(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356218
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】抗腫瘍活性を有する7−α−[9−(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオールのエステル誘導体及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07J 1/00 20060101AFI20180702BHJP
A61K 31/565 20060101ALI20180702BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20180702BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
C07J1/00CSP
A61K31/565
A61P35/00
A61P15/00
【請求項の数】23
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-507969(P2016-507969)
(86)(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公表番号】特表2016-517849(P2016-517849A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】CN2013074363
(87)【国際公開番号】WO2014169462
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2016年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】511214989
【氏名又は名称】シーアン リーバン ファーマシューティカル テクノロジー シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】XI’AN LIBANG PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100172797
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 昌広
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ヤーチ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジウチェン
(72)【発明者】
【氏名】フー レンラ
【審査官】
早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−097995(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/105823(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/015081(WO,A1)
【文献】
米国特許第04212864(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第04218743(DE,A1)
【文献】
国際公開第2014/169456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 1/00
A61K 31/565
A61P 15/00
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Aの化合物:
【化1】
(式中、
置換基R’は、H、2〜4個の炭素原子を有するアルカノイル又はアルケノイルから選択され、
置換基R
は、11〜22個の炭素原子を有するアルカノイル又はアルケノイルから選択される)。
【請求項2】
置換基R’がHであり、置換基Rが11〜22個の炭素原子を有するアルカノイル又はアルケノイルから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
置換基Rが、ウンデカノイル、ヘキサデカノイル、ドコサノイル又は2−[(3’,3’)−ジメチル−1’−メチル]ブチル−5−メチル−(7,7)−ジメチル−オクタノイルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
置換基Rが、1〜6個の炭素−炭素二重結合を含み、かつ11〜22個の炭素原子を有するアルケノイルから選択され、前記炭素−炭素二重結合が主鎖又は分岐鎖のいずれに分布していてもよいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
置換基Rが、ウンデカ−2−エノイル、エイコサ−5,8,11,14,17−ペンタエノイル及びドコサ−(4,7,10,13,16,19)−ヘキサエノイルから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
置換基R’が2〜4個の炭素原子を有するアルカノイルから選択される場合、前記アルカノイルがアセチル又はブチリルであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
置換基Rが、2−[(3’,3’)−ジメチル−1’−メチル]ブチル−5−メチル−(7,7)−ジメチル−オクタノイル又はウンデカ−2−エノイルであることを特徴とする、請求項1又は6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜
7のいずれかに記載の化合物を調製する方法であって、
a)式Bの化合物のC−17位の−OHをアシル化するステップ:式Bの化合物を、溶媒中でアルカリ試薬、有機酸及び触媒と室温で撹拌しながら混合して反応混合物を形成し、前記反応混合物を反応させて、C−17位がアシル化された式Aの化合物の粗生成物を得るステップ、及び
【化2】
b)ステップa)で得られた粗生成物を精製して、副生成物N,N−ジシクロアルキル尿素を除去し、C−17位がアシル化された式Aの化合物の精製物を得るステップ
を含み、
化合物中の置換基R’がHでない場合は、
c)ステップb)で得られた、C−17位がアシル化された精製物のC−3位をアシル化するステップ:ステップb)で得られた、C−17位がアシル化された精製物を、溶媒中でアルカリ試薬、有機酸及び触媒と室温で撹拌しながら混合し反応させてC−17及びC−3位がアシル化された式Aの化合物の粗生成物を得るステップ、及び
d)ステップc)で得られた粗生成物を精製して、式Aの化合物の精製物を得るステップ
をさらに含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
ステップa)において、アルカリ試薬がピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、5−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、及び4−ジメチルアミノピリジンから選択され、溶媒が塩化メチル、塩化メチレン及びクロロホルムから選択され、触媒が脱水剤であり、有機酸が11〜22個の炭素原子を有するアルキル酸又はアルケニル酸であり、ステップb)において、精製するステップが、ステップa)で得られた粗生成物をテトラヒドロフラン又は酢酸エチルに溶解させて溶液を形成し、次いで前記溶液をn−ヘキサン又はn−ヘキサン−酢酸エチルの混合溶媒で沈殿させ、沈殿させた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び/又は中性アルミナ吸着により分離及び精製するステップを含み、ステップc)において、アルカリ試薬がピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、5−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、及び4−ジメチルアミノピリジンから選択され、溶媒がテトラヒドロフラン、及び酢酸エチルから選択され、触媒が脱水剤であり、有機酸が2〜4個の炭素原子を有するアルキル酸又はアルケニル酸であり、ステップd)において、精製するステップが、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びエタノール溶出により行われ、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーでのグラジエント溶出にn−ヘキサン−酢酸エチルの混合溶媒が使用され、グラジエント溶出のn−ヘキサンと酢酸エチルの体積比が50:1〜1:1であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)において、アルカリ試薬が4−ジメチルアミノピリジンであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)において、触媒がN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ステップc)において、アルカリ試薬が4−ジメチルアミノピリジンであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)において、溶媒がテトラヒドロフランであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)において、触媒がN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ステップd)において、グラジエント溶出のn−ヘキサンと酢酸エチルの体積比が40:1/10:1/5:1であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の式Aの化合物を含む組成物であって、油剤、脂剤又はマイクロスフェア剤であることを特徴とする前記組成物。
【請求項17】
がんの治療における医薬を製造するための、請求項1〜7のいずれかに記載の式Aの化合物を含む組成物又は請求項16に記載の組成物の使用。
【請求項18】
医薬が、エストロゲン受容体を有するがん細胞を阻害するために使用される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
医薬が、乳がん細胞を阻害するために使用される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれかに記載の式Aの化合物を含むことを特徴とする、がんの治療剤。
【請求項21】
エストロゲン受容体を有するがん細胞を阻害するために使用されることを特徴とする、請求項20に記載の治療剤。
【請求項22】
乳がん細胞を阻害するために使用されることを特徴とする、請求項21に記載の治療剤。
【請求項23】
式Aの化合物が注射により投与されることを特徴とする、請求項20〜22のいずれかに記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に属し、詳細には一般式Aの化合物の調製方法に関し、より詳細には7−α−[9−(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオールのエステル誘導体及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
7−α−[9−(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオールはフルベストラントとも呼ばれ、一般式Bを有し、抗エストロゲン療法に応答せずエストロゲン受容体陽性である閉経後進行乳がんの治療における、新規のエストロゲン受容体遮断薬である。
【0003】
【化1】
【0004】
乳がんの最も重要な特徴は、その発生及び進展が、インビボでのエストロゲンレベル及びその代謝と関係していることである。エストロゲン受容体(ER,estrogen receptor)が多くの乳がん患者の腫瘍細胞で見られること、及び腫瘍増殖がエストロゲンにより刺激されることを研究が示している。したがって、乳がんを治療する主な方法の一つは、エストロゲン濃度を低下させるか又はエストロゲンのその受容体への結合を遮断して、腫瘍細胞の増殖及び再生を阻害することである。フルベストラントは、エストラジオールと同様の親和性でエストロゲン受容体に競合的に結合することができる。また、フルベストラントは受容体を遮断し、エストロゲンの結合を阻害し、受容体の変形を刺激し、ER濃度を低下させて腫瘍細胞を破壊することもできる。フルベストラントはヒト乳がん細胞においてERタンパク質を下方制御し、腫瘍細胞においてERを下方制御し、腫瘍増殖を最小限に抑えることができる。フルベストラントは現存する腫瘍ERの状態を変化させず、また新しいERの発生に影響しないため、腫瘍はER陽性として「プログラム」され続ける。このように、フルベストラントは治療効果を有し続ける。フルベストラントの最大の利点は、一般的な抗エストロゲン薬の部分アゴニスト作用及びエストロゲン様活性を有しないことである。
【0005】
現在、多くの市販のフルベストラント製剤は、以下の2つの理由で賦形剤として油を使用している。一方では、フルベストラントは安定性が悪く容易に分解し、一般的に−20℃で保存され、長時間室温で保存されるべきではなく、そうしなければ純度に影響が出る可能性がある。その分解機構ははっきりとは分かっていないが、フルベストラントの安定性に影響する主な理由は、C−3及びC−17位に−OHが存在することにあると一般的に考えられている。一方、3及び17位に−OHが存在することで薬物の極性及び消化管に対する薬物の刺激が増大し、そのためフルベストラントは注射剤に調製することのみ可能である。
【0006】
他方では、他のステロイドと同様、フルベストラントは特定の物理的特性により配合が困難であり、高い親油性及び約10ng/mLという極めて低い水溶性を有する分子である。その溶解性は、米国特許第5183514号明細書及び中国特許出願公開第1394141号明細書において提供される(mg/mL、25℃)(水 0.001、ピーナッツオイル 0.45、ゴマ油 0.58、ヒマシ油 20、ミグロイル810 3.06、ミグロイル812 2.72、オレイン酸エチル 1.25、安息香酸ベンジル 6.15、ミリスチン酸イソプロピル 0.80、スパン85 3.79、エタノール 200超、ベンジルアルコール 200超)。最大の溶解性を有するヒマシ油においてさえも、投与のための臨床要件を満たすフルベストラント濃度を提供することが不可能であることが分かる。したがって、多くの市販のフルベストラント製剤は、溶媒として油を使用するだけでなく、可溶化を促進するためにエタノール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなど他の賦形剤も加えている。このようにフルベストラントは、有効血漿中濃度(2.5ng/mL)を2週間維持することが可能な45mg/mL以上の含有量で、筋肉内注射可能な注射剤に配合可能となる。しかし、このような溶媒を加えることにより、調製において薬物が沈殿する危険性が増大し、また注射部位での刺激が引き起こされる可能性がある。
【0007】
したがって、先行技術において解決されるべき問題は、人体への刺激を低減し、その親油性を増大させ、それによりヒトが使用するための製剤への配合をより容易にしつつ、がん細胞に対するその阻害効果を維持するために、フルベストラント、特にC−3及びC−17位の−OHをいかにして構造改善するかであることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5183514号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1394141号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の一目的は、薬物安定性及び親油性溶媒に対するその溶解性を増大させるために、フルベストラント構造のC−3及びC−17位の−OHを改善すること、並びにフルベストラントを、C−17位に2〜22個の炭素原子を有するエステル(カルボキシル炭素を含む)化合物、及びC−3位に2〜4個の炭素原子を有するエステル(カルボキシル炭素を含む)化合物にエステル化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、以下の技術的解決により実現される。
【0011】
本発明は、式Aの化合物
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
置換基R’は、H、2〜4個の炭素原子を有するアルカノイル又はアルケノイルから選択され、
置換基Rは、H、2〜22個の炭素原子を有するアルカノイル又はアルケノイルから選択され、
好ましくは、
置換基R’がHであり、置換基Rが11〜22個の炭素原子を有するアルカノイル又はアルケノイルから選択され、
好ましくは、
前記置換基Rが、11〜22個の炭素原子を有するアルカノイル、好ましくはウンデカノイル、ヘキサデカノイル、ドコサノイル又は2−[(3’,3’)−ジメチル−1’−メチル]ブチル−5−メチル−(7,7)−ジメチル−オクタノイルから選択され、
好ましくは、
前記置換基Rが、1〜6個の炭素−炭素二重結合を含み11〜22個の炭素原子を有するアルケノイルから選択され、前記炭素−炭素二重結合が主鎖又は分岐鎖のいずれに分布していてもよく、
好ましくは、
前記置換基Rが、ウンデカ−2−エノイル、エイコサ−5,8,11,14,17−ペンタエノイル及びドコサ−(4,7,10,13,16,19)−ヘキサエノイルから選択され、
好ましくは、
置換基R’が2〜4個の炭素原子を有するアルカノイルから選択される場合、前記アルカノイルがアセチル又はブチリルであり、
好ましくは、
前記置換基Rが、11〜22個の炭素原子を有するアルカノイル又はアルケノイル、好ましくは2−[(3’,3’)−ジメチル−1’−メチル]ブチル−5−メチル−(7,7)−ジメチル−オクタノイル又はウンデカ−2−エノイルから選択される)
を提供する。
【0014】
例示的に、前記化合物は以下の式の構造を有することができる。フルベストラントエステルI〜XIの構造式を以下に示す。
【0015】
【化3】
【0016】
さらに、本発明は上記の化合物を調製する方法であって、
a)式Bの化合物のC−17位の−OHをアシル化するステップ:式Bの化合物を、溶媒中でアルカリ試薬、有機酸及び触媒と室温で撹拌しながら混合して反応混合物を形成し、前記反応混合物を反応させて、C−17位がアシル化された式Aの化合物の粗生成物を得るステップ、
【0017】
【化4】
【0018】
b)ステップa)で得られた粗生成物を精製して、副生成物N,N−ジシクロアルキル尿素を除去し、C−17位がアシル化された式Aの化合物の精製物を得るステップ
を含み、
化合物中の前記置換基R’がHでない場合は、
c)ステップb)で得られた、C−17位がアシル化された精製物のC−3位をアシル化するステップ:ステップb)で得られた、C−17位がアシル化された精製物を、溶媒中でアルカリ試薬、有機酸及び触媒と室温で撹拌しながら混合し、反応させてC−17及びC−3位がアシル化された式Aの化合物の粗生成物を得るステップ、
d)ステップc)で得られた粗生成物を精製して、式Aの化合物の精製物を得るステップ
をさらに含む方法を提供する。
【0019】
ステップa)において、前記アルカリ試薬がピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、5−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、好ましくは4−ジメチルアミノピリジンから選択され、前記溶媒が塩化メチル、塩化メチレン及びクロロホルムから選択され、前記触媒が脱水剤、好ましくはN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドであり、前記有機酸が2〜22個の炭素原子を有するアルキル酸又はアルケニル酸であり、ステップb)において、前記精製するステップが、ステップa)で得られた粗生成物をテトラヒドロフラン又は酢酸エチルに溶解させて溶液を形成し、次いで溶液をn−ヘキサン又はn−ヘキサン−酢酸エチルの混合溶媒で沈殿させ、沈殿させた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び/又は中性アルミナ吸着により分離及び精製するステップを含み、ステップc)において、前記アルカリ試薬がピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、5−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、好ましくは4−ジメチルアミノピリジンから選択され、前記溶媒がテトラヒドロフラン、酢酸エチル、好ましくはテトラヒドロフランから選択され、前記触媒が脱水剤、好ましくはN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドであり、前記有機酸が2〜4個の炭素原子を有するアルキル酸又はアルケニル酸であり、ステップd)において、前記精製するステップが、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びエタノール溶出により行われ、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおけるグラジエント溶出にn−ヘキサン−酢酸エチルの混合溶媒が使用され、グラジエント溶出のn−ヘキサンと酢酸エチルの体積比が50:1〜1:1、好ましくは40:1/10:1/5:1である。
【0020】
さらに本発明は、上記の式Aの化合物を含む組成物であって、油剤、脂剤又はマイクロスフェア剤である組成物を提供する。
【0021】
さらに本発明は、がんの治療における医薬を製造するための、上記の式Aの化合物又は式Aの化合物を含む組成物の使用であって、前記医薬が、好ましくはエストロゲン受容体を有するがん細胞を阻害するために使用され、特に好ましくは乳がん細胞を阻害するために使用される、使用も提供する。
【0022】
本発明はまた、必要とする対象に対し、治療有効量の上記の式Aの化合物を投与するステップを含み、好ましくはエストロゲン受容体を有するがん細胞を阻害するために使用され、特に好ましくは乳がん細胞を阻害するために使用され、
好ましくは前記式Aの化合物が注射により投与される、がんを治療する方法も提供する。
【0023】
例示的に、腫瘍阻害率を調べるため、本発明による化合物を油剤に配合した後、ヒト乳がんMCF−7腫瘍を有するヌードマウスに皮下注射により投与する。結果は、このような誘導体が乳がんの治療において抗がん活性を有することを示した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をさらに、特定の実施形態と合わせて詳細に記載する。示す実施例は説明のためだけのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
合成例
以下の実施例におけるアルカリ試薬は4−ジメチルアミノピリジンであるが、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、5−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2−ジメチルアミノピリジンなどの薬剤も、アルカリ試薬として以下の実施例において使用可能であることが理解される。
【実施例1】
【0026】
化合物IIの合成及び構造確認
1)反応処理
500mLの三ツ口丸底フラスコにフルベストラント5g(8.25mmol)を加え、撹拌しながら塩化メチレン300mLで溶解させた。次いで、前記フラスコに4−ジメチルアミノピリジン(DMAP,4-dimethylaminopyridine)0.137g(1.1mmol)、パルミチン酸2.155g(8.41mmol)及びN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC,N,N-dicyclohexylcarbodiimide)1.672g(8.23mmol)を順次加えた。室温(例えば20±5℃)で48時間反応させた後、反応を停止させた。
【0027】
2)後工程
反応混合物を濾過して、沈殿した副生成物N,N’−ジシクロヘキシル尿素(DCU,N,N'-dicyclohexylurea)を除去した。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、次いで水で中性になるまで洗浄し、次いでロータリーエバポレーターで蒸発させて塩化メチレンを除去した。無色透明のコロイド液(8.8g)が得られ、これを適切な量の酢酸エチルに溶解させて冷凍庫(例えば冷凍温度は−15±3℃でよい)内で凍結した。沈殿した少量の白色固体を洗い流し、3回の濾過により除去した。次いで濾液をロータリーエバポレーターで蒸発させて酢酸エチルを除去し、無色透明のコロイド液を得た。無色透明のコロイド液を少量のテトラヒドロフランに溶解させ、次いで溶液をn−ヘキサンに加えて大量の白色固体を形成させ、放置して濾過した。濾過ケーキを前述のテトラヒドロフランに溶解させ、n−ヘキサン中で3回沈殿させて、純粋な化合物IIの白色粉末生成物を得た。この生成物を60℃の真空中で乾燥させ、1.5gのII(純度99.88%、C18カラム、移動相:水混和67%THF、流速:1.0mL/分、検出波長:220nmのHPLCで決定)を得、そのモル収率は22%であった。
IR(cm
−1):3209、2922、2852、1607、1503、1446、1385、1106、1055、1014、982。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):0.78(s,3H)、0.88(t,3H)、1.01〜1.52(t,32H)、1.59〜1.63(t,6H)、1.70〜1.76(t,6H)、1.89〜1.94(t,2H)、2.10〜2.32(t,10H)、2.61〜2.85(t,8H)、3.74(t,2H)、6.20(d,j=10Hz,1H)、6.56〜7.14(t,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):172.67、154.23、136.88、131.04、126.93、117.67、113.01、82.02、52.41、50.83、46.49、43.40、42.05、38.23、36.92、34.74、34.65、33.35、33.24、31.93、30.51、29.92〜28.22、27.24、25.62、25.00、22.63、14.65、14.09、11.12。
【実施例2】
【0028】
化合物Iの合成及び構造確認
1)反応処理
250mLの丸底フラスコにフルベストラント3g(4.95mmol)を加え、撹拌しながら塩化メチレン160mLで溶解させた。次いで、前記フラスコにDMAP0.0822g(0.66mmol)、ウンデカン酸0.96g(5.05mmol)及びDCC1.02g(4.98mmol)を順次加えた。室温(例えば20±5℃)で撹拌しながら48時間反応させた後、反応を停止させた。
【0029】
2)後工程
まず反応系を凍結させて、反応副生成物DCUをできる限り多く沈殿させた。濾過して固体DCUを除去した後、濾液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、次いで水で中性になるまで洗浄し、ロータリーエバポレーターで蒸発させて塩化メチレンを除去して無色透明のコロイド液を得、これを少量の酢酸エチルに溶解させて、次いで白色固体DCUが沈殿しなくなるまで冷凍庫(例えば冷凍温度は−15±3℃でよい)内で凍結した。濾液を濃縮して酢酸エチルを除去し、n−ヘキサン−酢酸エチルの混合溶媒から再結晶させ、次いで濾過して、沈殿した白色固体(未反応の原料フルベストラント)を除去した。母液を回転乾燥させて無色の油状物を得た。前記油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出剤はn−ヘキサン−酢酸エチル(体積比1:1))でさらに精製し、次いでロータリーエバポレーターで蒸発させて化合物I(純度99.104%、実施例1と同じ決定方法によるHPLCで決定)の無色油状物1.0611gを得、そのモル収率は27.7%であった。
IR(cm−1):3385、2926、2855、1756、1494、1463、1199、1152、1059、1017、985、721。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.28(s,1H)、6.83(d,1H)、6.77(d,1H)、3.73(t,1H,J=8Hz)、2.88〜1.17(t,57H)、0.89(s,3H)、0.77(s,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 172.64、148.52、137.13、126.91、122.37、120.10、118.64、81.93、52.75、51.03、46.47、43.33、41.67、38.23、36.89、34.50、34.45、33.85、31.89、29.67、29.50、29.63、29.55、29.49、29.46、29.34、29.30、29.26、29.16、29.12、28.80、28.23、27.11、25.70、25.01、24.88、22.66、14.62、14.50、11.50。
【実施例3】
【0030】
化合物IIIの合成及び構造確認
250mLの丸底フラスコにフルベストラント3g(4.95mmol)を加え、次いで撹拌しながら塩化メチレン160mLで溶解させた。次いで、前記フラスコにDMAP0.0822g(0.66mmol)、ドコサン酸1.87g(5.05mmol)及びDCC1.02g(4.98mmol)を順次加えた。室温(例えば20±5℃)で撹拌しながら48時間反応させた後、反応を停止させた。
【0031】
反応液を実施例2の後工程に従って処理し、化合物IIIの白色固体粉末(純度92.634%、HPLCで決定)(C18カラム、移動相:水混和75%THF、流速:1.0mL/分、検出波長:220nm)1.016gを得、そのモル収率は22.1%であった。
IR(cm−1):3607、3424、2919、2851、1754、1495、1471、1199、1153、1141、1112、1081、985、719。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.28(d,1H)、6.83(d,1H)、6.77(d,1H)、3.74(t,1H,J=8Hz)、2.91〜1.05(t,79H)、0.89(t,3H)、0.77(s,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 172.64、148.53、137.13、126.91、122.37、118.64、81.93、52.83、51.11、46.48、43.34、41.68、38.24、36.89、34.50、33.15、31.94、30.56、29.94、29.86、29.71、29.67、29.63、29.62、29.51、29.48、29.37、29.35、29.27、29.17、29.13、28.81、28.23、27.12、25.70、25.01、24.88、23.16、22.66、14.50、14.01、11.50。
【実施例4】
【0032】
化合物IVの合成及び構造確認
250mLの丸底フラスコにフルベストラント3g(4.95mmol)を加え、次いで撹拌しながら塩化メチレン160mLで溶解させた。次いで、前記フラスコにDMAP0.0822g(0.66mmol)、イソステアリン酸1.44g(5.05mmol)及びDCC1.02g(4.98mmol)を順次加えた。室温(例えば20±5℃)で撹拌しながら48時間反応させた後、反応を停止させた。
【0033】
反応液を実施例2の後工程に従って処理し、化合物IVの無色コロイド(純度99.312%、HPLCで決定)(実施例3と同じ決定方法による)1.0028gを得、そのモル収率は23.2%であった。
IR(cm−1):3396、2928、2866、1748、1494、1466、1364、1198、1149、1121、1058、1017、984、720。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ7.28(s,1H)、6.83(d,1H)、6.76(s,1H)、3.74(t,1H,J=8Hz)、2.35〜1.03(t,71H)、1.09〜0.94(t,3H)、0.89(s,3H)、0.77(s,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 171.15、148.60、137.03、126.88、122.45、118.72、81.94、53.34、53.04、52.82、51.39、50.96、48.46、48.39、48.32、46.48、43.33、41.68、38.21、37.92、37.86、37.79、36.89、34.50、33.16、32.37、32.05、31.11、30.56、30.06、29.96、29.87、29.69、29.55、29.50、29.37、29.32、29.18、28.81、28.26、27.11、26.09、25.65、24.81、22.66、21.21、19.40、14.61、14.50、11.51。
【実施例5】
【0034】
化合物Vの合成及び構造確認
50mLの丸底フラスコにフルベストラント0.36g(0.6mmol)を加え、次いで撹拌しながら塩化メチレン25mLで溶解させた。次いで、前記フラスコにDMAP9.93mg(0.08mmol)、ウンデセン酸0.113g(0.61mmol)及びDCC0.13g(0.64mmol)を順次加えた。室温(例えば20±5℃)で撹拌しながら48時間反応させた後、反応を停止させた。
【0035】
反応液を実施例2の後工程に従って処理し、淡黄色油状物を得、これをさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーで3回、及び中性アルミナで1回精製し、蒸発乾固させて淡黄色油状物(純度96.010%、HPLCで決定)(実施例3と同じ決定方法による)0.1gを得た。得られた淡黄色油状物が化合物Vであり、そのモル収率は21.5%であった。
IR(KBr、cm−1):3387、2927、2855、1736、1652、1494、1461、1356、1312、1198、1154、1121、1059、1016、983、721。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.27(t,1H)、7.15(t,1H)、6.87(s,1H)、6.82(s,1H)、6.43(t,2H)、5.99(t,1H)、3.74(t,1H,J=8Hz)、3.2〜1.1(t,51H)、0.89(t,3H,J=7Hz)、0.77(s,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 170.90、165.38、151.71、148.55、137.10、135.55、126.91、122.44、120.94、120.12、118.79、81.93、52.77、51.04、46.50、43.35、41.71、38.27、36.91、34.51、33.18、31.85、30.56、29.94、29.87、29.70、29.62、29.51、29.36、29.34、29.19、29.16、29.09、28.96、28.81、28.23、27.13、25.70、24.88、22.66、14.50、13.50、11.10。
【実施例6】
【0036】
化合物VIの合成及び構造確認
50mLの丸底フラスコにフルベストラント0.36g(0.6mmol)を加え、次いで撹拌しながら塩化メチレン25mLで溶解させた。次いで、前記フラスコにDMAP9.93mg(0.08mmol)、エイコサペンタエン酸0.185g(0.61mmol)及びDCC0.13g(0.64mmol)を順次加えた。室温(例えば20±5℃)で撹拌しながら48時間反応させた後、反応を停止させた。
【0037】
反応液を実施例2の後工程に従って処理し、化合物VIの淡黄色油状物(純度99.195%、方法が実施例3の方法を参照しているHPLCで決定)0.31mgを得、その収率は58%であった。
IR(cm−1):3396、3012、2927、2855、1756、1609、1494、1456、1312、1198、1137、1058、1018、985、719。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.28(t,1H)、6.84(t,1H,J=7.5Hz)、6.77(d,1H)、5.43〜5.32(t,10H)、3.74(t,1H,J=8Hz)、2.87〜1.18(t,55H)、0.97(t,3H,J=7.5Hz)、0.77(s,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 172.38、137.19、132.05、129.07、128.84、128.59、128.29、128.22、128.10、127.89、127.03、126.94、122.34、118.62、81.94、52.76、51.05、46.48、43.34、41.67、38.23、36.89、34.50、33.78、33.15、30.56、29.95、29.86、29.68、29.65、29.50、29.36、29.18、28.82、28.24、27.12、26.56、25.70、25.66、25.65、25.56、24.82、22.66、20.85、14.50、13.50、11.50。
【実施例7】
【0038】
化合物VIIの合成及び構造確認
50mLの丸底フラスコにフルベストラント0.36g(0.6mmol)を加え、次いで撹拌しながら塩化メチレン25mLで溶解させた。次いで、前記フラスコにDMAP9.93mg(0.08mmol)、ドコサヘキサエン酸0.2g(0.61mmol)及びDCC0.13g(0.64mmol)を順次加えた。室温(例えば20±5℃)で撹拌しながら48時間反応させた後、反応を停止させた。
【0039】
反応液を実施例2の後工程に従って処理し、化合物VIIの淡黄色油状物(純度99.051%、方法が実施例3の方法を参照しているHPLCで決定)0.1165gを得、その収率は21.1%であった。
IR(cm−1):3396、3013、2927、2855、1756、1609、1494、1456、1358、1198、1138、1059、1018、984、719。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.27(t,1H)、6.83(d,1H)、6.77(t,1H)、5.4〜5.3(t,12H)、3.74(t,J=8Hz,1H)、2.8〜1.1(t,55H)、0.97(t,3H)、0.77(s,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 171.88、148.47、137.22、132.05、129.62、128.58、128.33、128.29、128.26、128.11、128.09、128.04、127.89、127.64、127.03、126.93、122.35、118.62、81.94、52.76、51.05、46.48、43.34、41.67、38.23、36.89、34.50、34.34、33.14、30.56、29.94、29.85、29.68、29.65、29.50、29.36、29.18、28.82、28.24、27.12、25.70、25.66、25.64、25.55、22.85、22.66、22.58、20.57、14.30、14.10、11.50。
【実施例8】
【0040】
化合物VIIIの合成及び構造確認
1)反応処理
50mLの丸底フラスコに、化合物V(実施例5で合成)0.31g(0.4mmol)、無水酢酸4mL(40mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.2g(1.6mmol)を順次加えた。その後、30mLのTHF溶液を、前記フラスコに添加した。48時間還流反応させた後、反応を停止させた。
【0041】
2)後工程
反応系を冷却した後、水で中性になるまで洗浄して相を分離した。有機層を回転乾燥させ、グラジエント溶出(溶出剤はn−ヘキサン−酢酸エチル(体積比40:1/10:1/5:1))によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。次いで溶出剤を蒸発乾固させて、化合物VIIIの乳白色コロイド液を得た。
IR(cm−1):3449、2927、2855、1736、1651、1494、1461、1373、1360、1311、1245、1198、1154、1121、1045、1027、983、896、822、720。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.27(t,1H)、7.15(t,1H)、6.87(t,1H)、6.81(d,1H)、6.40(t,1H)、6.00(d,1H)、5.63(t,1H)、4.70(t,1H)、2.7〜1.1(t,52H)、2.05(t,3H)、0.89(t,3H)、0.82(s,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 170.90、165.36、151.72、148.56、137.07、136.97、126.92、122.43、122.32、120.92、118.73、82.76、52.71、50.98、46.26、42.94、41.40、38.20、38.12、37.06、34.50、33.17、32.50、32.41、31.84、29.85、29.67、29.55、29.49、29.35、29.32、29.18、29.15、28.79、28.16、26.96、25.64、22.78、22.65、21.17、14.63、12.02。
【実施例9】
【0042】
化合物IXの合成及び構造確認
50mLの丸底フラスコに、化合物IV(実施例4で合成)0.3g(0.35mmol)、無水酢酸3.5mL(35mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.18g(1.44mmol)を順次加え、次いでテトラヒドロフラン30mLを加えた。48時間還流反応させた後、反応を停止させた。
【0043】
反応液を実施例8の後工程に従って処理し、化合物IXの乳白色コロイド液を得た。
IR(cm−1):3311、2927、2854、1736、1665、1494、1460、1365、1245、1200、1045、1027、984、803、720。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.27(t,1H)、6.82(t,1H)、6.76(t,1H)、4.70(t,1H)、2.77〜1.08(t,49H)、2.05(t,3H)、0.81〜0.95(t,27H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 174.36、171.23、148.55、136.95、126.90、122.45、122.39、118.74、118.71、82.76、53.11、53.03、52.81、51.39、48.45、48.31、46.25、42.94、41.40、38.07、37.78、37.05、34.50、33.16、32.36、32.05、31.93、31.44、30.19、30.05、30.03、29.88、29.67、29.55、29.49、29.35、29.30、29.17、28.80、28.19、27.52、26.99、25.66、22.69、21.17、20.35、19.93、14.63、12.02。
【実施例10】
【0044】
化合物Xの合成及び構造確認
50mLの丸底フラスコに、化合物V(実施例5で合成)0.3g(0.35mmol)、無水酪酸3.5mL(35mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.18g(1.44mmol)を順次加え、次いでテトラヒドロフラン30mLを加えた。48時間還流反応させた後、反応を停止させた。
【0045】
反応液を実施例8の後工程に従って処理し、化合物Xの乳白色コロイド液を得た。
IR(cm−1):3441、2927、2855、1734、1651、1494、1460、1197、1154、1120、1092、1019、983、803、720。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.27(t,1H)、7.15(t,1H)、6.88(t,1H)、6.81(d,1H)、6.40(t,1H)、6.00(d,1H)、5.63(t,1H)、4.70(t,1H)、2.7〜1.0(t,56H)、0.96(t,3H)、0.88(t,3H)、0.82(t,3H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 173.79、165.38、151.73、148.57、137.02、136.99、126.93、122.45、122.39、120.60、118.67、82.45、52.73、50.99、46.28、43.02、41.42、38.21、38.14、37.10、36.52、36.28、34.51、33.19、32.51、32.43、31.85、29.86、29.68、29.56、29.50、29.36、29.33、29.19、29.17、28.81、28.18、27.58、26.99、25.65、22.82、22.66、18.69、14.50、12.02、12.00。
【実施例11】
【0046】
化合物XIの合成及び構造確認
50mLの丸底フラスコに、化合物IV(実施例4で合成)0.69g(0.89mmol)、無水酪酸14.5mL(89mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.44g(3.52mmol)を順次加え、次いでテトラヒドロフラン69mLを加えた。48時間還流反応させた後、反応を停止させた。
【0047】
反応系を冷却した後、水で中性になるまで洗浄して相を分離した。有機層を回転乾燥させ、グラジエント溶出(溶出剤はn−ヘキサン−酢酸エチル(体積比40:1/10:1/5:1))によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。次いで溶出剤を蒸発乾固させて粗生成物を得、次いでこれを数回超音波水洗浄処理した。前記水洗浄処理の間、粗生成物はコロイドの形態でフラスコの壁に付着しており、洗浄後に水相を直接注いだ。生成物から酪酸の臭いがしなくなるまで洗浄を繰り返した。最終的に、生成物をエタノールで急速に溶出させ、溶媒を減圧乾燥機で除去して化合物XIの乳白色コロイド液を得た。
IR(cm−1):3448、2390、2857、1750、1734、1609、1494、1465、1364、1198、1150、1121、1094、1048、1019、984、905、803、732。
1HNMR(500MHz,CDCl3,ppm):δ 7.27(t,1H)、6.82(t,1H)、6.76(s,1H)、4.71(t,1H)、1.09〜2.77(t,53H)、0.81〜1.08(t,30H)。
13CNMR(125MHz,CDCl3,ppm):δ 174.36、173.78、148.54、136.95、126.90、122.45、122.39、118.73、118.71、82.45、53.33、53.03、52.82、51.39、48.45、48.31、46.27、43.00、41.41、38.08、37.76、37.09、36.52、34.50、33.17、32.36、32.05、31.10、31.07、30.05、30.03、30.01、29.88、29.68、29.59、29.55、29.50、29.35、29.31、29.21、29.17、28.81、28.20、27.57、27.01、25.67、22.58、22.40、19.93、18.59、14.64、13.69、12.06。
【実施例12】
【0048】
物理化学特性の例
フルベストラント及びそのエステル誘導体の様々な溶媒に対する溶解性実験
フルベストラント及びフルベストラントのエステル誘導体をそれぞれ適量正確に計量した。それらの、様々な油及び溶媒に対する溶解性(mg/mL)を中国薬局方(2010)第2節の通則に従って比較した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
フルベストラントの溶解性と比較して、化合物IIの、ヒマシ油、ダイズ油及び中鎖油を含む親油性溶媒に対する溶解性は有意に増大したが、プロピレングリコールにおいてはほとんど変化がなく、親水性溶媒PEG400においては有意に減少しており、一方、化合物I、III及びIVなどの誘導体の親油性ダイズ油に対する溶解性は、フルベストラントの溶解性よりも有意に大きかったことが分かる。
【実施例13】
【0051】
薬効例
ヌードマウスに異種移植されたヒト乳がんMCF−7に対するフルベストラント、化合物II及びXの増殖阻害効果
被検薬:フルベストラント、化合物II及びXを油中に分散させ、滅菌してそれぞれ油剤として調製する。
【0052】
実験動物及びその群分け、起源、生殖細胞系列及び系統:BALB/cメスヌードマウス、Laboratory Animal Research Center of Academy of Military Medical Sciences of China (Laboratory animal production license: SCXK (Military) 2007-004)提供、日齢:35〜40日、体重:18〜24g。マウスを、陰性対照群、陽性対照群(フルベストラント油剤)及び薬剤処理群(それぞれ化合物II及びX油剤)に、各群マウス5匹となるように分けた。
【0053】
投与方法、用量及び時間:陰性対照群には、ブランクの溶媒(油)0.2mL/20gを皮下注射によって1回投与した。陽性対照群には、フルベストラント油剤100mg/kgを皮下注射によって1回投与した。薬剤処理群には、化合物II及びX100mg/kgを皮下注射によって1回それぞれ投与した。
【0054】
モデルの確立及び腫瘍測定方法:対数増殖期にあるヒト乳がんMCF−7細胞株を、無菌状態で5×10
8/mLの細胞懸濁液に調製し、そのうち0.1mLをヌードマウスの右腋窩に皮下接種した。ヌードマウスに異種移植された腫瘍はノギスで直径を測定し、腫瘍が100〜300mm
3まで増殖すると動物をランダムに群分けした。各マウスへの投与量は頭頸部領域への皮下注射により、0.2mL/20gであった。投与後28日でマウスを屠殺し、手術によって腫瘍を切除し、重量を計測した。腫瘍阻害率を計算した(阻害率=(1−実験群の腫瘍重量/対照群の腫瘍重量)×100%)。結果を以下の表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
結果は、フルベストラント及びそのエステル誘導体全てが抗乳がん効果を有することを示している。