特許第6356477号(P6356477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356477
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/228 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   C08J9/228CFD
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-94864(P2014-94864)
(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-212323(P2015-212323A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】篠原 充
(72)【発明者】
【氏名】及川 政春
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/047075(WO,A1)
【文献】 特開2004−083890(JP,A)
【文献】 特開2007−015228(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/058056(WO,A1)
【文献】 特開2010−111828(JP,A)
【文献】 特開2011−213906(JP,A)
【文献】 特開2010−270209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B29C 44/00−44/60
B29C 67/20−67/24
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体において、
該ポリ乳酸発泡粒子が、下記の条件1にて得られる1回目のDSC曲線と2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線には、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピークと、該基準の頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピークとが現れるものであり、
該発泡粒子成形体は、該発泡粒子成形体を構成する該発泡粒子が相互に融着していると共に、連通した空隙が該発泡粒子間に形成されているものであり、該発泡粒子成形体の空隙率が8〜45体積%であり、かさ密度が0.01〜0.2g/cmであり、曲げ強さ:A(MPa)と該発泡粒子成形体のかさ密度:B(g/cm)との比(A/B)が6〜25(MPa・cm/g)であることを特徴とする、空隙を有する発泡粒子成形体。

条件1
〔1、2回目のDSC曲線の測定方法〕
JIS K7122(1987)の熱流束示差走査熱量測定法に基づきポリ乳酸発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とし、次いで1回目のDSC曲線の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を2回目のDSC曲線とする。
【請求項2】
前記1回目のDSC曲線の該基準の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピークの熱量が5〜20J/gであることを特徴とする、請求項1に記載の空隙を有する発泡粒子成形体。
【請求項3】
前記ポリ乳酸発泡粒子の独立気泡率が80%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の空隙を有する発泡粒子成形体。
【請求項4】
前記ポリ乳酸発泡粒子において、下記の条件2にて求められる該発泡粒子全体の吸熱量(Br:endo)[J/g]が下記(1)式を満足すると共に、該発泡粒子表層部の吸熱量(Brs:endo)[J/g]と該発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)[J/g]が下記(2)式を満足することを特徴とする、請求項1、2または3に記載の空隙を有する発泡粒子成形体。
(Br:endo)>25 ・・・(1)
(Brc:endo)>(Brs:endo)≧0 ・・・(2)

条件2
[測定試料の調整]
(発泡粒子表層部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて試験片とする。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/6〜1/4の重量の測定試料を採取することとする。
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。
[吸熱量の測定]
それぞれの吸熱量、(Br:endo)、(Brs:endo)、または(Brc:endo)の測定値は、ポリ乳酸発泡粒子、該発泡粒子の表層部から採取された測定試料または該発泡粒子の中心部から採取された測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡粒子成形体に関し、詳しくは発泡粒子間に空隙率を有し、通気性、透水性、消音性、緩衝性等を発現することが可能な発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリスチレン樹脂に代表される汎用樹脂からなる発泡体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性に優れていることから、多分野にわたって使用されてきた。
【0003】
ところが、近年、地球環境に対する意識が高まると共に、石油資源の枯渇などの環境問題がクローズアップされるようになった。その影響により、従来の石油資源を原料とする前記の汎用樹脂に変わって、カーボンニュートラルな材料としてのポリ乳酸が注目されている。
【0004】
前記ポリ乳酸は、とうもろこし等の植物を出発原料として作られるものであり、カーボンニュートラルの考え方から環境低負荷型の熱可塑性樹脂である。かかるポリ乳酸は、環境に優しい植物由来の発泡用樹脂として用いられることが試みられている。例えば発泡体の分野において、ポリ乳酸を原料とする発泡粒子成形体(特許文献1参照)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−213906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記汎用樹脂からなる発泡粒子成形体は、軽量性、緩衝性、及び断熱性に優れ、目的用途に応じた形状設計、物性設計が容易なものであり、更に、透水性等の機能を付加するために発泡粒子間に空隙を有するものも開発されている。一方、ポリ乳酸を原料とする発泡粒子成形体においては、該成形体を得るための発泡粒子を構成しているポリ乳酸の結晶状態が、発泡粒子の型内成形性に大きく影響することから、汎用樹脂発泡粒子成形体と比較して良好な成形体を得ること自体が難しいものである。具体的には、該ポリ乳酸の結晶化度が低いと得られる発泡粒子成形体の寸法安定性や強度が劣るものとなる。一方、該ポリ乳酸の結晶化度が高いと、発泡粒子相互の融着性に優れる発泡粒子成形体を得ることが難しくなる。この問題は、発泡粒子間に空隙を有する発泡粒子成形体(以下、空隙発泡粒子成形体ともいう。)を製造しようとする場合には、更に大きな問題となる。そのため、発泡粒子間に空隙を有し、かつ発泡粒子相互の融着性に優れるポリ乳酸発泡粒子成形体を得ることは、前記汎用樹脂からなる発泡粒子成形体と比べて型内成形時の成形体の収縮等の課題があり更に難しくなる。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑み、ポリ乳酸を原料とする発泡粒子成形体であって、発泡粒子間に空隙が形成されているにもかかわらず、発泡粒子相互の融着性に優れ適度な機械的強度を有し、通気性、透水性、消音性、緩衝性を発現することが可能な、空隙発泡粒子成形体を提供することを、その課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、空隙を有する発泡粒子成形体が提供される。
[1]ポリ乳酸発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体において、
該ポリ乳酸発泡粒子が、下記の条件1にて得られる1回目のDSC曲線と2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線には、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピークと、該基準の頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピークとが現れるものであり、
該発泡粒子成形体は、該発泡粒子成形体を構成する該発泡粒子が相互に融着していると共に、連通した空隙が該発泡粒子間に形成されているものであり、該発泡粒子成形体の空隙率が8〜45体積%であり、かさ密度が0.01〜0.2g/cmであり、曲げ強さ:A(MPa)と該発泡粒子成形体のかさ密度:B(g/cm)との比(A/B)が6〜25(MPa・cm/g)であることを特徴とする、空隙を有する発泡粒子成形体。
条件1
〔1、2回目のDSC曲線の測定方法〕
JIS K7122(1987)の熱流束示差走査熱量測定法に基づきポリ乳酸発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とし、次いで1回目のDSC曲線の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を2回目のDSC曲線とする。
[2]前記1回目のDSC曲線の該基準の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピークの熱量が5〜20J/gであることを特徴とする、請求項1に記載の空隙を有する発泡粒子成形体。
[3]前記ポリ乳酸発泡粒子の独立気泡率が80%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の空隙を有する発泡粒子成形体。
[4]前記ポリ乳酸発泡粒子において、下記の条件2にて求められる該発泡粒子全体の吸熱量(Br:endo)[J/g]が下記(1)式を満足すると共に、該発泡粒子表層部の吸熱量(Brs:endo)[J/g]と該発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)[J/g]が下記(2)式を満足することを特徴とする、請求項1、2または3に記載の空隙を有する発泡粒子成形体。
(Br:endo)>25 ・・・(1)
(Brc:endo)>(Brs:endo)≧0 ・・・(2)
条件2
[測定試料の調整]
(発泡粒子表層部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて試験片とする。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/6〜1/4の重量の測定試料を採取することとする。
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。
[吸熱量の測定]
それぞれの吸熱量、(Br:endo)、(Brs:endo)、または(Brc:endo)の測定値は、ポリ乳酸発泡粒子、該発泡粒子の表層部から採取された測定試料または該発泡粒子の中心部から採取された測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空隙発泡粒子成形体は、環境低負荷型の熱可塑性樹脂であるポリ乳酸を原料とするものである。該成形体を得るためのポリ乳酸発泡粒子は、その結晶状態の変化に起因して、型内成形が難しいものであり、発泡粒子成形体自体を得ることが難しいものであるにもかかわらず、本発明の発泡粒子成形体は特定の空隙を有し、発泡粒子相互の融着性に優れ空隙発泡粒子成形体特有の優れた物性を発現するものであり、発泡粒子間に目的の応じた適度な空隙を有することにより、通気性、透水性、消音性等の効果を発現することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の1回目のDSC曲線(I)の例示である。
図2図2は、熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の2回目のDSC曲線(I)の例示である。
図3図3は、熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の吸熱量(Br:endo)を示す2回目のDSC曲線(II)の例示である。
図4図4は、熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の吸熱量(Br:endo)を示す2回目のDSC曲線(II)の他の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の空隙発泡粒子成形体について詳細に説明する。
本発明の空隙発泡粒子成形体は、ポリ乳酸発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)を型内成形することにより得られるものである。該ポリ乳酸発泡粒子は、ポリ乳酸により構成されている。
【0012】
該ポリ乳酸は、ポリ乳酸、或いはポリ乳酸と他の樹脂との混合物からなることができる。なお、該ポリ乳酸は、乳酸に由来する成分単位を50モル%以上含むポリマーであることが好ましい。該ポリ乳酸としては、例えば(a)乳酸の重合体、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(d)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(e)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(f)これら(a)〜(e)の何れかの組合せによる混合物等が包含される。また、該ポリ乳酸には、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ステレオブロックポリ乳酸と呼ばれるものも包含される。なお、乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物が挙げられる。
本発明におけるポリ乳酸としては、例えば、後述する(1)式、(2)式の条件を満足する発泡粒子を得ることができるものであって、乳酸成分の異性体比率(D体/L体)が99/1〜94/6、6/94〜1/99、特に97/3〜94/6、6/94〜3/97のものが好ましく用いられる。また、本発明の発泡粒子成形体を構成しているポリ乳酸は、融点(Tm)が135〜175℃、更に145〜175℃のものであることが好ましい。
【0013】
上記(b)における他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。また、上記(c)及び(e)における脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられる。また、上記(c)及び(d)における脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0014】
また、本発明で用いられるポリ乳酸は、分子鎖末端が封鎖されていることが好ましい。これにより、発泡粒子の製造過程での加水分解をより確実に抑制することができ、後述する分散媒放出発泡法による発泡方法が容易になることから、前記1回目のDSC曲線における高温側に頂点温度を有する融解ピークの生成、制御が確実なものとなり、型内成形に耐え得る良好な発泡粒子が得られ易くなる。更には型内成形により得られる空隙発泡粒子成形体の耐久性が向上する。一方、押出発泡法においても不要な加水分解を抑制できる。
【0015】
上記末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミドなどの芳香族モノカルボジイミド、ポリ(4−4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)などの脂肪族ポリカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。
これらの末端封鎖剤は単独で使用しても良く、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。また、末端封鎖剤の配合量は、ポリ乳酸100重量部あたりに0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0016】
また、本発明で用いられるポリ乳酸には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において他の樹脂を混合することもできる。
【0017】
本発明の空隙発泡粒子成形体は、前記ポリ乳酸で構成される発泡粒子を型内成形することにより得られるものである。
該発泡粒子は、熱流束示差走査熱量測定法により下記の条件1にて得られる1回目のDSC曲線(以下、1回目のDSC曲線(I)ともいう。)と2回目のDSC曲線(以下、2回目のDSC曲線(I)ともいう。)において、1回目のDSC曲線(I)には、2回目のDSC曲線(I)の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピーク(以下、高温ピークともいう。)と、該基準の頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピーク(以下、固有ピークともいう。)とが現れる発泡粒子である。但し、2回目のDSC曲線(I)に、複数の融解ピークが現れる場合や融解ピークの高温側にショルダー部が現れる場合は、それらの融解ピークの頂点やショルダー部の変曲点のうち、最も高温側の、融解ピークの頂点温度またはショルダー部の変曲点温度を、2回目のDSC曲線(I)の融解ピークの頂点温度とする。
【0018】
条件1
〔1、2回目のDSC曲線の測定方法〕
JIS K7122(1987)の熱流束示差走査熱量測定法に基づきポリ乳酸発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線(I)とし、次いで1回目のDSC曲線の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を2回目のDSC曲線(I)とする。
【0019】
該発泡粒子は、高温ピークを有することにより、発泡粒子の耐熱性や高温時の剛性が向上していること、型内成形時において発泡粒子が過度に二次発泡することが抑制されていることなどにより、成形型内において、金型内の隅々まで加熱媒体による発泡粒子の加熱が可能であると共に、所望される空隙を形成することが可能となる。そのため、融着性に優れると共に所定の空隙率を有する空隙発泡粒子成形体を得ることができ、最終的に得られる空隙発泡粒子成形体は、厚みが厚いものや形状が複雑なものであっても、空隙を有すると共に発泡粒子相互の融着性に優れるものとなる。
【0020】
なお、前記高温ピークは、前記示差走査熱量測定によって得られる発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)にのみに現れ、2回目のDSC曲線(I)には、現れないものである。該高温ピークは、後述する熱処理により結晶を成長させることにより上記のとおり発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に出現するようになる。また、発泡粒子の2回目のDSC曲線(I)に現れる固有ピークは、ポリ乳酸固有の結晶構造に起因する融解ピークである。このような発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に高温ピークが現れる現象は、樹脂粒子を発泡させ発泡粒子を得る際の熱履歴により形成されるポリ乳酸の二次結晶に起因するものである。
【0021】
前記1回目のDSC曲線(I)の一例を図1に、2回目のDSC曲線(I)の一例を図2に示す。図1図2の対比から、図2の二つの融解ピークの最も高温側の融解ピークの頂点温度を基準にして、図1において該基準の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピークが高温ピークであり、該基準の頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピークが固有ピークということになる。即ち、図1において、融解ピークaが固有ピークであり、融解ピークbが高温ピークである。
また、本明細書において上記2回目のDSC曲線(I)における最も面積の大きな融解ピークの頂点温度、即ち融解ピークcの頂点温度をポリ乳酸の融点(Tm)、融解ピークの高温側の裾がベースラインに戻った点の温度を融解終了温度(Te)とする。
【0022】
なお、図1には2つの融解ピークa,bが二山の曲線で描かれているが、DSC曲線は必ずしもこのような曲線になるとは限らず、複数の融解ピークの重なりによりDSC曲線が形成され、全体として、複数の固有ピークや複数の高温ピークが、DSC曲線上に現れる場合もある。
【0023】
高温ピーク熱量(J/g)は、図1に示すように、1回目のDSC曲線(I)の融解ピークの低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点αとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点βとし、固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部にあたるDSC曲線上の点γから、点αと点βを結ぶ直線へ、グラフの縦軸に平行な線を引き、その交点を点δとした場合、点γと点δとを結ぶ直線、点δと点βとを結ぶ直線、およびDSC曲線によって囲まれる部分(図1の斜線部分)の面積に対応する吸熱量である。なお、図1には現れてはいないが、融解ピークaの低温側に該融解ピークaと連続して発熱ピークが現れる場合があり、そのような場合は、上記のように、融解ピークの低温側のベースラインから融解ピークが離れる点として点αを定めることが困難となる為、その場合は、低温側のベースラインから該発熱ピークが離れる点を点αとする。
【0024】
前記高温ピークの吸熱量(高温ピークが複数の融解ピークにて構成されている場合は、それらの総吸熱量)は、5〜20J/gが好ましい。高温ピークの吸熱量が上記範囲内であることにより、空隙発泡粒子成形体の全体において融着性のばらつきが抑制され発泡粒子相互の融着性に優れた成形体となる。このことから、高温ピーク熱量の下限は6J/gがより好ましく、更に好ましくは7J/gである。また、その上限は15J/gがより好ましく、更に好ましくは10J/gである。
【0025】
本発明の空隙発泡粒子成形体は、その全体に空隙を有するものであり、その空隙率は8〜45体積%であり、好ましくは10〜35体積%であり、より好ましくは15〜30体積%である。なお、空隙発泡粒子成形体の空隙は連通していることが好ましい。該空隙発泡粒子成形体は、このような空隙を有することから、通気性材料、透水性材料、消音性材料、緩衝性材料、軽量性材料として好適に使用できるものである。
【0026】
前記空隙率は、以下のようにして求められる。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡粒子成形体から20mm×15mm×80mmの寸法の直方体サンプル(表皮なし)を切り出し、該サンプルの外形寸法より空隙発泡粒子成形体の見掛け体積:Bを求める。
次いで該サンプルを温度23℃の概ね120mLのエタノールの入った内容積200mLのガラス製メスシリンダー中に金網などの道具を使用して沈め、軽い振動等を与えることにより発泡粒子間に存在している空気を除く。次いで、金網などの道具の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる該空隙発泡粒子成形体の真の体積:Cを測定する。求められたサンプルの見掛け体積:Bと真の体積:Cから、下記(3)式により空隙率(%)が求められる。
空隙率(%)=〔(B−C)÷B〕×100 ・・・(3)
【0027】
また、該空隙発泡粒子成形体のかさ密度は、0.01〜0.2g/cmであり、好ましくは0.015〜0.15g/cmであり、より好ましくは0.02〜0.1g/cmである。空隙発泡粒子成形体のかさ密度がこの範囲内であれば、強度と軽量性とのバランスに優れた空隙発泡粒子成形体を得ることができる。
【0028】
前記かさ密度の測定は、次のように行う。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した空隙発泡粒子成形体の外形寸法からかさ体積を求める。次いで該空隙発泡粒子成形体の重量(g)を精秤する。空隙発泡粒子成形体の重量をかさ体積にて割り算することにより、かさ密度を求める。
【0029】
また、該空隙発泡粒子成形体においては、曲げ強さ:A(MPa)と該空隙発泡粒子成形体のかさ密度:B(g/cm)との比(A/B)(MPa・cm/g)が特定範囲内であることを要する。具体的には、下限は6(MPa・cm/g)であり、好ましくは7(MPa・cm/g)、更に好ましくは8(MPa・cm/g)である。一方、該比(A/B)の値の上限は空隙発泡粒子成形体の密度にもよるが概ね25(MPa・cm/g)である。
【0030】
上記(A/B)の値を満足する本発明の空隙発泡粒子成形体は、発泡粒子相互の融着性が良好なものであり、(A/B)の値が大きいものは発泡粒子相互の融着力も高いものとなっている。そして、上記(A/B)の値を満足する空隙発泡粒子成形体を得るための方法としては、前記発泡粒子を型内に充填して加熱成形する方法において、発泡粒子の見かけ密度、型内発泡粒子充填率を調整する方法、型内に充填する発泡粒子の高温ピーク熱量、発泡粒子の内部圧力を調整する方法等が例示される。具体的には、(A/B)の値を大きくするためには、目的の空隙率を有する空隙発泡粒子成形体が得られる範囲で、発泡粒子の見かけ密度が小さなものを使用する調整や、該充填率を低めにする調整、該高温ピーク熱量を高めにする調整、該内部圧力を低めにする調整、これらを本明細書の実施例に示すように適宜組み合わせる方法を採用すればよい。
【0031】
本明細書において、空隙発泡粒子成形体の曲げ強さAは、長さ120mm、幅25mm、高さ20mmの全面に気泡断面が露出したカット面を有する試験片を用意して、JIS K7221−1(1999)に準拠して速度10mm/分で測定される最大の曲げ強さである。
【0032】
また、本発明の空隙発泡粒子成形体の型内成形に用いられる発泡粒子の独立気泡率は、発泡粒子の優れた型内成形性、得られる空隙発泡粒子成形体の機械的強度の充分な発現性の観点から、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0033】
本明細書において、発泡粒子の独立気泡率は次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、温度23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、かさ体積約20cmの養生後の発泡粒子を測定用サンプルとし水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。そして、これらの体積Va及びVxを基に、下記の(4)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
【0034】
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(4)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の体積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、2、3回上下させた後、速やかに水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0035】
本発明の発泡粒子成形体を構成する発泡粒子においては、発泡粒子全体が特定の吸熱量(Br:endo)を有することが好ましく、更に発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)と発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)とが特定の関係を有することが好ましい。
【0036】
具体的には、該発泡粒子は下記条件2の熱流束示差走査熱量測定法にて求められる、熱処理後の発泡粒子全体の吸熱量(Br:endo)[J/g]が下記(1)式を満足することが好ましい。
(Br:endo)>25 ・・・(1)
【0037】
(1)式において、(Br:endo)が25J/g超であることは、発泡粒子を構成しているポリ乳酸の結晶化が充分に進む条件にて熱処理した場合、該ポリ乳酸による発泡粒子の結晶成分の量が適度な状態になることを意味している。すなわち、(1)式は、充分な熱処理を行って発泡粒子を構成しているポリ乳酸の結晶化度を高めることにより、適度に結晶化度の高められた空隙発泡粒子成形体を得ることができることを意味している。したがって、用途にもよるが、最終的に得られる空隙発泡粒子成形体の機械的強度、高温時の圧縮強さ等の耐熱性が低下しすぎる虞がない。このような観点から、(Br:endo)は、更に30J/g以上であることが好ましい。なお、(Br:endo)の上限は、概ね45J/gである。
【0038】
更に、該発泡粒子においては、下記条件2の熱流束示差走査熱量測定法にて求められる、熱処理後の該発泡粒子表層部の吸熱量(Brs:endo)[J/g]と該発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)[J/g]が下記(2)式を満足することが好ましい。
(Brc:endo)>(Brs:endo)≧0 ・・・(2)
【0039】
(2)式の関係が満たされるということは、発泡粒子表層および発泡粒子中心部を構成しているポリ乳酸の結晶化が充分に進む条件にて熱処理した場合、発泡粒子の表層を構成するポリ乳酸の結晶成分の量が、発泡粒子の中心部を構成するポリ乳酸の結晶成分の量より少ない状態になることを意味している。このことは、発泡粒子中心部のポリ乳酸は、充分な熱処理により結晶化度が高められ、主に発泡粒子中心部のポリ乳酸の結晶化度が向上することにより発泡粒子全体としては前記(1)式を満足することになり発泡粒子全体の耐熱性等を向上させることができることを意味する。一方、発泡粒子表層部のポリ乳酸は、充分な熱処理によっても結晶化度が発泡粒子中心部より低いことから、発泡粒子表面の軟化点は低くなる。したがって、(2)式の関係が満たされる発泡粒子は、その製造前後の熱履歴に大きく影響されず型内成形時の発泡粒子相互の熱融着性において優れた融着性を発現できる発泡粒子である。かかる観点から、発泡粒子表層の融着性をより向上させるために、発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)は35J/g以下(0も含む)であることが好ましい。また、発泡粒子の中心部の耐熱性、機械的強度を向上させるために、発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)は25J/g超、更に30〜40J/gであることが好ましい。
また、(Brc:endo)と(Brs:endo)とは、3J/g以上の熱量差、更に4J/g以上の熱量差を有することが好ましい。
【0040】
本明細書において、発泡粒子全体の吸熱量(Br:endo)[J/g]、発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)[J/g]及び該発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)[J/g]は、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して下記の条件2にて求められる測定値である。
【0041】
条件2
[測定試料の調整]
(発泡粒子全体の吸熱量測定試料)
発泡粒子を基本的には切断することなく測定試料とすることとする。
(発泡粒子表層の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて測定試料とする。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/6〜1/4の重量の測定試料を採取することとする。具体的には、表層部分をカッターナイフ、ミクロトーム等を用いて切削処理を行い、該表層部分を集めて測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては、1個の発泡粒子の表面の全面を必ず切除し、且つ1個の発泡粒子から切除した該表層部分の合計重量が切削処理前の発泡粒子の粒子重量の6分の1〜4分の1の範囲内とする。この際、切り出された表層部分は、できる限り均一な厚みになるようにする。
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。具体的には、発泡粒子の表面を含まない内部の発泡層を切り出すことを目的にカッターナイフ等で切削処理を行い、該発泡粒子中心部を測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては、1個の発泡粒子の表面全面を必ず切除し、且つ発泡粒子の中心とできる限り同じ中心をもつように切削処理前の発泡粒子の粒子重量の5分の1〜3分の1の範囲内で発泡粒子中心部を切り出す。この際、切り出された測定試料は、切削処理前の発泡粒子の形状とできる限り相似の関係にあるようにする。
【0042】
[吸熱量の測定]
それぞれの吸熱量、(Br:endo)、(Brs:endo)、または(Brc:endo)の測定値は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子、該発泡粒子の表層部から採取された測定試料または該発泡粒子の中心部から採取された測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線(以下、2回目のDSC曲線(II)ともいう。)に基づいて求められる値とする。
なお、(Brs:endo)、(Brc:endo)の測定試料採取にあたり、1個の発泡粒子から得られる測定試料が1〜4mgに満たない場合には前記測定試料採取操作を複数個の発泡粒子に対して行い1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。また、(Br:endo)の測定試料採取にあたり、1粒の発泡粒子の重量が4mgを超える場合には発泡粒子を2等分するなど同形状に等分して1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。
【0043】
なお、吸熱量(Br:endo)は、図3に示すように、2回目のDSC曲線(II)の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点aとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点bとして、点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしても図4に示すようにベースラインが湾曲してしまう場合には、吸熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点a、吸熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点bとする。また、吸熱量(Brs:endo)、吸熱量(Brc:endo)も、2回目のDSC曲線(II)から(Br:endo)と同様にベースラインを定めて点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる。
【0044】
なお、前記吸熱量(Br:endo)、(Brs:endo)、(Brc:endo)の測定において、測定試料のDSC曲線の測定条件として、110℃での120分間の保持を採用する理由は、測定試料のポリ乳酸の結晶化を極力進ませた状態での吸熱量(Br:endo)、(Brs:endo)、(Brc:endo)を求めることができる好適な条件だからである。
【0045】
前記吸熱量(Br:endo)、(Brs:endo)、(Brc:endo)の値は、空隙発泡粒子成形体を得るために使用される発泡粒子から求められる値と、空隙発泡粒子成形体から採取される発泡粒子から求められる値とは、測定試料の採取を精密に行うことにより略同様の値となる。即ち、前記吸熱量(Br:endo)、(Brs:endo)、(Brc:endo)の値は、発泡粒子の熱履歴により変動するものではない。したがって、本発明において、空隙発泡粒子成形体を構成する発泡粒子の前記吸熱量(Br:endo)、(Brs:endo)、(Brc:endo)の値は、空隙発泡粒子成形体を得るために使用される発泡粒子、或いは空隙発泡粒子成形体から採取される発泡粒子から上述した条件2により求めることができる。
【0046】
本発明において空隙発泡粒子成形体を構成する発泡粒子は、発泡粒子全体が前記(1)式で定まる吸熱量(Br:endo)を有することにより、熱処理した発泡粒子の型内成形、或いは発泡粒子の型内成形後の空隙発泡粒子成形体の熱処理にて、機械的強度や耐熱性に優れる空隙発泡粒子成形体となる。更に、前記(2)式で定まるように、発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)が、発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)より低いものであることにより、発泡粒子表面の軟化温度が低く保たれるので、型内成形時の融着性に優れた発泡粒子となる。
【0047】
前記(1)式及び(2)式で表される関係を満たす発泡粒子は、ポリ乳酸により構成される芯層と、他のポリ乳酸により構成される該芯層を覆う外層とを有する多層構造の発泡粒子(以下、多層発泡粒子ともいう。)であることが好ましい。なお、該多層発泡粒子において、該外層は芯層全体を覆っている必要はなく、芯層を構成する樹脂が多層発泡粒子表面に露出している部分があってもよい。
【0048】
該外層を構成するポリ乳酸の軟化点(B)[℃]は、該芯層を構成するポリ乳酸の軟化点(A)[℃]よりも低く、かつ該軟化点(A)と該軟化点(B)との差[(A)−(B)]が0℃を超え105℃以下が好ましく、より好ましくは該差が15〜105℃であり、更に好ましくは該差が20〜105℃である。該差が前記範囲内である多層発泡粒子は、外層と芯層とを構成する軟化点(B)と(A)とを示す各々のポリ乳酸を共押出する等の後述する方法にて多層樹脂粒子を製造し、得られた多層樹脂粒子を発泡することにより得ることができる。
なお、外層を構成するポリ乳酸の軟化点は、多層発泡粒子の取り扱い性および得られる成形体の高温時の機械的強度の観点から、芯層を構成するポリ乳酸の軟化点との関係が上記範囲であると共に、50℃以上、更に55℃以上、特に65℃以上であることが好ましい。このようなポリ乳酸としては、非結晶性のポリ乳酸、或いは非結晶性のポリ乳酸と結晶性のポリ乳酸との混合樹脂が好ましく例示される。
【0049】
本明細書における軟化点とは、JIS K7206(1999)に基づく、A50法で測定されたビカット軟化温度を意味する。測定試験片としては、ポリ乳酸を、真空オーブンを使用して充分に乾燥させた後、200℃、20MPaの条件下で加圧し、必要に応じて空気抜き操作を行い気泡が混入しないようにして縦20mm×横20mm×厚み4mmの試験片を作製し、該試験片を80℃のオーブン内で24時間アニーリング処理したものが測定に用いられる。測定装置としては、株式会社上島製作所製「HDT/VSPT試験装置 MODEL TM−4123」などを使用することができる。
【0050】
前記多層発泡粒子においては、芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比が99.9:0.1〜75:25であることが好ましく、より好ましくは99.7:0.3〜85:15、更に好ましくは99.5:0.5〜90:10である。多層発泡粒子の外層を形成している樹脂の重量比が小さすぎると、多層発泡粒子の外層部分の厚みが薄くなり、一方、外層を形成している樹脂の重量比が大きすぎると、多層発泡粒子の外層部分の厚みが厚くなる。なお、多層発泡粒子において、外層を形成している樹脂は本発明の目的効果が達成できる限りにおいて発泡していてもよい。
多層発泡粒子における芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比の調整は、後述する樹脂粒子の芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比を調整する方法により行なわれる。
【0051】
また、前記多層発泡粒子を構成するポリ乳酸への前記末端封鎖剤は、少なくとも芯層に添加されていることが好ましく、芯層及び外層の双方に添加されていることがより好ましい。少なくとも芯層、好ましくは芯層及び外層の双方を構成するポリ乳酸が末端封鎖処理されていることにより、該樹脂を発泡させる際の加水分解がより一層抑制され、安定して多層発泡粒子を製造できるようになる。更には、成形体製造時の加水分解も抑制され、成形体の安定生産にも繋がるとともに、製品として使用される際においても高温多湿下での使用に耐え得るようになるなど、耐久性の向上が期待できる。
【0052】
多層発泡粒子の外層の厚みについては、外層に気泡が生じ難くなること、また、空隙発泡粒子成形体の機械的強度が向上することから、厚みが薄い方が好ましい。なお、外層があまりに薄すぎる場合には、外層を設けることによる多層発泡粒子同士の融着性向上効果が不充分になることが懸念されるが、下記の厚み範囲であれば十分な融着性向上効果が発現される。すなわち、多層発泡粒子の外層の平均厚みは、0.1〜25μm、更に0.2〜15μm、特に0.3〜10μmであることが好ましい。多層発泡粒子の外層の平均厚みが前記範囲となるように調整するには、樹脂粒子製造の段階での外層と芯層の重量比を調整して樹脂粒子の外層の平均厚みを調整すればよい。なお、樹脂粒子の外層の平均厚みは、樹脂粒子の重量、目的発泡倍率などに応じて適宜調整されるべきであるが、概ね2〜100μm、更に3〜70μm、特に5〜50μmが好ましい。
【0053】
前記多層発泡粒子の外層の平均厚みは次の方法により測定される。
多層発泡粒子を略二等分し、その拡大断面の写真から、該断面の上下左右の4箇所の外層の厚みを求め、その平均を一つの多層発泡粒子の外層の厚さとする。この作業を無作為に選んだ10個の多層発泡粒子について行い、各多層発泡粒子の外層の厚さを相加平均した値を多層発泡粒子における外層の平均厚みとする。樹脂粒子の外層の平均厚みにおいても、同様の方法で測定する。なお、多層発泡粒子、或いは樹脂粒子の外層が芯層の周囲に部分的に形成されている場合には、前記4箇所の外層の厚みをどうしても測定できない場合があるが、その場合は測定できる無作為に選んだ16箇所の外層厚みを求め、その平均を一つの多層発泡粒子、或いは樹脂粒子の外層の厚さとする。また、多層発泡粒子の外層部分が判別し難いときには、予め外層を構成する樹脂に着色剤を添加して樹脂粒子を製造することができる。
【0054】
本発明に係る発泡粒子は、前記固有ピークと高温ピークを有することに加えて、熱流束示差走査熱量測定法により下記条件3で求められる、熱処理前の発泡粒子中心部の吸熱量(Bfc:endo)[J/g]と発熱量(Bfc:exo)[J/g]とが下記(5)式を満足することが好ましい。
40>[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]>15 ・・・(5)
【0055】
条件3
[測定試料の調整]
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。具体的には、発泡粒子の表面を含まない内部の発泡層を切り出すことを目的にカッターナイフ等で切削処理を行い、該発泡粒子中心部を測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては、1個の発泡粒子の表面全面を必ず切除し、且つ発泡粒子の中心とできる限り同じ中心をもつように切削処理前の発泡粒子の粒子重量の5分の1〜3分の1の範囲内で発泡粒子中心部を切り出す。この際、切り出された測定試料は、切削処理前の発泡粒子の形状とできる限り相似の関係にあるようにする。
[吸熱量および発熱量の測定]
吸熱量(Bfc:endo)および発熱量(Bfc:exo)の測定は、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、前記の発泡粒子中心部の測定試料1〜4mgを加熱速度2℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線(以下、1回目のDSC曲線(II)ともいう。)に基づいて求められる値とする。なお、1個の発泡粒子から得られる測定試料が1〜4mgに満たない場合は前記測定試料採取操作を複数個の発泡粒子に対して行い1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。
【0056】
前記(5)式における差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、熱流束示差走査熱量測定を行う際に既に発泡粒子中心部が有していた結晶化部分と、該測定時の昇温過程において発泡粒子中心部が結晶化した部分とが融解する際に吸収するエネルギーである吸熱量(Bfc:endo)と、熱流束示差走査熱量測定の昇温過程において発泡粒子中心部が結晶化することにより放出されるエネルギーである発熱量(Bfc:exo)との差を表し、該差が小さいほど熱流束示差走査熱量測定前において発泡粒子中心部の結晶化が、進んでいなかったことを意味し、該差が大きくて吸熱量(Bfc:endo)の値に近いほど、発泡粒子中心部の結晶化が該測定前において進んでいたことを意味する。差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、発泡粒子の型内成形時の良好な融着性と型内成形時において良好な空隙発泡粒子成形体が得られる成形温度範囲が広くなる観点から前記の範囲内であることが好ましい。更に該融着性の観点から、35J/g以下、特に30J/g以下であることが好ましい。
【0057】
一方、型内成形時の温度調整の容易性、型内発泡成形体の十分な空隙確保の観点から差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、更に20J/g以上であることが好ましい。
【0058】
前記吸熱量(Bfc:endo)は30〜70J/gであることが好ましい。この吸熱量(Bfc:endo)が大きいほど発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂が熱処理によって結晶化度が高くなるものであり、最終的に発泡粒子成形体の機械的強度が高いものに調整することが出来る。一方、該吸熱量(Bfc:endo)が小さすぎる場合には、最終的に発泡粒子成形体の機械的強度、特に高温条件下での機械的強度が不十分なものとなる虞がある。この観点から、(Bfc:endo)は、更に35J/g以上が好ましい。また、(Bfc:endo)の上限は、概ね70J/g、好ましくは60J/gである。
【0059】
また、発熱量(Bfc:exo)は、差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]と、吸熱量(Bfc:endo)との調整の関係で、3〜20J/g、更に5〜15J/gであることが、発泡粒子の型内成形時において空隙発泡粒子成形体の空隙率調整のし易さの観点から好ましい。この発熱量(Bfc:exo)が小さいほど、結晶性のポリ乳酸系樹脂からなる発泡粒子中心部の結晶化が、熱流束示差走査熱量測定前において、進んでいたことを意味する。
【0060】
尚、本明細書において発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)は、前記のとおり、JIS K7122(1987)に記載される熱流束示差走査熱量測定(前記条件3)によって求められる値であり、発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)の測定は次の基準で行なわれる。
発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)は1回目のDSC曲線(II)の発熱ピーク(結晶化ピークと同義)の低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)は、1回目のDSC曲線(II)の融解ピーク(吸熱ピークと同義)の低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点eとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。但し、1回目のDSC曲線(II)におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、発熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、発熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとする。更に、融解ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点e、融解ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ融解ピークが戻る点を点fとする。
【0061】
なお、発熱ピークと吸熱ピークが連続しており、前記の点dと点eを定めることが困難である場合は、前記のとおり定められる点cと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を、点d(点e)と定めることにより、発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)及び吸熱量(Bfc:endo)を求める。また、複数の発熱ピークや吸熱ピークが発生するような場合には、発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)或いは吸熱量(Bfc:endo)は、各発熱ピーク或いは各吸熱ピークの面積の総和から求められる。
【0062】
なお、前記発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)の測定において、DSC曲線の測定条件として2℃/minの加熱速度を採用する理由は、発熱ピークと融解ピークとをなるべく分離し、正確な吸熱量(Bfc:endo)および[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]を熱流束示差走査熱量測定にて求める際の好適な条件とするためである。
【0063】
本発明で用いられる発泡粒子の見かけ密度は、かさ密度が0.01〜0.2g/cmの空隙発泡粒子成形体を得ること、更に型内成形後の収縮率を小さくすることや空隙発泡粒子成形体の見かけ密度のばらつきを小さくすることや発泡粒子相互の融着性向上を考慮して、型内成形性、機械的強度に優れる発泡粒子成形体を得るという観点から、0.025〜0.25g/cmが好ましく、0.03〜0.15g/cmがより好ましい。
【0064】
本明細書における発泡粒子の見かけ密度は次のように測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、温度23℃の条件の恒温恒湿室内にて10日間放置して養生する。次に、同恒温室内にて、約500mlの養生後の発泡粒子群の重量W1(g)を測定し、重量を測定した発泡粒子群を金網などの道具を使用して温度23℃の水の入ったメスシリンダー中に沈める。次に、金網等の道具の水面下の体積を差し引いた、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の体積V1(cm)を測定し、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1を体積V1で割り算(W1/V1)することにより見かけ密度(g/cm)を求める。
【0065】
また、本発明の発泡粒子の平均気泡径は、型内成形性、得られる空隙発泡粒子成形体の外観が更に向上するという観点から、30〜500μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。
【0066】
本明細書において、発泡粒子の平均気泡径は次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、温度23℃の条件の恒温恒湿室内にて10日間放置して養生する。次に、養生後の発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求める。発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求める。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総和Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を無作為に選んだ10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0067】
前記発泡粒子を用いて型内成形をすることにより、本発明の空隙発泡粒子成形体が得られる。その形状は特に制約されず、板状、柱状、容器状、ブロック状は、もとより三次元の複雑な形状のものや、厚みの厚いものも得ることができる。
【0068】
本発明の空隙発泡粒子成形体は、高温ピークを有する発泡粒子を使用して得られるものであることから、発泡粒子相互の融着性が向上し、寸法安定性、機械的強度が更に改善されている空隙発泡粒子成形体である。なお、空隙発泡粒子成形体は、熱処理(ヒートセット)にて充分にポリ乳酸の結晶化度を高めることにより、耐熱性において更に優れるものとなる。
【0069】
次に、本発明における発泡粒子、更に本発明の空隙発泡粒子成形体の製造方法について説明する。
該発泡粒子の製造方法として、好ましくは分散媒放出発泡方法が挙げられる。分散媒放出発泡方法によれば、前記高温ピークの生成、高温ピーク熱量の制御を容易に行なうことができる。
【0070】
上記の分散媒放出発泡方法とは、ポリ乳酸を押出機にて溶融混練した後、ストランド状に押出して切断することにより樹脂粒子を製造し(樹脂粒子製造工程)、該樹脂粒子を、耐圧容器内で、物理発泡剤の存在下で水性媒体中に分散させると共に加熱して、該物理発泡剤を樹脂粒子に含浸させて発泡性樹脂粒子とし(発泡剤含浸工程)、軟化状態の発泡性樹脂粒子を高温、高圧条件下の耐圧容器内から水性媒体と共に、低圧の雰囲気下へ放出して(発泡工程)、発泡粒子を製造する方法である。この方法においては、樹脂粒子製造工程、発泡剤含浸工程、発泡工程をそれぞれ別の工程として行なうこともできるが、通常、前記のとおり発泡剤含浸工程と発泡工程は一の工程として連続して行なわれる。
【0071】
樹脂粒子製造工程においては、樹脂粒子は、ポリ乳酸に必要な添加剤等を配合して押出成形してペレタイズするストランドカット法、アンダーウォーターカット法等により製造することが可能である。
なお、前記(2)式を満たす発泡粒子を得るには、芯層と外層とからなる多層樹脂粒子を製造することが好ましい。その場合、芯層形成用押出機と外層形成用押出機とが、共押出ダイに連結された装置を用いる方法等、特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報に記載された共押出成形法技術を利用して製造することができる。なお、この場合、前記(1)式を満たす発泡粒子は、芯層を構成するポリ乳酸として、目的とする(Br:endo)と同じ値を示す、後述する(Rr:endo)が25[J/g]超のものを選択すればよい。
【0072】
前記樹脂粒子製造工程のペレタイズにおいては、押出機にポリ乳酸と、必要に応じた添加剤とを供給して溶融混練し、該溶融混練物を押出機先端のダイ出口に付設された口金の細孔からストランド状押出物として押出し、該ストランド状押出物を水没させることにより冷却した後、樹脂粒子の重量が所定重量になるようにペレタイザーで切断して樹脂粒子が製造される。或いは、ストランド状の押出物を、樹脂粒子の重量が所定重量になるように切断後又は切断と同時に、冷却することによっても樹脂粒子を製造できる。
【0073】
該樹脂粒子の1個当りの平均重量は、0.05〜10mgが好ましく、より好ましくは0.1〜4mgである。
該平均重量が軽すぎる場合には、樹脂粒子の製造が特殊なものになる。一方、該平均重量が重すぎる場合には、得られる発泡粒子の密度分布が大きくなったり、型内成形時の充填性が悪くなったりする虞があるため配慮が必要である。
該樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等を採用することができる。かかる樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子形状に略対応した形状となる。
【0074】
前記樹脂粒子製造工程においては、通常、ポリ乳酸を予め乾燥させておく。このことにより、ポリ乳酸の加水分解による劣化を抑制することができる。また、ポリ乳酸の加水分解による劣化を抑制するために、ベント口付き押出機を使用して、真空吸引を行ってポリ乳酸から水分を除去する方法も採用することができる。ポリ乳酸の水分を除去することにより、樹脂粒子中に気泡が発生することを抑制し、押出成形時の安定性を向上させることもできる。
【0075】
次に、分散媒放出発泡方法における発泡剤含浸工程と発泡工程について説明する。
分散媒放出発泡方法においては例えば前記樹脂粒子を耐圧容器(例えば、オートクレーブ)内で水などの分散媒及び物理発泡剤と共に分散させて加熱したり、或いは樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に分散させて加熱し、次いで物理発泡剤を上記耐圧容器内へ圧入したりすることにより、樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とする。次いで、軟化状態の発泡性樹脂粒子を高温、高圧の耐圧容器内よりも低い温度及び圧力下に分散媒と共に放出することにより発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得ることができる。また、この放出時には容器内に背圧をかけて放出することが好ましい。
【0076】
また、前記樹脂粒子中には、得られる発泡粒子の見かけ密度及び気泡径を適切な値に調整するために添加剤を予め添加しておくことができる。該添加剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ等の無機物や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、ポリカーボネート、架橋ポリスチレン等の重合体を採用することができる。
上記添加剤のうち、本発明では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、架橋ポリスチレン等が好ましく、更に、疎水性のポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0077】
ポリ乳酸に添加剤を添加する場合には、ペレタイズの際に添加剤をそのままポリ乳酸に練り込むこともできるが、分散性等を考慮して通常は添加剤のマスターバッチを作製し、それとポリ乳酸とを混練することが好ましい。
【0078】
本発明の発泡粒子の見かけ密度及び気泡径はタルク等の前記添加剤の添加量によっても変化するため、それらの調整効果が期待できる。通常、ポリ乳酸100重量部に対して、該添加剤を0.001〜5重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜3重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部である。この場合には、発泡粒子の見かけ密度の低下及び気泡径の均一化を図ることができる。
【0079】
ポリ乳酸は加水分解し易いことから、ポリ乳酸に配合する添加剤としては極力親水性の物質を避け、疎水性物質を選択して添加することが好ましい。添加剤として疎水性のものを採用することにより、ポリ乳酸の加水分解による劣化を抑えながら添加剤としての効果が得られる。
【0080】
本発明において、発泡粒子の高温ピークは5〜20J/gであることが好ましい。耐圧容器内で樹脂粒子を加熱し、発泡剤を含浸する際に完全に結晶を融解させない温度で熱処理を行なうことでこの範囲に調整することができる。具体的な熱処理は、以下のとおり、樹脂粒子を特定の温度に特定時間保持することにより行なわれる。高温ピークを生成させる温度は、発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の密度にも関係するが、通常は樹脂粒子を構成するポリ乳酸の(融点−30)〜(融点−10)℃の範囲で行なわれる。また、熱処理時間は、好ましくは5〜60分、より好ましくは5〜30分であり、熱処理時間が長すぎるとポリ乳酸の加水分解を誘引するため、配慮が必要である。したがって、発泡粒子に高温ピークを生成させるには、前記温度範囲内で、少なくとも5分保持するのがよい。
【0081】
なお、更に低い見かけ密度(高発泡倍率)の発泡粒子を得るにあたっては、上記の方法で得られた発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生工程を経て、再度、耐圧容器に充填し、空気などの加圧気体により例えば0.01〜0.10MPa(G)の圧力にて加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行った後、該発泡粒子を発泡機内にて、熱風やスチームや空気とスチームとの混合物などの加熱媒体を用いて加熱する、所謂、二段発泡により、高発泡倍率化させることもできる。
【0082】
本発明における発泡粒子を得るには、前記ポリ乳酸の融点を基準として、(融点−10℃)〜(融点−30℃)が好ましく、より好ましくは(融点−15℃)〜(融点−25℃)の発泡温度にて低圧域下に放出されることが望ましい。発泡温度が低すぎる場合は、見かけ密度の低い発泡粒子を得ることが難しくなり、発泡温度が高すぎる場合は、発泡粒子の収縮が発生し易くなり、該発泡粒子の型内成形にて得られる空隙発泡粒子成形体の機械的物性が低下する虞がある。
【0083】
また、樹脂粒子を分散媒に分散させるに際しては、必要に応じて分散剤や分散助剤を分散媒に添加することができる。
該分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、及びクレー等の無機物質や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子保護コロイド剤が挙げられる。また、分散助剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤などを分散媒に添加することもできる。
これら分散剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.05〜3重量部使用することができ、これら分散助剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.001〜0.3重量部使用することができる。
【0084】
前記物理発泡剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素、1,3,3,3‐テトラフルオロ‐1‐プロペン、2,3,3,3‐テトラフルオロ‐1‐プロペン、トランス−1−クロロ−3,3,3‐トリフルオロプロペン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル、エタノール等のアルコールなどの有機系物理発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス、水などの無機系物理発泡剤を、単独で又は2種以上併用して用いることができる。これらの物理発泡剤のなかでも、二酸化炭素、窒素、空気等の無機系物理発泡剤を主成分とする物理発泡剤を用いることが好ましい。より好ましくは二酸化炭素がよい。
なお、無機系物理発泡剤を主成分とするとは、全物理発泡剤100モル%中の無機系物理発泡剤が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含まれることを意味する。
【0085】
前記物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、添加剤等の配合量、目的とする発泡粒子の見かけ密度等に応じて適宜調整することができる。例えば無機系物理発泡剤は、ポリ乳酸100重量部あたり概ね0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、更に好ましくは1〜10重量部使用することがよい。
【0086】
次に、前記高温ピークを有する発泡粒子を用いて、本発明の空隙発泡粒子成形体を製造する方法について説明する。該空隙発泡粒子成形体の製造にあたっては、公知の型内成形装置を使用して、発泡粒子の二次発泡力を調整する操作、即ち、発泡粒子の内部圧力を高めるような操作は行う必要は無く、型内成形時の発泡粒子の充填率を高める操作も積極的に行わず、高温ピークによる発泡粒子の二次発泡力抑制効果を利用して発泡粒子の型内成形を行なうことにより、空隙発泡粒子成形体を容易に得ることができる。
例えば、従来公知の成形金型を用いるクラッキング成形法においては、得られる空隙発泡粒子成形体の空隙率を8〜45%にするには、加圧処理が施されていない前記高温ピークを有する発泡粒子を使用し、通常の型内成形で行われるクラッキング量よりも少ない量、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下にクラッキングを調整する。
【0087】
型内成形法として、加熱及び冷却が可能であって且つ開閉し密閉できる従来公知の熱可塑性樹脂発泡粒子型内成形用の金型のキャビティー内に発泡粒子を充填し、加熱媒体(水蒸気、或いは水蒸気と空気との混合加熱媒体など)を供給して金型内で発泡粒子を加熱することにより発泡粒子を膨張、融着させ、次いで得られた発泡粒子成形体を冷却して、キャビティー内から取り出すバッチ式型内成形法等が挙げられる。この場合、空隙率を8〜45%の空隙発泡粒子成形体を得るには、通常の型内成形の場合と比較して低い飽和蒸気圧、好ましくは0.01〜0.15MPa(G)、更に好ましくは0.01〜0.10MPa(G)の水蒸気等が用いられる。
【0088】
前記水蒸気の供給方法としては、一方加熱、逆一方加熱、本加熱などの加熱方法を適宜組み合わせる従来公知の方法を採用できる。特に、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、本加熱の順に発泡粒子を加熱する方法が好ましい。
【0089】
本発明の空隙発泡粒子成形体は、生分解性の発泡粒子からなり、高い空隙率を有するため、自動車分野、建築・土木分野等の多彩な分野のプラスチック基礎製品として有用なものであり、吸音材、透水剤、緩衝材、FRP芯材等、各種用途に好適に用いることができる。
【実施例1】
【0090】
次に、本発明の空隙発泡粒子成形体について、実施例により詳細に説明する。但し、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例、比較例で使用したポリ乳酸のメーカー、グレード、各種物性を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1中のRr:endoの測定は、ポリ乳酸の原料を用いたこと以外、前記発泡粒子についてのBr:endoの測定と同様に行った。なお、ポリ乳酸についてのRr:endoは発泡粒子についてのBr:endoと略同様の値となる。
また、MFRの測定は、JIS K7210−1976,A法にて温度190℃、荷重2.16kgf(21.2N)の試験条件により行った。
【0094】
融点は、JIS K7121−1987に準拠して、熱流束示差走査熱量測定により求めた。具体的には、JIS K7121−1987、3.試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度10℃/分。)により試験片を状態調整した試験片を使用して、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得、得られた融解ピークの頂点の温度を融点とした。但し、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とした。
【0095】
実施例1〜9、比較例1、2
内径65mmの芯層形成用押出機および内径30mmの外層形成用押出機の出口側に多層ストランド形成用の共押ダイを付設した押出機を用い、芯層形成用押出機および外層形成用押出機に、それぞれ表1に示す芯層および外層を形成するポリ乳酸を夫々の押出機に供給し溶融混練した。その溶融混練物を前記の共押出ダイに導入してダイ内で合流積層して押出機先端に取り付けた共押ダイの口金の細孔から、表2に示す重量割合で芯層の周囲に外層が被覆された多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで重量が2mgとなるように切断し、乾燥して多層樹脂粒子を得た。
【0096】
なお、芯層を形成する原料は、表1に示すポリ乳酸に、気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(商品名:TFW−1000、(株)セイシン企業製)を含有量が1000重量ppm、また末端封鎖剤としてカルボジイミド化合物(商品名:スタバクゾール1−LF、ラインケミー社製、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を含有量が1.5重量%となるようにマスターバッチの形態で混合したものである。
また、外層を形成する原料は、表2に示すポリ乳酸に、末端封鎖剤としてカルボジイミド化合物(商品名:スタバクゾール1−LF、ラインケミー社製、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を含有量が1.5重量%となるようにマスターバッチの形態で混合したものである。
【0097】
得られた樹脂粒子のMFR、ガラス転移温度等の諸物性を表2に示す。
【0098】
次に、前記樹脂粒子を用いて発泡粒子を作製した。
まず、前記のようにして得られた樹脂粒子1kgを分散媒としての水3Lと共に撹拌機を備えた5Lの耐圧容器内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤として酸化アルミニウム1g、界面活性剤(商品名:ネオゲンS−20F、第一工業製薬社製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として0.1g添加した。次いで、撹拌下で表2に示す発泡温度まで昇温し、耐圧容器内に発泡剤としての二酸化炭素(CO)を表2に示す耐圧容器内圧力になるまで圧入しその温度で15分間保持した。その後、二酸化炭素にて背圧を加えて容器内の圧力が一定になるようにして内容物を表2に示す発泡温度、容器内圧力の条件下の耐圧容器内から常温、常圧の大気圧雰囲気下に放出して表2に示す見かけ密度の発泡粒子を得た。
【0099】
なお、上記実施例1〜9、比較例2にて得られた発泡粒子は、1回目のDSC曲線(I)に固有ピークと高温ピークが現れる結晶構造を有するものであった。
また、比較例1にて得られた発泡粒子は、1回目のDSC曲線(I)に固有ピークのみが現れる結晶構造を有するものであった。
【0100】
得られた発泡粒子の高温ピークの吸熱量、見かけ密度、独立気泡率、平均気泡径等の諸物性を測定、評価した結果を表2に示す。
【0101】
次に、前記実施例および比較例にて得られた発泡粒子を、内圧付与の操作を行わない無加圧の状態で、開放し、閉鎖し得る平板成形金型〔有効寸法:長さ(l)200×幅(w)250×深さ(t)50(mm)〕に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の空隙を有する成形体を得た。
【0102】
加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態で元圧0.6MPa(G)のスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、固定側のドレン弁を開放した状態で移動側より元圧0.3MPa(G)のスチームを3秒間供給し、次いで移動側のドレン弁を開放した状態で固定側より元圧0.3MPa(G)のスチームを3秒間供給した後、排気弁を閉鎖し、表3に示す成形加熱スチーム圧力(成形蒸気圧)のスチームを型に導入し8秒間保持した。その後、加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.01MPa(G)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。成形体は、40℃のオーブン中で15時間乾燥した後に、70℃のオーブンに移し、15時間の熱処理が施し、その後、室温まで徐冷して、空隙発泡粒子成形体を得た。
このようにして得られた空隙発泡粒子成形体について、かさ密度、空隙率、曲げ強さ、50%圧縮応力、収縮率等の各種物性を評価した。その結果を表3に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
表2中、高温ピークの熱量、(Br:endo)、(Brc:endo)、(Brs:endo)、(Bfc:exo)、(Bfc:endo)、平均気泡径、独立気泡率は、得られた発泡粒子を用いて、前記方法により測定した。
【0106】
表2中、樹脂粒子のMFR、融点の測定は、得られた樹脂粒子を測定試料とした以外は前記ポリ乳酸原料と同様に行った。また、ガラス転移温度は次のように測定した。
【0107】
ガラス転移温度の測定は、得られた樹脂粒子を用いてJIS K7121(1987)により熱流束示差走査熱量測定にて得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求めた。尚、ガラス転移温度を求めるための試験片はJIS K7121(1987)の3.試験片の状態調節(3)記載の『一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合』に準拠して試験片をDSC装置の容器に入れ、200℃まで10℃/分にて昇温して加熱溶解させ、直ちに0℃まで10℃/分にて冷却する状態調整を行ったものを試験片とした。
【0108】
表2、表3中の発泡粒子および発泡成形体の物性評価方法は下記により行った。
【0109】
「発泡粒子の見かけ密度」、「空隙発泡粒子成形体のかさ密度」、「空隙発泡粒子成形体の曲げ強さ」については前記の方法にて求めた。
【0110】
「空隙発泡粒子成形体の収縮率」
前記型内成形にて得られた成形体を、40℃のオーブン中で15時間乾燥した後に、70℃のオーブンに移し、15時間の熱処理を施し、その後、室温まで徐冷して得られた養生後の空隙発泡粒子成形体の幅方向の寸法を測定し、下式を用いて空隙発泡粒子成形体の収縮率を求めた。
発泡粒子成形体の収縮率(%)=(250−養生後の発泡粒子成形体の幅(mm))/250×100
【0111】
「空隙率」
発泡粒子成形体の空隙率は、前記の方法により求めた(n=5)。
【0112】
「50%圧縮応力」
空隙発泡粒子成形体から縦50mm、横50mm、厚み25mmの試験片(表皮なし)を切り出し、JIS K6767(1999)に基づき、圧縮速度10mm/分にて試験片を厚み方向に圧縮する圧縮試験を行い空隙発泡粒子成形体の50%圧縮応力を求めた。
【0113】
「金型形状再現性」
空隙発泡粒子成形体の厚み方向(50mm)の寸法を5箇所測定して、以下の基準にて寸法バラツキを評価した。
◎:発泡粒子成形体の最大厚みと最小厚みの差が2mm以下、及び変形がない
○:発泡粒子成形体の最大厚みと最小厚みの差が2mm以下、及びやや変形がある
×:発泡粒子成形体の最大厚みと最小厚みの差が2mm超
図1
図2
図3
図4