(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に開示されるシートは、いずれも、屋外で用いられるものではあるが、それぞれ、農業用畝を被覆したり、道路の中央分離帯に敷設されたり、あるいは農業・園芸・庭園用に土壌を覆うものであって、ガーデンデッキ等の屋外構造物が設置されたり、人が頻繁に通行するような建物の周囲に用いられるものではない。
【0006】
また、屋外は床下とは異なり日光が当たるので、雑草が生育する。もし防蟻シートを敷設した地盤から雑草が伸びて防蟻シートを貫通すると、貫通部分からシロアリが這い出してくる。
【0007】
また、屋外は床下とは異なり雨水がかかるので、水はけの良いことが要求される。さもないと、雨天時に防蟻シートが冠水したり、防蟻シートの上に水溜りが残って小動物が湧いたりする。
【0008】
そこで、本発明は、建物の周囲の屋外の使用に適した防蟻・防草シート及び建物の防蟻構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、地盤の表面に敷設される防蟻・防草シートであって、上層及び下層を備え、上層が遮光性及び親水性が付与された不織布を含み、下層が防蟻機能が付与された不織布を含むことを特徴とする防蟻・防草シートである。
【0010】
本発明によれば、防蟻・防草シートの上層及び下層の双方が繊維間の隙間が小さい(狭い)不織布で形成されているので、この防蟻・防草シートを地盤の表面に敷設することにより、防蟻・防草シートの下側の地中にいるシロアリが防蟻・防草シートを通過して地表に出てくるのを抑制することができる。特に、防蟻・防草シートの下層に防蟻機能が付与されており、シロアリがこの下層を食い破ることが回避されるため、シロアリが防蟻・防草シートを突破して地表に出てくるのをより効果的に防止することができる。そのため、例えばガーデンデッキ等の屋外構造物が建物に近接して設置されていたとしても、その屋外構造物の下方の地盤の表面に本発明の防蟻・防草シートを敷設することにより、屋外構造物や屋外構造物で日陰になった建物の基礎の屋外側の面をシロアリが這い上がって建物に侵入するのを防止することができる。
【0011】
その上で、本発明によれば、防蟻・防草シートの上層が光を遮るので、防蟻・防草シートの下では雑草の生育が抑制される。そのため、防蟻・防草シートを敷設した地盤から雑草が伸びて防蟻・防草シートを貫通することが抑制され、貫通部分からシロアリが地表に出てくるのを抑制することができる。また、防蟻・防草シートの上層が水となじみ易いので、水が防蟻・防草シートの上に溜まらずに上層の内部に広がって浸透する。そのため、雨天時に防蟻・防草シートが冠水したり、防蟻・防草シートの上に水溜りが残るのを抑制することができる。
【0012】
本発明の防蟻・防草シートは、好ましくは、上記下層が防蟻薬剤を含有することにより防蟻機能が付与されている。
【0013】
この構成によれば、防蟻・防草シートの下層に含まれる防蟻薬剤によりシロアリが忌避されるので、シロアリが防蟻・防草シートの下層を通り抜けることが防止される。これにより、防蟻・防草シートの下層が確実に防蟻機能を発揮する。
【0014】
本発明の防蟻・防草シートは、好ましくは、上記下層がガラス繊維製の不織布であることにより防蟻機能が付与されている。
【0015】
この構成によれば、シロアリがガラス繊維をかじって壊す(食害する)ことができないので、シロアリが防蟻・防草シートの下層を通り抜けることが防止される。これにより、防蟻・防草シートの下層が確実に防蟻機能を発揮する。
【0016】
本発明の防蟻・防草シートは、好ましくは、上記上層と下層とがニードルパンチ又は接着層により結合されている。
【0017】
この構成によれば、上層の不織布の繊維と下層の不織布の繊維とがニードルパンチで相互に絡み合うことにより、又は上層の不織布と下層の不織布とが接着層で相互に接合されることにより、防蟻・防草シートの上層と下層とが確実に一体化する。
【0018】
また、上記課題を解決するためのものとして、本発明は、建物の防蟻構造であって、建物を支持する基礎と、上記基礎の屋外側の地盤の表面に敷設された上記防蟻・防草シートとを備え、上記防蟻・防草シートが上記基礎の屋外側の面に当接又は所定の範囲内で近接するように敷設されていることを特徴とする建物の防蟻構造である。
【0019】
本発明によれば、建物の基礎の屋外側の面に当接又は近接して上記防蟻・防草シートが敷設されているので、シロアリが防蟻・防草シートを通過して地表に出てくること、ひいては防蟻・防草シートを通過したシロアリが屋外構造物や建物の基礎の屋外側の面を這い上がって建物に侵入することを防止できる。
【0020】
本発明の防蟻構造は、好ましくは、上記基礎の屋外側の面に沿って配設されたデッキ材と、上記デッキ材を下から支持するためにデッキ材と地盤との間に設けられた複数の支持脚とをさらに備え、上記デッキ材により覆われている領域の地盤の表面に上記防蟻・防草シートが敷設されている。
【0021】
この構成によれば、デッキ材の下側の地盤の表面に防蟻・防草シートが敷設されるので、デッキ材で日陰になった建物の基礎の屋外側の面をシロアリが這い上がって建物に侵入するような事態が回避される。また、防蟻・防草シートがデッキ材により覆われて隠されるので、見栄えを特に悪化させることなく防蟻・防草シートを敷設することができる。
【0022】
本発明の防蟻構造は、好ましくは、上記防蟻・防草シートの周縁部に取り付けられ、防蟻・防草シートよりも剛性の高い補強部材と、上記補強部材を地盤に固定する固定部材とをさらに備えている。
【0023】
この構成によれば、防蟻・防草シートが安定して地盤の表面に敷設される。
【0024】
本発明の防蟻構造は、好ましくは、上記防蟻・防草シートと基礎との境界部に防蟻薬剤を含有するコーキング材が供給されている。
【0025】
この構成によれば、防蟻・防草シートと基礎との隙間からシロアリが出てくるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の防蟻・防草シート及び建物の防蟻構造は、防蟻性に加えて防草性及び透水性に優れるため、建物の周囲の屋外の使用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(1)構成
図1は本実施形態に係る建物の防蟻構造の縦断面図、
図2は斜視図、
図3は要部拡大縦断面図である。本実施形態においては、戸建住宅Hの周囲の屋外にガーデンデッキ1が戸建住宅Hに近接して設置されている。ガーデンデッキ1は、複数の支持脚11と、枠部材13を介して支持脚11の上に設けられたデッキ材12とを有する。
【0029】
ガーデンデッキ1が設置された戸建住宅Hの周囲の屋外には、次のような防蟻構造が構築されている。地盤Gの表面に防蟻・防草シート100が敷設されている。防蟻・防草シート100は四角形状であり、その1つの周縁部が戸建住宅Hを支持する基礎Cに所定の範囲内で近接している(
図2において右手前側に基礎Cがある)。すなわち、基礎Cの屋外側の地盤Gの表面に防蟻・防草シート100が基礎Cの屋外側の面に所定の範囲内で近接するように敷設されている。
【0030】
防蟻・防草シート100の上に複数の扁平箱形状のベース部材Kが並べて置かれ、これらのベース部材Kの上にガーデンデッキ1の支持脚11が設置されている。支持脚11は接着剤やボルト等を用いてベース部材Kに固定されている。防蟻・防草シート100の上に防蟻・防草シート100を隠すように砂利Jが敷かれている(
図2は砂利Jの図示を省略してある)。
【0031】
ガーデンデッキ1のデッキ材12は基礎Cの屋外側の面に沿って配設されている。ガーデンデッキ1の複数の支持脚11は上記デッキ材12を下から支持するためにデッキ材12と地盤Gとの間に設けられている。そして、上記デッキ材12により覆われている領域の地盤Gの表面に防蟻・防草シート100が敷設されている。
【0032】
図2に明らかなように、4つの長尺の補強部材141が地盤Gの表面に四角形状に組まれて配置されている(
図1は補強部材141の図示を省略してある)。より詳しくは、ガーデンデッキ1のデッキ材12の輪郭に沿って配置されている。
【0033】
図3に明らかなように、補強部材141は断面形状が扁平なC字状であり、一側部にスリット状の開口を有している。補強部材141は樹脂の押出成型で製作されており、防蟻・防草シート100よりも高い剛性を有している。補強部材141は、上記スリット状の開口に防蟻・防草シート100の周縁部が差し込まれることにより、防蟻・防草シート100の周縁部を補強している。すなわち、防蟻・防草シート100の周縁部に取り付けられた4つの補強部材141はそれぞれ釘142等を用いて地盤Gに固定され、四角形状の防蟻・防草シート100の各周縁部を補強している。補強部材141がデッキ材12の輪郭に沿って配置されているため、防蟻・防草シート100はデッキ材12と略同じ面積を有し、デッキ材12により覆われている必要最小限の領域の地盤Gの表面に敷設されている。
【0034】
図3に明らかなように、最も戸建住宅H寄りの補強部材141は、基礎Cの屋外側の面に当接した状態で基礎Cに沿って延びている。防蟻・防草シート100の1つの周縁部がこの補強部材141に差し込まれているため、防蟻・防草シート100は基礎Cに当接せずに基礎Cに所定の範囲内、具体的には、基礎Cの屋外側の面に当接する上記補強部材141に差し込まれることが可能な範囲内で近接している。
【0035】
図3に明らかなように、防蟻・防草シート100と基礎Cとの境界部に防蟻薬剤を含有するコーキング材151が塗布されている。より詳しくは、基礎Cの屋外側の面に当接する上記補強部材141の上に砂利Jが敷かれ、その砂利Jの上に上記防蟻薬剤入りのコーキング材151が防蟻・防草シート100と基礎Cとの隙間を埋めるように、具体的には、補強部材141と基礎Cとの隙間及び砂利Jと基礎Cとの隙間を埋めるように塗布されている。
【0036】
図4は、上記防蟻構造に用いられる防蟻・防草シート100の構成を示す拡大縦断面図である。本実施形態に係る防蟻・防草シート100は、強度と柔軟性と透水性(親水性)とを維持しつつ、長期間に亘る耐久性(耐候性)と防蟻性(防蟻機能)とを有し、かつ防草性(遮光性)を備えており、戸建住宅Hの周囲の屋外の使用に適したものである。
【0037】
防蟻・防草シート100は上層(地盤Gの表面に敷設されたときに暴露される側の層)101と下層(地盤Gの表面に敷設されたときに地盤Gと接する側の層)102とを備えている。両層101,102とも繊維間の隙間が狭い不織布を基材とし、上層101は遮光性及び親水性が付与され、下層102は防蟻機能が付与されている。上層101と下層102とはニードルパンチにより相互に結合されている。
【0038】
不織布は特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、共重合ポリエステル樹脂等のポリエステル繊維の不織布が使用可能であり、特にこれらのうちではポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく、さらには繊維形態保持性の良好な長繊維不織布がより好ましい。
【0039】
そのようなポリエステル長繊維不織布は、例えば、ポリエステル樹脂の溶融ポリマーを細いノズルから吐出し、吸引延伸し、開繊し、コンベアネットに捕集した後、熱エンボスロールで部分圧接接合することにより得ることができる(スパンボンド法)。
【0040】
繊維の平均径は6μm以上が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の強度が十分大きくなる。また、繊維の平均径は30μm以下が好ましい。これにより、繊維間の隙間が十分狭くなり、防蟻・防草シート100の遮光性が十分大きくなる。
【0041】
上記スパンボンド法における部分圧接接合の面積は不織布全面積の3%以上が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の剛性及び強度が十分大きくなる。また、上記部分圧接接合の面積は不織布全面積の25%以下が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の柔軟性が十分維持される。
【0042】
防蟻・防草シート100の目付け(JIS L 1908)は150g/m
2以上が好ましい。これにより、繊維間の隙間が十分狭くなり、防蟻・防草シート100の遮光性及び強度が十分大きくなる。また、防蟻・防草シート100の目付けは500g/m
2以下が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の柔軟性及び透水性が十分維持される。
【0043】
防蟻・防草シート100の密度(JIS L 1908)は0.2g/cm
3以上が好ましい。これにより、繊維間の隙間が十分狭くなり、防蟻・防草シート100の遮光性及び強度が十分大きくなる。また、防蟻・防草シート100の密度は1.00g/cm
3以下が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の柔軟性及び透水性が十分維持される。
【0044】
防蟻・防草シート100の貫通抵抗力(JIS L 1096)は1.0kg以上が好ましい。これにより、地盤Gから伸びた雑草が防蟻・防草シート100を貫通することを十分阻止することができる。なお、防蟻・防草シート100の貫通抵抗力の上限は5.0kgで十分である。
【0045】
防蟻・防草シート100の透水係数(JIS A 1218)は1.0×10
−3cm/sec以上が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の透水性が十分維持される。なお、防蟻・防草シート100の透水係数の上限は1.0×10
−1cm/secで十分である。
【0046】
防蟻・防草シート100の遮光率(JIS L 1913)は95%以上が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の防草性(遮光性)が十分大きくなる。なお、防蟻・防草シート100の遮光率の上限は100%(つまり上限なし)が好ましい。
【0047】
防蟻・防草シート100の耐久性(耐候性)は10年以上が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100をガーデンデッキ1が設置された戸建住宅Hの周囲の屋外で十分長期間に亘って使用することができる。
【0048】
防蟻・防草シート100の防蟻性は10年以上が好ましい。これにより、ガーデンデッキ1やガーデンデッキ1で日陰になった基礎Cの屋外側の面をシロアリが這い上がって戸建住宅Hに侵入することを十分長期間に亘って防ぐことができる。なお、防蟻性の試験規格は、(一社)日本木材保存協会(JWPA)の「JWPAS−TS−(1)」による。
【0049】
加えて、防蟻・防草シート100の厚みは0.2mm以上が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の強度が十分大きくなる。そのため、防蟻・防草シート100をガーデンデッキ1が設置された戸建住宅Hの周囲の屋外で十分長期間に亘って使用することができる。また、防蟻・防草シート100の厚みは2.0mm以下が好ましい。これにより、防蟻・防草シート100の柔軟性が十分維持される。
【0050】
防蟻・防草シート100の上層101に遮光性を付与する方法としては、例えばカーボンブラック等の遮光性に富む黒色系顔料を上記スパンボンド法における溶融ポリマーに混合しておく方法や、得られた不織布に含浸、コーティング、化学的又は物理的に吸着する方法等が挙げられる。
【0051】
防蟻・防草シート100の上層101に親水性を付与する方法としては、例えば親水加工剤を上記スパンボンド法における溶融ポリマーに混合しておく方法や、得られた不織布に含浸、コーティング、化学的又は物理的に吸着する方法等が挙げられる。
【0052】
親水加工剤としては、例えば、ポリエステル系、ポリエチレングリコール系、ポリアルキレングライコール系、ポリエチレンテレフタレート系、ウレタンプレポリマー系、水溶性シリコーン系、カチオン系、オキシエチル系、リン酸エステル系、アルキルサルフエート系、アルキルホスフエート系等の親水加工剤が使用可能である。また、ポリエチレングリコールとポリエステルとの共重合物、アクリル酸又はメタクリル酸共重合体と架橋樹脂とによる親水加工剤、第4級アンモニウム塩型親水加工剤、ポリアルキレンオキサイド鎖型共重合親水加工剤等も使用可能であり、さらには、非イオン系、ノニオン系、脂肪酸多価アルコールエステル系、高級アルコール等の界面活性剤も使用可能である。
【0053】
防蟻・防草シート100の下層102に防蟻機能を付与する方法としては、例えば防蟻薬剤を上記スパンボンド法における溶融ポリマーに混合しておく方法や、得られた不織布に含浸、コーティング、化学的又は物理的に吸着する方法等が挙げられる。
【0054】
防蟻薬剤としては、例えば、ピレスロイド様薬剤(シラフルオフェン、エトフェンプロックス等)、ピレスロイド系薬剤(シフルトリン、ビフェントリン、サイパーメストン、デルタメスリン、パーメスリン、ペルメスリン、アレスリン、トラロメスリン等)、カーバメイト系薬剤(プロボクスル、フェノブカルブ、セビン等)、クロルニコチル系薬剤(イミダクロプリド、アセタプリド、クロチアニシン等)、ニトロガニリン系薬剤(ジノテフラン等)、有機リン系殺虫剤(ホキシム、テトラクロクピンホス、フェニトロチオン、プロベタンホス等)、ピラゾール系薬剤(フィブロニル等)、クロルフェノール系薬剤(4−ブロモ−2,5−ジクロルフェノール(BDCP)等)、フェニルピロール系薬剤(クロルフェナビル等)、フィプロニル系薬剤(フィプロニル、エチプロール等)の他、ヒバ油、ウコン、カプリン酸、ヤシ油、パーム油等が使用可能である。これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
加えて、防蟻・防草シート100の上層101及び下層102の少なくともいずれか一方に耐久性(耐候性)を付与してもよい。その方法としては、例えば耐久性(耐候性)を付与し得る物質を上記スパンボンド法における溶融ポリマーに混合しておく方法や、得られた不織布に含浸、コーティング、化学的又は物理的に吸着する方法等が挙げられる。
【0056】
耐久性(耐候性)を付与し得る物質としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、リン系等の酸化防止剤等が使用可能である。これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
防蟻・防草シート100の上層101と下層102とは、上下に重ねた状態で、表面にバーブ(微小突起)が形成された針を突き刺して引き抜くこと(ニードルパンチ)により、両層101,102の不織布の繊維同士が絡み合って相互に結合されている。
【0058】
(2)作用
以上のように、本実施形態に係る防蟻・防草シート100は、地盤Gの表面に敷設される防蟻・防草シート100であって、上層101及び下層102を備え、上層101が遮光性及び親水性が付与された不織布を含み、下層102が防蟻機能が付与された不織布を含んでいる。
【0059】
また、本実施形態に係る防蟻構造は、戸建住宅Hの防蟻構造であって、戸建住宅Hを支持する基礎Cと、上記基礎Cの屋外側の地盤Gの表面に敷設された上記防蟻・防草シート100とを備え、上記防蟻・防草シート100が上記基礎Cの屋外側の面に所定の範囲内で近接するように敷設されている。特に、上記基礎Cの屋外側の面に沿って配設されたデッキ材12と、上記デッキ材12を下から支持するためにデッキ材12と地盤Gとの間に設けられた複数の支持脚11とが備えられ、上記デッキ材12により覆われている領域の地盤Gの表面に上記防蟻・防草シート100が敷設されている。
【0060】
本実施形態によれば、防蟻・防草シート100の上層101及び下層102の双方が繊維間の隙間が狭い不織布で形成されているので、この防蟻・防草シート100を地盤Gの表面に敷設することにより、防蟻・防草シート100の下側の地中にいるシロアリが防蟻・防草シート100を通過して地表に出てくるのを抑制することができる。特に、防蟻・防草シート100の下層102に防蟻機能が付与されており、シロアリがこの下層102を食い破ることが回避されるため、シロアリが防蟻・防草シート100を突破して地表に出てくるのをより効果的に防止することができる。そのため、たとえガーデンデッキ1が戸建住宅Hに近接して設置されていても、ガーデンデッキ1の下方の地盤G(言い換えるとデッキ材12の下側の地盤)の表面に本実施形態に係る防蟻・防草シート100を敷設することにより、シロアリが防蟻・防草シート100を通過して地表に出てくること、ひいては防蟻・防草シート100を通過したシロアリがガーデンデッキ1(詳しくはその支持脚11)を這い上がって、あるいはガーデンデッキ1(詳しくはそのデッキ材12)で日陰になった戸建住宅Hの基礎Cの屋外側の面を這い上がって、戸建住宅Hに侵入することを防止できる。
【0061】
その上で、防蟻・防草シート100の上層101が光を遮るので、防蟻・防草シート100の下では雑草の生育が抑制される。そのため、防蟻・防草シート100を敷設した地盤Gから雑草が伸びて防蟻・防草シート100を貫通することが抑制され、貫通部分からシロアリが地表に出てくるのを抑制することができる。また、防蟻・防草シート100の上層101が水となじみ易いので、水が防蟻・防草シート100の上に溜まらずに上層101の内部に広がって浸透する。そのため、雨天時に防蟻・防草シート100が冠水したり、防蟻・防草シート100の上に水溜りが残るのを抑制することができる。
【0062】
以上により、本実施形態によれば、戸建住宅Hの周囲の屋外の使用に好適な防蟻・防草シート100及び防蟻構造が提供される。
【0063】
しかも、防蟻・防草シート100がデッキ材12により覆われて隠されるので、見栄えを特に悪化させることなく防蟻・防草シート100を敷設することができる。
【0064】
本実施形態では、防蟻・防草シート100は、下層102が防蟻薬剤を含有することにより防蟻機能が付与されている。この構成によれば、防蟻・防草シート100の下層102に含まれる防蟻薬剤によりシロアリが忌避されるので、シロアリが防蟻・防草シート100の下層102を通り抜けることが防止される。これにより、防蟻・防草シート100の下層102が確実に防蟻機能を発揮する。
【0065】
本実施形態では、防蟻・防草シート100は、上層101と下層102とがニードルパンチにより相互に結合されている。この構成によれば、上層101の不織布の繊維と下層102の不織布の繊維とがニードルパンチで相互に絡み合うことにより、防蟻・防草シート100の上層101と下層102とが確実に一体化する。
【0066】
本実施形態では、防蟻・防草シート100の周縁部に取り付けられ、防蟻・防草シート100よりも剛性の高い補強部材141と、補強部材141を地盤Gに固定する釘142とがさらに備えられている。この構成によれば、防蟻・防草シート100が安定して地盤Gの表面に敷設される。
【0067】
本実施形態では、防蟻・防草シート100と基礎Cとの境界部に防蟻薬剤を含有するコーキング材151が供給されている。この構成によれば、防蟻・防草シート100と基礎Cとの隙間からシロアリが出てくるのを防ぐことができる。
【0068】
(3)変形例等
上記実施形態では、戸建住宅Hの周囲の屋外に設置される屋外構造物は、ガーデンデッキ1であったが、これに限らず、例えば、ガーデンテーブル、ガーデンチェア、物置等であってもよい。
【0069】
上記実施形態では、4つの補強部材141が四角形状に組まれていたが、これに限らず、例えば、少なくとも最も戸建住宅H寄りの補強部材141を省略することにより、防蟻・防草シート100を基礎Cの屋外側の面に当接させてもよい。これによっても、防蟻・防草シート100と基礎Cとの隙間からシロアリが出てくるのを確実に防ぐことができる。
【0070】
上記実施形態では、補強部材141がデッキ材12の輪郭に沿って配置され、防蟻・防草シート100はデッキ材12により覆われる必要最小限の領域の地盤Gを覆っていたが、これに限らず、防蟻・防草シート100はデッキ材12の面積をはみ出して敷設されても構わない。
【0071】
上記実施形態では、防蟻・防草シート100の上に砂利Jが敷かれて防蟻・防草シート100を隠していたが、必ずしも、砂利Jは敷く必要はない。
【0072】
上記実施形態では、防蟻・防草シート100は、
図4に示すような構成であったが、これに代えて、
図5に示すような構成であってもよい。すなわち、防蟻・防草シート200は上層201と下層202とを備えている。両層201,202とも繊維間の隙間が狭い不織布を基材とし、上層201は遮光性、親水性、及び耐久性(耐候性)が付与され、下層202はガラス繊維製の不織布であることにより防蟻機能が付与されている。上層201と下層202とは接着層203により相互に結合されている。
【0073】
この構成によれば、シロアリがガラス繊維をかじって壊す(食害する)ことができないので、シロアリが防蟻・防草シート200の下層202を通り抜けることが防止される。これにより、防蟻・防草シート200の下層202が確実に防蟻機能を発揮する。また、上層201の不織布と下層202の不織布とが接着層203で相互に接合されることにより、防蟻・防草シート200の上層201と下層202とが確実に一体化する。
【0074】
この場合、接着層203は、例えばホットメルト型接着剤が使用可能である。接着層203は、基本的には、防蟻薬剤を含有してもしなくてもどちらでもよい。しかし、この例では、防蟻・防草シート200の下層202は防蟻薬剤を使用せずに防蟻機能が付与されているので(ノンケミタイプ)、これと同様に、接着層203もまたノンケミタイプ、すなわち防蟻薬剤を含有しないほうがより好ましい。
【0075】
また、上記実施形態において、基礎Cの屋外側の面及びガーデンデッキ1の支持脚11の周面の少なくともいずれか一方に庇のように外方へ張り出す蟻返しを設けてもよい。
【0076】
また、防蟻・防草シート100,200において、上層101,201にも防蟻機能を付与してもよく、下層102,202にも遮光性や親水性を付与してもよい。
【0077】
また、防蟻・防草シート100,200を床下防蟻構造に使用しても構わない。
【0078】
なお、参考として、上層及び下層を備え、上層が遮光性、親水性、及び耐久性(耐候性)が付与された不織布を含み、下層が何も機能が付与されていない不織布を含み、両層を結合する接着層(例えばホットメルト型接着剤)に防蟻薬剤が含有された防蟻・防草シートも屋外用防蟻・防草シートとして提案することができる。
【0079】
また、同じく参考として、遮光性、親水性、及び耐久性(耐候性)が付与された不織布の一層のみで構成され、下面(地盤の表面に敷設されたときに地盤と接する側の面)に防蟻薬剤を含浸させた防蟻・防草シートも屋外用防蟻・防草シートとして提案することができる。
【0080】
上記各実施形態で記述された種々の数値や材質や形状等はあくまでも例示であり、それらに限定されないことはいうまでもない。