(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から3のいずれかに記載の電子機器の前記ケーシング内を封止樹脂の充填により防水し、前記電子回路により照明器具の点灯に必要な電力の供給を制御する電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した公知の電源装置においては、ゴムパッキンによるカバーを収容部に確実に装着させておくことができれば、コネクタに対する防水性を維持することができると考えられる。
【0008】
しかしながら、このカバーは収容部の開口に押し込むだけの簡易な形状であり、開口に対する密封性は有してはいないため、ゴムパッキンの表面が摩耗したり、カバーの押し込み具合が弱かったりすると、自然とカバーが外れてコネクタが外部に露出し、たちまち防水が困難な状況に陥ることとなる。また、公知の電源装置ではコネクタがケーシングの底部に設けられているため、他の部位に設けられている場合よりは水が付着しにくいものと推測されるが、例えばケーシングの上部や側部に付着した水がケーシングの外面を伝って底面まで至ると、コネクタが水濡れして短絡を起こす虞もある。
【0009】
この他にも、例えば防水コネクタを用いた方法がある。この場合は、コネクタの利用が電源装置の設置前における数回のみに限定される点を鑑みて、コネクタを利用し終えた後、すなわちコネクタが不要となった後にこれを切断し邪魔にならないように処理を行う。この方法によれば、電源装置の設置段階においてはコネクタ自体が存在しないため水濡れによるショートの心配はないが、防水コネクタの防水構造を実現する上で要するコストが高価であるため、この方法を採用すると電源装置の製造コストが跳ね上がるという問題が生じる。
【0010】
そこで本発明は、防水性の確保を低コストに実現することができる技術の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
【0012】
すなわち、本発明の電子機器は、電子部品を有した電子回路と、筒形状をなす胴体の内側に電子回路を収容した状態で胴体の少なくとも一端が蓋体で覆われるとともに、蓋体と胴体とが相互に密着する方向に締結されたケーシングと、蓋体と胴体の一端との間に介在して設けられ、蓋体と胴体との締結に伴い防水性を発揮するシール部材と、蓋体及びシール部材を貫通して形成され、ケーシングの外側から電子部品に対する接続を可能とする接続口と、蓋体の外側から接続口に嵌め込まれ、この嵌め込み状態で電子部品を隠蔽しつつ接続口の周囲でシール部材に密着することで防水性を発揮させるキャップとを備えている。
【0013】
電子機器に設けられている電子部品は、外部から何らかの操作を行う時に用いられる。例えば、電子機器の制御内容の書き換えや印加させる電流量/電圧の増減、或いは電気仕様の変更など、電子機器に対する様々な調整が必要な場合、その作業は、コンピュータ等の外部機器を調整用の電子部品に接続させたり、調整用の電子部品を手で直接操作したりして実施するため、電子機器の内部に収容されている電子部品(電子機器に対する外部からの調整操作を可能とするもの)を外部に露出させなければならない。キャップを設けて電子部品への接続口を開閉自在な構造とすることにより、必要に応じて電子部品を繰り返し利用可能となる。しかしながら、電子部品に対する操作が必要な場面を除いては、電子回路を水濡れから保護してショートの発生を未然に回避すべく、電子機器内部の水密性を確保する必要がある。
【0014】
上記のような態様による電子機器を、キャップが設けられている蓋体を上に向けて配置すれば、まず蓋体と胴体とがシール部材を挟んで締結されることにより防水性が発揮されるため、これらの接合部分からケーシング内部に水が浸入するのを防止することができる。また、書き換え作業の際には、キャップを取り外して電子部品を露出させ作業用の外部機器を接続口を介して電子部品に接続させることができる一方で、通常稼働時には、キャップを嵌め込み接続口の周囲にキャップを密着させて電子部品が配置されている空間の防水性を確実に維持することが可能となる。
【0015】
また、電子機器は、電子回路とともに電子部品を実装した回路基板と、蓋体に対し、その内面との間にシール部材を介在させた状態で取り付けられ、接続口に通じるキャップの嵌込口が貫通して形成されるとともに嵌込口内に電子部品を受け入れた状態で回路基板を固定する固定部材と、固定部材の回路基板に相対する面に嵌込口の周囲にて複重をなす環状の溝として形成され、外側の接着溝が回路基板と固定部材との間を防水しつつ接着するシーリング剤を保持する一方、内側の保護溝が嵌込口内へのシーリング剤の流入を防止する複重防水溝とをさらに備えている。
【0016】
回路基板と固定部材とはシーリング材により接着され、これにより両者に囲まれた空間が防水される。シーリング材が塗布される接着溝は、固定部材におけるキャップの嵌込口の周囲、すなわち電子部品が収まる位置を取り囲んで形成されている。このとき、接着溝に塗布されたシーリング材の塗布具合(塗り斑や過塗布等)によっては、回路基板を固定部材に押し当てて接着させる際に接着溝からシーリング材が溢れ出る場合がある。仮に、溢れ出たシーリング材が内側に向かってキャップの嵌込口まで到達し、その一部に付着すると、キャップを嵌込口に対して完全に嵌め込むことができなくなる。その結果、キャップによる防水性の確保が困難な状況に陥り、内部に配置された電子部品が水濡れしてショートする危険性が生じる。
【0017】
上記のような態様によれば、シーリング材が塗布される接着溝の内側にはさらに保護溝が形成されているため、回路基板と固定部材とを接着させる際にシーリング材が接着溝から内側に向かい溢れ出た場合でも、これを保護溝が確実にキャッチすることができる。したがって、シーリング材がキャップの嵌込口内に流入して引き起こし得る上述のような不具合を未然に回避することが可能となる。
【0018】
電子機器はさらに、キャップ及び固定部材の双方に形成され、嵌込口へのキャップの嵌め込み状態にて互いを締結させる締結手段をさらに備えており、キャップは、接続口の周囲でシール部材に密着する環状の突起を有している。
【0019】
このような態様によれば、キャップに設けられた突起がシール部材を押し込んでこれに密着した状態でキャップを固定部材に確実に締結させることができるため、キャップが固定部材に対してより強固に密封される。したがって、回路基板、固定部材及びキャップによって取り囲まれる電子部品の配置空間における水密性をさらに向上させることが可能となる。
【0020】
また、本発明の電源装置は、上述した態様による電子機器のケーシング内を封止樹脂の充填により防水し、電子回路により照明器具の点灯に必要な電力の供給を制御する。
このような態様により、ケーシング内の防水性を確保して電子回路を水濡れから保護し、照明器具への電力供給を安定的に実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の電子機器及び電源装置によれば、防水性の確保を低コストに実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。発明の理解を容易とするために、図面上の表現には若干の誇張やデフォルメが含まれる場合がある。
【0024】
図1は、一実施形態の電源装置1を表す斜視図である。電源装置1は、縦長の略直方体状に形成されたケーシング10の内部に各種の電子部品(
図1には不図示)を収容している。電源装置1は、屋外の環境下に配置されるため、外側を覆うケーシング10はアルミニウム等の耐食性が高い金属で形成されている。また、電源装置1が道路灯用の電源として用いられる際には支柱の内部等に設置されることとなるため、こうした空間上の制約の下では横幅をできる限り抑えた縦長の形状が採用されている。なお、このような電源装置1は防水性を有した電子機器の一例である。
【0025】
ケーシング10は、筒状(角筒状)の胴体11及び2つの蓋部(下蓋ユニット20,上蓋ユニット30)で構成されており、全体として直方体形状をなしている。胴体11が直方体の4側面をなし、蓋部(下蓋ユニット20,上蓋ユニット30)が胴体11の両端を閉じて直方体の上下面をなしている。上蓋ユニット30は胴体11の上端部の四隅に設けられたネジ受け孔(不図示)に対し締結部材12により締結されて固定され、また下蓋ユニット20は胴体11の下端部の四隅に設けられたネジ受け孔(不図示)に対し締結部材22により締結されて固定されることにより、それぞれ胴体11の両端の開放面を閉じている。
【0026】
また、ケーシング10の内部には、電子部品が収容された状態でケーシング10の内面と電子部品との間に形成される空間に封止樹脂(不図示)が充填されている。なお、封止樹脂は下蓋ユニット20との間に多少の空間を残した状態で充填される。これにより、ケーシング10内部の空間を塞いで密封しつつ電子部品を水密に保護することができる。
【0027】
上蓋ユニット30にはキャップ32が嵌め込まれている。このキャップ32を取り外すと、ケーシング10の内部に収容されている電子部品に外部から接続するためのコネクタ(
図1には不図示)がその開口から露出する。キャップ32は密封性に配慮した構造を有しており、これが上蓋ユニット30に嵌め込まれることにより電源装置1の内部への上方からの水の浸入を防ぎ、コネクタひいては電子部品を水濡れから保護している。
【0028】
なお、この実施形態では電子部品の一例としてコネクタを取り上げて説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、電流量や電圧量を調整するポテンシャルメータや、電気仕様の変更に用いるスイッチ等が、電子部品としてキャップ32により保護される位置に配置される場合もある。また、キャップ32の構造については、改めて後述する。
【0029】
図2は、電源装置1の内部構造を示すために、封止樹脂が充填される前段階のケーシング10の胴体11のみを取り外して表した斜視図である。
上蓋ユニット30は複数の部材が組み合わされて構成されている。まず、最上部には上蓋外板40が配置されて上蓋ユニット30の外殻を構成している。その下には上蓋内板50、パッキン60、固定部材70が順に重ね合わせて配置されている。上蓋ユニット30の最下部(高さ方向でみてケーシング10の最も内側)に位置する固定部材70は、電源装置1の内部に収容される電子部品の配置位置を決定してこれらを支持し、かつ固定する役割を有している。
図2に示されるように、固定部材70に対して第1基板100が底面側から固定され、第2基板110が背面側から固定されるとともに、第3基板120が第1基板100及び第2基板110の所定の位置に対し接合されることにより、各基板100,110,120が相互に直角に組み合わされる位置に配置され、各基板100,110,120同士は電気的に接続されている。なお、ここでは各基板100,110,120上の実装部品は図示を省略している(これ以降も同じ)。また、上蓋ユニット30の構成については、さらに詳しく後述する。
【0030】
下蓋ユニット20は、ステンレス(SUS)の金属板を曲げ加工した下蓋外板21の上面に絶縁板28が重ね合されて構成されている。下蓋外板21は、2箇所に金属穿孔26が開口した平板矩形状の部位と下向きに90°折り曲げられた部位とを有する。絶縁板28は、下蓋外板21の平板矩形状の部位の上面に密接して重ね合されている。絶縁板28は、例えばポリプロピレン等の絶縁性を有する樹脂で形成されており、金属穿孔26に対応する位置に開口したケーブル孔27を有している。ケーブル孔27は、金属穿孔26の内周面までを覆うことができるよう金属穿孔26よりも小さく形成された内周から下向きに折れ曲がった形状をなしている。金属穿孔26及びケーブル孔27はいずれも、例えば電力供給用のケーブル等を通過させるために設けられた開口である。各金属穿孔26は金属板を穿孔して形成されるため、その縁にはいわゆる金属バリが突出している。そこで、金属バリとケーブルがこすれ合うことにより被覆が損傷して不具合に至るのを回避すべく、各金属穿孔26の縁部を保護する目的でこれに対応する位置にケーブル孔27が形成された絶縁板28が設けられている。
【0031】
図3は、上蓋ユニット30を表す斜視図である。なお、説明の便宜上、以降の説明においては、上蓋ユニット30として示す図の最下部に第1基板100を併せて表記する。これは、上蓋ユニット30と第1基板100との位置関係の理解を容易にするためであり、実際には第1基板100が上蓋の一部として機能するものではない。
上蓋ユニット30は、複数の部材で構成されており、上から順に上蓋外板40、上蓋内板50、パッキン60、固定部材70が重ね合されている。
【0032】
上蓋外板40は、ステンレス(SUS)の金属板が上向きに90°折り曲げられその根元が曲線状(いわゆるアール)に形成された起立部を有し、底面は矩形状に形成されている。上蓋内板50は、全体が平板矩形状に形成されたステンレス(SUS)の金属板であり、上蓋外板40の下に重ね合されて上蓋外板40のを底面にて補強する。また、上蓋内板50の下にはパッキン60が重ね合されている。パッキン60は、弾性及び透光性を有するシリコンゴム等の材料で平板矩形状に形成されており、胴体11(
図3には不図示)の上端の開放面を完全に覆い得る大きさを有している。
【0033】
上蓋外板40、上蓋内板50及びパッキン60は各々の四隅に締結部材(なべ小ねじ)を通すための貫通孔46を有しており、ケーシング10の組立過程で貫通孔46に挿入された締結部材が胴体11の上端四隅に設けられたネジ受け孔に締結されることにより、上蓋ユニット30が胴体11に対して固定される。このとき、胴体11の上端の開放面を弾性のあるパッキン60が覆い、その上から金属製の上蓋内板50及び上蓋外板40が押し当てられるため、上蓋ユニット30は胴体11の上端を隙間なく密着した状態で塞ぐことができ、これらの接合部分からの内部への水の浸入を確実に防止することが可能となる。
【0034】
固定部材70は、パッキン60の底面に密接して配置されるポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と略称する)等の樹脂により形成された部材であり、各基板100,110,120の位置決めを行いつつ、これらを支持して固定している。
図3に示されるように、例えば第1基板100は、その底面側から締結部材102が締結されることにより固定部材70に対して固定されている。固定部材70自身は、締結部材34が締結されることによって上蓋ユニット30に固定され、結果としてケーシング10にも固定されることになる。
【0035】
また、既に述べたとおり、上蓋ユニット30に嵌め込まれたキャップ32を取り外すとコネクタ(
図3には不図示)がキャップ貫通孔42から露出することとなるが、コネクタは第1基板100の所定の位置に実装されている。このコネクタの位置は、第1基板が固定部材70によって位置決めされて固定されることにより定まり、その結果コネクタは、キャップ32及びキャップ貫通孔42の水平方向の各中心点を通る仮想線上に配置される。
さらに、固定部材70の側面には、各基板100,110,120に設けられた電子部品をケーシング10に接地(いわゆるFG)させるための接地用治具200が固定されている。接地用治具200は、側面の中央部にネジ受け孔202を有しており、このネジ受け孔202には、ケーシング10が組み立てられた後で外側から挿入される接地用ネジ(
図3には不図示)を締結される。
【0036】
上蓋外板40に形成された3つのLED透光孔48は、第1基板100に設けられたLEDチップ(
図3には不図示)の発する光を電源装置1の外側から視認可能としている。LEDチップは、電源装置1が電力供給を制御する照明機器の稼働状態やライフサイクルを知らせるために設けられたものであり、例えば工場出荷前に行われる動作点検や設置後に行われる保守点検等の段階で担当者がLED透光孔48を視認し、その点灯状態に応じて採るべき措置を講ずることが可能となる。
【0037】
図4は、上蓋ユニット30の構造を詳細に表す分解斜視図である。
上蓋ユニット30の最下部には固定部材70が配置されている。固定部材70は、その上面、底面、側面にネジ受け孔を有しており、他の構成部材を各方向から締結させ固定させる。
【0038】
固定部材70の底面に固定される第1基板100は、自身を固定部材70に対して締結させるための締結部材102を通す貫通孔104を2つ有している。貫通孔104に通された締結部材102は、固定部材70の底面に設けられたネジ受け穴(不図示)に受け入れられて締結される。第1基板100には外部機器と接続するためのコネクタ106及びLEDチップ及びLED光源を配置するためのLED配置孔108が設けられているが、コネクタ106は上蓋ユニット30の上方から接続を可能とし、またLED配置孔108から発せられる光は上蓋ユニット30の上方から視認を可能とする必要がある。そのため、第1基板100の上に直接重ねられる固定部材70及びさらにその上から重ねられるパッキン60、上蓋内板50、上蓋外板40は、コネクタ106及びLED配置孔108に対応する位置にこれらを受け入れる形状を有している。
【0039】
まず、固定部材70のコネクタ106に対向する位置にはキャップ固定溝72が形成されており、パッキン60,上蓋内板50,上蓋外板40の各対応位置にはキャップ貫通孔62,52,42が設けられている。上蓋ユニット30として重ねられた各部材40,50,60,70がこのような形状に形成されていることにより、キャップ32を上蓋ユニット30に嵌め込んでコネクタ106を上方から浸入しようとする水から保護(防水)することができる。また、必要に応じてキャップ32を外せば、コネクタ106に外部機器を接続させて第1基板100に配された電子部品に記録されている制御内容を適宜書き換えることが可能となる。
【0040】
また、固定部材70のLED配置孔108に対向する位置にはLED透光孔78が形成されており、上蓋内板50,上蓋外板40の各対応位置にはLED透光孔58,48が形成されている。パッキン60の対応位置には透光孔が設けられていないが、上述のようにパッキン60はそれ自体が透光性を有する部材で形成されているため、穿孔せずとも下方から届く光を上方に透過させることができる。したがって、上蓋ユニットを構成する各部材40,50,60,70が重ね合されることにより、LED配置孔108から発せられる光を上蓋ユニット30の外部まで届かせてその点灯状態を上方から視認することが可能となる。
【0041】
固定部材70にはさらに、接地用治具200を締結させる接地用ネジ(
図4には不図示)を逃がすための接地用ネジ受け入れ穴80を側面に有している。接地用治具200は、相互に直角をなす3つの面が直列に連なったU字形状をなしており、このうち固定部材70に対向する1つの面にはネジ受け穴(雌ねじ)としての貫通孔202を有しており、他の相互に対向する2つの面にもネジ受け孔204をそれぞれ有している。図示しない接地用ネジは、ケーシング10の外側からねじ込まれ、接地用治具200の側面に形成された貫通孔202にて締結される。ネジ受け孔204は、固定部材70に対し第2基板110(
図4には不図示)を背面側から固定させるための締結部材を締結させる。
【0042】
上蓋外板40、上蓋内板50、パッキン60は、各々を固定部材70に対して締結させるための締結部材34を通す貫通孔44,54,64を有しており、これら貫通孔44,54,64は、キャップ貫通孔42,52,62及びLED透光孔48,58に近接した位置にある。貫通孔44,54,64に通された締結部材34は、固定部材70の上面に設けられたネジ受け穴74(雌ねじ)に受け入れられて締結される。また、各部材40,50,60の四隅には、各々を胴体11に対して締結させるための締結部材を通す貫通孔46,56,66を有している。貫通孔46,56,66に通された締結部材は、胴体11の上端四隅に設けられたネジ受け孔に受け入れられて締結される。
【0043】
図5は、上蓋ユニット30を表す平面図であり、
図5中(A)にはキャップ32が嵌め込まれた状態が示されており、
図5中(B)にはキャップ32が取り外された状態が示されている。
【0044】
図5中(A):上蓋外板40の中央部には、キャップ貫通孔42が左寄りの位置に形成されている。また上蓋外板40には、一方向(ここでは前後方向)に直列する配置で3つのLED透光孔48が右寄りの位置に形成されている。キャップ貫通孔42にはキャップ32が嵌め込まれている。キャップ32の上面に形成されている六角形の窪みは、キャップ32を上蓋ユニット30に嵌め込む際に六角レンチ等の工具をフィットさせる穴である。工具を用いた締結によりキャップ32の締め付けトルクを適正に調節し、確実な密封性(防水性)を確保することが可能となる。
キャップ貫通孔42及びLED透光孔48を外側から挟む2箇所には締結部材34が締結されている。また、上蓋外板40の上方からは視認できないが、これより下方でキャップ貫通孔42の左奥側の位置に接地用治具200及び接地用ネジ210が配置されることが分かる。
【0045】
図5中(B):キャップ32が取り外された開口からはコネクタ106が露出している。開口の周囲にはキャップ固定溝72が形成されており、この溝がキャップ32に形成されたネジ山と噛み合うことにより、キャップ32が上蓋ユニット30に固定される。コネクタ106の水平方向における位置はキャップ固定溝72の中心に一致しており、さらにはここに嵌め込まれるキャップ32の中心にも一致する。
【0046】
図6は、上蓋ユニット30を表す底面図である。
上蓋ユニット30の最下部に配置された固定部材70の底面には、第1基板100が締結部材102により2箇所で締結されている。また、前後方向に直列する3つのLED透光孔108の各底部にはLEDチップ103が設けられており、さらにその下側からはシリコン等のシーリング材で形成された保護シール101が各LED透光孔108及び各LEDチップ103を完全に覆っている。保護シール101は、ケーシング10内部に充填される封止樹脂がLED透光孔108に流れ込むことにより光路が遮断されるのを防止ししている。
【0047】
図7は、固定部材70と第1基板100との接着態様を説明する図である。このうち、
図7中(A)には固定部材70の底面図が示されており、
図7中(B)には第1基板100の平面図が示されている。
【0048】
図7中(A):固定部材70の底面には、キャップ固定溝72の外周から間隔を置いた位置に環状の保護溝88が形成され、さらにこの溝の外側にも間隔を置いた位置に環状の接着溝86が形成されている。また、直列する3つのLED透光孔78の周囲にもこれと同様に、環状の保護溝84及び環状の接着溝82が複重をなして(ここでは二重に)形成されている。この図では接着溝82,86及び保護溝84,88はグレーに着色されており、各溝がある程度の幅を有していることが分かる。接着溝82,86は、第1基板100の上面を固定部材70の底面に接着させる際に用いる接着剤(シーリング剤)が注入される溝である。また、保護溝84,88は、接着溝82,86から溢れ出た接着剤を受け入れる溝である。
【0049】
図7中(B):第1基板100の上面が固定部材70の底面に固定される際に接着溝82,86及び保護溝84,88に対応する位置が二点鎖線で示されグレーに着色されている。この図から、接着溝82,86より内側に形成された保護溝84,88は、これらよりも内側に配置されているコネクタ106及びLED透光孔108から間隔を空けた位置に形成されていることが分かる。
【0050】
第1基板100を固定部材70に固定させる際には、各接着溝82,86に接着剤を注入した後に第1基板100の上面を固定部材70の底面に押し付けて接着させた上で、第1基板100の底面側から貫通孔104に締結部材を通し固定部材70の底面に設けられたネジ受け孔76に締結させる。このとき、接着剤の注入具合によっては接着剤が接着溝82,86から溢れ出て内側に流れ込む可能性が考えられる。仮にそのような事態が生じ、流れ込んだ接着剤がキャップ固定溝72やLED透光孔78まで達した場合、キャップ固定溝72の一部に接着剤が付着してキャップの密封性が確保できなくなったり、或いはLED透光孔78の一部を塞いで発光に影響を及ぼしたりする虞がある。そこで、接着溝82,86の内側に保護溝84,88を設け、接着溝82,86から溢れ出た接着剤が内側に流れ込んだ場合にこれらを受け入れて、さらに内側に流れ込むことがないよう配慮している。
【0051】
図8は、キャップ32を斜め下からみた状態を表す斜視図である。
キャップ32は、上蓋ユニット30の開口に嵌め込まれる筒状の嵌込部と、その上端を塞ぐ開口より大きな面積を有する天板部とが接合されてなり、これら部位はいずれも、例えばPBT等の樹脂で形成される。嵌込部の外面には、開口の周囲に形成された溝に嵌め込まれるネジ山36が形成されている。また、天板部には、嵌込部との接合位置よりも外周寄りの位置に環状の突起38が形成されている。
電源装置1の使用時には、上蓋ユニット30の開口にキャップ32をねじ込むことにより、ネジ山36が開口の周囲に形成された溝に嵌め込まれていくと同時に、環状突起38が弾性を有するパッキン60に押し当てられるため、キャップ32が完全に嵌め込まれた状態では、環状突起38がパッキン60に食い込んだ格好になる。このような構造により、キャップ32は上蓋ユニット30に対する水密性を確保し、キャップ32の内側に位置するコネクタを水濡れから保護することができる。
【0052】
図9は、キャップ32が完全に嵌め込まれた状態における上蓋ユニット30の一部を表す垂直断面図(
図5中のIX−IX線に沿う断面図)である。
この図に示されるように、キャップ32はコネクタ106に覆い被さる位置に配置され、ネジ山36がキャップ固定溝72に噛み合うことにより固定部材70に嵌め込まれ固定されている。また、環状突起38がパッキン60に食い込み、外部から水が浸入しうる経路を完全に遮断している。
固定部材70の底面には、キャップ固定溝72の外周から外側に間隔を置いた位置に保護溝88が形成され、ここからさらに間隔を置いた位置に接着溝86が形成されている。また、LED透光孔108の外周から外側に間隔を置いた位置に保護溝84が形成され、ここからさらに間隔を置いた位置に接着溝82が形成されている。内側に形成された保護溝84,88は、外側に形成された接着溝82,86よりも深く抉られており、接着溝82,86から内側に溢れ出た接着剤を十分に受け入れ可能であることが分かる。
【0053】
また、LED透光孔108の底部に配置されたLEDチップ103の上にはLED光源105が載せられており、LED光源105の上方の空間はパッキン60を除いて開放されている。このような配置により、LED光源105が発した光が透光性を有するパッキン60を透過してさらに上方に放出されるため、LED光源105の点灯状態を上蓋ユニット30の上方から視認することができる。
LED透光孔108はLEDチップ103と併せて第1基板100の底面側から保護シール101により覆われており、第1基板100の底面側に充填されることとなる封止樹脂の浸入から保護されている。
【0054】
図10は、電源装置1の全体構造を簡略的に表す垂直断面図(
図5中のX−X線に沿う断面図)である。
電源装置1は、上蓋ユニット30、胴体11、下蓋ユニット20により囲まれた内部空間140に3枚の基板(第1基板100、第2基板110、第3基板120)を収容している。これらの各基板100,110,120は、上蓋ユニット30の一部をなす固定部材70に対して直接的又は間接的に固定されることにより内部空間140における位置が決まるとともに、各基板100,110,120間が相互に電気的に接続される。また、固定部材70はその側部で接地用治具200を支持している。接地用治具200は、電源装置1を組み立てる終盤、すなわち上蓋ユニット30を胴体11に対して締結部材12で締結させた後で、且つケーシングの内部に形成された内部空間140に対し封止樹脂150が充填される前の段階で、胴体11の外側から挿入される接地用ネジ210を受け付けて締結させることにより、各基板100,110,120に設けられた電子部品をケーシング(胴体11)に接地させる。
【0055】
固定部材70はさらに、第1基板100に設けられたコネクタ106を取り囲む位置にキャップ固定溝72を有しており、通常時はこの固定溝72にキャップ32が嵌め込まれている。キャップ32の内側に設けられた環状突起38をパッキン60に食い込ませることによりキャップ32により塞がれる空間の水密性をより確実なものとし、コネクタ106を水濡れから保護している。また、パッキン60は、上蓋ユニット30と胴体11との接合部分を隙間なく密着させて水の浸入を防止する役割も果たしている。
電源装置1の完成状態では、封止樹脂150が下蓋ユニット20の内面との間の多少の空間を残した状態で内部空間140のほぼ全体を埋め尽くして密封し、各電子基板の中空部分を安定した状態に保持しつつその表面を保護する。
【0056】
以上のように、電源装置1は、内部空間140に収容される電子部品に対する防水構造を構成部材全体で実現している。各構成部材の材料はいずれも一般的な電源装置に用いられるものであり、特別な材料や部品は採用して防水化を図ったものではない。例えば、従来技術で述べた防水型コネクタを使用する場合には、防水加工にある程度のコストを要するため製造コストが増大する点が課題となる。これに対し本実施態様においては、上述したような構成によって防水性の確保を低コストに実現することが可能である。
【0057】
図11は、異なる実施形態の電源装置における上蓋ユニットを表す正面図である。
図11中(A):低背型の電源装置における上蓋ユニット230を表す正面図である。ここで「低背型」とは、設置場所の空間上の制約等により短手方向の寸法(上述の実施形態における電源装置1でいうと横幅)が小さく抑えられた形状を採用したタイプを指す。上述の実施形態における上蓋ユニット30と比較してみると、上蓋ユニット230においてはその最上部に配置された上蓋外板140の横幅が小さく抑えられており、起立部の外側面が上蓋内板50及びパッキン60の各端部と一直線上に揃えて配置されている。この場合、上蓋外板140の起立部の根元に形成された曲線形状によってパッキン60の端部に対する上蓋外板140による押圧力が弱まる。しかしながら、上蓋外板140とパッキン60との間には上蓋内板50が配置されており、上蓋内板50の端部がパッキン60の端部を押し込むことができるため、低背型としたことにより低下する上蓋外板140による押圧力を上蓋内板50が十分に補強し、上蓋ユニット30の場合と同様に胴体11の上端にパッキン60を押し当てて圧着させた圧着させた状態で塞ぐことが可能となる。
【0058】
図11中(B):さらに異なる実施形態の電源装置における上蓋ユニット330を表す正面図である。この上蓋ユニット330は、電源装置1の上蓋ユニット30と同様に、その最上部に配置された上蓋外板40の起立部の外側面がパッキン60の端部よりも外側に突出している。そのため、パッキン60に対しては矩形状の底面のみが対向しその両端部を押し込むことができる。したがって、上蓋内板50による押圧力の補強がなくとも十分に胴体11の上端にパッキン60を圧着させた状態で塞ぐことができるため、上蓋内板50を介在させない構成としている。このような構成を採ることにより、ケーシング10の材料及び組立に要するコストを効果的に抑制することが可能となる。
【0059】
以上のように、上述の実施形態による電源装置1によれば、上蓋ユニット30と胴体11とがパッキン60挟んで締結されることにより防水性が発揮され、これらの接合部分からケーシング10の内部に水が浸入するのを防止することができる。また、コネクタ106を使用する際には、キャップ32を取り外してコネクタ106を露出させ作業用の外部機器をコネクタ106に接続させることができる一方で、電源装置1の通常稼働時には、キャップ32を嵌め込み上蓋ユニット30にキャップ32を密着させてコネクタ106が配置されている空間の防水性を確実に維持することが可能となる。
【0060】
また、シーリング材が塗布される接着溝86の内側に保護溝88が形成されているため、第1基板100と固定部材70とを接着させる際にシーリング材が接着溝86から内側に向かい溢れ出た場合でも、これを保護溝88が確実にキャッチすることができる。したがって、シーリング材のキャップ固定溝72への流入を回避しキャップ固定溝72に対してキャップ32を強固に締結させることが可能となる。
【0061】
さらに、キャップ32をキャップ固定溝72に締結させると、キャップ32に設けられた環状突起38がパッキン60を押し込みこれに密着した状態で固定部材70に固定されるため、キャップ32で塞がれる空間がさらに確実に密封される。したがって、第1基板100、固定部材70及びキャップ32によって取り囲まれるコネクタ106の配置空間における水密性をより一層向上させることが可能となる。
【0062】
以上のような構造により、ケーシング10内の防水性を確保して電源装置1の内部に収容された電子部品(コネクタ106、各基板100,110,120等)を水濡れから保護して、照明器具に対して安定的に電力を供給することが可能となる。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。例えば、金属穿孔26の金属バリ対策として設けた絶縁板28は、下蓋外板21の平板矩形状の部位全体を覆うとともに金属穿孔26に対応する位置にケーブル孔27を開口させつつ金属穿孔26の内周面まで食い込ませてその縁部を立体的に覆う形状としたが、これに限定されず、金属バリの状況やコストとの兼ね合い等により他の形状を採用することも可能である。例えば、金属穿孔26の縁部のみを覆って保護する断面凸型(周方向)のグロメットを用いてもよい。また、これをさらに簡易化し、グロメットの内周側が金属穿孔26の内周面に食い込まない平型タイプの部材を金属穿孔26の縁部に被せてもよい。
【0064】
キャップ32は、ネジ山36をキャップ固定溝72に噛み合わせてねじ込むことにより上蓋ユニット30の開口を密封しているが、開口の密封が可能ならば他の機構を採用してもよい。例えば、ネジ山36に替えてこの部位をゴム等の弾性素材で形成すると同時に、キャップ固定溝72に替えてこの部位を平面形状の口部とし、キャップ32を口部に圧入させることにより開口を密封する圧栓型とすることも可能である。より確実に密封性を維持するために、圧栓させたキャップの上から着脱可能な金具等で固定させてもよい。
【0065】
また、キャップ32及び固定部材70の材料には、いずれも一例としてPBTを挙げているが、これに限定されず、形状安定性や絶縁性等の面において所望の性能を発揮し得る材料であれば、他の材料を適宜選択可能である。
【0066】
ケーシング10の内部は、収容された電子部品との間に形成される空間に充填される封止樹脂150により電子部品を水濡れから保護している。ここで、ケーシング10側面の内側、すなわち胴体11内側の接地に関わる部位等を除く領域に絶縁性材料で形成された絶縁側壁を設けてこの内側に電子部品を収容することとし、絶縁側壁と電子部品との間に形成される空間に封止樹脂150を充填してもよい。
【0067】
胴体11の両端を閉じる蓋ユニット20,30においては、上蓋ユニット30はその一部にパッキン60を配置し胴体11の上端の接合部分を隙間なく密着させ水密性を高めた一方、下蓋ユニット20はパッキン60を用いない構成とした。これは、位置関係を考慮して採用した構成である(下から上に向かって水が浸入する可能性が低く下蓋ユニット20は上蓋ユニット30ほどの水密性の確保が不要と判断した)が、下蓋ユニット20にもパッキン60を含めてさらに水密性を高めてもよい。