(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356210
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】銅表面上に有機被膜を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
C23F 11/00 20060101AFI20180702BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20180702BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
C23F11/00 C
C23C26/00 A
H05K3/34 503Z
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-247320(P2016-247320)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-128800(P2017-128800A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】62/272,135
(32)【優先日】2015年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クィン・タン
(72)【発明者】
【氏名】キト・トン
(72)【発明者】
【氏名】シト・ヨウ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ウォック・ワイ・デニス・イー
【審査官】
萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−059451(JP,A)
【文献】
米国特許第06524644(US,B1)
【文献】
特開2014−140893(JP,A)
【文献】
特開2015−059252(JP,A)
【文献】
特公昭56−018077(JP,B2)
【文献】
特開平08−008516(JP,A)
【文献】
特開2000−183530(JP,A)
【文献】
特開2004−260091(JP,A)
【文献】
特表2009−500842(JP,A)
【文献】
特開2002−086613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00−11/08
C23F 14/00−17/00
C23C 24/00−30/00
H05K 3/32−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の銅表面上に有機膜を形成するための方法であって、
(a)前記銅表面と、ベンズイミダゾールまたはその誘導体を含む第1の溶液とを接触させるステップと、
(b)前記第1の溶液と接触後、前記銅表面と、式(I)によって表される化合物を含む第2の溶液とを接触させるステップと、を含み、
【化1】
式中、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、置換または非置換の直鎖、分枝、または環状アルキル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
2及びR
3は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含み、R
1は、以下の構造を有し得、
【化2】
式中、R
4及びR
5は独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、置換または非置換の直鎖、分岐、または環状ヒドロカルビル、置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
4及びR
5は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の溶液は、0.1g/L〜50g/Lの量で、式(I)によって表される前記化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の溶液は、式(I)によって表される前記化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の溶液は、Cu、Sn、Zn、Ag、Ni、Pd、Ba、Mg、Fe、Au、Pt、W、Bi、Sb、Mn、及びPdから選択される金属イオンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の溶液は、塩化アンモニウムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記物品は、金表面をさらに含み、前記有機膜は、銅表面上に選択的に析出し、金表面上には実質的に析出しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
銅表面上の有機膜であって、(i)前記銅表面上に形成され、ベンズイミダゾールまたはその誘導体を含む第1の層と、(ii)前記第1の層上に形成され、式(I)によって表される化合物を含む第2の層と、を含み、
【化3】
式中、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、置換または非置換の直鎖、分枝、または環状アルキル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
2及びR
3は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含み、R
1は、以下の構造を有し得、
【化4】
式中、R
4及びR
5は独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、置換または非置換の直鎖、分岐、または環状ヒドロカルビル、置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
4及びR
5は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含む、有機膜。
【請求項8】
前記第1の層及び前記第2の層を含む前記膜の厚さは、10〜500nmである、請求項7に記載の有機膜。
【請求項9】
物品の銅表面を酸化から保護するための方法であって、
(a)銅表面を有する物品を調製するステップと、
(b)前記物品の前記銅表面と、ベンズイミダゾールまたはその誘導体を含む第1の溶液とを接触させて、前記銅の表面上に第1の有機膜を形成するステップと、
(c)前記第1の有機膜を有する前記銅表面と、式(I)によって表される化合物を含む第2の溶液とを接触させるステップであって、
【化5】
式中、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、置換または非置換の直鎖、分枝、または環状アルキル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
2及びR
3は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含み、R
1は、以下の構造を有し得、
【化6】
式中、R
4及びR
5は独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、置換または非置換の直鎖、分岐、または環状ヒドロカルビル、置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
4及びR
5は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含む、ステップと、
(d)前記銅表面を乾燥させて、前記表面上に有機膜を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
前記物品は、金表面をさらに含み、前記有機膜は、銅表面上に選択的に析出し、金表面上には実質的に析出しない、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記物品は、プリント基板、電子部品、及び装飾付属品から選択される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、銅の腐食を防止するように、銅表面上に有機被膜を形成するための方法に関する。具体的には、本発明は、銅表面及び金表面の両方を備える電子部品の銅表面上に、有機はんだ付け性膜を選択的に形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅及びその合金は、プリント基板(PCB)への導通回路経路の提供等の電子用途において、最もよく使用される金属である。PCBは、はんだ付け作業によって電子部品が銅もしくは銅合金の表面パッドまたは貫通孔へ付着されることを必要とする。リード部品が貫通孔へ挿入され、続いて、流動はんだ付けされ得るか、または表面実装技術(SMT)部品が、例えば、スクリーン印刷によって、はんだペーストを表面に適用することで、表面パッドに付着され得、その後、部品をペースト上に配置し、続いて、リフローはんだ付けされる。SMT組立作業では、少なくとも2つのリフローサイクルが、部品をPCBの前面及び背面の両方に付着させるために必要とされる。より複雑な組立では、さらなる部品を付着させるため、または修復作業を実行するために、さらなるリフロー作業が必要とされ得る。
【0003】
部品が実装されるPCBパッドの銅表面は、典型的には、保護金属または非金属仕上げで被膜される。そのような保護仕上げは、PCB製作後の保管時、またははんだ付け温度への曝露時に、銅表面が酸化することを防止することによって、良好なはんだ付け性を維持するように設計される。
【0004】
米国第6,524,644B号、米国第2007/0221503A号、欧州第291743B号、及び韓国第2012/017967A号等の有機はんだ付け性保存剤(OSP)が、被膜表面の優れた表面共平面性で金属の表面を保護するために使用される。しかしながら、それらの参考文献のほとんどは、イミダゾールまたはベンズイミダゾール等のアゾール化合物を開示し、これらのOSPの保護性は、依然として不十分であり、また表面が複数の高温リフローサイクル下に置かれた後、それらのはんだ付け性能は常に低下する。
【0005】
米国第2014/174322A号は、アジン化合物を含む保存膜を開示する。しかしながら、当技術分野で開示された技術が、銅表面及び金表面を有するPCBに適用されるとき、OSP膜は銅表面上だけでなく、金表面上にも形成され、金表面の伝導率の低下を生じさせる。したがって、銅表面上の良好な選択性で、銅表面の酸化を防止する方法が、依然として所望される。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、OSP膜を物品の銅表面上に選択的に形成して、銅表面の酸化を効果的に防止するための方法を提供する。
【0007】
したがって、本発明の1つの態様は、物品の銅表面上に有機膜を形成するための方法に関し、この方法は、(a)銅表面と、ベンズイミダゾールまたはその誘導体を含む第1の溶液とを接触させるステップと、(b)第1の溶液と接触後、銅表面と、式(I)によって表される化合物を含む第2の溶液とを接触させるステップと、を含み、
【0009】
式中、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、置換または非置換の直鎖、分枝、または環状アルキル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
2及びR
3は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含み、R
1は、以下の構造を有し得、
【0011】
式中、R
4及びR
5は独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、置換または非置換の直鎖、分岐、または環状ヒドロカルビル、置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
4及びR
5は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、上述の方法によって形成される銅表面上の有機膜に関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、銅表面上の有機膜に関し、この有機膜は、(i)銅表面上に形成され、ベンズイミダゾールまたはその誘導体を含む第1の層と、(ii)第1の層上に形成され、式(I)によって表される化合物を含む第2の層と、を含み、
【0015】
式中、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、置換または非置換の直鎖、分枝、または環状アルキル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
2及びR
3は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含み、R
1は、以下の構造を有し得、
【0017】
式中、R
4及びR
5は独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、置換または非置換の直鎖、分岐、または環状ヒドロカルビル、置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
4及びR
5は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含む。
【0018】
なおさらなる態様において、本発明は、物品の銅表面を酸化から保護するための方法に関し、この方法は、(a)銅表面を有する物品を調製するステップと、(b)物品の銅表面と、ベンズイミダゾールまたはその誘導体を含む第1の溶液とを接触させ、銅の表面上に第1の有機膜を形成するステップと、(c)第1の有機膜を有する銅表面と、式(I)によって表される化合物を含む第2の溶液とを接触させるステップであって、
【0020】
式中、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、置換または非置換の直鎖、分枝、または環状アルキル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
2及びR
3は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含み、R
1は、以下の構造を有し得、
【0022】
式中、R
4及びR
5は独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、置換または非置換の直鎖、分岐、または環状ヒドロカルビル、置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルであり、R
4及びR
5は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、前記複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含む、ステップと、(d)銅表面を乾燥させて、表面上に有機膜を形成するステップと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書にわたって使用されるとき、下記に示される略語は、文脈上明らかに他の意味を示さない限り、以下の意味を有する:g=グラム、mg=ミリグラム、L=リットル、mL=ミリリットル、ppm=百万分率、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、min.=分、s=秒、hr.=時間、℃=摂氏度、vol%=体積パーセント、wt%=重量%。
【0024】
用語「めっき」及び「析出」は、本明細書にわたって同じ意味で使用される。
【0025】
本発明の方法は、物品の銅表面上に有機膜を形成するためのものあって、以下の2つのステップを含む。第1のステップは、銅表面と、ベンズイミダゾールまたはその誘導体を含む第1の溶液とを接触させることである。
【0026】
ベンズイミダゾールまたはその誘導体の例には、ベンズイミダゾール、2−メチル−ベンズイミダゾール、2−エチル−ベンズイミダゾール、2−プロピル−ベンズイミダゾール、イソプロピルベンズイミダゾール、2−ブチル−ベンズイミダゾール、2−tert−ブチル−ベンズイミダゾール、2−ペンチルベンズイミダゾール、2−ヘキシル−ベンズイミダゾール、2−(1−メチルペンチル)−ベンズイミダゾール、2−ヘプチル−ベンズイミダゾール、2−(1−エチル−ペンチル)−ベンズイミダゾール、2−オクチル−ベンズイミダゾール、2−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)−ベンズイミダゾール、2−ノニル−ベンズイミダゾール、2−(9−オクテニル)−ベンズイミダゾール、2−(8−ヘプタデセニル)−ベンズイミダゾール、2−(4−クロロブチル)−ベンズイミダゾール、2−(9−ヒドロキシ−ノニル)−ベンズイミダゾール、2−ヘキシル−5−メチル−ベンズイミダゾール、2−ヘプチル−5,6−ジメチル−ベンズイミダゾール、2−オクチル−5−クロロ−ベンズイミダゾール、2−エチル−5−オクチル−6−ブロモ−ベンズイミダゾール、2−ペンチル−5,6−ジクロロ−ベンズイミダゾール、4−フルオロ−ベンズイミダゾール、2−ヒドロキシル−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−(4−クロロベンジル)−1H−ベンズイミダゾール、2−(4−ブロモベンジル)−1H−ベンズイミダゾール、2−(4−フルオロベンジル)−1H−ベンズイミダゾールが含まれる。
【0027】
ベンズイミダゾールまたはその誘導体は、0.01g/L〜50g/L、好ましくは0.1g/L〜20g/L、より好ましくは0.5g/L〜10g/Lの量で第1の溶液中に含まれ得る。そのような化合物は、市販され得、またはそれらは、当技術分野において既知のまたは参考文献に開示されたプロセスにより作製され得る。
【0028】
第1の溶液はまた、溶液のpHを1.0〜11.0、好ましくは3.0〜9.0、より好ましくは5.0〜8.0の範囲に調整するために、1つ以上の酸または塩基を含む。第1の溶液に使用することができる酸には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及びフッ化水素酸等の無機酸、ならびに酢酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、ギ酸、及びそれらの塩等の有機酸が含まれるがこれらに限定されない。第1の溶液に使用することができる塩基には、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミン、及び他のアルキルアミンが含まれるがこれらに限定されない。
【0029】
典型的には、可溶化剤を使用して、溶液中に被膜有効成分を溶解する。任意に、1つ以上のアルコールを使用し、有効成分を可溶化し得、有効成分を、アルコール中に溶解し、その後、第1の溶液を作製するために使用される水に添加する。そのような可溶化剤には、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、他のペンタノール、1−ヘキサノール、他のヘキサノール、ヘプタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、及びアルキル環状アルコールが含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
任意に、1つ以上の錯化剤またはキレート剤が、第1の溶液中に含まれ得る。従来の錯化剤またはキレート剤が、使用され得る。そのような錯化剤またはキレート剤には、カルボン酸、例えば、酢酸、ギ酸、ニトリロ三酢酸、酒石酸、グルコン酸、フタル酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及びN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸三ナトリウム塩(HEDTA);カルボン酸置換含窒素複素環化合物、例えば、ピコリン酸、キノリン酸、ニコチン酸、フサル酸、イソニペコチン酸、ピリジンジカルボン酸、ピパラジンカルボン酸、ピロールカルボン酸、及びピロリジン;アミノカルボン酸;ポリアミン;アミノアルコール、例えば、エタノールアミン及びジメチルエタノールアミン;含硫黄化合物、例えば、チオール、ジスルフィド、チオエーテル、チオアルデヒド、チオケトン、チオ尿素、及びその誘導体、チオグリコール酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、及びメルカプトコハク酸;アミン、例えば、エチレンジアミン及びアンモニア;ならびにアミノ酸、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、ヒスチジン、アラニン、グリシン、グルタミン、バリン、システイン、及びメチオニンが含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
下記に開示されたとおり、第1の溶液は、アジン化合物をさらに含み得る。アジン化合物は、0.01g/L〜1g/L、好ましくは0.05g/L〜0.5g/L、より好ましくは0.1g/L〜0.3g/Lの量で第1の溶液に含まれ得る。
【0032】
第1の溶液を物品の銅表面に適用し、銅の表面上に有機膜の第1の層を形成する。好ましくは、物品は、銅表面及び金表面の両方を有し得る。有機膜は、金表面よりも銅表面上に選択的に析出する。そのような物品の例には、プリント基板、ダイオード等の電子部品、トランジスタ、集積回路部品、光電子デバイス、及び装飾付属品が含まれるがこれらに限定されない。
【0033】
第1の溶液を、当技術分野において既知の何らかの適したプロセスによって、物品の銅表面に適用し得る。そのようなプロセスには、物品の銅表面を溶液中に浸漬することか、溶液を物品の銅表面上に噴霧することか、または溶液を物品の銅表面上にブラッシングすることが含まれるがこれらに限定されない。概して、溶液を、室温から90℃、好ましくは、30℃〜70℃の温度で適用する。次の処理ステップの前の物品の銅表面と溶液との間の接触時間は、1分〜10分、好ましくは、1分〜5分に及び得る。任意に、物品の銅表面を、室温で風乾し得、その後、物品を室温で、水で洗浄し得、続いて、10〜25℃の温度で冷風乾燥し得る。銅表面上の有機膜の乾燥された第1の層は、典型的には、薄く、時には非連続的な膜である。第1の層の厚さは、典型的には、10〜200nm、より典型的には、30〜150nmである。
【0034】
第1の溶液を物品の銅表面に適用する前に、銅表面を、典型的には、何らかの有機汚染及び表面酸化を除去するように、きれいにするもしくはエッチングする、またはきれいにしエッチングする。物品を、任意に、水で洗浄し、乾燥し、その後、第1の溶液と接触させる。
【0035】
この方法の第2のステップは、銅表面と、特定のピラジン由来の化合物を含む第2の溶液とを接触させることである。本発明で使用されるピラジン由来の化合物は、式(I)によって表される。
【0037】
式(I)において、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、置換または非置換の直鎖、分枝、または環状アルキル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルである。R
2及びR
3は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含み、R
1は、以下の構造を有し得る。
【0039】
式(II)において、R
4及びR
5は独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、置換または非置換の直鎖、分岐、または環状ヒドロカルビル、置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、カルボキシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、チオエステル、アミノ、アミド、ボリル、またはシリルである。R
4及びR
5は、それらの原子の全てと一緒になって、5員複素環を形成し得、複素環は、ヘテロ原子として2個の窒素原子を含む。
【0040】
R
2及びR
3が一緒になって、5員複素環を形成するとき、化合物は、以下の構造を有し、
【0042】
式中、R
1は、上記のように定義され、R
6は、R
6が上記の式(II)と同一の構造ではないという条件で、R
1と同一である。
【0043】
構造(I)のR
1が、上記で定義されたような構造(II)であるとき、構造は、以下のとおりであり、
【0045】
式中、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、上記で定義されたとおりである。
【0046】
R
4及びR
5が、一緒になって5員複素環を形成するとき、構造は、以下のとおりであり、
【0048】
式中、R
6は、上記で定義されたとおりである。
【0049】
ヒドロカルビルは、典型的には、1〜25個の炭素原子、好ましくは、1〜12個の炭素原子、より好ましくは、1〜7個の炭素原子を有する。ヒドロカルビルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、またはベンジルであり得る。置換ヒドロカルビル上の置換基には、ニトロ、アミノ、ハロゲン化物、シアノ、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、及びアルコキシルが含まれるがこれらに限定されない。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、及び臭化物を含み、典型的には、ハロゲン化物は、塩化物及びフッ化物であり、より典型的には、ハロゲン化物は、塩化物である。
【0050】
置換または非置換の直鎖または分岐アルコキシル、及び置換または非置換の直鎖または分岐アミノ及びアミドは、1〜25個の炭素原子、好ましくは、1〜12個の炭素原子、より好ましくは、1〜6個の炭素原子を有し得る。置換アルコキシルならびに置換アミノ及びアミド上の置換基には、ニトロ、アミノ、ハロゲン化物、シアノ、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、及びアルコキシルが含まれるがこれらに限定されない。
【0051】
置換または非置換の直鎖または分岐カルボキシル及びカルボニルは、1〜25個の炭素原子、好ましくは、1〜12個の炭素原子、より好ましくは、1〜6個の炭素原子を有し得る。置換基は、ニトロ、ハロゲン化物、及びヒドロキシルを含むがこれらに限定されない。
【0052】
置換または非置換の直鎖または分岐エステル及びチオエステルは、2〜25個の炭素原子、好ましくは、2〜12個の炭素原子、より好ましくは、2〜6個の炭素原子を有し得る。置換基には、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシル、及びシアノが含まれるがこれらに限定されない。
【0053】
置換または非置換の直鎖または分岐アルキルチオ基は、1〜25個の炭素原子、好ましくは、2〜12個の炭素原子、より好ましくは、2〜6個の炭素原子を有し得る。置換基には、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシル、及びシアノが含まれるがこれらに限定されない。
【0056】
式中、R
7及びR
8は独立して、水素、または1〜10個の炭素原子、好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する置換、非置換の直鎖または分岐アルキル基であり、最も好ましくは、R
7及びR
8は、水素である。置換基には、ニトロ、ヒドロキシル、及びハロゲン化物が含まれるがこれらに限定されない。
【0059】
式中、R
9、R
10、及びR
11は独立して、水素、または置換、非置換の直鎖または分岐の炭素数1〜5のアルキル、またはフェニルである。好ましくは、R
9、R
10、及びR
11は、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニルである。そのようなシリル基の例は、トリメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ter−ブチルジメチルシリル、及びトリイソプロピルシリルである。置換基には、ハロゲン化物、ニトロ、及びヒドロキシルが含まれるがこれらに限定されない。
【0060】
好ましくは、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、ヒドロキシル、置換または非置換の直鎖または分岐の1〜6個の炭素原子を有するアルキまたはアルコキシである。アルキ及びアルコキシの置換基には、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、及びカルボニルが含まれるがこれらに限定されない。より好ましくは、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、ヒドロキシル、置換または非置換の直鎖または分岐の1〜5個の炭素原子を有するアルキルであり、置換基は、ヒドロキシル及びアミノが含まれるがこれらに限定されない。最も好ましくは、R
1、R
2、及びR
3は独立して、水素、ヒドロキシル、または1〜5個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルである。R
1、R
2、及びR
3が水素であるときが、さらにより好ましい。
【0061】
上記の構造を有するピラジン由来の化合物は、0.01g/L〜50g/L、好ましくは、0.1g/L〜20g/L、より好ましくは、1g/L〜10g/Lの量で組成物中に含まれ得る。そのような化合物は、商業的に入手され得るか、またはそれらは、当技術分野において既知のまたは参考文献に開示されたプロセスにより作製され得る。
【0062】
溶液はまた、組成物のpHを1〜10、好ましくは、1〜7、より好ましくは、2〜5の範囲に調整するために、1つ以上の酸、好ましくは、有機酸も含む。無機酸には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及びフッ化水素酸が含まれるがこれらに限定されない。有機酸には、カルボン酸及びそれらの塩が含まれるがこれらに限定されない。そのようなカルボン酸には、酢酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、ギ酸、及びそれらの塩が含まれるがこれらに限定されない。概して、無機酸及び有機酸は、0.1g/L〜10g/Lの量で組成物中に含まれるが、しかしながら、酸は、所望されるpHを維持するのに十分な量で含まれるため、量は異なり得る。
【0063】
典型的には、可溶化剤を使用して、溶液中に被膜有効成分を溶解する。任意に、有効成分を可溶化するために、1つ以上のアルコールを使用し得、有効成分を、アルコール中に溶解し、その後、処理溶液を作製するために使用される水に添加する。そのような可溶化剤には、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、他のペンタノール、1−ヘキサノール、他のヘキサノール、ヘプタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、及びアルキル環状アルコールが含まれるがこれらに限定されない。
【0064】
1つ以上の金属イオン源もまた、溶液中に含まれ得る。金属イオンは、膜形成速度を増加させ、より均一な膜層を提供し、また溶液の作業温度を低下させるために含まれる。そのような金属イオンには、銅、スズ、亜鉛、銀、ニッケル、鉛、マンガン、バリウム、パラジウム、及び鉄が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、金属イオンは、銅、スズ、亜鉛、銀、マンガン、鉄、及びニッケルから選択される。より好ましくは、金属イオンは、銅である。金属イオン源は、ハロゲン化物、硝酸、酢酸、硫酸、酸化物、アルキルスルホン酸、ギ酸、グルコン酸、酒石酸、シュウ酸、酢酸、及び乳酸の水溶性金属塩等の何からの水溶性有機または無機金属塩を含み得る。そのような金属塩の多くは、市販されているか、または参考文献の開示に基づいて作製され得る。概して、そのような塩は、0.001g/L〜5g/Lの量、好ましくは、0.01g/L〜3g/Lの量で溶液中に含まれる。そのような塩は、1ppm〜5,000ppm、好ましくは、10ppm〜3,000ppmの濃度で金属イオンを提供する量で添加される。
【0065】
上記に開示された金属塩の代わりに、塩化アンモニウムを、溶液中で銅イオンを生成するために添加する。塩化アンモニウムを溶液中に含むとき、物品の銅表面を穏和にエッチングし、したがって、遊離銅イオンを溶液中に放出する。概して、塩化アンモニウムは、1ppm〜2,000ppm、好ましくは、2ppm〜1,000ppm、より好ましくは、10ppm〜500ppm、最も好ましくは、20ppm〜100ppmの量で溶液中に含まれる。
【0066】
任意に、1つ以上の錯化剤またはキレート剤が、溶液中に含まれ得る。従来の錯化剤またはキレート剤が、使用され得る。そのような錯化剤またはキレート剤には、カルボン酸、例えば、酢酸、ギ酸、ニトリロ三酢酸、酒石酸、グルコン酸、フタル酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及びN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸三ナトリウム塩(HEDTA)、カルボン酸置換含窒素複素環化合物、例えば、ピコリン酸、キノリン酸、ニコチン酸、フサル酸、イソニペコチン酸、ピリジンジカルボン酸、ピパラジンカルボン酸、ピロールカルボン酸、及びピロリジン、アミノカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、例えば、エタノールアミン及びジメチルエタノールアミン、含硫黄化合物、例えば、チオール、ジスルフィド、チオエーテル、チオアルデヒド、チオケトン、チオ尿素、及びその誘導体、チオグリコール酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、及びメルカプトコハク酸、アミン、例えば、エチレンジアミン及びアンモニア、ならびにアミノ酸、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、ヒスチジン、アラニン、グリシン、グルタミン、バリン、システイン、及びメチオニンが含まれるがこれらに限定されない。
【0067】
第2の溶液を、第1の有機膜によって完全にまたは部分的に包含された銅表面へ適用する。第2の溶液を、当技術分野において既知の何らかの適したプロセスによって、物品の銅表面に適用し得る。浸漬、噴霧、またはブラッシング等の第1のステップに開示した同一のプロセスを、適用することができる。概して、第2の溶液を、室温から90℃、好ましくは、30℃〜70℃の温度で適用する。次の処理ステップの前の第1の有機膜を有する銅表面と第2の溶液との間の接触時間は、1分〜10分、好ましくは、1分〜5分に及び得る。
【0068】
第2のステップの後、物品の銅表面を、任意に、室温で風乾し得、その後、物品を室温で、水で洗浄し得、続いて、50〜70℃の温度で熱風乾燥し得る。銅表面上の乾燥された膜は、典型的には、10nm〜500nm厚、好ましくは、10nm〜200nm厚、より好ましくは、20nm〜100nm厚の均一な層を形成する。
【0069】
本方法は、銅表面上に連続的かつ実質的に均一な有機膜の形成を可能にする。膜は、良好な防食特性及び熱安定性を有し、複数の熱サイクル後でさえも銅表面のはんだ付け性を保持する。加えて、方法は、銅表面上に有機膜の選択的析出を提供し、金表面には実質的に析出しない。「実質的に析出しない」は、金表面上の有機膜析出の面積が、金表面の全面積に基づいて、10%以下であることを意味する。好ましくは、金表面上の有機膜析出の面積は、5%以下であり、より好ましくは、本発明のプロセス後、外観の変化が見受けられない。したがって、本発明の方法は、金等の他の表面仕上げをすでに有する物品の用途に有用である。
【実施例】
【0070】
実施例1〜4
以下の2つの浴を調製した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
試験版(Shenzhen Fastprint Circuit TechnologyからのFR−4銅張積層板)を、下記の表3及び表4に開示したプロセスにより処理した。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
試験試料を、その後、5回リフローした。熱リフロー条件は、MALCOMの卓上型リフロー炉を使用して、ピーク温度で、255℃で5秒間であった。5回のリフロー前及び後の試験試料が観察された。重大な変色は、実施例1、2、及び3の試験試料において見受けられた。対照的に、実施例4は、5つのリフローステップ後、変色を示さなかった。結果は、実施例4の2ステップOSPプロセスが、銅表面上に熱的に安定なOSP被膜を形成したことを示した。
【0077】
実施例5及び6
以下の3つの浴を調製した。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
表8に開示したOSPプロセスを、表4に開示したOSPプロセスの代わりに使用したことを除けば、表3に開示されたとおり、同一のプロセスを行った。
【0082】
【表8】
【0083】
実施例1のステップのとおり、同一のリフローステップを行った。5回リフローした後、変色は、実施例5の試験試料において観察されなかったが、一方、明らかな変色は、実施例6の試験試料において観察された。結果は、本発明の2ステップOSPプロセスが、2ステップOSPプロセスのプロセスよりも、良好な熱安定性を有するが、2つの異なるアゾール化合物を使用することを示した。
【0084】
はんだ濡れ試験を行い、5回リフローする前及び後に、OSP膜で銅表面のはんだ付け性を評価した。試験パラメータを下記の表9に示す。
【0085】
【表9】
【0086】
表10に示したはんだ濡れ試験結果から、実施例5のOSP被膜は、実施例6からのものよりも、非常に良好であるはんだ付け性を示し、いくらかのはんだはじきが観察された。
【0087】
【表10】
【0088】
実施例7〜9
本発明の2ステップOSPプロセスの性能を、2つの市販のOSP製品と比較した。市販の浴1は、1つのステップの処理であるが、一方、市販の浴2は、2つのステップの処理であった。
【0089】
【表11】
【0090】
以下の試験を、実施例7〜9のOSP浴によって処理された試験試料のために行った。
(1)熱リフロー後の変色
リフローサイクルを、5つのサイクル及び9つのサイクルに変化したことを除けば、熱リフロー試験を、熱リフローが観察される前及び後に、実施例1と同一に行った。熱リフローの5つのサイクル及び9つのサイクル後、実施例7の試料は、良好な熱安定性を示し、変色は見受けられなかったが、一方で、著しい変色が、実施例8及び9の試料において見受けられた。これらの試料の色は、熱リフロー前の試料と比較して、重大に濃い黄色に転じた。
【0091】
(2)OSP膜の厚さ
集束イオンビーム顕微鏡(FIB)を使用して、熱リフローサイクル前及び後に、被膜の厚さを測定し、試験試料の断面から各試料の連続的な被膜を調べた。表11は、各試料におけるOSP膜の厚さを示す。平均の厚さを、FIB−SEM像から無作為に測定された9点から算出した。
【0092】
【表12】
【0093】
表12に関して、実施例7の試料のための被膜は、実施例8及び9のものよりも相対的に薄かった。実施例7の試料の平均の厚さは、100nm未満であり、一方で、実施例8及び9のものは、200nm超であった。実施例7の試料のOSP膜は、熱リフローの5つ及び9つのサイクル前及び後に、全ての試料の表面上で連続的かつ等角であることが分かった。対照的に、実施例8及び9の試料のOSP膜はまた、連続的であるが、等角ではなかった。熱リフローの5つ及び9つのサイクル後、これらのOSP膜の厚さは、著しく減少し、非連続的有機層になった。
【0094】
(3)XPS分析
X線光電子分光法(XPS)を使用して、熱リフローによって生じる被膜における元素分布の変化を評価した。表13は、実施例7〜9の試料のXPS結果(原子%)を示す。全ての試料では、30層をエッチングした。使用されたイオンエネルギーは、2000eVであり、全ての試料のために表面から内側銅層へ情報を入手するように、異なるスパッタリング時間を、FIBから観察された、異なる厚さのとおり、異なる試料のために設定した。実施例7、8、及び9の試料のためのスパッタリング時間は、それぞれに、30秒、120秒、及び60秒である。全ての試料では、表面汚染が原因で、第1の層を除去した。
【0095】
【表13】
【0096】
表13から、実施例7の被膜は、リフロー前の試料内で、2.5%の酸素及び15.1%の銅を示した。一方、約4.7%の塩化物は、配合物内の塩化アンモニウムの添加が原因で、最初のいくつかの層で見受けられた。実施例7のOSP被膜内の酸素含有量及び銅含有量の両方は、実施例8及び9(リフロー前の試料に関する)のOSP被膜よりも高かった。酸素は、膜内のカルボニルの形成によってもたらされ得、より高い銅含有量は、銅表面上に形成された膜が、有機分子の自己組立によって形成された純粋な有機層であるよりも、むしろ銅錯体であることを示す。
【0097】
実施例7のOSP被膜では、酸素及び銅の含有量における変化は、熱リフローの5つ及び9つのサイクル後、著しくなかった。熱リフローの9つのサイクル後、2.7%の酸素及び18.4%の銅のみが、OSP層で観察された。結果は、実施例7の2ステップOSP被膜が、外側から酸素透過を遮断し、内側から銅拡散を遮断する良好な性能を有したことを示した。実施例8及び9のOSP被膜では、リフロー前に試料に対して、非常に低い酸素含有量及び銅含有量があることが分かった。酸素含有量及び銅含有量は、それぞれに、1%未満及び3%未満であった。熱リフロー後、表面での酸素含有量及び銅含有量の両方は、両方の試料に対して著しく増加した。酸素含有量及び銅含有量における増加は、前項で示したFIBにおける分析結果と一致した。
【0098】
(4)ボール剪断試験
OSP被膜が、はんだ付け後のはんだ接合形成に影響するかを示すために、ボール剪断試験を行い、結果を、実施例8及び9の被膜と比較した。ボール剪断試験のパラメータを下記の表14に示す。
【0099】
【表14】
【0100】
実施例7のOSP被膜では、通常の剪断力は、全ての試料点のために記録され、平面空隙は、断面図から観察されなかった。類似した結果は、実施例8及び9のOSP被膜のために観察された。結果は、実施例7のOSP被膜からのはんだ接合が、実施例8及び9のものと比較可能であることを示した(表15)。
【0101】
【表15】
【0102】
(5)被膜選択性試験
試験基板を、表16に示されたとおり、無電解ニッケル浸漬金(ENIG)プロセス(Niの厚さ:5μm、Auの厚さ:0.05μm)と調製し、その後、2ステップOSPプロセスを、実施例4と同一に行った。
【0103】
【表16】
【0104】
処理に続いて、試料外観を記録し、対応する未処理のENIG試料と比較した。2ステップOSPプロセスの被膜選択性は、良好であり、OSPプロセス後、ENIG表面上に外観変化は見受けられなかった。金の外観は、OSPプロセス後に観察された。