特許第6356223号(P6356223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6356223車両用アーム部品の製造方法と車両用アーム部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356223
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】車両用アーム部品の製造方法と車両用アーム部品
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20180702BHJP
   B60G 7/00 20060101ALI20180702BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20180702BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B21D22/26 C
   B60G7/00
   B21D22/26 D
   B21D24/00 J
   B21D37/08
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-509782(P2016-509782)
(86)(22)【出願日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2014059027
(87)【国際公開番号】WO2015145701
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253455
【氏名又は名称】株式会社ヨロズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 正春
(72)【発明者】
【氏名】関 純一
(72)【発明者】
【氏名】土田 知
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−159140(JP,A)
【文献】 特開2011−104623(JP,A)
【文献】 特開2005−297064(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/033933(WO,A1)
【文献】 特開平11−47833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 24/00
B21D 37/08
B60G 7/00
B21D 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向がなす第1平面に延在する平板である被加工材について、前記第1方向と前記第1平面に直交する第3方向とがなす第2平面における前記被加工材の2側面が隙間を介して対向するように、前記被加工材を段階的にプレス加工して製造される、開断面の中空形状を有する車両用アーム部品を製造するための車両用アーム部品の製造方法であって、
リストライク用金型に前記第1方向に延在して設けられた突起部を、対向した前記2側面の間の前記隙間に配置し、前記2側面を前記突起部に接触させつつ前記被加工材を外周から内周へ加圧成形するリストライク工程を有する車両用アーム部品の製造方法。
【請求項2】
前記リストライク工程において、前記第1方向に延在する前記隙間の前記第1方向と同じ距離または越えるように設けられる前記突起部を、前記隙間に配置して加圧成形が行われる請求項1に記載の車両用アーム部品の製造方法。
【請求項3】
前記リストライク工程の前に、
前記第2方向及び前記第3方向がなす第3平面内で、平板である前記被加工材をプレスして、前記第2方向における中央近傍に所定の幅の基部を残しつつ、前記基部の両端から互いに離れつつ前記第3方向に延在する一対の第1延在部、前記第1延在部の前記基部が設けられる側と反対側の端部から互いに離れつつ前記第3方向の前記第1延在部が延在する向きとは逆向きに延在する一対の第2延在部、及び前記第2延在部の前記第1延在部が設けられる側と反対側の端部から互いに離れつつ前記第2方向外方に延在する一対の鍔部を形成するフォーミング工程と、
前記第2延在部を前記第1延在部が延在する向きへ折り曲げつつ、前記鍔部を前記第3方向へ折り曲げる予備工程と、
前記第2延在部を前記第1延在部に対して略平行となるように折り曲げつつ、前記第1延在部及び前記第2延在部を前記第3方向へ折り曲げて、前記鍔部を互いに向かい合わせる折曲工程と、を有する請求項1または2に記載の車両用アーム部品の製造方法。
【請求項4】
前記折曲工程において、前記第1延在部及び前記第2延在部を複数回プレス加工することによって、前記第1延在部及び前記第2延在部を前記第3方向へ折り曲げる請求項に記載の車両用アーム部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用アーム部品の製造方法によって製造された車両用アーム部品であって、
前記第1方向に沿って一端から他端まで開断面の中空形状である車両用アーム部品。
【請求項6】
車輪または軸部材と連結する連結部が一体的に形成される請求項5に記載の車両用アーム部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アーム部品の製造方法と車両用アーム部品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用アーム部品としては、車体と車輪とを連結するサスペンションアームや、サブフレームと車輪とを連結するラジアスロッドなどのようなものがある。このような車両用アーム部品は、車両走行時あるいは制動時に作用する大きな引張力に対抗するように、十分な引張強さを有する必要がある。
【0003】
一方、上記の条件を満たしつつ、外力入力時の振動をドライバーに直接伝えずに、振動をいなす(逃す)ことによって、乗り心地を向上させることが望まれている。振動をいなすためには、外部入力時に車両用アーム部品の変位量を大きくする(たわませる)ことにより、車両用アーム部品において振動を吸収することが必要であり、車両用アーム部品の剛性を適度に下げることが重要となる。
【0004】
剛性をさげるためには、車両用アーム部品の板厚を下げたり、車両用アーム部品の軸部を開断面にすることが効果的であり、例えば下記の特許文献1には、軸方向に開口する開口部が周方向の一部に設けられるサスペンションアームが開示されている。このように構成されたサスペンションアームによれば、車両用アーム部品の軸部が開断面形状となるため、ねじれ剛性を低くすることができる。したがって、外部入力時におけるサスペンションアームの変位量を大きくすることができ、外部入力時の振動をいなすことができ、乗り心地が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−159140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のサスペンションアームでは、引張強さが材質本来の引張強さに依存することになり、引張強さを向上させるためには、板厚を増加しなければならず、重量や製造コストが増大する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、ねじり剛性を所定以下としつつ、板厚を増加することなく引張強さを向上することのできる車両用アーム部品の製造方法及び車両用アーム部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る車両用アーム部品の製造方法は、第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向がなす第1平面に延在する平板である被加工材について、前記第1方向と前記第1平面に直交する第3方向とがなす第2平面における前記被加工材の2側面が隙間を介して対向するように、前記被加工材を段階的にプレス加工して製造される、開断面の中空形状を有する車両用アーム部品を製造するための車両用アーム部品の製造方法であって、リストライク用金型に前記第1方向に延在して設けられた突起部を、対向した前記2側面の間の前記隙間に配置し、前記2側面を前記突起部に接触させつつ前記被加工材を外周から内周へ加圧成形するリストライク工程を有する。
【発明の効果】
【0009】
上述の車両用アーム部品の製造方法によって製造される車両用アーム部品であれば、開断面の中空形状を有するため、ねじり剛性を所定以下とすることができる。また、2側面の間の隙間に突起部を配置し、2側面を突起部に接触させつつ被加工材を外周から内周へ加圧成形するため、被加工材の周方向に均一に圧縮荷重を付与することができる。この結果、周方向に材料が圧縮されて、周方向に均一に加工硬化が生じ、周方向全体に亘って材質の持つ引張強さ以上の引張強さを有することができ、板厚を増加することなく引張強さを向上することができる。したがって、ねじり剛性を所定以下としつつ、板厚を増加することなく引張強さを向上することのできる車両用アーム部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンションアームを示す斜視図である。
図2図2(A)は、サスペンションアームを示す正面図であって、図2(B)は、サスペンションアームを示す上面図である。
図3図2の3−3線に沿う断面図である。
図4】本実施形態に係るサスペンションアームのプレス加工前の平板である被加工材を示す斜視図である。
図5】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法のトリミング工程を示す図である。
図6】トリミング工程終了時の被加工材の斜視図である。
図7】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法のフォーミング工程を示すX軸に直交する断面図である。
図8】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法の予備工程を示すX軸に直交する断面図である。
図9】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法の第1折曲工程を示すX軸に直交する断面図である。
図10】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法の第2折曲工程を示すX軸に直交する断面図である。
図11】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法の第3折曲工程を示すX軸に直交する断面図である。
図12】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法のリストライク工程を示すX軸に直交する断面図である。
図13】リストライク工程終了時の被加工材の斜視図である。
図14】本実施形態に係るサスペンションアームの製造方法の切断工程を示すX軸に直交するX方向の両端における断面図である。
図15】切断工程終了時の被加工材の斜視図である。
図16】ノッチ工程終了時の被加工材の斜視図である。
図17】孔開け工程終了時の被加工材の斜視図である。
図18】サスペンションアームの周方向における引張強さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において平板が配置される配置面をXY平面として、平板が伸延する方向をX方向(第1方向)、配置面においてX方向に直交する方向をY方向(第2方向)、XY平面に直交する方向をZ方向(第3方向)とする。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るサスペンションアーム1を示す斜視図である。図2(A)は、サスペンションアーム1を示す正面図であって、図2(B)は、サスペンションアーム1を示す上面図である。図3は、図2の3−3線に沿う断面図である。
【0013】
本発明の実施形態に係る車両用アーム部品は、図1に示されるように、車両用のサスペンションアーム1に用いられるものであり、X方向及びY方向がなすXY平面に延在する平板である被加工材Wについて、XZ平面における被加工材Wの2側面W1,W2が隙間Gを介して対向するように、被加工材Wを段階的にプレス加工して製造される、X方向に沿って一端から他端まで開断面の中空形状を有するサスペンションアーム1である。
【0014】
サスペンションアーム1は、図1〜3に示すように、X方向の中央近傍に設けられる中央部10と、中央部10のX方向の両端に設けられX方向外向きに外周及び内周が拡大するブラケット部20と、ブラケット部20にY方向に沿って対向して板状に設けられ、Y方向に沿って対向する位置に貫通孔20Hが形成された2つのプレート部(連結部)30と、を有する。中央部10と、ブラケット部20と、2つのプレート部30と、は一体的に形成される。
【0015】
中央部10は、X方向の中央近傍に設けられる。中央部10は、図3に示すように、上部に隙間Gを有する開断面の中空形状であって、隙間Gを介して2側面W1,W2が対向する。なお、中央部10の断面形状は矩形形状に限定されず円形状であってもよい。
【0016】
ブラケット部20は、図2において中央部10の左端に設けられた第1のブラケット部21と、中央部10の右端に設けられた第2のブラケット部22と、を有する。
【0017】
第1のブラケット部21は、図2(A),(B)に示すように、X方向左向きに沿って、Y方向及びZ方向に外周及び内周が拡大する。第2のブラケット部22は、X方向右向きに沿って、Z方向にのみ外周及び内周が拡大する。なお、ブラケット部20の構成は、X方向外向きに延在する構成であれば、特に限定されない。
【0018】
プレート部30は、第1のブラケット部21の左端に設けられた第1のプレート部31と、第2のブラケット部22の右端に設けられた第2のプレート部32と、を有する。
【0019】
第1のプレート部31は、Y方向に沿って対向して設けられ、Y方向に沿って対向する位置に第1の貫通孔21Hが形成された2枚のプレート31A,31Bを有する。
【0020】
第2のプレート部32は、Y方向に沿って対向して設けられ、Y方向に沿って対向する位置に第2の貫通孔22Hが形成された2枚のプレート32A,32Bを有する。第2の貫通孔22Hは、Y方向内方に向かうバーリング加工によって形成される。
【0021】
第1の貫通孔21Hの穴径は、第2の貫通孔22Hの穴径より小さく形成される。
【0022】
第1の貫通孔21Hは、内部に車輪側からのボルト(不図示)が挿通され、ナット(不図示)により車輪(不図示)と連結される。
【0023】
第2の貫通孔22Hは、内部にブッシュが圧入され、ゴムなどの弾性材を介して車体側から突出されている軸部材(不図示)と連結される。
【0024】
次に、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法について説明する。
【0025】
図4は、本実施形態に係るサスペンションアーム1のプレス加工前の金属製の平板である被加工材Wを示す図である。
【0026】
まず、Y方向両端を、X方向中央近傍が幅狭でX方向外方に沿って幅広となるように、被加工材Wの不要部分をトリミングする(トリミング工程)。
【0027】
図5は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法のトリミング工程を示す図である。図6は、トリミング工程終了時の被加工材Wの上面図である。
【0028】
平板である被加工材Wは、図5に示されるように、第1成形型50によりトリミングされる。第1成形型50は、第1上型51と、第1下型52と、を有する。第1下型52には、第1上型51と対向する面の外周端に下型切断刃53が形成されている。第1上型51には、第1下型52と対向して設けられるとともに背面にバネが設けられて第2下型52に向かう方向へ付勢されたホルダ部54と、ホルダ部54の外周に設けられて下型切断刃53と対となる上型切断刃55とが設けられる。
【0029】
トリミング工程では、まず平板の被加工材Wを設置し、第1上型51と第1下型52とを近接させる。第1上型51のホルダ部54と第2下型52との間に被加工材Wが挟まれると、ホルダ部54がバネにより付勢されつつ後退する。ホルダ部54が後退すると、上型切断刃55と下型切断刃53との間に被加工材Wが挟まれ、図5に示されるように、被加工材Wの外周部W´が切り落とされる。この後、第1上型51と第1下型52とを離隔させると、バネの反動力により第1上型51から被加工材Wが取り出される。
【0030】
このように、トリミング工程により、図6に示されるように、被加工材Wの不要部分がトリミングされ、Y方向に沿って2側面W1,W2が形成される。
【0031】
次に、被加工材Wをプレス加工して、YZ平面内で、Y方向における中央近傍に所定の幅の基部Bを残しつつ、基部Bの両端から互いに離れつつ下向き(Z方向)に延在する一対の第1延在部E1、第1延在部E1の基部Bが設けられる側と反対側の端部から互いに離れつつ上向きに延在する一対の第2延在部E2、及び第2延在部E2の第1延在部E1が設けられる側と反対側の端部から互いに離れつつY方向外方に延在する一対の鍔部Tを形成する(フォーミング工程)。
【0032】
図7は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法のフォーミング工程を示すX軸に直交する断面図である。
【0033】
トリミング工程において、第1成形型50によってトリミングされた被加工材Wは、図7に示されるように、第2成形型60により第1延在部E1,第2延在部E2,鍔部Tが形成される。第2成形型60は、第2上型61と、第1上型61と対向して設けられる第2下型62と、突出部63と、を有する。第2上型61には、第2下型62に向かって突出する2つの凸部64が形成され、第2下型62には、第2上型61の2つの凸部64に対応して窪んだ2つの溝部65が形成されている。
【0034】
フォーミング工程では、まず第2成形型60内にトリミングされた被加工材Wを設置し、第2上型61を第2下型62に近接させる。この結果、第2上型61の2つの凸部64及び第2下型62の2つの溝部65に対応して、被加工材Wには、基部Bを残しつつ、一対の第1延在部E1、一対の第2延在部E2、及び一対の鍔部Tが形成される。そして、第2成形型60により成形された被加工材Wは、突出部63によって突き出される。
【0035】
次に、フォーミング工程により第1延在部E1,第2延在部E2及び鍔部Tが形成された被加工材Wの第2延在部E2を、第1延在部E1が延在する向きへ折り曲げつつ、鍔部Tを下向き(Z方向)へ折り曲げる(予備工程)。
【0036】
図8は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法の予備工程を示すX軸に直交する断面図である。
【0037】
フォーミング工程において、第2成形型60によってプレス加工された被加工材Wは、図8に示されるように、第3成形型70により予備工程が行われる。第3成形型70は、第3上型71と、第3上型71と対向して設けられる第3下型72と、突出部73と、を有する。第3上型71のY方向の両端にはZ方向下向きに突出する凸部74が形成される。
【0038】
予備工程では、まず第3成形型70内に被加工材Wを設置し、第3上型71を第3下型72に近接させる。この結果、第3上型71の形状に沿って、被加工材Wの第2延在部E2が、第1延在部E1の延在する向きへ折り曲げられつつ、鍔部Tが下向きへ折り曲げられる。そして、第3成形型70により成形された被加工材Wは、突出部73によって突き出される。
【0039】
次に、予備工程によりプレスされた被加工材Wの第2延在部E2を第1延在部E1に対して略平行となるように折り曲げつつ、第1延在部E1及び第2延在部E2を下向きへ折り曲げて、鍔部Tを互いに向かい合わせる(折曲工程)。
【0040】
折曲工程は、以下のように第1折曲工程、第2折曲工程、及び第3折曲工程を有する。
【0041】
第1折曲工程では、予備工程によりプレスされた被加工材Wの第2延在部E2を第1延在部E1に対して略平行となるように折り曲げつつ、第1延在部E1及び第2延在部E2が基部Bに対して45度となるように折り曲げる。
【0042】
図9は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法の第1折曲工程を示すX軸に直交する断面図である。
【0043】
予備工程において、第3成形型70によってプレス加工された被加工材Wは、図9に示されるように、第4成形型80により第1折曲工程が行われる。第4成形型80は、第4上型81と、第4上型81と対向して設けられる第4下型82と、突出部83と、を有する。第4上型81は、Y方向に対して45度だけ傾斜した上型テーパ部84を有し、第4下型82は、上型テーパ部84に対応して傾斜した下型テーパ部85を有する。また、上型テーパ部84は、第1延在部E1及び第2延在部E2を覆うように延在している。
【0044】
第1折曲工程では、まず第4成形型80内に被加工材Wを設置し、第4上型81を第4下型82に近接させる。この結果、第2延在部E2が第1延在部E1に対して略平行となるように折り曲げられつつ、第1延在部E1及び第2延在部E2が、基部Bに対して45度の傾きを有するように折り曲げられる。そして、第4成形型80により成形された被加工材Wは、突出部83により突き出される。
【0045】
次に、第1折曲工程においてプレスされた被加工材Wの第1延在部E1及び第2延在部E2を、基部Bに対して70度の傾きを有するように折り曲げる(第2折曲工程)。
【0046】
図10は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法の第2折曲工程を示すX軸に直交する断面図である。
【0047】
第1折曲工程において、第4成形型80によってプレス加工された被加工材Wは、図10に示されるように、第5成形型90により第2折曲工程が行われる。第5成形型90は、第5上型91と、第5上型91と対向して設けられる第5下型92と、突出部93と、を有する。第5上型91は、Y方向に対して70度だけ傾斜した上型テーパ部94を有し、第5下型92は、上型テーパ部94に対応して傾斜した下型テーパ部95を有する。また、上型テーパ部94は、第1延在部E1及び第2延在部E2を覆うように延在している。
【0048】
第2折曲工程では、まず第5成形型90に被加工材Wを設置し、第5上型91を第5下型92に近接させる。この結果、第1延在部E1及び第2延在部E2が、基部Bに対して70度の傾きを有するように折り曲げられる。そして、第5成形型90により成形された被加工材Wは、突出部93により突き出される。
【0049】
次に、第2折曲工程においてプレスされた被加工材Wの第1延在部E1及び第2延在部E2を、基部Bに対して90度の傾きを有するように、換言すれば、Z方向の下向きとなるように折り曲げる(第3折曲工程)。
【0050】
図11は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法の第3折曲工程を示すX軸に直交する断面図である。
【0051】
第2折曲工程において、第5成形型90によってプレス加工された被加工材Wは、図11に示されるように、第6成形型100により第3折曲工程が行われる。第6成形型100は、第6上型101と、第6上型101と対向して設けられる第6下型102と、を有する。第6上型101は、Z方向下向きに突出する凸部104を有する。凸部104は、第1延在部E1及び第2延在部E2を覆うように延在している。
【0052】
第3折曲工程では、まず第6成形型100に被加工材Wを設置し、第6上型101を第6下型102に近接させる。この結果、第1延在部E1及び第2延在部E2が、基部Bに対して90度の傾きを有するように折り曲げられる。換言すれば、第1延在部E1及び第2延在部E2は、Z方向下向きとなり、結果的に鍔部Tは互いに向き合う。
【0053】
次に、第3折曲工程においてプレスされた被加工材Wの2側面W1,W2の間の隙間Gに、第7成形型(リストライク用金型)110にX方向に延在して設けられた突起部113を配置し、2側面W1,W2を突起部113に接触させつつ被加工材Wを外周から内周へ加圧成形する(リストライク工程)。
【0054】
図12は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法のリストライク工程を示すX軸に直交する断面図である。図13は、リストライク工程終了時の被加工材Wの斜視図であって、隙間Gが上部となるように配置した図である。
【0055】
第3折曲工程において、第6成形型100によってプレス加工された被加工材Wは、図12に示されるように、第7成形型110によりリストライク工程が行われる。第7成形型110は、第7上型111と、第7上型111と対向して設けられる第7下型112と、を有する。第7下型112は、X方向に延在して設けられる突起部113を有する。突起部113のY方向の幅は、第3折曲工程で成形された被加工材Wの2側面W1,W2の隙間以下で設定される。また、突起部113はX方向に延在する隙間GのX方向と同じ距離または越えるように設けられる。
【0056】
リストライク工程では、まず第7成形型110に被加工材Wを設置し、第7上型111を第7下型112に近接させる。この結果、2側面W1,W2が突起部113に接触しつつ、被加工材Wが外周から内周へ加圧成形される。このため、被加工材Wの周方向に均一に圧縮荷重を付与することができる(矢印A参照)。この結果、周方向に材料が圧縮されて、周方向に均一に加工硬化が生じ、周方向に亘って十分な引張強さを有することができる。
【0057】
このようにリストライク工程により、図13に示されるように、被加工材Wの2側面W1,W2が隙間Gを介して対向した、開断面の中空形状が形成される。また、突起部113がX方向に延在する隙間GのX方向と同じ距離または越えるように設けられるため、X方向に沿って一端から他端まで開断面の中空形状が形成される。
【0058】
次に、X方向の両端に設けられる、Z方向の2側部の一部F1,F2を切断する(切断工程)。
【0059】
図14は、本実施形態に係るサスペンションアーム1の切断工程を示すX軸に直交するX方向の両端における断面図である。図16は、切断工程終了時の被加工材Wの斜視図である。
【0060】
リストライク工程において第7成形型110によって加圧成形された被加工材Wは、図14に示されるように、Z方向に貫通孔NHが設けられた中子N1をX方向の端部W4に配置した後に、第8成形型120により、端部W4のZ方向の2側部の一部F1,F2が順次切断される。図14では、端部W4のZ方向の2側部のうちの1側部の一部F1が切断される様子を示す。第8成形型120は、Z方向の下部に切断刃123が形成された第8上型121と、第8上型121と対向し、被加工材Wが嵌る溝部124が形成された第8下型122と、を有する。第8上型121は凸部125を有し、凸部125の幅は、中子N1の貫通孔NHの幅より小さく形成されるため、互いに干渉することなく切断が可能である。
【0061】
切断工程では、まず被加工材WのX方向の両端に中子N1を配置した後に、第8下型122の溝部124に被加工材Wを嵌める。そして、第8上型121を第8下型122側へ移動させると、第8上型120の切断刃123が端部W4のZ方向の2側部のうちの1側部の一部F1が切断され、中子N1の貫通孔NH内に切断片として落下する。同様に、端部W4のZ方向の2側部のうちの1側部の一部F2が切断される。
【0062】
このように、切断工程により、図15に示されるように、X方向の両端に形成された端部W4のZ方向の2側部の一部F1,F2が切断される。
【0063】
次に、Z方向の2側部の一部F1,F2が切断された端部W4をノッチ加工して、Y方向に沿って2つのプレート部30を形成する(ノッチ工程)。
【0064】
図16は、ノッチ工程終了時の被加工材Wの斜視図である。なお、図16では、被加工材WのX方向の一端のみ示す。
【0065】
ノッチ工程では、図16に示されるように、第1ノッチ加工機(不図示)によって、被加工材WのX方向の一端がノッチ加工され、不要部30Nが切断片として切断され、2枚のプレート31A,31Bが形成される。同様に、被加工材WのX方向の他端がノッチ加工され、2枚のプレート32A,32Bが形成される。2枚のプレート31A,31B及び2枚のプレート32A,32Bは2つのプレート部30を構成する。
【0066】
次に、2つのプレート部30が形成された端部W4を孔開け加工して、2つのプレート部30のY方向に沿って対向する位置に貫通孔20Hを形成する(孔開け工程)。
【0067】
図17は、孔開け工程終了時の被加工材Wの斜視図である。なお、図17では被加工材WのX方向の一端のみを示す。
【0068】
孔開け工程では、図17に示されるように、孔開け加工機(不図示)によって、被加工材WのX方向の一端が孔開け加工され、不要部20Nが切断片として切断され、Y方向に沿って対向する位置に貫通孔21Hが形成される。より具体的にはピアス加工によって貫通孔21Hが形成される。また、被加工材WのX方向の他端が孔開け加工されY方向に沿って対向する位置に貫通孔22Hが形成される。より具体的にはバーリング加工によって貫通孔22Hが形成される。貫通孔21H及び貫通孔22Hは貫通孔20Hを構成する。
【0069】
以上の工程によってサスペンションアーム1が製造される。
【0070】
次に、上述した製造方法によって製造されたサスペンションアームの効果を説明する。本実施形態において、成形前の被加工材Wはおよそ590MPaの引張強さを有する。
【0071】
図18(A)は、外周から内周へ加圧成形された後におけるサスペンションアーム1の周方向における引張強さを示すグラフである。なお、図18(A)の横軸の数値は、図18(B)に記載された数値に対応し、図18(A)の縦軸の引張強さは、図18(B)において数値が記載された近傍における引張強さを示している。
【0072】
図18(A)に示すように、外周から内周へ加圧成形することによって、周方向全体に亘って、780MPa以上の引張強さを有することが分かる。すなわち、590MPaの引張強さを有していた被加工材Wは、リストライク工程を行うことによって、780MPaの引張強さを有することになり、材質本来の引張強さに対して、およそ32%向上する。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るサスペンションアーム1の製造方法は、XY平面に延在する平板である被加工材Wについて、XZ平面における被加工材Wの2側面W1,W2が隙間Gを介して対向するように、被加工材Wを段階的にプレス加工して製造される、開断面の中空形状を有するサスペンションアーム1の製造方法である。サスペンションアーム1の製造方法は、第7成形型110にX方向に延在して設けられた突起部113を、対向した2側面W1,W2の間の隙間Gに配置し、2側面W1,W2を突起部113に接触させつつ被加工材Wを外周から内周へ加圧成形するリストライク工程を有する。この製造方法であれば、サスペンションアーム1は、開断面の中空形状を有するため、ねじり剛性を所定以下とすることができる。また、2側面W1,W2の間の隙間Gに突起部113を配置し、2側面W1,W2を突起部113に接触させつつ被加工材Wを外周から内周へ加圧成形するため、被加工材Wの周方向に均一に圧縮荷重を付与することができる。この結果、周方向に材料が圧縮されて、周方向に均一に加工硬化が生じ、周方向全体に亘って材質の持つ引張強さ以上の引張強さを有することができ、板厚を増加することなく引張強さを向上することができる。したがって、ねじり剛性を所定以下としつつ、板厚を増加することなく引張強さを向上することのできるサスペンションアーム1を提供することができる。
【0074】
また、リストライク工程において、X方向に延在する隙間GのX方向と同じ距離または越えるように設けられる突起部113を、隙間Gに配置して加圧成形が行われる。このため、X方向に沿って一端から他端まで開断面の中空形状が形成される。したがって、使用する材料を低減することができる低コスト化を図ることができる。
【0075】
また、リストライク工程の前に、YZ平面内で、平板である被加工材Wをプレスして、Y方向における中央近傍に所定の幅の基部Bを残しつつ、基部Bの両端から互いに離れつつZ方向下向きに延在する一対の第1延在部E1、第1延在部E1の基部Bが設けられる側と反対側の端部から互いに離れつつZ方向上向きに延在する一対の第2延在部E2、及び第2延在部E2の第1延在部E1が設けられる側と反対側の端部から互いに離れつつY方向外方に延在する一対の鍔部Tを形成するフォーミング工程と、第2延在部E2を第1延在部E1が延在する向きへ折り曲げつつ、鍔部TをZ方向下向きへ折り曲げる予備工程と、第2延在部E2を第1延在部E1に対して略平行となるように折り曲げつつ、第1延在部E1及び第2延在部E2をZ方向下向きへ折り曲げて、鍔部Tを互いに向かい合わせる折曲工程と、を有する。この製造方法によれば、リストライク工程において2側面W1,W2が突起部113に接触する際に、予め2側面W1,W2が対向しているため、2側面W1,W2は突起部113に対して面接触となり、突起部113または2側面W1,W2に傷が生じる可能性が低くなる。また、この製造方法によれば、第2延在部E2を、Z方向において第1延在部E1が延在する向きと反対向きに折り曲げるため、材料の変形が容易となり、予備工程以降のプレス成形が容易となる。
【0076】
また、折曲工程において、第1延在部E1及び第2延在部E2を複数回プレス加工することによって、第1延在部E1及び第2延在部E2を、Z方向下向きへ折り曲げる。このため、製造途中に生じる応力が低くなり、安全性が向上する。
【0077】
また、車輪または軸部材と連結する2つのプレート部30が一体的に形成される。このため、1枚の板材から製造可能であり、製造コストや製造時間を低減することができる。
【0078】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0079】
例えば、上述した実施形態では、フォーミング工程において、第2延在部E2を、Z方向において第1延在部E1が延在する向きと反対向きに折り曲げつつ、鍔部30を形成した後に、2側面W1,W2が対向するようにプレス加工した。しかしながら、フォーミング工程を実施することなく、平板から単に2側面W1,W2が対向するように段階的にプレス加工する工程であってもよい。
【0080】
また、折曲工程は、第1折曲工程、第2折曲工程、及び第3折曲工程の3工程を有したが、これに限られず、1工程、2工程、または4工程以上であってもよい。
【0081】
また、本実施形態では、サスペンションアーム1として使用されたが、クラッチペダルアーム、ラジアスロッドあるいはトレーリングアームなどのような長尺なアーム状をした車両用部品にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 サスペンションアーム、
110 第7成形型(リストライク用金型)、
113 突起部、
B 基部、
E1 第1延在部、
E2 第2延在部、
T 鍔部、
G 隙間、
W 被加工材、
W1,W2 2側面、
W4 端部。
図1
図2
図3
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図5
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