特許第6356465号(P6356465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356465
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】巻線部品およびその放熱構造
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20180702BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180702BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20180702BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H01F37/00 S
   H05K7/20 F
   H01F37/00 C
   H01F37/00 H
   H01F27/28 176
   H01F17/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-75967(P2014-75967)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-198181(P2015-198181A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴裕
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−303823(JP,A)
【文献】 特開平5−166646(JP,A)
【文献】 特開2011−77328(JP,A)
【文献】 特開2013−168401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 17/04
H01F 27/28
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの一部形状に形成された金属板および絶縁板を交互に積層して構成したコイルと、このコイルを囲繞して閉磁路を形成するコアとを有する巻線部品において、
上記積層方向の中間部に位置する上記金属板に、上記コイルの外部に延出し且つ放熱機能を有する筐体に熱的に接続される放熱用延出部を形成し
上記放熱用延出部は、上記中間部に位置する金属板の上記積層部分における最大幅のまま上記延出がなされた矩形状に形成される
ことを特徴とする巻線部品。
【請求項2】
上記放熱用延出部を形成した金属板に隣接する絶縁板に、上記放熱用延出部を筐体に熱的に接続する際に上記放熱用延出部と上記筐体との間に介在して放熱用延出部と筐体の間を絶縁する絶縁用延出部を、上記放熱用延出部に沿って形成したことを特徴とする請求項1に記載の巻線部品。
【請求項3】
上記放熱用延出部を、上記コイルの外部に延出した方向から上記積層方向に向けてL字形に折り曲げたことを特徴とする請求項1または2に記載の巻線部品。
【請求項4】
上記放熱用延出部を、上記コイルの外部に延出した方向から上記積層方向に向けてU字形に折り曲げ、折り曲げた先端に上記筐体に載置固定するためのフランジを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の巻線部品。
【請求項5】
上記放熱用延出部を有する金属板を挟んで上記積層方向の一方側のコイルと他方側のコイルの温度が等しくなるように、上記放熱用延出部を有する金属板の位置を決定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の巻線部品。
【請求項6】
上記コイルが上記積層方向に分割して複数設けられており、発熱量の大きいコイル側に偏った位置の上記金属板に上記放熱用延出部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の巻線部品。
【請求項7】
上記放熱用延出部を複数の上記金属板に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の巻線部品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の巻線部品の上記放熱用延出部を、放熱機能を有する筐体に良熱伝導性の絶縁材を介して熱的に接続したことを特徴とする巻線部品の放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流電源装置などに用いられるインダクタやトランス等の巻線部品に係り、特に、金属板と絶縁板を交互に積層してコイルを構成した巻線部品およびその放熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大電力インダクタや大電力トランス等の製品の中に、電線を巻いてコイルを形成する代わりに、コイルの一部形状にプレス加工した金属板(電線に相当)と絶縁板を交互に積層してコイルを構成した巻線部品がある。この種の巻線部品では、コイルに高周波電流が流れた際に、コイルが作る磁界によって金属板に渦電流が発生し、コイルが発熱し製品の温度が上昇する。製品の温度上昇は、製品の破損や劣化に繋がるため、コイルの温度上昇を抑制する措置が必要となる。
【0003】
コイルの温度上昇を抑制するためには、積層する金属板の断面積(電線であれば線径)を増やすことで抵抗を下げるのが一つの方法であるが、その方法の採用は、近年のこの種の巻線部品における小型・軽量化の要請に反することになる。一方で、実際には、小型・軽量化のために金属板の断面積を一層小さくする傾向が進んで来ており、その結果として、コイルの発熱量が増加して、製品温度も一層高くなるという弊害が生じている。
【0004】
そこで、例えば大電流仕様のような発熱量が大きい巻線部品にあっては、下記特許文献1、2に見られるように、コイルを囲繞して閉磁路を形成するコアの底面を、放熱機能を有する筐体に接触させることにより、当該巻線部品から発生した熱を外部に逃がす構造が多く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206308号公報
【特許文献2】特開2011−61096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際に発熱するのは、コイルを構成する金属板であり、特許文献1、2に記載されるように、コアを通してコイルに発生する熱を逃がすのは効率的でない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、コイルの発生した熱を効率よく外部に逃がすことができて、製品温度の低減化を図ることができ、それにより、小型・軽量化を図ることも可能になる巻線部品およびその放熱構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、コイルの一部形状に形成された金属板および絶縁板を交互に積層して構成したコイルと、このコイルを囲繞して閉磁路を形成するコアとを有する巻線部品において、上記積層方向の中間部に位置する上記金属板に、上記コイルの外部に延出し且つ放熱機能を有する筐体に熱的に接続される放熱用延出部を形成し、上記放熱用延出部は、上記中間部に位置する金属板の上記積層部分における最大幅のまま上記延出がなされた矩形状に形成されることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記放熱用延出部を形成した金属板に隣接する絶縁板に、上記放熱用延出部を筐体に熱的に接続する際に上記放熱用延出部と上記筐体との間に介在して放熱用延出部と筐体の間を絶縁する絶縁用延出部を、上記放熱用延出部に沿って形成したことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項1または2に記載の発明において、請求項3に記載の発明は、上記放熱用延出部を、上記コイルの外部に延出した方向から上記積層方向に向けてL字形に折り曲げたことを特徴とするものであり、請求項4に記載の発明は、上記放熱用延出部を、上記コイルの外部に延出した方向から上記積層方向に向けてU字形に折り曲げ、折り曲げた先端に上記筐体に載置固定するためのフランジを設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、上記放熱用延出部を有する金属板を挟んで上記積層方向の一方側のコイルと他方側のコイルの温度が等しくなるように、上記放熱用延出部を有する金属板の位置を決定したことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、上記コイルが上記積層方向に分割して複数設けられており、発熱量の大きいコイル側に偏った位置の上記金属板に上記放熱用延出部が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、上記放熱用延出部を複数の上記金属板に形成したことを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の巻線部品の上記放熱用延出部を、放熱機能を有する筐体に良熱伝導性の絶縁材を介して熱的に接続したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜8のいずれかに記載の発明によれば、稼働時における発熱の主体であるコイルを構成する金属板にコイル外に延出する放熱用延出部を形成して、それを直接、放熱機能を有する筐体に熱的に接続するようにしているので、コイルの熱を効率よく筐体に逃がすことができる。その際、金属板と絶縁板の積層方向の中間部に位置する金属板に放熱用延出部を形成しているので、放熱用延出部を多数設けることなく、積層方向の両端側のコイルの熱をバランスよく外部に逃がすことができる。したがって、製品の小型化および軽量化を図りながら、製品の温度上昇の抑制を図ることができる。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明によれば、放熱用延出部を形成した金属板に隣接する絶縁板に、放熱用延出部を筐体に熱的に接続する際の絶縁材となる絶縁用延出部を設け、しかも、それを放熱用延出部に沿って形成しているので、放熱用延出部を筐体に熱的に接続する際に必要となる絶縁材を別途用意する必要がない上、絶縁用延出部によりコイルの外部に延出する放熱用延出部を補強および保護することができる。
【0017】
また、請求項3または請求項4に記載の発明によれば、放熱用延出部を、コイルの外部への延出方向から積層方向に向けてL字形、あるいはU字状に折り曲げているので、積層方向から見た場合の放熱用延出部の張り出し寸法を小さくすることができ、巻線部品の実装スペースを小さくすることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明によれば、放熱用延出部を有する金属板を挟んで積層方向の一方側のコイルと他方側のコイルの温度が等しくなるように、放熱用延出部を有する金属板の位置を決定しているので、コイルの温度バランスを良好に保つことができる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明によれば、コイルが積層方向に分割して複数設けられている場合に、発熱量の大きいコイル側に偏った位置の金属板に放熱用延出部を設けているので、コイル全体の温度バランスを良好に保つことができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明によれば、放熱用延出部を複数の金属板に形成しているので、軽量化とのバランスを考慮しながら、放熱効率をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態の巻線部品としての積層インダクタの構成を示す分解斜視図である。
図2】同積層インダクタの外観斜視図である。
図3】同積層インダクタを筐体の上面に載置した放熱構造を示す斜視図である。
図4】第1実施形態の積層インダクタとその変形例の積層インダクタの実装スペースの違いを説明するための概略説明図で、(a)は第1実施形態の積層インダクタの側面図、(b)は変形例の積層インダクタの側面図である。
図5】上記図4(b)の変形例に相当する本発明の第2実施形態の巻線部品としての積層インダクタの構成を示す分解斜視図である。
図6】同積層インダクタを筐体の上面に載置した放熱構造を示す斜視図である。
図7】本発明の第3実施形態の巻線部品としての積層インダクタの分解斜視図である。
図8】同積層インダクタを筐体の上面に載置した放熱構造を示す斜視図である。
図9】本発明の第4実施形態の巻線部品としての積層インダクタの分解斜視図である。
図10】同積層インダクタを筐体の上面に載置した放熱構造を示す斜視図である。
図11図10に示した放熱構造におけるX部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1図3は、本発明に係る巻線部品を、積層インダクタに適用した第1実施形態を示すものである。
図1および図2に示すように、実施形態の積層インダクタ1Aは、コイルの一部形状に形成された金属板11および絶縁板12を交互に積層して構成したコイル10Aと、このコイル10Aを囲繞して閉磁路を形成する上下一対のコア3、4とを有している。
【0023】
ここで、上下一対のコア3、4は、フェライト材によって形成されたE型コアで、外足3a、4aがコイル10Aの外周に軸線方向に沿って配置されるとともに、中足3b、4bがコイル10Aの中心孔に挿入されて、互いの先端面を当接させることにより、コイル10Aを囲繞して閉磁路を形成するように設けられている。
【0024】
コイル10Aを構成する各金属板11は、コイル10Aの略1ターン分のパターン形状(両端が離間したリング形状)に銅板をプレス加工することにより形成されており、積層方向の上側から見たとき、周方向の一端14から他端15に向かって右回りのリング形状に形成されている。絶縁板12は、隣接する金属板11間を絶縁するものであり、金属板11と金属板11の間の他に、積層方向の両端に配置されている。ここで、金属板11間の温度差が大きくならないように、絶縁板12は、熱抵抗の小さな材料(良熱伝導率材料)により、中心孔を有する環状に形成されている。また、金属板11と絶縁板12は、良熱伝導率の接着剤にて接合されている。
【0025】
リング形状に形成された金属板11の周方向の両端(一端14と他端15)は、絶縁板12の外側にはみ出すように形成されており、積層方向の両端の金属板11のうち、上端の金属板11の一端14と下端の金属板11の他端15は、外部接続端子13、16として構成されている。また、積層方向の各上側の金属板11の他端15とその各下側の金属板11の一端14とが、積層方向から見て重なる位置に、層ごとに位置をずらして形成されている。それら上側の金属板11の他端15と下側の金属板11の一端14は、金属板11と絶縁板12の積層後に順次、溶接またはハンダ付けにより導通接続されており、それにより、螺旋状に周回するコイル10Aが形成されている。そして、コイル10Aの両端が、外部接続端子13、16として、コイル10Aの外部に引き出されている。
【0026】
また、以上のコイル10Aを構成する複数枚の金属板11のうち、積層方向の中間部に位置する金属板11Aには、コイル10Aの外部に直線状に延出し且つ放熱機能を有する筐体100(図3参照)に熱的に接続される放熱用延出部21が形成されている。放熱用延出部21は、金属板11Aの積層部分の最大幅のまま延長された矩形の板体として形成されている。また、放熱用延出部21が形成された金属板11Aに隣接する下側の絶縁板12Aには、放熱用延出部21を筐体に熱的に接続する際に放熱用延出部21と筐体との間に介在して放熱用延出部21と筐体の間を絶縁する絶縁用延出部22が、放熱用延出部21に沿って形成されている。
【0027】
図1に示す本実施形態の場合、金属板11の枚数が5枚であるから、積層方向の上から3番目である中央の金属板11Aに放熱用延出部21が設けられている。金属板11の枚数が任意のN枚のときには、積層方向の上からN/2番目の金属板11、あるいは、それに一番近い金属板11に、放熱用延出部21が設けられているのが好ましい。
【0028】
このようにコイル10Aの外部に延出された放熱用延出部21を、図3に示すように、良熱伝導性を持つ絶縁用延出部22を介して、放熱機能を有する筐体100の放熱座101の上面に熱的に接続することで、積層インダクタ1Aの放熱構造が得られている。
【0029】
なお、この筐体100は、空冷用のフィン100aや図示されない水冷用の冷却水の流路によって放熱機能を付与されたダイキャスト製の部材で、上面がインダクタの載置面となっており、その載置面に直方体状の放熱座101が設けられている。そして、放熱座101の上面に、絶縁用延出部22を下側にして放熱用延出部21が載置され、図示しないネジまたは良熱伝導性の接着剤により固定されている。積層インダクタ1Aのコア4は、筐体100の上面に接していてもいなくてもよい。
【0030】
上記構成の積層インダクタ1Aおよびその放熱構造によれば、稼働時における発熱の主体であるコイル10Aを構成する金属板11Aにコイル10A外に延出する放熱用延出部21を形成して、それを直接、放熱機能を有する筐体100に熱的に接続するようにしているので、コイル10Aの熱を効率よく筐体100に逃がすことができる。
【0031】
その際に、金属板11と絶縁板12の積層方向の中間部に位置する金属板11Aに放熱用延出部21を形成しているので、放熱用延出部21を多数設けることなく、積層方向の両端側のコイル10Aの熱をバランスよく外部に逃がすことができる。したがって、積層インダクタ1Aの小型化および軽量化を図りながら、積層インダクタ1Aの温度上昇の抑制を図ることができる。
【0032】
また、放熱用延出部21を形成した金属板11Aの下側の絶縁板12Aに、放熱用延出部21を筐体100に熱的に接続する際の絶縁材となる絶縁用延出部22を設けており、しかも、その絶縁用延出部22を放熱用延出部21に沿って形成しているので、放熱用延出部21を筐体11に熱的に接続する際に必要となる絶縁材を別途用意する必要がない上、絶縁用延出部22により、コイル10Aの外部に延出する放熱用延出部21を補強および保護することができる。
【0033】
図4は、上記第1実施形態の積層インダクタ1Aとその変形例の積層インダクタ1Bの実装スペースの違いを説明するための概略説明図で、(a)は第1実施形態の積層インダクタ1Aの側面図、(b)は変形例の積層インダクタ1Bの側面図である。
【0034】
図4(a)に示すように、放熱用延出部21を単純に平板のままコイル10A外に延長すると、積層方向の上側から見た場合の積層インダクタ1Aの実装スペースS1が大きくなってしまう。そこで、図4(b)に示す変形例の積層インダクタ1Bのように、放熱用延出部21Bおよびその下側の絶縁用延出部22Bを、コイル10Bの外部に延出した方向(横方向)から積層方向(上方向)に向けてL字形に折り曲げる。そうすれば、積層方向の上側から見た場合の積層インダクタ1Bの実装スペースS2を小さくすることができる。
【0035】
(第2実施形態)
図5および図6は、上記図4(b)の変形例に相当する本発明の第2実施形態の積層インダクタの構成を示すもので、この第2実施形態の積層インダクタ10Bにおいては、コイル10Bを構成する金属板11の枚数が6枚になっており、それに対応して絶縁板12の枚数が第1実施形態のものより増えている。
【0036】
そして、積層方向の中間部に位置する上から4番目の金属板11Bに放熱用延出部21Bが設けられ、その下側の絶縁板12Bに絶縁用延出部22Bが設けられている。しかも、それら放熱用延出部21Bおよび絶縁用延出部22Bは、コイル10Bの外部に延出した方向(横方向)から積層方向(上方向)に向けてL字形に折り曲げられている。
【0037】
この積層インダクタ10BのL字形に折れ曲がった放熱用延出部21Bを筐体100に熱的に接続して放熱構造を得るには、図6に示すように、筐体100の上面にアルミニウム製の放熱プレート102を垂直に立て、その放熱プレート102の垂直な板面に放熱用延出部21Bを絶縁用延出部22Bを介して固定する。なお、放熱プレート102は、ネジ103等を利用して、筐体100の載置面に熱的および機械的に接続されている。
【0038】
このように、放熱用延出部21Bおよび絶縁用延出部22BをL字形に折り曲げた場合は、積層方向から見た場合の放熱用延出部21Bおよび絶縁用延出部22Bの張り出し寸法を小さくすることができるので、積層インダクタ1Bの実装スペースを小さくすることができる。
【0039】
(第3実施形態)
図7および図8は、本発明の第3実施形態の積層インダクタを示すもので、この第3実施形態においては、安全規格上の要請から、コイルとコアとの間に大きな沿面距離を確保する必要がある場合の例を示している。すなわち、コアが、例えばMnZn系のフェライトコア等の導電性を有する材料で構成される場合、要求される安全規格によっては、コイルとコアとの間に、数mmから10mm程度の大きな沿面距離を確保する場合がある。
【0040】
また、積層インダクタを搭載する筐体とコイルとの間にも所要の沿面距離を確保する場合がある。大きな沿面距離を確保しようとすると、どうしても製品が大きくなってしまうが、本実施形態では、製品体格をあまり大きくすることなく、安全規格と放熱性を共に確保するようにしている。
【0041】
具体的には、図7に示すように、この積層インダクタ1Cでは、コイル10Cとコア3、4との間に所要の沿面距離を確保するために、コア3、4とコイル10Cとの間に絶縁カバー5、6を配置している。また、放熱材であるアルミニウム製の放熱プレート102もコア3、4や筐体100と同電位となるため、図7および図8に示すように、コイル10Cとアルミニウム製の放熱プレート102との間にも、所要の沿面距離を確保するためのキャップ状の絶縁カバー23を介在させている。
【0042】
この絶縁カバー23は、良熱導電率のシリコン系ゴム剤を使用して形成されたもので、放熱用延出部21Bを放熱プレート102に固定する際に、放熱用延出部21Bと放熱用プレート102との間に介在する底板23aと、底板23aの周囲から放熱用延出部21Bを覆う起立した側板23bとを有している。
【0043】
なお、コイル10Cの構成は、第2実施形態の積層インダクタ1Bのコイル10Bと基本的に同じであるが、放熱用延出部21Bと放熱用プレート102との間に介在する絶縁材が絶縁カバー23で賄われるので、絶縁板に設けた絶縁用延出部22B(図5参照)が省略してある。
【0044】
(第4実施形態)
図9図11は、本発明の第4実施形態の積層インダクタを示すものである。
図1に示した第1実施形態の積層インダクタ1Aや図5に示した第2実施形態の積層インダクタ1Bでは、放熱用延出部21、21Bを形成した金属板11A、11Bのすぐ下側の絶縁板12A、12Bに絶縁用延出部22、22Bを形成した場合を示したが、図9に示すように、第4実施形態の積層インダクタ1Dでは、放熱用延出部21Dを形成した金属板11Dのすぐ上側の絶縁板12Dに絶縁用延出部22Dを形成している。
【0045】
具体的には、コイル10Dから外部に延出した放熱用延出部21Dを下側にU字状に曲げて、先端にフランジ25を設けている。同様に、コイル10Dから外部に延出した絶縁用延出部22Dを、放熱用延出部21Dの外周面に沿って下側にU字状に曲げて、先端にフランジ26を設けている。
【0046】
この放熱用延出部21Dのフランジ25の下側には、絶縁用延出部22Dのフランジ26が位置しており、図10および図11に示すように、放熱用延出部21Dのフランジ25を、絶縁用延出部22Dのフランジ26を間に挟んだ状態で、絶縁しながら筐体100上の放熱座101の上面に載置固定できるようにしている。その他の構成は、第1および第2実施形態と同様である。
【0047】
図10および図11に示すように、放熱用延出部21Dのフランジ25および絶縁用延出部22Dのフランジ26をネジ103で筐体100上の放熱座101に固定する場合は、絶縁ゴムブッシュ28をネジ103の外周に装着しながら、ネジ103を放熱材101側のネジ孔にねじ込む。そうすることにより、放熱用延出部21Dのフランジ25と放熱座101の間を絶縁することができる。ネジ以外に、絶縁性の接着剤を用いて放熱用延出部21Dのフランジ25を筐体100側に熱的に接続してもよい。
【0048】
このように、放熱用延出部21Dおよび絶縁用延出部22Dを下側にU字状に曲げて、それらの先端に形成したフランジ25、26で筐体100上の放熱座101に固定するようにした場合、図5および図6に示す第2実施形態のように、アルミニウム製の放熱プレート102を筐体100の上に立設しないですむ。
【0049】
上述した放熱延出部は、積層方向の中間部の金属板であれば、どの層の金属板に設けてもよいのであるが、中間部の1枚の金属板に形成する場合は、放熱用延出部を有する金属板を挟んで積層方向の一方側のコイルと他方側のコイルの最大温度が等しくなるように、放熱用延出部を有する金属板の位置を決定するのが望ましい。
【0050】
例えば、トランスの1次側と2次側のように、コアを共通にして1つの積層体としてのコイルの中に、複数の別系統のコイルが含まれている場合は、積層数の違いや流れる電流の違いによって、系統の違うコイルの発熱量に違いが出ることがある。そのような場合は、発熱量の多い方のコイル側に偏らせて放熱用延出部を有する金属板の位置を決定する。そして、放熱用延出部を有する金属板を挟んで積層方向の一方側のコイルと他方側のコイルの最大温度が等しくなるようにするのがよい。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態のみならず、他の各種の巻線部品を、放熱機能を有する筐体に取り付ける場合に広く適用することが可能である。
【0052】
また、上述した実施形態では、放熱用延出部を1枚の金属板にのみ形成した場合を示したが、複数の金属板に放熱用延出部を形成して、それぞれの放熱用延出部を筐体に熱的に接続するように構成することもできる。そうした場合は一層の放熱効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0053】
1A,1B,1C,1D 積層インダクタ(巻線部品)
3,4 コア
10A,10B,10C,10D コイル
11A,11B,11D 金属板
12A,12B,12D 絶縁板
21,21B,21D 放熱用延長部
22,22B,22D 絶縁用延長部
23 絶縁カバー
100 筐体
図1
図2
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