特許第6356417号(P6356417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356417
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷ヘッド、及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/15 20060101AFI20180702BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B41J2/15
   B41J2/01 201
   B41J2/01 213
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-263697(P2013-263697)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-120246(P2015-120246A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年8月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−149010(JP,A)
【文献】 特開2013−256075(JP,A)
【文献】 特開2010−201826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、
予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記ヘッド部に行わせる副走査駆動部と
を備え、
前記ヘッド部は、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を3列以上有し、
前記3列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記3列以上の前記ノズル列は、同一色のインク滴を吐出し、
前記ヘッド部における前記ノズルの前記副走査方向における密度を考えた場合、前記3列以上の前記ノズル列は、それぞれの前記ノズル列の端の前記ノズルが存在する範囲の前記密度が前記端のノズル以外の前記ノズルのみが存在する範囲の前記密度よりも小さくなるように、前記副走査方向における端の位置をずらして配設されており、
媒体に対して印刷を行う印刷動作時において、前記ノズル列について、前記インク滴を吐出しないダミーノズルを設定することなく、印刷する画像に合わせて全てのノズルを使用して、それぞれの前記ノズル列の端のノズルに対応するインク滴の前記3列以上の前記ノズル列分の着弾位置を前記副走査方向において分散させると共に、
前記副走査動作を合間に挟んで繰り返し前記主走査動作を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記3列以上の前記ノズル列から前記主走査方向に連続して並ぶいずれの3列のノズル列を選んだ場合にも、選んだ前記3列のノズル列について、前記主走査方向に沿って順番に第1列、第2列、第3列とした場合、それぞれの前記ノズル列の前記副走査方向における端の位置について、前記第1列と前記第2列との位置のずれが、前記第1列と前記第3列との位置のずれよりも大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
それぞれの前記ノズル列において、同数の複数の前記ノズルが前記副走査方向へ並んでおり、
前記3列以上のノズル列は、それぞれの前記ノズル列における端の前記ノズルの前記副走査方向における位置をずらして前記主走査方向へ並んで配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ヘッド部は、前記主走査方向に並ぶ4列以上の前記ノズル列を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、
予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせる主走査駆動部と
を備え、
前記ヘッド部は、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を3列以上有し、
前記3列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記主走査方向において隣接する前記ノズル列について、前記副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きいことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
前記3列以上のノズル列において、それぞれの前記ノズル列の前記副走査方向における端の位置と、他のそれぞれの前記ノズル列の前記副走査方向における端の位置とのずれの大きさは、いずれも、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、
予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせる主走査駆動部と
を備え、
前記ヘッド部は、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を3列以上有し、
前記3列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記主走査動作時にそれぞれの前記ノズル列により媒体上に形成するインクのドットの前記主走査方向における間隔は、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きいことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、
予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせる主走査駆動部と
を備え、
前記ヘッド部は、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を3列以上有し、
前記3列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
それぞれの前記ノズル列において、複数の前記ノズルは、一定のノズル間隔で前記副走査方向において並んでおり、
それぞれの前記ノズル列について、それぞれの前記ノズルの前記副走査方向における位置は、他の前記ノズル列におけるいずれの前記ノズルの前記副走査方向における位置ともずれており、
前記印刷装置は、前記副走査方向における解像度について、一の前記ノズル列における前記ノズル間隔に対応する解像度よりも高い解像度で印刷を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置において、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを行う印刷ヘッドであって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列であり、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を3列以上備え、
前記3列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記3列以上の前記ノズル列は、同一色のインク滴を吐出し、
前記印刷ヘッドにおける前記ノズルの前記副走査方向における密度を考えた場合、前記3列以上の前記ノズル列は、それぞれの前記ノズル列の端の前記ノズルが存在する範囲の前記密度が前記端のノズル以外の前記ノズルのみが存在する範囲の前記密度よりも小さくなるように、前記副走査方向における端の位置をずらして配設されており、
媒体に対して印刷を行う印刷動作時において、前記ノズル列について、前記インク滴を吐出しないダミーノズルを設定することなく、印刷する画像に合わせて全てのノズルを使用して、それぞれの前記ノズル列の端のノズルに対応するインク滴の前記3列以上の前記ノズル列分の着弾位置を前記副走査方向において分散させると共に、
前記副走査動作を合間に挟んで繰り返し前記主走査動作を行うことを特徴とする印刷ヘッド。
【請求項10】
インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部を用い、
予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記ヘッド部に行わせ、
前記ヘッド部は、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を3列以上有し、
前記3列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記3列以上の前記ノズル列は、同一色のインク滴を吐出し、
前記ヘッド部における前記ノズルの前記副走査方向における密度を考えた場合、前記3列以上の前記ノズル列は、それぞれの前記ノズル列の端の前記ノズルが存在する範囲の前記密度が前記端のノズル以外の前記ノズルのみが存在する範囲の前記密度よりも小さくなるように、前記副走査方向における端の位置をずらして配設されており、
媒体に対して印刷を行う印刷動作時において、前記ノズル列について、前記インク滴を吐出しないダミーノズルを設定することなく、印刷する画像に合わせて全てのノズルを使用して、それぞれの前記ノズル列の端のノズルに対応するインク滴の前記3列以上の前記ノズル列分の着弾位置を前記副走査方向において分散させると共に、
前記副走査動作を合間に挟んで繰り返し前記主走査動作を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、
予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせる主走査駆動部と
を備え、
前記ヘッド部は、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を2列以上有し、
前記2列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記主走査方向において隣接する前記ノズル列について、前記副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きいことを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置において、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行う印刷ヘッドであって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列であり、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を2列以上備え、
前記2列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記主走査方向において隣接する前記ノズル列について、前記副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きいことを特徴とする印刷ヘッド。
【請求項13】
インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部を用い、
予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせ、
前記ヘッド部は、前記主走査方向における位置を揃えた複数の前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶ前記ノズル列を2列以上有し、
前記2列以上の前記ノズル列は、前記主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれの前記ノズル列は、前記主走査方向において隣接する前記ノズル列と前記副走査方向における端の位置をずらして配設され、
前記主走査方向において隣接する前記ノズル列について、前記副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きいことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷ヘッド、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタが広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、いわゆるラインヘッドを用いて印刷をする場合について、インクジェットヘッドの高い組み立て精度を要求することなく、好適な印字結果を得ることができるとする構成が開示されている。また、従来、インクジェットプリンタにより印刷を行う方法として、所定の主走査方向への主走査動作(スキャン動作)をインクジェットヘッドに行わせるシリアル方式での印刷が広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−193654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいて、ノズルから吐出されたインク滴は、大気中を飛翔して、媒体(メディア)へ到達する。そのため、例えば飛翔中のインク滴が周囲の気流の影響を受けると、インク滴の着弾位置にずれが生じる場合がある。
【0005】
また、特に、シリアル方式で印刷を行う場合、インクジェットヘッドが移動しつつインク滴を吐出する構成となるため、インクジェットヘッドに対して相対的に大気が流れている状態でインク滴を吐出することになる。更に、シリアル方式において用いるインクジェットヘッドには、通常、主走査方向と直交する副走査方向へ多数のノズルが並ぶノズル列が形成されている。また、インクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出した場合、吐出の動作に伴う気流の変化も生じる。そのため、それぞれのノズルから吐出されるインク滴は、飛翔中に、周囲のノズルからのインク滴の吐出により生じる気流の影響も受けることになる。
【0006】
また、ノズル列において、中央部のノズルは、副走査方向における両側を他のノズルに挟まれている。一方、ノズル列の端のノズルの場合、副走査方向における一方の側にしか他のノズルが存在しない。そのため、ノズル列の端のノズルの場合、副走査方向における一方側と他方側とで受ける気流の影響に差が生じやすい。また、その結果、ノズル列の端のノズルから吐出されたインク滴においては、飛翔曲がり等が生じやすくなる。
【0007】
また、シリアル方式で印刷を行う場合、通常、例えば媒体の搬送等を行う副走査動作を合間に挟んで繰り返し主走査動作を行う。そのため、ノズル列の端のノズルのノズルで印刷を行う箇所も、主走査動作の回数に応じて多くなる。また、その結果、シリアル方式で印刷を行うインクジェットプリンタにおいては、ノズル列の端のノズルから吐出するインク滴について、着弾位置のずれ等の影響が生じやすくなる場合がある。また、例えば高解像度での印刷を行う場合、この影響により、印刷の品質が低下する場合もある。具体的には、例えば、端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置のずれにより、バンディング等が生じ、印刷の品質が低下すること等が考えられる。
【0008】
ここで、このような問題点に対しては、例えば、ノズル列の端部近傍の一部のノズルについて、インク滴を吐出しないダミーノズルに設定し、かつ、ノズル列の端部近傍のノズルで印刷をすべき領域については、複数回の主走査動作や複数のインクジェットヘッドにより、複数回重ねて印刷を行うこと等も考えられる。このように構成すれば、例えば、端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、ずれの影響を平均化することができる。また、これにより、印刷の品質の低下を抑えることができる。
【0009】
しかし、このような構成を用いた場合、ノズル列中の一部のノズルをダミーノズルに設定することにより、各回の主走査動作で使用できるノズルの数が減少することになる。また、これにより、一回の主走査動作で印刷を行う領域の副走査方向における幅も狭くなる。そして、その結果、この場合、ダミーノズルを設定する範囲の幅に応じて、印刷速度が低下することになる。
【0010】
そのため、従来、印刷の品質の低下を抑える構成として、より適切な構成が望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置、印刷ヘッド、及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をヘッド部に行わせる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する副走査動作をヘッド部に行わせる副走査駆動部とを備え、ヘッド部は、主走査方向における位置を揃えた複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を3列以上有し、3列以上のノズル列は、主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれのノズル列は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらして配設され、3列以上のノズル列は、同一色のインク滴を吐出し、ヘッド部におけるノズルの副走査方向における密度を考えた場合、3列以上のノズル列は、それぞれのノズル列の端のノズルが存在する範囲の密度が端のノズル以外のノズルのみが存在する範囲の密度よりも小さくなるように、副走査方向における端の位置をずらして配設されており、媒体に対して印刷を行う印刷動作時において、ノズル列について、インク滴を吐出しないダミーノズルを設定することなく、印刷する画像に合わせて全てのノズルを使用して、それぞれのノズル列の端のノズルに対応するインク滴の3列以上のノズル列分の着弾位置を副走査方向において分散させると共に、副走査動作を合間に挟んで繰り返し主走査動作を行う。ノズル列の列数は、好ましくは、4列以上である。また、それぞれのノズル列の端の位置は、例えば、副走査方向において、最終印刷物の解像度ピッチの整数倍だけずらされる。この場合、最終印刷物とは、例えば、印刷装置による印刷が完了した印刷物のことである。
【0012】
ノズル列について、副走査方向における端の位置とは、例えば、副走査方向における所定の一方側の端の位置である。3列以上のノズル列は、例えば、同一の色のインク滴を吐出するノズル列である。また、ヘッド部は、例えば、3列以上のノズル列を有するインクジェットヘッドを有する。ヘッド部は、例えば、複数のインクジェットヘッドにより構成される複合ヘッドであってもよい。この場合、それぞれのインクジェットヘッドは、例えば、一又は複数のノズル列を有する。
【0013】
このように構成した場合、例えば、各回の主走査動作において、媒体においてヘッド部が通過する領域に対し、複数のノズル列のノズルからインク滴を吐出することになる。そのため、このように構成すれば、例えば、複数のノズル列の吐出特性を適切に平均化することができる。また、この構成においては、それぞれのノズル列の位置が副走査方向においてずれている。そのため、例えば一のノズル列の端のノズルの副走査方向における位置は、隣のノズル列における端のノズルではなく、端以外のノズルに近くなる。また、その結果、複数のノズル列のそれぞれの端のノズルによるインク滴の着弾位置は、副走査方向にずれることになる。
【0014】
そのため、このように構成した場合、それぞれのノズル列の端のノズルに対応するインク滴の着弾位置を、副走査方向において適切に分散させることができる。また、これにより、例えば、端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、ずれの影響を適切に平均化することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、ノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、バンディング等が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、印刷の品質の低下を適切に抑えることができる。
【0015】
また、このように構成した場合、例えば、ノズル列中の一部のノズルをダミーノズルに設定することなく、ノズル列の端のノズルの影響を適切に分散させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、ノズル列中のノズルをより効率的に使用して印刷を行うこともできる。
【0016】
尚、ノズル列の数について、印刷の品質を高める観点では、列数を多くする方が好ましいとも言える。しかし、この場合、ヘッド部の構成が大きくなるという問題も生じる。そのため、実用上、ノズル列の列数は、3〜5列程度(例えば4列)が好ましいと考えられる。
【0017】
また、副走査方向に並ぶ複数列のノズル列を用いる構成について、上記の構成と一見似ている構成として、例えば、各ノズル列においてノズルが並ぶ間隔(ピッチ)よりも高解像度の印刷を行うために、2列のノズル列を用い、かつ、各ノズル列におけるノズルの位置を副走査方向において半ピッチ分ずらす構成等も考えられる。しかし、このような構成のみでは、例えば、ノズル列の端の位置のずれ方が小さいため、いずれかのノズル列における端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合、ずれの影響を十分に平均化することは難しいと考えられる。これに対し、構成1のように構成すれば、例えば、ずれの影響をより適切に平均化することができる。
【0018】
(構成2)3列以上のノズル列から主走査方向に連続して並ぶいずれの3列のノズル列を選んだ場合にも、選んだ3列のノズル列について、主走査方向に沿って順番に第1列、第2列、第3列とした場合、それぞれのノズル列の副走査方向における端の位置について、第1列と第2列との位置のずれが、第1列と第3列との位置のずれよりも大きくなっている。
【0019】
この構成において、主走査方向に沿って連続して並ぶ第1列、第2列、及び第3列のノズル列について、第1列と第2列との副走査方向における位置のずれは、第1列と第3列との位置のずれよりも大きくなっている。このずれ方は、より具体的に、ジグザグ状のずれである。このジグザグ状のずれは、例えば、ギザ状、正弦波状、又は三角波状等のずれであってよい。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズル列の端が直線上に揃うように位置をずらす場合等と比べ、ノズル列の端のノズルに対応するインク滴の着弾位置について、より視覚的に識別し難い状態で分散させることができる。また、これにより、ずれの影響をより適切に平均化することができる。また、これにより、例えば、ノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0020】
(構成3)それぞれのノズル列において、同数の複数のノズルが副走査方向へ並んでおり、3列以上のノズル列は、それぞれのノズル列における端のノズルの副走査方向における位置をずらして、主走査方向へ並んで配設される。
【0021】
このように構成すれば、例えば、それぞれのノズル列における端のノズルの位置を、適切にずらすことができる。また、これにより、例えば、ノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0022】
(構成4)ヘッド部は、主走査方向に並ぶ4列以上のノズル列を有する。このように構成すれば、例えば、端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、ずれの影響をより適切に平均化することができる。また、これにより、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0023】
(構成5)主走査方向において隣接するノズル列について、副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きい。このように構成すれば、例えば、隣接するノズル列の端のノズルの位置を十分にずらすことにより、隣接するノズル列の端のノズルの影響が重なって知覚されることをより適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0024】
(構成6)3列以上のノズル列において、それぞれのノズル列の副走査方向における端の位置と、他のそれぞれのノズル列の副走査方向における端の位置とのずれの大きさは、いずれも、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きい。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズル列の端のノズルの位置を十分にずらすことにより、ノズル列の端のノズルの影響が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0025】
(構成7)主走査動作時にそれぞれのノズル列により媒体上に形成するインクのドットの主走査方向における間隔は、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きい。このように構成すれば、例えば、一のノズル列により媒体上に形成するドットの間隔を十分に大きくすることにより、端のノズルにより主走査方向へ並べて形成するドットの状態が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0026】
(構成8)媒体に対して印刷を行う印刷動作時において、それぞれのノズル列における全てのノズルを使用して印刷を行う。このように構成すれば、例えば、一回の主走査動作で印刷を行う領域の副走査方向における幅について、ダミーノズルを設定する場合のように幅を狭くすることなく、より広い幅を設定することができる。また、これにより、例えば、印刷速度の低下を防ぎつつ、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0027】
(構成9)それぞれのノズル列において、複数のノズルは、一定のノズル間隔で副走査方向において並んでおり、それぞれのノズル列について、それぞれのノズルの副走査方向における位置は、他のノズル列におけるいずれのノズルの副走査方向における位置ともずれており、印刷装置は、副走査方向における解像度について、一のノズル列におけるノズル間隔に対応する解像度よりも高い解像度で印刷を行う。
【0028】
このように構成すれば、例えば、ノズル間隔よりも高い解像度での印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0029】
(構成10)インクジェット方式で印刷を行う印刷装置において、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行う印刷ヘッドであって、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列であり、主走査方向における位置を揃えた複数のノズルが主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶノズル列を3列以上備え、3列以上のノズル列は、主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれのノズル列は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらして配設される。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0030】
(構成11)インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部を用い、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をヘッド部に行わせ、ヘッド部は、主走査方向における位置を揃えた複数のノズルが主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶノズル列を3列以上有し、3列以上のノズル列は、主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれのノズル列は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらして配設される。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0031】
(構成12)インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をヘッド部に行わせる主走査駆動部とを備え、ヘッド部は、主走査方向における位置を揃えた複数のノズルが主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶノズル列を2列以上有し、2列以上のノズル列は、主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれのノズル列は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらして配設され、主走査方向において隣接するノズル列について、副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きい。
【0032】
このように構成した場合、例えば、隣接するノズル列の端の位置について、ずれの大きさを十分に大きくすることにより、隣接するノズル列の端のノズルの影響が重なって知覚されることをより適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えばノズル列の列数が2列の場合であっても、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0033】
(構成13)インクジェット方式で印刷を行う印刷装置において、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行う印刷ヘッドであって、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列であり、主走査方向における位置を揃えた複数のノズルが主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶノズル列を2列以上備え、2列以上のノズル列は、主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれのノズル列は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらして配設され、主走査方向において隣接するノズル列について、副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きい。このように構成すれば、例えば、構成12と同様の効果を得ることができる。
【0034】
(構成14)インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部を用い、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をヘッド部に行わせ、ヘッド部は、主走査方向における位置を揃えた複数のノズルが主走査方向と直交する副走査方向へ並ぶノズル列を2列以上有し、2列以上のノズル列は、主走査方向へ並んで配設され、かつ、それぞれのノズル列は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらして配設され、主走査方向において隣接するノズル列について、副走査方向における端の位置のずれの大きさは、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きい。このように構成すれば、例えば、構成12と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、例えば、ノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下を適切に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す正面図及び上面図である
図2】本例において用いるインクジェットヘッド150について説明をする図である。図2(a)は、インクジェットヘッド150の構成の一例を示す。図2(b)は、視覚伝達関数を示すグラフである。
図3】主走査動作時のインクジェットヘッド150の様子の一例を示す図である。
図4】3列のノズル列202−1〜4を用いる場合について、主走査動作時のインクジェットヘッド150の様子の一例を示す図である。
図5】ノズル列202−1〜4におけるノズルの並び方の一例を示す図である。
図6】ノズル列202−1〜4におけるノズルの並び方の他の例を示す図である。
図7】4列のノズル列202−1〜4を有するインクジェットヘッド150を用いる場合について、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す図である。図7(a)は、インクジェットヘッド150の構成の一例を示す。図7(b)は、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す。
図8】3列のノズル列202−1〜3を有するインクジェットヘッド150を用いる場合について、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す図である。図8(a)は、インクジェットヘッド150の構成の一例を示す。図8(b)は、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す。
図9】ヘッド部12の変形例の構成を示す図である。図9(a)は、ヘッド部12の変形例の構成の一例を示す。図9(b)は、ヘッド部12の更なる変形例の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す正面図及び上面図である。本例において、印刷装置10は、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、主走査駆動部14、副走査駆動部16、プラテン18、及び制御部20を備える。
【0038】
ヘッド部12は、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有する部分であり、印刷対象の媒体(メディア)50へインク滴を吐出することにより、媒体50への印刷を行う。本例において、ヘッド部12は、ノズル列が形成されたインクジェットヘッド150により構成されている。
【0039】
尚、ヘッド部12は、例えば、複数のインクジェットヘッド150により構成されてよい。例えば、印刷装置10によりカラー印刷を行う場合、ヘッド部12は、それぞれ異なる色のインク滴(例えば、CMYKの各色のインク滴)を吐出する複数のインクジェットヘッド150を有する。また、同一色について、複数のインクジェットヘッド150を有してもよい。ヘッド部12及びインクジェットヘッド150の構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0040】
主走査駆動部14は、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をヘッド部12に行わせる構成である。本例において、主走査駆動部14は、キャリッジ102及びガイドレール104を有する。キャリッジ102は、ノズル列と媒体50と対向させた状態でヘッド部12を保持する。ガイドレール104は、主走査方向へのキャリッジ102の移動をガイドするレールであり、制御部20の指示に応じて、主走査方向へキャリッジ102を移動させる。
【0041】
副走査駆動部16は、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ媒体50に対して相対的に移動する副走査動作をヘッド部12に行わせる構成である。本例において、副走査駆動部16は、媒体50を搬送するローラであり、主走査動作の合間に媒体50を搬送することにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。
【0042】
尚、印刷装置10の構成としては、例えば、媒体50の搬送を行わずに、位置を固定した媒体50に対してヘッド部12の側を動かすことで副走査動作を行う構成(例えば、X−Yテーブル型機)を用いることも考えられる。この場合、副走査駆動部16としては、例えば、ガイドレール104を副走査方向へ移動させることでヘッド部12を移動させる駆動部等を用いることができる。
【0043】
プラテン18は、媒体50を載置する台状部材であり、ヘッド部12と対向させて媒体50を支持する。制御部20は、例えば印刷装置10のCPUであり、例えばホストPCの指示に応じて、印刷装置10の各部の動作を制御する。以上の構成により、印刷装置10は、媒体50に対し、印刷を行う。
【0044】
尚、上記及び以下において説明をする点以外について、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。例えば、印刷装置10は、使用するインクの種類に応じて、インクを媒体50に定着させるための構成を更に備えてよい。より具体的に、例えば、紫外線硬化型インクやソルベントUVインク等のように、紫外線の照射により硬化するインクを用いる場合、印刷装置10は、紫外線光源(例えばUVLED等)を更に備えてよい。また、溶媒を蒸発させることが必要なインク(例えばソルベントインク、ラテックスインク、ソルベントUVインク、水性インク等)を用いる場合、印刷装置10は、媒体50を加熱するヒータ等を更に備えてよい。
【0045】
続いて、ヘッド部12及びインクジェットヘッド150の構成について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、印刷装置10によりカラー印刷を行う場合、ヘッド部12は、それぞれ異なる色のインク滴を吐出する複数のインクジェットヘッド150を有する。この場合、各色のインクジェットヘッド150の配置については、例えば、副走査方向(X方向)の位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並べて配設すること等が考えられる。また、この場合、各回の主走査動作において、各色用のインクジェットヘッド150は、媒体50における同じ領域へインク滴を吐出する。
【0046】
また、各色のインクジェットヘッド150は、例えば、副走査方向にける位置をずらして配設されてもよい。より具体的に、例えば、各色のインクジェットヘッド150は、副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向へ並べて配設されてもよい。この場合、各回の主走査動作において、各色用のインクジェットヘッド150は、媒体50におけるそれぞれ異なる領域へインク滴を吐出する。また、媒体50における同じ領域に対しては、間に副走査動作を挟んだ異なる回の主走査動作において、それぞれの色のインク滴を吐出する。これにより、各色のインクジェットヘッド150は、媒体50の各領域に対し、色毎に順次印刷を行う色順次の方式により、印刷を行う。また、各色のインクジェットヘッド150は、上記以外の構成で配設されてもよい。
【0047】
続いて、各色のインクジェットヘッド150の構成について、更に詳しく説明をする。図2は、本例において用いるインクジェットヘッド150について説明をする図である。図2(a)は、インクジェットヘッド150の構成の一例を示す。
【0048】
図2(a)に示したインクジェットヘッド150は、1色用のインクジェットヘッドであり、同一色のインク滴を吐出する複数のノズル列202−1〜4を有する。また、本例において、複数のノズル列202−1〜4のそれぞれにおいてノズルが並ぶノズル列方向は、副走査方向(X方向)である。そのため、複数のノズル列202−1〜4のそれぞれにおいては、主走査方向(Y方向)における位置を揃えた複数のノズルが副走査方向へ並んでいる。
【0049】
また、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおいては、同数のノズルが副走査方向へ並んでいる。これにより、ノズル列202−1〜4のそれぞれの副走査方向における長さは、ノズルの数に応じて決まる一定の同じ長さLになる。また、本例において、ノズル列202−1〜4は、それぞれのノズル列における端のノズルの副走査方向における位置をずらして、主走査方向へ並んで配設される。これにより、ノズル列202−1〜4は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらした状態で、主走査方向へ並んで配設される。
【0050】
また、ノズル列202−1〜4の端の位置のずれ方は、例えば、図に示すように、副走査方向の位置をノズル列毎に交互に前後へずらすジグザグ状である。このずれ方は、より具体的に、例えば、ギザ状、正弦波状、又は三角波状等のずれであってよい。また、本例において、このずれ方は、例えば、ノズル列202−1〜4から主走査方向に連続して並ぶいずれの3列のノズル列を選んだ場合にも、選んだ3列のノズル列について、主走査方向に沿って順番に第1列、第2列、第3列とした場合、それぞれのノズル列の副走査方向における位置について、第1列と第2列との端の位置のずれが、第1列と第3列との位置のずれよりも大きくなっているようなずれ方である。また、この関係は、第1〜3列について、例えば、図中の左から右へ向かう方向に沿って選んだ場合に限らず、右から左へ向かう方向に沿って選んだ場合にも成り立つ。また、より具体的に、この関係は、例えば、ノズル列の位置の副走査方向におけるずれ量の大きさ(絶対値)について、図中に示すように、ノズル列202−1〜4のそれぞれの間のずれ量の大きさをX12、X13、X23、X24、X34、X14等とした場合、X12>X13、X23>X24、X34>X24、X23>X13等が成り立つことである。
【0051】
また、主走査動作時において、複数のノズル列202−1〜4のそれぞれは、一定の周期のサイクルで、インク滴を繰り返し吐出する。そして、2回目以降のサイクルにおいて、主走査方向における一方の端にあるノズル列202−1は、他方の端にあるノズル列202−4によりインク滴が吐出された媒体上の領域と隣接する領域へインク滴を吐出する。そのため、このようなサイクルを考慮した場合、インクジェットヘッド150の動作上、ノズル列202−1とノズル列202−4とは、実質的に隣接しているとも考えられる。そのため、この点を考慮し、ずれの量の大きさX14についても、例えば、X14>X34、X14>X12等が成り立つように設定することが好ましい。
【0052】
以上の構成により、本例の印刷装置10(図1参照)では、例えば、印刷動作時における各回の主走査動作において、媒体50においてヘッド部が通過する領域に対し、複数のノズル列202−1〜4のノズルからインク滴を吐出する。そのため、本例によれば、先ず、例えば、複数のノズル列の吐出特性を適切に平均化することができる。
【0053】
また、印刷動作時において、印刷装置10は、例えば、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおける全てのノズルを使用して印刷を行う。全てのノズルを使用して印刷を行うとは、例えば、インク滴を吐出しないダミーノズルを設定することなく、印刷する画像に合わせて、必要に応じて全てのノズルを使用することである。このように構成すれば、例えば、一回の主走査動作で印刷を行う領域の副走査方向における幅について、ダミーノズルを設定する場合のように幅を狭くすることなく、より広い幅を設定することができる。また、これにより、例えば、印刷速度の低下を防ぎつつ、バンディング等が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0054】
また、この構成において、ノズル列202−1〜4のそれぞれの端の位置は、副走査方向においてずれている。そのため、例えばノズル列202−1〜4のそれぞれにおける端のノズルの副走査方向における位置は、隣のノズル列における端のノズルではなく、端以外のノズルに近くなる。また、ノズル列202−1〜4のそれぞれの端のノズルによるインク滴の着弾位置は、副走査方向にずれることになる。これにより、例えば、印刷動作時に主走査方向へ並べて形成されるインクのドットについて、例えばノズル列202−1〜4のそれぞれにおける端のノズルにより形成されるドットの隣のドットは、他のノズル列における端以外のノズルにより形成されることになる。従って、印刷動作時において、ノズル列202−1〜4のそれぞれの端のノズルにより形成されるインクのドットが主走査方向に並ぶことはない。
【0055】
そのため、本例においては、ノズル列202−1〜4のそれぞれの端のノズルに対応するインク滴の着弾位置を、副走査方向において適切に分散させることができる。また、これにより、例えば、端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、ずれの影響を適切に平均化することができる。そのため、本例によれば、例えば、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおける端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下を適切に抑えることができる。
【0056】
また、上記のように、本例において、主走査方向に沿って連続して並ぶ3列のノズル列である第1列、第2列、及び第3列のノズル列について、第1列と第2列との副走査方向における端の位置のずれは、第1列と第3列との端の位置のずれよりも大きくなっている。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズル列における端のノズルの位置を、適切にずらすことができる。また、それぞれのノズル列の端が直線上に揃うように位置をずらす場合等と比べ、ノズル列の端のノズルに対応するインク滴の着弾位置について、視覚的により識別し難い状態で適切に分散させることができる。そのため、本例によれば、例えば、ずれの影響をより適切に平均化することができる。また、これにより、例えば、ノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0057】
また、本例において、隣接するノズル列間のずれの大きさは、例えば、視覚伝達関数を考慮して設定されている。視覚伝達関数とは、空間周波数に対する人間の視覚認識の感度を表す関数である。図2(b)は、視覚伝達関数を示すグラフであり、日本画像学会編の書籍であるデジタルプリント技術 インクジェット(藤井雅彦監修)の第173頁に図示されている視覚伝達関数(VTF:visual transfer function)を示す。
【0058】
グラフからわかるように、視覚伝達関数の波形は、所定の空間周波数の位置に感度のピーク(空間周波数で示した人間の目の感度最大値)を有する。そして、このような波形の視覚伝達関数に対応して、本例においては、主走査方向において隣接するノズル列について、副走査方向における端の位置のずれの大きさを、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きくしている。この場合、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離とは、視覚伝達関数において感度のピークとなる空間周波数に対応する波長である。
【0059】
このように構成すれば、例えば、隣接するノズル列の端のノズルの位置を十分にずらすことにより、隣接するノズル列の端のノズルの影響が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0060】
また、上記のとおり、本例においては、各回の主走査動作において、主走査方向に並ぶ複数のノズル列202−1〜4からインク滴を吐出する。そのため、本例によれば、例えば、1回の主走査動作を行うことにより、一のノズル列のみで4回の主走査動作を行うのと同様にインク滴を吐出することができる。また、これにより、例えば、1回の主走査動作により、マルチパス方式でノズル列の数分のパス数の主走査動作を行うのと同様の印刷を行うことができる。
【0061】
尚、このように、本例においては、1回の主走査動作により、マルチパス方式でノズル列の数分のパス数の主走査動作を行うのと同様の印刷を行うことができる。また、本例においても、更に、マルチパス方式での印刷を行ってもよい。例えば、4個のノズル列202−1〜4を用いて、2回又は4回の印刷パスでの印刷を行うこと等も考えられる。このように構成すれば、例えば、一のノズル列のみで8回又は16回の主走査動作を行うのと同様にインク滴を吐出することができる。また、これにより、例えば、より高品質な印刷を適切に行うことができる。
【0062】
また、本例の場合、印刷すべき画像の各画素を構成するインクのドットについて、主走査方向に並ぶ複数のドットを複数のノズル列202−1〜4で分担して形成することができる。そして、この場合、一のノズル列のみを用いる場合と比べ、一のノズルで形成すべきインクのドットについて、主走査方向における間隔を大きくすることができる。そのため、本例によれば、例えば主走査動作時のインクジェットヘッド150の移動速度をより高速にした場合にも、ノズル列202−1〜4のそれぞれのノズルにより、インクのドットを適切に形成できる。また、これにより、例えば、より高速な印刷を行うこと等も可能になる。
【0063】
続いて、本例におけるノズル列202−1〜4の構成と、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数との関係について、更に詳しく説明をする。上記においては、主に、インクジェットヘッド150におけるノズル列202−1〜4の配置について説明をした。しかし、印刷物において、観察者が知覚するのは、ノズル列202−1〜4そのものではなく、ノズル列202−1〜4により行われた印刷の結果である。そこで、ノズル列202−1〜4により行われた印刷の結果について、図面を用いて説明をする。
【0064】
図3は、主走査動作時のインクジェットヘッド150の様子の一例を示す図であり、インク滴を吐出しつつ主走査方向へ順次移動するインクジェットヘッド150の様子について、1回の主走査動作中の一部の様子を、主走査方向へ複数のインクジェットヘッド150を並べて図示することで等価的に示す。図中の複数のインクジェットヘッド150のそれぞれは、主走査動作中の異なるタイミングにおけるインクジェットヘッド150の位置を示しており、一定の周期でインク滴を吐出する各回のサイクルに対応するタイミングにおけるインクジェットヘッド150の位置を示す。また、複数のインクジェットヘッド150のそれぞれとして、より具体的に、インクジェットヘッド150における複数のノズル列202−1〜4を示す。
【0065】
尚、図示した場合において、インクジェットヘッド150は、一定の速度で、図中の右側へ順次移動する。そのため、図中の右側へ向かう方向は、時間軸と考えることもできる。すなわち、この図は、インク滴を吐出するノズルの位置を時系列に並べたものであり、実際のインクジェットヘッド150の空間的な配置のみを示しているわけではない。また、図示の便宜上、ノズル列202−1〜4の具体的な配置は、図2に示した具体的な構成と一部を異ならせている。また、ノズル列202−1〜4のそれぞれについて、互いにを区別をしやすいように網掛け模様等を異ならせて描いている。
【0066】
図2等を用いて説明をしたように、本例のインクジェットヘッド150において、ノズル列202−1〜4は、主走査方向において隣接するノズル列と副走査方向における端の位置をずらして配設されている。また、主走査動作において、ノズル列202−1〜4のそれぞれは、主走査方向へ移動しつつ、インク滴を吐出する各回のサイクルにおいて、図中に並べて示したノズル列202−1〜4のそれぞれの位置で、インク滴を吐出する。これにより、ノズル列202−1〜4のそれぞれは、副走査方向における端の位置をずらして、一定の長さLの領域に対し、インク滴を吐出する。また、図から分かるように、2回目以降の各回の吐出のサイクルにおいて、主走査方向における一方の端のノズル列202−1は、主走査方向における他方の端のノズル列202−4がインク滴を吐出した領域の隣の領域に、インク滴を吐出する。
【0067】
そして、この場合、ノズル列202−1〜4のそれぞれの位置に応じて、各回のサイクルでノズル列の端のノズルがインク滴を吐出する位置もずれる。これにより、例えば、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおける端のノズルでインク滴を吐出する位置間の距離は、例えば、図中にB、C、Dとして示す距離になる。また、連続する2回のサイクルのそれぞれにおいて、一のノズル列(例えば、ノズル列202−1)の端のノズルは、主走査方向において図中にAとして示した距離を開けて、インク滴を吐出する。
【0068】
ここで、本例におけるノズル列202−1〜4の端の位置のずれ方について、印刷時の主走査動作の様子を等価的に示した図3の様子で表現した場合、印刷時に隣り合うノズル列の端部同士の距離の平均値が、1つ置いたノズル列の端部までの距離の平均値よりも小さい状態であるとも言える。このように構成すれば、例えば、ノズル列における端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、ずれの影響を適切に平均化することができる。また、これにより、印刷の品質の低下を適切に抑えることができる。
【0069】
また、ノズル列202−1〜4の端の位置のずれ方について、より具体的には、例えば、図中にB〜D等として示した距離について、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きくすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、複数のノズル列の端のノズルの影響が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0070】
ここで、図中に示した距離B〜D等は、媒体上に実際に形成されるインクのドットの距離に対応している。しかし、例えばインクジェットヘッド150の設計においては、必要な条件について、形成されるドット間の距離ではなく、ノズル列202−1〜4の位置により規定することがより好ましい。そのため、この場合、例えば、インクジェットヘッド150における複数のノズル列202−1〜4の端のノズルの副走査方向における位置について、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きくすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、複数のノズル列202−1〜4のそれぞれにおける端のノズルの位置を適切かつ十分にずらすことができる。また、より具体的には、例えば、複数のノズル列202−1〜4において、それぞれのノズル列の副走査方向における端の位置と、他のそれぞれのノズル列の副走査方向における端の位置とのずれの大きさについて、いずれも、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きくすることが好ましい。
【0071】
また、実用上、ノズル列間の副走査方向における端の位置とのずれの大きさは、例えば、200μm以上の距離にすることも考えれられる。このように構成すれば、複数のノズル列のそれぞれにおける端のノズルの位置を適切かつ十分にずらすことができると考えられる。
【0072】
また、上記においても説明をしたように、主走査動作時において、ノズル列202−1〜4のそれぞれは、一定の周期で、繰り返しインク滴を吐出する。そのため、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおける端のノズルにより形成されるインクのドットは、図中に距離Aとして示すような一定の間隔で、主走査方向に並ぶことになる。そして、この場合、この間隔についても、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きくすることが好ましい。すなわち、主走査動作時にノズル列202−1〜4のそれぞれにより媒体上に形成するインクのドットの主走査方向における間隔について、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きくすることが好ましい。
【0073】
このように構成すれば、例えば、一のノズル列により媒体上に形成するドットの間隔を十分に大きくすることにより、端のノズルにより主走査方向へ並べて形成するドットの状態が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0074】
ここで、図2及び図3においては、4列のノズル列202−1〜4を用いる場合について、ノズル列202−1〜4の構成と、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数との関係を説明した。しかし、上記において説明をした関係は、ノズル列の本数が異なる場合にも、同一又は同様である。そこで、この点について、更に詳しく説明をする。
【0075】
図4は、3列のノズル列202−1〜3を用いる場合について、主走査動作時のインクジェットヘッド150の様子の一例を示す。この場合、主走査動作時のインクジェットヘッド150は、ノズル列の本数が異なる以外は、図3を用いて説明した場合と同一又は同様の動作を行う。そのため、この場合も、図2を用いて説明をした場合と同様に、例えば、図中にA〜Cとして示した距離等について、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離より大きくすることが好ましい。また、実用上、この距離は、例えば200μm以上としてもよい。このように構成した場合も、それぞれのノズル列における端のノズルの影響が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0076】
また、ノズル列の本数は、例えば、更に多く、例えば5本以上であってもよい。更に、例えば、上記のようにそれぞれのノズル列の位置を十分にずらすのであれば、インクジェットヘッド150におけるノズル列の本数について、例えば2本にすることも考えられる。これらの場合も、それぞれのノズル列における端のノズルの影響が重なって知覚されることを適切に防ぐことにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0077】
続いて、ノズル列202−1〜4におけるノズルの並び方について、更に詳しく説明をする。図5は、ノズル列202−1〜4におけるノズルの並び方の一例を示す図であり、図1〜4を用いて説明をしたインクジェットヘッド150におけるノズルの並び方の一例を示す。
【0078】
本例において、ノズル列202−1〜4のそれぞれは、一定のノズル間隔で副走査方向へ並ぶ複数のノズル302により構成される。また、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおいて、それぞれのノズル302の副走査方向における位置は、他のノズル列におけるいずれのノズル302の副走査方向における位置ともずれている。また、この構成により、印刷装置10(図1参照)は、副走査方向における解像度について、一のノズル列におけるノズル間隔に対応する解像度よりも高い解像度で印刷を行う。
【0079】
例えば、図5に示すように、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおいて、複数のノズル302は、一定の間隔dで、副走査方向へ並ぶ。また、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおけるノズル302の位置は、隣接するノズル列のノズル302に対して、副走査方向における位置がd/4ずれた位置にある。より具体的に、本例において、隣接する2個のノズル列のそれぞれにおけるノズル302の位置は、図中で左側にあるノズル列のノズル302に対し、図中で右側にあるノズル列における対応するノズル302の位置が、図中の下側へd/4ずれた構成になっている。この場合、対応するノズルとは、副走査方向における位置が最も近いノズルのことである。そのため、複数のノズル列202−1〜4の全てのノズル302をまとめて見た場合、副走査方向におけるノズル302の間隔は、d/4になっている。また、これにより、印刷装置10は、副走査方向における解像度について、d/4のノズル間隔に対応する解像度で印刷を行う。このようにして、本例においては、一のノズル列におけるノズル間隔dよりも高い解像度での印刷を行う。そのため、本例によれば、例えば、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0080】
また、ノズル列202−1〜4間のノズル302の位置関係は、上記以外の位置関係にすることもできる。図6は、ノズル列202−1〜4におけるノズルの並び方の他の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図6において図5と同じ符号を付した構成は、図5における構成と同一又は同様の特徴を有する。
【0081】
図6に示したノズル列202−1〜4のそれぞれにおいても、複数のノズル302は、図5に示した構成と同様に、一定の間隔dで、副走査方向へ並ぶ。一方、隣接する2個のノズル列の間でのノズル302の位置のずれ方は、図5に示した構成とは異なる。より具体的に、図6に示した構成では、隣接する2個のノズル列の間で、対応するノズル302の位置のずれの大きさは、d/2になっている。また、間に一のノズル列を挟む2個のノズル列について、対応するノズル302の位置は、副走査方向において揃っている。そのため、複数のノズル列202−1〜4の全てのノズル302をまとめて見た場合、副走査方向におけるノズル302の間隔は、d/2になっている。また、これにより、印刷装置10は、副走査方向における解像度について、d/2のノズル間隔に対応する解像度で印刷を行う。
【0082】
このように構成した場合も、例えば、一のノズル列におけるノズル間隔よりも高い解像度での印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0083】
尚、ノズル列202−1〜4間のノズル302の位置関係は、図5、6等に示した構成以外の位置関係にすることもできる。例えば、複数のノズル列202−1〜4の全てについて、対応するノズル302の位置を副走査方向において揃えること等も考えられる。このように構成した場合も、例えば、図2等に関連して説明をしたように、高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0084】
ここで、図5等を用いて説明をしたノズルの並び方に関連して、媒体上に形成されるインクのドットの並び方について、更に詳しく説明をする。図7は、4列のノズル列202−1〜4を有するインクジェットヘッド150を用いる場合について、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図7において図1〜6と同じ符号を付した構成は、図1〜6における構成と同一又は同様の特徴を有する。
【0085】
図7(a)は、インクジェットヘッド150の構成の一例を示す。この構成において、インクジェットヘッド150は、図2及び図5等を用いて説明をした構成と同様に、副走査方向における端の位置を互いにずらして配設された複数のノズル列202−1〜4を有する。また、複数のノズル列202−1〜4においては、副走査方向へ複数のノズル302が並んでいる。また、図5を用いて説明をした構成と同様に、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおいて、それぞれのノズル302の副走査方向における位置は、他のノズル列におけるいずれのノズル302の副走査方向における位置ともずれている。より具体的に、この構成において、例えば、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおけるノズルの並びの間隔をdとした場合、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおけるノズル302の位置は、隣接するノズル列のノズル302に対して、副走査方向における位置がd/4ずれた位置にある。
【0086】
図7(b)は、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す図であり、主走査動作時のインクジェットヘッド150の様子と共に、それぞれのノズル列202−1〜4により媒体上に形成されるインクのドットの位置の一例を示す。この場合、主走査動作時のインクジェットヘッド150の様子とは、例えば図3等と同様に、主走査動作時のインクジェットヘッド150を等価的に示した様子である。また、図7(b)においては、媒体上に描かれる画像の各画素に対応するマス目に対し、それぞれのノズル列202−1〜4により媒体上に形成されるインクのドットの位置を、それぞれ異なるパターンの網掛けで塗りつぶしている。
【0087】
また、この構成においても、図中にA〜D等として示した距離は、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きく設定されている。この距離は、例えば200μm以上の距離であってよい。このように構成すれば、ノズル列202−1〜4のそれぞれにおける端のノズルにより形成されるドットの状態が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0088】
また、この場合、図から明らかなように、インクジェットヘッド150の全体での副走査方向における解像度のピッチは、各ノズル列におけるノズルの間隔の1/4になる。そのため、このように構成すれば、例えば、図5等を用いて説明をした場合と同様に、一のノズル列におけるノズル間隔よりも高い解像度での印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0089】
また、このような高い解像度の印刷は、ノズル列の数を4以外にした場合にも可能である。図8は、3列のノズル列202−1〜3を有するインクジェットヘッド150を用いる場合について、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図8において図1〜7と同じ符号を付した構成は、図1〜7における構成と同一又は同様の特徴を有する。
【0090】
図8(a)は、インクジェットヘッド150の構成の一例を示す。図8(b)は、媒体上に形成されるインクのドットの並び方の一例を示す図であり、主走査動作時のインクジェットヘッド150の様子と共に、それぞれのノズル列202−1〜3により媒体上に形成されるインクのドットの位置の一例を示す。
【0091】
この構成においても、図中にA〜C等として示した距離は、視覚伝達関数のピーク値に対応する空間周波数から求まる距離よりも大きく設定されている。この距離は、例えば200μm以上の距離であってよい。このように構成すれば、ノズル列202−1〜3のそれぞれにおける端のノズルにより形成されるドットの状態が重なって知覚されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。
【0092】
また、この場合、図から明らかなように、インクジェットヘッド150の全体での副走査方向における解像度のピッチは、各ノズル列におけるノズルの間隔の1/3になる。そのため、この場合も、例えば、図5及び図7等を用いて説明をした場合と同様に、一のノズル列におけるノズル間隔よりも高い解像度での印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0093】
続いて、ヘッド部12(図1参照)の構成について、変形例を説明する。図9は、ヘッド部12の変形例の構成を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図9において図1〜8と同じ符号を付した構成は、図1〜8における構成と同一又は同様の特徴を有する。
【0094】
図9(a)は、ヘッド部12の変形例の構成の一例を示す。本変形例において、ヘッド部12における各色用のインクジェットヘッド150は、図2等を用いて示した構成と同様に、複数のノズル列202−1〜4を有する。また、複数のノズル列202−1〜4のそれぞれの位置は、副走査方向へジグザグ状にずれている。
【0095】
また、本変形例において、インクジェットヘッド150におけるノズル列202−1〜4が形成されているノズル面の形状は、ノズル列202−1〜4の位置のずれ方に合わせて、副走査方向における一方側及び他方側が主走査方向に対して傾いた平行四辺形状になっている。ノズル面の形状は、例えば菱形状であってもよい。
【0096】
このように構成すれば、例えば、副走査方向に位置をずらした複数のノズル列202−1〜4を、より効率的に配置できる。また、この場合も、図1〜6を用いて説明をした構成等と同様に、例えばノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0097】
続いて、ヘッド部12の更なる変形例について、説明をする。以上においては、主に、ヘッド部12における一の色用(例えば、CMYKの各色のいずれか)のインクジェットヘッドとして、複数のノズル列202−1〜4が形成された一のインクジェットヘッド150を用いる場合の構成について説明をした。しかし、ヘッド部12において、一の色用に複数のインクジェットヘッド150を用いてもよい。
【0098】
図9(b)は、ヘッド部12の更なる変形例の構成の一例を示す図であり、一の色用に複数のインクジェットヘッド150を用いる場合の構成の一例を示す。図に示すように、本変形例のヘッド部12においては、一の色用のインクジェットヘッドとして、主走査方向に並ぶ複数のインクジェットヘッド150−1〜4から構成される複合ヘッドを用いる。複数のインクジェットヘッド150−1〜4は、同一の構成のインクジェットヘッドであり、ジグザグ状に副走査方向の位置をずらして、主走査方向に並べて配設される。また、複数のインクジェットヘッド150−1〜4のそれぞれは、同じ数のノズルが並ぶノズル列202−1〜4のそれぞれを有する。
【0099】
このような構成においても、ヘッド部12において、同一の色用の複数のノズル列202−1〜4が、図2等に示した場合と同様に並ぶ。そのため、本変形例においても、例えば、ノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0100】
尚、一の色用のインクジェットヘッドとして、複数のインクジェットヘッドを用いる場合においても、それぞれのインクジェットヘッドが有するノズル列を、複数列にしてもよい。このように構成した場合も、上記において説明をした各構成と同様に、例えば、高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0101】
また、上記においては、ヘッド部12の構成に関し、主に、1色のインク滴を吐出する部分について説明をした。しかし、印刷装置10(図1参照)においては、複数の色のインクを用いて印刷を行ってもよい。この場合、例えば、それぞれの色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドやノズル列について、図2〜7を用いて説明をした構成と同一又は同様の構成を用いることができる。
【0102】
また、この場合、同一色用の複数のノズル列における端の位置のずれ方について、色毎に異ならせてもよい。より具体的には、例えば、CMYKインクの各色について、その色用の複数のノズル列における端の位置のずれ方を、他のそれぞれの色用の複数のノズル列における端の位置のずれ方と異ならせること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズル列の端のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じた場合も、印刷の品質の低下をより適切に抑えることができる。また、例えば、必要に応じて、一部の色についてのみ、図2〜7を用いて説明をした構成と同一又は同様の構成を用いてもよい。
【0103】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えば印刷装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0105】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・主走査駆動部、16・・・副走査駆動部、18・・・プラテン、20・・・制御部、50・・・媒体、102・・・キャリッジ、104・・・ガイドレール、150・・・インクジェットヘッド、202・・・ノズル列、302・・・ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9