(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記炭酸カルシウム粒子は、90%体積粒径D90、50%体積粒径D50、10%体積粒径D10としたときに(D90−D10)/D50が2.0未満である、請求項1に記載の白色ポリエステルフィルム。
上記白色ポリエステルフィルムが、ボイドを含有しボイド体積率が30体積%以上80体積%以下であるポリエステル層(B)を有し、その少なくとも片面に、ボイドを含有しボイド体積率が30体積%未満であるかボイドを含有しない上記ポリエステル層(A)を積層した構成である、請求項1または2に記載の白色ポリエステルフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[白色ポリエステルフィルム]
本発明の白色ポリエステルフィルムは、表面にポリエステル層(A)を有する。単層である場合は、白色ポリエステルフィルムはポリエステル層(A)からなる。このとき、本発明の白色ポリエステルフィルムを反射板用として用いるに際しては、ポリエステル層(A)が好ましくはボイドを含有し、反射性を具備して反射層としての役割を果たす。また、本発明の白色ポリエステルフィルムは、ボイドを含有するポリエステル層(B)の少なくとも片面にポリエステル層(A)を積層した構成であってもよい。このとき、本発明の白色ポリエステルフィルムを反射板用として用いるに際しては、ポリエステル層(B)が反射性を有して反射層となればよく、ポリエステル層(A)はフィルムの延伸性を向上するための支持層や、フィルムの表面に任意の機能を付与するための表面層であることができる。このとき、ポリエステル層(A)もボイドを含有し、反射性を有していても良い。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステル層(A)]
本発明におけるポリエステル層(A)は、ポリエステル樹脂に炭酸カルシウム粒子を含有するポリエステル樹脂組成物からなる。
【0011】
(ポリエステル樹脂)
本発明においてポリエステル層(A)におけるポリエステル樹脂のポリエステルとしては、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステルを用いる。ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、これらのエステル形成性誘導体に由来する成分を挙げることができる。ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、および、これらのエステル形成性誘導体に由来する成分を挙げることができる。これらのポリエステルの中で、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0012】
かかるポリエステルは、好ましくは共重合ポリエステル、特に好ましくは共重合ポリエチレンテレフタレートである。共重合成分の割合は、全ジカルボン酸成分100モル%に対して、好ましくは4〜15モル%、さらに好ましくは5〜14モル%、さらに好ましくは3〜14モル%、特に好ましくは6〜13モル%である。これによって、製膜性と熱寸法安定性とに優れる。共重合成分の割合が4モル%未満であると、製膜性に劣る傾向にある。他方、15モル%を超えると、熱寸法安定性に劣る傾向にある。
共重合ポリエチレンテレフレートである場合、共重合成分としては、例えば、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を挙げることができる。イソフタル酸成分および2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を用い、合計の共重合量を4〜15モル%とした共重合ポリエチレンテレフタレートは、上記観点において特に好ましいポリエステルである。
【0013】
(炭酸カルシウム粒子)
本発明における炭酸カルシウム粒子は、50%体積粒径D50が0.4〜1.0μmである。また、ポリエステル層(A)中の含有量は、1質量%以上、31質量%未満である。このようなD50および含有量の態様とすることで、フィルム中のボイド数をより多くすることができ、より高い反射率が得られる。D50が小さすぎると粒子が凝集しやすくなり、結果ボイド数が低減して反射率が低くなる。他方、大きすぎると、含有量を高くすることが困難となり、結果としてボイド数が低減して反射率が低くなる。含有量は、少なすぎるとボイド数が低減して反射率が低くなる。他方、多すぎると延伸し難くなり、ボイドが形成され難くなり、反射率が低くなる。かかる観点から、D50は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.6μm以上であり、また、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。また、含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0014】
本発明においては、炭酸カルシウム粒子は、その10%体積粒径D10、50%体積粒径D50、90%体積粒径D90としたときに、(D90−D10)/D50が2.0未満であることが好ましい。上記D50の範囲と合わせてかかる比率を満足することによって、反射率をより高くすることができる。例えば、D50が大きすぎたり(D90−D10)/D50が大きすぎたりすると、効率的にボイドを形成し難くなる傾向にあり、ボイド数が低減する傾向にあり、反射率が低くなる傾向にある。かかる観点から、(D90−D10)/D50は、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.3未満である。理想的には低ければ低い方が好ましいが、現実的には上記比率が0.8未満となる粒子の形成は難しく、よって下限は0.8が好ましい。
【0015】
上記のようなD50を満足させるために、本発明においては炭酸カルシウム粒子として、合成炭酸カルシウムからなる粒子(合成炭酸カルシウム粒子)を採用することが特に好ましい。炭酸カルシウム粒子としては、天然炭酸カルシウムからなる粒子(天然炭酸カルシウム粒子)と合成炭酸カルシウム粒子とがあり、通常は天然炭酸カルシウム粒子が用いられる。しかしながら、天然炭酸カルシウムでは上記のようなD50を満足させることが困難であり、本発明の課題を達成することが困難となる。また、合成炭酸カルシウム粒子を採用することにより、本発明が規定する結晶配向度を達成し易くなる傾向にある。これは、合成炭酸カルシウム粒子を用いると、ポリエステルの結晶化度が小さくなる傾向にあるためと考えられる。かかる傾向は、例えばDSC測定において、結晶化ピーク温度が高くなる傾向により確認することができる。さらに、合成炭酸カルシウム粒子の採用は、上記(D90−D10)/D50を達成し易くする。
【0016】
炭酸カルシウム粒子をポリエステル樹脂に含有させる方法としては、従来公知の各種の方法を用いることができる。その代表的な方法として、下記のような方法が挙げられる。
(ア)ポリエステル樹脂の合成時のエステル化の段階もしくはエステル交換反応終了後に添加する方法。
(イ)得られたポリエステル樹脂に添加し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)または(イ)の方法においてポリエステル樹脂に炭酸カルシウム粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これと希釈ポリマーとしてのポリエステル樹脂とを混練してポリエステル樹脂に所定量の炭酸カルシウム粒子を含有させる方法。
(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
【0017】
(表面処理)
本発明における炭酸カルシウム粒子は、表面処理剤により表面処理が施されていることが好ましい。それにより、炭酸カルシウム粒子表面のCa活性を失活させ、ガスマークの発生をより抑制することができる。かかる表面処理剤としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、あるいはこれらの誘導体などのリン化合物、および、ステアリン酸などの脂肪酸、シランカップリング剤等が挙げられる。本発明においては、中でもリン化合物による表面処理が好ましく、かかるリン化合物としては、具体的には、リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノあるいはジメチルエステル、亜リン酸トリメチルエステル、メチルホスホン酸、メチルスルホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステルなどが好ましく挙げられる。中でもリン酸、亜リン酸およびそれらのエステル成形誘導体が好ましい。本発明においては、リン酸トリメチルで表面処理されていることが最も好ましい。これらリン化合物は、単独で用いることができ、また2種以上を併用してもよい。
【0018】
炭酸カルシウム粒子の表面処理方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えばリン化合物によって表面処理を施す場合は、リン化合物と炭酸カルシウム粒子とを物理的に混合する方法(物理的混合方法)を採用することが好ましい。かかる物理的混合方法としては特に限定されるものではなく、例えばロール転動ミル、高速回転式粉砕機、ボールミル、ジェトミルなどの各種の粉砕機を使用して、炭酸カルシウムを粉砕しながらリン化合物で表面処理する方法、あるいは容器自身が回転する容器回転型混合機、固定容器内に回転翼を有したり、あるいは気流を吹き込む容器固定型混合機等を使用して表面処理する方法を挙げることができる。具体的にはナウタミキサー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機が好ましい。
【0019】
またその際の処理条件は特に限定されるものではなく、炭酸カルシウム粒子のポリエステルに対する分散性、ポリエステルの高温滞留時の異物発生、発泡の観点から、処理温度は30℃以上が好ましく、さらには50℃以上、特には90℃以上が好ましい。処理時間は5時間以内とすることが好ましく、さらには3時間以内、特には2時間以内が好ましい。また、リン化合物は炭酸カルシウム粒子と同時に混合してもよく、また予め炭酸カルシウム粒子を仕込んだ後にリン化合物を添加してもよい。その際に、リン化合物は滴下させても、噴霧させてもよく、さらには水あるいはアルコール等に溶解もしくは分散させたものであってもよい。
【0020】
また、本発明においては、炭酸カルシウム粒子の表面処理剤をポリエステルに添加、配合して、次いでそこに炭酸カルシウム粒子を添加して、炭酸カルシウムの表面処理を行なうこともできる。例えば、ポリエステルの製造、すなわち重合反応が完了するまでの任意の段階で、あるいは重合反応完了後から溶融混練を行なうまでの段階で、表面処理剤を添加することができる。
【0021】
上記表面処理工程における表面処理剤の添加量は、炭酸カルシウム粒子表面のCa活性が十分に失活される量であればよいが、例えば炭酸カルシウム粒子の質量に対してリン元素の量が0.1質量%以上となる量である。他方、添加しすぎるとフィルム中にリン化合物が多量に残存してしまい、環境の観点から好ましくなく、また押出機内などにおいて炭酸カルシウム粒子同士が凝集してしまうのを抑制することができるという観点から、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0022】
(ボイド形成剤)
ポリエステル層(A)は、本発明の目的を阻害しない範囲において、ボイドを含有していてもよい。そうすることで反射率をより高くすることができる。ボイドは、ポリエステル樹脂中に上述の炭酸カルシウム粒子を含有させてフィルムを製造することでも形成できるし、さらにボイドの量を多くしたい場合には、以下のようなボイド形成剤を用いればよい。
【0023】
ポリエステル層(A)のボイド形成剤としては、ポリエステル層(A)を形成するポリエステル樹脂に非相溶な樹脂(以下、非相溶樹脂と呼称する場合がある。)を用いることができる。また、無機粒子、有機粒子などの粒子を用いることができる。また、これらを併用してもよい。
【0024】
非相溶樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂、フッ素樹脂を例示することができる。非相溶樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、後述する粒子を併用してもよい。
【0025】
無機粒子としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム(ただし上述した本発明における特定の炭酸カルシウムは除く)、二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の粒子を例示することができる。また有機粒子としては、シリコーン、(架橋)アクリル、(架橋)ポリスチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂等の粒子を例示することができる。粒子は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述した非相溶樹脂を併用してもよい。
【0026】
これら粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.2〜3μm、特に好ましくは0.3〜2μmである。このような平均粒径の粒子を用いることにより、反射率の向上効果を高くすることができ、輝度の向上効果を高めることができる。また、粒子の凝集およびフィルム表面における粗大突起を抑制することができ、フィルム破断をよりし難くすることができる。平均粒径が小さすぎる場合は、粒子の凝集が生じ易く、他方大きすぎる場合は、フィルム表面において粗大突起が形成されやすく、フィルム破断が生じ易くなる傾向にある。
【0027】
ポリエステル層(A)におけるボイド形成剤の含有量は、ボイド体積率(層におけるボイドの全体積/層の全体積)が所望の範囲となるように調整すればよい。含有量を多くするとボイド体積率は高くなる傾向にある。
【0028】
本発明においては、白色ポリエステルフィルムがポリエステル層(A)からなり、かつ、高い反射性を有したい場合等において、ポリエステル層(A)によって高い反射性を奏することができる。その場合は、ポリエステル層(A)のボイド体積率は比較的高めであることが好ましい。
【0029】
より具体的には、かかる場合におけるポリエステル層(A)のボイドの体積率は、好ましくは10〜80体積%、より好ましくは15〜70体積%である。このようなボイド体積率とすることにより、反射率の向上効果を高めることができ、輝度の向上効果を高めることができる。また、耐光性に優れ、長期使用による黄変を抑制することができる。ボイド体積率が小さすぎると、好ましい反射率、輝度を得ることが困難となる傾向にある。また、黄変抑制の向上効果が低くなる。他方、ボイド体積率が大きすぎると、フィルム製膜中に破断が生じやすくなる傾向にある。このような観点から、ポリエステル層(A)のボイド体積率は、さらに好ましくは20〜39体積%、特に好ましくは23〜37体積%である。
【0030】
上記のようなボイド体積率とするには、上述した本発明が規定する炭酸カルシウム粒子を用いたり、また、必要に応じてこれに上述したボイド形成剤を併用すればよい。ボイド形成剤として非相溶樹脂を用いる場合は、例えばポリエステル層(A)の質量に対して15〜40質量%(ポリエステル樹脂が85〜60質量%となる。以下同様。)であることが好ましく、このような含有量とすることにより上記したボイド体積率の範囲を達成しやすく、また反射率の向上効果を高めることができ、輝度の向上効果を高めることができる。含有量が少なすぎると、反射率および輝度の向上効果が低くなる傾向にある。他方、含有量が多すぎると、フィルム製膜中に破断が生じやすくなる傾向にある。また、耐熱性が低下する傾向にある。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは17〜38質量%、特に好ましくは20〜35質量%である。
【0031】
ボイド形成剤として粒子(特に無機粒子、中でも硫酸バリウム粒子)を用いる場合は、ポリエステル層(A)の質量に対して31〜60質量%(ポリエステル樹脂が69〜40質量%となる。以下同様。)であることが好ましく、さらに好ましくは35〜57質量%、特に好ましくは40〜54質量%である。また、例えば、ボイド形成剤として炭酸カルシウム(ただし上述した本発明における特定の炭酸カルシウムは除く)を用いる場合は、19〜50質量%(ポリエステル樹脂が81〜50質量%となる。以下同様。)であることが好ましく、さらに好ましくは22〜45質量%、特に好ましくは25〜43質量%である。他の粒子においても、密度等を勘案して、上記を参酌して適宜調整することができる。
【0032】
また、本発明においては、高い反射性を要しないかあるいは他の層(例えば後述するポリエステル層(B))によって反射性を付与する場合は、ポリエステル層(A)のボイド体積率は低くても良い。このとき、ポリエステル層(A)のボイド体積率を比較的高い範囲にすれば、反射率をより向上することができ、逆に比較的低い範囲にすれば、ポリエステル層(A)が支持層として作用することとなり、フィルムの延伸性をより向上することができる。
【0033】
かかる場合におけるポリエステル層(A)のボイド体積率としては、好ましくは30体積%未満であり、これにより反射率の向上効果と製膜性の向上効果とを高めることができる。より好ましくは、20体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下であり、製膜性の向上効果が高くなる傾向にある。また、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上であり、反射率の向上効果が高くなる傾向にある。
なお、上記ボイド体積率を得るにあたって、ボイド形成剤の含有量は適宜調整すればよい。
【0034】
[ポリエステル層(B)]
本発明の白色ポリエステルフィルムは、上記ポリエステル層(A)を、ボイドを含有するポリエステル層(B)の少なくとも片面に積層した構成であることができる。この場合は、反射性はポリエステル層(B)で付与することができる。本発明においては、反射性と製膜性とを両立するために、ポリエステル層(B)を有する態様が好ましく、ポリエステル層(B)で主に反射性を付与し、ポリエステル層(A)は上述した比較的ボイド体積率が低い態様とし、かかるポリエステル層(A)で主に延伸性を付与する態様が好ましい。
【0035】
ポリエステル層(B)は、ポリエステル樹脂に、白色化成分、例えば白色顔料や後述するボイド形成剤あるいは発砲処理によって形成された微細なボイドを含有させることにより、白色を呈するようにした層である。このような構成とすることで、反射率の向上効果を高くすることができる。優れた反射性を有することにより、バックライトユニットに組み込んで反射フィルムとして用いた場合には、高い輝度を得ることができる。かかる観点からポリエステル層(B)の反射率は、波長400〜700nmの平均反射率が97%以上であることが好ましく、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0036】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル層(B)のポリエステル樹脂としては、上述したポリエステル層(A)のポリエステル樹脂と同様のものを用いることができる。好ましい態様およびその効果についても同様である。
【0037】
(ボイド形成剤)
ポリエステル層(B)のボイド形成剤としては、ポリエステル層(B)を形成するポリエステル樹脂に非相溶な樹脂であれば、上述したポリエステル層(A)のボイド形成剤と同様のものを用いることができる。好ましい態様およびその効果についても同様である。
また、ポリエステル層(B)におけるボイド形成剤の含有量についても、ポリエステル層(A)と同様に、ボイド体積率が所望の範囲となるように調整すればよい。
【0038】
ポリエステル層(B)のボイドの体積率は、好ましくは30〜80体積%である。このようなボイド体積率とすることにより、反射率の向上効果を高めることができ、輝度の向上効果を高めることができる。また、耐光性に優れ、長期使用による黄変を抑制することができる。ボイド体積率が小さすぎると、好ましい反射率、輝度を得ることが困難となる傾向にある。また、黄変抑制の向上効果が低くなる。他方、ボイド体積率が大きすぎると、フィルム製膜中に破断が生じやすくなる傾向にある。このような観点から、ポリエステル層(B)のボイド体積率は、さらに好ましくは35〜75体積%、特に好ましくは38〜70体積%である。
【0039】
上記のようなボイド体積率とするには、上述したボイド形成剤を用いればよい。ボイド形成剤として非相溶樹脂を用いる場合は、例えばポリエステル層(B)の質量に対して15〜40質量%(ポリエステル樹脂が85〜60質量%となる。以下同様。)であることが好ましく、このような含有量とすることにより、上記したボイド体積率の範囲を達成しやすく、また反射率の向上効果を高めることができ、輝度の向上効果を高めることができる。含有量が少なすぎると、反射率および輝度の向上効果が低くなる傾向にある。他方、含有量が多すぎると、フィルム製膜中に破断が生じやすくなる傾向にある。また、耐熱性が低下する傾向にある。このような観点から、含有量は、より好ましくは16〜38質量%、さらに好ましくは17〜35質量%、特に好ましくは18〜30質量%である。
【0040】
ボイド形成剤として粒子(特に無機粒子、中でも硫酸バリウム粒子)を用いる場合は、ポリエステル層(B)の質量に対して31〜60質量%(ポリエステル樹脂が69〜40質量%となる。以下同様。)であることが好ましく、さらに好ましくは35〜57質量%、特に好ましくは40〜54質量%である。また、例えば、ボイド形成剤として炭酸カルシウムを用いた場合は、19〜50質量%(ポリエステル樹脂が81〜50質量%となる。以下同様。)であることが好ましく、さらに好ましくは22〜45質量%、特に好ましくは25〜43質量%である。他の粒子においても、密度等を勘案して、上記を参酌して適宜調整することができる。
【0041】
[その他の添加剤]
本発明のポリエステル層(A)およびポリエステル層(B)には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、他の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等の他の添加剤を本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要に応じて配合してもよい。
蛍光増白剤を用いる場合、白色ポリエステルフィルムに対する濃度として、好ましくは0.05〜0.5質量%、さらに好ましくは0.01〜0.3質量%の範囲で配合するとよく、波長350nm付近の光の反射率を向上することができ、輝度をより高くできる。含有量が少なすぎるとかかる効果が奏され難くなり、他方、高すぎるとフィルムが着色してしまう。蛍光増白剤としては、例えばOB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)を用いることができる。
【0042】
[積層構成]
本発明の白色ポリエステルフィルムは、ポリエステル層(A)からなる単層フィルムであってもよいが、ポリエステル層(B)を有し、該ポリエステル層(B)の少なくとも片面にポリエステル層(A)を積層した積層フィルムであってもよく、反射性と製膜性との両立がより容易になる観点から好ましい。このとき、ポリエステル層(A)が主に支持層としての機能を果たし、ポリエステル層(B)が主に反射層としての機能を果たす態様が好ましい。なお、ここで「主に」としているのは、ポリエステル層(A)も反射性を有したり、ポリエステル層(B)も延伸性を有したりするためである。また、さらに他の層を有してもよく、例えば表面にビーズを具備するためのビーズ層が挙げられる。
【0043】
ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)とを積層する場合、ポリエステル層(A)をA層、ポリエステル層(B)をB層とすると、その積層構成はABの2層構成、ABAの3層構成、ABABの4層構成や、同様の5層以上の多層構成が挙げられる。なかでもABの2層構成およびABAの3層構成が、反射率と延伸性との両立の観点から好ましい。
【0044】
また、表面にビーズ層を設けることによって、例えば導光板に接して用いるに際して導光板とのギャップを一定に確保することができる。また、光の拡散効果や集光効果を利用して反射率や輝度を向上することができる。かかるビーズ層は、白色ポリエステルフィルムの片面もしくは両面に有することができる。例えば積層構成としては、ビーズ層をC層として、AC、ABC、BAC、ABAC等が挙げられる。ビーズ層としては、アクリル、ナイロン、ポリエステル等の樹脂粒子を、アクリルやポリエステルのバインダーで保持したものが好ましい。
また、本発明の白色ポリエステルフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等の上述した他の添加剤を含有する塗布層を、少なくとも片面に有することもできる。
【0045】
[結晶配向度]
本発明の白色ポリエステルフィルムは、ポリエステル層(A)表面における広角X線回折測定で得られるブラッグ角25°〜27°の回折ピークに相当する結晶面法線の、フィルム面法線に対する一致度(以下、結晶配向度と称することがある。)が0.8未満であることが必要である。
【0046】
本発明で規定するブラッグ角25°〜27°の回折ピークに相当する結晶面は、本発明におけるポリエステル樹脂を構成するポリエチレンテレフタレート成分の結晶構造における、積層したベンゼン環同士の間隔に相当する。すなわち、該結晶面(ポリエチレンテレフタレート成分の結晶格子における(100)面、ブラッグ角=約26°)は、ポリエステル分子鎖中のベンゼン環にほぼ平行である。
【0047】
かかる結晶配向度は、具体的にはポリエステル分子鎖中のベンゼン環の結晶面の法線と、フィルム面に垂直な方向(フィルム面法線、z軸とする)との一致度を数値化したものである。この結晶面の法線の、フィルム面法線(z軸方向)に対する一致度が0.8未満であるということは、ポリエステルフィルムにおける分子鎖中のベンゼン環がフィルム面に平行に位置している結晶成分が少ないということを意味する(以下、このような分子配向状態を「面配向度が低い」などと表現することがある)。
【0048】
該結晶配向度は、広角X線回折測定により、観察したい結晶面に対するブラッグ角に固定したサンプルを全球にわたり回転させてX線回折ポールフィギュアを測定し、得られた結晶配向方向の全球中の挙動から、評価したいフィルムの軸(本発明においてはフィルム面法線(z方向))に対する一致度を算出して求められる。算出される結晶配向度は、−0.5〜1の値をとり、結晶配向度が1に近いほど測定結晶面の法線ベクトルと評価している方向とが平行なものが多く分布し、結晶配向度が−0.5に近いほど測定結晶面の法線ベクトルと評価している方向とが直行しているものが多く分布する。
【0049】
ベンゼン環は剛直な分子構造を持つため、面配向度が高いと、もろくなりやすく、ボイドを多く含む白色ポリエステルフィルムは、折り曲げ加工性が弱くなる傾向がある。
該結晶配向度の好ましい範囲は0.5以上0.8未満、より好ましくは0.50以上0.70以下である。結晶配向度が低すぎると反射率が劣る。
かかる結晶配向度のフィルムを得る為には、フィルムの製造方法を後述するような製造方法とすればよい。
【0050】
[製造方法]
以下、本発明の白色ポリエステルフィルムを製造する方法の一例を説明する。以下の例では、白色ポリエステルフィルムとしてポリエステル層(A)(A層とする)と、ポリエステル層(B)(B層とする)とを有する積層白色ポリエステルフィルムの場合について記載するが、ポリエステル層(A)のみからなる単層フィルムも、かかる層を構成するポリエステル樹脂のTg等を考慮して、同様にして得られる。
【0051】
ダイから溶融した樹脂組成物をフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわち、A層を形成するための樹脂組成物Aの溶融物とB層を形成するための樹脂組成物Bの溶融物を、フィードブロックを用いて例えばA層/B層/A層となるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。また、マルチマニホルールドダイでも同様の積層が可能である。
【0052】
ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。この未延伸状フィルムを縦延伸する前に予熱ロールにより予熱する。その際、予熱ロールの温度は、上記樹脂組成物を構成するポリエステルのガラス転移点Tg+2℃以上にすることが、本発明においては肝要である。そうすることで本発明が規定する結晶配向度を達成することができる。かかる予熱ロール温度は、好ましくは上記樹脂組成物を構成するポリエステル(好ましくはA層のポリエステル)のガラス転移点をTgとして、Tg+5℃以上であり、また、好ましくはTg+50℃以下である。次いで、ロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度は、原料としての上記樹脂組成物を構成するポリエステル(好ましくはB層のポリエステル)のガラス転移点(Tg)以上の温度、更にはTg〜Tg+70℃の範囲とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、製膜機械軸方向(以下、縦方向または長手方向またはMDという場合がある。)、および、縦方向と直交する方向(以下、横方向または幅方向またはTDという場合がある。)ともに、好ましくは2.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。延伸倍率が低すぎると、ボイドが形成され難い傾向にあり、反射率が低下する傾向にある。また、フィルムの厚み斑が悪くなる傾向にある。他方、延伸倍率が高すぎると製膜中に破断が発生し易くなる傾向にある。
【0053】
縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、好ましくは熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステル(好ましくはB層のポリエステル)のガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、より好ましくは2.8〜4.3倍、さらに好ましくは3.0〜4.1倍、特に好ましくは3.5〜4.0倍である。延伸倍率が低すぎると、ボイドが形成され難い傾向にあり、反射率が低下する傾向にある。また、フィルムの厚み斑が悪くなる傾向にある。他方、延伸倍率が高すぎると製膜中に破断が発生し易くなる傾向にある。
【0054】
横延伸後のフィルムは、両端を把持したまま(Tm−10)〜(Tm−100)℃で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。ここでTmは、原料としての上記樹脂組成物を構成するポリエステル(好ましくはB層のポリエステル)の融点である。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−80)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、熱固定後、フィルム温度を常温に戻す過程で(Tm−10)〜(Tm−100)℃以下の領域の熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%の速度ダウンすなわち弛緩(以降この値を弛緩率という)を実施する。より好ましくは0.2〜1.2%の弛緩率、さらに好ましくは0.3〜1.0%の弛緩率を実施し縦方向の熱収縮率を調整する。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
かくして本発明の白色ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0055】
[フィルム物性]
(熱収縮率)
本発明の白色ポリエステルフィルムの85℃30分間の熱収縮率は、MDおよびTDの直交する2方向ともに好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.6%以下、特に好ましくは0.5%以下である。かかる範囲であると耐熱性に優れ、反射フィルムとして好ましい。
【0056】
(厚み)
本発明の白色ポリエステルフィルムの厚み(総厚み)は、好ましくは50〜350μm、より好ましくは75〜325μm、さらに好ましくは100〜300μmである。薄すぎると反射率を高くすることが困難となる傾向にあり、他方、厚すぎる場合は、これ以上厚くしても反射率の上昇が望めず、生産性の観点から好ましくない。
【0057】
本発明の白色ポリエステルフィルムが、ポリエステル層(B)と、その少なくとも片面にポリエステル層(A)を有する積層構成の場合、ポリエステル層(A)(1層)の厚みは、好ましくは2〜50μm、より好ましくは3〜40μm、さらに好ましくは5〜30μmである。ポリエステル層(A)が薄すぎると延伸性の向上効果を高くすることができない。他方、厚すぎると、反射率の向上効果が低くなる傾向にある。また、ポリエステル層(B)の厚みは、好ましくは25〜250μm、より好ましくは30〜220μm、さらに好ましくは40〜200μmである。薄すぎると反射率を高くすることが困難となる傾向にあり、他方、厚すぎる場合は、これ以上厚くしても反射率の上昇が望めず、生産性の観点から好ましくない。
【0058】
またこの際、ポリエステル層(A)からなる層をA層、ポリエステル層(B)をB層としたときに、A層の厚みの合計とB層の厚みの合計との比率は、B層/(A層+B層)として60%〜98%が好ましく、70%〜97%がより好ましく、さらに好ましくは80%〜95%である。これにより反射率の向上効果と延伸性の向上効果とを両方高くできる。また、このような好ましい態様を具備したポリエステル層(A)を有することによって、より優れた折り曲げ性が得られるため好ましい。
【0059】
(反射率)
本発明の白色ポリエステルフィルムは、その少なくとも一方の表面における反射率が、波長550nmの反射率で95.0%以上である。反射率は、97.5%以上であることが好ましく、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは98.5%以上である。反射率が低すぎると十分な画面の輝度を得ることができない。
通常は、反射率が95.0%以上となるようにボイドを有していると、折り曲げ加工がし難い。そこで本発明は、上述したような結晶配向度の態様を具備することによって、このように高反射率でありながら優れた折り曲げ性を具備するものである。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0061】
(2)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、10箇所の平均厚みを求めた。
【0062】
(3)反射率
分光光度計(島津製作所製UV−3101)に積分球を取り付け、BaSO
4白板の入射角8°における波長550nmの反射率を100%としたときの、得られた白色ポリエステルフィルムについての入射角8°における波長550nmの反射率を測定した。このとき、入射光に対してフィルムのMDを垂直に設置して得られた反射率をフィルムの任意の5箇所について実施し、その平均値をフィルムの反射率とした。
【0063】
(4)延伸性
実施例に記載のとおり、縦方向2.9倍、横方向3.9倍に延伸して製膜し、安定に製膜できるか観察し、下記基準で評価した。
○:1時間以上安定に製膜できる
△:10分間以上1時間未満の間に切断が生ずる。
×:10分間以内に切断が発生し、安定な製膜ができない。
【0064】
(5)熱収縮率
85℃に設定されたオーブン中でフィルムを無緊張状態で30分間保持し、加熱処理前後の標点間距離を測定し、下記式により熱収縮率(85℃熱収縮率)を算出した。
熱収縮率%=((L0−L)/L0)×100
L0:熱処理前の標点間距離
L :熱処理後の標点間距離
【0065】
(6)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20℃/分で測定して求めた。
【0066】
(7)炭酸カルシウム粒子等粒子のD50、D10、D90
島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置SALD−7000を用いて測定した。測定前のエチレングリコールへの分散は、粒子粉体を5質量%スラリー濃度相当になるよう計量して、ミキサー(たとえばNational MXV253型料理用ミキサー)で10分間攪拌し、常温まで冷却したのち、フローセル方式供給装置に供給した。そして、該供給装置中で、脱泡のために30秒間超音波処理(超音波処理の強度は超音波処理装置のつまみを、MAX値を示す位置から60%の位置)してから測定に供した。粒度分布測定結果より50%体積粒径(D50)を求め、これを平均粒径とした。また、同様にして10%体積粒径(D10)および90%体積粒径(D90)を求め、(D90−D10)/D50を算出した。
【0067】
(8)ボイド体積率
ボイド体積率を求める層のポリマー、添加粒子、その他各成分の密度と配合割合から計算密度を求めた。同時に、当該層を剥離する等して単離し、質量および体積を計測し、これらから実密度を算出し、計算密度と実密度とから下記式により求めた。
ボイド体積率=100×(1−(実密度/計算密度))
なお、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(2軸延伸後)の密度を1.39g/cm
3、シクロオレフィンの密度を1.0g/cm
3、炭酸カルシウムの密度を2.7g/cm
3、硫酸バリウムの密度を4.5g/cm
3、二酸化チタンの密度を4.3g/cm
3とした。
また、ボイド体積率を測定する層のみを単離し、単位体積あたりの質量を求めて実密度を求めた。体積は、サンプルを面積3cm
2に切り出し、そのサイズでの厚みをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて10点測定した平均値を厚みとし、面積×厚みとして算出した。質量は、電子天秤にて秤量した。
なお、粒子(凝集粒子含む)の比重としては、以下のメスシリンダー法にて求めた嵩比重の値を用いた。容積1000mlのメスシリンダーに絶乾状態の粒子を充填して、全体の重量を測定し、該全体の重量からメスシリンダーの重量を差引いて該粒子の重量を求め、該メスシリンダーの容積を測定し、該粒子の重量(g)を該容積(cm
3)で割ることによって求められる。
【0068】
(9)結晶配向度
X線回折装置(理学電機製ROTAFLEX RINT2500HL)および極点試料台(理学電機製多目的試料台)を用いた広角X線回折極点測定により、フィルムサンプルについて、評価する結晶面の法線ベクトルのフィルム厚み方向における方向余弦の積分平均値である<cos
2φz>を求め、次式より結晶化度(100)を求めた。
f=2/3<cos
2φz>−1/2
評価すべき結晶面は、以下の方法で求めた。得られたフィルムについて、X線回折装置を用いた広角X線回折θ-2θスキャン(反射法)(X線源CuKα、発散スリット1/2°、散乱スリット1/2°、受光スリット0.15mm、スキャンスピード1.000°/分)により回折強度の2θ依存性を測定し、ブラッグ角25°〜27°の間の最も大きな回折ピークについて、Pseudo Voightピークモデルを用いた多重ピーク分離法により、結晶面由来のピークと、アモルファス由来のハロー、バックグラウンドを分離した上で、ピーク位置を検出し、上述の極点測定においては該角度に光学系を固定して測定した。なお、本発明の実施例における結晶面は多くはポリエチレンテレフタレートの結晶格子における(100)面に由来するものと考えられ、ブラッグ角は約26°である。
なお、ポリエステル層(A)を表層に有する積層構成の場合は該表層を測定面とした。
【0069】
(10)折り曲げ試験
フィルムサンプルをMD方向×TD方向=100mm×50mmにカットし、OLFA ROTARY CUTTERミシン目刃(ミシン目のカット部:2.5mm、ミシン目未カット部:1mm)を用い、ミシン目を隔てたサンプルが50mm×50mmになるようにTD方向に沿ってミシン目ラインを入れる。その後、TD方向にひかれたミシン目ラインを起点にMD方向に180°折り曲げた後、元の0°まで曲げを戻すことを1往復とし、5往復行った(MD方向の折り曲げ評価)。その際、1往復毎にミシン目ラインの未カット部の目視観察を行い、下記の基準で評価した。
◎:5往復で破断しない
○:5往復で一部破断
△:2〜4往復で一部破断
×:1往復で破断
次に、MD方向×TD方向=50mm×100mmのフィルムサンプルを準備し、ミシン目を隔てたサンプルが50mm×50mmになるようにMD方向に沿ってミシン目ラインを入れ、TD方向同様の折り曲げ試験(TD方向の折り評価)を行った。評価は各方向につき4回、計8回行い、◎、○、△、×の最も多い結果を採用した。
【0070】
[実施例1]
(ポリエステル樹脂Aの製造)
テレフタル酸ジメチル89質量部およびイソフタル酸ジメチル11質量部(得られるポリエステルの全酸成分100モル%に対して11モル%となる。IA11−PETとする。)とエチレングリコール70質量部の混合物に、テトラ−n−ブチルチタネート(Ti元素として0.0025質量部)を加圧反応が可能なSUS製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃〜240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後常圧に戻し、リン酸トリメチル0.0087質量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
その後、重合触媒として酸化ゲルマニウム0.021質量部を加え、混合物を重合容器に移し、情報にて高真空のもと重縮合反応を行い、最終内温が290℃まで昇温し反応を終了させ、極限粘度0.71dl/g、融点225℃のポリエステル樹脂Aのペレットを得た。
【0071】
(ポリエステル樹脂組成物A)
表1に記載の構成である、リン酸トリメチルで表面処理されたカルサイト型合成炭酸カルシウム粒子と、ポリエステル樹脂として上記ポリエステル樹脂Aとを、タンデム型二軸混練押出機に、定量性を持つスクリューフィーダーより連続供給し、第1段目二軸混練機において樹脂温度230℃で混練処理した。次いで、これを溶融状態のまま第2段目単軸混練押出機に供給し、ストランド状に押出し、これをカッティングして、リン酸トリメチルで表面処理された合成炭酸カルシウム50質量%有するポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
【0072】
(二軸延伸フィルム)
上記で得られたポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂組成物Aとを、表1に示す炭酸カルシウム粒子濃度になるように配合し、ポリエステル層(A)を形成するための原料およびポリエステル層(B)を形成するための原料を得て、それぞれ270℃に加熱された2台の押出機に供給し、ポリエステル層(A)のポリマー、ポリエステル層(B)のポリマーをポリエステル層(A)とポリエステル層(B)がA/B/Aの層構成となるような3層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを、表2に記載の温度で予熱し、表2に記載の温度にて加熱し長手方向(MD)に2.9倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に直交する方向(TD)に3.9倍に延伸した。その後テンター内で温度200℃で30秒間の熱固定を行い、150℃にて幅入率2%で横弛緩を行い、次いで130℃にてフィルムの両端を切出し弛緩率0.5%で縦弛緩し、室温まで冷やして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性は表2の通りであった。
【0073】
[実施例2、3]
表1に記載の構成の合成炭酸カルシウム粒子(リン酸トリメチルで表面処理されたもの)をポリエステル層(A)に用い、ポリエステル層(B)のボイド形成剤を、ポリエステルに非相溶な樹脂(シクロオレフィン、ポリプラスチックス社製「TOPAS 6017S−04」)に変更した以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを作成し、評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0074】
[実施例4]
イソフタル酸ジメチルの添加量を調整して、ポリエステルの全酸成分100モル%に対するイソフタル酸成分の共重合量を4モル%としたポリエステル樹脂(IA4−PET)を用い、ポリエステル層(A)およびポリエステル層(B)の構成および製膜条件を表1および表2に示すとおりとした以外は、実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0075】
[実施例5、6]
ポリエステル樹脂の組成を表1に記載した通りとし、ポリエステル層(A)およびポリエステル層(B)の構成および製膜条件を表1および表2に示すとおりとした以外は、実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
なお表中、「NDC11−PET」は、2,6−ナフタレンジカルボキシレート(NDC)成分を11モル%共重合させたPET(ポリエチレンテレフタレート)、「CHDM11−PET」は、シクロヘキサジメタノール(CHDM)成分を11モル%共重合させたPETである。ここで共重合量は、ポリエステルの全酸成分100モル%に対する量である。
【0076】
[実施例7、8]
ポリエステル層(B)のボイド形成剤の種類および含有量を、表1に記載の通りとする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを作成し、評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0077】
[実施例9、10]
ポリエステル層(A)において、合成炭酸カルシウム粒子(リン酸トリメチルで表面処理されたもの)の構成および厚み等の構成を表1に記載の通りとし、ポリエステル層(B)を積層せず、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを作成し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0078】
[比較例1]
炭酸カルシウム粒子として、表1に記載の構成の天然炭酸カルシウム粒子(リン酸トリメチルで表面処理されたもの)を用い、ポリエステル層(A)およびポリエステル層(B)の構成および製膜条件を表1および表2に示すとおりとした以外は、実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0079】
[比較例2]
製膜条件を表2に示す通りとする以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを作成し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0080】
[比較例3]
ポリエステル層(A)において、合成炭酸カルシウム粒子(リン酸トリメチルで表面処理されたもの)の構成および厚み等の構成を表1に記載の通りとし、ポリエステル層(B)を積層せず、実施例10と同様にして二軸延伸フィルムを作成し、評価した。評価結果を表2に示す。比較例3は、延伸性が低く、サンプルを得ることが困難であった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】