(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開口部を有する躯体に取り付けられるドア枠と、前記ドア枠に蝶番を介して取り付けられるドア本体と、を備え、前記蝶番の軸を中心として前記ドア本体が開閉動作するドア構造であって、
前記ドア枠は、
前記開口部の縁に沿って配置され、前記躯体の正面よりも手前に前面が配置される断面視箱形の枠体と、
前記枠体から片状に延出し、前記躯体の前記正面に固定される第1取り付け片と、を有し、
前記ドア本体は、前記枠体の前記前面が戸当たり面となるように前記枠体に取り付けられ、
前記枠体は、前記枠体の一部に設けられた凹みである凹部を有し、
前記開口部の前記縁となる隅部が前記凹部に合わせられることで、前記枠体が前記開口部の前記縁に沿って取り付けられた、ドア構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドア枠の内側にドア本体が嵌まるように設けられたドア構造においては、ドア枠の歪みによってドア本体の開閉に影響が生じやすい。この点、ドア枠の外側にドア本体を設けることで、ドア枠の歪みによる開閉の影響を回避しやすくなる。しかし、ドア枠の外側にドア本体が設けられている場合であっても、ドア枠の歪みによって蝶番の機能が阻害されるとドア本体の開閉に影響を及ぼすことになる。地震対応に優れたドア構造においては、簡単な構造であって、ドア本体の優れた開閉性、気密性、施工のし易さが求められている。また、ドアは人目に付きやすいため、デザイン性や防犯性に優れていることが望ましい。
【0008】
本発明は、簡単な構造で、ドア本体の開閉性、気密性に優れ、しかも施工しやすいドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、開口部を有する躯体に取り付けられるドア枠と、ドア枠に蝶番を介して取り付けられるドア本体とを備え、蝶番の軸を中心としてドア本体が開閉動作するドア構造である。このドア構造におけるドア枠は、枠体と、第1取り付け片とを有する。枠体は
断面視箱形であって、開口部の縁に沿って配置され、躯体の正面よりも手前に前面が配置される。第1取り付け片は、枠体から片状に延出し、躯体の正面に
固定される。また、ドア本体は、枠体の前面が戸当たり面となるように枠体に取り付けられる。
枠体は、枠体の一部に設けられた凹みである凹部を有する。開口部の縁となる隅部が凹部に合わせられることで、枠体は開口部の縁に沿って取り付けられる。
【0010】
このような構成によれば、ドア枠が第1取り付け片によって躯体の前面に取り付けられているため、躯体の歪み等による応力を第1取り付け片で吸収することができる。これにより、ドア枠の歪みが抑制され、ドア本体の開閉性や、ドア本体とドア枠との気密性が確保される。しかも、枠体の前面がドア本体の戸当たり面になるため、たとえドア枠に歪みが発生したとしても、ドア本体を容易に開閉することができる。また、第1取り付け片を躯体の前面に取り付けることで枠体を固定できるため、施工が容易となる。
【0011】
本発明のドア構造において、枠体の前面に
おいて枠体の開口の周りを囲むように環状に設けられ、ドア本体が閉まっている状態でドア本体の内表面と接するシール部と、枠体の前面に設けられ、シール部
と隣接する外
側に設けられる熱膨張材と、をさらに備えていてもよい。このようなシール部によって、ドア本体と枠体の前面との間の気密性が高まるとともに、火災などで熱が加わった場合に熱膨張材が膨張して気密性を高め、熱や熱風の侵入を抑制することができる。
【0012】
本発明のドア構造において、枠体は、矩形を構成する上枠体、下枠体、右枠体および左枠体を有し、ドア本体が閉まっている状態でドア本体の上枠体と対向する面におけるシール部よりも上方に、上側シール部が設けられていてもよい。これにより、ドア本体の上から落ちてくる水分や湿気を上側シール部およびシール部で効果的に防ぐことができる。
【0013】
本発明のドア構造において、ドア本体が閉まっている状態でドア本体と枠体との間の上を覆う庇部をさらに備えていてもよい。このような庇部によって、ドア本体の上からの水分の浸入を効果的に防ぐことができる。
【0014】
本発明のドア構造において、第1取り付け片と直交する方向に枠体から片状に延出し、躯体の開口部を構成する周面に取り付けられる第2取り付け片をさらに備えていてもよい。このような第2取り付け片によって、枠体の開口部における取り付け位置を安定させることができる。
【0015】
本発明のドア構造において、
ドア本体の室内側の面において、ドア本体を閉めた状態でシール部よりも内側に設けられた厚さの厚い段差部をさらに備えていてもよい。これにより、シール部から水や湿気が浸入しても、段差部の段差面で引っ掛かり、ドア本体の室内側の面に滴ることを抑制できる。
【0016】
本発明のドア構造において、
ドア本体には、枠体よりも外方に延出する延出部が設けられ、蝶番側に設けられた延出部は、ドア本体の正面からみて蝶番を隠すように設けられていてもよい。
【0017】
本発明のドア構造
において、ドア本体の正面からみてドアノブが設けられておらず、蝶番とは反対側に設けられた延出部の裏側にドア本体を開くためのラッチボルトと連動するレバーが設けられていてもよい。これにより、ドアノブが無く、平坦なパネルのようなドアらしくない外観を構成することができる。また、外観からドアであることが認識しにくいため、防犯性にも優れたドア構造を構成することができる。
【0018】
本発明のドア構造において、蝶番は、ドア本体にビスで固定される第1蝶番片と、枠体にビスで固定される第2蝶番片と、第1蝶番片と第2蝶番片とを連結するシャフトと、ドア本体に固定される固定片と、を有していてもよい。第1蝶番片の表面には長穴と位置決め穴とが設けられ、位置決め穴の上端と下端とにラック状の位置決め部が設けられる。固定片には位置決め穴の位置決め部と係合する位置決め部が設けられる。
ドア本体を固定する場合には、固定片の位置決め部と第1蝶番片の位置決め部とを係合させて蝶番を前記ドア本体に固定する。
ドア本体の位置を変更する際には、第1蝶番片を止めてある長穴のビスを緩めて、第1蝶番片の位置決め部と固定片の位置決め部との係合を解いてドア本体の位置を移動し、その後、再び第1蝶番片の位置決め部を固定片の位置決め部と係合させて、長穴のビスを締めて蝶番を前記ドア本体に固定する。
このような蝶番によって、ドア本体と枠体との位置関係を容易に調整することができる。
【0019】
本発明のドア構造において、蝶番は、ドア本体にビスで固定される第1蝶番片と、枠体にビスで固定される第2蝶番片と、第1蝶番片と第2蝶番片とを連結するシャフトと、枠体に固定される固定片と、を有していてもよい。第2蝶番片の表面には長穴と位置決め穴とが設けられ、位置決め穴の上端と下端にラック状の位置決め部が設けられる。固定片には位置決め穴の位置決め部と係合する位置決め部が設けられる。
ドア本体を固定する場合には、固定片の位置決め部と第2蝶番片の位置決め部とを係合させて蝶番を枠体に固定する。
ドア本体の位置を変更する際には、第2蝶番片を止めてある長穴のビスを緩めて、第2蝶番片の位置決め部と固定片の位置決め部との係合を解いてドア本体の位置を移動し、その後、再び第2蝶番片の位置決め部を固定片の位置決め部と係合させて、長穴のビスを締めて蝶番を枠体に固定する。
このような蝶番によって、ドア本体と枠体との位置関係を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構造で、ドア本体の開閉性、気密性に優れ、しかも施工しやすいドア構造を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0023】
(ドア構造)
図1は、本実施形態に係るドア構造を例示する斜視図である。説明の便宜上、
図1ではドア本体1が開いた状態を示している。
図2は、
図1に示すZ部の拡大斜視図である。
図3は、本実施形態に係るドア構造を例示する正面図である。
図4および
図5は、本実施形態に係るドア構造の断面図である。
図4には、
図3のA−A線断面図が示され、
図5には、
図3のB−B線断面図が示される。
なお、本実施形態における説明において、前後左右を示すときは、ドア本体1が開く側からみた場合の手前側を「前」、奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」とする。
【0024】
本実施形態に係るドア構造は、開口部210を有する躯体200に取り付けられるドア枠4と、ドア枠4に取り付けられるドア本体1とを備える。ドア本体1は、ドア枠4に蝶番3を介して取り付けられる。ドア本体1は、蝶番3の軸を中心として開閉動作する開き戸である。本実施形態では、開き戸の玄関ドアを例として説明する。
【0025】
ドア枠4は、躯体200の開口部210の縁に沿って配置される枠体40を有する。枠体40は、矩形を構成する上枠体401a、下枠体401b、左枠体402aおよび右枠体402bを有する。横枠体(上枠体401aおよび下枠体401b)と、縦枠体(左枠体402aおよび右枠体402b)とが互いに直角に組み合わされることで矩形の枠体40が構成される。
【0026】
上枠体401a、下枠体401b、左枠体402aおよび右枠体402bのそれぞれは、例えばスチール製の板を折り曲げ加工することで、断面視箱形に設けられる。枠体40の中にはグラスウールなどの断熱材料(図示せず)等が充填される。
【0027】
枠体40は、躯体200の正面(ドア本体1が開く側の面)200aよりも手前に前面40aが配置されるよう、躯体200に取り付けられる。このような取り付けを行うため、枠体40には第1取り付け片41が設けられる。第1取り付け片41は、枠体40から片状に延出し、躯体200の正面200aに取り付けられる。
【0028】
第1取り付け片41には複数箇所に孔が設けられており、例えばビスによって躯体200の正面200aに固定される。なお、躯体200の正面200aには石膏ボードなどの断熱・防火・遮音素材が設けられている場合もある。この場合には、石膏ボードなどの上から第1取り付け片41を躯体200の正面200aに取り付ければよい。また、躯体200の正面200aに第1取り付け片41を例えばビスで固定しても、その外側に壁材250が取り付けられるため、外側からの見栄えを損なうことはない。
【0029】
第1取り付け片41は、枠体40から例えば薄板状に延出する。第1取り付け片41は、箱形の枠体40よりも薄い平板状に延出している。例えば、スチール製の板を折り曲げて箱形の枠体40を形成する際、スチール製の板の端部を箱形にしないで片状に延ばし、第1取り付け片41とする。第1取り付け片41は、枠体40の外縁から外方に延在している。第1取り付け片41は、枠体40の前面40aとほぼ平行に設けられる。
【0030】
第1取り付け片41は、左枠体402aおよび右枠体402bから延出する縦第1取り付け片412と、上枠体401aから延出する上第1取り付け片411とを有する。すなわち、矩形の枠体40のうち、左右および上の3辺において第1取り付け片41が設けられる。なお、第1取り付け片41は、枠体40の少なくとも左右に設けられていればよいが、左右および上の3辺に設けられていることが望ましい。なお、第1取り付け片41は、枠体40とは別体で設けられていてもよい。
【0031】
第1取り付け片41を介して枠体40を躯体200の開口部210の縁に沿って取り付けると、枠体40の前後方向に沿った半分以上は開口部210の縁から前方へ突出することになる。これにより、躯体200の開口部210の内側には枠体40のほとんどが嵌め込まれず、前方側に配置されることになる。
【0032】
ドア本体1は、枠体40の前面40aが戸当たり面となるように枠体40に取り付けられる。ドア本体1の縦側の一端における室内側の面1aと、枠体40の前面40aとの間に蝶番3が取り付けられる。これにより、ドア本体1が閉まっている状態では、ドア本体1の室内側の面1aの縁部分と、枠体40の前面40aとが対向して、前面40aが戸当たり面となる。
【0033】
ドア本体1の蝶番3とは反対側の端部(開閉する側の端部)には、ドアノブ105が設けられる。ドア本体1の蝶番3側の上方には、ドアクローザ107が設けられていてもよい。
【0034】
戸当たり面となる枠体40の前面40aには、シール部5が設けられる。シール部5は、ドア本体1を閉めた状態でドア本体1の室内側の面1aと接する。これにより、ドア本体1と枠体40との間の気密性を高められるとともに、ドア本体1を閉めた際に室内側の面1aが枠体40の前面40aと直接当たることを防止することができる。
【0035】
シール部5は、枠体40の開口の周りを囲むように環状に設けられる。シール部5としては、ゴム部材等の弾性体が用いられる。シール部5は、枠体40の開口側の縁寄り(前面40aにおける内周寄り)に設けられていることが好ましい。シール部5が内周寄りの設けられていることで、シール部5を嵌め込む溝(凹部)として、枠体40を形成する際の板の端を立ち上げるだけでよく、枠体40の製造が容易となる。また、シール部5の長さを短くすることができる。さらに、シール部5を目立たせずにすみ、デザイン性を高めることができる。
【0036】
また、シール部5の外側および内側の少なくとも一方に熱膨張材6が設けられていてもよい。本実施形態では、枠体40の前面40aにおけるシール部5と隣接する外側に熱膨張材6が設けられる。熱膨張材6は、例えばグラファイト系の合成樹脂やゴム等からなる熱膨張シール材である。熱膨張材6は、約150℃から200℃程度で膨張して、ドア枠4とドア本体1との隙間を塞いで気密性を高め、火災などでの熱や熱風の侵入を抑制することができる。また、熱膨張材6によってドア本体1の室内側の面に伝わる滴や水の排水経路が構成される。ドア本体1の室内側の面に伝わる滴や水は、熱膨張材6の縁に沿って下方に伝わって落下する。これにより、滴や水が室内に侵入することを抑制できる。
【0037】
また、ドア本体1が閉まった状態で、ドア本体1の室内側の面1aと熱膨張材6との間に僅かな隙間を設けるようにしてもよい。例えば、熱膨張材6の高さ(前面40aからの出っ張り高さ)をシール部5の高さ(前面40aからの出っ張り高さ)よりも低くしておく。これにより、ドア本体1が閉まった状態では、室内側の面1aとシール部5との接触によって気密性が確保される。また、熱膨張材6と室内側の面1aとの間に隙間が設けられていることで、熱膨張材6に付着した湿気や水分を逃がしやすく(乾燥しやすく)することができる。
【0038】
なお、上記ではシール部5および熱膨張材6を枠体40の前面40aに設ける例を示したが、シール部5および熱膨張材6の一部または全部をドア本体1の面1a(前面40aと対向する面)に設けるようにしてもよい。
【0039】
上記のようなドア構造によれば、ドア枠4が第1取り付け片41によって躯体200の正面200aに取り付けられているため、躯体200の歪み等による応力を第1取り付け片41で吸収することができる。すなわち、片状の第1取り付け片41の持つ弾性によって、外部からの応力が枠体40に伝わることを抑制することができる。
【0040】
本実施形態に係るドア構造では、枠体40と躯体200との取り付けが、枠体40から延出する板状の第1取り付け片41を介して行われているため、枠体40を直接躯体200に固定する場合に比べて躯体200から枠体40への応力の影響を軽減することができる。また、第1取り付け片41を介して枠体40を躯体200に取り付けることで、枠体40の半分以上が躯体200の開口部210から前方に突出するように設けられる。
【0041】
ここで、躯体200が歪むことで発生する応力は、開口部210の面に沿った方向の成分が多い。このため、開口部210の内側に枠体40が嵌め込まれていると、躯体200からの応力の影響を受けやすい。一方、本実施形態に係るドア構造のように、枠体40の大部分が開口部210の前方に突出して設けられていることで、躯体200からの応力の影響を受けにくくなる。
【0042】
これらのことから、本実施形態に係るドア構造では、躯体200の歪み等によって応力が発生しても、枠体40への影響を軽減することができ、枠体40の歪みを抑制しやすくなる。したがって、枠体40に固定された蝶番3への影響も少なく、蝶番3を介したドア本体1の開閉動作もスムーズに行うことが可能となる。
【0043】
また、ドア本体1がドア枠4の枠体40の前面40aに当たるよう開閉するため、たとえ枠体40に歪みが生じても、ドア本体1の開閉を行うことができる。すなわち、本実施形態では、地震等によって躯体200に歪みが生じても、枠体40や蝶番3への影響を低減することができる。しかも、ドア本体1が枠体40の前面40aで当たる構造のため、ドア本体1を容易に開くことができる。
【0044】
また、第1取り付け片41を躯体200の正面200aに取り付けることで枠体40を固定できるため、ドア枠4の施工が容易となる。このようなドア構造では、新築の際にドア枠4を躯体200に取り付ける場合のみならず、改修等によって既存の躯体200の開口部210に本実施形態のドア枠4を取り付ける場合であっても、躯体200の正面200aにドア枠4を取り付けることで、容易に施工できることになる。
【0045】
図4および
図5に示すように、枠体40には第2取り付け片42が設けられていてもよい。第2取り付け片42は、第1取り付け片41と直交する方向に枠体40から片状に延出している。第2取り付け片42は、枠体40と一体に設けられていてもよいし、別体で設けられていてもよい。
【0046】
第2取り付け片42は、第1取り付け片41と同様、例えば、スチール製の板を折り曲げて箱形の枠体40を形成する際、スチール製の板の端部を箱形にしないで片状に延ばし、第2取り付け片42としてもよい。
【0047】
第2取り付け片42は、躯体200の開口部210を構成する周面210aに取り付けられる。第2取り付け片42には複数箇所に孔が設けられており、例えばビスによって周面210aに固定される。
【0048】
第2取り付け片42も第1取り付け片41と同様に片状であるため、躯体200の歪み等による応力を第2取り付け片42の弾性で吸収することができる。また、第2取り付け片42が設けられていることで、枠体40の開口部210における取り付け位置(正面200aに沿った位置)を安定させることができる。
【0049】
また、
図4および
図5に示すように、枠体40は凹部45を有していてもよい。凹部45は、枠体40の一部に設けられた凹みであり、躯体200の開口部210を構成する前面側の縁(隅部)と対応している。凹部45の大きさ(深さ)は、枠体40の前後方向および上下方向のそれぞれにおける半分以下が望ましい。このような凹部45が設けられていることで、凹部45に躯体200における開口部210側の隅部が合わさり、枠体40を、開口部210の縁に沿って、開口部210の前方に突出させた状態で安定して取り付けることができる。上記のような凹部45の大きさ(深さ)にすれば、枠体40の半分以上を開口部210から外側に突出させることができ、躯体200の歪みによる応力の影響を受けにくくすることができる。
【0050】
(二重シール構造)
また、
図5に示すように、ドア本体1が閉まっている状態でドア本体1の上枠体401aと対向する面におけるシール部5よりも上方に、上側シール部55を設けてもよい。これにより、ドア本体1の上方のシールを二重にすることができる。したがって、ドア本体1の上から落ちてくる水分(雨や滴など)や湿気を上側シール部55およびシール部5で効果的に防ぐことができる。
【0051】
図5に示すように、ドア本体1が閉まっている状態でドア本体1と枠体40(上枠体401a)との間の上を覆う庇部7が設けられていてもよい。このような庇部7によって、ドア本体1の上からの水分の浸入を防ぐことができる。
【0052】
(排水構造)
図6は、ドア本体の排水機構について説明する部分斜視図である。
図6では、ドア本体1の室内側の面1aの上方の一部が示されている。
排水機構8は、ドア本体1の外周面の少なくとも上面1cに設けられる。
図6に示す例では、ドア本体1の外周面の上面1cおよび側面1dに溝から成る排水機構8が設けられる。このような排水機構8によって、ドア本体1の外周面に水分や湿気が付着しても排水機構8によって外方へ流すことができ、室内への水分や湿気の浸入を防ぐことができる。
【0053】
なお、排水機構8としては溝に限定されない。例えば、ドア本体1の外周面(少なくとも、上面1cおよび側面1d)に傾斜(屋外側に下がる傾斜やドア先端および蝶番3側に下がる傾斜)を設けたり、撥水性の高い塗料を塗布したり、親水性の高い塗料を塗布したりしてもよい。
【0054】
また、ドア本体1には段差部110が設けられていてもよい。段差部110は、ドア本体1の室内側の面1aに設けられた厚さの厚い部分である。段差部110は、ドア本体1を閉めた状態でシール部5よりも内側に設けられる。このような段差部110が設けられていることで、シール部5から水や湿気が浸入しても、段差部110の段差面で引っ掛かり、ドア本体1の室内側の面1aに滴ることを抑制できる。
【0055】
段差部110の段差面(段差上面110cおよび段差側面110d)には、ドア本体1の外周面と同様な排水機構8を設けてもよい。
【0056】
シール部5、熱膨張材6、上側シール部55および庇部7などは、特にドア構造が玄関ドアである場合に有効である。玄関ドアは室内と屋外との間に設けられる。本実施形態のドア構造では、ドア本体1が屋外側に設けられることになる。したがって、雨や風、湿気が室内に入り込むことを効果的に抑制する必要がある。特にドア本体1の上から雨水や湿気が浸入しやすい。ドア本体1が閉まっている状態で上側に二重のシール(シール部5および上側シール部55)を設けることで、上側からの浸入を効果的に抑制することができる。さらに、庇部7を設けることで、ドア本体1と枠体40(上枠体401a)との間からの水や湿気の浸入を防ぎやすくなる。
【0057】
図4に示すように、ドア本体1には枠体40よりも外方に延出する延出部150が設けられていてもよい。蝶番3側に延出部150aが設けられている場合は、ドア本体1の正面からみて、蝶番3を隠す役目を果たす。また、蝶番3とは反対側に延出部150bが設けられている場合には、この延出部150bをドア本体1の手掛けとして利用することができる。ドア本体1を開く際に延出部150bに手を掛けて開くようにする。延出部150bをドア本体1の高さ方向に長め(例えば、高さ方向の全て)に設けておくと、背の低い人から高い人までドア本体1の手掛けとして利用しやすくなる。このような延出部150が設けられることにより、枠体40よりも手前にドア本体1が浮き上がって取り付けられたようなデザイン性を発揮させることができる。
【0058】
また、ドア本体1の蝶番3とは反対側の側面に、カバー片160を設けてもよい(
図4の二点鎖線参照)。カバー片160は、ドア本体1を閉めた際にドア本体1と枠体40との隙間を覆うように設けられる。このようなカバー片160が設けられていることで、ドア本体1と枠体40との隙間に何らかの物が差し込まれることを防止して、防犯性を高めることができる。
【0059】
(既存のドア枠を利用したドア構造)
図7は、既存のドア枠を利用したドア構造の例(その1)を示す断面図である。
図7には、ドア中央部における上からみたときの断面図が示される。躯体200には既存ドア枠60が取り付けられている。既存ドア枠60には凹部62が設けられ、この凹部62の内側に既存ドア(図示せず)が取り付けられる。本実施形態のドア構造は、既存ドアを取り外し、残された既存ドア枠60に新たにドア本体1を取り付けた構造である。すなわち、住宅の改修などにおいて既存ドアを交換する場合、本実施形態に係るドア構造が適用される。
【0060】
図7に示すドア構造において、ドア本体1は、蝶番3を介して既存ドア枠60の前面60a側に取り付けられる。蝶番3の第1蝶番片10は、既存のドアを取り付ける際の蝶番用の取り付け孔をそのまま利用してビスやボルトによって既存ドア枠60の凹部62に取り付けられる。蝶番3の第2蝶番片30は、ドア本体1の室内側の面1aにビスやボルトによって固定される。第2蝶番片30は、既存ドア枠60の前面60aと対向するドア本体1の面1aに取り付けられる。
【0061】
蝶番3とは反対側(戸先側)の既存ドア枠60の凹部62には、ラッチボルト108を受けるラッチ受け109が取り付けられる。ラッチ受け109は、例えばL字型の金具である。このように取り付けられたドア本体1では、既存ドア枠60の前面60aが戸当たり面となる。ドア本体1の室内側の面1aにおける既存ドア枠60の前面60aと対向する位置にはシール部5が設けられる。シール部5は、ドア本体1を閉めた状態で既存ドア枠60の前面60aと接する。これにより、ドア本体1と既存ドア枠60との間の気密性を高められるとともに、ドア本体1を閉めた際に既存ドア枠60の前面60aがドア本体1の面1aと直接当たることを防止することができる。また、ドア本体1の面1aにシール部5を設けることで、既存ドア枠60に手を加えることなく、そのまま利用することができる。
【0062】
このように、ドア本体1が既存ドア枠60の前面60a側に設けられることで、既存ドア枠60に歪みが生じていても、その影響を受けることなくドア本体1を取り付けることができる。また、ドア本体1を取り付けた後、地震等の影響で既存ドア枠60に歪みが生じても、ドア本体1を容易に開閉することができる。
【0063】
さらに、ドア本体1が既存ドア枠60の前面60a側に設けられることで、既存ドア枠60の枠内開口サイズをフルに利用できるドア構造を提供することができる。また、ドア本体1のサイズが既存ドア枠60の内枠サイズに規制されない。したがって、ドア本体1のサイズ設定の自由度が高まり、ドア本体1の選択の幅が広がる。
【0064】
ここで、既存ドア枠60の前面60a側にドア本体1を取り付けるための蝶番3について説明する。
図8は、蝶番の一例を示す斜視図である。
この蝶番3は、第1蝶番片10と、第2蝶番片30と、これらを回動自在に取り付けるための差込みシャフト33とを備える。差込みシャフト33の中心が蝶番3の回転の軸であり、軸周辺の部材が軸部である。第1蝶番片10は、取り付け部10aと、連結部10bとを有する。第2蝶番片30は、取り付け部30aと、連結部30bとを有する。
【0065】
第2蝶番片30における取り付け部30aは、連結部30bに対して90度の向きで曲げられている。すなわち、第2蝶番片30は、取り付け部30aと連結部30bとで略L字型に構成される。一方、第1蝶番片10における取り付け部10aは、連結部10bの延長上に設けられる。第1蝶番片10および第2蝶番片30を閉じた状態では、第1蝶番片10の取り付け部10aと、第2蝶番片30の連結部30bとがほぼ同一面上となる。
【0066】
このような蝶番3において、第2蝶番片30の取り付け部30aは、既存ドア枠60の凹部62、すなわち既存ドア枠60の内側面に取り付けられる。また、第1蝶番片10の取り付け部10aは、ドア本体1の面1aに取り付けられる。これにより、ドア本体1を既存ドア枠60の前面60a側に取り付けることができる。ここで、既存ドア枠60には元の蝶番を取り付けていたネジ穴が開いている場合がある。新たな蝶番3はこの既設のネジ穴を利用して取り付けてもよい。また、取り付け部30aに設けられた取り付け用穴は丸孔でもよいが、長孔になっていることが好ましい。これにより、例えば既設のネジ穴を利用して取り付け部30aを取り付ける際に蝶番3およびドア本体1の前後(出入り)方向の取り付け位置を容易に調整することができる。
【0067】
蝶番3にドア本体1を取り付けた際、蝶番3の差込みシャフト33の部分はドア本体1の側面よりも外側に配置される。これにより、ドア本体1の開閉動作における回転中心が、ドア本体1の側面よりも外側になり、ドア本体1を広く開けることが可能となる。また、連結部10bおよび30bの差込みシャフト33側の一部を僅かに前方へ曲げておいてもよい。これにより、差込みシャフト33の部分を躯体200や壁から離すことができ、干渉を避けることができる。
【0068】
また、ドア本体1を閉じている状態では、第1蝶番片10の取り付け部10aが既存ドア枠60の前面60aとドア本体1の面1aとの間に位置する。これにより、取り付け部10aが隠されて、デザイン性および防犯性を高めることができる。
【0069】
なお、
図8に示す蝶番3の例では、第1蝶番片10が下側、第2蝶番片30が上側に設けられているが、第1蝶番片10が上側、第2蝶番片30が下側に設けられていてもよい。
【0070】
図9は、既存のドア枠を利用したドア構造の例(その2)を示す断面図である。
図9には、ドア中央部における上からみたときの断面図が示される。このドア構造では、既存ドア枠60の凹部62にカバー部材70が設けられる。カバー部材70は、凹部62を覆うように設けられ、前側にシール部5を取り付けることができるようになっている。蝶番3側の既存ドア枠60の凹部62に取り付けられるカバー部材70は、蝶番3の第2蝶番片30を隠す役目も果たす。蝶番3とは反対側(戸先側)の既存ドア枠60の凹部62に取り付けられるカバー部材70には、ラッチボルト108を受けるラッチ受け109が設けられる。
【0071】
カバー部材70を設けることで、外観上、凹部62が見えなくなってデザイン性を高めることができる。また、カバー部材70側にシール部5を取り付けることができ、ドア本体1にはシール部5を取り付けるための凹部を設ける必要がなくなる。これにより、ドア本体1の形状が簡素化され、製造が容易となる。
【0072】
図7および
図9に示すような既存ドア枠60を利用してドア本体1を取り付けるには、先ず、既存ドア枠60から既存のドアを取り外す。この際、既存の蝶番も取り外しておく。次に、既存ドア枠60の凹部62に蝶番3の第1蝶番片10を取り付ける。蝶番3は、取り外した蝶番の取り付け孔をそのまま利用することができる。凹部62である既存ドア枠60の内側面に設けられた既設の取り付け孔(例えば、5つの孔)を利用して、蝶番3の第2蝶番片30の取り付け部30aを取り付ける。
【0073】
次に、蝶番3の第1蝶番片10の取り付け部10aを新規のドア本体1の面1aに取り付ける。これにより、蝶番3を介してドア本体1が既存ドア枠60の前面60aに取り付けられる。なお、この取り付けにおいて、蝶番3として後述する微調整可能な蝶番3を用いることが好ましい。
【0074】
図7および
図9に示すような既存ドア枠60の前面60aにドア本体1を取り付けるドア構造では、経年変化により変形している既存ドア枠60に対して交換する新規のドア本体1のサイズの自由度が向上する。また、既存ドア枠60の実寸を詳細に測定する必要がなく、施工期間やコストの低減を図ることができる。このように、既存ドア枠60の実寸に正確に合わせる必要がないため、各種のサイズのドア本体1を事前に作製しておく、いわゆる造り溜めをしておくことができ、施工期間やコストの低減を図ることができる。
【0075】
既存ドア枠60を利用できるため、戸建て、マンション、ホテル、オフィスなどの改修において、対震、防犯、断熱、遮音、気密、防火など性能に優れたドアへの交換が容易であり、資産価値を向上させることができる。
【0076】
(ドアノブが無いドア構造)
図10は、ドアノブが無いドア構造を例示する正面図である。
図11は、ドアノブが無いドア構造の戸先部分の拡大断面図である。
このドア構造においては、ドア本体1にドアノブ105は設けられていない。また、前面からみると、ドア本体1の延出部150aによって蝶番3が隠されている。したがって、前面からみた場合、ドア本体1は、1枚の平坦なパネルに見える外観形状となる。つまり、従来のドアとしての外観ではなく、平坦なパネルが壁材250から浮き上がって取り付けられたかのような外観のドアとなる。
【0077】
このドア構造では、ドア本体1の蝶番3とは反対側の延出部150bの後ろ側(裏側)にレバー170が設けられる。また、ドア本体1の室内側の面1aにおける枠体40の前面40aと対向する位置にはラッチボルト180が設けられる。ラッチボルト180は、枠体40の前面40aに設けられた孔(ラッチ受け109)に引っ掛けられるようになっている。
【0078】
レバー170を動作させると、図示しないリンク機構などによってラッチボルト180が連動する。例えば、レバー170を押すとラッチボルト180とラッチ受け109との係合が解除され、ドア本体1を開くことができる。レバー170を延出部150bの手掛けとなる位置に設けておけば、ドア本体1の延出部150bに手を掛けて、開く動作と併せてレバー170を操作して、自然にドア本体1を開けることができる。
【0079】
レバー170を離すとバネ等の付勢手段によってラッチボルト180が係合位置に戻る。ドア本体1を閉める際には、ラッチボルト180がラッチ受け109の孔の縁を乗り越えた後、付勢手段の付勢力によってラッチ受け109と係合し、ドア本体1を閉めた状態を維持することができる。
【0080】
なお、ラッチボルト180を動作させる構成としてレバー170を示したが、スイッチおよび電動アクチュエータを利用してもよい。この場合、レバー170に代えてスイッチを設けておき、このスイッチによって電動アクチュエータを動作させる。スイッチとして静電スイッチを利用すれば、スイッチを指先で触れるだけでラッチボルト180の係合を解除して、ドア本体1を開くことができる。
【0081】
また、ドア本体1の施錠については、通常の鍵(シリンダー錠)による施錠手段を設けてもよいし、非接触の施錠手段を設けてもよい。非接触の施錠手段としては、ICカード型、生体認証型、接近型などが挙げられる。非接触の施錠手段を用いることで、ドア本体1の前面に鍵穴がなく、平坦なパネルのような外観を実現することができる。
【0082】
このように、本実施形態に係るドア構造では、ドアノブが無く、平坦なパネルのようなドアらしくない外観を構成のため、既存のドアにはないデザイン性を得ることができる。また、外観からドアであることが認識しにくいため、防犯性にも優れることになる。
【0083】
(微調整可能な蝶番)
蝶番3は、ドア本体1と枠体40との取り付け位置を容易に調整できる構造が好ましい。これにより、ドア本体1の枠体40に対する取り付け位置を微調整することができる。
【0084】
図12は、微調整可能な蝶番の一例を示す分解斜視図である。
この蝶番3は、上部の雌型蝶番片である第1蝶番片10と、下部の雄型蝶番片である第2蝶番片30と、第1蝶番片10と第2蝶番片30とを連結する差込みシャフト33と、ドア本体1に固定される固定片20と、を備える。差込みシャフト33の中心が蝶番3の回転の軸であり、軸周辺の部材が軸部である。
【0085】
第1蝶番片10はドア本体1に固定され、第2蝶番片30は枠体40に固定される。本実施形態のドア構造では、第1蝶番片10はドア本体1の室内側の面1aに固定され、第2蝶番片30は枠体40の前面40aにおけるシール部5よりも外側に固定される。
【0086】
第1蝶番片10の表面には4個の横形の楕円形の長穴11が設けられる。また、第1蝶番片10の中央部には略長方形の位置決め穴12が設けられる。この位置決め穴12の上端および下端には、ラック状の位置決め部13,13が設けられる。位置決め穴12の形状は任意に選択でき、位置決め部13は、上端および下端の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0087】
固定片20は、第1蝶番片10の位置決め部13と係合する略長方形に構成される。この固定片20の上端および下端には、ラック状の位置決め部22,22が設けられる。また、固定片20の中央にはビス用の丸穴21が設けられる。
【0088】
固定片20は、第1蝶番片10の位置決め穴12を介してドア本体1にビス19によって固定される。固定片20は第1蝶番片10と係合することで、ドア本体1の位置決めを行い、かつドア本体1と第1蝶番片10とを確実に固定する働きをする。第2蝶番片30には5個の丸穴31が設けられている。丸穴31にビス19を通して枠体40に固定することで、第2蝶番片30が枠体40に固定される。
【0089】
本実施形態の作用を説明すると、地震や経年劣化に伴い枠体40とドア本体1との位置関係にずれが生じた場合、第1蝶番片10を固定する長穴11,11・・のビス19,19・・を緩めて、ドア本体1を長穴11の長手方向に移動させる。このとき、この長穴11,11・・の中をドア本体1とビス19,19・・が移動することになる。ドア本体1を所望の位置に移動した後、その位置でビス19,19・・を再び締めればドア本体1は再び固定される。
【0090】
一方、固定片20はドア本体1に固定されているから、上記のビス19を緩めてドア本体1を移動させるとき、第1蝶番片10を少し浮かせるようにして、第1蝶番片10の位置決め部13,13と固定片20の上端および下端の位置決め部22,22との係合を解く。そして、ドア本体1の位置を決めてから、再び固定片20の位置決め部22,22と第1蝶番片10の位置決め部13,13とを係合させる。これによりドア本体1が確実に第1蝶番片10に固定され、位置がずれないようになる。
【0091】
このような蝶番3によって、位置決め部13および位置決め部22のラックの山のピッチ単位でドア本体1と枠体40との取り付け位置を微調整することができる。
【0092】
なお、
図12に示す蝶番3では、第1蝶番片10に長穴11,11・・・、位置決め穴12、位置決め部13、13を設け、固定片20をドア本体1に固定する例を示したが、第2蝶番片30に長穴11,11・・・、位置決め穴12、位置決め部13、13を設け、固定片20を枠体40に固定する構成でもよい。また、第1蝶番片10および第2蝶番片30の両方に、長穴11,11・・・、位置決め穴12、位置決め部13、13を設け、ドア本体1および枠体40のそれぞれに固定片20を固定する構成でもよい。
【0093】
また、
図12に示す蝶番3では、第1蝶番片10をドア本体1に固定し、第2蝶番片30を枠体40に固定したが、第1蝶番片10を枠体40に固定し、第2蝶番片30をドア本体1に固定してもよい。また、第1蝶番片10を下側、第2蝶番片30を上側にしてもよいし、第1蝶番片10を雄型蝶番片、第2蝶番片30を雌型蝶番片にしてもよい。
【0094】
上述の蝶番3によれば、ドア本体1と枠体40との位置がずれても、簡易な方法でドア本体1と枠体40との位置関係を迅速に調整することができる。そのため、ドア本体1とシール部5との位置関係も正常となり、ドア本体1がシール部5を傷めることなく、シール部5の劣化を防ぎ、室内の気密性を高め、遮音性を向上させることができる。
【0095】
図12に示す蝶番3における微調整機構は、
図8に示す蝶番3にも適用可能である。既存ドア枠60にドア本体1を取り付けるための蝶番3に上述の微調整機構が設けられていれば、多少の歪みがある既存ドア枠60と、新たに施工するドア本体1との位置関係や隙間の調整を容易かつ正確に行うことが可能となる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、簡単な構造で、ドア本体1の開閉性、気密性に優れ、しかも施工しやすいドア構造を提供することが可能になる。
特に、ドア本体1がドア枠(枠体40および既存ドア枠60)の前面側に設けられることで、次のような様々なメリットを得ることができる。
(1)地震等の影響でドア枠に歪みが生じても、ドア本体1を容易に開閉することができる。
(2)ドア枠や壁材250からドア本体1が浮き上がって取り付けられたようなデザイン性を発揮させることができる。
(3)ドア本体1のサイズがドア枠の内枠サイズに規制されない。
(4)ドア本体1のサイズ設定の自由度が高まり、ドア本体1の選択の幅が広がる。
(5)ドア本体1の製造において、原材料のサイズを歩留まりの良いサイズ(端材の少ないサイズ)で製造することができる。
(6)ドア本体1を取り付ける施工時に、ドア枠とドア本体1との微調整が不要となる。
(7)ドア枠のサイズが決まる前にドア本体1を事前に製作しておくことができ、生産効率を向上させることができる。
(8)ドア本体1の輪郭形状の設計自由度が高まる(四角形のみならず、台形、菱形、円形など)。
【0097】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係るドア構造は玄関ドア以外にも適用可能である。また、前述の実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態や適用例で説明した各種の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。