(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子キーと通信可能な通信対象に対し、当該電子キーと、キー機能を有する携帯端末とが通信可能であり、当該通信対象及び携帯端末の通信エリアを調整する通信エリア調整装置において、
前記通信対象及び電子キーが通信するときの信号の強度を、ある地点において取得する第1強度取得部と、
ユーザにより前記電子キーと同時に所持された前記携帯端末が前記通信対象と通信するときの信号の強度を、先程と同じ前記地点において取得する第2強度取得部と、
前記第1強度取得部で取得される第1強度と前記通信対象及び電子キーの距離との関係が正しいことを踏まえ、前記第2強度取得部で取得される第2強度を前記距離に紐付けすることにより、前記通信対象及び携帯端末の通信エリアを調整するエリア調整部とを備え、
前記第1強度及び第2強度の取得は、複数地点において実施され、
前記通信対象は、室内外が切り分けられていて、
前記電子キーが前記通信対象の室内通信アンテナ及び室外通信アンテナのうち室内通信アンテナのみと通信する状態下となる前記通信対象の室内の室内外境目において、前記電子キー及び前記通信対象の一方に搭載された前記第1強度取得部は、前記電子キー及び前記通信対象の他方と通信するときの信号強度を複数地点で取得するとともに、
前記電子キーが前記通信対象の室内通信アンテナ及び室外通信アンテナのうち室外通信アンテナのみと通信する状態下となる前記通信対象の室外の室内外境目において、前記電子キー及び前記通信対象の一方に搭載された前記第1強度取得部は、前記電子キー及び前記通信対象の他方と通信するときの信号強度を複数地点で取得し、
前記電子キーが前記通信対象の室内通信アンテナ及び室外通信アンテナのうち室内通信アンテナのみと通信する状態下となる前記通信対象の室内の室内外境目において、前記携帯端末及び前記通信対象の一方に搭載された前記第2強度取得部は、前記携帯端末及び前記通信対象の他方と通信するときの信号強度を複数地点で取得するとともに、
前記電子キーが前記通信対象の室内通信アンテナ及び室外通信アンテナのうち室外通信アンテナのみと通信する状態下となる前記通信対象の室外の室内外境目において、前記携帯端末及び前記通信対象の一方に搭載された前記第2強度取得部は、前記携帯端末及び前記通信対象の他方と通信するときの信号強度を複数地点で取得することを特徴とする通信エリア調整装置。
前記エリア調整部は、室内の室内外境目で前記第2強度取得部が取得した信号強度と、室外の室内外境目で前記第2強度取得部が取得した信号強度との間の1値を、前記通信エリアの室内外の切り分け点として設定することを特徴とする請求項1に記載の通信エリア調整装置。
前記電子キーは、当該電子キーにおいて動作モードの切り替えを行う第1モード切替部を備え、前記携帯端末は、当該携帯端末において動作モードの切り替えを行う第2モード切替部を備え、
前記通信エリアの調整は、前記電子キーの動作モードを前記第1モード切替部によりエリア調整モードにし、携帯端末の動作モードを前記第2モード切替部によりエリア調整モードにすることにより、実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信エリア調整装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子キーは工場等で受信感度等を調整することができるので、車両及び電子キーの通信エリアを好適な範囲に設定しておくことができる。しかし、携帯端末は各ユーザが既に所持しているものであり、電子キーで実施しているようなエリア調整の場がない。さらには、各携帯端末は種類ごとに通信性能の公差が大きく、これが原因で携帯端末ごとに通信エリアが変わってしまう問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、キー機能を持つ携帯端末の通信エリアを好適に設定することができる通信エリア調整装
置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決する通信エリア調整装置は、電子キーと通信可能な通信対象に対し、当該電子キーと、キー機能を有する携帯端末とが通信可能であり、当該通信対象及び携帯端末の通信エリアを調整する構成において、前記通信対象及び電子キーが通信するときの信号の強度を、ある地点において取得する第1強度取得部と、ユーザにより前記電子キーと同時に所持された前記携帯端末が前記通信対象と通信するときの信号の強度を、先程と同じ前記地点において取得する第2強度取得部と、前記第1強度取得部で取得される第1強度と前記通信対象及び電子キーの距離との関係が正しいことを踏まえ、前記第2強度取得部で取得される第2強度を前記距離に紐付けすることにより、前記通信対象及び携帯端末の通信エリアを調整するエリア調整部とを備えた。
【0007】
本構成によれば、例えばユーザに電子キー及び携帯端末の両方を同時に所持させ、電子キー及び通信対象の通信と、携帯端末及び通信対象の通信とを同時に実行させ、電子キー及び通信対象の通信における電波の第1強度と、携帯端末及び通信対象の通信における電波の第2強度とを取得する。この作業によって得た第1強度及び第2強度において、電子キー及び通信対象の間の距離と第1強度との関係が正しいことを踏まえ、これら距離と第2強度とを紐付けすることにより、通信対象及び携帯端末の通信エリアを調整する。よって、仮に携帯端末の受信感度に個体差や機種差があっても、携帯端末及び通信対象の通信エリアを好適な範囲に設定することが可能となる。
【0008】
前記通信エリア調整装置において、前記第1強度及び第2強度の取得は、複数地点において実施されることが好ましい。この構成によれば、強度測定は複数地点で実施されるので、エリア調整をより正しく設定するのに有利となる。
【0009】
前記通信エリア調整装置において、前記通信対象は、室内外が切り分けられていて、前記第1強度取得部及び第2強度取得部は、前記通信対象の室内の室内外境目において信号強度を複数地点で取得し、前記通信対象の室外の室内外境目においても、同様に信号強度を複数地点で取得し、前記エリア調整部は、室内の室内外境目で取得した信号強度と、室外の室内外境目で取得した信号強度との間の1値を、前記通信エリアの室内外の切り分け点として設定することが好ましい。この構成によれば、通信対象に室内外が設けられる場合、携帯端末及び通信対象の通信において、携帯端末が室内外のどちらに位置するのかを判定することが可能となる。よって、携帯端末及び通信対象の通信時、携帯端末が室内外のどちらに位置するのかを判定しながら通信を実行することが可能となる。
【0010】
前記通信エリア調整装置において、前記電子キーは、当該電子キーにおいて動作モードの切り替えを行う第1モード切替部を備え、前記携帯端末は、当該携帯端末において動作モードの切り替えを行う第2モード切替部を備え、前記通信エリアの調整は、前記電子キーの動作モードを前記第1モード切替部によりエリア調整モードにし、携帯端末の動作モードを前記第2モード切替部によりエリア調整のモードにすることにより、実行されることが好ましい。この構成によれば、エリア調整にあたっては、電子キー及び携帯端末をエリア調整モードに切り替えることがユーザに課されるので、エリア調整をより正しく実施するのに有利となる。
【0011】
前記通信エリア調整装置において、信号強度の取得をどの地点で行うのかをユーザにガイドするガイド実行部を備えることが好ましい。この構成によれば、ガイド実行部による案内に沿ってエリア調整が可能となるので、エリア調整の手順が分からずに戸惑うことがない。
【0012】
前記問題点を解決する通信エリア調整方法は、電子キーと通信可能な通信対象に対し、当該電子キーと、キー機能を有する携帯端末とが通信可能であり、当該通信対象及び携帯端末の通信エリアを調整する方法において、前記電子キー及び携帯端末の両方をユーザに所持させ、この状態下において、前記電子キー及び通信対象が通信するときの信号の強度として第1強度を取得し、前記携帯端末と通信対象が通信するときの信号の強度として第2強度を取得し、前記第1強度と前記通信対象及び電子キーの距離との関係が正しいことを踏まえ、前記第2強度を前記距離に紐付けすることにより、前記通信対象及び携帯端末の通信エリアを調整する。本方法によれば、前述の通信エリア調整装置と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キー機能を持つ携帯端末の通信エリアを好適に設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、通信エリア調整装置及び通信エリア調整方法の一実施形態を
図1〜
図7に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、無線によるキー照合が可能な無線キー照合システム2を備える。無線キー照合システム2は、携帯端末3を車両キーとする携帯端末キーシステム4と、電子キー5を車両キーとする電子キーシステム6とを備えることが好ましい。携帯端末3は、例えば高機能携帯電話であり、キー機能を備えた携帯端末キーである。車両1は、携帯端末3及び電子キー5のどちらでも操作が可能である。
【0016】
携帯端末キーシステム4は、通信距離が例えば数m〜数十mの近距離無線通信であることが好ましい。近距離無線通信には、例えばブルートゥース(登録商標、以下同様)の通信がある。携帯端末キーシステム4は、車両1及び携帯端末3の間の距離Lkを計測することにより、車内外位置の判定結果も踏まえて、携帯端末3の正当性を判定するとよい。この場合、位置判定の仕方としては、(I)車両1や携帯端末3から送信される近距離無線の電波Ss1を通信の相手側で受信したときの強度から求める方式や、(II)携帯端末3から送信される音波Ss2を受信したときの強度から求める方式がある。
【0017】
電子キーシステム6は、例えば車両1からの通信に対して電子キー5が応答してID照合を実行するキー操作フリーシステムであることが好ましい。キー操作フリーシステムの通信(スマート通信)は、通信距離が例えば数m程度の狭域無線通信であることが好ましい。狭域無線通信には、例えば車両1→電子キー5の通信がLF帯の電波、その逆がUHF帯の電波で送信される双方向通信がある。
【0018】
車両1は、携帯端末3の正当性を確認する端末認証ECU(Electronic Control Unit)7と、電子キー5の正当性を確認する照合ECU8と、車載電装品の電源を管理するボディECU9と、エンジン11を制御するエンジンECU10とを備える。これらECUは、車内の通信線12を通じて電気接続されている。通信線12には、例えばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)がある。
【0019】
端末認証ECU7のメモリ13には、端末認証ECU7(車両1)に登録された携帯端末3の携帯端末キーIDが書き込み保存されている。端末認証ECU7には、複数の携帯端末の登録が可能である。端末認証ECU7には、端末認証ECU7において携帯端末キーシステム4に準ずる電波の送受信が可能な通信アンテナ14が接続されている。端末認証ECU7には、音声を出力可能なスピーカ16が接続されている。スピーカ16は、例えば20kHz程度の音波(高周波音)、一例としてモスキート音や非可聴音を出力する。
【0020】
照合ECU8のメモリ17には、照合ECU8(車両1)に登録された電子キー5の電子キーIDが書き込み保存されている。照合ECU8には、複数の電子キー5の登録が可能である。照合ECU8には、車外に電子キーシステム6の電波を送信可能な車外送信アンテナ18と、車内に電子キーシステム6の電波を
送信可能な車内送信アンテナ19と、車両1において電子キーシステム6の電波を受信可能な車両受信アンテナ20とが電気接続されている。車外送信アンテナ18及び車内送信アンテナ19は、例えばLF電波を送信可能である。車両受信アンテナ20は、例えばUHF電波を受信可能である。
【0021】
携帯端末3は、携帯端末3の動作を制御する端末制御部21と、携帯端末3において携帯端末キーシステム4に準ずる電波の送受信を行う通信アンテナ22と、音声を集音可能なマイク23とを備える。携帯端末3のメモリ24には、各携帯端末3に割り振られた固有IDである携帯端末キーIDが書き込み保存されている。携帯端末3の携帯端末キーIDは、例えばネットワーク(インターネット等)の通信を介して専用のサイト等からダウンロードすることにより、携帯端末3に登録される。マイク23は、車両1のスピーカ16から出力される音波(高周波音)を集音可能である。
【0022】
携帯端末3は、携帯端末3において受信した信号の強度を測定する強度測定回路25を備えることが好ましい。強度測定回路25は、車両1(通信アンテナ14)から近距離無線により送信された電波Ss1を携帯端末3(通信アンテナ22)で受信したときの信号強度や、車両1のスピーカ16から送信された音波Ss2をマイク23で受信したときの信号強度を測定する。携帯端末キーシステム4では、強度測定回路25で測定された
信号強度を確認することにより、車両1及び携帯端末3の間の距離Lkを判定することが可能である。
【0023】
電子キー5は、電子キー5の動作を制御するキー制御部27と、電子キー5において電波受信を行う受信アンテナ28と、電子キー5において電波送信を行う送信アンテナ29とを備える。キー制御部27のメモリ30には、各電子キー5の固有IDである電子キーIDが書き込み保存されている。受信アンテナ28は、例えばLF電波を受信可能である。送信アンテナ29は、例えばUHF電波を送信可能である。
【0024】
車両1は、車両1の電源状態を切り替えるときに操作されるエンジンスイッチ31を備える。エンジンスイッチ31は、例えば運転席に配置されたプッシュモーメンタリスイッチからなる。エンジンスイッチ31は、例えば照合ECU8及びボディECU9に電気接続される。車両1の電源状態は、エンジンスイッチ31の操作によって、
IGオフ、ACCオン、IGオン、エンジンスタートの各状態に切り替えられる。ボディECU9は、車両ドアの施解錠を切り替えるメカ部分のドアロック機構32を制御する。
【0025】
携帯端末3は、車両1の通信アンテナ14から電波Ss1により送信されたリクエスト信号、又はスピーカ16から音波Ss2により送信されたリクエスト信号を受信すると、自身に登録されている携帯端末キーIDを通信アンテナ22から端末認証ECU7に送信して、端末認証ECU7に携帯端末キーID照合を実行させる。このとき、強度測定回路25は、車両1から送信された電波Ss1や音波Ss2を受信したときの信号強度を測定し、その信号強度データを、近距離無線通信を通じて端末認証ECU7に送信する。端末認証ECU7は、携帯端末3から受信した信号強度データから、車両1及び携帯端末3の距離Lkを割り出し、携帯端末3が車外において車両1に十分近い場所に位置し、かつ携帯端末キーID照合が成立すれば、携帯端末キーシステム4の車外照合を成立とし、車両ドアの施解錠を許可又は実行する。また、端末認証ECU7は、携帯端末3が車内に位置する場所をとり、かつ携帯端末キーID照合が成立すれば、携帯端末キーシステム4の車内照合を成立とし、エンジンスイッチ31の操作による電源状態の切り替えを許可する。
【0026】
電子キー5は、車外送信アンテナ18から送信されたリクエスト信号を受信すると、自身に登録されている電子キーIDを照合ECU8に送信して、照合ECU8にスマート照合を実行させる。照合ECU8は、この車外スマート照合が成立すれば、車両ドアの施解錠を許可又は実行する。また、照合ECU8は、車内に位置した電子キー5と車内スマート照合が成立すれば、エンジンスイッチ31の操作による電源状態の切り替えを許可する。
【0027】
図1及び
図2(a),(b)に示すように、車両1は、携帯端末3及び電子キー5の両方と通信可能な通信対象34(一例は車両1、以下同様)において、携帯端末3及び通信対象34の通信エリアEkを調整する通信エリア調整装置35を備える。これは、
図2(a),(b)に示す通り、現状の携帯端末3では機種ごとに受信感度が異なることから、例えば受信感度に応じて一律に距離Lkを設定してしまうと、機種ごとで距離Lkの判定結果が異なってしまい、これが通信エリアEkの一定化を妨げるからである。そこで、本例の通信エリア調整装置35は、例えばユーザに携帯端末3及び電子キー5の両方を所持させ、車両1の周囲及び内部を移動させることにより、携帯端末3の受信信号強度と、携帯端末3及び通信対象34の間の距離Lkとについて、これら2者間のキャリブレーションをとる。
【0028】
図1に戻り、通信エリア調整装置35は、電子キー5において動作モードの切り替えを行う第1モード切替部36と、携帯端末3において動作モードの切り替えを行う第2モード切替部37とを備えることが好ましい。第1モード切替部36は、例えばキー制御部27に設けられる。第1モード切替部36は、例えば電子キー5において特定操作が実施されると起動し、電子キー5の動作モードを通常モードからエリア調整モードに切り替える。第2モード切替部37は、例えば端末制御部21に設けられる。第2モード切替部37は、例えば携帯端末3において特定操作が実施されると起動し、携帯端末3の動作モードを通常モードからエリア調整モードに切り替える。
【0029】
通信エリア調整装置35は、電子キー5及び通信対象34が通信するときの信号の強度(以降、第1強度R1と記す)を、複数地点Pにおいて取得する第1強度取得部38を備える。第1強度取得部38は、例えば電子キー5に設けられる。第1強度R1は、スマート通信において車両1の送信アンテナ(車外送信アンテナ18又は車内送信アンテナ19)から送信された電波Srwを電子キー5で受信したときの受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)であるとよい。この場合、第1強度取得部38は、電子キー5に設けられた強度測定回路39で受信信号の第1強度R1を測定する。電子キー5は、第1強度取得部38によって取得した第1強度R1のデータを、スマート通信の通信
過程において車両1に送信する。
【0030】
通信エリア調整装置35は、電子キー5の近くに配置された携帯端末3が通信対象34と通信するときの信号の強度(以降、第2強度R2と記す)を、第1強度取得部38と同じ複数地点Pにおいて取得する第2強度取得部40を備える。第2強度取得部40は、例えば端末制御部21に設けられる。第2強度取得部40は、強度測定回路25で受信信号の第2強度R2を測定する。第2強度R2は、車両1の通信アンテナ14から送信された電波Ss1を携帯端末3で受信したときの受信信号強度や、車両1のスピーカ16から送信された音波Ss2を携帯端末3で受信したときの音波強度であるとよい。
【0031】
通信エリア調整装置35は、電子キーシステム6によって識別できる距離Lsと、第2強度R2とを紐付けすることにより、携帯端末3及び通信対象34の通信エリアEkを調整するエリア調整部41を備える。エリア調整部41は、例えば端末認証ECU7に設けられる。照合ECU8のメモリ17には、電子キーシステム6における電波Srwの受信信号強度(第1強度R1)と距離Lsとの関係性がまとめられたエリア情報42が書き込み保存されている。エリア情報42は、照合ECU8に予め書き込まれたパラメータであって、受信した電波Srwの第1強度R1がどの値をとるときに距離Lsがどれだけになるのかをまとめたものである。
【0032】
エリア調整部41は、第1強度取得部38で取得される第1強度R1と、電子キー5及び通信対象34の距離Lsとの関係が正しいことを前提に、第2強度取得部40で取得される第2強度R2を距離Lsに紐付けすることにより、携帯端末3及び通信対象34の通信エリアEkを調整する。具体的に述べると、エリア調整部41は、エリア調整時、エリア情報42を参照して、いま通信が確立している第2強度R2に対する距離Lsを割り出し、これらを紐付けしてメモリ13に書き込む。すなわち、エリア調整部41は、車両1及び携帯端末3の実距離である距離Lsと第2強度R2とを対応付けたエリア情報43を作成する。
【0033】
通信エリア調整装置35は、信号強度の取得をどの地点で行うのかをユーザにガイドするガイド実行部44を備えることが好ましい。ガイド実行部44は、ある地点Pにおいてガイドを行って第2強度R2を受信できると、次の地点Pのガイドを実施し、エリア調整に必要な全ての地点Pの第2強度R2を受信できるまで、ガイドを繰り返すとよい。
【0034】
次に、
図3〜
図7を用いて、通信エリア調整装置35の動作を説明する。
図3(a),(b)に示すように、元から車載されている電子キーシステム6は、製造又は出荷の際にエリア調整が施されることにより、スマート通信の電波Srwを電子キー5で受信したときの第1強度(受信信号強度)R1と、車両1及び電子キー5の距離Lsとが、一義的な値をとる。具体的には、第1強度R1が「R1−1」であれば、距離は「Ls−1」であり、第1強度R1が「R1−2」であれば、距離は「Ls−2」であると特定できる。このように、電子キーシステム6では、第1強度R1から距離Lsを一義的に導くことが可能である。
【0035】
そこで、携帯端末3及び電子キー5を同時に持って車両1と各々通信させ、第1強度R1から判明する距離Lsを、携帯端末3において受信する信号の第2強度R2に紐付けすれば、仮に携帯端末3の受信強度に機種差や個体差があっても、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkを、機種差や個体差を考慮に入れた好適な範囲に設定することができるはずである。すなわち、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkの最適化を図ることが可能になる。本例は、この原理を用いて、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkを調整する。
【0036】
図4に示すように、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkを調整するにあたって、まず携帯端末3及び電子キー5をエリア調整モードに移行させる。電子キー5をエリア調整モードに切り替えるには、電子キー5に特定操作を行い、第1モード切替部36によってモード切り替えを実現する。電子キー5の特定操作とは、例えば電子キー5に設けられたボタン群を所定の手順及び回数で操作する例がある。携帯端末3をエリア調整モードに切り替えるには、携帯端末3に特定操作を行い、第2モード切替部37によってモード切り替えを実現する。携帯端末3の特定操作とは、例えば携帯端末3でエリア調整のアプリケーションを実行する例がある。
【0037】
このとき、携帯端末3又は電子キー5は、エリア調整開始要求Saを車両1に送信し、端末認証ECU7をエリア調整モードに切り替えておくとよい。エリア調整開始要求Saは、例えば端末認証ECU7の動作モードをエリア調整モードに切り替えるコマンドである。端末認証ECU7は、エリア調整モードになると、通信アンテナ14から電波Ss1を送信する状態、またはスピーカ16から音波Ss2を送信する状態にスタンバイする。また、照合ECU8は、スマート通信の電波Srw(一例はリクエスト信号)を定期的に送信する状態をとり、電子キー5とスマート通信ができる状態に設定される。
【0038】
図5に示すように、ユーザは、携帯端末3及び電子キー5を同時に持って、車内外を移動する。具体的に述べると、ガイド実行部44は、車外送信アンテナ18がスマート通信の電波Srwを送信する状態下において、携帯端末3及び電子キー5を同時に持ったユーザを、車外の複数地点Pを移動させるように案内する。最初は、例えばユーザを車両ドアが閉状態の車両1において「運転席側の車外」に位置させるガイドを行う。ユーザは、このガイドに従い、運転席車外の地点P1に移動する。端末認証ECU7は、ガイドを行ってから所定時間後、通信アンテナ14からの電波Ss1の送信、またはスピーカ16からの音波Ss2の送信を実行する。
【0039】
携帯端末3は、車両1から送信された電波Ss1や音波Ss2を受信すると、このときの第2強度R2を強度測定回路25で測定する。そして、携帯端末3は、測定した第2強度R2のデータを、近距離無線通信の過程において車両1に送信する。また、電子キー5は、スマート通信において車両1の電波Srwを受信すると、このとき
の第1強度R1を強度測定回路39で測定する。そして、電子キー5は、測定した第1強度R1のデータを、スマート通信の過程において車両1に送信する。
【0040】
エリア調整部41は、電子キー5から受信した第1強度R1のデータをエリア情報42に照らし合わせて、車両1及び電子キー5の距離Lsを割り出す。そして、エリア調整部41は、エリア情報42を参照して割り出した距離Lsを、携帯端末3から受信した第2強度R2に紐付けすることにより、いま近距離無線通信が確立している携帯端末3と車両1との間の距離Lsを求める。例えば、第1強度R1が「80dBμV/m」のときの距離Lsを「1.0m」とすると、このときに取得した第2強度R2の「−90dBm」と距離Lsの「1.0m」とを紐付けする。
【0041】
図6に示すように、運転席側の車外において距離Ls及び第2強度R2の紐付けが済むと、これと同様の設定作業を、車外の他の地点P2〜P4でも実行する。具体例としては、例えば「車体前部側の車外」の地点P2、「助手席側の車外」の地点P3、「車体後部側の車外」の地点P4の順に、調整を実施させる。以上により、通信エリアEkの調整にあたって必要となる車外の各地点P1〜P4の距離Ls及び第2強度R2について、紐付けが完了する。
【0042】
車外の各地点P1〜P4で紐付けが完了すると、今度は車内において同様の紐付け作業を実行する。このとき、ユーザは車内に乗車し、車両ドアを閉めた状態にする。ガイド実行部44は、車内送信アンテナ19がスマート通信の電波Srwを送信する状態下において、携帯端末3及び電子キー5を同時に持ったユーザを、車内の複数地点を移動させるように案内する。例えば、車内運転席の地点P5、車内助手席の地点P6で作業を実施させるとよい。これにより、通信エリアEkの調整にあたって必要となる車内の各地点P5,P6の距離Ls及び第2強度R2について、紐付けが完了する。
【0043】
エリア調整部41は、各地点P1〜P6で紐付けした距離Ls及び第2強度R2を基に、携帯端末キーシステム4における車両1及び携帯端末3の通信エリアEkを調整する。具体的には、各地点P1〜P6において紐付けされた距離Ls及び第2強度R2の値を、端末認証ECU7のメモリ13に書き込んでいくことにより、距離Ls及び第2強度R2の関係をまとめたエリア情報43をメモリ13に作成する。これにより、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkが設定される。
【0044】
図7に、車内及び車外の各位置でとった第2強度R2のヒストグラムを図示する。車外及び車内で第2強度R2の強度分布、具体的には各地点P1〜P6で取得した強度の分布をとると、同図からも分かるように、車内と車外とで各々のヒストグラムを得ることができる。これら波形から分かるように、車外から見た車内外の境目において、第2強度R2は、サンプル数がピークのときの値「R2−max1」に対して強度が所定量低い「R2−A」の範囲の1値をとる可能性が高い。また、この傾向は車内でも同様であり、車内から見た車内外の境目において、第2強度R2は「R2−B」の範囲の1値をとる可能性が高い。よって、車外から見て車内外の境目と判定できた信号強度の1値と、車内から見て車内外の境目と判定できた信号強度の1値との間の信号強度の1値を、車内外の切り分け点Rxとして取り扱える可能性が高いといえる。
【0045】
そこで、エリア調整においては、車外において車内外の境目付近、すなわち車外ドア付近において、複数地点Pで第2強度R2を計測する作業を行う。そして、同様に、車内において車内外の境目付近、すなわち車内ドア付近において、複数地点Pで第2強度R2を計測する作業を行う。エリア調整部41は、車外ドア付付近おいて取得した第2強度R2と、車内ドア付近において取得した第2強度R2との間の1値を、車内外の切り分け点Rxとして設定する。これにより、携帯端末キーシステム4の通信において、携帯端末3が車内外のどちらに位置するのかを精度よく識別することが可能となる。
【0046】
また、同様の考え方から、室内及び車外における第2強度R2のヒストグラムを得るために、P1〜P6の各地点においても、同様に第2強度R2を複数回取得することが好ましい。こうすれば、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkを、より正しく設定するのに一層有利となる。
【0047】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ユーザに携帯端末3及び電子キー5の両方を同時に所持させ、車両1及び電子キー5の通信(電子キーシステム6の通信)と、車両1及び携帯端末3の通信(携帯端末キーシステム4の通信)とを同時に実行させ、電子キーシステム6の通信における電波の第1強度R1と、携帯端末キーシステム4の通信における電波の第2強度R2とを取得する。そして、この作業を車内外の複数の地点Pで実行する。以上の作業によって得た第1強度R1及び第2強度R2において、車両1及び電子キー5の間の距離Lsと第1強度R1との関係が正しいことを踏まえ、この距離Lsと第2強度R2とを紐付けすることにより、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkを調整する。よって、仮に携帯端末3の受信感度に個体差や機種差があっても、車両1及び携帯端末3の通信エリアEkを好適な範囲に設定することができる。
【0048】
(2)第1強度R1及び第2強度R2の取得は、複数地点Pにおいて実施される。よって、通信エリアEkのエリア調整をより正しく行うのに一層有利となる。
(3)車外ドア付近において距離Ls及び第2強度R2の紐付けを複数地点Pで行い、同様に車内ドア付近において距離Ls及び第2強度R2の紐付けを複数地点Pで行い、これらの間の1値を車内外の切り分け点Rxとして設定する。このため、携帯端末キーシステム4の通信において、携帯端末3が車内外のどちらに位置するのかを判定することができる。よって、携帯端末キーシステム4の通信時、携帯端末3が車内外のどちらに位置するのかを正確に判定しながら通信(ID照合)を実行することができる。
【0049】
(4)電子キー5に第1モード切替部36を設け、携帯端末3に第2モード切替部37を設け、これらによって携帯端末3及び電子キー5をエリア調整モードに切り替えて、エリア調整を実行する。よって、エリア調整にあたっては、携帯端末3及び電子キー5をエリア調整モードに切り替えることがユーザに課されるので、エリア調整をより正しく実施するのに有利となる。
【0050】
(5)車両1には、第1強度R1及び第2強度R2の取得をどの地点で行うのかをユーザにガイドするガイド実行部44が設けられる。よって、ガイド実行部44による案内に沿ってエリア調整が可能となるので、ユーザはエリア調整の手順が分からずに戸惑うことがない。
【0051】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・携帯端末3で測定された第2強度R2のデータは、全ての地点Pにおいて強度測定が終了した後、まとめて車両1に送信されてもよい。なお、これは第1強度R1のデータでも同様にいえる。
【0052】
・第1強度R1は、車両1から送信された電波Srwを電子キー5受信したときの強度に限定されず、電子キー5から送信された電波を車両1が受信したときの強度に変更してもよい。
【0053】
・第2強度R2は、車両1から送信された電波Ss1や音波Ss2を携帯端末3で受信したときの強度に限定されず、携帯端末3から送信された電波を車両1が受信したときの強度に変更してもよい。
【0054】
・電波強度の測定は、例えば車外のみで実施されてもよいし、逆に車内のみで実施されてもよい。
・電波強度の測定地点は、実施形態の述べた地点P以外の位置に適宜変更してもよい。
【0055】
・第1強度R1及び第2強度R2の取得は、1つの地点Pのみで実施されるものでもよい。
・電波強度測定時に車両1から送信される電波Srwは、通常のスマート通信に準じた電波が送信されることに限らず、エリア調整用の専用の電波としてもよい。
【0056】
・距離Ls及び第1強度R1の関係が正しい通信システムは、電子キーシステム6に限定されず、種々の無線によるキーシステムに変更可能である。すなわち、第1強度R1は、他のキーシステムの電波の受信信号強度に変更可能である。
【0057】
・第2強度R2は、電波Ss1及び音波Ss2の受信強度に限定されず、他の信号に適宜変更してもよい。
・強度測定地点のガイドは、車両1側で実施されることに限らず、携帯端末3や電子キー5で実施されてもよい。
【0058】
・受信強度の取得地点のガイド(案内)は省略してもよい。この場合、電波強度の取得地点が予め決められていて、その地点を順に辿ることで受信強度の測定を実施すればよい。
【0059】
・通信エリア調整装置35は、車両1に採用されることに限らず、他の機器や装置に適用されてもよい。すなわち、通信対象34は、車両1に限定されず、他の機器や装置に変更可能である。