特許第6356076号(P6356076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6356076液滴検出装置およびインクジェットプリンター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356076
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】液滴検出装置およびインクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   B41J2/01 207
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-1912(P2015-1912)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-124262(P2016-124262A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小平 正樹
(72)【発明者】
【氏名】水崎 晃彦
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−346906(JP,A)
【文献】 特開2010−131800(JP,A)
【文献】 特表2009−502572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンターのヘッドのノズルから吐出される微小液滴を検出する液滴検出装置であって、
前記微小液滴による少なくとも一部の遮りを検出するための検出光を前記微小液滴の進行方向と交差する方向に発する発光素子と、
前記発光素子から発せられた前記検出光を受ける受光素子と、
互いに対向して配置されていて間に前記微小液滴を通過させる一対の壁部とを備え、
前記一対の壁部は、前記発光素子から前記受光素子までの前記検出光の光路の少なくとも一部を間に形成するとともに、前記光路上の前記検出光の少なくとも一部を反射して前記受光素子に到達させ、
前記検出光は、前記一対の壁部の前記発光素子側の端部で挟まれた領域において、前記一対の壁部の対向方向と、前記一対の壁部の間における前記光路の延在方向との両方に対する直交方向の少なくとも一部の範囲で、前記対向方向の幅が前記一対の壁部の前記対向方向の間隔と等しいことを特徴とする液滴検出装置。
【請求項2】
前記領域における前記検出光の前記直交方向の幅を制限するスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴検出装置。
【請求項3】
前記スリットの前記直交方向の両端は、前記対向方向に延在し、
前記検出光は、前記領域において、前記対向方向の幅が前記直交方向の全範囲で前記間隔と等しく、前記直交方向の幅が前記対向方向の全範囲で前記スリットの前記直交方向の幅と等しいことを特徴とする請求項2に記載の液滴検出装置。
【請求項4】
前記受光素子が前記検出光を受光可能である受光可能領域の前記対向方向における長さは、前記対向方向における前記一対の壁部の間隔以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の液滴検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れかに記載の液滴検出装置と、
前記微小液滴を吐出するノズルの列をそれぞれ有する複数のヘッドとを備え、
前記列は、前記延在方向に延在しており、
前記複数のヘッドのうち少なくとも2つのヘッドの前記列は、前記延在方向における位置が互いにずれて配置されており、
前記一対の壁部は、前記延在方向の長さが前記複数のヘッドの全体における前記列の前記延在方向の幅以上であることを特徴とするインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターのヘッドのノズルから吐出される微小液滴を検出する液滴検出装置およびインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターのヘッドのノズルから吐出される微小液滴を検出する液滴検出装置として、平行化光源を備えているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−502572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、平行化光源は、レーザーなどの高価な装置を使用する必要がある。したがって、従来の液滴検出装置は、製造コストが高いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来より製造コストを抑えることができる液滴検出装置およびインクジェットプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴検出装置は、インクジェットプリンターのヘッドのノズルから吐出される微小液滴を検出する液滴検出装置であって、前記微小液滴による少なくとも一部の遮りを検出するための検出光を前記微小液滴の進行方向と交差する方向に発する発光素子と、前記発光素子から発せられた前記検出光を受ける受光素子と、互いに対向して配置されていて間に前記微小液滴を通過させる一対の壁部とを備え、前記一対の壁部は、前記発光素子から前記受光素子までの前記検出光の光路の少なくとも一部を間に形成するとともに、前記光路上の前記検出光の少なくとも一部を反射して前記受光素子に到達させ、前記検出光は、前記一対の壁部の前記発光素子側の端部で挟まれた領域において、前記一対の壁部の対向方向と、前記一対の壁部の間における前記光路の延在方向との両方に対する直交方向の少なくとも一部の範囲で、前記対向方向の幅が前記一対の壁部の前記対向方向の間隔と等しいことを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の液滴検出装置は、一対の壁部の発光素子側の端部で挟まれた領域において、一対の壁部の対向方向と、一対の壁部の間における光路の延在方向との両方に対する直交方向の少なくとも一部の範囲で、一対の壁部の対向方向において壁部と、検出光との間に隙間を形成しないので、隙間が原因となる陰が一対の壁部の間の範囲に発生することを抑えることができる。そのため、本発明の液滴検出装置は、レーザーなどの高価な装置を使用する平行化光源を備えなくても、微小液滴の検出範囲である一対の壁部の間の範囲における微小液滴の検出の感度の斑の発生を抑え、微小液滴を高精度に検出することができる。したがって、本発明の液滴検出装置は、従来より製造コストを抑えることができる。
【0008】
また、本発明の液滴検出装置は、前記領域における前記検出光の前記直交方向の幅を制限するスリットが形成されていても良い。
【0009】
この構成により、本発明の液滴検出装置は、発光素子から発せられた検出光が受光素子側に進みながら直交方向に拡散することを抑えることができるので、発光素子から発せられた検出光が受光素子側に進みながら直交方向に拡散して何らかの部材に反射した後、受光素子によって受けられることを抑えることができる。したがって、本発明の液滴検出装置は、微小液滴の検出の感度の斑の発生を抑えることができる。すなわち、本発明の液滴検出装置は、微小液滴を高精度に検出することができる。
【0010】
また、本発明の液滴検出装置において、前記スリットの前記直交方向の両端は、前記対向方向に延在し、前記検出光は、前記領域において、前記対向方向の幅が前記直交方向の全範囲で前記間隔と等しく、前記直交方向の幅が前記対向方向の全範囲で前記スリットの前記直交方向の幅と等しくても良い。
【0011】
この構成により、本発明の液滴検出装置は、微小液滴の検出範囲において、一対の壁部の対向方向と、直交方向との両方における検出光の光量の斑の発生を抑えることができるので、微小液滴の検出の感度の斑の発生を抑えることができる。すなわち、本発明の液滴検出装置は、微小液滴を高精度に検出することができる。
【0012】
また、本発明の液滴検出装置において、前記受光素子が前記検出光を受光可能である受光可能領域の前記対向方向における長さは、前記対向方向における前記一対の壁部の間隔以上であっても良い。
【0013】
この構成により、本発明の液滴検出装置は、一対の壁部の対向方向において、一対の壁部の間の検出光の全領域を検出することができる。すなわち、本発明の液滴検出装置は、微小液滴の検出範囲を広く確保することができる。
【0014】
本発明のインクジェットプリンターは、上述の液滴検出装置と、前記微小液滴を吐出するノズルの列をそれぞれ有する複数のヘッドとを備え、前記列は、前記延在方向に延在しており、前記複数のヘッドのうち少なくとも2つのヘッドの前記列は、前記延在方向における位置が互いにずれて配置されており、前記一対の壁部は、前記延在方向の長さが前記複数のヘッドの全体における前記列の前記延在方向の幅以上であることを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、従来より製造コストを抑えることができる液滴検出装置を備えているので、従来より製造コストを抑えることができる。また、本発明のインクジェットプリンターは、液滴検出装置が微小液滴の検出範囲における微小液滴の検出の感度の斑の発生を抑えることができるので、ヘッドのノズルの列が延在する方向における液滴検出装置による微小液滴の検出範囲を延長することができる。したがって、本発明のインクジェットプリンターは、ノズルの列が延在する方向に液滴検出装置に対してヘッドを移動させなくても、複数のヘッドの全てのノズルに対して微小液滴を検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液滴検出装置およびインクジェットプリンターは、従来より製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンターの外観斜視図である。
図2図1に示すA−A矢視断面図の一部である。
図3図1に示す液滴検出装置の外観斜視図である。
図4】カバーが取り外された状態での図3に示す液滴検出装置の外観斜視図である。
図5図3に示す液滴検出装置の一部の矢印10aで示す方向から見た断面図である。
図6図3に示す液滴検出装置の一部の平面図である。
図7図3に示す液滴検出装置の一部の断面図であって、受光素子側から光幅制限部材を見た図である。
図8図3に示す液滴検出装置の比較例としての液滴検出装置の一部の断面図であって、受光素子側から光幅制限部材を見た図である。
図9図8に示す液滴検出装置における感度のマップの一例を示す図である。
図10図3に示す液滴検出装置における感度のマップの一例を示す図である。
図11】(a)受光素子側から光幅制限部材を見た図3に示す液滴検出装置の一部の断面図であって、図7に示す例とは異なる例を示す図である。 (b)受光素子側から光幅制限部材を見た図3に示す液滴検出装置の一部の断面図であって、図7および図11(a)に示す例とは異なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の外観斜視図である。
【0021】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、床に設置される脚部11と、脚部11に支持されていて矢印10aで示す方向に延在している本体12とを備えている。
【0022】
本体12は、矢印10aで示す方向に直交する矢印10bで示す副走査方向に媒体90を搬送するための図示していない媒体搬送装置と、矢印10aで示す方向に延在しているガイドレール14と、矢印10aで示す主走査方向に移動可能にガイドレール14に支持されているキャリッジ15と、キャリッジ15に搭載されていて媒体90に向けてインクを吐出する複数のヘッド16と、ヘッド16から吐出されるインクの微小液滴を検出する液滴検出装置20と、ガイドレール14、キャリッジ15、ヘッド16および液滴検出装置20を覆うケース17と、インクジェットプリンター10全体の動作を制御する図示していない制御部とを備えている。
【0023】
複数のヘッド16は、スタガ配列されている。したがって、複数のヘッド16は、矢印10aで示す方向における位置が互いにずれて配置されているだけでなく、最も近いヘッド16同士の矢印10bで示す方向における位置も互いにずれて配置されている。
【0024】
液滴検出装置20は、本体12の内部において、媒体90が搬送されない位置、すなわち、本体12の矢印10aで示す方向における端部の近傍の位置に配置されている。すなわち、液滴検出装置20は、ヘッド16の退避位置に配置されている。
【0025】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0026】
図2は、図1に示すA−A矢視断面図の一部である。
【0027】
図2に示すように、ヘッド16は、矢印10a(図1参照。)で示す方向と、矢印10bで示す方向との両方に対する直交方向、すなわち、矢印10cで示す方向のうち矢印10dで示す方向にインクの微小液滴91をそれぞれ吐出するノズル16aの列16bを備えている。列16bは、矢印10bで示す方向に延在している。なお、図2に示す状態は、複数のヘッド16のうち1つのヘッド16が矢印10cで示す方向に液滴検出装置20と並ぶように、矢印10aで示す方向におけるキャリッジ15の位置が調整されている状態である。
【0028】
図3は、液滴検出装置20の外観斜視図である。図4は、カバー22が取り外された状態での液滴検出装置20の外観斜視図である。
【0029】
図2図4に示すように、液滴検出装置20は、ヘッド16のノズル16aから吐出される微小液滴91を受けて吸着するためのインク吸着用ケース21と、インク吸着用ケース21に取り付けられたカバー22と、微小液滴91を検出するための検出光を矢印10dで示す微小液滴91の進行方向と交差する矢印10bで示す方向に発する例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子23と、発光素子23から発せられた検出光を受ける例えばPD(Photodiode)などの受光素子24と、発光素子23から発せられた検出光の幅を制限するスリット25aが形成された光幅制限部材25と、受光素子24によって受けられる検出光の幅を制限するスリット26aが形成された光幅制限部材26とを備えている。
【0030】
液滴検出装置20は、ヘッド16のノズル16aから微小液滴91が吐出された場合に、発光素子23から発せられた検出光の少なくとも一部が微小液滴91に遮られることによって受光素子24で受ける光量が予定より特定の量以上少なくなったときに、微小液滴91を検出する装置である。
【0031】
カバー22は、互いに対向して配置されていて間に微小液滴91を通過させる平面状の一対の壁部22aを備えている。なお、壁部22aは、平面状でなくても良い。例えば、壁部22aは、矢印10bで示す方向に直交する平面で切断した断面上で曲線である状態、すなわち、曲面状であっても良い。しかしながら、壁部22aは、平面状である場合、液滴検出装置30における微小液滴91の検出の矢印10cで示す方向の感度の斑を抑制することができる。また、壁部22aが曲面状である場合には、一対の壁部22aの間の微小液滴91の通過領域の矢印10aで示す方向における幅は、矢印10aで示す方向において一対の壁部22aの間の幅が最も狭くなっている部分によって制限されてしまう。したがって、一対の壁部22aは、平面状であることが好ましい。
【0032】
一対の壁部22aは、発光素子23から発せられた検出光の少なくとも一部を壁部22aによって反射して受光素子24に到達させることによって、矢印10bで示す方向に延在している検出光の光路20aを間に形成している。なお、一対の壁部22aは、発光素子23から発せられた検出光の少なくとも一部を壁部22aによって反射して受光素子24に到達させることによって、反射による集光効果によって検出光を効率良く受光素子24に到達させることができるので、光路20aの矢印10bで示す方向における長さを伸ばすことができる。
【0033】
また、受光素子24が検出光を受光可能である受光可能領域の矢印10aで示す方向における長さは、矢印10aで示す方向における一対の壁部22aの間隔22b以上であることが好ましい。矢印10aで示す方向における受光素子24による受光可能領域の長さを一対の壁部22aの間隔22b以上とすることで、一対の壁部22aの間の検出光の矢印10aで示す方向における全領域を検出することができる。すなわち、微小液滴91の検出範囲を広く確保することができる。なお、矢印10aで示す方向における受光素子24による受光可能領域の長さを一対の壁部22aの間隔22b以上とする場合に、矢印10aで示す方向における一対の壁部22aの間隔22bが矢印10bで示す方向における少なくとも一部の箇所において同一ではないときには、矢印10aで示す方向における受光素子24による受光可能範囲の領域の長さは、矢印10bで示す方向における箇所のうち、間隔22bが最も短くなっている箇所の間隔22b以上であれば良い。
【0034】
一対の壁部22aは、互いに平行な状態で対向している。すなわち、一対の壁部22aの対向方向、すなわち、矢印10aで示す方向における一対の壁部22aの間隔22bは、矢印10bで示す方向における全範囲で同一である。なお、一対の壁部22aは、互いに平行な状態で対向していなくても良い。例えば、一対の壁部22aは、一対の壁部22aの両方が平面状である場合に、一対の壁部22aのそれぞれの延在方向が異なることによって、互いに平行な状態で対向していなくても良い。また、一対の壁部22aは、一対の壁部22aの少なくとも一方が矢印10cで示す方向に直交する平面で切断した断面上で曲線である状態、すなわち、曲面状であることによって、互いに平行な状態で対向していなくても良い。
【0035】
矢印10bで示す方向における一対の壁部22aの長さ22cは、複数のヘッド16の全体におけるノズル16aの列16bの矢印10bで示す方向における幅16c以上である。
【0036】
図5は、液滴検出装置20の一部の矢印10aで示す方向から見た断面図である。
【0037】
図5に示すように、発光素子23の発光部分23aの矢印10cで示す方向における幅23bは、矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bより広い。したがって、スリット25aを通過した検出光の矢印10cで示す方向における幅は、一対の壁部22aの発光素子23側の端部22dで挟まれた領域(以下「端部領域」と言う。)22eにおいて、矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bと等しい。すなわち、スリット25aは、端部領域22eでの矢印10cで示す方向における検出光の幅を制限するものである。
【0038】
なお、矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bの大きさは、受光素子24によって受けられる検出光の光量が一定以上の光量になるように、発光素子23によって発せられる検出光の発光強度に応じて設定されることが可能である。すなわち、矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bは、発光素子23によって発せられる検出光の発光強度が強い場合に狭くされることが可能であるし、発光素子23によって発せられる検出光の発光強度が弱い場合に広くされることが可能である。
【0039】
図6は、液滴検出装置20の一部の平面図である。
【0040】
図6に示すように、発光素子23の発光部分23aの矢印10aで示す方向における幅23cは、矢印10aで示す方向における一対の壁部22aの間隔22bより広い。したがって、一対の壁部22aの間を通過する検出光の矢印10aで示す方向における幅は、端部領域22eにおいて、矢印10aで示す方向における一対の壁部22aの間隔22bと等しい。
【0041】
なお、矢印10aで示す方向におけるスリット25aの幅25cは、矢印10aで示す方向における一対の壁部22aの間隔22b以上である。
【0042】
図7は、液滴検出装置20の一部の断面図であって、受光素子24側から光幅制限部材25を見た図である。
【0043】
図7に示すように、スリット25aの上端25dおよび下端25eは、矢印10aで示す方向に延在している。すなわち、スリット25aのうち端部領域22e(図6参照。)における検出光の矢印10cで示す方向の幅を制限する2つの部分25fは、矢印10cで示す方向における間の幅25bが矢印10aで示す方向における全範囲において等しい。
【0044】
また、一対の壁部22aは、矢印10aで示す方向における間隔22bが矢印10cで示す方向における全範囲において等しい。
【0045】
そして、発光素子23の発光部分23aは、受光素子24側から観察した場合に、図7に示すように、一対の壁部22aおよびスリット25aで形成される長方形の穴20bより大きい。
【0046】
したがって、発光素子23から発せられた検出光は、端部領域22eにおける矢印10aで示す方向での幅が矢印10cで示す方向における全範囲において間隔22bと等しい。また、発光素子23から発せられた検出光は、端部領域22eにおける矢印10cで示す方向での幅が矢印10aで示す方向における全範囲において矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bと等しい。
【0047】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0048】
インクジェットプリンター10の制御部は、図示していないPC(Personal Computer)などのコンピューターから印刷データが送信されてくると、送信されてきた印刷データに基づいた画像をインクによって媒体90に印刷する。具体的には、制御部は、媒体90に対するヘッド16の相対位置を変更しつつ、ヘッド16によって媒体90にインクの微小液滴91を吐出させる。ここで、制御部は、媒体90に対するヘッド16の相対位置のうち、矢印10aで示す主走査方向における位置を変更する場合には、ガイドレール14に沿ってキャリッジ15を矢印10aで示す主走査方向に移動させる。また、制御部は、媒体90に対するヘッド16の相対位置のうち、矢印10bで示す副走査方向における位置を変更する場合には、媒体搬送装置に媒体90を矢印10bで示す副走査方向に移動させる。
【0049】
そして、インクジェットプリンター10の制御部は、特定の回数の印刷が終了した時点や、利用者から指示された時点など、特定の時点で、ヘッド16のノズル16aから適切に微小液滴91を吐出することができるか否かの検査を実行する。具体的には、制御部は、ガイドレール14に沿ってキャリッジ15を矢印10aで示す主走査方向に移動させることによって、検査対象のヘッド16のノズル16aの列16bと、液滴検出装置20の一対の壁部22aの間の範囲とを矢印10cで示す方向において対向させる。次いで、制御部は、検査対象のヘッド16のノズル16aの1つずつを順番に検査対象にし、発光素子23に検出光を発せさせた状態で、検査対象のノズル16aから微小液滴91を吐出させ、受光素子24によって受けた検出光の光量の変化によって、検査対象のノズル16aから適切に微小液滴91を吐出することができているか否かを判定する。具体的には、制御部は、受光素子24によって受けた検出光の光量が特定の程度以上減少した場合に、液滴検出装置20によって微小液滴91を検出した、すなわち、検査対象のノズル16aから適切に微小液滴91を吐出することができていると判定する。
【0050】
以上に説明したように、液滴検出装置20は、一対の壁部22aの発光素子23側の端部22dで挟まれた端部領域22eにおいて、矢印10aで示す方向において壁部22aと、検出光との間に隙間を形成しないので、隙間が原因となる陰が一対の壁部22aの間の範囲に発生することを抑えることができる。
【0051】
図8は、液滴検出装置20の比較例としての液滴検出装置30の一部の断面図であって、受光素子24側から光幅制限部材25を見た図である。
【0052】
図8に示す液滴検出装置30は、図7に示す液滴検出装置20と比較して、一対の壁部22aの間隔22bが広い。具体的には、液滴検出装置30において、矢印10aで示す方向におけるスリット25aの幅25cは、矢印10aで示す方向における一対の壁部22aの間隔22bより小さい。したがって、一対の壁部22aの間隔22bは、端部領域22eにおいて、矢印10aで示す方向における検出光の幅より広い。すなわち、液滴検出装置30は、端部領域22e(図6参照。)において、矢印10cで示す方向における全範囲で、矢印10aで示す方向において壁部22aと、検出光との間に隙間30aを形成している。
【0053】
図9は、液滴検出装置30における感度のマップの一例を示す図である。
【0054】
図9において、ハッチングで示す範囲は、検出光の光路20a(図4参照。)中において隙間30aが原因となって発生した陰に対応しており、感度が悪く微小液滴91(図2参照。)の検出に使用することができない範囲である。すなわち、液滴検出装置30においては、微小液滴91の検出範囲である一対の壁部22aの間の範囲における微小液滴91の検出の感度の斑が発生している。なお、一対の壁部22aの間の範囲において、感度が悪い範囲が矢印10aで示す方向において中心線30bを軸として対称に発生していない理由は、発光素子23、受光素子24、光幅制限部材25および光幅制限部材26のそれぞれと、一対の壁部22aとの組み立て時における位置と、設計上の位置との誤差などである。
【0055】
図9に示す状況においては、感度が良好な範囲を使用するために、例えば、感度が良好な範囲31または範囲32に微小液滴91を吐出するように矢印10aで示す方向におけるキャリッジ15の位置を制御部によって制御する必要がある。したがって、微小液滴91を検出するためには、矢印10aで示す方向におけるキャリッジ15の位置合わせのために制御部による高精度の制御が必要であるし、矢印10aで示す方向におけるキャリッジ15の位置合わせのための時間が必要である。更に、感度が悪い範囲が経年劣化によって広がるので、ある程度の時間が経過した場合には、感度が良好な範囲を新たに特定するための再調整が必要になる。
【0056】
しかしながら、液滴検出装置20は、図10に示すように、一対の壁部22aの間の範囲に陰が発生することを抑えることができる。
【0057】
図10は、液滴検出装置20における感度のマップの一例を示す図である。
【0058】
図10においては、感度が悪い範囲が存在していない。すなわち、液滴検出装置20においては、微小液滴91(図2参照。)の検出範囲である一対の壁部22aの間の範囲における微小液滴91の検出の感度の斑が発生していない。図10に示す状況においては、一対の壁部22aの間の範囲における何れの範囲を使用しても感度が良好であるので、図9に示す状況と比較して、矢印10aで示す方向におけるキャリッジ15の位置を高精度に制御する必要がない。
【0059】
液滴検出装置20は、一対の壁部22aの間の範囲に陰が発生することを抑えることができるので、レーザーなどの高価な装置を使用する平行化光源を備えなくても、微小液滴91の検出範囲である一対の壁部22aの間の範囲における微小液滴91の検出の感度の斑の発生を抑え、微小液滴91を高精度に検出することができる。したがって、液滴検出装置20と、この液滴検出装置20を備えているインクジェットプリンター10とは、従来より製造コストを抑えることができる。
【0060】
液滴検出装置20は、矢印10cで示す方向における端部領域22eでの検出光の幅を制限するスリット25aが形成されているので、発光素子23から発せられた検出光が受光素子24側に進みながら矢印10cで示す方向に拡散することを抑えることができる。そのため、液滴検出装置20は、発光素子23から発せられた検出光が受光素子24側に進みながら矢印10cで示す方向に拡散してヘッド16などの何らかの部材に反射した後、受光素子24によって受けられることを抑えることができる。したがって、液滴検出装置20は、微小液滴91の検出の感度の斑の発生を抑えることができる。すなわち、液滴検出装置20は、微小液滴91を高精度に検出することができる。
【0061】
液滴検出装置20は、端部領域22eにおける矢印10aで示す方向での検出光の幅が矢印10cで示す方向における全範囲において間隔22bと等しく、端部領域22eにおける矢印10cで示す方向での検出光の幅が矢印10aで示す方向における全範囲において矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bと等しいので、微小液滴91の検出範囲において、矢印10aで示す方向と、矢印10cで示す方向との両方における検出光の光量の斑の発生を抑えることができる。したがって、液滴検出装置20は、微小液滴91の検出の感度の斑の発生を抑えることができる。すなわち、液滴検出装置20は、微小液滴91を高精度に検出することができる。
【0062】
なお、液滴検出装置20は、端部領域22eにおいて、矢印10cで示す方向における少なくとも一部の範囲で、矢印10aで示す方向において壁部22aと、検出光との間に隙間を形成しないという構成である限り、端部領域22eにおける矢印10aで示す方向での検出光の幅が矢印10cで示す方向における全範囲において間隔22bと等しいという構成でなくても良い。また、液滴検出装置20は、端部領域22eにおいて、矢印10cで示す方向における少なくとも一部の範囲で、矢印10aで示す方向において壁部22aと、検出光との間に隙間を形成しないという構成である限り、端部領域22eにおける矢印10cで示す方向での検出光の幅が矢印10aで示す方向における全範囲において矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bと等しいという構成でなくても良い。例えば、液滴検出装置20は、図11(a)に示すように、スリット25aに対して発光素子23が矢印10dで示す方向とは反対方向に偏って配置されていても良い。液滴検出装置20は、図11(a)に示す構成である場合、端部領域22eにおける矢印10aで示す方向での検出光の幅が矢印10cで示す方向における一部において間隔22bと異なっており、端部領域22eにおける矢印10cで示す方向での検出光の幅も矢印10aで示す方向における全範囲において矢印10cで示す方向におけるスリット25aの幅25bと異なっている。
【0063】
また、液滴検出装置20は、端部領域22eにおいて、矢印10cで示す方向における少なくとも一部の範囲で、矢印10aで示す方向において壁部22aと、検出光との間に隙間を形成しないという構成である限り、スリット25aのうち矢印10cで示す方向における端部領域22eでの検出光の幅を制限する2つの部分25fの矢印10cで示す方向における間の幅25bが矢印10aで示す方向における全範囲において等しいという構成でなくても良い。例えば、液滴検出装置20は、図11(b)に示すように、スリット25aの上端25dおよび下端25eの形状が曲がっていても良い。液滴検出装置20は、図11(b)に示す構成である場合、端部領域22eにおける矢印10aで示す方向での検出光の幅が矢印10cで示す方向における一部において間隔22bと異なっている。
【0064】
インクジェットプリンター10は、液滴検出装置20が微小液滴91の検出範囲における微小液滴91の検出の感度の斑の発生を抑えることができるので、ヘッド16のノズル16aの列16bの矢印10bで示す延在方向における液滴検出装置20による微小液滴91の検出範囲を延長することができる。したがって、インクジェットプリンター10は、複数のヘッド16のうち少なくとも2つのヘッド16のノズル16aの列16bの矢印10bで示す方向における位置が互いにずれて配置されているにも関わらず、液滴検出装置20に対してヘッド16を矢印10bで示す方向に移動させなくても、複数のヘッド16の全てのノズル16aに対して微小液滴91を検出することができる。
【0065】
なお、インクジェットプリンター10は、スタガ配列以外の配列によって複数のヘッド16の少なくとも2つの矢印10bで示す方向における位置が互いにずれて配置されていても良い。また、インクジェットプリンター10は、全てのヘッド16の矢印10bで示す方向における位置が等しくても良い。
【符号の説明】
【0066】
10 インクジェットプリンター
10a 矢印(一対の壁部の対向方向を示す矢印)
10b 矢印(検出光の発光方向を示す矢印、光路の延在方向を示す矢印)
10c 矢印(一対の壁部の対向方向と、光路の延在方向との両方に対する直交方向を示す矢印)
10d 矢印(微小液滴の進行方向を示す矢印)
16 ヘッド
16a ノズル
16b 列
16c 幅(複数のヘッドの全体におけるノズルの列の幅)
20 液滴検出装置
20a 光路
22a 壁部
22b 間隔
22c 長さ(光路の延在方向における一対の壁部の長さ)
22d 端部
22e 端部領域(領域)
23 発光素子
24 受光素子
25a スリット
25b 幅(直交方向におけるスリットの幅)
91 微小液滴
図1
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図7
図8
図9
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図11