特許第6356407号(P6356407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356407
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】患者用椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/06 20060101AFI20180702BHJP
   A47C 3/18 20060101ALI20180702BHJP
   A47C 3/20 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61G15/06 501
   A47C3/18 Z
   A47C3/20
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-225767(P2013-225767)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-84933(P2015-84933A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将
(72)【発明者】
【氏名】森 珠実
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−134827(JP,U)
【文献】 特開2005−211246(JP,A)
【文献】 特開2006−212152(JP,A)
【文献】 特開2001−018694(JP,A)
【文献】 特開2005−110785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G15/00−15/18
A61G5/00−5/14
A47C3/18−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体の脚支柱を軸として回動可能に支持される座体を備える椅子において、前記座体に支持され、着座者の腰を支持する腰支持体を有するとともに、前記座体の回動を適所において停止させる回動停止手段を有し、かつ前記回動停止手段を、前記座体の左右両側方に設けられ、前記座体の回動の停止と解除を操作する回動制御操作レバーによって操作しうるようにするとともに、
前記座体の上下方向の位置を調節する上下位置操作レバーを、前記座体の左右側方のいずれか一側方にのみ設けるとともに、前記座体の左右両側方に位置する前記回動制御操作レバーのうち、前記一側方に位置する前記回動制御操作レバーを、前記上下位置操作レバーの前方に位置させるようにしたことを特徴とする患者用椅子。
【請求項2】
前記座体の前記回動停止手段が、前記座体に支持された前記回動制御操作レバーによって操作される係合部材と、脚体に固定された被係合部材とより構成され、前記係合部材と前記被係合部材の係脱により、前記座体の回動の停止と解除がなされるとともに、前記回動制御操作レバーの上下方向または前後方向の位置を回動の停止時と解除時によって異なるようにしたことを特徴とする請求項1記載の患者用椅子。
【請求項3】
前記座体の左右両側方に設けた前記回動制御操作レバーを連結する横杆を、前記座体の下面に露呈させるとともに、前記上下位置操作レバーとガススプリングを連係する連係杆を前記座体の下面から前記座体における支基の内部に嵌入させたことを特徴とする請求項記載の患者用椅子。
【請求項4】
前記回動制御操作レバーによって操作される前記係合部材を、前記係合部材が前記被係合部材に係合される方向に常時付勢したことを特徴とする請求項2または3に記載の患者用椅子。
【請求項5】
前記座体の前記回動停止手段が、前記座体を単一の特定位置に停止させるように構成したものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の患者用椅子。
【請求項6】
前記回動制御操作レバーを、医師を始めとする医療関係者が操作する医師用操作レバーとしたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の患者用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば病院の診療施設において患者が着座するために使用される、座体が回転可能な椅子であって、着座者の腰だけを支えることのできる低長な腰支持部を備える患者用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
病院内における診療現場において、医師と患者とが椅子に着座した状態で対向するレイアウトは一般的である。この対向時、患者は長時間にわたる着座を行わないことや、触診のために好都合であることから、特許文献1に開示されるような、腰部だけを支持する低長な腰支持体を有する高さの低い簡易な回転椅子に着座することが多い。
【0003】
一方、高齢化社会の進行によって、来院する患者の年齢が上昇傾向にある。高齢者は一般的に足腰の力が低下しているため、特許文献1に開示されるような椅子に、着座した状態から立ち上がったり、あるいは着座しようとする際に、さらには診察台やベッド等から乗り移る際に、腰支持体や肘掛け、あるいは座面等に手をかけることにより、座体が回転し、これによってバランスを崩し、自分の身体を支えることができず、転倒する場合が少なからず見られ、患者を負傷させてしまう危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1196802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、病院等内における診療現場で使用される低長な腰支持体を備える患者用の回転椅子において、患者が着座した状態から立ち上がったり、着座しようとする際、あるいは診察台やベッド等から乗り移る際に、患者の転倒などを有効に防止することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)脚体の脚支柱を軸として回動可能に支持される座体を備える椅子において、前記座体に支持され、着座者の腰を支持する腰支持体を有するとともに、前記座体の回動を適所において停止させる回動停止手段を有し、かつ前記回動停止手段を、前記座体の左右両側方に設けられ、前記座体の回動の停止と解除を操作する回動制御操作レバーによって操作しうるようにするとともに、前記座体の上下方向の位置を調節する上下位置操作レバーを、前記座体の左右側方のいずれか一側方にのみ設けるとともに、前記座体の左右両側方に位置する前記回動制御操作レバーのうち、前記一側方に位置する前記回動制御操作レバーを、前記上下位置操作レバーの前方に位置させるようにしたことを特徴とする患者用椅子とする。
【0007】
このような構成とすることにより、たとえば、患者と対向して診察しようとする医師が、患者が着座あるいは立ち上がろうとする際などに備え、使用前に予め座を固定しておいたり、あるいは使用直前に回動制御操作レバーを操作して座を固定するなど、予め回動制御操作レバーにより、回動停止手段を、座体の回動を停止させるように操作することにより、着座あるいは立上がりのときに、患者が転倒したりすることを有効に防止することができる。
また、診察台やベッド等から当該椅子に乗り移る際にも、医師または看護士等が回動制御操作レバーを操作することにより、患者を負傷させてしまう危険性を防止することができる。
さらに、患者が医師と対向しているときに、回動制御操作レバーを医師に近い位置とすることができ、操作し易くなるとともに、回動制御操作レバーと上下位置操作レバーとを見誤って誤操作することを防止することができる。
また、両操作レバーの外観上の差異がより明確になり、回動制御操作レバーと上下位置操作レバーとを見誤って誤操作することを一層有効に防止することができる。
【0008】
(2)上記(1)項において、座体の回動停止手段が、座体に支持された回動制御操作レバーによって操作される係合部材と、脚体に固定された被係合部材とより構成され、前記係合部材と被係合部材の係脱により、前記座体の回動の停止と解除がなされるとともに、回動制御操作レバーの上下方向または前後方向の位置を回動の停止時と解除時によって異なるようにする。
【0009】
このように構成することにより、座体の回動の停止と解除を確実に行うことができるとともに、回動制御操作レバーの位置により、停止と解除のいずれの状態にあるかを容易に見分けることができ、誤って操作することを防ぎ、より確実に患者の転倒等を防止することができる。
【0014】
)上記()項において、座体の左右両側方に設けた回動制御操作レバーを連結する横杆を、座体の下面に露呈させるとともに、上下位置操作レバーとガススプリングを連係する連係杆を座体の下面から座体における支基の内部に嵌入させる。
【0015】
このように構成することにより、両操作レバーの外観上の差異がより明確になり、回動制御操作レバーと上下位置操作レバーとを見誤って誤操作することを一層有効に防止することができる。
【0016】
)上記(2)項または(3)項において、回動制御操作レバーによって操作される係合部材を、この係合部材が被係合部材に係合される方向に常時付勢する。
【0017】
このように構成することにより、座体の停止時において、当該停止状態を安定よく保持することができるとともに、解除時においても、座体の回転位置が予め定められた停止位置と整合した場合に、自動的に停止状態となる。
【0018】
)上記(1)項〜()項のいずれかにおいて、座体の回動停止手段が、座体を単一の特定位置に停止させるように構成したものとする。
このように構成することにより、座体を常に単一の特定位置に停止させることができるため、停止位置を選択する手数を省くことができる。
【0019】
)上記(1)項〜()項のいずれかにおいて、回動制御操作レバーを、医師を始めとする医療関係者が操作する医師用操作レバーとする。
すなわち、医師用操作レバーは、医師を始めとする看護士、医療検査技師等の患者に接する医療関係者が操作するレバーを意味する。
このようにすることにより、病院等の医療現場における患者の転倒などを、患者に直接に接する前記医療関係者が有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、病院等内における診療現場で使用される低長な腰支持体を備える患者用の回転椅子において、患者が着座した状態から立ち上がったり、着座しようとする際、あるいは診察台やベッド等から乗り移る際に、患者の転倒などを有効に防止することができるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の患者用椅子の一実施形態を示す側面図である。
図2】同じく、正面図である。
図3図1に示す患者用椅子の座体下部の支基を取り外し、この支基を一部分解して示す上方斜視図である。
図4】同じく、医師用操作レバーと上下位置操作レバーを取り外して示す支基の分解斜視図である。
図5】同じく、支基を一部分解して示す下方斜視図である。
図6】同じく、支基の底面図である。
図7】座体の回動が停止状態にあるときの支基の図6におけるA―A線拡大縦断面図である。
図8】座体の回動を停止状態から解除状態にするために、係合ピンを被係合孔から脱離させた状態を示す、支基の図6におけるA―A線拡大縦断面図である。
図9】座体の回動が解除状態にあるときの支基の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の患者用椅子1の一実施形態を示す側面図、図2は、同じく正面図である。
患者用椅子1は、脚体2の上端に支持部材3を介して座体4が回動可能に支持されている。座体4の後方には、座体4に支持され、着座者の腰を支持する低長な腰支持体5が設けられている。座体4の左右側方には、肘掛け6が設けられている。
脚体2は、円板状の脚底板7とその中央に立設された脚支柱8とよりなる。脚支柱8は、脚管9と、この脚管内に回動不能に嵌挿されたガススプリング10とよりなり、このガススプリング10の上端に支持部材3が固着されている。座体4は、支基11と座シェル12とクッション部材13とよりなる。
座体4の左右両側方には、座体4の回動の停止と解除を操作する医師用操作レバー14が設けられている。
座体4の左側方には、座体4の上下方向の位置を調節する上下位置操作レバー15が設けられている。
【0023】
図3は、図1に示す患者用椅子1の座体下部の支基11を取り外し、この支基11を一部分解して示す上方斜視図、図4は、同じく医師用操作レバー14と、上下位置操作レバー15を取り外して示す支基11の分解斜視図、図5は、同じく、支基11を一部分解して示す下方斜視図、図6は、同じく支基11の底面図である。また、図7は、座体4の回動が停止状態にあるときの支基11の図6におけるA―A線拡大縦断面図、図8は、座体4の回動を停止状態から解除状態にするために、係合ピン42を被係合孔20から脱離した状態を示す、支基11の図6におけるA―A線拡大縦断面図である。図9は、座体4の回動が解除状態にあるときの支基11の拡大縦断面図である。
【0024】
図4に示すように、支基11は、上方が開口する箱型をなし、前後方向に長いほぼ長方形状を有する。支基11の内部中央には、脚体2の上端に支持部材3を介して支基11を回動可能に支持するための取付孔16を備える取付筒部17が設けられている。
支持部材3は、円筒状の基体18と、この基体18の下部より外方に突出する支持鍔19とよりなっている。基体18の下部のフランジ18aの底部が有底浅筒状の支持鍔19の底部と一体となり、支持部材13が形成されている。支持鍔19の筒壁とフランジ18aが一部連結され、この部分に被係合孔20が穿設されている。基体18の上面には、複数個のねじ孔18bが設けられている。この支持部材3は、ガススプリング10の上端に圧嵌することにより固定されている。
【0025】
支基11は、前記支持部材3に、下部ブッシュ21、上部ブッシュ22、環状押板23を介して、回動可能に支持される。
下部ブッシュ21は、円筒部24の下部に外方を向く受鍔25を備え、受鍔25の上面には、上向きに突出する3個の係止突起25aと、1個の通孔25bとが設けられている。
一方、図7に示すように、支基11の底面には、前記係止突起25aに対応する位置に3個の係止孔26が、また前記通孔25bに対応する位置に合致孔27が設けられている。
【0026】
図4図7に示すように、下部ブッシュ21における円筒部24を、支基11における取付筒部17の取付孔16内に下方から嵌合させるとともに、下部ブッシュ21における受鍔25の3個の前記係止突起25aを、支基11における前記3個の前記係止孔26に係止させることによって、下部ブッシュ21は支基11に取付けられて、両者は一体的に回動するようになっている。
また、前記取付孔16には、上方から上部ブッシュ22が取付けられている。
上部ブッシュ22は、円筒部28の上部に外向鍔29を設けた形状を有している。
上部ブッシュ22における円筒部28を、支基11における取付筒部17の取付孔16内に上方から嵌合させることによって、上部ブッシュ22は支基11に取付けられている。
【0027】
下部ブッシュ21と上部ブッシュ22が取付けられた支基11は、支持部材3における基体18に上方から外嵌され、次いで環状押板23が上方から被冠される。環状押板23には、複数個の通孔30が穿設されており、この通孔30に、上方から挿通した止めねじ31を、支持部材3における基体18の上面に設けられたねじ孔18bに螺合させることによって、環状押板23は支持部材3に取付けられている。
【0028】
前記上部ブッシュ22、支基11、下部ブッシュ21の3者は、前記支持部材3における支持鍔19と、前記環状押板23との両者によって挟持され、摺動面が、支持部材3における支持鍔19とフランジ18aの両者の上面と下部ブッシュ21における受鍔25の下面、支持部材3における基体18の外周面と上下部ブッシュ21、22の円筒部28、24の内周面、環状押板23の下面と上部ブッシュ22における外向鍔29の上面との間に、それぞれ形成され、これらの円滑な摺動によって、支基11は、支持部材3に対して、回動自在となっている。
【0029】
支基11には、座シェル12を取付けるための4個の取付ボス32が設けられており、上部にクッション部材13を取付けた座シェル12を支基11の上部に配設して、下方より取付ねじ33を取付ボス32の通孔32aを挿通して、座シェル12の下面に穿設された図示しない雌ねじに螺合することにより、座シェル12、クッション部材13が、支基11に取付けられ、これら支基11、座シェル12、クッション部材13の3者により座体4が構成される。
座体4の回動の停止と解除は、図3に示すように、座体4の左右両側方に設けた医師用操作レバー14を操作することによりなされる。
【0030】
図3図5に示すように、左右の医師用操作レバー14は、左右方向の横杆34によって連結され、この横杆34は、支基11の下面に設けられた左右方向の横杆嵌入溝部35内に遊嵌状態で嵌入され、座体4の下面に露呈している。前記横杆34は、支基11内部に配設された前後方向の縦杆36の前部がL字状に折り曲げられて形成された連結部36aが、前記横杆嵌入溝部35の側壁面に設けられた切欠孔37を通して支基11内部から外部に露出され、この連結部36aと横杆34とが溶接などで固着されることにより、縦杆36と一体化されている。
【0031】
縦杆36の後方端は、左右方向の軸杆38の一遊端と固着されている。この軸杆38は、支基11内部の取付筒部17よりも後方位置に取付けられた下向きコ字状の軸杆保持部39に軸支され、医師用操作レバー14を上下方向に操作することにより、縦杆36は、軸杆38を軸として、所定範囲で上下方向に回動し得るようになっている。この縦杆36には、支基11の中央に設けられた取付筒部17に向けて第一連係片40が付設されている。
【0032】
一方、図3図7に示すように、前記取付筒部17の上面における合致孔27の位置には、前記合致孔27を跨ぐようにして、下向きコ字状の係合部材保持板41が取付けられている。
【0033】
この係合部材保持板41の天板41aの下方に位置する合致孔27には、前記合致孔27に上下動可能に嵌合する係合部材としての係合ピン42が配設されている。
前記合致孔27と、下部ブッシュ21の通孔25bとの位置は、整合している。
この係合ピン42と前記係合部材保持板41の天板41aとの間には、付勢手段としてスプリングばね43が配設され、係合ピン42の上部が前記スプリングばね43の縮径された下部に内嵌状態で圧入されるとともに、スプリングばね43の上端が前記係合部材保持板41の天板41a下面に当接している。このため係合ピン42は、スプリングばね43により、常時下向きに付勢されている。
【0034】
前記係合ピン42には、第二連係片44が付設されている。この第二連係片44の遊端は、医師用操作レバー14で操作される前記縦杆36に付設された第一連係片40の遊端の上方に位置した状態で、相互に当接している。
係合ピン42は、スプリングばね43によって常時下向きに付勢されているため、座体4を回動させて、図7に示すように、下部ブッシュ21の通孔25bと整合している、支基11の合致孔27の位置を、被係合部材としての支持部材3の被係合孔20の位置と整合させると、係合ピン42は自動的に係合ピン42の下部の係合部42aが被係合孔20に嵌入し、座体4が回動不能に停止される。
【0035】
この座体4の回動が停止した状態において、第8図に示すように、医師用操作レバー14を上方に操作すると、縦杆36が上方に回動し、縦杆36に付設された第一連係片40が、第二連係片44を押し上げて、係合ピン42の係合部42aが、被係合孔20から脱離し、座体4の回動が解除され、回動可能となる。
【0036】
また、座体4を支持部材3に対して、相対的に回動させて、座体4の回動が解除されている状態においては、図9に示すように、係合ピン42の下端は、支持部材3における有底な支持鍔19の底板19aの上面に当接している。
この底板19aの上面は、被係合孔20の底面20aよりも上方に位置しているため、座体4の回動の解除時の医師用操作レバー14の位置は、座体4の回動の停止時の医師用操作レバー14の位置よりも上方となっている。
【0037】
また、支持部材3において、被係合孔20の上面から支持鍔19の底板19aの上面に至る部分は、なだらかな下りの傾斜面20bとなっているため、座体4の回動の解除状態から停止状態に移行する場合にも係合ピン42が前記傾斜面20bに沿って円滑に上昇するとともに、スプリングばね43の作用により、座体4を回動させるときの負荷にも変化が生じ、座体4の回動の停止位置を予期することができる。
【0038】
以上説明したように、本発明における座体4の回動停止手段は、座体4に支持された医師用操作レバー14によって操作される係合部材としての係合ピン42と、脚体2に固定された被係合部材としての支持部材3とより構成され、係合ピン42と支持部材3の被係合孔20との係脱により、座体4の回動の停止と解除がなされる。また、医師用操作レバー14の上下方向の位置は、回動の停止時と解除時によって異なり、解除時の方が停止時よりも上方に位置している。
【0039】
一方、図3に示すように、座体4の上下方向の位置調節は、座体4の左右側方のいずれか一側方にのみ設けた上下位置操作レバー15を操作することによりなされる。すなわち、上下位置操作レバー15によって、支基11の内部に取付けた連係杆保持板45に保持される連係杆46を介して、周知の手段でガススプリング10を操作することにより、座体4の上下方向の位置が調節される。上下位置操作レバー15は、医師用操作レバー14よりも後方に配設される。上下位置操作レバー15に連結される前記連係杆46は、座体4の下面から支基11下面に穿設された図示しない嵌入孔を通して、支基11の内部に嵌入されている。
本発明は、このように両操作レバーの外観上の差異をより明確にすることにより、患者と対向して診察しようとする医師が、患者が着座あるいは立ち上がろうとする際などに備え、使用前に予め座を固定しておいたり、あるいは使用直前に回動制御操作レバーを操作して座を固定するなど、予め回動制御操作レバーにより、回動停止手段を、座体の回動を停止させるように操作することにより、着座あるいは立上がりのときに、患者が転倒したりすることを、より一層有効に防止することができる。
また、診察台やベッド等から当該椅子に乗り移る際にも、医師または看護士等が回動制御操作レバーを操作することにより、患者を負傷させてしまう危険性をより一層有効に防止することができる。
【0040】
また、図3図4に示すように、支基11の後部には、腰支持体取付板47が固定されており、この腰支持体取付板47を介して、支基11に腰支持体5が取付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
医師用操作レバー14の上下方向の位置を、座体4の回動の停止時と解除時によって、より大きく異なるようにするためには、実施形態において示した支持部材3の形態における支持鍔19を、有底浅筒状のものではなく、相応の厚みのある円板状のものとしてもよい。また、座体4の停止時と解除時によって、医師用操作レバー14の前後方向の位置を異なるようにしてもよい。さらに、座体4の回動停止手段を、座体4を単一の特定位置に停止させるものでなく、複数の適所の位置において停止させるようにするなど、適宜、設計変更することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 患者用椅子
2 脚体
3 支持部材(被係合部材)
4 座体
5 腰支持体
6 肘掛け
7 脚底板
8 脚支柱
9 脚管
10 ガススプリング
11 支基
12 座シェル
13 クッション部材
14 医師用操作レバー(回動制御操作レバー)
15 上下位置操作レバー
16 取付孔
17 取付筒部
18 基体
18a フランジ
18b ねじ孔
19 支持鍔
19a 座板
20 被係合孔
20a 底面
20b 傾斜面
21 下部ブッシュ
22 上部ブッシュ
23 環状押板
24 円筒部
25 受鍔
25a 係止突起
25b 通孔
26 係止孔
27 合致孔
28 円筒部
29 外向鍔
30 通孔
31 止めねじ
32 取付ボス
32a 通孔
33 取付ねじ
34 横杆
35 横杆嵌入溝部
36 縦杆
36a 連結部
37 切欠孔
38 軸杆
39 軸杆保持部
40 第一連係片
41 係合部材保持板
41a 天板
42 係合ピン(係合部材)
42a 係合部
43 スプリングばね
44 第二連係片
45 連係杆保持板
46 連係杆
47 腰支持体取付板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9