(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属ナノワイヤー本体は、Ag、Au、Ni、Cu、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Fe、Co、Sn、Al、Tl、Zn、Nb、Ti、In、W、Mo、Cr、V、及びTaからなる群から選択される少なくとも1種の元素で構成される、請求項1から6のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(透明導電膜)
本発明の透明導電膜は、少なくとも、金属ナノワイヤーを含み、さらに必要に応じて、バインダー(透明樹脂材料)、その他の成分を有する。前記金属ナノワイヤーは、前記バインダーに分散していることが好ましいが、後述する
図5に示すように、基材上に集積されていてもよい。
【0027】
<金属ナノワイヤー>
前記金属ナノワイヤーは、少なくとも、金属ナノワイヤー本体を有し、さらに必要に応じて、前記金属ナノワイヤー本体に吸着した有色化合物、その他の成分を有することが好ましい。
【0028】
前記金属ナノワイヤーのバンドル構造の数としては、前記透明導電膜の縦30μm、横40μm(30μm×40μm)の長方形の面積領域当たり3個以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2個以下が好ましく、1個以下がより好ましく、0個が特に好ましい。
前記金属ナノワイヤーのバンドル構造の数が、3個を超えると、外光散乱を抑制することができない。一方、前記金属ナノワイヤーのバンドル構造の数が、前記好ましい範囲内、前記より好ましい範囲内、又は前記特に好ましい範囲内であると、外光散乱をより抑制することができる点で有利である。
なお、前記バンドル構造とは、2本以上の金属ナノワイヤーが一部もしくは全体で互いに線接触している構造を意味する。
ここで、本明細書における「線接触」とは、2本以上の金属ナノワイヤーが1μm以上接触していることを意味する。
【0029】
図8は、本発明の透明導電膜における金属ナノワイヤーのバンドル構造の一部概略を示す図である。
図8(A)では、2本の金属ナノワイヤー13が全体で互いに線接触している。
図8(B)では、2本の金属ナノワイヤー13が一部で互いに線接触している。
図8(C)では、3本の金属ナノワイヤー13が一部で互いに線接触している。
【0030】
<<金属ナノワイヤー本体>>
金属ナノワイヤー本体は、金属を用いて構成されたものであって、nmオーダーの径を有する微細なワイヤーである。
【0031】
前記金属ナノワイヤー本体の構成元素としては、金属元素である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ag、Au、Ni、Cu、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Fe、Co、Sn、Al、Tl、Zn、Nb、Ti、In、W、Mo、Cr、V、Ta、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、AgやAuが、導電性が高い点で、好ましい。
【0032】
前記金属ナノワイヤー本体の平均短軸径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜500nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
前記金属ナノワイヤー本体の平均短軸径が1nm未満であると、金属ナノワイヤー本体の導電率が劣化して、斯かる金属ナノワイヤー本体を含む透明導電膜が導電膜として機能しにくいことがあり、500nmを超えると、斯かる金属ナノワイヤー本体を含む透明導電膜の全光線透過率が劣化し、ヘイズ(Haze)が高くなることがある。一方、前記金属ナノワイヤー本体の平均短軸径が前記より好ましい範囲内であると、金属ナノワイヤー本体を含む透明導電膜の導電性が高く、且つ透明性が高い点で有利である。
【0033】
前記金属ナノワイヤー本体の平均長軸長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜50μmが好ましい。
前記金属ナノワイヤー本体の平均長軸長が5μm未満であると、前記金属ナノワイヤー本体同士がつながりにくく、斯かる金属ナノワイヤー本体を含む透明導電膜が導電膜として機能しにくいことがあり、50μmを超えると、斯かる金属ナノワイヤー本体を含む透明導電膜の全光線透過率が劣化すると共に、透明導電膜を形成する際に用いるにおける金属ナノワイヤー本体の分散性が劣化することがある。
なお、金属ナノワイヤー本体の平均短軸径及び平均長軸長は、走査型電子顕微鏡により測定可能な、数平均短軸径及び数平均長軸長である。より具体的には、金属ナノワイヤー本体を少なくとも100本以上測定し、電子顕微鏡写真から画像解析装置を用いて、それぞれのナノワイヤーの投影径及び投影面積を算出する。投影径を、短軸径とした。また、下記式に基づき、長軸長を算出した。
長軸長=投影面積/投影径
平均短軸径は、短軸径の算術平均値とした。平均長軸長は、長軸長の算術平均値とした。
さらに、前記金属ナノワイヤー本体は、金属ナノ粒子が数珠状に繋がってワイヤー形状
を有しているものでもよい。この場合、長さは限定されない。
【0034】
前記金属ナノワイヤー本体の目付量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択
することができるが、0.001g/m
2〜1.000g/m
2が好ましく、0.003
g/m
2〜0.03g/m
2がより好ましい。
前記金属ナノワイヤー本体の目付量が、0.001g/m
2未満であると、金属ナノワ
イヤー本体が十分に吸着ワイヤー層中に存在せず、透明導電膜の導電性が劣化することが
あり、1.000g/m
2を超えると、透明導電膜の全光線透過率やヘイズ(Haze)
が劣化することがある。一方、前記金属ナノワイヤー本体の目付量が前記より好ましい範
囲内であると、透明導電膜の導電性が高く、且つ透明性が高い点で有利である。
【0035】
<<有色化合物>>
前記有色化合物は、可視光領域に吸収を持ち、且つ金属ナノワイヤー本体に吸着する物
質である。ここで、本明細書における「可視光領域」とは、およそ360nm以上830
nm以下の波長帯域である。このような有色化合物は、(i)染料、又は、(ii)可視光領域に吸収を持つ発色団と、前記金属ナノワイヤー本体を構成する金属に結合する基とを有する化合物(一般式[R−X](但し、Rは、可視光領域に吸収を持つ発色団であり、Xは、前記金属ナノワイヤー本体を構成する金属に結合する官能基(部位)である。)で表される化合物)である。
【0036】
前記金属ナノワイヤー本体に対する前記有色化合物の吸着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜10質量%が好ましい。
前記金属ナノワイヤー本体に対する前記有色化合物の吸着量が、0.5質量%未満であると、外光散乱の抑制効果が小さく、パターンの非視認性が悪くなることがあり、10質量%を超えると、吸着した有色化合物が金属ナノワイヤーの接触を阻害して、導電性が劣化することがある。
【0037】
−染料−
前記染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性染料、直接染料などが挙げられる。
前記染料の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、日本化薬製Kayakalan BordeauxBL、Kayakalan Brown GL、Kayakalan Gray BL167、Kayakalan Yellow GL143、KayakalanBlack 2RL、Kayakalan Black BGL、Kayakalan Orange RL、Kayarus Cupro Green G、Kayarus Supra Blue MRG、Kayarus Supra Scarlet BNL200、田岡化学工業製Lanyl Olive BG、日本化薬製Kayalon Polyester Blue 2R−SF、Kayalon Microester Red AQ−LE、Kayalon Polyester Black ECX300、Kayalon Microester Blue AQ−LE、等のスルホ基を有する染料;N3、N621、N712、N719、N749、N773、N790、N820、N823、N845、N886、N945、K9、K19、K23、K27、K29、K51、K60、K66、K69、K73、K77、Z235、Z316、Z907、Z907Na、Z910、Z991、CYC−B1、HRS−1等のRu錯体としてのカルボキシル基を有する染料(色素増感太陽電池用色素);Anthocyanine、WMC234、WMC236、WMC239、WMC273、PPDCA、PTCA、BBAPDC、NKX−2311、NKX−2510、NKX−2553(林原生物化学製)、NKX−2554(林原生物化学製)、NKX−2569、NKX−2586、NKX−2587(林原生物化学製)、NKX−2677(林原生物化学製)、NKX−2697、NKX−2753、NKX−2883、NK‐5958(林原生物化学製)、NK‐2684(林原生物化学製)、Eosin Y、Mercurochrome、MK−2(総研化学製)、D77、D102(三菱製紙化学製)、D120、D131(三菱製紙化学製)、D149(三菱製紙化学製)、D150、D190、D205(三菱製紙化学製)、D358(三菱製紙化学製)、JK−1、JK−2、5、ZnTPP、H2TC1PP、H2TC4PP、Phthalocyanine Dye(Zinc phtalocyanine−2,9,16,23−tetra−carboxylic acid、2−[2'−(zinc9',16',23'−tri−tert−butyl−29H,31H−phthalocyanyl)] succinic acid、Polythiohene Dye(TT−1)、Pendant type polymer、Cyanine Dye(P3TTA、C1−D、SQ−3、B1)等の有機色素系としてのカルボキシル基を有する染料(色素増感太陽電池用色素);などが挙げられる。
【0038】
−発色団[R]−
前記発色団[R]としては、可視光領域に吸収を持つものである限り、特に制限はなく
、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不飽和アルキル基、芳香族、複素環、
金属イオン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併
用してもよい。
これらの中でも、芳香族、複素環、特に、シアニン、キノン、フェロセン、トリフェニ
ルメタン、キノリンが、透明性が向上した透明導電膜を製造することができる点で好まし
い。
前記発色団[R]の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すること
ができ、例えば、ニトロソ基、ニトロ基、アゾ基、メチン基、アミノ基、ケトン基、チア
ゾリル基、ナフトキノン基、インドリン基、スチルベン誘導体、インドフェノール誘導体
、ジフェニルメタン誘導体、アントラキノン誘導体、トリアリールメタン誘導体、ジアジ
ン誘導体、インジゴイド誘導体、キサンテン誘導体、オキサジン誘導体、フタロシアニン
誘導体、アクリジン誘導体、チアジン誘導体、硫黄原子含有化合物、金属イオン含有化合
物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても
よい。
これらの中でも、Cr錯体、Cu錯体、Co錯体、Ni錯体、Fe錯体、アゾ基、イン
ドリン基が、透明性が向上した透明導電膜を製造することができる点で好ましい。
【0039】
−官能基[X]−
前記官能基[X]は、金属ナノワイヤーを構成する金属ナノワイヤー本体に結合する基
である。前記官能基[X]の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択す
ることができ、例えば、スルホ基(スルホン酸塩を含む。)、スルホニル基、スルホンア
ミド基、カルボン酸基(カルボン酸塩を含む。)、アミノ基、アミド基、リン酸基(リン
酸塩及びリン酸エステルを含む)、フォスフィノ基、シラノール基、エポキシ基、イソシ
アネート基、シアノ基、ビニル基、チオール基、ジスルフィド基、カルビノール基、水酸
基、金属ナノワイヤーを構成する金属に配位可能な原子(例えば、N(窒素)、S(イオ
ウ)、O(酸素)等)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2
種以上を併用してもよい。前記官能基[X]は、前記有色化合物中に少なくとも1つ存在
していればよい。
これらの中でも、チオール基、ジスルフィド基が、有色化合物の吸着による導電性低下
を抑制する点で好ましい。
上述の一般式[R−X]で表される化合物中から、金属ナノワイヤー本体を構成する金
属毎に、その金属に吸着可能な化合物が選択して用いられる。
【0040】
前記官能基[X]を有する有色化合物として、自己組織化材料を使用してもよい。また
、前記官能基[X]は、前記発色団[R]の一部を構成するものであってもよい。なお、
前記有色化合物が前記官能基[X]を有する、有さないにかかわらず、前記発色団[R]
を有する化合物に対して、前記官能基[X]を含む化合物との化学反応により前記官能基
[X]を新たに付加してもよい。
【0041】
<<その他の成分>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記金属ナノワイヤー本体に吸着した分散剤;金属ナノワイヤー本体同士及び透明基材との密着性や耐久性を向上させるための添加剤;などが挙げられる。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン等のアミノ基含有化合物;スルホ基(スルホン酸塩含む)、スルホニル基、スルホンアミド基、カルボン酸基(カルボン酸塩含む)、アミド基、リン酸基(リン酸塩、リン酸エステル含む)、フォスフィノ基、シラノール基、エポキシ基、イソシアネート基、シアノ基、ビニル基、チオール基、カルビノール基等の官能基を有する化合物で金属に吸着可能なもの;などが挙げられる。
前記分散剤を前記金属ナノワイヤー本体に吸着させることにより、前記金属ナノワイヤー本体の分散性が向上する。
【0042】
前記分散剤は、後述する透明導電膜の導電性の劣化や、前記有色化合物の吸着が阻害されない程度の量で金属ナノワイヤー本体に付着されていることとする。
【0043】
<バインダー(透明樹脂材料)>
前記バインダー(透明樹脂材料)は、前記金属ナノワイヤーを分散させるものであり、既知の透明な天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができる。
前記バインダー(透明樹脂材料)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ポジ型又はネガ型感光性樹脂、などが挙げられる。
【0044】
<<熱可塑性樹脂>>
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、などが挙げられる。
【0045】
<<熱硬化性樹脂>>
前記熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル系ポリマー(ポリ酢酸ビニルのけん化物等)、ポリオキシアルキレン系ポリマー(ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等)、セルロース系ポリマー(メチルセルロース、ビスコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)などのポリマーと、(ii)金属アルコキシド、ジイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物などの架橋剤と、を含む組成物、などが挙げられる。
【0046】
<<ポジ型感光性樹脂>>
前記ポジ型感光性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)ノボラック樹脂、アクリル共重合樹脂、ヒドロキシポリアミド等のポリマーと、(ii)ナフトキノンジアジド化合物とを含む組成物、などの公知のポジ型フォトレジスト材料が挙げられる。
【0047】
<<ネガ型感光性樹脂>>
前記ネガ型感光性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)感光基を主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに導入したポリマー、(ii)バインダー樹脂(ポリマー)と架橋剤とを含む組成物、(iii)(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルオリゴマーの少なくともいずれかと光重合開始剤とを含む組成物、などが挙げられる。
【0048】
−(i)感光基を主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに導入したポリマー−
前記感光基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒素原子を含む官能基、硫黄原子を含む官能基、臭素原子を含む官能基、塩素原子を含む官能基、それらのいずれの原子も含まない官能基、などが挙げられる。
前記感光基の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アジド基、ジアジリン基、スチルベン基、カルコン基、ジアゾニウム塩基、ケイ皮酸基、アクリル酸基を含有する官能基、などが挙げられる。
これらの中でも、アジド基、ジアジリン基が好ましい。
【0049】
前記感光基を主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに導入したポリマーは、金属ナノワイヤーの分散性を阻害しないことが望ましく、水溶性であることが好ましい。ここで言う「
水溶性」とは、水に溶解するために分子内の主鎖に対して必要充分な量のイオン性もしく
は極性の側鎖を持つ化合物である。
なお、前記感光基を主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに導入したポリマーの水に対す
る溶解度(水100gに溶解するグラム数)としては、特に制限はなく、目的に応じて適
宜選択することができるが、25℃で1以上が好ましい。
【0050】
前記感光基が主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに導入される前のポリマーとしては、
特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール
、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセトアミド、ポリビニル
ホルムアミド、ポリビニルオキサゾリドン、ポリビニルスクシンイミド、ポリアクリルア
ミド、ポリメタアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリ酢酸ビニル系ポリマー(ポリ
酢酸ビニルのけん化物等)、ポリオキシアルキレン系ポリマー(ポリエチレングリコール
やポリプロピレングリコール等)、セルロース系ポリマー(メチルセルロース、ビスコー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、天然高分子(ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、プル
ラン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、キトサン、キチン誘導体、カラ
ギーナン、澱粉類(カルボキシメチルデンプン、アルデヒドデンプン)、デキストリン、
サイクロデキストリン等)、これらを構成するモノマー同士の共重合体、などが挙げられ
る。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。これにより、金属ナノ
ワイヤーの分散性を阻害することなく、インク化することができる。また、基材上に均質な塗膜を形成でき、実用的な300nm〜500nmの波長で、透明導電膜及び所定パターンの透明導電膜を形成することができる。
【化1】
(一般式(I)中、Xは、アジド基を含有する感光基の1種類以上であり、Rは、鎖状或いは環状のアルキレン基であって、主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに不飽和結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、芳香環、複素環、アミノ基、4級アンモニウム塩基、を1種類以上含有してもよく、R'は、鎖状或いは環状のアルキル基であって、主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに不飽和結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、芳香環、複素環、アミノ基、4級アンモニウム塩基、を1種類以上含有してもよく、l及びmは1以上であり、nは0以上である。)
【0051】
−(ii)バインダー樹脂(ポリマー)と架橋剤とを含む組成物−
前記バインダー樹脂(ポリマー)は、金属ナノワイヤーの分散性を阻害しないことが望ましく、水溶性ポリマーであることが好ましい。ここで言う「水溶性ポリマー」とは、水に溶解するために分子内の主鎖に対して必要充分な量のイオン性もしくは極性の側鎖を持つポリマーである。
前記水溶性ポリマーの水に対する溶解度(水100gに溶解するグラム数)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃で1以上が好ましい。
【0052】
前記水溶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセトアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルオキサゾリドン、ポリビニルスクシンイミド、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリ酢酸ビニル系ポリマー(ポリ酢酸ビニルのけん化物等)、ポリオキシアルキレン系ポリマー(ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等)、セルロース系ポリマー(メチルセルロース、ビスコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、天然高分子(ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、プルラン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、キトサン、キチン誘導体、カラギーナン、澱粉類(カルボキシメチルデンプン、アルデヒドデンプン)、デキストリン、サイクロデキストリン等)、これらを構成するモノマー同士の共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
前記架橋剤は、金属ナノワイヤーの分散性を阻害しないことが望ましく、水溶性であることが好ましい。前記架橋剤についての水溶性とは、0.1mM以上の濃度の水溶液を与えることができることを意味する。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスアジド化合物、芳香族ビスアジド化合物、多官能アジド化合物、芳香族多官能アジド化合物、ジアジリン化合物、芳香族ジアジリン化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビスアジド化合物、芳香族ビスアジド化合物、多官能アジド化合物、芳香族多官能アジド化合物、ジアジリン化合物、芳香族ジアジリン化合物、が好ましい。
【0054】
−(iii)(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルオリゴマーの少なくともいずれかと光重合開始剤とを含む組成物−
前記感光性材料として、(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルオリゴマーの少なくとも一方と光重合開始剤とを含む組成物を用いてもよい。前記(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルオリゴマーの少なくとも一方と光重合開始剤とを含む組成物は、金属ナノワイヤーの分散性を阻害しないことが望ましく、水溶性であることが好ましい。
前記(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルオリゴマーの少なくとも一方と光重合開始剤とを含む組成物の水に対する溶解度(水100gに溶解するグラム数)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃で1以上が好ましい。
【0055】
前記感光性材料のうちのネガ型感光性材料の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感光基アジド含有ポリビニルアルコール、水系
UVポリマー(中京油脂株式会社製O−106、O−391等)、などが挙げられる。
【0056】
前記ネガ型感光性材料の化学反応としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択す
ることができ、例えば、(i)光重合開始剤を介した光重合系、(ii)スチルベンやマ
レイミドなどの光二量化反応、(iii)アジド基やジアジリン基などの光分解による架橋反応、などが挙げられる。
これらの中でも、(iii)アジド基やジアジリン基などの光分解による架橋反応が、
酸素による反応阻害を受けない、硬化塗膜が耐溶剤性、硬度、耐擦傷性に優れるなど、硬
化反応性の点で、好ましい。
【0057】
前記バインダーには、必要に応じて、添加剤としての、界面活性剤、粘度調整剤、分散
剤、硬化促進触媒、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、などが添加されていて
もよい。
【0058】
<Δ反射L*値>
前記Δ反射L*値は、後述する透明電極の電極部及び非電極部の反射L*値の差を表す。一般に、Δ反射L*値が低いほど、透明電極の電極部及び非電極部の外光散乱の差が小さくなり、パターン見えを抑制することができる。電極部の外光散乱が小さい透明電極を用いたタッチパネルを搭載した表示素子において、明所コントラストが向上する。モバイル機器の屋外使用時に画面の視認性が向上し、電力消費量を抑制することができる。
【0059】
前記透明導電膜のΔ反射L*値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.5以下が好ましく、2.2以下がより好ましく、1.5以下がさらにより好ましく、1.0以下が特に好ましい。
前記透明導電膜のΔ反射L*値が、2.5を超えると、パターンの非視認性が悪くなり、明所コントラストが低くなり、黒浮き現象が発生し、表示パネルの表示面側に配置する用途に適用できないことがある。一方、前記透明導電膜のΔ反射L*値が、前記より好ましい範囲内、前記さらにより好ましい範囲及び前記特に好ましい範囲内のいずれかであると、黒浮き現象の発生を抑制し、表示パネルの表示面側に配置する用途に好適に適用できる点で有利である。
なお、Δ反射L*値は、JIS Z8722に従って評価することができ、下記式で表される。
(Δ反射L*値)=(基材を含む透明電極の反射L*値)−(基材の反射L*値)
【0060】
(透明導電膜の製造方法)
本発明の透明導電膜の製造方法は、金属ナノワイヤー分散液に水流分散処理を施した後に透明導電膜を形成する工程を含み、さらに必要に応じて、金属ナノワイヤー調製工程、透明導電膜製造用の分散液調製工程、その他の工程を含む。
また、前記有色化合物を金属ナノワイヤー本体に吸着させる場合は、前記有色化合物は、透明導電膜内で遊離等を生じることなく、金属ナノワイヤー本体表面にのみ偏在させることが望ましい。そのため、前記有色化合物を金属ナノワイヤー本体に吸着させて透明導電膜を製造する場合においては、金属ナノワイヤー本体に有色化合物を吸着させた金属ナノワイヤーを予め調製し、遊離の有色化合物を除去したものを用いて金属ナノワイヤー分散液を調製し、水流分散処理する方法が用いられる。
【0061】
<金属ナノワイヤー分散液>
前記金属ナノワイヤー分散液は、少なくとも、前述の金属ナノワイヤーと、分散液媒体とを含み、さらに必要に応じて、前述のバインダー(透明樹脂材料)、金属ナノワイヤーの分散性を向上させるための分散剤、密着性や耐久性を向上させるための添加剤、その他の成分を有する。
【0062】
<<分散液溶媒>>
前記分散液溶媒としては、前記金属ナノワイヤーを分散可能な溶剤である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール;シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のアノン;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルフィド;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記金属ナノワイヤー分散液を用いて形成される透明導電膜の乾燥ムラ、クラック、白化を抑えるため、前記分散液溶媒には、さらに、高沸点溶剤を添加して、分散液からの溶剤の蒸発速度を制御してもよい。
前記高沸点溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ブチルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、メチルグリコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
<<その他の成分>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、光吸収材料、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤、粘度調整剤、分散剤、硬化促進触媒、可塑剤、酸化防止剤、硫化防止剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、前記分散剤を添加する場合は、最終的に得られる透明導電膜の導電性が劣化し
ない程度の添加量にすることが好ましい。
【0065】
前記金属ナノワイヤー分散液における金属ナノワイヤーの配合量としては、特に制限は
なく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記金属ナノワイヤー分散液100質
量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましい。
前記金属ナノワイヤー分散液における金属ナノワイヤーの配合量が、0.01質量部未
満であると、最終的に得られる透明導電膜において金属ナノワイヤーに十分な目付量(0
.001g/m
2〜1.000g/m
2)が得られないことがあり、10質量部を超える
と、金属ナノワイヤーの分散性が極度に劣化することがある。
【0066】
<金属ナノワイヤー調製工程>
前記金属ナノワイヤー調製工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する
ことができ、例えば、金属ナノワイヤー本体に有色化合物を吸着させる工程、などが挙げ
られる。前記金属ナノワイヤー本体に有色化合物を吸着させる工程では、円筒濾紙法が好
適に用いられる。
【0067】
<<円筒濾紙法>>
前記円筒濾紙法は、少なくとも、(1)有色化合物及び溶媒を透過し、金属ナノワイヤ
ー及び有色化合物の凝集体を透過しないフィルター製の容器を、前記有色化合物を溶解乃
至分散させた溶媒が入った容器内に入れる工程と、(2)前記フィルター製の容器内に金
属ナノワイヤー本体を入れ、前記金属ナノワイヤー本体と溶媒中に溶解乃至分散した有色
化合物とを接触させる工程と、(3)前記フィルター製の容器を取り出し、前記フィルタ
ー製の容器内の溶媒及び前記溶媒中に遊離する有色化合物を除去する工程とを含み、必要
に応じて、その他の工程を含む。
【0068】
まず、円筒濾紙の内部に溶媒のみを入れ、円筒濾紙(フィルター)を充分に湿らせる。
ここで、使用される濾紙は、溶媒、有色化合物分子を透過可能である一方、有色化合物分子の凝集体、金属ナノワイヤー本体を透過不能なものを使用する。
前記円筒濾紙の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素繊維濾紙、セルロース繊維紙、ガラス繊維紙、シリカ繊維紙などが挙げられる。これらの中でも、溶媒中で形状が崩れにくい点で、フッ素繊維濾紙が好ましい。
フィルターとして円筒形状の濾紙(円筒濾紙)を使用しているが、前記フィルターの形状としては、内部に金属ナノワイヤーを分散した溶媒を収納可能な形状である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、本明細書においては、従来技術における有色化合物の金属ナノワイヤーへの吸着方法と区別するため、本発明に用いる方法を、便宜上「円筒濾紙法」とも称する。
【0069】
前記「溶媒」は、前記有色化合物を溶解可能な水以外の溶剤を示す。
前記溶媒としては、有色化合物を所定濃度に溶解可能な溶剤である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、3,3−ジメトキシプロピオニトリルエトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、3,3−オキシジプロピオニトリル、3−アミノプロピオニトリル、プロピオニトリル、シアノ酢酸プロピル、イソチオシアン酸3−メトキシプロピル、3−フェノキシプロピオニトリル、p−アニシジン3−(フェニルメトキシ)プロパンニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1−メトキシ-エタノール、1,1−ジメチル−2−メトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、酢酸ブチル、酢酸エチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチルメチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶媒は、前記有色化合物を所定某度に溶解及び/又は分散可能で、且つ金属ナノワイヤー分散液と相溶する材料を適宜選択することが好ましい。
【0070】
円筒濾紙より大きな容器に、有色化合物溶液を入れ、内部の溶媒を除いた円筒濾紙を、乾燥しないうちに、開口部を上に、底面を下にして前記有色化合物溶液内に浸漬させる。その際、円筒濾紙内部に外部の有色化合物溶液が若干量浸透するまで静置させることが好ましい。
【0071】
前記有色化合物溶液は、有色化合物を、前記溶媒に溶解して調製する。
前記有色化合物溶液中の有色化合物の濃度としては、特に制限はなく、有色化合物の種類に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%〜10.0質量%が好ましく、0.1質量%〜1.0質量%がより好ましい。
前記有色化合物溶液中の有色化合物の濃度が、0.1質量%〜1.0質量%であると、金属ナノワイヤー本体に有色化合物を効率よく吸着させることができ、かつ、有色化合物溶液内の有色化合物分子の凝集が生じにくい。
前記有色化合物溶液の調製時において、チオール類及びジスルフィド類の少なくとも一方を混合してもよい。
【0072】
円筒濾紙内部に、第1液媒中に分散させた金属ナノワイヤー本体(金属ナノワイヤー本体分散液)を入れ、所定時間静置する(吸着工程)。
金属ナノワイヤー本体を分散させる第1液媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、前記溶媒として使用可能な溶剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第1液媒中の金属ナノワイヤー本体の分散量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記金属ナノワイヤー本体分散液に対して、0.1質量%〜2.0質量%が好ましく、0.2質量%〜1.0質量%がより好ましい。前記金属ナノワイヤー本体の分散量が0.1%〜2.0%であると、効率よく有色化合物を吸着させることができ、かつ金属ナノワイヤー本体の凝集等を生じにくい。
【0073】
金属ナノワイヤー本体に有色化合物を吸着させる際の吸着温度としては、溶媒及び第1液媒が沸騰しない温度である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃〜100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
また、金属ナノワイヤー本体に有色化合物を吸着させる際の吸着時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間〜120時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ましい。
【0074】
前記吸着工程の終了後、円筒濾紙を取り出し、室温にて円筒形状を保持した状態で静置し、内部の液体を底部から濾液として滲出させる。その際、液体を完全に涸渇させないようにする。内部の液体の大部分が滲出した状態で、円筒濾紙内部に前記溶媒を入れ、さらに底部から液体を滲出させる。この操作は、濾液が無色透明となるまで複数回繰り返すことが好ましい。なお、この工程において、必要に応じて、溶媒に分散剤、界面活性剤、消泡剤、粘度調整剤等の添加剤を加えてもよい。
【0075】
次いで、円筒濾紙中に第2液媒を入れ、内部の液体を濾液として浸出させる(洗浄工程)。
前記第2液媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、前記溶媒として使用可能な溶剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記溶媒よりも高い極性を有するものが好ましい。
第1液媒と第2液媒とは、同じものであっても、異なるものであってもよい。好適には、両液媒とも純水が使用される。
【0076】
円筒濾紙内の溶媒が第2液媒と交換され、内部の液量が当初の金属ナノワイヤー本体分散液とほぼ同量となったところで、円筒濾紙の壁内についた、金属ナノワイヤー本体に有色化合物が吸着した金属ナノワイヤーをポリスポイト等で洗い流すようにして落とし、金属ナノワイヤー本体に有色化合物が吸着した金属ナノワイヤーを回収する。
【0077】
前記円筒濾紙法によれば、後に剥離脱落しやすい有色化合物凝集体が金属ナノワイヤー本体に接触しないこと、洗浄工程により遊離の有色化合物が除去されることから、遊離の有色化合物を生じにくい、金属ナノワイヤー(有色化合物が吸着した金属ナノワイヤー本体)を取得することが可能である。なお、前記円筒濾紙法は、本発明の透明導電膜の製造方法における、金属ナノワイヤー調製工程の一例を示すものであり、使用するフィルターの素材や形状、使用する溶剤、各段階の温度や時間の条件等は、適宜変更することができるものとする。
【0078】
<<金属ナノワイヤー本体への有色化合物の吸着量の評価>>
前記金属ナノワイヤー調製工程で取得され、後述の透明導電膜の形成に使用される金属ナノワイヤーにおける有色化合物の吸着量としては、金属ナノワイヤー本体に対し、0.5質量%〜10質量%である。
前記有色化合物の吸着量が、0.5質量%未満であると、金属ナノワイヤーにより光の乱反射を低減する、という効果が充分に得られず、10質量%超であると、形成される透明導電膜の導電性が低下しやすい、金属ナノワイヤーの分散性が低下する、等の問題が生じ得る。
【0079】
透明導電膜、分散液の調製に使用される金属ナノワイヤーの有色化合物吸着量の評価は、以下の分析により行われる。
【0080】
−STEM EDSによる分析−
金属ナノワイヤーを、STEM EDSによる分析を行うことで、金属ナノワイヤー本体の質量に対する、有色化合物の質量を測定乃至算出することができる。例えば、トプコンテクノハウス社製EM−002B及びサーモフィッシャーサイエンティフィック社製system6を用いたEDS測定と、ICP元素分析、透過型電子顕微鏡観察(TEM)等を組み合わせることで実施することができる。
【0081】
金属ナノワイヤー本体への有色化合物吸着量は、以下の方法で分析、算出することができる。
EDS測定により、金属ナノワイヤーの構成元素と、有色化合物中の特徴的な元素の質量%をそれぞれ測定し、次いで、金属の質量と有色化合物の質量との比を算出する。
以上の方法により、金属ナノワイヤー本体に吸着した有色化合物の吸着量を確認することが可能である。
【0082】
<金属ナノワイヤーの分散性>
前記金属ナノワイヤー分散液中の金属ナノワイヤーの分散性を高める手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、攪拌、超音波分散、ビーズ分散、混錬、ホモジナイザー処理、水流分散処理などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。その中でも水流分散処理が、金属ナノワイヤーを壊すことなく分散性を向上させるのに適している。
【0083】
<<水流分散処理>>
前記水流分散処理とは、プランジャポンプなどで分散液を微細な流路に圧入し、流路中の乱流及びせん断力により被分散物を分散媒に分散させる方法である。分散処理条件は、主に前記ポンプの吐出量、吐出圧と流路径及び長さ、処理回数により概ね決定される。分散処理が1度で不十分な場合は、回数を増やして行ってもよい。また、連続的に一定時間分散液を環流させて処理を行ってもよい。
【0084】
<透明導電膜の形成>
以下、透明導電膜(例えば、
図1の第1実施形態の透明電極における透明導電膜17)の形成について説明する。
前記透明導電膜は、後述する、分散膜の形成、分散膜の乾燥・硬化、などのプロセスを経て、透明基材上に形成される。前記透明導電膜が形成された透明基材には、後述する、パターニング(パターンエッチング)、カレンダー処理、などの処理が必要に応じて施され、透明電極が作製される。
【0085】
<<透明基材>>
前記透明基材の材料としては、可視光に対して透過性を有する材料である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機材料、プラスチック材料、などが挙げられる。
前記透明基材の厚みとしては、透明電極に必要とされる厚み(例えば、フレキシブルな屈曲性を実現できる程度に薄膜化されたフィルム状(シート状)を実現できる程度の厚み、適度の屈曲性と剛性を実現できる程度の厚み)である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0086】
−無機材料−
前記無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、石英、サファイア、ガラス、などが挙げられる。
【0087】
−プラスチック材料−
前記プラスチック材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、などが挙げられる。
前記プラスチック材料を用いた透明基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生産性の観点から、5μm〜500μmが好ましい。
【0088】
<<分散膜の形成>>
次に、
図2(A)に示すように、上述したようにして作製した分散液を用いて、透明基材11上金属ナノワイヤー本体13を分散させた分散膜17bを形成する。有色化合物を金属ナノワイヤーへ吸着している場合は有色化合物aが存在する。
分散膜17bの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、物性、利便性、製造コストなどの点で、湿式製膜法が好ましい。
前記湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布法、スプレー法、印刷法、などの公知の方法が挙げられる。
前記塗布法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法、などの公知の塗布法が挙げられる。
前記印刷法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、凹版印刷、ゴム版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、などが挙げられる。
【0089】
この状態においては、未硬化の透明樹脂材料(バインダー)15aを含む溶剤中に、金属ナノワイヤー本体13が分散された分散膜17bが形成される。有色化合物を金属ナノワイヤーへ吸着している場合は有色化合物aが存在する。
【0090】
<<分散膜の乾燥・硬化>>
次に、
図2(B)に示すように、透明基材11上に形成された分散膜17b中の溶剤を乾燥させて除去する。その後、未硬化のバインダー(透明樹脂材料)15aの硬化処理を行い、硬化させたバインダー(透明樹脂材料)15中に、金属ナノワイヤー本体13を分散させてなるワイヤー層17を形成する。有色化合物を金属ナノワイヤーへ吸着している場合は有色化合物aが存在する。以上の、溶剤の乾燥による除去は、自然乾燥であっても加熱乾燥であってもよい。その後、未硬化のバインダー(透明樹脂材料)15aの硬化処理を行い、硬化させた透明樹脂材料15中に金属ナノワイヤー本体13を分散させた状態とする。
【0091】
<<パターニング>>
ワイヤー層17からなる電極パターンを有する透明電極を作製する場合、
図2(A)に示す分散膜17bの形成工程において、予めパターニングされた分散膜17bを形成すればよい。分散膜17bのパターン形成は、例えば、印刷法によって行うことができる。また別の方法として、形成した分散膜17bを硬化させた以降の工程で、分散膜17b(ワイヤー層17)をパターンエッチングしてもよい。この場合、分散膜17b(ワイヤー層17)における電極パターン以外の領域において、少なくとも、金属ナノワイヤー本体13が分断されて絶縁状態となるようにパターンエッチングを行えばよい。
【0092】
<<カレンダー処理>>
得られる透明電極のシート抵抗値を下げるために、ロールプレス、平板プレス等のカレンダー処理を施すことが好ましい。なお、前記カレンダー処理は、必要に応じて、前記パターニング工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0093】
<<その他の処理>>
必要に応じて、透明電極に非視認化微細パターンを形成してもよい。非視認化微細パターンは、透明電極に複数の孔部を形成し、透明電極の存在しない基材の絶縁部の表面に複数の凸部を設けることにより電極パターンの視認性を抑制する技術である。複数の孔部や凸部は特許第4862969号の記載に従い、エッチング法、又は印刷法の方法により形成することができる。これにより、電極パターンの非視認性をさらに向上させることができる。
【0094】
<オーバーコート層を設けた透明電極の構成例(変形例1)>
図3には、透明電極の構成例(変形例1)として、第1実施形態の透明電極(
図1における透明電極1)にオーバーコート層80を設けた透明電極1−1の構成を示す。オーバーコート層80は、金属ナノワイヤー13本体を用いて構成されたワイヤー層17を保護するためのものであり、ワイヤー層17の上部に設けられている。
【0095】
このオーバーコート層80は、可視光に対して光透過性を有していることが重要であり、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はセルロース系樹脂で構成されるか、あるいは金属アルコキシドの加水分解、脱水縮合物などで構成される。またこのようなオーバーコート層80は、可視光に対する光透過性が阻害されることのない膜厚で構成されていることとする。オーバーコート層80が、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、アンチニュートンリング機能、およびアンチブロッキング機能などからなる機能群より選ばれる少なくとも1種の機能を有していてもよい。
【0096】
オーバーコート層80を形成する場合、金属ナノワイヤー本体13の少なくとも一部をオーバーコート層80の表面から露出させることが好ましい。
【0097】
<アンカー層を設けた透明電極の構成例(変形例2)>
図4には、透明電極の構成例(変形例2)として、第1実施形態の透明電極(
図1における透明電極1)にアンカー層90を設けた透明電極1−2の構成を示す。アンカー層90は、金属ナノワイヤー13を用いて構成されたワイヤー層17−透明基材11間の密着性を確保するためのものであり、ワイヤー層17−透明基材11との間に挟持されている。
【0098】
このアンカー層90は、可視光に対して光透過性を有していることが重要であり、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はセルロース系樹脂で構成されるか、あるいは金属アルコキシドの加水分解、脱水縮合物などで構成される。またこのようなアンカー層90は、可視光に対する光透過性が阻害されることのない膜厚で構成されていることとする。
【0099】
尚、本変形例2は、変形例1と組み合わせることも可能である。組み合わせた場合、アンカー層90−オーバーコート層80間に、金属ナノワイヤー本体13を用いて構成されたワイヤー層17を挟持させた構成となる。有色化合物を金属ナノワイヤーへ吸着している場合は有色化合物aが存在する。
【0100】
<バインダー(透明樹脂材料)に分散させずに金属ナノワイヤーを集積させた透明電極の構成例(変形例3)>
図5には、透明電極の構成例(変形例3)として、第1実施形態の透明電極(
図1における透明電極1)からバインダー(透明樹脂材料)を除去した透明電極1−3の構成を示す。透明基材11上には、金属ナノワイヤー本体13が、バインダー(透明樹脂材料)に分散されることなく集積されている。有色化合物を金属ナノワイヤーへ吸着している場合は有色化合物aが存在する。そして、金属ナノワイヤー本体13の集積によって構成されたワイヤー層17'が、透明基材11の表面との密着性を保って透明基材11上に配置されている。このような構成は、金属ナノワイヤー本体13同士および金属ナノワイヤー本体13と透明基材11との密着性が良好である場合に適用される。
【0101】
なお、このような変形例3は、変形例1および変形例2の少なくとも一方と組み合わせることが可能である。すなわち変形例1と組み合わせてワイヤー層17'の上方にオーバーコート層を設けてもよく、変形例2と組み合わせて透明基材11とワイヤー層17'との間にアンカー層を設けてもよい。
【0102】
このような構成の透明電極1−3であっても、金属ナノワイヤーのバンドル構造が透明導電膜の40μm×30μmの長方形の面積領域当たり3個以下である限り、第1実施形態で説明した構成の透明電極と同様の効果を得ることが可能である。
【0103】
<基材の一主面にハードコート層を設けた透明電極の構成例(変形例4)>
図6には、透明電極の構成例(変形例4)として、第1実施形態の透明電極(
図1における透明電極1)にハードコート層110を設けた透明電極1−4の構成を示す。ハードコート層110は、透明基材11を保護するためのものであり、透明基材11の下部に設けられている。
【0104】
このハードコート層110は、可視光に対して光透過性を有していることが重要であり、有機系ハードコート剤、無機系ハードコート剤、有機−無機系ハードコート剤などで構成される。またこのようなハードコート層110は、可視光に対する光透過性が阻害されることのない膜厚で構成されていることとする。
【0105】
なお、このような変形例4は、変形例1〜3のうちの少なくとも1つと組み合わせることが可能である。例えば、オーバーコート層やアンカー層などをさらに設けるようにしてもよい。アンカー層は、例えば、透明基材11とワイヤー層17との間、および透明基材11とハードコート層110との間の少なくとも一方に設けられる。オーバーコート層は、例えば、ワイヤー層17の上部、およびハードコート層110の下部の少なくとも一方に設けられる。
【0106】
<基材の両主面にハードコート層を設けた透明電極の構成例(変形例5)>
図7には、透明電極の構成例(変形例5)として、第1実施形態の透明電極(
図1における透明電極1)にハードコート層120、121を設けた透明電極1−5の構成を示す。ハードコート層120は、透明基材11を保護するためのものであり、透明基材11の下部に設けられている。ハードコート層121は、透明基材11を保護するためのものであり、透明基材11の上部に設けられている。ワイヤー層17は、ハードコート層121の上部に設けられている。
【0107】
このハードコート層120、121は、可視光に対して光透過性を有していることが重要であり、有機系ハードコート剤、無機系ハードコート剤、有機−無機系ハードコート剤などで構成される。またこのようなハードコート層120、121は、可視光に対する光透過性が阻害されることのない膜厚で構成されていることとする。
【0108】
なお、このような変形例5は、変形例1〜3のうちの少なくとも1つと組み合わせることが可能である。例えば、オーバーコート層やアンカー層などをさらに設けるようにしてもよい。アンカー層は、例えば、透明基材11とハードコート層121との間、ハードコート層121とワイヤー層17との間、および透明基材11とハードコート層120との間のうちの少なくとも一箇所に設けられる。オーバーコート層は、例えば、ワイヤー層17の上部、およびハードコート層120の下部の少なくとも一方に設けられる。
【0109】
(情報入力装置)
本発明の情報入力装置は、少なくとも、公知の透明基材と、本発明の透明導電膜とを備え、さらに必要に応じて、その他の公知の部材(例えば、特許第4893867号参照)を備える。前記情報入力装置は、本発明の透明導電膜を備えるため、黒浮き防止性(明所コントラスト)及び電極パターン非視認性に優れる。
前記情報入力装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第4893867号に示されるような、タッチパネル、などが挙げられる。
【0110】
(電子機器)
本発明の電子機器は、少なくとも、公知の表示パネルと、本発明の透明導電膜とを備え、さらに必要に応じて、その他の公知の部材(例えば、特許第4893867号参照)を備える。前記電子機器は、本発明の透明導電膜を備えるため、黒浮き防止性(明所コントラスト)及び電極パターン非視認性に優れる。
前記電子機器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第4893867号に示されるような、テレビ、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、携帯端末装置、などが挙げられる。
【実施例】
【0111】
以下の通り、本発明の透明導電膜としての実施例1〜4を、対照用の透明導電膜としての比較例1〜4を作製し、透明導電膜の物性評価を行った。各例の評価結果を、表1に示す。
なお、本出願明細書では、実施例1及び2を、それぞれ、参考例1及び2とする。
【0112】
(実施例1)
金属ナノワイヤー本体として、銀ナノワイヤー[1](Seashell Technology社製、AgNW−25(平均径25nm、平均長さ23μm))を使用した。
銀ナノワイヤー[1]、水およびエタノールを混合し、湿式の水流分散装置へ通して水流分散処理を行った。ここで、前記分散処理条件は、プランジャポンプ圧1.0MPaの条件で、流路径0.5mmかつ長さ300mmの流路中を3回繰り返し通すことで水流分散処理を行った。次いで、これらを水溶性感光性樹脂(東洋合成工業社製AWP-MRH)と混合した。なお、これらは下記の配合となるように調整した。
銀ナノワイヤー[1]:0.065質量%
水溶性感光性樹脂(東洋合成工業社製AWP-MRH):0.130質量%
水:89.805質量%
エタノール:10質量%
【0113】
次いで、分散液を番手10のコイルバーで透明基材上に塗布して分散膜を形成した。銀ナノワイヤーの目付量は0.013g/m
2とした。透明基材としては、膜厚125μmのPET(東レ製ルミラーU34)を用いた。
これらを大気中において塗布面にドライヤーで温風を当て、分散膜中の溶剤を乾燥除去した後、メタルハライドランプを用いて、大気中にて銀ナノワイヤー層から積算光量200mJ/cm
2で紫外線を照射して、水溶性感光性樹脂(バインダー)を硬化させた。
その後、カレンダー処理(ニップ幅1mm、荷重4kN、速度1m/分)を行った。
【0114】
(実施例2)
実施例1において、塗料の組成を以下にした以外は実施例1と同様にして透明電極を作製した。
銀ナノワイヤー[1]:0.04質量%
水溶性感光性樹脂(東洋合成工業社製AWP-MRH):0.08質量%
水:89.88質量%
エタノール:10質量%
【0115】
(実施例3)
金属ナノワイヤー本体として、銀ナノワイヤー[1](Seashell Technology社製、AgNW−25(平均径25nm、平均長さ23μm))を使用した。
有色化合物(染料)は、以下の手順で調製した。
田岡化学工業製Lanyl Black BG E/Cと、和光純薬工業製2−アミンエタンチオール塩酸塩を質量比4:1で水溶媒中で混合した。混合液を100分間、超音波洗浄器を用いて反応させ、その後、15時間静置した。反応液を孔径3μmのセルロース混合エステルタイプのメンブレンフィルターで濾過し、得られた固体を水で3回洗浄後、真空オーブン中で100℃で乾燥させ、染料[I]を作製した。
0.2質量%の染料[I]エタノール溶液を調製した。次いで、前記染料[I]エタノール溶液に、エタノールで湿らせたADVANTEC社製フッ素樹脂円筒濾紙No.89を浸漬させた。円筒濾紙内部に染料[I]エタノール溶液が滲出してきたところに、銀ナノワイヤー[1]を0.025g加えた。
これらを70℃で4時間加熱し、銀ナノワイヤー[1]に染料[I]を吸着させ、有色化合物が吸着した銀ナノワイヤー[2]を得た。加熱後、室温に戻し、円筒濾紙を染料[I]エタノール溶液から取り出した。次いで、円筒濾紙内部にエタノールを加え、濾液が目視で無色透明となるまでエタノールによる洗浄を繰り返した。
【0116】
洗浄後の銀ナノワイヤー[2]を回収し、銀ナノワイヤー[2]における、銀ナノワイヤー[1]に吸着した染料[I]の吸着量を、STEM EDSを用いて、測定、算出した。
STEM EDSの測定は、トプコンテクノハウス社製EM−002B及びサーモフィッシャーサイエンティフィック社製system6を用いて実施した。なお、EDS測定は、銀ナノワイヤー[2]の1サンプルにつき4回測定し、その平均値を測定値とした。
EDS測定により、銀ナノワイヤー[2]中には、Agが92.6質量%、Sが0.2質量%存在することが確認できた。
染料[I]の組成式はC
40H
34N
9O
13S
3Cr
1であり、分子量は997であることから、染料[I]の吸着量を以下のように算出した。
0.2/92.6=0.00216(Agに対するSの質量割合)
96/997=0.0963(染料[I]に対するSの質量割合)
0.00216/0.0963×100=2.24質量%
したがって、実施例3では、銀ナノワイヤー[2]における、銀ナノワイヤー[1]に吸着した染料[I]の吸着量は、約2.2質量%であることが判明した。なお、同様に染料[I]を使用した実施例4、並びに比較例3と4においても同様の方法で染料[I]吸着量を測定、算出した。
【0117】
実施例1において、得られた銀ナノワイヤー[2]を用いたこと以外は実施例1と同様にして透明電極を作製した。
【0118】
(実施例4)
実施例3において、塗料の組成を以下にした以外は実施例3と同様にして透明電極を作製した。
銀ナノワイヤー[2]:0.04質量%
水溶性感光性樹脂(東洋合成工業社製AWP-MRH):0.08質量%
水:89.88質量%
エタノール:10質量%
【0119】
(比較例1)
実施例1において、湿式の水流分散装置へ通す水流分散処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして透明電極を作製した。
【0120】
(比較例2)
実施例2において、湿式の水流分散装置へ通す水流分散処理を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして透明電極を作製した。
【0121】
(比較例3)
実施例3において、湿式の水流分散装置へ通す水流分散処理を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして透明電極を作製した。
【0122】
(比較例4)
実施例4において、湿式の水流分散装置へ通す水流分散処理を行わなかったこと以外は、実施例4と同様にして透明電極を作製した。
【0123】
<評価>
以上の実施例1〜4及び比較例1〜4で作製した透明導電膜について、A)バンドルの評価、B)全光線透過率[%]、C)ヘイズ値、D)シート抵抗値[Ω/□]、E)Δ反射L*値を評価した。各評価は、次のように行った。
【0124】
A)バンドルの評価
各透明導電膜のバンドルは、電界放出型走査電子顕微鏡(商品名;S−4700、HITACHI製)を用いて、2000倍で次の評価基準に従って評価した。
○:透明導電膜面内で無作為に3点スポットを選択し、選択した3点のスポットすべてにおいて、有するバンドル構造の数が透明導電膜の縦30μm×横40μmの長方形の面積領域当たり3つ以下の場合。
×:上記の有するバンドル構造の数が透明導電膜の縦30μm×横40μmの長方形の面積領域当たり4つ以上の場合。
【0125】
B)全光線透過率の評価
各透明導電膜の全光線透過率について、HM−150(商品名;(株)村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136に従って評価した。
【0126】
C)ヘイズ値の評価
各透明導電膜のヘイズ値について、HM−150(商品名;(株)村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136に従って評価した。なお、ヘイズ値としては、1.1以下が好ましい。
【0127】
D)シート抵抗値の評価
各透明導電膜のシート抵抗値は、MCP―T360(商品名;(株)三菱化学アナリテック製)を用いて評価した。なお、シート抵抗値としては、500[Ω/□]以下が好ましい。
【0128】
E)Δ反射L*値の評価
Δ反射L値は、銀ナノワイヤー層側に黒色のビニールテープ(ニチバン株式会社製VT−50)を貼合し、銀ナノワイヤー層側とは反対側から、JIS Z8722に従い、エックスライト社製カラーi5を用いて評価した。光源としては、D65光源を用い、SCE(正反射光除去)方式で、任意の3箇所で測定を行い、その平均値を反射L値とした。
ここで、Δ反射L*値は、下記計算式により算出することができる。
(Δ反射L*値)=(基材を含む透明電極の反射L*値)−(基材の反射L*値)
なお、Δ反射L*値としては、2.5以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。
【0129】
【表1】
【0130】
表1に示す結果から、以下のことが確認された。
先ず、実施例1と3、並びに実施例2と4とを比較すると、有色化合物を吸着した銀ナノワイヤー本体を用いたもの(実施例2と4)は、有色化合物を吸着していない銀ナノワイヤー(実施例1と3)と比較して、ヘイズ値及びΔ反射L*値が低く、良好な結果が得られた。これは、銀ナノワイヤー本体の表面に有色化合物が吸着することで、外光散乱が抑えられた結果と考えられる。
【0131】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、並びに実施例4と比較例4を、それぞれ比較すると、透明導電膜内に存在する銀ナノワイヤー重量が同程度にも関わらず、バンドル構造が存在しない、もしくは微少もの(実施例1〜4)は、シート抵抗値およびΔ反射L*値が低い。これは、バンドル構造が存在しない、もしくは微少であることから、効率よく導電性を有し、かつ外光散乱を抑えられた結果と考えられる。
【0132】
なお、
図9は、実施例1の走査型電子顕微鏡観察(SEM)画像であり、
図10は、比較例1の走査型電子顕微鏡観察(SEM)画像であり、
図11は、比較例3の走査型電子顕微鏡観察(SEM)画像である。
図9(実施例1)において、バンドル構造の数は0個であり、
図10(比較例1)において、バンドル構造の数は8個以上であり、
図11(比較例3)において、バンドル構造の数は8個以上であった。