特許第6356104号(P6356104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6356104ラジアルピストン式油圧機械及び風力発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356104
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ラジアルピストン式油圧機械及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/04 20060101AFI20180702BHJP
   F04B 9/04 20060101ALI20180702BHJP
   F03C 1/04 20060101ALI20180702BHJP
   F03D 9/28 20160101ALI20180702BHJP
【FI】
   F04B1/04
   F04B9/04
   F03C1/04
   F03D9/28
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-179015(P2015-179015)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-53291(P2017-53291A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】林 慎之
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 良実
(72)【発明者】
【氏名】内田 満哉
(72)【発明者】
【氏名】落合 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】上原 修
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 真也
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−522175(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0060685(US,A1)
【文献】 特開2009−293397(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0298988(US,A1)
【文献】 特開平04−219469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/04
F04B 9/04
F03C 1/04
F03D 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルピストン式の油圧機械であって、
前記油圧機械の半径方向に沿って配置された複数のピストンと、
前記複数のピストンをそれぞれ案内する複数のシリンダと、
前記複数のピストンのそれぞれに回転自在に設けられた複数のローラと、
前記複数のローラに当接するように構成され、前記油圧機械の中心軸周りに回転可能に構成されたカムと、
前記カムを含んで該カムとともに前記中心軸周りに回転する前記油圧機械の回転部に取り付けられ、前記カム側から前記ピストン側に前記半径方向に沿って延びる側板と、を備え、
前記ローラ又は前記側板の一方は、前記ローラの端面又は該端面に対向する前記側板の表面の何れか一方の面を形成する樹脂部を含み、
前記ローラ又は前記側板の他方は、前記ローラの前記端面又は前記側板の前記表面の他方の面を形成する金属部を含み、
前記金属部は、
該金属部によって形成される前記他方の面と前記樹脂部によって形成される前記一方の面との間の前記ローラの軸方向に沿った距離が最小となる第1領域と、
該第1領域に比べて前記距離が大きく、且つ、前記第1領域の縁部を形成する第2領域と、
を含み、
前記金属部の前記縁部を形成する前記第2領域は0.8μmRa以下の表面粗さを有することを特徴とするラジアルピストン式油圧機械。
【請求項2】
前記第2領域の表面粗さが、0.4μmRa以下であることを特徴とする請求項1に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項3】
前記第2領域の表面粗さが、0.2μmRa以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項4】
前記側板は、該側板の前記表面を形成する前記樹脂部を有し、
前記ローラは、前記ローラの前記端面を形成する前記金属部を有し、
前記金属部は、前記ローラの前記軸方向に直交する前記第1領域としての円形平坦面と、該円形平坦面の外周縁を形成する前記第2領域としての断面湾曲面と、を含み、
前記断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有する請求項1乃至3の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項5】
前記ローラは、前記ローラの前記端面を形成する前記樹脂部を有し、
前記側板は、該側板の前記表面を形成する前記金属部を有し、
前記金属部は、前記カムの軸方向に直交する前記第1領域としての平坦面と、該平坦面の前記縁部を形成する前記第2領域としての断面湾曲面と、を含み、
前記断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有する請求項1乃至3の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項6】
前記樹脂部は、PEEK、PPS、PA、POM、PTFEの少なくとも一つを含む耐摩耗性樹脂により形成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項7】
前記ピストンの各々は、該ピストンと前記シリンダとで形成される油圧室の圧力の高圧と低圧との間の周期的な変化に対応して往復動するように構成され、
前記カムは、前記油圧室の前記圧力が前記高圧になるときに前記ローラが接するワーキング面と、前記油圧室の前記圧力が前記低圧になるときに前記ローラが接するブリージング面と、を有し、
前記側板は、少なくとも前記ワーキング面に対応する前記油圧機械の周方向範囲において、前記カムの表面と、該カムの表面から前記ローラの半径だけ離れた曲線とで囲まれる領域内においてのみ、前記ローラの端面と当接するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項8】
前記側板は、
前記カムの端面に締結される基端部、および、前記カムから前記ピストン側に前記半径方向に突出する先端部を有する側板本体と、
前記側板本体の前記先端部に設けられた当接部と、
を含み、
前記当接部が、前記ローラの前記端面のうち前記ローラの回転中心よりも前記カム側の前記領域内で前記ローラの前記端面に当接するように構成されたことを特徴とする請求項7に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項9】
前記側板は、前記ローラが転動する前記カムのカム面からの前記半径方向の距離が、前記ローラの直径の30%以内となる位置で前記ローラの前記端面と当接するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項10】
前記側板は、前記カムの端面に対してボルト結合されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項11】
前記カム及び前記側板は、それぞれ、前記中心軸の周方向において複数のセクションに分割されており、前記側板のセクション数は、前記カムのセクション数以下であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項12】
前記カムは、前記中心軸の方向に少なくとも2列設けられており、
前記ピストン及び前記ローラが、前記カムの列に対応して配列されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項13】
前記複数のピストンをそれぞれ案内するための複数のシリンダが形成されたシリンダブロックと、
前記油圧機械の両端部において、前記シリンダブロックを含む前記油圧機械の静止部と前記油圧機械の前記回転部との間に設けられ、前記静止部に前記回転部を回転自在に支持する一対のテーパ軸受と、
前記一対のテーパ軸受の少なくとも一方のテーパ軸受に対して、前記油圧機械の中央に向かう方向にプリロードを付与するための予圧部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項14】
前記プリロードは、前記ローラから前記側板に加わる前記ローラの軸方向のスラスト力以上の大きさであることを特徴とする請求項13に記載のラジアルピストン式油圧機械。
【請求項15】
少なくとも一本のブレードを含む風車ロータと、
前記風車ロータに連結される回転シャフトと、
前記回転シャフトによって駆動されて圧油を生成するように構成された油圧ポンプと、
前記圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備え、
前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方は、請求項1乃至14の何れか一項に記載のラジアルピストン式油圧機械であることを特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射状に配列された複数のピストンを有するラジアルピストン式油圧機械及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジアルピストン式油圧機械として、放射状に配列された複数のピストンと、各ピストンの往復運動をガイドする複数のシリンダと、各ピストンに取り付けられたローラと、ピストン及びシリンダに対して相対的に回転するように構成されたカムと、を備えた構成が知られている。このラジアルピストン式油圧機械においては、カムのカム面上をローラが転動するようになっており、ローラと共にシリンダに沿って往復するピストンの往復運動と、カムの回転運動との間で運動モードが変換されるようになっている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
ラジアルピストン式油圧機械のような回転機械においては、例えば転がり接触や滑り接触のように、回転時に動的に接触する接触面の摩耗が回転機械の寿命に与える影響が大きい。そのため、特許文献1に記載されるラジアルピストン式油圧機械では、カム面の潤滑性を向上させ、カム面とローラ外周面との接触状態を良好に維持することによって長寿命化を図っている。
【0004】
ところで、カム面を転動するローラは、カムから受けるサイドフォース等の様々な要因により軸方向に変位することがある。例えば、製造上の公差等によってローラの円筒度が低い場合、ローラの両端部の間で周速差が生じて、ローラがピストンとともにシリンダの軸回りに回動(スキュー)する。ローラがスキューした状態でカム面から力を受けると、ローラにスラスト方向の荷重(以下、スラスト力という)が発生し、ローラはスラスト方向(ローラの幅方向)に横滑りしてローラの軸方向変位が発生し、ラジアルピストン式油圧機械の円滑な運転を阻害するおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献2では、ローラの軸方向変位を抑制する観点から、カム面の両側に一対の側板を設けて、ローラの軸方向変位を一対の側板間に規制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−214683号公報
【特許文献2】英国特許出願公開第2484890号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のようにローラの軸方向変位を規制するためにカム面の両側に側板を設けた場合、ラジアルピストン式油圧機械の運転時にローラ端面と側板とが接触して摩耗し、この油圧機械の寿命が低下してしまう可能性がある。すなわち、側板はカムとともに油圧機械の中心軸周りに回転する一方で、ローラはローラの回転中心周りに回転するので、側板とローラ端面との進行方向は完全には一致せず、側板とローラの端面との間の摺動(摩擦)が起きてしまう。
【0008】
この点、特許文献2には、ローラ端面と側板との接触による摩耗を改善するための構成については記載されていない。
また、特許文献1では、ローラの外周面とカム面との摩耗は改善されるものの、そもそも側板を備えていないため、ローラ端面と側板との接触による摩耗対策については何ら開示されていない。
【0009】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、上述の事情に鑑み、運転時におけるローラと側板との接触による摩耗に起因したラジアルピストン式油圧機械の寿命低下を抑制し得るラジアルピストン式油圧機械及び風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るラジアルピストン式油圧機械は、
ラジアルピストン式の油圧機械であって、
前記油圧機械の半径方向に沿って配置された複数のピストンと、
前記複数のピストンをそれぞれ案内する複数のシリンダと、
前記複数のピストンのそれぞれに回転自在に設けられた複数のローラと、
前記複数のローラに当接するように構成され、前記油圧機械の中心軸周りに回転可能に構成されたカムと、
前記カムを含んで該カムとともに前記中心軸周りに回転する前記油圧機械の回転部に取り付けられ、前記カム側から前記ピストン側に前記半径方向に沿って延びる側板と、を備え、
前記ローラ又は前記側板の一方は、前記ローラの端面又は該端面に対向する前記側板の表面の何れか一方の面を形成する樹脂部を含み、
前記ローラ又は前記側板の他方は、前記ローラの前記端面又は前記側板の前記表面の他方の面を形成する金属部を含み、
前記金属部は、
該金属部によって形成される前記他方の面と前記樹脂部によって形成される前記一方の面との間の前記ローラの軸方向に沿った距離が最小となる第1領域と、
該第1領域に比べて前記距離が大きく、且つ、前記第1領域の縁部を形成する第2領域と、
を含み、
前記金属部の前記縁部を形成する前記第2領域は0.8μmRa以下の表面粗さを有する。
なお、本明細書において「表面粗さ」とは、算術表面粗さ(JIS B 0601)であってもよい。
【0011】
上記(1)のラジアルピストン式油圧機械によれば、ローラ又は側板の一方は、ローラの端面(以下、適宜「ローラ端面」と称する)又は該端面に対向する側板の表面(以下、適宜「側板表面」と称する)の何れか一方の面を形成する樹脂部を含む。また、ローラ又は側板の他方は、ローラ端面又は側板表面の他方の面を形成する金属部を含む。このため、ラジアルピストン式油圧機械の運転時、ローラと側板との接触が、金属部と樹脂部との接触となるので、これらの接触面の境界に発生する最大面圧が金属同士の接触に比べて低減し、摩耗を抑制することができる。
また、上記(1)の構成において、金属部は、該金属部によって形成される前記他方の面と樹脂部によって形成される前記一方の面との間のローラの軸方向に沿った距離が最小となる第1領域と、該第1領域に比べて前記距離が大きく、且つ、第1領域の縁部を形成する第2領域と、を含む。この構成により、ラジアルピストン式油圧機械の停止時には、第1領域において金属部と樹脂部が接触した状態であっても、上記スラスト力がないので第2領域においては金属部と樹脂部が非接触となる。
しかしながら、本願発明者らによる鋭意検討の結果、上記したようにローラがピストンとともにシリンダの軸回りに回動(スキュー)することによりローラ端面又は側板表面の何れか一方の面が樹脂部で形成されている場合、ラジアルピストン式油圧機械の運転時に金属部との接触によって樹脂部が変形することが明らかとなった。上記スラスト力により、ラジアルピストン式油圧機械の停止時には接触しない第2領域においても金属部と樹脂部が接触する部分の増加を招き、また、第2領域で接触する部分での面圧も大きくなり接触面に摩耗が発生し得る。
そこで、上記(1)の構成では、金属部の前記縁部を形成する第2領域は0.8μmRa以下の表面粗さを有するようにしている。
これにより、ラジアルピストン式油圧機械の運転時に上記スラスト力を受けた場合であっても、前記縁部における金属部と樹脂部との接触面の摩耗を抑制することができる。
このように、ラジアルピストン式油圧機械の運転時における上記スラスト力も考慮した摩耗抑制対策を講じることによって、ローラと側板との接触による摩耗に起因したラジアルピストン式油圧機械の寿命低下を確実に抑制することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第2領域の表面粗さが、0.4μmRa以下である。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記第2領域の表面粗さが、0.2μmRa以下である。
【0013】
上記(2)又は(3)の構成によれば、ラジアルピストン式油圧機械の運転時における上記スラスト力によって第2領域において金属部と樹脂部とが接触した場合であってもこれらの接触面の摩耗をより効果的に抑制できる。
【0014】
(4)一実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記側板は、該側板の前記表面を形成する前記樹脂部を有し、
前記ローラは、前記ローラの前記端面を形成する前記金属部を有し、
前記金属部は、前記ローラの前記軸方向に直交する前記第1領域としての円形平坦面と、該円形平坦面の外周縁を形成する前記第2領域としての断面湾曲面と、を含み、
前記断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有する。
【0015】
上記(4)の構成によれば、側板表面が樹脂部で形成され、ローラ端面が金属部で形成されているので、樹脂部の取付けが容易となる。すなわち、例えば多数のローラ(ピストン)が設けられている場合であっても、樹脂部は多数のローラと係合するカムを含む回転部に設けられた側板に対して設置すればよいから、樹脂部の取付け作業を簡素化できる。
また、金属部は、ローラの軸方向に直交する第1領域としての円形平坦面と、該円形平坦面の外周縁を形成する第2領域としての断面湾曲面と、を含む。このように、ローラ端面の外周縁が断面湾曲面で形成されているので、シリンダの軸回りに回動(スキュー)する場合も滑らかな接触とすることができ、さらに、ローラ端面の外周縁の断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有することから、シリンダの軸回りの回動(スキュー)に起因したスラストによりローラの第2領域に対応した樹脂部の変形や面圧増加が生じて、ローラ端面の外周縁の断面湾曲面(金属部)と樹脂部(側板)とが接触した場合であっても、樹脂部と金属部の接触面の摩耗を確実に抑制できる。
【0016】
(5)他の実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記ローラは、前記ローラの前記端面を形成する前記樹脂部を有し、
前記側板は、該側板の前記表面を形成する前記金属部を有し、
前記金属部は、前記カムの軸方向に直交する前記第1領域としての平坦面と、該平坦面の前記縁部を形成する前記第2領域としての断面湾曲面と、を含み、
前記断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有する。
【0017】
上記(5)の構成では、側板表面が金属部で形成され、ローラ端面が樹脂部で形成されている。この構成によれば、金属部との接触により樹脂部が摩耗したとき、複数のローラのうち摩耗したローラ端面を有するローラの樹脂部のみを交換することもでき、メンテナンスが容易となる。
また、金属部は、例えば、カムの軸方向に直交する第1領域としての側板の平坦面と、セクションに分割されたカム間の分割部分に対応した側板の該平坦面の間に存在する前記縁部を形成する第2領域として、また、カムから前記ピストン側に前記半径方向に突出する側板先端部に形成する第2領域として、などの断面湾曲面と、を含む。これにより、ラジアルピストン式油圧機械の運転時、金属部の縁部によって樹脂部が摩耗することを抑制できる。さらに、側板表面の縁部の断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有することから、金属部(断面湾曲面)と樹脂部との接触面の摩耗を確実に抑制できる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記樹脂部は、PEEK、PPS、PA、POM、PTFEの少なくとも一つを含む耐摩耗性樹脂により形成される。
【0019】
上記(6)の構成によれば、耐摩耗性に優れた上記樹脂材料を用いることによって、樹脂部の摩耗をより効果的に抑制することができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記ピストンの各々は、該ピストンと前記シリンダとで形成される油圧室の圧力の高圧と低圧との間の周期的な変化に対応して往復動するように構成され、
前記カムは、前記油圧室の前記圧力が前記高圧になるときに前記ローラが接するワーキング面と、前記油圧室の前記圧力が前記低圧になるときに前記ローラが接するブリージング面と、を有し、
前記側板は、少なくとも前記ワーキング面に対応する前記油圧機械の周方向範囲において、前記カムの表面と、該カムの表面から前記ローラの半径だけ離れた曲線とで囲まれる領域内においてのみ、前記ローラの端面と当接するように構成される。
【0021】
一般的に、ラジアルピストン式油圧機械では、ローラのスキューによりローラにスラスト方向の荷重(以下、スラスト力という)が発生することがある。このスラスト力は、通常、カムのブリージング面よりもワーキング面において大きくなる。そこで、上記(7)の構成では、少なくともワーキング面に対応する油圧機械の周方向範囲において、側板が、カムの表面と、該カムの表面からローラの半径だけ離れた曲線とで囲まれる領域内においてのみ、ローラの端面と当接するように構成している。これにより、カム面と前記曲線とで囲まれる領域よりもピストン側でローラ端面と側板表面とが接触する場合に比べて、側板取付け部を中心として側板に作用するモーメントを小さくすることができる。よって、ローラのスラスト力に起因した側板の損傷の抑制及び側板の耐久性の向上が図れる。
【0022】
(8)一実施形態では、上記(7)の構成において、
前記側板は、
前記カムの端面に締結される基端部、および、前記カムから前記ピストン側に前記半径方向に突出する先端部を有する側板本体と、
前記側板本体の前記先端部に設けられた当接部と、
を含み、
前記当接部が、前記ローラの前記端面のうち前記ローラの回転中心よりも前記カム側の前記領域内で前記ローラの前記端面に当接するように構成される。
【0023】
上記(8)の構成によれば、ローラに当接するカムの端面に側板本体の基端部を取り付けることで、ローラ端面からのスラスト力を受ける側板の部位に側板取付け部を近づけることができ、側板に作用する側板取付け部を中心としたモーメントをより一層小さくすることができる。
また、側板が基端部によってカムの端面に締結されていることにより、側板の締結構造を簡素化できる。また、カムと側板とをアセンブリ化することも可能であるため、カム及び側板の組立性の向上が図れる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記側板は、前記ローラが転動する前記カムのカム面からの前記半径方向の距離が、前記ローラの直径の30%以内となる位置で前記ローラの前記端面と当接するように構成される。
【0025】
上記(9)の構成によれば、側板に作用するモーメントを抑制することができ、側板の耐久性を向上できる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、
前記側板は、前記カムの端面に対してボルト結合されている。
【0027】
上記(10)の構成によれば、側板をカムに対して容易に取り付けることが可能となる。また、側板を交換可能な構成とすることもできる。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの構成において、
前記カム及び前記側板は、それぞれ、前記中心軸の周方向において複数のセクションに分割されており、前記側板のセクション数は、前記カムのセクション数以下である。
【0029】
上記(11)の構成によれば、カム及び側板を分割構造とすることによって、カム及び側板の製造性を向上できる。また、カムは、製造上の取り扱い性の観点から分割するセクション数が決定されることが多いが、側板はセクション数に対する要求は低く、分割構造の設計自由度は高い。そのため、側板のセクション数をカムのセクション数以下とすることで、油圧機械の組み立て時、一つのカム、又は複数のカムを互いに組み付けたカムアセンブリに対して側板を取付ければよく、カム及び側板の組立性の向上が図れる。
【0030】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかの構成において、
前記カムは、前記中心軸の方向に少なくとも2列設けられており、
前記ピストン及び前記ローラが、前記カムの列に対応して配列されている。
【0031】
上記(12)の構成によれば、ピストン数が同一である場合、カム並びにこれに対応するピストン及びローラの列が多いほど一列あたりのピストン数が少なくなるので、カムの直径を小さくできる。よって、油圧機械をその半径方向にコンパクト化することができる。また、カムの複数の列において周方向のカムの位相を互いに異ならせれば、駆動時の油圧機械の振動を低減できる。
【0032】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れかの構成において、
前記複数のピストンをそれぞれ案内するための複数のシリンダが形成されたシリンダブロックと、
前記油圧機械の両端部において、前記シリンダブロックを含む前記油圧機械の静止部と前記油圧機械の前記回転部との間に設けられ、前記静止部に前記回転部を回転自在に支持する一対のテーパ軸受と、
前記一対のテーパ軸受の少なくとも一方のテーパ軸受に対して、前記油圧機械の中央に向かう方向にプリロードを付与するための予圧部と、をさらに備える。
【0033】
上記(13)の構成を有する一対のテーパ軸受は、主に、静止部に対して回転部を回転自在に支持する機能を有する。その際、一対のテーパ軸受の少なくとも一方のテーパ軸受に対してプリロードを付与することによって、回転部と静止部との相対位置を適正に維持できる。
【0034】
(14)一実施形態では、上記(13)の構成において、
前記プリロードは、前記ローラから前記側板に加わる前記ローラの軸方向のスラスト力以上の大きさである。
【0035】
上記(14)の構成によれば、回転部と静止部との間のガタつきを防止できるとともに、ローラのスキューに起因したローラのスラスト力によって、回転部と静止部との相対位置がずれることを防止できる。
【0036】
(15)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風力発電装置は、
少なくとも一本のブレードを含む風車ロータと、
前記風車ロータに連結される回転シャフトと、
前記回転シャフトによって駆動されて圧油を生成するように構成された油圧ポンプと、
前記圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備え、
前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方は、上記(1)乃至(14)の何れかに記載のラジアルピストン式油圧機械である。
【0037】
上記(15)の風力発電装置によれば、油圧ポンプ又は油圧モータの少なくとも一方を上記ラジアルピストン式油圧機械で構成しているので、部品の摩耗を抑制することができ、油圧ポンプ又は油圧モータの少なくとも一方を円滑に作動できる。また、油圧ポンプ又は油圧モータの少なくとも一方の耐久性向上に寄与し、風力発電装置の円滑な運転が可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、ラジアルピストン式油圧機械の運転時における樹脂部の変形も考慮した摩耗抑制対策を講じることによって、ローラと側板との接触による摩耗に起因したラジアルピストン式油圧機械の寿命低下を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】一実施形態に係る風力発電装置を示す図である。
図2】一実施形態に係るラジアルピストン式油圧機械の概略断面図である。
図3】一実施形態におけるカム及びローラとその周辺構造を示す側面図である。
図4】一実施形態におけるカム及びカム面に当接した状態で配列された複数のピストンを示す斜視図である。
図5図2に示したラジアルピストン式油圧機械の部分拡大図である。
図6】一実施形態におけるカム及びローラの部分拡大図(図5のF部拡大図)である。
図7】他の実施形態におけるカム及びローラの部分拡大図である。
図8】一実施形態における側板を説明するための図である。
図9A】一実施形態における側板の構成を示す側面図である。
図9B図9Aに示す側板のA−A線断面図である。
図10】他の実施形態における側板の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面に従って本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0041】
最初に、図1を例示しながら、幾つかの実施形態に係る風力発電装置1の全体構成について説明する。なお、図1は、一実施形態に係る風力発電装置1を示す図である。
幾つかの実施形態において、風力発電装置1は、例えば図1に示すように、少なくとも一本のブレード2を含む風車ロータ3と、風車ロータ3に連結される回転シャフト6と、を備える。具体的には、風車ロータ3は、少なくとも一本のブレード2及びハブ4を含む。ハブ4はハブカバー5によって覆われていてもよい。
【0042】
また、風力発電装置1は、回転シャフト6によって駆動されて圧油を生成するように構成された油圧ポンプ8と、圧油によって駆動されるように構成された油圧モータ10と、油圧モータ10によって駆動されるように構成された発電機16と、を備える。
具体的には、油圧ポンプ8の出口が高圧油ライン12を介して油圧モータ10の入口に接続され、油圧ポンプ8の入口が低圧油ライン14を介して油圧モータ10の出口に接続される。油圧ポンプ8は、回転シャフト6によって駆動されて作動油を昇圧し、高圧の作動油(圧油)を生成する。油圧ポンプ8で生成された圧油は高圧油ライン12を介して油圧モータ10に供給され、この圧油によって油圧モータ10が駆動される。油圧モータ10で仕事をした後の低圧の作動油は、油圧モータ10の出口と油圧ポンプ8の入口との間に設けられた低圧油ライン14を経由して、油圧ポンプ8に再び戻される。
油圧モータ10には発電機16が連結される。一実施形態では、発電機16は、電力系統に連系されるとともに、油圧モータ10によって駆動される同期発電機である。
なお、回転シャフト6の少なくとも一部は、タワー19上に設置されたナセル18によって覆われている。一実施形態では、油圧ポンプ8、油圧モータ10及び発電機16は、ナセル18の内部に設置される。
【0043】
幾つかの実施形態では、上述した油圧ポンプ8又は油圧モータ10の少なくとも一方は、以下で説明するラジアルピストン式油圧機械20(図2参照)である。
【0044】
図2は、一実施形態に係るラジアルピストン式油圧機械20の概略断面図である。
幾つかの実施形態においてラジアルピストン式油圧機械(以下、油圧機械と称する)20は、図2に例示的に示すように、複数のピストン21と、複数のローラ22と、複数のシリンダ24と、カム29と、側板40と、を備えている。
【0045】
複数のピストン21は、それぞれ、油圧機械20の半径方向Dに沿って配置されている。複数のピストン21は、油圧機械20の中心軸Oを中心として放射状に配列されていてもよい。複数のローラ22の各々は、複数のピストン21のそれぞれに回転自在に設けられている。すなわち、各々のピストン21は、ローラ22の回転中心Cを中心として該ローラ22が回転自在となるように、支持部23によって該ローラ22を支持している。
複数のシリンダ24は、複数のピストン21をそれぞれ案内するように構成されている。すなわち、各々のシリンダ24は、ピストン21が往復運動可能に該シリンダ24内を摺動するように構成されている。また、複数のシリンダ24が、シリンダブロック26に設けられていてもよい。
カム29は、複数のローラ22に当接するように構成され、且つ、油圧機械20の中心軸O周りに回転可能に構成されている。
なお、側板40については後述する。
【0046】
各々のピストン21は、シリンダ24によって案内されて、該ピストン21とシリンダ24とで形成される油圧室25の圧力の高圧と低圧との間の周期的な変化に対応して、油圧機械20の半径方向Dに沿って往復運動するように構成されている。すなわち、各々のピストン21がシリンダ24内で往復運動すると、ピストン21とシリンダ24によって形成される油圧室25の体積が周期的に変化する。このような油圧室25の周期的な体積変化を伴うピストン21の往復運動は、カム29の回転運動との間で運動モードが変換されるようになっている。
【0047】
例えば、油圧機械20が油圧ポンプである場合、油圧機械20の回転シャフト28とともに回転するカム29の回転運動がピストン21の往復運動に変換され、油圧室25の周期的な体積変化が起こり、油圧室25で高圧の作動油(圧油)が生成される。これに対し、油圧機械20が油圧モータである場合、油圧室25への圧油の導入によってピストン21の往復運動が起こり、この往復運動がカム29の回転運動に変換される結果、カム29とともに油圧機械20の回転シャフト28が回転する。なお、油圧機械20が油圧ポンプ8である場合、回転シャフト28は、風力発電装置1の回転シャフト6(図1参照)とともに回転するように構成されたポンプシャフトであってもよい。
こうして、カム29の働きにより、油圧機械20の回転シャフト28の回転エネルギー(機械的エネルギー)と作動油の流体エネルギーとの間でエネルギーが変換され、油圧機械20が油圧ポンプ又は油圧モータとしての所期の役割を果たすようになっている。
【0048】
幾つかの実施形態では、シリンダブロック26には、複数の油圧室25に連通する少なくとも一本の内部油路30が形成される。また、油圧機械20の中心軸O方向において、シリンダブロック26の両側には環状のエンドプレート33,34が配置されている。すなわち、一方のエンドプレート33は風車ロータ3から遠い側に位置し、シリンダブロック26を挟んで他方のエンドプレート34は風車ロータ3に近い側に位置している。
一実施形態では、複数の内部油路30が油圧機械20の中心軸Oに沿って設けられており、複数の内部油路30にそれぞれ連通する環状集合路35がエンドプレート34の内部に形成されている。エンドプレート34の内部の環状集合路35は、それぞれ、外部配管(不図示)に接続される。こうして、各油圧室25は、内部油路30及び環状集合路35を介して、外部配管に連通される。なお、図2では一本の内部油路30及び一つの環状集合路35のみを例示的に示している。
【0049】
本実施形態において、油圧機械20のうちシリンダブロック26を含む部位を静止部といい、カム29を含んで該カム29とともに中心軸O周りに回転する、静止部に対して中心軸O周りに相対的に回転する部位を回転部という。
【0050】
一実施形態において、油圧機械20の両端部において、油圧機械20の静止部と油圧機械20の回転部との間に配置され、静止部に回転部を回転自在に支持する一対の軸受27A,27Bが設けられている。具体的には、回転シャフト28とエンドプレート33,34との間に一対の軸受27A,27Bが配置されている。この場合、油圧機械20の中心軸O方向において、一対の軸受27A,27Bはカム29の両側に配置されており、一方の軸受27Aは風車ロータ3から遠い側に位置し、他方の軸受27Bは風車ロータ3に近い側に位置している。また、一対の軸受27A,27Bの少なくとも一方が、スラスト方向(回転シャフト28の中心軸O方向)の荷重を受けるように構成されたテーパ軸受であってもよい。これにより、エンドプレート33,34は、回転シャフト28の回転運動の影響を受けずに静止状態を維持可能になっている。
【0051】
一実施形態では、カム29は、回転シャフト28とともに回転するように構成される。カム29は、ピストン21に設けられたローラ22と当接するカム面29aを有する断面波形状のリングカムであってもよい。また、カム29は、油圧機械20の中心軸Oの方向に少なくとも2列設けられており、ピストン21及びローラ22が、カム29の列に対応して配列されていてもよい。これにより、ピストン数が同一である場合、カム29並びにこれに対応するピストン21及びローラ22の列が多いほど一列あたりのピストン数が少なくなるので、カム29の直径を小さくできる。よって、油圧機械20をその半径方向Dにコンパクト化することができる。また、カム29の複数の列において周方向のカム29の位相を互いに異ならせれば、駆動時の油圧機械20の振動を低減できる。
【0052】
ここで、図3を参照して、カム29の表面(カム面29a)について説明する。なお、図3は、一実施形態におけるカム29及びローラ22とその周辺構造を示す側面図である。カム29は、油圧室25の圧力が高圧になるときにローラ22が接するワーキング面29a1と、油圧室25の圧力が低圧になるときにローラ22が接するブリージング面29a2と、を有している。
【0053】
油圧機械20が油圧ポンプ8(図2参照)である場合、ローラ22がカム面29aのうちワーキング面29a1上に位置するとき、基本的には、ピストン21は下死点から上死点に向かって移動中であり、油圧室25内の作動油の圧力は高い。これに対し、ローラ22がカム面29aのブリージング面29a上に位置するとき、基本的には、ピストン21は上死点から下死点に向かって移動中であり、油圧室25内の作動油の圧力は低い。なお、油圧機械20が油圧ポンプの場合、基本的には、図3に示すように、ワーキング面29aはカム面29aの頂点Pよりもカム回転方向の下流側の領域であり、ブリージング面29aはカム面29aの頂点Pよりもカム回転方向の上流側の領域である。例えば、ワーキング面29aはカム面29aの頂点Pからカム回転方向の下流側の底点Pまでの領域であり、ブリージング面29aはカム面29aの頂点Pからカム回転方向の上流側の底点Pまでの領域である。ここで、カム面29aの頂点Pとは、油圧機械20の中心軸O(図2参照)から半径方向に最も遠いカム面29aの位置(最大直径点)である。また、底点Pとは、油圧機械20の中心軸O(図2参照)から半径方向Dに最も近いカム面29aの位置(最小直径点)である。
【0054】
一方、油圧機械20が油圧モータ10(図2参照)である場合、ローラ22がカム面29aのワーキング面29a上に位置するとき、基本的には、ピストン21は上死点から下死点に向かって移動中であり、油圧室25内の作動油の圧力は高い。これに対し、ローラ22がカム面29aのブリージング面29a上に位置するとき、基本的には、ピストン21は下死点から上死点に向かって移動中であり、油圧室25内の作動油の圧力は低い。なお、油圧機械20が油圧モータの場合、基本的には、ワーキング面29aはカム面29aの頂点Pよりもカム回転方向の上流側の領域であり、ブリージング面29aはカム面29aの頂点Pよりもカム回転方向の下流側の領域である。例えば、ワーキング面29a1はカム面29aの頂点Pからカム回転方向の上流側の底点Pまでの領域であり、ブリージング面29aはカム面29aの頂点Pからカム回転方向の下流側の底点Pまでの領域である。
【0055】
但し、ワーキング面29aとブリージング面29aとの間の移行点P,Pの位置は、シリンダ中心軸の半径方向Dに対する傾斜角や、油圧室25に連通する各油路に設けられた低圧弁及び高圧弁の開閉タイミングや、カム29及びローラ22の形状等によって変わり得る。
典型的には、ワーキング面29aとブリージング面29aとの間の移行点P及びPは、ピストン21の上死点及び下死点に対応するカム面29a上の位置(頂点P及び底点P)又はその近傍に設定される。一実施形態では、油圧機械20が油圧ポンプの場合において、図3に示すように、ピストン21の下死点に対応するカム面29a上の位置(底点P)からカム回転方向の上流側に僅かにずれた位置にワーキング面29aの移行点(開始点)Pが設定され、ピストン21の上死点に対応するカム面29a上の位置(頂点P)からカム回転方向の上流側に僅かにずれた位置にワーキング面29aの移行点(終了点)Pが設定される
【0056】
上記したような構成を有するラジアルピストン式の油圧機械20においては、カム29から受けるサイドフォース等の様々な要因によりローラ22がその軸方向(ローラの幅方向)に変位することがある。例えば、製造上の公差、カム29とローラ22間のすべり、構造変形、あるいは振動等によって、ローラ22がシリンダ24の軸周りに回動するスキューが発生する。そして、ローラ22がスキューした状態でカム面29aから力を受けると、ローラにスラスト方向の荷重(以下、スラスト力という)が発生し、ローラは22スラスト方向(ローラ22の回転中心C方向)に横滑りし、ローラの軸方向変位が発生する。そこで、本実施形態におけるラジアルピストン式の油圧機械20は、ローラ22の軸方向変位を防止するために、油圧機械20の回転部に設けられた側板40を備えている。
【0057】
以下、図4図7を参照して、側板40及びその周辺構造について詳細に説明する。図4は、一実施形態におけるカム29及びカム面29aに当接した状態で配列された複数のピストン21を示す斜視図である。図5は、図2に示したラジアルピストン式油圧機械の部分拡大図である。図6は、一実施形態におけるカム29及びローラ22の部分拡大図(図5のF部拡大図)である。図7は、他の実施形態におけるカム29及びローラ22の部分拡大図である。
なお、図4図5及び図6は、樹脂部80が側板40側に設けられた一実施形態を例示的に示しており、図7は、樹脂部80がローラ22側に設けられた他の実施形態を例示的に示している。
【0058】
図4及び図5に例示的に示すように、幾つかの実施形態において、側板40は、油圧機械20の回転部に取り付けられ、カム29側からピストン21側に半径方向Dに沿って延在している。側板40は、回転部とともに静止部に対して相対的に回転するようになっている。なお、上述したように、油圧機械20の回転部は、カム29を含んで該カム29とともに中心軸O(図2参照)周りに回転する部位をいう。
【0059】
図6及び図7に例示的に示すように、ローラ22又は側板40の一方は、ローラ端面221又は該ローラ端面221に対向する側板表面401の何れか一方の面を形成する樹脂部80を含む。
また、ローラ22又は側板40の他方は、ローラ端面221又は側板表面401の他方の面を形成する金属部70を含む。
金属部70は、該金属部70によって形成される前記他方の面と樹脂部80によって形成される前記一方の面との間のローラ22の軸方向に沿った距離Lが最小の距離Lとなる第1領域71と、該第1領域71の距離Lよりも大きい距離Lを有し、且つ、第1領域71の縁部73を形成する第2領域72と、を含む。
さらに、金属部70の縁部73を形成する第2領域72は0.8μmRa以下の表面粗さを有する。
なお、本実施形態において「表面粗さ」とは、算術表面粗さ(JIS B 0601)であってもよい。
【0060】
上記ラジアルピストン式油圧機械20によれば、ローラ22又は側板40の一方は、ローラ端面221又は該ローラ端面221に対向する側板表面401の何れか一方の面を形成する樹脂部80を含む。また、ローラ22又は側板40の他方は、ローラ端面221又は側板表面401の他方の面を形成する金属部70を含む。このため、ラジアルピストン式油圧機械20の運転時、ローラ22と側板40との接触が、金属部70と樹脂部80との接触となるので、これらの接触面(特に樹脂部80)の境界に発生する最大面圧が金属同士の接触に比べて低減し、摩耗を抑制することができる。
また、上記構成において、金属部70は、該金属部70によって形成される前記他方の面と樹脂部80によって形成される前記一方の面との間のローラ22の軸方向に沿った距離Lが最小となる第1領域71と、該第1領域71に比べて距離Lが大きく、且つ、第1領域71の縁部73を形成する第2領域72と、を含む。この構成により、ラジアルピストン式油圧機械20の停止時には、第1領域71において金属部70と樹脂部80が接触した状態であっても、上記スラスト力がないので第2領域72においては金属部70と樹脂部80が非接触となる。
しかしながら、上記したようにローラがピストンとともにシリンダの軸回りに回動(スキュー)することによりローラ端面221又は側板表面401の何れか一方の面が樹脂部80で形成されている場合、ラジアルピストン式油圧機械20の運転時に金属部70との接触によって樹脂部80が変形することがある。上記スラスト力により、ラジアルピストン式油圧機械20の停止時には接触しない第2領域72においても金属部70と樹脂部80が接触する部分の増加を招き、また、第2領域72で接触する部分での面圧も大きくなり、接触面に摩耗が発生することがある。
そこで、上記構成では、金属部70の縁部73を形成する第2領域72は0.8μmRa以下の表面粗さを有するようにしている。
これにより、ラジアルピストン式油圧機械20の運転時に上記スラスト力を受けた場合であっても、縁部73における金属部70と樹脂部80との接触面の摩耗を抑制することができる。
このように、ラジアルピストン式油圧機械20の運転時における上記スラスト力も考慮した摩耗抑制対策を講じることによって、ローラ22と側板40との接触による摩耗に起因したラジアルピストン式油圧機械20の寿命低下を確実に抑制することができる。
【0061】
上記構成において、第2領域72の表面粗さは、0.4μmRa以下であってもよい。あるいは、第2領域72の表面粗さは、0.2μmRa以下であってもよい。
この構成によれば、ラジアルピストン式油圧機械20の運転時における上記スラスト力によって第2領域72において金属部70と樹脂部80とが接触した場合であってもこれらの接触面の摩耗をより効果的に抑制できる。
【0062】
図6に示す実施形態では、側板40は、側板表面401を形成する樹脂部80を有し、ローラ22は、ローラ端面221を形成する金属部70を有する。具体的には、樹脂部80は、ローラ端面221に対向する側板表面401を形成するように設けられている。例えば、側板40は、剛性に優れた金属材料で形成された側板本体40aと、該側板本体40aのうちローラ端面221に対向する面に設けられたシート状の樹脂部80と、含む。側板本体40aは、カム面29aに沿うように、中心軸O(図2参照)を中心として環状に形成される。そして、側板本体40aの基端部41は、図5に示すボルト48によってカム29に固定されている。樹脂部80は、図5に示すボルト49によって側板本体40aに取り付けられてもよい。また、樹脂部80は、半径方向Dにおいてカム面29aの位置から外方側へ向けて延在していてもよい。
また、金属部70は、ローラ22の軸方向(回転中心Cに沿った方向)に直交する第1領域71としての円形平坦面と、該円形平坦面の外周縁を形成する第2領域72としての断面湾曲面と、を含む。例えば、ローラ端面221の縁部73がR状に形成されており、このR状の縁部73が第2領域72であり、側板表面401に平行なローラ端面221の中央部が第1領域71である。この場合、金属部70の断面湾曲面は、0.8μmRa以下の表面粗さを有する。
【0063】
上記構成によれば、側板表面401が樹脂部80で形成され、ローラ端面221が金属部70で形成されているので、樹脂部80の取付けが容易となる。すなわち、例えば多数のローラ22(ピストン21)が設けられている場合であっても、樹脂部80の設置対象であるカム29は一つ(側板40は一対)であるため、樹脂部80の取付け作業を簡素化できる。
また、金属部70は、ローラ22の軸方向に直交する第1領域71としての円形平坦面と、該円形平坦面の外周縁を形成する第2領域72としての断面湾曲面と、を含む。このように、ローラ端面221の外周縁が断面湾曲面で形成されているので、ローラ22のハンドリング性を向上できる。さらに、ローラ端面221の外周縁の断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有することから、金属部(断面湾曲面)70と樹脂部80との接触面の摩耗を確実に抑制できる。
【0064】
図7に示す実施形態では、ローラ22は、ローラ端面221を形成する樹脂部80を有し、側板40は、該側板表面401を形成する金属部70を有する。具体的には、樹脂部80は、ローラ端面221を形成するように設けられている。例えば、樹脂部80は、ローラ端面221の縁を含む全面に円形に設けられていてもよい。あるいは、樹脂部80は、ローラ端面221のうち縁を含む外周側で且つ側板表面401と当接する可能性のある領域にのみ環状に設けられていてもよい。樹脂部80が摩耗した際に取り替えられるように、樹脂部80は、ローラ端面221に対して着脱自在に設けられていてもよい。
金属部70は、側板表面401を形成するように設けられている。例えば、側板40が金属部70によって形成されており、側板40の基端部41は、ボルトによってカム29に固定されている。
【0065】
一実施形態では、カム29が複数に分割された構造を有しており、カム29の各分割部分に対応して側板40が複数のセクション40A,40Bに分割されている(図4及び図10参照)。また、図7に示すように、金属部70は、カム29の軸方向(ローラ22の軸方向)に直交する第1領域71としての側板40の平坦面と、第2領域72を形成する断面湾曲面と、を含む。この場合、第2領域72は、図4及び図10に示すように側板40の隣り合うセクション40A,40Bの2つの平坦面同士の間に存在する縁部73(継ぎ目40B)であってもよいし、あるいは、第2領域72は、図7に示すようにカム29からピストン21(図4参照)側に半径方向Dに突出する側板40のR状の先端部であってもよい。
また、側板表面401の縁部73の断面湾曲面は、0.8μmRa以下の表面粗さを有する。
これにより、ラジアルピストン式油圧機械20の運転時、金属部70の縁部73によって樹脂部80が摩耗することを抑制できる。さらに、側板表面401の縁部73の断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有することから、金属部(断面湾曲面)70と樹脂部80との接触面の摩耗を確実に抑制できる。
なお、図10は、他の実施形態における側板40’の構成(図6の実施形態に対応)を示す側面図である。すなわち、側板40’に樹脂部80が設けられた構成を示している。但し、図10のうち括弧内で示す符号は、側板40に金属部70が設けられた場合(図7の実施形態に対応)を示している。
【0066】
上記構成では、側板表面401が金属部70で形成され、ローラ端面221が樹脂部80で形成されている。この構成によれば、金属部70との接触により樹脂部80が摩耗したとき、複数のローラ22のうち摩耗したローラ端面221を有するローラ22の樹脂部80のみを交換することもでき、メンテナンスが容易となる。
また、金属部70は、カム29の軸方向に直交する第1領域71としての平坦面と、該平坦面の縁部73を形成する第2領域72としての断面湾曲面と、を含む。これにより、油圧機械20の運転時、金属部70の縁部73によって樹脂部80が摩耗することを抑制できる。さらに、側板表面401の縁部73の断面湾曲面が0.8μmRa以下の表面粗さを有することから、金属部(断面湾曲面)70と樹脂部80との接触面の摩耗を確実に抑制できる。
【0067】
より具体的には、図4及び図10に示されるように、側板40が周方向に分割構造を有している場合、すなわち複数のセクション40Aが環状に配列されることによって側板40が形成される場合、セクション40A同士の継ぎ目40Bに対応した位置に第2領域72が形成される。各セクション40Aは、ハンドリング性向上のために縁がR状に形成されており、この場合、金属部70の第1領域71及び第2領域72は、それぞれ、半径方向Dに沿って延在する。そして、第2領域72は0.8μmRa以下の表面粗さを有する。
【0068】
上述した幾つかの実施形態において、樹脂部80は、PEEK、PPS、PA、POM、PTFEの少なくとも一つを含む耐摩耗性樹脂により形成されてもよい。
このように、耐摩耗性に優れた上記樹脂材料を用いることによって、樹脂部70の摩耗をより効果的に抑制することができる。
【0069】
図8は、一実施形態における側板40を説明するための図である。
図8に示す例示的な実施形態では、側板40は、少なくともワーキング面29a1(図3参照)に対応する油圧機械20の周方向範囲において、カム面29aと、該カム面29aからローラ22の半径rだけ離れた曲線28とで囲まれる領域(図8のハッチング領域)内においてのみ、ローラ22の端面22aと当接するように構成される。言い換えれば、側板40は、少なくともワーキング面29a図3参照)に対応する油圧機械20の周方向範囲において、該側板40の高さhがローラ22の半径r以下となるように構成される。もちろん、上記した側板40の構成は、ワーキング面29aのみでなくブリージング面29aに適用されてもよい。なお、側板40の高さhとは、カム面29aの任意の点Pにおける接線Eに垂直な方向の側板40の長さである。
【0070】
一般的に、油圧機械20では、ローラ22のスキューによりローラ22へスラスト方向の荷重(以下、スラスト力という)が発生することがある。このスラスト力は、通常、カムのブリージング面29aよりもワーキング面29aにおいて大きくなる。そこで、上記油圧機械20では、少なくともワーキング面29aに対応する油圧機械20の周方向範囲において、側板40が、カム面29aと、該カム面29aからローラ22の半径rだけ離れた曲線28とで囲まれる領域内においてのみ、ローラ22の端面22aと当接するように構成することによって、カム面29aと曲線28とで囲まれる領域よりもピストン21側でローラ22の端面22aと側板40とが接触する場合に比べて、側板取付け部を中心とした側板40に作用するモーメントを小さくすることができる。よって、ローラのスラスト力に起因した側板40の損傷の抑制及び側板の耐久性の向上が図れる。
また、側板40は、カム面29aからの半径方向の距離(側板40の高さh)が、ローラ22の直径の30%以内となる位置でローラ22の端面22aと当接するように構成されてもよい。これにより、側板40に作用するモーメントをより一層抑制することができ、側板40の耐久性の更なる向上が可能となる。
【0071】
具体的な構成例として、図9A及び図9B図10に示すように、側板40は、カム29の端面に締結される基端部41、および、カム29からピストン21側に半径方向Dに突出する先端部42を有する側板本体40aと、側板本体40aの先端部に設けられた当接部43と、を含んでいる。そして、図5に示すように、当接部43が、ローラ22の端面22aのうちローラ22の回転中心Cよりもカム29側の領域内でローラ22の端面22aに当接するように側板40が構成されている。側板40の基端部41にはボルト穴48aが形成されており、このボルト穴48aに挿通されるボルト48によって、側板40がカム29に固定的に取り付けられる。このように、ローラ22に当接するカム29の端面に側板本体40aの基端部41を取り付けることで、ローラ22の端面22aからのスラスト力を受ける側板40の荷重点Qに側板取付け部(ボルト48:図5参照)を近づけることができる。すなわち、スラスト力を受ける側板40の荷重点Qと、側板取付け部(ボルト48:図5参照)との距離Tを短くすることができる。そのため、側板取付け部を中心とした側板40に作用するモーメントM(荷重点QにおけるモーメントM)をより一層小さくすることができる。また、側板40が基端部41によってカム端面に締結されていることにより、側板40の締結構造を簡素化できる。また、カム29と側板40とをアセンブリ化することも可能であるため、カム29及び側板40の組立性の向上が図れる。
【0072】
上記側板40において、当接部43は、側板本体40aの先端部42に取り付けられた耐摩耗性の樹脂部材45であってもよい。これにより、ローラ22の端面22aの接触による当接部43の摩耗を抑制可能となり、側板40の耐久性を向上できる。また、側板本体40aと当接部43とを別の材料で形成してもよく、その場合、材料コストの削減も図れる。
また、上記側板40において、当接部43は、側板本体40aの先端部42のうち基端部41側にずれた位置に設けられてもよい。すなわち、図9A及び図9B図10に示すように、先端部42のうち最もカム29から離れた領域に段差部44が設けられており、先端部42のうち段差部44よりも基端部41側の領域に当接部43を設けられる。段差部44は、ローラ22の回転中心C方向においてカム面29aから離れる方向にくぼんでおり、ローラ22の端面22aに当接しないように構成される。そして、この段差部44において、ボルト49によって樹脂部材45が側板本体40aに取り付けられてもよい。これにより、ボルト49の頭部がローラ22の端面22aに接触することを防止できるとともに、当接部43の位置をよりカム面29a側に近づけることができ、側板40に作用するモーメントMをより一層小さくすることができる。
【0073】
図9A及び図9Bに示す例では、側板40の段差部44の高さは、油圧機械20の周方向において概ね一定となっている。一方、図10に示す例では、側板40の取付け作業性の観点から、側板40の段差部44の高さを、カム面29aの頂点Pに対応する領域と、底点Pに対応する領域とで異ならせている。すなわち、カム面29aの底点Pに対応する領域における側板40の段差部の高さHの方が、カム面29aの頂点Pに対応する領域における側板40の段差部の高さHよりも高くなっている。これにより、ボルト49の締結作業を容易化することができる。なお、この場合においても、当接部43の高さは、油圧機械20の周方向において概ね一定となっている。
【0074】
また、カム29及び側板40は、それぞれ、中心軸Oの周方向において複数のセクション40Aに分割されており、側板40のセクション数は、カム29のセクション数以下であってもよい。側板40を分割構造とした場合、例えば図10に示すように、カム29のセクション40Aに対して、取付け部46を介してボルト47によって各側板40の各セクションを取り付ける。このように、カム29及び側板40を分割構造とすることによって、カム29及び側板40の製造性を向上できる。また、カム29は、製造上の取り扱い性の観点から分割するセクション数が決定されることが多いが、側板40はセクション数に対する要求は低く、分割構造の設計自由度は高い。そのため、側板40のセクション数をカム29のセクション数以下とすることで、油圧機械20の組み立て時、一つのカム29、又は複数のカム29を互いに組み付けたカムアセンブリに対して側板40を取付ければよく、カム29及び側板40の組立性の向上が図れる。
【0075】
一実施形態において、図2に示すように、油圧機械20が備える一対の軸受27A,27Bがテーパ軸受である場合、の少なくとも一方の軸受27Aに対して、油圧機械20の中央に向かう方向にプリロードを付与するための予圧部としてのバネ38が設けられていてもよい。例えば、バネ38は、風車ロータ3から遠い側に位置する軸受27A側に設けられる。これにより、回転部と静止部との相対位置を適正に維持できる。
この場合、バネ38によるプリロードは、ローラ22から側板40に加わるローラの軸方向のスラスト力以上の大きさであってもよい。これにより、回転部と静止部との間のガタつきを防止できるとともに、ローラ22のスキューに起因したローラ22のスラスト力によって、回転部と静止部との相対位置がずれることを防止できる。
【0076】
以上説明したように、上述の少なくとも幾つかの実施形態によれば、ラジアルピストン式油圧機械20の運転時における樹脂部80の変形も考慮した摩耗抑制対策を講じることによって、ローラ22と側板40との接触による摩耗に起因したラジアルピストン式油圧機械20の寿命低下を確実に抑制することができる。
また、上述のラジアルピストン式油圧機械20(図2等参照)を風力発電装置1(図1参照)の油圧ポンプ8又は油圧モータ10の少なくとも一方に適用することによって、部品の摩耗を抑制することができ、油圧ポンプ8又は油圧モータ10の少なくとも一方を円滑に作動できる。また、油圧ポンプ8又は油圧モータ10の少なくとも一方の耐久性向上に寄与し、風力発電装置1の円滑な運転が可能となる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。例えば、上述した実施形態のうち複数を適宜組み合わせてもよい。
【0078】
例えば、上述した実施形態では、ラジアルピストン式油圧機械20(図2参照)の適用先の一例として風力発電装置1(図1参照)について説明したが、ラジアルピストン式油圧機械20の適用先は風力発電装置1に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
1 風力発電装置
2 ブレード
3 風車ロータ
4 ハブ
5 ハブカバー
6 メインシャフト
8 油圧ポンプ
10 油圧モータ
12 高圧油ライン
14 低圧油ライン
16 発電機
18 ナセル
19 タワー
20 ラジアルピストン式油圧機械
21 ピストン
22,50,53,55 ローラ
23 支持部
24 シリンダ
25 油圧室
26 シリンダブロック
28 曲線
40,60,63,65,67 側板
40a 側板本体
41 基端部
42 先端部
43 当接部
44 段差部
45 樹脂部材
46 固定部
47,48,49,81 ボルト
60a 第1周縁
60b 第2周縁
61,64,66 側板の壁面
62,68,69 接触エリア
70 金属部
71 第1領域
72 第2領域
73 縁部
80 樹脂部
221 ローラ端面
401 側板表面
C ローラの回転中心
D 油圧機械の半径方向
O 油圧機械の回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10