【文献】
Christoph Kolbitsch et al.,Cardiac function assessment without ECG using image-based navigation,Proc.Intl.Soc.Mag.Reson.Med.20(2012),2012年 5月,P.3849
【文献】
Junmin Liu et al.,Rapid Six-Degree-of-Freedom Motion Detection Using Prerotated Baseline Spherical Navigator Echoes,Magnetic Resonance in Medicine,2010年 9月24日,vol.65,P.506-514
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体動する部位に設定された複数のスライスの各々からイメージングデータとナビゲータ信号とを収集するためのシーケンスを実行する磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
前記複数のスライスのうちの2つ以上のスライスの各々から収集されたナビゲータ信号の大きさを反映する特性値を算出し、前記特性値に基づいて被検体の体動情報を含む生体信号を求める処理を計算機に実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0012】
マグネット2は、被検体11が収容されるボア21を有している。またマグネット2には、超伝導コイル、勾配コイル、RFコイルなど(図示せず)が内蔵されている。超伝導コイルは静磁場を印加し、勾配コイルは勾配磁場を印加し、RFコイルはRFパルスを印加する。
【0013】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体11はボア21に搬送される。
【0014】
受信コイル4は、被検体11の腹部から胸部に渡って取り付けられている。受信コイル4は、被検体11からの磁気共鳴信号を受信する。
【0015】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、制御部8、操作部9、および表示部10などを有している。
【0016】
送信器5はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイルに電流を供給する。受信器7は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。尚、マグネット2、受信コイル4、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7を合わせたものがスキャン手段に相当する。
【0017】
制御部8は、表示部10に必要な情報を伝送したり、受信器7から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。制御部8は、呼吸信号算出手段81および判断手段82などを有している。
【0018】
呼吸信号算出手段81は、ナビゲータ信号に基づいて呼吸信号を算出する。
判断手段82は、イメージングデータを受け入れるか、イメージングデータの受入れを拒否するかを判断する。
制御部8は、呼吸信号算出手段81および判断手段82を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0019】
操作部9は、オペレータにより操作され、種々の情報を制御部8に入力する。表示部10は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0020】
図2は、第1の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第1の形態では、ローカライズスキャンLSと、本スキャンMSとが実行される。
【0021】
図3は、ローカライズスキャンLSの説明図である。
ローカライザスキャンLSは、被検体の肺および肝臓を含む部位の画像Dを取得するためのスキャンである。ローカライザスキャンLSでは、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像が取得される。
図3では、ローカライザスキャンLSにより取得された画像Dとして、コロナル画像のみが示されている。
【0022】
オペレータは、画像Dに基づいてスライスを設定する。
図4に、オペレータによって設定されたn枚のスライスL
1〜L
nを概略的に示す。スライスL
1〜L
nを設定した後、本スキャンMSが実行される。
【0023】
図5は本スキャンMSの説明図である。
本スキャンMSは、マルチスライス法により、n枚のスライスL
1〜L
nの画像を取得するためのスキャンである。本スキャンMSでは、先ず、期間P
1において、スライスL
1〜L
nの画像を取得するためのシーケンスC1〜Cnが実行される。
図5に、シーケンスC1の具体例が示されている。シーケンスC1は、DCセルフナビゲータ法により、ナビゲータ信号AとイメージングデータBとを収集するように構成されている。
【0024】
シーケンスC1は、スライスL
1を励起するためのRFパルスαを有している。RFパルスαによって励起されたスライスL
1からイメージングデータBが収集される。また、RFパルスαは、イメージングデータBを収集するだけでなく、ナビゲータ信号Aを収集するためにも使用される。ナビゲータ信号Aは、k空間の中心のデータであり、勾配磁場GxおよびGyが印加される直前に設けられた待ち時間T
waitの間に収集される。待ち時間T
waitは、例えば20μsである。
【0025】
シーケンスC1を実行した後、スライスL
2〜L
nの画像を取得するためのシーケンスC2〜Cnが順に実行される。シーケンスC2〜Cnは、RFパルスαの励起周波数を除いて、シーケンスC1と同じシーケンスチャートで表される。したがって、期間P
1では、シーケンスC1〜Cnの各々を実行するたびに、ナビゲータ信号AおよびイメージングデータBが収集される。
【0026】
期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行した後、次の期間P
2でもシーケンスC1〜Cnが実行される。以下同様に、シーケンスC1〜Cnが繰り返し実行される。
図5には、期間P
1〜P
mにおいて実行されるシーケンスC1〜Cnが示されている。尚、シーケンスC1〜Cnの位相エンコード量は、期間ごとに変化する。
【0027】
次に、本スキャンMSにより収集されたイメージングデータBをk空間に配置する手順の一例について説明する。
【0028】
本スキャンMSでは、先ず、期間P
1において、シーケンスC1〜Cnが実行される(
図6参照)。
【0029】
図6は、期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
図6には、期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行することにより収集されるナビゲータ信号AとイメージングデータBとが概略的に示されている。尚、
図6では、期間P
1で得られる複数のナビゲータ信号Aを区別するために、符号Aには、添え字「11」、「12」、・・・「1j」、・・・「1n」を付してある。同様に、イメージングデータBを区別するために、符号Bにも、添え字「11」、「12」、・・・「1j」、・・・「1n」を付してある。
【0030】
また、
図6には、期間P
1におけるスライスL
1〜L
nと肝臓との位置関係が概略的に示してある。以下、
図6について説明する。
【0031】
期間P
1では、先ず、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、ナビゲータ信号A
11と、イメージングデータB
11とが収集される。イメージングデータB
11は、スライスL
1のky=32のラインのデータである。シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2が実行される。
【0032】
シーケンスC2を実行することにより、ナビゲータ信号A
12と、イメージングデータB
12とが収集される。イメージングデータB
12は、スライスL
2のky=32のラインのデータである。
【0033】
以下同様に、スライスL
3〜L
nの各々からナビゲータ信号およびイメージングデータを収集するためのシーケンスが実行される。例えば、スライスL
jのデータを収集する場合、シーケンスCjが実行される。シーケンスCjを実行することにより、ナビゲータ信号A
1jと、イメージングデータB
1jとが収集される。イメージングデータB
1jは、スライスL
jのky=32のラインのデータである。そして、期間P
1の最後に、スライスL
nのデータを収集するためのシーケンスCnが実行される。シーケンスCnを実行することにより、ナビゲータ信号A
1nと、イメージングデータB
1nとが収集される。イメージングデータB
1nは、スライスL
nのky=32のラインのデータである。
【0034】
したがって、期間P
1の間に、スライスL
1〜L
nのky=32のデータを収集することができる。次に、期間P
2に移行する。
【0035】
図7は期間P
2においてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
図7では、期間P
2で得られる複数のナビゲータ信号Aを区別するために、符号Aには、添え字「21」、「22」、・・・「2j」、・・・「2n」を付してある。同様に、イメージングデータBを区別するために、符号Bにも、添え字「21」、「22」、・・・「2j」、・・・「2n」を付してある。
【0036】
また、
図7には、期間P
2におけるスライスL
1〜L
nと肝臓との位置関係が概略的に示してある。被検体の呼吸により肝臓は動くので、期間P
2における肝臓の位置は、期間P
1における肝臓の位置に対してSI方向にずれている。以下、
図7について説明する。
【0037】
期間P
2では、先ず、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、ナビゲータ信号A
21と、イメージングデータB
21とが収集される。イメージングデータB
21は、スライスL
1のky=31のラインのデータである。シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2〜Cnが順に実行される。したがって、期間P
2の間に、スライスL
1〜L
nのky=31のデータを収集することができる。
【0038】
期間P
2でky=31のデータを収集した後も、残りのkyビューのデータを収集するためのシーケンスC1〜Cnが繰り返し実行される(
図8参照)。
【0039】
図8は期間P
mにおいてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
図8では、期間P
mで得られる複数のナビゲータ信号Aを区別するために、符号Aには、添え字「m1」、「m2」、・・・「mj」、・・・「mn」を付してある。同様に、イメージングデータBを区別するために、符号Bにも、添え字「m1」、「m2」、・・・「mj」、・・・「mn」を付してある。
また、
図8には、期間P
mにおけるスライスL
1〜L
nと肝臓との位置関係が概略的に示してある。以下、
図8について説明する。
【0040】
期間P
mでは、先ず、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、ナビゲータ信号A
m1と、イメージングデータB
m1とが収集される。イメージングデータB
m1は、スライスL
1のky=−32のラインのデータである。シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2〜Cnが順に実行される。したがって、期間P
mの間に、スライスL
1〜L
nのky=−32のデータを収集することができる。
【0041】
また、第1の形態では、各期間において収集されたナビゲータ信号に基づいて、被検体の呼吸信号を作成している。以下に、第1の形態において、どのようにして呼吸信号を作成しているかについて説明する。
【0042】
尚、呼吸信号の作成方法を説明するに当たり、先ず、スライスL
1〜L
nから収集されたナビゲータ信号の違いについて説明する。以下では、説明の便宜上、スライスL
1〜L
nのうち、代表して、2つのスライスL
2およびL
nを取り上げて、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2と、スライスL
nから収集されたナビゲータ信号A
1n〜A
mnとの違いについて説明する。
【0043】
(1)スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2について
肝臓は被検体の呼吸によりSI方向に体動する。したがって、肝臓の上端は、被検体の呼吸運動に応じてSI方向に移動する。
図8には、被検体の呼吸による肝臓の上端のSI方向の移動範囲を、符号「W」で示してある。肝臓がSI方向に移動するので、スライスL
2に対する肝臓の位置は、各期間によって異なる。したがって、同一のスライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2であっても、期間に応じて、ナビゲータ信号の波形は異なる。例えば、期間P
1では、スライスL
2は肺を横切っているが肝臓は横切っておらず、一方、期間P
2では、スライスL
2は肝臓を横切っている。肺は空気を含んでいるので、肺領域からの信号は低信号となる。したがって、期間P
1においてスライスL
2から得られたナビゲータ信号A
12は、肺の空気の影響で低信号となる。これに対し、期間P
2においてスライスL
2から得られたナビゲータ信号A
22は、ナビゲータ信号A
12よりも肺の空気の影響が小さいので、高信号となる。したがって、スライスL
2のナビゲータ信号A
12〜A
m2は、被検体の呼吸に応じて大きく変化することが分かる。
【0044】
(2)スライスL
nから収集されたナビゲータ信号A
1n〜A
mnについて
肝臓は被検体の呼吸によりSI方向に体動するので、スライスL
nに対する肝臓の位置は、各期間によって異なる。しかし、スライスL
nは、スライスL
2よりも肺から離れているので、肝臓が動いても肺がスライスL
nを横切ることはない。したがって、スライスL
nから収集されたナビゲータ信号A
1n〜A
mnは、肺の空気の影響を受けないので、ナビゲータ信号A
1n〜A
mnには大きな信号値の差は見られない。
【0045】
上記のように、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2は、被検体の呼吸によって大きく変化するが、一方、スライスL
nから収集されたナビゲータ信号A
1n〜A
mnは、被検体が呼吸しても大きな変化は見られない。したがって、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2は、スライスL
nから収集されたナビゲータ信号A
1n〜A
mnよりも、被検体の呼吸運動を大きく反映している。このような理由から、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2を用いることにより、呼吸信号を作成することができる。そこで、以下に、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2を用いて呼吸信号を作成する例について説明する。
【0046】
図9は、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2を用いて呼吸信号を作成する例を示す図である。
図9では、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号A
12〜A
m2の積分値S
12〜S
m2を計算している。ナビゲータ信号が高信号の場合、積分値は大きくなる。一方、ナビゲータ信号が低信号の場合、積分値は小さくなる。したがって、積分値S
12〜S
m2を呼吸信号として用いることができる。
【0047】
しかし、スライスの設定条件(例えば、スライス位置、スライス枚数、スライス間隔)は、撮影の目的などに依存するので、スライスL
2が必ずしも呼吸信号を作成する上で最適でない場合がある。
図10にその例を示す。
図10では、スライスL
2は、肝臓の上端が動く範囲Wから外れているので、スライスL
2のみから収集されたナビゲータ信号は肝臓が動いても大きな変化はない。したがって、
図10の場合、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号を用いても、高品質な呼吸信号を得ることができない。
【0048】
このように、1枚のスライスから収集されたナビゲータ信号に基づいて呼吸信号を作成すると、スライス位置に応じてナビゲータ信号が不安定となり、高品質な呼吸信号を得ることができない。そこで、第1の形態では、以下のようにして呼吸信号を求める。
【0049】
図11は、第1の形態において呼吸信号を求めるときの説明図である。
第1の形態では、1枚のスライスのナビゲータ信号だけでなく、複数枚のスライスのナビゲータ信号に基づいて、呼吸信号を求める。
図11では、n枚のスライスL
1〜L
nのうち、肝臓の上端側に位置するj枚のスライスL
1〜L
jに着目し、j枚のスライスL
1〜L
jから収集されたナビゲータ信号に基づいて呼吸信号を作成する例が示されている。具体的には、以下の方法で呼吸信号を作成する。
【0050】
先ず、呼吸信号算出手段81(
図1参照)は、期間P
1において収集されたj枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号A
11〜A
1jの積分値S
11〜S
1jを計算する。
【0051】
積分値S
11〜S
1jを計算した後、これらの積分値S
11〜S
1jを合成する。
図11では、積分値S
11〜S
1jを加算することにより、積分値を合成する。このようにして得られた加算値r1が、期間P
1における被検体の呼吸信号r=r
1として使用される。
図11では、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号A
11〜A
1jを用いて呼吸信号rを作成している。したがって、
図10に示すようにスライスL
2が肝臓の上端の動く範囲Wから外れていても、他のスライスが肝臓の上端の動く範囲Wに含まれるので、被検体の呼吸状態が反映された呼吸信号を得ることができる。
【0052】
以下同様に、他の期間P
2〜P
mでも、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号の積分値を加算し、呼吸信号を作成する。したがって、撮影部位のイメージングデータを収集しながら、呼吸信号を得ることができる。
図12に、期間P
1〜P
mの間における呼吸信号r
1〜r
mを示す。
【0053】
尚、撮影部位は呼吸により体動するので、期間P
1〜P
mに収集されたイメージングデータを画像再構成用のデータとして使用すると、画像に体動アーチファクトが現れる。そこで、第1の形態では、アーチファクトを軽減するため、イメージングデータを再構成用のデータとして受け入れるか、それとも、イメージングデータの受入れを拒否するかを判断している。以下に、その判断方法について説明する。
【0054】
図13はイメージングデータの受入れ、拒否を判断する方法の説明図である。
判断手段82(
図1参照)は、先ず、被検体の息の吐き終わりの位置に相当する信号値x0を求める。息の吐き終わりの信号値x0は、例えば、呼吸信号のピーク値を参考にして求めることができる。次に、呼吸信号の最大値と最小値との差ΔDを求める。そして、息の吐き終わりの信号値x0を中心として、差ΔDのx%(例えば、x=10)の範囲AWを設定する。このようにして設定された範囲AWを、イメージングデータBを受け入れる許容範囲AWと定める。ここでは、判断手段82は、呼吸信号が許容範囲AWに含まれている場合、イメージングデータを受け入れると判断し、一方、呼吸信号が許容範囲AWに含まれていない場合、イメージングデータを拒否すると判断する。
図13を見ると、期間P
1の呼吸信号r
1は許容範囲AWに含まれていないので、期間P
1に収集されたイメージングデータB
11〜B
1nは拒否される。一方、期間P
2の呼吸信号r
2は許容範囲AWに含まれているので、期間P
2に収集されたイメージングデータB
21〜B
2nは受け入れると判断される。以下同様に、各期間の呼吸信号が許容範囲AWに含まれているか否に応じて、イメージングデータを受け入れるか拒否するかを判断する。呼吸信号が許容範囲AWに含まれている場合、肝臓の位置のばらつきは十分に小さいと考えられるので、呼吸信号が許容範囲AWに含まれているイメージングデータを受け入れることにより、体動アーチファクトを軽減することができる。
【0055】
ただし、第1の形態では、ky=−32〜32のイメージングデータを用いて画像を再構成する必要がある。そこで、拒否されたイメージングデータは、期間P
mの後で再収集する。例えば、ky=32のイメージングデータB
11〜B
1nは拒否されている。そこで、期間P
mが終了した後、次の期間P
m+1で、スライスL
1〜L
nからky=32のイメージングデータB
11〜B
1nを再収集する(
図14参照)。
【0056】
図14は、ky=32のイメージングデータB
11〜B
1nを再収集するときの説明図である。
期間P
m+1では、イメージングデータB
11〜B
1nを収集するためのシーケンスC1〜Cnが実行される。シーケンスC1〜Cnを実行することにより、ナビゲータ信号A
11〜A
1nと、イメージングデータB
11〜B
1nとが再収集される。
【0057】
呼吸信号算出手段81は、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号A
11〜A
1jの各々の積分値S
11〜S
1jを求め、これらの積分値S
11〜S
1jを加算する。これにより、期間P
m+1における呼吸信号r
m+1を得ることができる。
【0058】
次に、判断手段82は、呼吸信号r
m+1が許容範囲AWに含まれているか否かを判断する。
図14では、呼吸信号r
m+1は許容範囲AWに含まれていないので、期間P
m+1で収集されたイメージングデータB
11〜B
1nは画像再構成用のデータとして受け入れることができない。したがって、イメージングデータB
11〜B
1nは拒否される。この場合、引き続いて、次の期間P
m+2においても、イメージングデータB
11〜B
1nを再収集するためのシーケンスC1〜Cnが実行される(
図15参照)。
【0059】
図15は、期間P
m+2においてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
期間P
m+2でも、期間P
m+1と同様に、イメージングデータB
11〜B
1nを再収集するためのシーケンスC1〜Cnが実行される。シーケンスC1〜Cnを実行することにより、ナビゲータ信号A
11〜A
1nと、イメージングデータB
11〜B
1nとが再収集される。
【0060】
呼吸信号算出手段81は、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号A
11〜A
1jの各々の積分値S
11〜S
1jを求め、これらの積分値S
11〜S
1jを加算する。これにより、期間P
m+2における呼吸信号r
m+2を得ることができる。
【0061】
次に、判断手段82は、呼吸信号r
m+2が許容範囲AWに含まれているか否かを判断する。
図15では、呼吸信号r
m+2は許容範囲AWに含まれているので、期間P
m+2で収集されたイメージングデータB
11〜B
1nは画像再構成用のデータとして受け入れると判断される。
【0062】
以下同様に、他の拒否されたイメージングデータを再収集する場合も、呼吸信号が許容範囲AWに含まれるまでシーケンスが繰り返し実行される。したがって、呼吸信号が許容範囲AWに含まれているときに収集されたky=−32〜32のイメージングデータを、画像再構成用のデータとして得ることができる。
【0063】
このようにして、拒否されたイメージングデータを再収集した後、画像再構成を行う。画像再構成に使用されたky=−32〜32のイメージングデータは、呼吸信号が許容範囲AWに含まれているときに収集されているので、体動アーチファクトが低減された画像を得ることができる。
【0064】
また、第1の形態では、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号を用いて呼吸信号を作成している。肝臓を撮影する場合、スライスL
1〜L
nは、一般的に、肝臓の上端から下端を覆うように設定されるので、肝臓の上端側に位置するj枚のスライスL
1〜L
jのうちの少なくとも1枚のスライスは、肝臓の上端が動く範囲Wに含まれる。したがって、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号を用いて呼吸信号を作成することにより、高品質な呼吸信号を得ることができる。
【0065】
また、第1の形態では、n枚のスライスうちのj枚のスライスから収集されたナビゲータ信号を用いて呼吸信号を求めている。しかし、n枚のスライス全てのナビゲータ信号を用いて呼吸信号を求めてもよい。上記のように、スライスL
1〜L
nは肝臓の上端から下端を覆うように設定されるので、n枚のスライスL
1〜L
nのうちの少なくとも1枚のスライスは、肝臓の上端が動く範囲Wに含まれる。したがって、n枚のスライスL
1〜L
n全てのナビゲータ信号を用いても、呼吸信号を得ることができる。ただし、肝臓の下端側に位置するスライスは、肝臓の上端の動く範囲Wに含まれないので、肝臓の下端側に位置するスライスから収集されたナビゲータ信号は、被検体が呼吸しても大きな変化は見られない。したがって、より高品質な呼吸信号を得るためには、スライスL
1〜L
nのうち肝臓の上端側に位置するスライスのナビゲータ信号のみを用いて呼吸信号を求めることが望ましい。
【0066】
尚、第1の形態では、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号の積分値を加算することにより呼吸信号を求めている。しかし、スライスの位置に応じて積分値を重み付けし、重み付けされた積分値を加算することにより呼吸信号を求めてもよい(
図16参照)。
【0067】
図16は、スライスの位置に応じて積分値を重み付けし、重み付けされた積分値に基づいて呼吸信号を作成する方法の説明図である。
先ず、呼吸信号算出手段81は、期間P
1において収集されたj枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号A
11〜A
1jの積分値S
11〜S
1jを計算する。
【0068】
積分値S
11〜S
1jを計算した後、これらの積分値S
11〜S
1jを、以下の式を用いて重付け加算する。
【数1】
【0069】
積分値S
1qは係数kqで重み付けされる。重付け係数kqの値は、スライス位置に応じて異なるように設定されている。具体的には、スライスL
1の重付け係数k1が最も大きく、スライスL
1からスライスL
jに向かうにつれて重付け係数が小さくなるように設定されている。このようにして重み付けされた積分値を加算することにより積分値を合成し、呼吸信号r=r
1が求められる。
【0070】
以下同様に、他の期間P
2〜P
mでも、j枚のスライスL
1〜L
jのナビゲータ信号の積分値を重付け係数kqで重み付けし、重み付けされた積分値を加算する。したがって、撮影部位のイメージングデータを収集しながら、呼吸信号を得ることができる。
【0071】
肝臓を撮影する場合、一般的には、肝臓の上端から下端を覆うようにn枚のスライスL
1〜L
nが設定される。したがって、j枚のスライスL
1〜L
jのうち肺側(S側)に設定されたスライス(例えば、スライスL
2)は、肝臓の上端の動く範囲Wに含まれるので、スライスL
2から収集されたナビゲータ信号は、被検体の呼吸により大きく変化する。一方、スライスL
jは、スライスL
1〜L
jの中で、肺から最も離れた位置に設定されている。したがって、スライスL
jは、肝臓の上端の動く範囲Wに含まれる可能性が最も低い。したがって、スライスL
1からスライスL
jに向かうに従って重付け係数kqを小さくすることにより、呼吸の影響を受けやすいナビゲータ信号は大きく重み付けされるので、更に高品質な呼吸信号を得ることができる。
【0072】
(2)第2の形態
第1の形態では、本スキャンMSにより収集されたナビゲータ信号に基づいて呼吸信号の許容範囲AWを設定する例について説明した。第2の形態では、本スキャンMSの前に、呼吸信号の許容範囲AWを設定するためのプレスキャンを実行する例について説明する。尚、MR装置のハードウエア構成は、第1の形態と同じである。
【0073】
図17は、本スキャンMSの前にプレスキャンPSを実行する例の説明図である。
プレスキャンPSでは、本スキャンMSと同様に、シーケンスC1〜Cnが繰り返し実行される。呼吸信号算出手段81は、期間ごとに、スライスL
1〜L
jのナビゲータ信号の積分値を加算(又は重み付け加算)し、呼吸信号を算出する。呼吸信号を算出した後、息の吐き終わりの位置に相当する信号値を求め、呼吸信号の許容範囲AWを設定する。尚、プレスキャンPSでは、ナビゲータ信号の他にイメージングデータも収集されるが、プレスキャンPSで収集されるイメージングデータは、画像再構成用のデータとしては使用されず破棄される。
【0074】
呼吸信号の許容範囲AWを設定した後、本スキャンMSを実行する。本スキャンMSでは、第1の形態と同様に、シーケンスC1〜Cnを繰り返し実行し、スライスL
1〜L
jのナビゲータ信号に基づいて呼吸信号を算出する。呼吸信号が許容範囲AWに含まれている場合は、イメージングデータを受け入れ、呼吸信号が許容範囲AWに含まれていない場合は、イメージングデータの受入れを拒否する。拒否された場合は、呼吸信号が許容範囲AWに含まれるまで、シーケンスC1〜Cnを繰り返し実行する。したがって、呼吸信号が許容範囲AWに含まれたときに収集されたイメージングデータのみを用いて画像が再構成されるので、体動アーチファクトが低減された画像を得ることができる。
【0075】
第1および第2の形態で説明したように、複数枚のスライスから収集されたナビゲータ信号の積分値を合成することにより、高品質な呼吸信号を得ることができる。このことを検証するため、ファントムを用いて実験を行った。以下に、実験結果について説明する。
【0076】
図18および
図19は実験結果を示す図である。
図18(a)は、実験に使用されたファントムFと、ファントムFに対して設定された10枚のスライスL
1〜L
10を示す図である。ファントムFをz方向に往復運動させながら、各スライスからナビゲータ信号AおよびイメージングデータBを収集した。
図18(b1)、(b2)、(b3)は、それぞれ、スライスL
1、L
3、L
5のナビゲータ信号Aの積分値の時間変化を表す波形を示す。
図18(b1)〜(b3)を比較すると、スライスL
3では、積分値の最大値と最小値との差ΔDはΔD≒550であり、ファントムFの移動量に応じてナビゲータ信号Aの積分値が大きく変化していることがわかる。しかし、スライスL
1ではΔD≒1.5であり、スライスL
5ではΔD≒150であるので、スライスL
3と比較するとΔDの値が小さいことがわかる。したがって、ΔDの値はスライス位置に応じて大きく異なることがわかる。
【0077】
図18(c1)は、10枚のスライスL
1〜L
10の各々から収集されたナビゲータ信号Aの積分値を合成(加算)することにより得られた信号を示す。
図18(c2)は、5枚のスライスL
1〜L
5の各々から収集されたナビゲータ信号Aの積分値を合成(加算)することにより得られた信号を示す。また、
図18(c3)は、5枚のスライスL
1〜L
5の各々から収集されたナビゲータ信号Aの積分値を合成(重み付け加算)することにより得られた信号を示す。
【0078】
図18(c1)、(c2)、(c3)は、それぞれ、ΔD≒1600、2400、650である。したがって、複数のスライスの積分値を加算(又は重み付け加算)することにより、ファントムの移動量を十分に反映した信号が得られることがわかる。
【0079】
図19は、ファントムFのスライスL
5の画像を示す図である。
図19(a)は、ファントムの移動に対して同期を行わずに収集されたイメージングデータを用いて作成されたスライスL
5の画像を示す図である。
図19(b1)は、
図18(c1)の信号に基づいてイメージングデータの受入れ、拒否を判断した場合のスライスL
5の画像を示す図である。
図19(b2)は、
図18(c2)の信号に基づいてイメージングデータの受入れ、拒否を判断した場合のスライスL
5の画像を示す図である。
図19(b3)は、
図18(c3)の信号に基づいてイメージングデータの受入れ、拒否を判断した場合の画像を示す図である。
【0080】
図19(a)の画像と、
図19(b1)〜(b3)の画像とを比較すると、
図19(a)の画像は体動アーチファクトが目立っているが、
図19(b1)〜(b3)の画像は体動アーチファクトが軽減されていることがわかる。
【0081】
また、
図19(b1)の画像と、
図19(b2)および(b3)の画像とを比較すると、
図19(b2)および(b3)の画像が、
図19(b1)の画像よりも、体動アーチファクトが更に軽減されている。したがって、10枚のスライスL
1〜L
10の全てのナビゲータ信号を合成するよりも、ファントムFの上端側に位置する5枚のスライスL
1〜L
5のナビゲータ信号を合成した方が、体動アーチファクトを更に軽減することができる。
【0082】
尚、第1および第2の形態では、ナビゲータ信号の積分値を求め、積分値を合成することにより呼吸信号を求めている。しかし、ナビゲータ信号の積分値の代わりに、ナビゲータ信号の大きさを表す別の特性値(例えば、ナビゲータ信号の最大値)を求め、別の特性値を合成することにより呼吸信号を求めてもよい。肝臓の上端側に位置するスライスから収集されたナビゲータ信号は、肝臓の動きに応じて信号値が大きく変化する。したがって、ナビゲータ信号の大きさを表す特性値(ナビゲータ信号の積分値や最大値)を用いることにより、呼吸信号を得ることができる。
【0083】
また、第1および第2の形態では、肝臓を撮影する場合について説明されている。しかし、本発明は、肝臓を撮影する場合に限定されることはなく、肝臓以外の体動する部位(例えば、心臓)を撮影する場合にも適用することができる。例えば、心臓を撮影する場合、シーケンスを実行することにより収集されたナビゲータ信号を合成することにより、被検体の心拍による体動情報を含む信号を得ることができる。したがって、心臓の動きによるアーチファクトを低減することができる。このように、本発明は、呼吸信号を求める場合に限定されることはなく、被検体の体動情報を含む別の生体信号(例えば、被検体の心拍による体動情報を含む信号)を求める場合にも適用することができる。