特許第6356463号(P6356463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356463
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】全芳香族ポリアミド繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/80 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   D01F6/80 331
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-75466(P2014-75466)
(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公開番号】特開2015-196919(P2015-196919A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 靖重
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−098795(JP,A)
【文献】 特開2012−224955(JP,A)
【文献】 米国特許第05177175(US,A)
【文献】 米国特許第04355151(US,A)
【文献】 特開2012−207325(JP,A)
【文献】 特開昭55−115428(JP,A)
【文献】 特開平05−339369(JP,A)
【文献】 特開平03−143922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00− 6/96
D01F 9/00− 9/04
C08G 69/00−69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で表される構造反復単位(I)、化学式(II)で表される構造反復単位(II)、および化学式(III)で表される構造反復単位(III)を含む全芳香族ポリアミドからなる全芳香族ポリアミド繊維であって、
前記構造反復単位(II)が、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)の合計に対して20〜35モル%であり、
前記構造反復単位(III)が、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)の合計に対して15〜30モル%である全芳香族ポリアミド繊維。
【化1】
【請求項2】
破断伸度5.0%以上、引張り強度24cN/dtex以上である請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全芳香族ポリアミド繊維に関する。さらに詳しくは、破断強度および伸度などの機械的特性に優れた全芳香族ポリアミド繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドからなる繊維は、高強度繊維として非常に有用なものであるとともに、耐熱性および難燃性に優れていることが知られている。
また、全芳香族ポリアミド繊維は、汎用繊維に比較して寸法安定性が高く、弾性率が高く、耐疲労性にも優れているため、例えばタイヤコード、伝動用ベルト、搬送用ベルト等のゴム補強資材、シートベルト、漁網、安全ネット等に好適に使用されている。
そして、上記各種製品においては、さらなる加工性や耐疲労性に対する要求が強く、それを満足させるために、全芳香族ポリアミド繊維の機械強度を確保しつつ伸度を向上させることが必要であった。
【0003】
しかしながら、全芳香族ポリアミド繊維は、結晶化度が高くポリマー鎖が高度に配向した繊維構造を形成するため、ポリマー構造は極めて剛直であり、伸度を向上させることは困難であった。そこで、高伸度を備えた高強力な有機系繊維の開発がなされている。
例えば、特許文献1から4においては、寸法安定性が高く、かつ弾性率も高く、耐熱性および耐疲労性に優れている各種ポリヘキサメチレンアジパミド繊維および当該繊維を得る方法が提案されている。しかしながら、特許文献1から4に記載された繊維は、破断伸度は十分であるものの、全芳香族ポリアミド繊維と比較すると、十分な強度を有しているとは言い難いものであった。
また、近年、高い破断伸度を有する全芳香族ポリアミドを得る方法が提案されているが、特許文献5に記載された繊維は、破断強度が十分であるとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−208413号公報
【特許文献2】特開昭59−026517号公報
【特許文献3】特開平1−168913号公報
【特許文献4】特開平3−199421号公報
【特許文献5】特開2012−207325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のごとき従来技術の問題を解消するためになされたもので、その目的とするところは、高い伸度を有し、同時に、高い強度を有する全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、化学式(I)で表される構造反復単位(I)と、化学式(II)で表される構造反復単位(II)と、化学式(III)で表される構造反復単位(III)とを、特定比率で含む全芳香族ポリアミドからなる繊維は、高い伸度を有しつつ機械強度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、化学式(I)で表される構造反復単位(I)、化学式(II)で表される構造反復単位(II)、および化学式(III)で表される構造反復単位(III)を含む全芳香族ポリアミドからなる全芳香族ポリアミド繊維であって、前記構造反復単位(II)が、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)の合計に対し10〜30モル%であり、前記構造反復単位(III)が、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)の合計に対して20〜40モル%である全芳香族ポリアミド繊維である。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【発明の効果】
【0011】
本発明の全芳香族ポリアミド繊維は、高い強度を有しつつ飛躍的に破断伸度が向上した繊維となる。このため、本発明の繊維によれば、高伸度が要求される各種繊維製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<芳香族ポリアミド>
[全芳香族ポリアミドの構造]
本発明の繊維を構成する全芳香族ポリアミドは、化学式(I)で表される構造反復単位(I)と、化学式(II)で表される構造反復単位(II)と、化学式(III)で表される構造反復単位(III)とを、特定比率で含む全芳香族ポリアミドである。
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
[構造反復単位の比率]
本発明の繊維を構成する全芳香族ポリアミドにおいては、構造反復単位(II)の比率が、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)の合計に対して20〜40モル%、好ましくは25〜35モル%である。20モル%未満の場合には、所望の強度および伸度を発現させることが困難となる。一方で、40モル%を超える場合には、繊維の強度が低下するため好ましくない。
【0017】
また同時に、構造反復単位(III)の比率が、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)の合計に対して10〜30モル%、好ましくは15〜25モル%である。10モル%未満では、所定の伸度が発現せず、一方で、30モル%を超える場合には、繊維の強度が低下するため好ましくない。
本発明においては、構造反復単位(II)および構造反復単位(III)の比率を上記の組成範囲とすることにより、引張り強度24cN/dtex以上で、同時に伸度5.0%以上の機械物性を発現させることができる。
【0018】
<全芳香族ポリアミドの製造方法>
本発明に用いられる全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、ジカルボン酸ジクロライド成分と芳香族ジアミン成分とを、低温溶液重合、または界面重合して得ることができる。
【0019】
[全芳香族ポリアミドの原料]
(芳香族ジアミン成分)
本発明において使用される芳香族ジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、2−クロルp−フェニレンジアミン、2,5−ジクロルp−フェニレンジアミン、2,6−ジクロルp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
なお、本発明においては、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)をそれぞれ構成する、少なくとも3種類の芳香族ジアミン成分を、比率にあわせて用いることが重要である。例えば本発明においては、ジアミン成分として、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0021】
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
本発明において使用される芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分としては、例えばイソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、2−クロルテレフタル酸クロライド、2,5−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドなど挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでは、テレフタル酸ジクロライドを用いることが好ましい。
【0022】
[全芳香族ポリアミドの重合]
(重合溶媒)
全芳香族ポリアミドを重合する際の溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどの有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの水溶性ニトリル化合物などが挙げられる。これらの溶媒は、単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。上記溶媒は、脱水されていることが望ましい。
【0023】
[無機塩]
溶解性を上げるために、重合前、途中、終了時に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩として、例えば塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0024】
[原料組成比]
芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分のモル比として、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05である。芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比が0.90未満または1.10を超える場合には、芳香族ジアミン成分との反応が十分に進まず、高い重合度が得られないため好ましくない。
【0025】
[反応条件]
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、−10℃〜80℃の範囲とすることがさらに好ましい。
【0026】
[その他重合条件等]
全芳香族ポリアミドの末端は、封止されていてもよい。末端封止剤を用いて封止する場合には、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アニリンおよびその置換体を用いることができる。
また、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩を併用できる。
反応の終了後は、必要に応じて塩基性の無機化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを添加し中和反応を実施してもよい。
【0027】
[重合後処理等]
上記のようにして得られる全芳香族ポリアミドは、アルコール、水といった貧溶媒に投入して、沈澱させ、パルプ状にして取り出すことができる。取り出された全芳香族ポリアミドを、再度、他の溶媒に溶解して成形に供することができるが、重合反応によって得た溶液をそのまま成形用溶液として用いることもできる。一度取り出してから再度、溶解させる際に用いる溶媒としては、全芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されないが、上記全芳香族ポリアミドの重合に使用する溶媒が好ましい。
【0028】
[その他添加剤等]
なお、本発明においては、物性を損なわない範囲で、フィラーを併用することができる。用いるフィラーとしては、繊維状、もしくは板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、全芳香族ポリアミド繊維以外の有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、二酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、層状粘土鉱物、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、本発明の窒化ホウ素粒子以外の、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。また、上記のフィラーは、2種以上を併用して使用することもできる。
【0029】
また、本発明に用いられるポリマーや得られる繊維には、そのほか、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、顔料などの着色剤などを併用してもよい。上記添加剤の使用量は、得られる繊維本来の物性を損なわない範囲で、添加剤の種類に応じて適当に選択できる。
【0030】
<全芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明の全芳香族ポリアミド繊維を製造するにあたっては、全芳香族ポリアミド溶液(全芳香族ポリアミド製造時の生成ポリマードープであってもよい)を湿式紡糸あるいは乾式紡糸したのち、溶媒を除去する。
【0031】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
繊維の製造にあたり、全芳香族ポリアミドを有機溶媒に溶解させた等方性の紡糸用溶液(ドープ)を得る。紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整する方法としては、特に限定されるものではない。溶液重合を行った後の有機溶媒ドープそのままでも、得られた全芳香族ポリアミドを有機溶媒に再度溶解させたものでもよい。ここで、全芳香族ポリアミドを再度溶解させる際に用いる溶媒としては、上記した全芳香族ポリアミドの重合に用いる溶媒を使用することができる。
【0032】
[紡糸・凝固]
上記のごとく調整された等方性のドープ(紡糸用溶液)を用いて、湿式紡糸法またはエアギャップを設けた半乾半湿式紡糸法によって繊維を成形する。すなわち、先ず、上記で得られた紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出し、続いて、エアギャップを介し、または介さずに、凝固浴中の凝固液に接触させて凝固糸を形成する。
凝固浴としては、全芳香族ポリアミドの貧溶媒が用いられるが、全芳香族ポリアミドドープの溶媒が急速に抜け出して全芳香族ポリアミド繊維に欠陥ができないように、通常は良溶媒を添加して凝固速度を調節する。一般には、貧溶媒としては水、良溶媒としては全芳香族ポリアミドドープ用の溶媒を用いることが好ましい。良溶媒/貧溶媒の重量比は、全芳香族ポリアミドの溶解性や凝固性にもよるが、15/85〜40/60の範囲とすることが一般的に好ましい。
【0033】
[その他の工程]
凝固液から凝固糸条を引き上げた後は、公知の方法によって、最終的な型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。例えば、水洗工程を実施して形成された未延伸糸から溶媒を除去し、必要に応じて延伸を実施し、乾燥工程等を経た後に必要に応じて延伸することにより配向させ、最終的な繊維を得ることができる。
【0034】
[延伸工程]
本発明の繊維は、延伸配向されていることが好ましい。延伸の方法としては特に限定されるものではなく、凝固糸状態での水洗延伸、沸水延伸のみならず、乾燥糸状態での加熱延伸等、いずれでもよい。また、延伸倍率については特に制限はないが、5倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率を制御することにより、得られる芳香族ポリアミド繊維の伸度および強度を制御することができる。
【0035】
本発明の繊維は、広角X線回折により求めた結晶配向度が85%以上、結晶化度が70%以上と、高度に配向および結晶化していることが好ましい。結晶配向度および結晶化度のどちらか一方または両方が低い場合には、熱(延伸)処理を施しても、得られる繊維の機械的物性が不充分となりやすい。
熱延伸を実施する場合には、その温度は、全芳香族ポリアミドのポリマー骨格にもよるが、好ましくは300〜550℃、さらに好ましくは350〜500℃とし、また、延伸倍率は好ましくは4倍以上、さらに好ましくは4〜10倍とする。
【0036】
<芳香族ポリアミド繊維>
(単糸繊度)
本発明の全芳香族ポリアミド繊維の単糸繊度は、好ましくは0.5〜50dtex、さらに好ましくは1.0〜10dtexである。0.5dtex未満の場合には、製糸性が不安定となる場合がある。また、繊維の比表面積が大きくなるため耐光劣化を受け易い。一方で、50dtexを超える場合には、繊維の比表面積が小さくなり、耐光劣化を受けにくい反面で、製糸工程で凝固が不完全となりやすく、その結果、紡糸や延伸工程で工程調子が乱れやすく、物性も低下しやすくなる。
【0037】
(引っ張り強度)
引っ張り強度は高い程好ましく、24cN/dtex未満では高強度繊維としての特長が不足する。したがって、好ましくは24cN/dtex以上である。
【0038】
(破断伸度)
破断伸度は、好ましくは5.0%以上である。5.0%未満の場合には、ゴム補強等の用途において必要とする耐久性を満足できない。
【0039】
(用途)
本発明の全芳香族ポリアミド繊維は、織物、編物、不織布などの布帛のほか、組紐、ロープ、撚糸コード、ヤーン、綿などの繊維構造物を構成することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例および比較例は本発明の理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0041】
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法で測定・評価を実施した。
【0042】
[繊度]
JIS−L−1015に準じ、測定した。
【0043】
[繊維の引張強度、破断伸度、弾性率]
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
(測定条件)
測定試料長 :500mm
チャック引張速度 :250mm/min
初荷重 :0.2cN/dtex
【0044】
<実施例1>
[型全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lにパラフェニレンジアミン28.5g(25mol%)と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル21.1g(10mol%)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル31.7g(15mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド106.9g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液172.2gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
【0045】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
得られたコポリマー(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は4.12)の溶液を、濃度6質量%となるようにNMPに溶解し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整した。
【0046】
[紡糸・凝固]
得られたドープを用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度500℃下で9.4倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を、表1に示す。
【0047】
<実施例2>
[全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lにパラフェニレンジアミン28.5g(25mol%)と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル31.7g(15mol%)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル21.1g(10mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド110.5g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液178.0gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
【0048】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
得られたコポリマー(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は4.10)の溶液を、濃度6質量%となるようNMPに溶解し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整した。
【0049】
[紡糸・凝固]
得られたドープを用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し凝固した後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度500℃下で8.6倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0050】
<実施例3>
[全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lにパラフェニレンジアミン42.2g(25mol%)と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル31.7g(20mol%)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.6g(5mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド110.5g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液178.0gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
【0051】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
得られたコポリマー(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は3.95)の溶液を、濃度6質量%となるようNMPに溶解し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整した。
【0052】
[紡糸・凝固]
得られたドープを用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し凝固した後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度520℃下で10.3倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0053】
<比較例1>
[全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lにパラフェニレンジアミン42.2g(25mol%)と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル52.8g(25mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド110.5g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液178.0gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
【0054】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
得られたコポリマー(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は3.38)の溶液を、濃度6質量%となるようNMPに溶解し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整した。
【0055】
[紡糸・凝固]
得られたドープを用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し凝固した後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度530℃下で11.0倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0056】
<比較例2>
[全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lにパラフェニレンジアミン42.2g(25mol%)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル52.8g(25mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド110.5g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液178.0gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
【0057】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
得られたコポリマー(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は4.23)の溶液を、濃度6質量%となるようNMPに溶解し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整した。
【0058】
[紡糸・凝固]
得られたドープを用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し凝固した後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度460℃下で5.0倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0059】
<比較例3>
[全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lにパラフェニレンジアミン28.5g(25mol%)と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.6g(5mol%)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル31.7g(20mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド106.9g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液172.2gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
【0060】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
得られたコポリマー(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は4.12)の溶液を、濃度6質量%となるようNMPに溶解し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整した。
【0061】
[紡糸・凝固]
得られたドープを用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出し凝固した後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度460℃下で6.1倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0062】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の全芳香族ポリアミド繊維は、破断強度および伸度が高く、例えばタイヤコード、伝動用ベルト、搬送用ベルト等のゴム補強資材、シートベルト、漁網、安全ネット等の産業用途に非常に有用である。