは電子注入基を含む単荷電有機カチオンまたはアニオンMとして、特に、好ましい。
【0081】
ETMもしくはEIM基を含む適切なカチオンまたはアニオンの例が以下に挙げられ、ここで、BFおよびPFは、他のアニオンに置き代わることができる。さらに適切な例は、上記記載のETMおよび/またはEIM基および以下に記載のアニオンおよびカチオンの組み合わせにより容易に作成することができる。
【化15】
【0082】
好ましい態様では、MとNは、サイズが異なる。分子系のサイズは、標準ソフトウエアパッケージ、たとえば、MOE(Molecular Operating Environment, Chemical Computing Group, Inc.)を使用する内部配位に基づく分子体積を計算することにより決定することができる。好ましくは、Mの体積(サイズ)は、Nのそれよりも大きい。
【0083】
単荷電有機もしくは無機またはカチオンまたはアニオンNは、好ましくは、6〜1000g/モルの範囲、より、好ましくは、6〜800g/モルの範囲、最も好ましくは、6〜600g/モルの範囲の分子量を有するものである。ある態様では、より低分子量の分子は、OLECの層中で移動性イオンとして機能してよいことから、本発明の有機イオン性化合物がOLECもしくは太陽電池で使用されるならば、Nの分子量範囲の上限は、超えられるべきではない。
【0084】
別の態様では、本発明の有機イオン性化合物は、室温で固体であり、好ましくは、前記イオン性材料は、室温で固体であり、30〜40℃間でより軟化する。
【0085】
本発明の有機イオン性化合物Mがカチオンである場合には、Nは、本発明の化合物中の電荷の合計がゼロであるように、アニオンでなければならない。
【0086】
上記したとおり、Nは、有機もしくは無機イオンであってよい。両者の場合に、イオンNは、カチオンもしくはアニオンであってよい。Nがアニオンであるならば、好ましくは、Nは、[HSO、[NO、[BF、[(R)BF、[(RBF、[(RBF]、[(RB]、[B(CN)、[HPO、[(アルキル-O)PO、[(アルキル)PO、[(RPO、[RSO、[HOSO(CFSOO]、[アルキル-SO、[HOSO(CHSOO]、[アルキル-OSO、[アルキル-C(O)O]、[HO(O)C(CHC(O)O]、[RC(O)O]、[HO(O)C(CFC(O)O]、[(RSON]、[(FSON]、[((RP(O))N]、[(RSOC]、[(FSOC]、PF、[PF(C、[PF(CF、[B(COOCOO)、[(CFSON]、[(CSON]、[(CFSO)(CSO)N]、[(CN)N]、[CFSOC]および[(CN)C]を含むイオン性基から選ばれてよく、
ここで、kは、1〜8の整数であり、Rはフッ素化アリールもしくはアルキルアリール基または式(C2O−X+1SH))のフッ素化アルキルであり、ここで、oは1〜12の整数であり、xは0〜7の整数である。
【0087】
上記言及したアルキル基は、1〜20個のC原子、好ましくは、1〜14個のC原子、特に、好ましくは、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは高度分岐アルキル基から選ぶことができる。Rは、好ましくは、CF、C、CまたはCを意味する。
【0088】
好ましいアニオン性基は、[(アルキル)PO、[(RB]、[アルキルOSO、[アルキル-SO、[RC(O)O]、[(RBFおよび[(アルキル-O)POから選ばれる。
【0089】
さらに好ましいアニオン性基は、ヘテロ環アニオン性基から選ぶことができ、好ましくは、式(148)〜(153)から選ぶことができる。
【化16】
【0090】
ここで、Xは、CRまたはNであり、ここで、Rは、出現毎に、同一か異なり、H、CN、1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル残基、2〜20個のC原子と一以上の非共役二重結合を有する直鎖もしくは分岐アルケニル基、2〜20個のC原子と一以上の非共役三重結合を有する直鎖もしくは分岐アルキニル残基および1〜6個のC原子を有するアルキル残基で置換されることができる3〜7個のC原子を有する部分飽和もしくは完全不飽和のシクロアルキル残基、飽和および部分飽和もしくは完全不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリールC1−アルキルもしくはアルキルC1−アルキル基から選ばれ、異なるRは、一緒に環を形成することができ、一以上の置換基Rは、ハロゲン、特に、-Fおよび/または-Clおよび-OR’、-CN、-C(O)OH、-C(O)NR’、-SONR’、-C(O)Y、-SOOH、-SOY、-NOにより部分的にもしくは完全に置換されてよく、ここで、置換基Rは、同時にハロゲンにより置換されておらず、ヘテロ原子に隣接しないか結合しない置換基Rの一もしくは二個の炭素原子は、-O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-NR’-、-C(O)NR’-、-SONR’-および-POR-’から選ばれる基により置換されてよく、ここで、R’は、H、非置換、Fにより部分もしくは完全に置換された1〜6個のC原子を有するアルキル基、3〜7個のC原子を有するシクロアルキル基、非置換もしくは置換フェニルであり、Yはハロゲンである。
【0091】
さらに好ましいアニオン性基は、いわゆる弱配位アニオン、たとえば、[Al(ORであり、ここで、OR=OC(R)(CFであり、Rは、式(148)〜(153)で定義されるRと同じであり、好ましくは、H、Me、CFおよびCから選ばれる。このようなアニオンの合成は、Chem. Eur. J.2001, 7, 503.とCoord. Chem. Rev.2006, 250, 2721-2744を参照することができる。
【0092】
適切なアニオン性基の例は、以下に挙げられる。
【化17-1】
【化17-2】
【0093】
Nがカチオンである場合、好ましくは、アルカリもしくはアルカリ土類金属イオン、たとえば、Li、Na、K、Csより成る群から選ばれる。
【0094】
別の好ましい態様では、Nは、アンモニウム-、ホスホニウム-、チオウロニウム-、チオキソニウム-、グアニジニウム-カチオン、複素環カチオンおよびその誘導体から選ばれるカチオン基を含み、アンモニウム-、ホスホニウム-、チオウロニウム-、グアニジニウム-カチオンの好ましい例およびそれらの誘導体は、式(172)〜(176)で示され、複素環カチオンの好ましい例は、式(177)〜(204)で示される。
【化18-1】
【化18-2】
【0095】
式中
基R〜Rは、互いに独立して1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル残基、一以上の非共役二重結合と2〜20個のC原子を夫々有する直鎖もしくは分岐アルケニル残基、一以上の非共役三重結合と2〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキニル残基および1〜6個のC原子を有するアルキル基でさらに置換することができる3〜7個のC原子を有する飽和、部分飽和もしくは完全飽和のシクロアルキル基、飽和、部分飽和もしくは完全飽和のヘテロアリール基、ヘテロアリールC1−アルキル基もしくはアルキルC1−アルキル基から選ばれることができ、一以上の置換基Rは、ハロゲン、特に、-Fおよび/または-Clにより部分的にもしくは完全におよび-OR’、-CN、-C(O)OH、-C(O)NR’、-SONR’、-SOOH、-SOX、-NOにより部分的に置換されてよく、ここで、R〜Rの一もしくは二個の隣接しない非α炭素原子は、-O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-NR’-、-C(O)NR’-、-SONR’-および-POR-’より成る基から選ばれる単位により置換されてよく、ここで、R’=H、非置換、Fにより部分もしくは完全に置換されたC1〜C6アルキル基、C3〜C7シクロアルキル基、非置換もしくは置換フェニルであり、X=ハロゲンである。
【0096】
式(172)中で、R〜Rは、Hであることができるが、ただし基R〜Rの少なくとも一つは、Hではない。式(173)中で、R〜Rは、HおよびNR’であることができ、ここで、R’は上記定義のとおりである。式(174)中で、R〜Rは、Hであることができる。式(175)中で、R〜Rは、H、CNおよびNR’であることができ、ここで、R’は上記定義のとおりである。
【化19-1】
【化19-2】
【0097】
Nに対するさらに好ましいカチオンは、式(205)〜(207)の化合物であり、
【化20】
【0098】
式中、置換基R’〜R’は、互いに独立して、H、CN、1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル残基、一以上の非共役二重結合と2〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルケニル基、一以上の非共役三重結合と2〜20個のC原子を夫々有する直鎖もしくは分岐アルキニル残基および1〜6個のC原子を有するアルキル基でさらに置換されることができる3〜7個のC原子を有する部分飽和もしくは完全非飽和のシクロアルキル基、飽和、部分飽和もしくは完全非飽和のヘテロアリール基、ヘテロアリールC1−アルキル基もしくはアルキルC1−アルキル基から選ばれ、置換基R’、R’、R’および/またはR’は、一緒に環を形成することができ、一以上の置換基R’〜R’は、ハロゲン、特に、-Fおよび/または-Clおよび-OR’、-CN、-C(O)OH、-C(O)NR’、-SONR’、-C(O)X、-SOOH、-SOX、-NOにより部分的にもしくは完全に置換されることができ、ここで、置換基R’およびR’は、ハロゲンで同時に置換されず、ヘテロ原子に隣接しないか結合しない置換基R’およびR’の一もしくは二個の炭素原子は、-O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-NR’-、-C(O)NR’-、-SONR’-および-POR-’より成る基から選ばれる単位により置換されることができ、ここで、R’=H、非置換、Fにより部分もしくは完全に置換された1〜6個のC原子をもつアルキル基、3〜7個のC原子をもつシクロアルキル基、非置換もしくは置換フェニルであり、X=ハロゲンである。
【0099】
好ましいR’は、-OR’、NR’、-C(O)OH、-C(O)NR’、-SONR’、-SOOH、-SOXおよび-NOから選ばれる。
【0100】
Nに対するさらに好ましいイオンは、たとえば、US2007/0262694 A1に開示されている。
【0101】
有機イオンNに対するさらに、特に、好ましいカチオンは、式(208)により表される構造を含む。これらは、N,N,N-トリメチルブチルアンモニウムイオン、N-エチル-N,N-ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N-エチル-N,N-ジメチルブチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチル-N-プロピルブチルアンモニウムイオン、N-(2-メトキシエチル) -N,N-ジメチルエチルアンモニウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3,4-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-2,3,4-トリメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-2,3,5-トリメチルイミダゾリウムイオン、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムイオン、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムイオン、N-sec-ブチル-N-メチルピロリジニウムイオン、N-(2-メトキシエチル)-N-メチルピロリジニウムイオン、N-(2-エトキシエチル)-N-メチルピロリジニウムイオン、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムイオン、N-ブチル-N-メチルピペリジニウムイオン、N-sec-ブチル-N-メチルピペリジニウムイオン、N-(2-メトキシエチル)-N-メチルピペリジニウムイオン、N-(2-エトキシエチル)-N-メチルピペリジニウムイオンを含む。
【化21】
【0102】
非常に、特に、好ましいのは、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムである。
【0103】
本発明の有機イオン性化合物のカチオンNとしてさらに好ましいのは、一般式(209)〜(214)の一つを含む化合物から選ばれる。
【化22】
【0104】
式中、R〜Rは、式(172)、(173)および(176)のとおり定義され、R’およびR’は、式(177)、(192)および(187)のとおり定義される。
【0105】
本発明に適するカチオン基のいくつかの例は、以下に挙げられる。
【化23-1】
【化23-2】
【0106】
本発明の別の目的は、本発明の有機イオン性化合物の合成方法である。
【0107】
以下に、限定されるものではない、いくつかの例が、いくつかの本発明の有機イオン性化合物の一般的合成経路に対して示される。スキーム1〜6では、Liがイオン性化合物中のカウンターイオンとして採用され、スキーム7〜8では、BFとPFがカウンターイオンとして採用される。それらは単なる例である。当業者は、LiもしくはBFもしくはPFに代えて、入手可能で適用可能な任意の他のカチオンまたはアニオンを使用してもよいことにたやすく気付かねばならない。スキーム1〜8中のArは、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、式(2)中のArと同じ意味を有し、上記のとおりのHIM、HTM、ホスト、ETMおよびEIMの群から好ましくは、選ぶことができ、Rは、式(172)〜(176)中のRと同じ意味を有する。
【化24-1】
【化24-2】
【化24-3】
【0108】
本発明のさらに別の目的は、本発明のイオン性有機化合物とマトリックス化合物、蛍光もしくは燐光エミッター、染料、正孔注入材料(HIM)、正孔輸送材料(HTM)、電子注入材料(EIM)および電子輸送材料(ETM)を含む群から選ばれるさらなる有機機能性化合物とを含む組成物である。
【0109】
前記さらなる有機機能性材料は、小分子、ポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマー、ブレンドまたはそれらの組成物の群から選ばれてよい。
【0110】
本発明の組成物中で前記さらなる有機機能性化合物のために適切なマトリックス化合物、HIM、HTM、EIMおよびETMは、荷電化合物(の一部)ではないという違いだけで、上記HIM、HTM、EIMおよびETMを含む化合物から選ぶことができる。
【0111】
用語蛍光もしくは燐光エミッター化合物は、他の材料からの任意の種類のエネルギー移動による励起子エネルギーを受け、または電気的、光学的の何れかで励起子を生成することにより、放射減衰を起こして発光する材料を指す。用語蛍光エミッターは、励起一重項状態からその基底状態へと放射遷移を起こす材料に関する。ここで使用される用語燐光エミッターは、遷移金属を含むルミネッセンス材料または化合物に関する。これは、典型的には、スピン禁止遷移、すなわち、励起三重項もしくは四重項状態からの遷移により引き起こされて発光する材料を含む。
【0112】
好ましい蛍光エミッター化合物は、ポリ芳香族化合物、たとえば、9,10-ジ(2-ナフチルアントラセン)等および他のアントラセン誘導体、テトラセン、キサンテン、ペリレン等の誘導体、たとえば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン等、フェニレン、たとえば、4,4’-(ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1’-ビフェニル、フルオレン、アリールピレン(US2006/0222886)、アリーレンビニレン(US 5121029、US 5130603)、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体、たとえば、N,N’-ジメチルキナクリドン(DMQA)、ジシアノメチレンピラン、たとえば、4-(ジシアノエチレン)-6-(4-ジメチルアミノスチリル-2-メチル)-4H-ピラン(DCM)、チオピラン、ピリリウムおよびチアピリリウム塩、ペリフランセン、インデノペリレン、ビス(アジニル)イミン-ボロン化合物(US 2007/0092753 A1)、ビス(アジニル)メセン化合物およびカルボスチリル化合物から選ばれる。
【0113】
さらに好ましい蛍光エミッター化合物は、C.H. Chen et al.: “有機エレクトロルミネッセンス材料の最近の開発” Macromol. Symp. 125, (1997) 1-48 および“分子状有機エレクトロルミネッセンス材料および素子の最近の進展” Mat. Sci. and Eng. R, 39 (2002), 143-222に記載されている。
【0114】
好ましい蛍光エミッター化合物は、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルエオテルおよびアリールアミンのクラスから選ばれる。
【0115】
モノスチリルアミンは、1個の置換あるいは非置換スチリル基と、少なくとも1個の、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。ジスチリルアミンは、2個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。トリスチリルアミンは、3個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。テトラスチリルアミンは、4個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1つの、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。スチリル基は、特に好ましくは、スチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するエーテルはアミンと同様に定義される。本発明の目的のためにアリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む。これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、好ましくは、縮合環構造、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。それらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンもしくは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、一個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に直接、好ましくは、9-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族アントラセンジアミンは、二個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に直接、好ましくは、9.10-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミンおよびクリセンジアミンは、同様に定義され、ここで、ピレン上のジアリールアミノ基は、好ましくは、1位もしくは1.6-位で結合する。
【0116】
さらに好ましい蛍光エミッター化合物は、たとえば、WO 2006/122630にしたがうインデノフルオレンアミンおよびインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 2008/006449にしたがうベンゾインデノフルオレンアミンおよびベンゾインデノフルオレンジアミン並びに、たとえば、WO 2007/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンおよびジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。
【0117】
スチリルアミンのクラスからの蛍光エミッター化合物の例は、置換あるいは非置換トリスチルベンアミンまたは、WO 2006/000388、WO 2006/058737、WO 2006/000389、WO 2007/065549およびWO 2007/115610に記載されるドーパントである。ジスチリルベンゼンおよびジスチリルビフェニル誘導体は、US 5121029に記載されている。さらなるスチリルアミンは、US 2007/0122656 A1に見出される。特に、好ましいスチリルアミンドーパントとトリアリールアミンドーパントは、式(231)〜(236)の化合物であり、US7250532 B2、DE102005058557 A1、CN1583691 A、JP08053397 A、US6251531 B1およびUS2006/210830 Aに開示されるものである。
【化25-1】
【化25-2】
【0118】
さらに好ましい蛍光エミッター化合物は、EP1957606 A1およびUS2008/0113101 A1に開示されたとおりのトリアリールアミンの群から選ばれる。
【0119】
さらに好ましい蛍光エミッター化合物は、アントラセン、テトラセン、フルオレン、ペリフランセン、インデノペリレン、フェナントレン、ペリレン(US 2007/0252517A1)、ピレン、クリセン、デカクリセン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、ルブレン、クマリン(US 4769292、US 6020078、US 2007/0252517 A1)、ピラン、オキサゾン、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンズイミダゾール、ピラジン、桂皮酸エステル、ジケトピロロピロール、アクリドンおよびキナクリドン(US 2007/0252517 A1)の誘導体から選択される。
【0120】
アントラセン化合物のうち、特に、好ましいものは、たとえば、9,10-ジフェニルアントラセンおよび9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン等の9,10-置換アントラセンである。1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)ベンゼンも好ましい蛍光エミッター化合物である。
【0121】
燐光エミッター化合物の例は、出願WO 00/7065、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614およびWO 2005/033244により明らかにされる。一般的に、エレクトロルミネッセンスで使用される燐光錯体のための先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス分野で当業者により知られるあらゆる燐光化合物が適切であり、当業者は進歩性を必要とすることなく、さらなる燐光錯体を使用することができるだろう。
【0122】
好ましくは、燐光エミッター化合物は、好ましくは、式M(L)をもつ金属錯体であり、ここで、Mは金属原子であり、Lは、出現毎に、互いに独立して、一または二個以上の位置を介して金属Mと結合または配位する有機リガンドであり、zは、≧1、好ましくは、1、2、3、4、5もしくは6の整数であり、ここで、随意に、これらの基は一個以上の、好ましくは、一、二もしくは三個の位置で、好ましくは、リガンドLを介してポリマーに結合する。
【0123】
Mは、特に、遷移金属、好ましくは、VIII族の遷移金属またはランタノイドまたはアクチニドから選ばれ、特に、好ましくは、Rh、Os、Ir、Pt、Pd、Au、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Re、Cu、Zn、W、Mo、Pd、AgまたはRuから選ばれ、および非常に、特に、好ましくは、Os、Ir、Ru、Rh、Re、PdまたはPtから選ばれる。Mは、Znであってもよい。
【0124】
金属錯体に関する量子力学により、高スピン多重度をもつ励起状態から、たとえば、励起三重項状態から基底状態への遷移は、禁止される。しかしながら、重い原子、たとえば、イリジウム、オスミウム、白金およびユウロピウムの存在は、強いスピン-軌道カップリングを生じ、すなわち、励起一重項および三重項が混合され、三重項が、いくつかの一重項的性質を得、もしも一重項-三重項混合が非放射現象よりも、より迅速な放射減衰速度をもたらすならば、その時は、ルミネセンスは、効率的であり得る。この種の発光は、Baldo et al.; Nature 395, 151-154 (1998)により最初に報告されたとおり、金属錯体を使用して達成することができる。
【0125】
燐光エミッター化合物として使用される金属錯体の好ましいリガンドは、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体もしくは2-フェニルキノリン誘導体である。これらすべての化合物は、たとえば、青色用のフッ素またはトリフルオロメチル置換基により置換されてよい。補助的リガンドは、好ましくは、アセチルアセトナートもしくはピコリン酸である。
【0126】
特に、US 2007/0087219A1に開示された式(237)の四座リガンドを有するPtもしくはPd錯体(R〜R14およびZ〜Zは、参照で定義されるとおりである。)、拡張環構造を有するPt-ポルフィリン錯体(US 2009/0061681 A1)およびIr錯体が適しており、たとえば、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン-Pt(II)、テトラフェニル-Pt(II)-テトラベンゾポルフィリン(US 2009/0061681 A1)、シス-ビス(2-フェニルピリジナート-N,C2’)Pt(II)、シス-ビス(2-(2’-チエニル)ピリジナート-N,C3)Pt(II)、シス-ビス(2-(2’-チエニル)キノリナート-N,C5)Pt(II)、(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナート-N,C2’)Pt(II)アセチルアセトネートもしくはトリス(2-フェニルピリジナート-N,C2)Ir(III)(=Ir(ppy)3、緑色)、ビス(2-フェニルピリジナート-N,C2)Ir(III)アセチルアセトネート(Ir(ppy)2アセチルアセトネート、緑色、US 2001/0053462 A1, Baldo, Thompson et al. Nature 403, (2000), 750-753)、ビス(1-フェニルイソキノリナート-N,C2)(2-フェニルピリジナート-N,C2)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナート-N,C2)(1-フェニルイソキノリナート-N,C2)イリジウム(III)、ビス(2-(2’-ベンゾチエニル) ピリジナート-N,C3)イリジウム(III)アセチルアセトネート、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナート-N,C2)イリジウム(III)ピコリナート(FIrpic、青色)、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナート-N,C2)Ir(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボレート、トリス(2-(ビフェニル-3-イル)-4-tert-ブチルピリジン)イリジウム(III)、(ppz)Ir(5phdpym)(US 2009/0061681 A1)、(45ooppz)Ir(5phdpym)(US 2009/0061681 A1)、2-フェニルピリジン-Ir誘導体、たとえば、イリジウム(III)ビス(2-フェニルキノリル-N,C2)アセチルアセトネート(PQIr)、トリス(2-フェニルイソキノリナート-N,C)Ir(III)(赤色)、ビス(2-(2’-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナート-N,C3)Irアセチルアセトネー)([Btp2Ir(acac)]、赤色、Adachi et al. Appl. Phys. Lett. 78 (2001), 1622-1624)である。
【化26】
【0127】
また、適切なものは、たとえば、Tb3+およびEu3+等の三価のランタノイド錯体(J. Kido et al. Appl. Phys. Lett. 65 (1994), 2124, Kido et al. Chem. Lett. 657, 1990, US 2007/0252517 A1)もしくはマレオニトリルジチオレートを有するPt(II)、Ir(I)、Rh(I)の燐光錯体(Johnson et al., JACS 105, 1983, 1795)、Re(I)トリカルボニルジイミン錯体(Wrighton, JACS 96, 1974, 998, inter alia)、シアノリガンドおよびビピリジルもしくはフェナントロリンリガンドを有するOs(II)錯体(Ma et al., Synth. Metals 94, 1998, 245)またはホストのないAlqである。
【0128】
三座リガンドを有するさらなる燐光エミッター化合物は、US 6824895およびUS7029766に記載されている。赤色発光燐光錯体は、US 6835469およびUS 6830828で言及される。
【0129】
特に、好ましい燐光エミッター化合物は、式(238)をもつ化合物と、たとえば、US2001/0053462 A1に開示されたさらなる化合物である。
【0130】
特に、好ましい燐光エミッター化合物は、式(239)をもつ化合物と、たとえば、WO2007/095118 A1に開示されたさらなる化合物である。
【化27】
【0131】
金属錯体のさらなる誘導体は、US7378162 B2、US6835469 B2およびJP2003/253145 Aに記載されている。
【0132】
さらに好ましいのは、カルベン三重項エミッターから選ばれる燐光エミッター化合物であり、特に、金属としてイリジウムを含むカルベン錯体である。好ましい錯体は、WO2005/091373、WO2005/113704およびP. Erk et al., SID 2006,11 ,2, 131に開示されたとおりのN-ヘテロ環カルベン(NHC)イリジウム錯体、たとえば、fac−Ir(dpbic)、Ir(pmbic)、Ir(pmic)、Ir(dpnic)、Ir(cn−pmic)である。
【0133】
他にここで言及される金属錯体に加えて、本発明による適切な金属錯体は、遷移金属、希土類元素、ランタノイドおよびアクチニドから選ばれる。好ましいくは、金属は、Ir、Ru、Os、Eu、Au、Pt、Cu、Zn、Mo、W、Rh、PdまたはAgから選ばれる。
【0134】
ある態様では、式(1)の化合物は、光起電素子での使用のための染料と混合することができる。適切な染料は、有機太陽電池および/または染料増感性太陽電池分野の当業者に知られた任意の染料から選ぶことができる。
【0135】
適切な染料は、遷移金属、好ましくは、ルテニウム、オスミウムおよび銅のポリピリジル錯体から選ばれる。好ましい態様では、金属錯体染料は、一般構造ML(X)を有し、ここで、Lは、好ましくは、2,2-ビピリジル-4,4’-ジカルボン酸から選ばれ、Mは、遷移金属、好ましくは、Ru、Os、Fe、VおよびCuから選ばれ、Xは、ハロゲン化物、シアニド、チオシアネート、アセチルアセトナート、チオカルバメートもしくは水置換基から選ばれる。このような金属錯体染料は、たとえば、「The Journal of Physical Chemistry C 2009, 113, 2966-2973」、US2009000658、WO2009/107100、WO2009/098643、US6245988、WO2010/055471、JP2010/084003、EP1622178、WO98/50393、WO95/29924、WO94/04497、WO92/14741、WO91/16719およびそこの参照に記載されている。
【0136】
さらに適切な染料は、縮合環構造を含む有機化合物、たとえば、アントラセン、ペンタセンおよびテトラセン誘導体、AZO、フタロシアニン、たとえば、金属フリーフタロシアニン、ドナーもしくはアクセプタードープ金属フリーフタロシアニンおよび金属フタロシアニン、ポルフィリン、スクアライン、ペリレン-ジイミド、ペリレン顔料、たとえば、Paul M.Borsenberger; David S.Weiss Organic Photorecptors for Xerography; Marcel Dekker, Inc., 1998, Chapter 6およびK. Y. Law, Chem. Rev. Vol93, 449-486 (1993)により電荷生成材料(GCM)として要約されるものおよび一以上の染料を含むポリマー材料から選ばれる。
【0137】
非常に、好ましい態様では、染料は、たとえば、Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3364-336に開示されたとおりの小分子型もしくはポリマー型のペリレン誘導体である。
【0138】
本発明の組成物は、本発明の有機イオン性化合物のイオンMの機能性有機基の機能が、機能性有機化合物の機能とは異なるものである。しかしながら、両者が同一に機能を有することも考えられる。
【0139】
本発明の組成物は、マトリックス化合物もしくはマトリックス基と蛍光もしくは燐光エミッター化合物を含むことがさらに好ましい。以前に言及したマトリックス基は、本発明の有機イオン性化合物のイオンM(の部分)を意味し、ここで、マトリックス化合物は別の化合物である。蛍光エミッターの濃度は、1〜20重量%、好ましくは、2〜15重量%、非常に、好ましくは、3〜10重量%、特に、好ましくは、3〜8重量%であることができる。そして、燐光エミッターの濃度は、1〜30重量%、好ましくは、2〜25重量%、非常に、好ましくは、5〜20重量%、特に、好ましくは、10〜20重量%であることができる。
【0140】
非常に、好ましい態様では、組成物は、式(1)のイオン性化合物とさらなるコホスト材料とを含み、イオン性化合物と前記コホスト材料の重量比は、1:5〜5:1、好ましくは、1:4〜4:1、非常に、好ましくは、1:3〜3:1、特に、好ましくは、1:2〜2:1である。
【0141】
さらに好ましい態様では、組成物は、式(1)のイオン性化合物とさらなるEIM/もしくはETMを含み、ここで、イオン性化合物は、1〜99重量%、好ましくは、10〜90重量%、非常に、好ましくは、20〜80重量%、特に、好ましくは、30〜70重量%を有する。
【0142】
なお、さらなる好ましい態様では、組成物は、式(1)のイオン性化合物とさらなるHIM/もしくはHTMを含み、ここで、イオン性化合物は、1〜99重量%、好ましくは、10〜90重量%、非常に、好ましくは、20〜80から重量%、特に、好ましくは、30〜70重量%を有する。
【0143】
光起電用途に対しては、組成物は、式(1)のイオン性化合物とさらなる上記記載の染料を含むことが好ましく、組成物中の染料の濃度は、1〜50重量%、好ましくは、5〜40重量%、非常に、好ましくは、10〜30重量%および、特に、好ましくは、15〜30重量%であることができる。
【0144】
本発明の組成物は、さらにイオン伝導性化合物を含んでよい。適切なイオン伝導性化合物は、好ましくは、ポリマー材料、たとえば、過フッ素化スルホン酸系調合物、ポリベンズイミダゾ−ル、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ナフタレンポリアミドおよびポリエチレンオキシド(PEO)系調合物から選ばれる。さらに適切なポリマーは、燃料電池用陽イオン交換膜用ポリマーから選ぶことができる。このようなポリマーは、たとえば、Hickner et al., “Alternative Polymer Systems for Proton Exchange Membranes (PEMs)” in Chemical Reviews, 2004, 104, 4587-4612による論評に開示されている。本発明のための非常に、好ましいイオン伝導体は、ポリエチレンオキシド(PEO)である。組成物中のイオン伝導体の濃度は、1〜40重量%、好ましくは、2〜30重量%、非常に、好ましくは、5〜25重量%および、特に、好ましくは、8〜20重量%であることができる。
【0145】
本発明の別の態様は、溶媒と本発明の組成物もしくは有機イオン性化合物とを含む調合物または溶液に関する。
【0146】
適切で好ましい有機溶媒の例は、限定するものではないが、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、アニソール、モルホリン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1,4-ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラリン、デカリン、インダンおよび/またはそれらの組成物である。
【0147】
本発明の調合物または溶液は、全溶液の含量を基礎として、好ましくは、0.1〜10重量%、より好ましくは、0.5〜5重量%の本発明の組成物もしくは有機イオン性化合物を含む。溶液は、WO2005/055248 A1に記載されるとおり、溶液のレオロジー特性を調整するために、一以上のバインダーをも随意に含んでもよい。
【0148】
適切な混合と熟成後、本発明の調合物または溶液は、以下のカテゴリー、すなわち、完全溶液、境界溶液もしくは難溶性溶液の一つに評価される。輪郭線は、溶解性と不溶性を分かつ溶解度パラメーター水素結合限界を概観してひかれる。溶解領域に入る「完全」溶媒は、たとえば、「Crowley, J. D., Teague, G. S. Jr. and Lowe, J. W. Jr., Journal of Paint Technology, 38, No. 496, 296 (1966)」で公開されるような文献値から選ぶことができる。溶媒ブレンドは、「Solvents, W.H. Ellis, Federation of Societies for Coatings Technology, pp. 9 to 10, 1986」に記載されるとおりに使用されてよく、同定することができる。このような手順は、ブレンド中に少なくとも一つの真溶媒を有することが望ましいが、組成物を溶解するであろう「非」溶媒のブレンドを生じてよい。
【0149】
本発明の別の好ましい調合物の形態は、エマルジョンであり、非常に、好ましくは、ミニエマルジョンであり、特に、異相システムとして調合され、第1相の安定なナノ液滴が、第2の連続相中に分散している。本発明は、好ましくは、組成物の異なる成分が、同一相中もしくは異なる層中の何れかに存在するミニエマルジョンに関する。
【0150】
本発明の調合物の好ましい形態は、ミニエマルジョンである。エマルジョンの力学的安定性を増加するために、界面活性剤を添加することもできる。安定なミニエマルジョンを製造するための二相系のための溶媒、界面活性剤および加工法の選択は、当分野の当業者に周知であり、種々の文献、たとえば、Landfester in Annu. Rev, Mater. Res. (06), 36, p. 231.に参照される。
【0151】
電子素子または光電子素子での薄層としての使用のために、本発明の組成物または溶液/調合物は、任意の適切な方法により堆積され得る。発光素子等の素子の液体被覆が、真空堆積技術よりも、より望ましい。溶液堆積法が、特別に好ましい。好ましい堆積技術は、限定するものではないが、浸漬被覆、スピンコーティング、インクジェット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、ドクターブレード被覆、ロール印刷、逆ロール印刷、オフセット平板印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、噴霧被覆、ブラシ被覆あるいはパッド印刷およびスロットダイ被覆を含む。高解像度表示装置を調製できることから、インクジェット印刷が、特に、好ましい。
【0152】
本発明の選択された溶液は、インクジェット印刷もしくは微小計量分配によって、予備成形された素子基板に適用することができる。好ましくは、限定するものではないが、Aprion、日立工機、InkJet Technology、On Target Technology、Picojet、Spectra、Trident、Xaar等の工業的圧電印刷へッドの使用が、有機半導体層を基板に適用するために好ましい。追加的に、ブラザー、エプソン、コニカ、セイコーインスツルメンツ、東芝テックにより製造されるもののような半工業的印刷ヘッドまたは、たとえば、MicrodropおよびMicrofabにより製造されるもののような単一ノズル微小計量分配器を使用してもよい。
【0153】
インクジェット印刷もしくは微小計量分配により適用するために、本発明の組成物は、まず適当な溶媒中に溶解されねばならない。溶媒は、上記要請を満たさなければならず、選択された印刷ヘッドに如何なる有害な作用も有してはならない。追加的に、溶媒は、印刷へッド内側で溶媒の乾燥により引き起こされる操作上の問題を回避するために、100℃超、好ましくは、140℃超、そして、より好ましくは、150℃超の沸点を有さねばならない。上記溶媒に加えて、適切な溶媒は、置換および非置換シクロヘキサノン、置換および非置換シクロヘキサノン誘導体、置換および非置換キシレン誘導体、ジ-C1−2-アルキルホルムアミド、置換および非置換アニソールならびに他のフェノールエ−テル誘導体、置換ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリドンのような置換ヘテロ環、置換および非置換N,N-ジ-C1−2-アルキルアニリンおよび他のフッ素化あるいは塩素化芳香族を含む。
【0154】
インクジェト印刷により本発明の組成物を堆積するための好ましい溶媒は、1以上の置換基により置換されたベンゼン環を有するベンゼン誘導体を含み、1以上の置換基の炭素原子の合計数が少なくとも3個である。たとえば、ベンゼン誘導体は、1個のプロピル基もしくは3個のメチル基で置換されてもよいが、各場合に、炭素原子の合計数は、少なくとも3個である。このような溶媒は、ポリマーを有する溶媒を含むインクジェット流体の形成を可能とし、噴霧中のノズルの閉塞と成分の分離を減少しまたは防止する。溶媒は、次の例のリストから選択することができる:ドデシルベンゼン、1-メチル-4-tert-ブチルベンゼン、テルピネリモネン、イソデュレン、テルピノレン、シメン、ジエチルベンゼン。溶媒は、2以上の溶媒の組み合わせである溶媒混合物であってもよく、各溶媒は、好ましくは、100℃超、より好ましくは、140℃超の沸点を有する。このような溶媒は、堆積された層の膜の形成を促進し、層欠陥を減少する。
【0155】
インクジェット流体(すなわち、溶媒、バインダーおよび組成物の混合物である)は、好ましくは、20℃で1〜100mPa・sの、特に、好ましくは、1〜50mPa・sの、非常に、特に、好ましくは、1〜30mPa・sの粘度を有する。
【0156】
本発明による組成物または溶液/調合物は、たとえば、界面活性剤化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水剤、接着剤、流動性改善剤、消泡剤、脱泡剤、反応性あるいは非反応性であり得る希釈剤、補助剤、着色剤、染料あるいは顔料、増感剤、安定剤もしくは抑制剤のような1以上の更なる成分を追加的に含むことができる。
【0157】
本発明の別の態様は、本発明のイオン性有機化合物もしくは組成物の電子素子での使用である。
【0158】
したがって、本発明は、さらに、本発明のイオン性有機化合物もしくは組成物を含む電子素子に関する。
【0159】
本発明による電子素子は、好ましくは、発光、光変換、集光もしくは光センサー素子もしくは他の電子素子である。
【0160】
本発明の好ましい例は、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、有機発光トランジスター(OLET)、有機発光電子化学電池(OLEC)、有機発光電子化学トランジスター(OLEET)(Sariciftci et al., in Appl. Phys. Lett. 97, 033302 (2010)により報告されたとおり。)、有機電界効果トランジスター(OFET)、薄膜トランジスター(TFT)、有機太陽電池(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-laser)、有機集積回路(O-IC)、無線周波数同定素子(RFID)、光検査素子、センサー、論理回路、メモリー素子、コンデンサー、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、伝導性基板もしくはパターン、光伝導体、電子写真素子、有機太陽コンセントレータ、有機スピントロニック素子および有機プラズモン発光素子(OPED)である。特に、好ましい本発明の素子は、有機発光電子化学電池、特別に、OLECまたは有機太陽電池(O-SC)である。
【0161】
本発明の電子素子、すなわち、OLECは、二個の電極と少なくとも一つの本発明の有機イオン性有機化合物もしくは組成物を含む有機活性層とを含む。
【0162】
素子は、一般的に言って、これらの用途に必要とされる任意の形態に個々に適合されることができる。
【0163】
本発明の電子素子中に含まれる層の典型的配列は、たとえば、以下である。
【0164】
−随意に、第1の基板、
−第1の電極層(アノード)
−随意に、正孔注入層(HIL)、
−随意に、正孔輸送層(HTL)および/または電子障壁層(EBL)、
−電気的もしくは光学的励起により励起子を生じる活性層、
−随意に、電子輸送層(ETL)および/または正孔障壁層(HBL)、
−随意に、電子注入層(EIL)、
−第2の電極層(カソード)
−随意に、第2の基板。
【0165】
電子素子は、少なくとも一層中に、本発明の化合物もしくは組成物を含む。所与の層構造の配列が例示される。他の配列が可能である。上記言及した素子中の活性層に応じて、異なる光電子素子を得ることができる。第一の好ましい態様では、活性層は、アノードとカソード間に電圧を印加することにより、電子的励起状態の励起子を生成し、さらに、励起子の放射減衰により発光する。一般的に、これは、発光素子、たとえば、OLED、PLEDもしくはOLECと呼ばれる。別の好ましい態様では、活性層は、光を吸収することにより励起子を生成し、さらに、励起子の解離により自由電荷キャリアを生成する。一般的に、これは、光起電電池または太陽電池と呼ばれる。
【0166】
ある態様では、前記電子素子は、式(1)のイオン性化合物と、好ましくは、EIMおよび/またはETMから選ばれるさらなる非イオン性有機化合物を含むEILおよび/またはETLを含み、ここで、イオン性化合物は、1〜99重量%、好ましくは、10〜90重量%、非常に、好ましくは、20〜80重量%、および、特に、好ましくは、30〜70重量%の濃度を有する。
【0167】
別のある態様では、前記電子素子は、式(1)のイオン性化合物と好ましくは、HIMおよび/またはHTMから選ばれるさらなる非イオン性有機化合物を含むHILおよび/またはHTLを含み、ここで、イオン性化合物は、1〜99重量%、好ましくは、10〜90重量%、非常に、好ましくは、20〜80から重量%、および、特に、好ましくは、30〜70重量%の濃度を有する。
【0168】
好ましい態様では、前記電子素子は、1)少なくとも一つの式(1)の化合物を含むEIL(Mは、電子注入基を含む);および/または2)少なくとも一つの式(1)の化合物を含むETL(Mは、電子輸送基を含む)および/または3)少なくとも一つの式(1)の化合物を含むHTL(Mは、正孔輸送基を含む)および/または4)少なくとも一つの式(1)の化合物を含むHIL(Mは、正孔注入基を含む)を含む、エレクトロルミネッセンス素子である。
【0169】
本発明のイオン性化合物を含む層が、さらに、イオン伝導性材料を含むことも好ましい。イオン移動性を改善し、それゆえ、駆動電圧を下げ、応答時間、効率および/または寿命を改善することを助けてもよい。イオン伝導性材料の例は、上記のとおりである。イオン伝導体の濃度は、1〜40重量%、好ましくは、2〜30重量%、非常に、好ましくは、5〜25重量%、および、非常に、好ましくは、8〜20重量%であり得る。
【0170】
非常に、好ましい態様では、電子素子は、エレクトロルミネッセンス素子(OLEDもしくはPLED)であって、活性層は、非イオン性有機化合物から成ることを特徴とする。OLEDもしくはPLEDの可能な素子構造とこれらの素子の調製は、多くの文献、たとえば、WO2004/037887、WO2004/084260 A2等を参照することができる。
【0171】
特に、好ましい態様では、電子素子は、エレクトロルミネッセンス電子化学電池(一般的には、今後OLECと呼ばれる。)であって、活性層は、少なくとも一つの式(1)のイオン性有機化合物を含むことを特徴とする。さらに、好ましくは、イオン性有機化合物は、M中に一つのホストもしくはマトリックス基を含む。
【0172】
通常は、前記OLEC中の発光層は、少なくとも一つのエミッターとホストとして一つのイオン性化合物を含み、両者は、上記記載の化合物から選ぶことができる。ある態様では、エミッターは、蛍光エミッターである。前記エミッターの濃度は、1〜20重量%、好ましくは、2〜15重量%、非常に、好ましくは、3〜10重量%および、特に、好ましくは、3〜8重量%であり得る。別の態様では、エミッターは、燐光エミッターである。前記エミッターの濃度は、1〜30重量%、好ましくは、2〜25重量%、非常に、好ましくは、5〜20重量%および、特に、好ましくは、10〜20重量%であり得る。
【0173】
時として、電荷バランスを調製し、そのため、効率および/または寿命を改善するために、前記電子素子中の同じ発光層中に二以上のホスト材料を使用することが有利である。
【0174】
前記OLEC中で好ましくは、イオン性化合物は、少なくとも一つのさらなるホスト材料と共に、1〜99重量%、好ましくは、10〜90重量%、非常に、好ましくは、20〜80重量%および、特に、好ましくは、30〜70重量%の濃度で、コホストとして使用される。
【0175】
単純な形態では、前記OLECは、アノード/EML/カソードという層構造を有する。好ましくは、OLECは、さらに、バッファー層とも呼ばれるHILを含む。また、好ましくは、OLECは、さらに、HILとEMLとの間に中間層を含む。中間層は、正孔輸送機能と電子障壁機能を有する。中間層材料と素子構造の例は、WO2004/084260 A2を参照することができる。
【0176】
OLEDもしくはPLEDと比べて、OLECは、カソードとして反応性金属を必要としない。したがって、原則として、伝導性ポリマー、金属、金属酸化物およびそれらの組成物を含む、有機および無機伝導性双方のすべての伝導性材料が、OLEC中のアノードおよびカソードとして使用することができる。OLECのアノードおよびカソードは、同じであるかまたは異なる材料であり得る。
【0177】
OLECに使用される好ましい電極用の材料は、金属、特に、好ましくは、Al、Cu、Au、Ag、Mg、Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Cr、V、Pd、Pt、Ga、Inとそれらの合金、伝導性酸化物、たとえば、ITO、AZO、ZnOおよびたとえば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSSH)、ポリアニリン(PANI)等を含む有機薄膜から選ばれる。さらに適した伝導性ポリマーは、たとえば、Michael S. Freund & Bhavana Deore, in “Self-Doped Conducting Polymers”, John Willey & Sons, Ltd., 2007により編集された論評に見出され得る。
【0178】
好ましくは、本発明の素子、好ましくは、OLECは、フレキシブル基板上に調製される。適切な基板は、好ましくは、ポリマーもしくはプラスチックス系の膜または箔から選ばれる。ポリマーもしくはプラスチックスの主な選定基準は、1)衛生性および2)ガラス転移温度である。ポリマーのガラス転移温度(T)は、通常のハンドブック、たとえば、“Polymer Handbook”, Eds. J. Brandrup, E. H. Immergut, and E. A. Grulke, John Willey & Sons, Inc., 1999, VI/193-VI/276に見出し得る。好ましくは、ポリマーのTは、100℃超、非常に、好ましくは、150℃超、特に、好ましくは、180℃超および最も好ましくは、200℃超である。非常に、好ましい基板は、たとえば、ポリイミド、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)およびポリ(エチレン2,6-ナフタレン)(PEN)である。
【0179】
酸素と湿気により引き起こされる分解を回避し、また素子中の活性材料を阻害するために、前記素子の適切な封止が、予め要請される。
【0180】
本発明の素子の封止のために適切な多くの技術が存在する。一般的に、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池、有機染料増感性太陽電池、有機電界効果トランジスター(OFET)、薄膜電池、微小電子機械系(MEMS)および電子紙のために開発されたあらゆる封止技術を、本発明の素子を封止するために適用することができる。
【0181】
好ましい態様では、本発明の素子は、薄膜封止を使用して封止される。典型的には、薄膜封止は、無機/有機スタックの交互層から成り、無機層は適当なバリアー性を達成するために使用され、有機層は無機層の不可避的欠陥を取り除くために使用される。無機層のために使用される材料は、金属、金属酸化物もしくは混合酸化物、たとえば、Ag、SiO、SiN、AlO、ZrO、ZnO、HfO、TiOおよびインジウム錫酸化物等から選ぶことができる。いくつかの例は、Graff, G. L. et al. (J. Appl. Phys. 2004, 96, 1840)により報告された真空堆積アクリレートポリマー/AlOの交互層、Young Gu Lee et al. ( Org. Electron. 2009, 10, 1352 and in Dig. Tech. Pap.-Soc. Inf. Disp. Int. Symp. 2008, 39, 2011)により報告されたAl/ポリ尿素層、Han,Jin Woo, et al. (Jpn. J. Appl. Phys., Part 1 2006, 45, 9203)により報告されたPET基板上のSION/SiO/パリレンおよびWang,Li Duo et al. (Chin. Phys. Lett. 2005, 22, 2684)により報告されたポリアクリレート(20μm)−Ag(200nm)である。
【0182】
先端堆積技術、たとえば、原子層堆積(ALD)、プラズマ補助パルスレーザー堆積(PAPLD)およびプラズマ促進化学気相堆積(PECVD)を使用することによって、無機層中の欠陥を顕著に減少することができ、その結果すべての無機層、たとえば、Chang,Chih Yu et al. (Org. Electron. 2009, 10, 1300)により報告されたALDによるAl/HfOナノラミネートフィルムおよびLi,C.Y. et al.(IEEE Electron. Compon. Technol. Conf. 2008, 58th, 1819)により報告されたSiN/SiO層、Shimooka,Y. et al.( IEEE Electron. Compon. Technol. Conf. 2008, 58th, 824)により報告された(PECVD SiO)/ポリ-ベンゾ-オキサゾール(PBO)、Meyer,J. et al. (Appl. Phys. Lett. 2009, 94, 233305/1によるるAl/ZrOナノラミネート交互層、Gorrn,Patrick et al. (J. Phys. Chem. 2009, 113, 11126)により報告されたPAPLDによるAl/ZrOナノラミネート、Weidner,W.K. et al. (Annu. Tech. Conf. Proc-Soc. Vac. Coaters 2005, 48th, 158)により報告されたPECVDによるSiC層、Lifka,H., et al. (Dig. Tech. Pap.-Soc. Inf. Disp. Int. Symp. 2004, 35, 1384により報告されたPECVDによる窒化珪素−酸化珪素−窒化珪素酸化珪素−窒化珪素(NONON)の多層スタックおよびPark,Sang-Hee Ko, et al. (ETRI Journal 2005, 545)により報告されたポリエステルスルホン(PES)/ALDAlOを使用することができる。CVDとALDによる薄膜封止に関する論評は、Stoldt, Conrad R, et al.(J. Phys. D: Appl. Phys. 2006, 39, 163)により提供される。
【0183】
さらなる単層封止も開発された。単一バリア層の例は、Granstrom, J. et al. (Appl. Phys. Lett. 2008, 93, 193304/1)により報告されたとおりにOLED上に簡単にスピンコートすることができる過フッ素化ポリマー(Cytop)およびHuang, L.T. et al. (Thin Solif Films 2009, 517, 4207)より報告された反応性無線周波数(RF)マグネトロンスパッタリングを使用することによる酸窒化アルミニウム(AlO)から成る単一層、Rusu, Cristina et al. (J. Microelectromech. Syst. 2003, 12, 816)により報告されたPECVDによる単一ポリ−SiGe層である。
【0184】
封止用の材料と方法に関するさらなる詳細は、たとえば、WO2009/089417、WO2009/089417、WO2009/042154、WO2009/042052、US2009/081356、US2009/079328、WO2008/140313、WO2008/012460、EP1868256、KR2006/084743、KR2005/023685、US2005/179379、US2005/023974、KR2003/089749、US2004/170927、US2004/024105、WO2003/070625およびWO2001/082390に開示されている。
【0185】
別の好ましい態様では、本発明の素子は、キャップと一緒に硬化性樹脂を使用することにより封止され、キャップは、少なくとも発光領域を覆い、硬化性樹脂は、基板とキャップとの間に適用される。キャップ材料は、平板もしくは箔およびガラスキャップの形で金属およびプラスチックスから選ぶことができる。好ましくは、キャップは、フレキシブルであり、好ましくは、金属箔、プラスチック箔もしくは金属プラスチック箔から選ばれる。金属は、Al、Cu、Fe、Ag、Au、Niから選ばれ、Alが特に、好ましい。プラスチックスの選定基準は、1)衛生性および2)十分に高いと想定されるガラス転移温度(T)である。ポリマーのTは、適当なハンドブック、たとえば、“Polymer Handbook”, Eds. J. Brandrup, E. H. Immergut, and E. A. Grulke, John Willey & Sons, Inc.,1999, VI/193-VI/276に見出し得る。好ましくは、キャップ材料に適切なポリマーは、60℃超、好ましくは、70℃超、特に、好ましくは、100℃超および非常に、特に、好ましくは、120℃超のTを有する。本発明に使用されるキャップは、ポリ(エチレン2,6-ナフタレン)(PEN)である。
【0186】
適切な樹脂は、熱硬化性もしくはUV硬化性であることができる。好ましくは、樹脂は、UV硬化性であり、随意に、加熱により支援され、促進される。典型的な樹脂は、エポキシ系樹脂であり、たとえば、Nagase & Co., LTD.およびDELO Industrie Klebstoffeから商業的に入手可能である。樹脂は、発光領域の全領域上または端上にだけ適用することができ、非発光領域は下面である。
【0187】
さらに好ましい態様では、本発明の素子は、0.5cm〜100000cm、特に、好ましくは、0.5cm〜50000cmの範囲のエクステントを有する。
【0188】
本発明は、さらに、請求項14〜17何れか1項記載の素子に関し、素子は繊維形状を有する。
【0189】
フレキシブル繊維エレクトロルミネッセンス光源は、たとえば、US6074071、US5485355およびUS5876863にあるように当業者に知られている。化学ルミネッセンス光源も知られている。これらの素子は、繊維中に含まれる二種の試薬を結合するために捻られると発光する。試薬間の化学反応は、光を生じ、化学反応は数時間進行する。しかしながら、これらの先行技術の化学ルミネッセンス繊維の光源は、十分な輝度を欠いており、医療または化粧用途に対する十分な要請を達成することはできない。
【0190】
OLED繊維は、近年US6538375 B1、US2003/0099858およびBrenndan O’Connor et al. (Adv. Mater. 2007, 19, 3897-3900)により説明されてきた。単一OLED繊維とその照明での使用が説明されている。OLEDおよび/またはOLEC繊維に関するさらなる詳細は、PCT/EP2011/000707およびPCT/EP2011/000705に夫々開示されている。先行する挙げられた特許およびその他の公開文書の各内容は、ここで参照によりそれらの全部が組み込まれる。
【0191】
本発明の化合物、組成物、素子および調合物は、医療疾病の治療および/または予防および/または診断および/または化粧/審美用途分野のために使用することができる。この治療、予防および/または診断は、本発明の化合物、組成物および/または調合物を含む光治療素子の使用に伴われることができる。
【0192】
したがって、本発明は、さらに、本発明の化合物および/または組成物および/または調合物と化合物および/または組成物および/または調合物を含む素子の、疾病の治療、予防および/または診断のための使用に関する。本発明は、なおさらに、本発明の化合物および/または組成物および/または調合物とそれらを含む素子の化粧状態の治療および予防のための使用に関する。
【0193】
本発明は、さらに、本発明の化合物および/または組成物および/または調合物の疾病の治療、予防および/または診断のための素子の製造のための使用に関する。
【0194】
光処置または光治療は、多くの医療および/または化粧分野で使用される。したがって、本発明の化合物および/または組成物および/または調合物とそれらを含む素子は、当業者が光治療の使用を考慮する疾病の治療および/または予防および/または診断のためのおよび/または化粧用途で使用することができる。照射に加えて、用語光治療は、光力学治療(PDT)と消毒と滅菌と保存(たとえば、食品および/または飲料およびソフトドリンクの保存)をも一般的に含む。フォトセラピーまたは光治療は、ヒトまたは動物のみならず、任意の他の型の生物または非生物材料の処置のために使用することができる。これらは、たとえば、菌類、細菌、微生物、ウイルス、真核生物、原核生物、食品、飲料、水および飲料水を含む。
【0195】
用語光治療は、光処置と、たとえば、活性化合物による処置等の他の型の治療との任意の組み合わせをも含む。多くの光治療は、ヒトおよび動物の皮膚、創傷、粘膜、眼、毛髪、爪、爪床、歯肉および舌等の客体の外側部分を照射するまたは処置する目的を有する。しかしながら、本発明の処置または照射は、たとえば、内部器官(肺、心臓等)もしくは血管もしくは胸を処置するために、対象の内側に適用することもできる。
【0196】
本発明の治療および/または化粧料分野は、好ましくは、たとえば、乾癬、皮膚老化、皮膚しわ、皮膚新生、皮膚孔拡大、セルライト、油状/グリース状皮膚、毛包炎、がん状態の日焼け角化症、皮下脂肪、毛穴拡大症、油状皮膚症、毛包炎、化学線角化症、前癌状態角化症、皮膚損傷、日焼け損傷および日焼けストレス皮膚、ニキビ跡、目じりのしわ、ニキビ、赤蒼、ニキビ跡、ニキビ菌の減少、油状/グリース状脂腺とその周囲細胞の光変調、黄疸、新生児黄疸、白斑、皮膚癌、皮膚腫瘍、クリーグラー・ナジャー、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、糖尿病性皮膚潰瘍、皮膚の脱感作等の皮膚疾患および皮膚関連疾患もしくは変化もしくは状態より成る群から選ばれる。
【0197】
本発明の目的のために、特に、好ましいものは、乾癬、にきび、セルライト、皮膚しわ、皮膚老化、白斑および黄疸の治療および/または予防である。
【0198】
本発明の化合物、組成物、調合物および/または本発明のそれらを含む素子のための本発明のさらなる用途分野は、炎症疾患、リューマチ性関節炎、苦痛治療、創傷治療、神経疾患、浮腫、パジェット病、一次および転移腫瘍、結合組織疾患または変性、コラーゲン変性、哺乳類組織の線維芽細胞および繊維芽細胞由来の細胞レベル、網膜と新生物と新生血管および肥大病の拡延、アレルギー反応、呼吸路拡延、発汗、眼の新生血管病、ウイルス感染、特に、いぼおよび性器いぼ治療のための単純ヘルペスまたはHPV(ヒトパピロマウイルス)により引き起こされる感染の群から選ばれる。
【0199】
本発明の目的のために、リューマチ性関節炎、ウイルス感染および疼痛の治療および/または予防が、特に、好ましい。
【0200】
化合物および/または本発明の化合物を含む素子のための本発明のさらなる用途分野は、冬季低下、眠り病、雰囲気改善拡延、たとえば、疼痛、特に、緊張または関節痛により引き起こされる筋肉痛の減少、関節硬化の排除および歯のホワイトニング(漂白)から選ばれる。
【0201】
本発明の化合物、組成物、調合物および/または本発明のそれらを含む素子のための本発明のさらなる用途分野は、消毒の群から選ばれる。本発明の化合物および/または本発明の化合物を含む素子は、任意の型の対象(非生物材料)または客体(たとえば、ヒトおよび動物等の生物材料)の消毒目的の処置に使用することができる。これは、たとえば、創傷の消毒、バクテリアの減少、手術具または他の製品の消毒、食品、液体、特に、水、飲料水および他の飲料の消毒、粘膜およびガムおよび歯の消毒を含む。ここで、消毒は、細菌および微生物等の望ましくない作用の原因となる微生物の減少を意味するものと解される。
【0202】
上記言及した光治療の目的のために、本発明の素子を含む素子は、好ましくは、250〜1250nm、特に、好ましくは、300〜1000nm、特別に、好ましくは、400〜850nmの波長範囲で発光する。
【0203】
本発明の、特に、好ましい態様では、光治療での使用のための素子は、有機発光ダイオード(OLED)または有機発光電子化学電池(OLEC)である。OLEDおよびOLEC両者は、単一または多層構造をもつ任意の所望の断面(たとえば、円、楕円、多角形、正方形)を有する平面状または繊維状構造をとることができる。これらのOLECおよび/またはOLEDは、さらなる機械的、接着性および/または電子要素を含む他の素子中(たとえば、照射回数、強度および波長の調整のための電池および/または制御ユニット)に設置することができる。本発明のOLECおよび/またはOLEDを含むこれらの素子は、好ましくは、プラスター、パッド、テープ、バンデージ、カフス、ブランケット、キャップ、寝袋、織物およびステントより成る群から選ばれる。
【0204】
前記治療および/または化粧目的のための前記素子の使用は、本発明のOLEDおよび/またはOLECを使用する本発明の素子の助けにより、より低い照射強度の均一な照射が、実質的に任意の位置で任意の時に可能であることから、先行技術と比べて、特に、有利である。照射は、入院患者としておよび/または外来患者としておよび/または患者自身により、すなわち、医学または化粧専門家による照射によらず、実行することができる。したがって、たとえば、プラスターは、着衣下に装着することができ、その結果、業務時間中、レジャー期間中または睡眠中に、照射が、可能でもある。複雑な入院患者/外来患者治療を多くの場合回避することができるか、その頻度を減らすことができる。本発明の素子は、再利用または廃棄可能な物品を意図されてよく、一度、二度または三度の使用後、廃棄することができる。
【0205】
先行技術と比べたさらなる優位性は、たとえば、熱と情動面のより低い展開である。したがって、黄疸により治療されるべき新生児は、典型的には、両親との物理的な接触がなく、保育器で目隠しされながら照射されねばならず、両親と新生児には情動的なストレス状況となる。本発明のOLEDおよび/またはOLECを含む本発明のブランケットの助けにより、情動的なストレスを顕著に減らすことができる。従来の照射設備と比べて、さらに、子供のより良好な温度調節が、本発明の素子の減少した熱発生により可能である。
【0206】
本発明は、さらに、本発明の化合物、組成物もしくは調合物を含む化合物および/または組成物および/または調合物および/または素子を使用することによる医療疾病および/または化粧状態の処置方法に関する。処置されるべき特定の指示は、上記概観したものと同じである。
【0207】
本発明の前記態様の変形が、本発明の範囲になお入りながら、なされることができることが理解されるであろう。明細書で開示された各特長は、特に断らなければ、同じか、等価か、類似する目的に役立つ代替的特徴により置き代えられてよい。したがって、特に断らなければ、開示された各特長は、一般的な一連の例としてか、等価か類似する特長である。
【0208】
本明細書で開示されたすべての特長は、そのような特徴および/または工程の少なくともいくつかが相互に排除しないならば、任意の組み合わせで結合されてよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明の全ての局面にあてはめることができ、任意の組み合わせで使用されてよい。同様に、非本質的な組み合わせで説明された特徴は、(組み合わせではなく)別に、使用されてよい。
【0209】
上記の多くの特徴、特に、好ましい態様は、それ自身で発明性があり、本発明の態様の単なる部分としてだけではないと理解されるであろう。現在クレームされた任意の発明に加えてまたその代替として、独立した保護が、これらの特徴のために追及されてよい。
【0210】
ここで開示された教示を抽出し、他の開示された例と組み合わせることができる。
【0211】
本発明の他の特徴は、例示する態様の以下の説明によって、明らかになるであろうが、本発明の例示であり、それにより、限定するものではない。
【0212】
実施例
例1
材料
TEG1は、WO2004/026886により合成することができる三重項緑色エミッターである。
【化28】
【0213】
TMM1は、WO2005/053055により合成することができる三重項マトリックス材料である。
【化29】
【0214】
TMM2は、WO2009/124627により合成することができる三重項コマトリックス材料として使用されるワイドギャップ材料である。
【化30】
【0215】
ポリ(エチレンオキサイド)(PED)は、イオン伝導材料として使用される、粘度平均分子量M=1×10を有するPEOは、Aldrichから購入することができ、そのまま使用される。
【0216】
第一のイオン性材料IM1、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiCFSO)は、Aldrichから購入することができ、参照としてそのまま使用される。
【化31】
【0217】
第二のイオン性材料IM2は、本発明の新規な第一のイオン性化合物であり、以下のとおりに合成することができる。
【0218】
例2:
IM2合成
1.アリールアレーンスルホニルクロライドの調製
【化32】
【0219】
無水DMF(0.16ml)中の塩化チオニル(20ml、274ミリモル)溶液が、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸(5g、20ミリモル)(CAS 27503-81-7))に添加される。得られた組成物は、60℃で3.5h撹拌される。溶液は、氷上に注がれる。水性相が抽出され(ジクロロメタン)、乾燥され、濃縮され、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホニルクロライド(5.27g、98%)が油状物として得られる。
【0220】
2.アレーンスルホネートの調製
【化33】
【0221】
ジクロロメタン(30ml)中のフェノール(1.6g、17ミリモル)と7mlのトリエチルアミンの溶液に、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホニルクロライド(5g、17ミリモル)が室温で少しずつ添加される。一晩撹拌後、25mlの水が組成物に添加され、組成物は、65℃で2h撹拌される。組成物は酢酸エチル(200ml)で抽出され、有機層は、水(150ml)で、10%水性HCl(150ml)で三度、水(150ml)で二度、飽和水性NaHCOで二度、塩水(100ml)で二度洗浄される。次いで、得られた生成物は、NaSOで乾燥される。溶媒は真空蒸発される。シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフ(ヘキサン:酢酸エチル80:20)により、アリールアレーンスルホネート(88%)を得る。
【0222】
3.IM2の調製
【化34】
【0223】
2-フェニル-3H-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸フェニルエステル(0.79g、2ミリモル)が、40cmのエタノール中に溶解され、1cmの水中に溶解されたLiOH(0.048g、2ミリモル)が添加される。化合物はアセトン中で再結晶化される。白色の粉末を、溶媒の蒸発と真空濾過による単離により得ることができる。収率74%。
【0224】
例3
IM2とその前駆体の量子化学計算
有機中性化合物の量子シミュレーションは、Gaussian 03Wソフトウエア(Gaussian Inc.)を使用して実施される。金属を含まない有機化合物のために、まず、半経験法「Ground State/Semi-empirical/ Default spin/AM1」(電荷0/一重項スピン)が、分子ジオメトリーを最適化するために使用され、次いで、エネルギーが、「6-31G(d)」(電荷0/一重項スピン)基本セットをもつTD-DFT法(時間依存濃度関数理論)「TD-SCF/DFT/ Default Spin/B3PW91」により計算される。遷移金属(ランタノイドおよびアクチニドを含む)を含む金属錯体に対しては、ジオメトリー最適化は、「LanL2MB」基本セットをもつHartree-Fockを使用して実施され、エネルギー計算は、次いで、補正関数B3PW91と非金属元素に対する「6-31G(d)」基本セットと遷移金属に対するLanz2DZ (Los Alamos National Laboratory 2-double-z)をもつTD-DFTを使用して実施される。一対のデータをこのような計算により得ることができるが、この分野で量子化学計算により提供される最も重要な結果の一つは、HOMO/LUMOエネルギー準位(最高被占軌道/最低空軌道)、バンドギャップと三重項と一重項励起状態のためのエネルギーである。この結果、第1の励起三重項(T1)と第1の励起一重項(S1)が最も重要である。エネルギー計算からは、ハートリー単位でHOMO HEhおよびLUMO LEhを得る。そして、電子ボルト(eV)でのHOMOおよびLUMO値は、以下の式により決定され、シクロボルタンメトリ(CV)測定を使用する較正から導き出すことができる。
【0225】
HOMO(eV)=((HEh*27.212)−0.9899)/1.1206
LUMO(eV)=((LEh*27.212)−2.0041)/1.385
これらの値は、本発明において化合物のHOMO−LUMO準位として使用されるだろう。例として、化合物TMM1に対して、−0.21292ハートリーのHOMOと−0.06843ハートリーのLUMOを計算することができ(表1参照。)、較正された−6.05eVのHOMOと較正された−2.79eVのLUMOに夫々対応する。
【0226】
IM2に代えて、IM2の前駆体、Pre-IM2が計算される。
【化35】
【0227】
表1:TMM1、TMM2、TEG1およびPre-IM2のエネルギー準位の要約
【表1】
【0228】
TMM1、TMM2、TEG1およびPre-IM2のエネルギー準位は、表1に要約される。TMM1とTMM2双方は、TEG1より高いT1を有する。Pre-IM2は、2.93eVのT1を有し、TEG1に対する三重項マトリックスとして適しており、また−2.96eVのLUMOを有し、電子輸送性に優れている。当業者は、IM2が、Pre-IM2と非常に近似した電子特性を有することを期待するであろう。したがって、IM2は式(1)の有機化合物に対応し、ここで、Mは、電子輸送基および/またはマトリックス基を含む。
【0229】
例4
溶液1および2
本発明のイオン性化合物(IM2)と参照(IM1)とを含む二種の異なる溶液(調合物)が、当分野の当業者に知られた標準的技術を使用して調製された。
【0230】
1.表2による組成物の調製;
2.対応する組成物(表2参照)を23mg/mlの濃度で1:1の重量比のシクロヘキサノンとDMFの混合溶媒中に溶解することによる溶液1および2の調製;
3.グローブボックッス中で溶液を3時間撹拌すること;
4.溶液は、Millipore Millex LS, Hydrophobic PTFE5.0μmを使用して、濾過される。
【0231】
次いで、両溶液は、被覆によりエレクトロルミネッセンス素子中に発光層を構築するためか、またはさらなる使用のための溶媒を蒸発することにより混合粉末を得るために使用することができる。
【0232】
表2 23mg/mlの濃度の溶液
【表2】
【0233】
例5
OLEC1およびOLEC2の調製
アノード/PEDOT/中間層/EML/カソードのサンドイッチ構造において、発光層中でIM1を使用するOLEC1とIM2を使用するOLED2が、次の工程により調製される:
1.PEDOT(Baytron P AI 4083)がITOガラス基板上(Technoprint Inc)に、スピンコーティングにより80nmの厚さで堆積され、次いで、120℃で10分間クリーンルーム内で加熱される;
2.20nmの中間層(IL)が、0.5%濃度を有するHIL-012 (Merck KGaA)のトルエン溶液から、スピンコーティングによりに堆積される、次いで、グローブボックッス中で180℃で10分間加熱される;
3.発光層が、グローブボックッス中で例4によるスピンコーティング溶液により堆積され、160nm厚の層を得る;
4.素子は、50℃で30分間加熱され、次いで、残留溶媒を除去するために、30分間真空室におかれる;
5.Alカソード(150nm)が発光層上の蒸発により堆積される;
6.素子は、UV硬化樹脂、UV樹脂T-470/UR7114 (Nagase Chemtex Corporation)とガラスキャップを使用して封入される。
【0234】
例6
OLEC1およびOLEC2の特性決定
次いで、OLEC1およびOLEC2が、当業者に知られた標準技術により特性決定される。以下の特性が記録される:VIL特性、ELスペクトルおよび色座標、効率、駆動電圧。
【0235】
OLECの性能が表3に要約され、ここで、Uonは、使用電圧であり、U(100)は、100nitsでの電圧であ。
【0236】
表3
【表3】
【0237】
両OLECは、類似する色座標(CIE)を有するが、参照のイオン性化合物IM1を使用するOLEC1と比べて、本発明の新規なイオン性化合物を使用するOLEC2は、効率と駆動電圧に関して、はるかに改善された性能を示す。
【0238】
さらなる性能改善が、異なる方法により、たとえば、EML中の濃度、EMLおよび/または中間層の厚さの最適化、特に、本発明に開示された材料と対応する素子を活用することによって達成することができる。