(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356316
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】移動性を改善したコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
G02C7/04
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-109836(P2017-109836)
(22)【出願日】2017年6月2日
(62)【分割の表示】特願2014-501149(P2014-501149)の分割
【原出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-194696(P2017-194696A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年6月2日
(31)【優先権主張番号】13/071,307
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロフマン・ジェフリー・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ジュビン・フィリップ・エフ
(72)【発明者】
【氏名】バンダーラーン・ダグラス・ジー
(72)【発明者】
【氏名】メネゼス・エドガー・ブイ
【審査官】
植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/087859(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0290883(US,A1)
【文献】
特表2005−500554(JP,A)
【文献】
米国特許第5104213(US,A)
【文献】
特表2007−519959(JP,A)
【文献】
特表2009−543136(JP,A)
【文献】
蘭国特許発明第1022850(NL,C)
【文献】
米国特許第2196066(US,A)
【文献】
米国特許第5044742(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
前面と、
裏面と、
前記裏面に形成された並進要素と、を備え、
前記並進要素は複数のくぼみであり、
これらのくぼみは、放射対称となす方式で前記レンズの裏面に付与され、等間隔に隔置された放射スポークに沿って整列され、各放射スポークは、等しい個数のくぼみを有しているコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記裏面は光学ゾーンを備え、
前記光学ゾーンは多焦点である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記裏面は光学ゾーンを備え、
前記光学ゾーンは単一の度数を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記光学ゾーンは球面円柱の度数を有する、請求項3に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記くぼみは、前記くぼみの中心同士の距離が少なくとも10マイクロメートルとなるように離間している、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記くぼみの中心は、10マイクロメートル〜500マイクロメートルだけ離間している、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記くぼみの中心は、100マイクロメートル〜400マイクロメートルだけ離間している、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記くぼみの中心は、300マイクロメートル〜400マイクロメートルだけ離間している、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記くぼみは、5マイクロメートル〜60マイクロメートルの深さを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記くぼみは、10マイクロメートル〜40マイクロメートルの深さを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記くぼみは、20マイクロメートル〜30マイクロメートルの深さを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記くぼみは、2マイクロメートル〜500マイクロメートルの直径を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記くぼみは、50マイクロメートル〜400マイクロメートルの直径を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記くぼみは、100マイクロメートル〜300マイクロメートルの直径を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記くぼみは、円形及び楕円形の形状からなる群から選択された形状を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記くぼみは、正多角形からなる群から選択された形状を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記くぼみは不規則な形状を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記くぼみは、裏面の全面積の5パーセント〜25パーセントの面積にわたって分布する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記くぼみは前記各放射スポークに沿って等間隔に配置されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記くぼみは、フラクタル幾何学によって規定された形状を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項21】
前記レンズの裏面に少なくとも150個〜300個のくぼみを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項22】
前記レンズの裏面に500個以下のくぼみを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人は年を取るにつれて、観察者に比較的近い物体に焦点を合わせるために遠近調節すること、つまり生来の水晶体を曲げることがより困難となる。この状態は老眼として知られている。老眼に対処するためにコンタクトレンズが装用され得る。あるタイプのそのようなレンズにおいて、遠方視力及び近方視力の領域は、レンズの幾何学的中心の周りに同心円状に配置される。レンズの光学ゾーンを通過した光は、目の中の複数の点で集中及び集束する。
【0002】
別のタイプのレンズ、セグメントレンズにおいて、近方視力及び遠方視力の領域は、レンズの幾何学的中心の周りで同心円をなさない。セグメントレンズは、装用者の目の瞳孔に対して並進する、つまり垂直に移動することができるように構成されているため、セグメントレンズの装用者はレンズの近方視力の領域にアクセスすることが可能である。レンズを装用している人物が文字を読むために視線を下方に移すと、レンズは鉛直に移動する。これにより、近方視力の部分が装用者の視線の中心に位置決めされる。基本的に、光学ゾーンを通過する光のすべてが、視線に基づいて目の中の1点に集束され得る。
【0003】
並進型レンズの一般的なタイプは、切断型の形状を有する。つまり、完全に円形又は長円形である多くのレンズと異なり、切断型コンタクトレンズの下方部分は、レンズのその部分を切り落とすかあるは切り詰めることなどによって平坦化されている。そのようなレンズに関する例示的な言及が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,543,935号に含まれている。他の設計は円形又は楕円形であってもよいが、そのような場合、視線の変化と共に目の上で移動できるようにするための他の設計機構を有する。並進型コンタクトレンズの並進特性を改善することが望ましい。
【0004】
別のタイプの並進型レンズは、連続的に円形又は長円形をなす外形を有するが、中央の光学ゾーンの周辺に相当に肉盛りされた部分を具備している。この肉盛りされた部分は、下眼瞼と接触し、まばたきに伴って並進することを意図したものである。そのようなレンズに関する例示的な言及が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,040,757号及び米国特許出願第20100171924号に記載されている。これらの例において、光学ゾーンの外側におけるレンズの周辺部分の厚さは、レンズの垂直経線に平行な経線にわたって実質的に一様であり、本発明によるレンズは、垂直経線を切断する平面に対して鏡面対称性を呈する。不都合にも、このことは、目の上に装用されたときの、目的の並進にはつながらない。
【0005】
別のタイプのコンタクトレンズにおいて、シリコーンハイドロゲル材料が用いられる。これらの材料は単焦点レンズ又は並進設計において使用され得るものであり、眼組織への酸素透過率が増加するという利点を有するが、他のコンタクトレンズほど容易には、まばたきに伴って目の上で移動することができない。そのような材料に関する例示的な言及が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許6,099,852号に記載されている。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの移動性を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様において、あるコンタクトレンズが、裏面の並進要素を有する。
【0007】
本発明の別の態様において、コンタクトレンズは、くぼみである裏面の並進要素を有する。
【0008】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、くぼみの中心間が約10マイクロメートル〜約500マイクロメートル、好ましくは約100マイクロメートル〜約400マイクロメートル、より好ましくは約300マイクロメートル〜約400マイクロメートルとなるように離間したくぼみを裏面に有する。
【0009】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、約5マイクロメートル〜約60マイクロメートル、好ましくは約10マイクロメートル〜約40マイクロメートル、より好ましくは約20マイクロメートル〜約30マイクロメートルの深さを有するくぼみを裏面に有する。
【0010】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、約2マイクロメートル〜約500マイクロメートル、好ましくは約50マイクロメートル〜約400マイクロメートル、より好ましくは約100マイクロメートル〜約300マイクロメートルの直径を有するくぼみを裏面に有する。
【0011】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、レンズの裏面全体の約5%〜約75%、好ましくは裏面の全面積の5%〜25%の範囲の面積を占めるくぼみを裏面に有する。
【0012】
本発明の更なる態様において、約500個以下のくぼみが、約160mm
2の表面積を有するレンズの裏面に設けられる。好ましくは、そのようなくぼみが150個〜300個ある。
【0013】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、円形であるか、楕円形であるか、正方形であるか、長方形であるか、三角形であるか、五角形であるか、多角形であるか、あるいは少なくとも1つの方向に細長いくぼみを裏面に有する。
【0014】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、くぼみのうちの少なくとも一部が少なくとも1つの他のくぼみと接触するくぼみを裏面に有する。
【0015】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、全表面にわたって分布するくぼみを裏面に有する。
【0016】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、全表面のうちの一部分にわたって分布するくぼみを裏面に有する。
【0017】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、目の瞳孔よりも一般的に大きな周辺領域にわたって分布するくぼみを裏面に有する。
【0018】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、規則的なパターンで分布するくぼみを裏面に有する。
【0019】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、幾何学的な配置計画に従って分布するくぼみを裏面に有する。
【0020】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、無秩序なパターンで分布するくぼみを裏面に有する。
【0021】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは、潤滑性をもたらす薬剤で裏面を処理される。その薬剤は、コンタクトレンズでの使用に適合する任意のコーティング材料であってよい。コーティングは単層であっても多層であってもよい。
【0022】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは単一の度数をなす。
【0023】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは球面円柱の度数をなす。
【0024】
本発明の更なる態様において、コンタクトレンズは多焦点である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるコンタクトレンズの後方表面の平面図。
【
図4】本発明によって作製されたレンズの横断面顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、コンタクトレンズの移動性又は並進性を改善するための方法及び設計を提供するものである。本明細書で用いられるとき、「並進」とは、まばたきに伴ってあるいは下方注視にてコンタクトレンズが移動することを指す。これらのレンズは、単一度数の設計であってもよく、あるいは、老眼を矯正する機能を備えた多焦点型であってもよく、本発明のレンズを生産するための方法が開示される。本発明のレンズは、並進特性を向上させる設計機構を備えた並進型コンタクトレンズである。
【0027】
本発明の並進型コンタクトレンズは、切断形、円形、又は長円形の形状をなし得る。好ましくは、それらは切断形ではなく、外周の周りに実質的に平坦な又は直線的な部分を持たないレンズである。本発明のレンズは、少なくともある遠方度数を持つ光学ゾーンを有し、また多焦点の場合には、1つの近方視力ゾーンと、好ましくは少なくとも1つの遠方視力ゾーンとを有する。それに代わって、本発明のレンズは球面円柱の度数を含んでいる。それに代わって、光学ゾーンは、複数の遠方ゾーン及び/又は複数の近方ゾーンを有し、つまり、好ましくは、1つの遠方ゾーンが実質的にレンズの水平経線に又はその上方にあり、また近方視力ゾーンが水平経線に又はその下方にある。任意選択により、レンズの光学ゾーンは、1つ以上の中間視力ゾ−ンを有する。
【0028】
遠方視力ゾーンとは、レンズの装用者の遠方視力を所望の程度にまで矯正するのに必要な遠用光学度数又は屈折力の強さをもたらすゾーンである。近方視力ゾーンとは、装用者の近方視力を所望の程度にまで矯正するのに必要な近用光学度数又は屈折力の強さをもたらすゾーンである。中間視力ゾーンとは、典型的には装用者の好ましい距離と近方視力の範囲との間にある物体を視認するために、レンズ装用者の遠方視力をある程度、矯正するのに必要な光学度数又は屈折力の強さをもたらすゾーンである。本発明によるレンズは、単一の光学度数を有することができ、あるいは多焦点であってもよい。
【0029】
一実施形態において、本発明のレンズは円形又は楕円形である。本発明の多焦点の態様において、レンズは疑似切断部によって並進するが、この疑似切断部は、視線の方向が変化するときに目の上における移動を、切断型レンズと同様に可能にし、それによって遠方又は近方視力がそれに伴って矯正されるようにする設計機構である。この機構は、視線が下方に移るとき、眼瞼によってレンズを目の上方部分の方向に移動させるように下眼瞼と相互作用することによって、レンズの並進に寄与する。視線が上方に移るとき、眼瞼は目の下方部分の方向にレンズを移動させる。好ましくは、視線が下方に移るときのレンズの並進は、下眼瞼が疑似切断部を押圧することによって生じる。本発明のレンズは、例えば円柱屈折力など、遠用及び近用光学度数に加えて表面に組み込まれる様々な他の矯正用の光学特性を有し得る。
【0030】
本発明のレンズは、装用者がまばたきするか、又は、真っ直ぐ前方から下向きの視線に若しくはその逆に視線を変化させるときのレンズの並進性を改善する設計機構を有している。この機能を実施する最も好ましい設計機構は、レンズの裏面上のくぼみである。好ましいくぼみは上方から見ると円形であるが、くぼみは三角形、正方形、五角形、六角形、七角形、八角形などであってもよい。これらの放射対称の形状に加えて、くぼみはまた、長円形若しくは楕円形又は不規則パターンなどの形状を有してもよい。考えられる横断面形状には、限定するものではないが、円弧、円錐台、扁平な台形、及び、放物曲線、楕円、半球形の曲線、ソーサー形状の曲線、正弦曲線、又は、懸垂曲線をその対称軸の周りに回転させることによって生成される形状で規定される輪郭が挙げられる。考えられる他のくぼみ設計には、くぼみ内のくぼみ、及び一定の深さのくぼみが挙げられる。加えて、複数の形状又はタイプのくぼみが単一の表面上で使用されてもよい。
【0031】
くぼみ設計は、個々のくぼみの形状によってのみならず、レンズの裏面におけるくぼみの直径、深さ、及びパターンによっても規定され得る。この場合の直径は、くぼみが円形である場合には、縁部から縁部までの距離であり、くぼみが非円形である場合には、非円形のくぼみと同じ面積を有する円の直径である。深さは、くぼみの周囲の連続部からくぼみの最も深い部分までの距離である。本発明によるくぼみは、約2マイクロメートル〜約500マイクロメートルの直径と、約5マイクロメートル〜約60マイクロメートルの深さを有する。好ましくは、直径は約50マイクロメートル〜約400マイクロメートルであり、深さは約10マイクロメートル〜約40マイクロメートルである。より好ましくは、直径は100マイクロメートル〜300マイクロメートルであり、深さは20マイクロメートル〜30マイクロメートルである。
【0032】
各くぼみは、それらの中心同士の距離が約10マイクロメートル〜約500マイクロメートル、好ましくは約100マイクロメートル〜約400マイクロメートル、より好ましくは約300マイクロメートル〜約400マイクロメートルとなるように離間している。くぼみは、裏面の全面積の一定比率を占め、その全面積のうちの前述のくぼみが占める比率は約5パーセント〜約75パーセント、より好ましくは約5パーセント〜25パーセントである。
【0033】
レンズの並進特性を改善するためにレンズの裏面にくぼみ加工する際の別の検討事項は、くぼみ加工のパターンである。表面にくぼみを定置又は充填する一方法は、八面体の各面に対応する8個の球面三角形に表面を分割することである。くぼみは次いで、配置計画に従って表面区分の各々に定置される。表面区分が更に分割され、その結果として得られた小区分にくぼみが充填されてもよい。
【0034】
別のくぼみ充填方法では、レンズの裏面が、二十面体の各面に対応する20個の球面三角形に分割される。くぼみは次いで、配置計画に従って表面区分の各々に定置される。表面区分が更に分割され、その結果として得られた小区分にくぼみが充填されてもよい。二十面体に基づくくぼみパターンは、高度な六方充填を取り入れたものである。
【0035】
くぼみの不規則的な配置と同様に、重なり合うくぼみを有するくぼみパターンもまた考えられる。一般に、約500個以下のくぼみが、約160mm
2の表面積を有するレンズの裏面に設けられる。好ましくは、そのようなくぼみが約150個〜約300個、存在する。また、くぼみの形状及びパターンはフラクタル幾何学によって規定され得る。くぼみは、裏面全体に配置されても、裏面の周辺部分を優先的に裏面の一部分に配置されてもよい。
【0036】
フラクタル形状の設計は、イニシエータ及びジェネレータで生み出される中間構造が連続することによって生成されてもよい。イニシエータは、2次元ユークリッド幾何学の形状であってもよい。例えば、イニシエータは、等しい長さのN
0個の辺を有する、正方形(N
0=4)又は正三角形(N
0=3)などの多角形であってもよい。イニシエータはまた、2つの端部を有し複数の直線区分で構成された区分線であってもよく、それらの直線区分は少なくとも1つの他の区分に連結される。ジェネレータは、直線及び/又は曲線からなるパターンである。イニシエータと同様に、ジェネレータは、2つの端部を有し複数の直線区分で構成された区分線であってもよく、それらの直線区分は少なくとも1つの他の区分に連結される。イニシエータの各部をジェネレータで置き換えることによって、第1の中間構造が生み出される。次いで、第1の中間構造の各部をジェネレータで置き換えることによって、第2の中間構造が生み出される。ジェネレータは、各中間構造でスケーリングされなければならないこともある。このプロセスは、フラクタル形状が完成するまで繰り返される。
【0037】
また、レンズの裏面の表面特性は、レンズの並進特性を向上させるように改質され得る。レンズは、表面全体を、又は表面の一部分をコーティングされてもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、光学ゾーンのみがコーティングされる。他の実施形態においては、周辺ゾーンのみがコーティングされる。更に他の実施形態において、裏面は、任意の時点でレンズの全厚と共に変動するようにコーティングされる。
【0038】
コーティングには、例えば、好適な親水性コーティングの塗布などによる膨潤性コーティングを挙げることができる。好ましい親水性コーティングには、限定するものではないが、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(イタコン酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ジメタクリルアミド)、(メタ)アクリル酸のブロック又はランダム共重合体、アクリル酸、マレイン酸、任意の反応性のビニル単量体を有するイタコン酸、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシメタクリレート変性高分子、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリ(HEMA)、ポリスルホネート、ポリスルフェート、ポリラクタム、ポリグリコール酸、ポリアミンなど、及びそれらの混合物が挙げられる。より好ましくは、コーティングは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ジメタ)アクリルアミド、ポリ(アクリルアミド)、又はポリ(HEMA)である。最も好ましくは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、又はポリ(HEMA)が使用される。好ましくは、コーティングは、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,478,423号に記載されているとおりに選択及び塗布される。
【0039】
広義には、表面処理プロセス(又は表面改質プロセス)は、裏面と蒸気若しくは液体との接触、及び/又は、エネルギー源の作用の任意の手段であってよく、そのエネルギー源の作用は、レンズの裏面にコーティングを施すか、レンズの裏面の上に化学種を吸着させるか、レンズの裏面上の化学基の化学的性質(例えば静電荷)を改質するか、あるいは別様にレンズの裏面の表面特性を改質するためのものである。例示的な表面処理プロセスには、限定するものではないが、エネルギー(例えば、プラズマ、静電荷、光線、又は他のエネルギー源)による表面処理、化学処理、レンズの裏面上への親水性の単量体又はマクロマーのグラフティング、並びに高分子電解質の交互吸着が挙げられる。ポリ(アクリル酸)、つまりPAAが最も好ましいコーティングであり、ポリ(N−ビニルピロリドン)、つまりPVPもまた好ましいコーティングである。レンズにおいて有用となる例示的なコーティングの材料及び方法、並びにその発明の方法が、例えば、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,798,639号、同第6,926,965号、同第6,893,685号、同第5,805,264号に記載されている。プラズマガス及び加工条件については、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,312,575号及び同第4,632,844号により完全に記載されている。
【0040】
あるコーティングプロセスの実施形態は、単にディップコーティングする工程と、ディップ洗浄する工程とを伴う。別のコーティングプロセスの実施形態は、単にスプレーコーティングする工程と、スプレー洗浄する工程とを伴う。しかしながら、多数の別法が、スプレー及びディップコーティングの様々な組合わせを伴い、洗浄する工程は、当業者によって計画され得る。いずれの場合も、レンズの前面は、裏面のみがコーティングされるように閉塞又は遮蔽される。これは、例えば、レンズ金型又は薄く平らなレンズ前駆体を、水和していない状態又は部分的に水和した状態にある間に、単純に機械的に固定することによってなされ得る。これはまた、裏面の中間金型を取り外し、完全な離型及び水和のためにレンズが送られる前にコーティングを施すことによって、部分的に水和したレンズ金型に対してもなされ得る。コーティングは、パッド印刷、流体ジェット噴霧、ピエゾ計量分配機器などによって施されてもよい。
【0041】
あるディップコーティングの別法は、第1のポリイオン材料の第1の溶液中にレンズを浸漬することによって、第1のポリイオン材料のコーティングをレンズに施す工程と、洗浄溶液中にレンズを浸漬することによってレンズを洗浄する工程と、任意選択によって乾燥させる工程とを伴う。この手順は、第2のポリイオン材料を使用して繰り返され得るが、その第2のポリイオン材料は、ポリイオンの二重層を形成するために、第1のポリイオン材料の電荷と反対の電荷を有するものである。この二重層の形成プロセスは、より厚いコーティングを製作するために、複数回、繰り返されてもよい。コーティング及び洗浄工程の各々の浸漬時間は、多数の要因によって異なり得る。好ましくは、ポリイオン溶液へのコア材料の浸漬は、約1分〜30分、より好ましくは約2分〜20分、最も好ましくは約1分〜5分の期間にわたって生じる。洗浄は、複数の洗浄工程で達成されてもよいが、単一の洗浄工程が効果的となり得る。
【0042】
別法として、コーティングプロセスは、スプレーコーティング技術を伴い得る。このプロセスは一般に、第1のポリイオン材料の第1の溶液でレンズ表面に第1のポリイオン材料のコーティングを施す工程と、洗浄溶液をレンズにスプレーすることによってレンズを洗浄する工程と、任意選択によって乾燥させる工程とを含む。既知のスプレー技術のうちの他のいかなるものでも用いられ得るのと同様に、空気援用式の霧化及び分配プロセス、超音波援用式の霧化及び分配プロセス、圧電援用式の霧化及び分配プロセス、電気機械式ジェット印刷プロセス、圧電ジェット印刷プロセス、静水圧を用いた圧電ジェット印刷プロセス、及び熱的ジェット印刷プロセスのすべてが用いられ得る。レンズ上におけるスプレー装置の分配ヘッドの位置決めを制御すること、及びコーティング液を分配することが可能なコンピュータシステムが、一般に使用される。
【0043】
一般に、ポリイオン溶液から形成されるコーティングは、好適な量の溶液を水に溶解させることによって調製され得る。例えば、0.001Mのポリアクリル酸溶液が作られるように、約90,000の分子量を有するポリアクリル酸などのポリアニオン性材料が、好ましくは水に溶解され得る。溶解すると、ポリアニオン性溶液のpHは、塩基性又は酸性の材料を加えることによって調節され得る。上記の実施形態において、例えば、pHを2.5に調節するために、好適な量の1Nの塩化水素酸(HCl)が加えられ得る。ポリカチオン性溶液もまたこの方式で生成され得る。例えば、一実施形態において、0.001Mのポリ(アリルアミン塩酸塩)溶液を生成するために、約50,000〜約65,000の分子量を有するポリ(アリルアミン塩酸塩)が水に溶解され得る。その後、そのpHはまた、好適な量の塩化水素酸を加えることによって、2.5に調節され得る。本発明のいくつかの実施形態において、単一の溶液中にポリアニオン性の材料とポリカチオン性の材料の両方を含有する溶液を用いることが望ましい場合がある。
【0044】
本発明によるレンズはまた、まず、レンズを作製するための金型に潤滑性のコーティングを施し、次いで、その金型から作製されたレンズに潤滑性のコーティングを転写グラフトする(transfer-grafting)ことによっても作製され得る。
【0045】
図1からわかるように、コンタクトレンズの裏面10が示されている。線100及び110はそれぞれ、レンズの水平、つまり0度〜180度の経線と、垂直、つまり90度〜270度の経線を表している。この表面は、非光学的な周辺ゾーン15によって囲まれた光学ゾーン11を有している。遠方ゾーン11及び15の各中心は、好ましくは、レンズ10の幾何学的中心に位置している。便宜上、すべての図における様々なゾーンの境界は、別々の線で示されている。しかしながら、当業者には理解されるように、それらの境界は混合してもよく、また非球面であってもよい。
【0046】
図2を参照すると、規則的なくぼみパターンが示されている。くぼみ20が、放射対称をなす方式でレンズの裏面に付与されている。これらのくぼみは、等間隔に隔置された放射スポーク21(実際のレンズ上には見られない)に沿って整列されている。好ましくは、図示のように、各経線に沿って等間隔に隔置された、等しい個数のくぼみが示されている。くぼみパターンの規則性は、この実施形態において、成形型の製造を支援する。
【0047】
図3は、レンズ表面上のくぼみの拡大横断面図を示している。くぼみは、規定された深さと半径を有している。
図4は、
図3に示すものと似た、実際のレンズ表面の顕微鏡写真を示している。
【0048】
レンズの1つ以上の光学ゾーン11は一般に、非光学的なレンズ形ゾーン15に囲まれている。光学ゾーン11は、例えば、参照によってそのすべての内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7,503,652号に記載されているように、少なくとも1つの近方視力ゾ−ンと、少なくとも1つの遠方視力ゾーンとを有してもよい。種々様々な形状の視力ゾーンが考えられる。光学系は二焦点であっても三焦点であってもよく、あるいは更に多数の視力ゾーンを有してもよい。「多焦点の並進型コンタクトレンズ」は二焦点、三焦点、又は多焦点の光学系を含む並進型コンタクトレンズを指す。光学ゾーンは、形状において、円形であっても非円形であってもよく、つまり、弓形、直線、複数の同心円、半径方向に変動する同心円、漸進的に変化する度数関数、及び幾何学的な挿入区間であってもよい。光学ゾーン11はまた、単一の度数をなしてもよい。
【0049】
本発明による多焦点の並進型コンタクトレンズの前方表面と後方表面の少なくとも一方の光学ゾーン11は、遠方視力ゾーンと、中間視力ゾーンと、近方視力ゾーンとを有し得る。多焦点の並進型コンタクトレンズは、主たる視線(例えば運転)における遠方視力矯正、半下向きの視線(例えばコンピュータ上での作業)における中間視力矯正、及び完全に下向きの視線(例えば本及び新聞を読む)における近方視力矯正をもたらし得る。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明の並進型レンズ内の中間視力ゾーンは、漸進度数ゾーンであり、この漸進度数ゾーンは、遠方視力から近方視力へと連続的に変化する光学度数を有するものである。三焦点並進型コンタクトレンズ又は漸進光学度数を有する多焦点並進型コンタクトレンズを効果的に使用するには、ある距離を置いた物体を注視すること(主たる視線)から、中間的な距離にある物体を注視すること(部分的に下向き又は半下向きの視線)へと、あるいはすぐ近くの物体を注視すること(完全に下向きの視線)へと目が変化するとき、目の表面全体にわたる様々な並進量が必要となる。
【0051】
本発明のレンズはまた、安定化のためにレンズを方向付ける機構を有し得る。これらは、疑似切断部に加えられるものであり、疑似切断部が、装用時に下眼瞼に隣接してレンズの底部に位するように働く。安定化又は方向付け機構には、安定化ゾーン、プリズムバラスト、スラブオフ、動的安定化などが挙げられる。
【0052】
本発明のコンタクトレンズは、ハードレンズであってもソフトレンズであってもよいが、好ましくはソフトコンタクトレンズである。本発明の方法を利用してソフトコンタクトレンズを形成するのに好適な好ましい材料には、シリコーンエラストマー、限定するものではないが、参照によってすべてが本願に組み込まれる米国特許第5,371,147号、同第5,314,960号、及び同第5,057,578号に開示されているものを含むシリコーン含有マクロマー、ヒドロゲル、シリコーン含有ヒドロゲルなど、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、レンズ材料は、限定するものではないが、ポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリルオキシプロピルポリアルキルシロキサン、及びそれらの混合物、シリコーンヒドロゲル、若しくはヒドロキシ基、カルボキシル基を含有するモノマーから作られたヒドロゲル、又はそれらの組合わせを含めて、シロキサン官能基を含有する。ソフトコンタクトレンズを作製するための材料は周知であり、商業的に入手可能である。好ましくは、その材料は、セノフィルコン、ナラフィロン(narafilon)、アクアフィルコン、エタフィルコン、ゲンフィルコン、レネフィルコン、バラフィルコン、又はロトラフィルコンである。
【0053】
本発明のレンズは、コンタクトレンズ製造のための既知のいかなるプロセスを用いて作製されてもよい。好ましくは、レンズは、レンズ組成物を光硬化させ、硬化したレンズにコーティングを施すことによって作製される。スピンキャスティング及びスタティックキャスティングを含めて、コンタクトレンズの製造において反応混合物を成形するための様々なプロセスが知られている。本発明のコンタクトレンズを製造するための好ましい方法は、シリコーンハイドロゲルのダイレクトモールディングによるものであり、このダイレクトモールディングは経済的であり、水和したレンズの最終形状を正確に制御することを可能にする。この方法の場合、反応混合物は、シリコーンハイドロゲル、すなわち水膨潤したポリマーの最終的な所望の形状を有する金型内に置かれ、また、その反応混合物は、単量体が重合する条件に暴露されて、最終的な所望の製品のおおよその形状をなす高分子が生成される。そのような重合の条件は当該技術分野で周知である。その高分子混合物は任意選択により、溶媒で、次いで水で処理されて、元の成形高分子物品の寸法及び形状と類似した最終的な寸法及び形状を有するシリコーンハイドロゲルが生成される。この方法は、コンタクトレンズを形成するために使用され得るものであり、参照によってその全容が本明細書に組み込まれる米国特許第4,495,313号、同第4,680,336号、同第4,889,664号、及び同第5,039,459号に更に記載されている。成形などのプロセスにおいて、くぼみパターンは、くぼみの形状と深さを有する成形型を使用することによって金型に付与される。成形プロセスは一般に、中間的な鋳型を用いた、2段階又は好ましくは3段階のプロセスである。3段階のプロセスにおいて、くぼみは、裏面の凹状のマスター型にあるくぼんだ部分として形成される。マスター型は好ましくは金属製であるが、セラミック製であってもよい。金属製のマスター型は、鋼、真ちゅう、アルミニウムなどから機械加工される。マスター型は次いで、中間的な鋳型を創成するために使用され、この中間的な鋳型において、曲線は凸状となり、くぼみは、中間的な逆曲線状の鋳型にある隆起部分として存在する。最終的なレンズは、逆曲線状の鋳型から鋳造され、同じプロレスで生成された曲線状の固定側金型と共に組み立てられる。その2段階のプロセスにおいて、水和されていないレンズ用高分子材料は、最も好ましくは精密旋盤によって直接的に処理される。この場合、くぼみは、水和されていない高分子材料に機械加工され、くぼみは凹状の表面上のへこみとなる。
【0054】
本発明は、以下の実施例を検討することによって更に明確となり得る。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
図1に基づいたセノフィルコンレンズを用意した。
図1を参照すると、コンタクトレンズ10は約14.2mmの直径を有し、裏の光学ゾーン11は約9.5mmの直径を有していた。使用したくぼみパターンが
図2に示されている。くぼみの横断面形状が
図3に示されており、この実施例に従って作製された実際のレンズの、目に装用されているときの横断面が
図4に示されている。
図4は、光干渉断層撮影を用いてレンズと目を撮像することによって得られたものである。この実施例において、裏面にくぼみを加えても、レンズの前面の形状に変化が生じなかったことがわかる。これらのくぼみは、約0.170mmの直径を持つ円形の形状をなし、レンズの中心の周りで放射スポーク21に沿って分布するものであった。この実施例において、スポークは、レンズの周りに10度ごとに均等に分布し、各スポークは8個のくぼみを備えていた。
【0056】
(実施例2)(仮説)
実施例1で説明したレンズは、生体内実験の一部として製造される。裏面にくぼみを加えても、レンズの前面の形状に変化を生じることはない。目の上に配置されると、レンズは、同じようなパラメータを有するがくぼみを持たない比較対照のレンズよりも容易に移動する。本発明によるくぼみ加工機構がなければ0.25mmしか移動しないのに対し、本発明によるレンズは、まばたきによって0.75mm移動する。
【0057】
(実施例3)(仮説)
図1による並進型セノフィルコンレンズに、
図2のくぼみパターンを設ける。このコンタクトレンズは、約14.2mmの直径を有し、その光学ゾーンは約8mmの直径を有する。裏面にくぼみを加えても、レンズの前面の形状に変化を生じることはない。このレンズを生体内実験で使用する。目の上に配置されると、レンズは、同じようなパラメータを有するがくぼみを持たない比較対照のレンズと比べて、下方注視によってより容易に移動する。本発明によるくぼみ加工機構がなければ0.25mmしか並進しないのに対し、本発明によるレンズは、下方注視によって約1.5mm並進する。
【0058】
(実施例4)
800〜1000MW(M
n)モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(monomethacryloxypropyl terminated mono-n-butyl terminated polydimethylsiloxane)と、2−プロペン酸、2−メチル−,2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル、N,N−ジメチルアクリルアミドと、2−ヒドロキシエチルメタクリレートと、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと、ポリ(N−ビニルピロリドン)(K値90)と、3,7−ジメチル−3−オクタノールを希釈液として、CGI 1850を二つ割り型のプラスチック用金型に入れる光開始剤として使用したテトラエチレングリコールジメタクリレートとの混合物を光硬化させることによって、エタフィルコンAのレンズを作製した。予め水和したレンズを固定側金型に付着した状態に残して、金型を開いた。250,000M
wのポリアクリル酸を水に入れた3%の溶液に、レンズと金型を入れた。N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.25%の水溶液)を加えた。レンズ/金型と溶液を、室温にて2分間にわたってかき混ぜ、次いで水で3回、すすぎ洗いした。レンズを、イソプロパノールと水の70/30(体積)の溶液中に放った。次いで、数回の交換を伴ってホウ酸緩衝食塩水の中にレンズを入れ、加圧滅菌した。臨床的に評価すると、本発明に従って作製されたレンズは、ポリアクリル酸による処理をせずに作製されたレンズと比べて、相当に移動した。
【0059】
〔実施の態様〕
(1) 裏面の並進要素を備えるコンタクトレンズ。
(2) 前記並進要素はくぼみである、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(3) 光学ゾーンは多焦点である、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(4) 前記光学ゾーンは単一の度数を有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(5) 前記光学ゾーンは球面円柱の度数を有する、実施態様4に記載のコンタクトレンズ。
【0060】
(6) 前記くぼみは、前記くぼみ同士の距離が少なくとも約10マイクロメートルとなるように離間している、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(7) 前記くぼみの中心は、約10マイクロメートル〜約500マイクロメートルだけ離間している、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(8) 前記くぼみの中心は、約100マイクロメートル〜約400マイクロメートルだけ離間している、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(9) 前記くぼみの中心は、約300マイクロメートル〜約400マイクロメートルだけ離間している、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(10) 前記くぼみは、約5マイクロメートル〜約60マイクロメートルの深さを有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
【0061】
(11) 前記くぼみは、約10マイクロメートル〜約40マイクロメートルの深さを有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(12) 前記くぼみは、約5マイクロメートル〜約60マイクロメートルの深さを有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(13) 前記くぼみは、約20マイクロメートル〜約30マイクロメートルの深さを有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(14) 前記くぼみは、約2マイクロメートル〜約500マイクロメートルの直径を有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(15) 前記くぼみは、約50マイクロメートル〜約400マイクロメートルの直径を有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
【0062】
(16) 前記くぼみは、約100マイクロメートル〜約300マイクロメートルの直径を有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(17) 前記くぼみは、円形及び楕円形の形状からなる群から選択された形状を有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(18) 前記くぼみは、正多角形からなる群から選択された形状を有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(19) 前記くぼみは不規則な形状を有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(20) 前記くぼみは全表面にわたって分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
【0063】
(21) 前記くぼみは前記表面の一部分にわたって分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(22) 前記くぼみは前記表面の周辺部分にわたって分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(23) 前記くぼみは、裏面の全面積の約5パーセント〜約75パーセントの面積にわたって分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(24) 前記くぼみは、裏面の全面積の約5パーセント〜約75パーセントの面積にわたって分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(25) 前記くぼみは規則的なパターンで一様に分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
【0064】
(26) 前記くぼみは幾何学的な配置計画に従って分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(27) 前記くぼみは無秩序な形式で分布する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(28) 前記レンズの裏面に少なくとも約150個〜約300個のくぼみを有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(29) 前記レンズの裏面に約500個以下のくぼみを有する、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。