(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356482
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】昇降式ホーム柵の間隔調整機構
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20180702BHJP
E01F 13/04 20060101ALI20180702BHJP
E05F 15/665 20150101ALI20180702BHJP
【FI】
B61B1/02
E01F13/04 Z
E05F15/16
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-102287(P2014-102287)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-217773(P2015-217773A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509335144
【氏名又は名称】株式会社JR西日本テクシア
(74)【代理人】
【識別番号】100094020
【弁理士】
【氏名又は名称】田宮 寛祉
(72)【発明者】
【氏名】新山 正夫
(72)【発明者】
【氏名】島田 弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 正文
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 修吾
(72)【発明者】
【氏名】高城 進司
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−526614(JP,A)
【文献】
特開2004−162423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E01F 13/04
E05F 15/00−15/79
E06B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて配置された少なくとも2つの防護柵部を支持しかつモータで昇降される構造部であり、この構造部では、上下の位置関係にて配置された2つのプーリの間に架け渡された環状部材を有しかつ前記環状部材は支柱部に設けた連結部に結合され、
前記1つの防護柵部は前記環状部材に結合され、前記構造部が昇降するとき、前記構造部の上昇時に前記1つの防護柵部が上昇しかつ前記構造部の下降時に前記1つの防護柵部が下降するように構成され、
前記構造部自身の昇降動作に伴って前記間隔を変化させるようにしたことを特徴とする昇降式ホーム柵の間隔調整機構。
【請求項2】
前記少なくとも2つの防護柵部のいずれか1つの防護柵部の昇降の動きに伴って他の防護柵部の昇降を連動させ、上昇時に前記間隔を狭くして開き下降時に前記間隔を広くして閉じることを特徴とする請求項1記載の昇降式ホーム柵の間隔調整機構。
【請求項3】
前記少なくとも2つの防護柵部のいずれか1つの防護柵部の昇降の動きに伴って他の防護柵部の昇降を連動させ、上昇時に前記間隔を広くして閉じ、下降時に前記間隔を狭くして開くことを特徴とする請求項1記載の昇降式ホーム柵の間隔調整機構。
【請求項4】
前記モータは前記支柱部に内蔵されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇降式ホーム柵の間隔調整機構。
【請求項5】
前記防護柵部は水平方向に架け渡されたロープであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降式ホーム柵の間隔調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降式ホーム柵の間隔調整機構に関し、特に、昇降する複数のロープ等の防護柵部の各間隔が簡単な機構により上下の各移動位置に応じて変化するようにした昇降式ホーム柵の間隔調整機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駅ホームでは、近年、乗降客等の利用者が駅ホームから軌道(線路)に転落したり、入線してきた列車(電車)と利用者が接触するのを防止するために、防護柵として、駅ホームの軌道側の縁部に沿ってホーム安全柵が設けられつつある。ホーム安全柵としては、従来、種々の形式や構造がある。例えば、駅ホームに停車した電車の乗降ドアに対応した位置に横開きホームドア装置を設置した腰高の高さを有する防護壁タイプ、または地下鉄のごとく駅ホームの線路側の縁部に沿って人の身長を超える高さまで全面的に壁を形成し、電車の乗降ドアの位置に対応して横開き開閉ドアを設けた防護壁タイプ、または駅ホームの軌道側の縁部に沿ってほぼ全域にわたって昇降自在なロープを配置して成る昇降式ロープ安全柵等(下記の特許文献1)が存在する。ロープの代わりに長いバーやロッドを利用した安全柵もある。
【0003】
また下記の特許文献2や特許文献3に開示されるゲート構造を有した安全柵も提案されている。特許文献2,3は同じ出願人による特許出願であり、特許文献2,3に開示されるゲート装置の基本的構成は同じである。特許文献2のゲート装置は、その
図4に示す正面形状(閉から開へ状態変化している。)を有し、駅ホームに停車した電車の複数の乗降ドアの各位置に対応して駅ホームに設置されている。ゲート装置は、駅ホームの床面に固定された左右一対の固定支柱(11:括弧内の番号は公報中で使用されている番号である。以下同じ)と、各固定支柱(11)に対して上下にスライドする可動支柱(12)とを備え、左右の可動支柱(12)の間に上側制止バー(13)と上下動する下側制止バー(14)を備えている。特許文献3に開示されるゲート装置も、
図2と
図5に示されるように、駅ホームに固定された左右一対の固定支柱(11)と、各固定支柱(11)に対して上下にスライドする左右一対の可動支柱(12)と、上側制止バー(13)と、上下動する下側制止バー(14)とから構成されている。
【0004】
そして、例えば特許文献2の
図4および
図5に示されるように、可動支柱(12)が下降位置にあってゲート装置が閉じているときには上側制止バー(13)と下側制止バー(14)の間隔は広い状態にあり、可動支柱(12)が上昇位置にあってゲート装置が開いているときには下側制止バー(14)は上方に移動して上側制止バー(13)に接近し、上側制止バー(13)と下側制止バー(14)の間隔は狭くなっている。この構成は特許文献3のゲート装置の構成でも同じである。このように、特許文献2,3に開示されるゲート装置では、昇降時に上側制止バー(13)と下側制止バー(14)の間隔は可変になっている。上側制止バー(13)と下側制止バー(14)の間隔を可変にするため、可動支柱(12)に、下側制止バー(14)を昇降させる駆動機構(制御部と駆動部)を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−526614号公報
【特許文献2】特開2012−106586号公報(
図4と
図5等)
【特許文献3】特開2011−173584号公報(
図2と
図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2,3に開示されるゲート装置は、列車の各乗降ドアの位置に対応して配置され、列車の乗降ドアのドア幅に対応する距離で左右の支柱が設置され、その支柱の間に上下の制止バーが配置される構造となっている。左右の支柱は、それぞれ、固定支柱と、固定支柱に対して上下にスライドする可動支柱とで構成される。上下の制止バーは可動支柱に設けられ、特に下側制止バーは、可動支柱が昇降した時に、可動支柱に設けられた駆動機構によって昇降するように構成されている。下側制止バーの昇降動作は、可動支柱の昇降動作とは独立しており、可動支柱の昇降動作の完了後に下側制止バーの昇降動作が行われる。このため、下側制止バーの昇降動作を行う駆動機構は、可動支柱の昇降動作を行う駆動機構とは別の駆動要素として設けられている。従って、昇降動作のための駆動機構の構成が複雑になっている。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、昇降する複数のロープ等の防護柵部の各間隔が簡単な機構により上下の各移動位置に応じて変化するように構成し、かつ安価なコストで機構を実現できる昇降式ホーム柵の間隔調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0009】
第1の昇降式ホーム柵の間隔調整機構(請求項1に対応)は、
間隔をあけて配置された少なくとも2つの防護柵部を支持
しかつモータで昇降される構造部
であり、この構造部では、上下の位置関係にて配置された2つのプーリの間に架け渡された環状部材を有しかつ環状部材は支柱部に設けた連結部に結合され、
1つの防護柵部は環状部材に結合され、構造部が昇降するとき、構造部の上昇時に1つの防護柵部が上昇しかつ構造部の下降時に1つの防護柵部が下降するように構成され、
構造部自身の昇降動作に伴って前記間隔を変化させる
ようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記の昇降式ホーム柵の間隔調整機構では、昇降する構造部自体の昇降動作に連動させることによって、少なくとも2つの防護柵部(ロープ等)の各々の間の間隔を変化させることが可能となり、防護柵部の間の間隔を変化させるために別途に独立した駆動装置および駆動制御装置を設ける必要はない。
【0011】
第2の昇降式ホーム柵の間隔調整機構(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、少なくとも2つの防護柵部のいずれか1つの防護柵部の昇降の動きに伴って他の防護柵部の昇降を連動させ、上昇時に間隔を狭くして開き下降時に間隔を広くして閉じることを特徴とする。
この構成によれば、1つの防護柵部が昇降することによって残りの防護柵部も連動して昇降するように構成され、上昇時にはすべての防護柵部がそれらの間隔が狭まってまとまった状態で上方位置に動き、その下側にホーム柵の開放状態が作られ、下降時に防護柵部の間隔が広くなって下方位置に動き、ホーム柵において閉状態を作って防護柵として機能させる。
【0012】
第3の昇降式ホーム柵の間隔調整機構(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、少なくとも2つの防護柵部のいずれか1つの防護柵部の昇降の動きに伴って他の防護柵部の昇降を連動させ、上昇時に間隔を広くして閉じ、下降時に間隔を狭くして開くことを特徴とする。
この構成によれば、上記第2の装置構成とは反対になるように構成され、上昇時には、下方の所定位置に間隔を狭めて配置されていた複数の防護柵部の間隔を広げて閉状態を作って防護柵として機能させ、下降時には、防護柵部の間隔を狭まくして下方の所定位置に動き、ホーム柵の開放状態を作る。
【0013】
第4の昇降式ホーム柵の間隔調整機構(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、
モータは支柱部に内蔵されていることを特徴とする。
【0014】
第5の昇降式ホーム柵の間隔調整機構(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、防護柵部は水平方向に架け渡されたロープであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、間隔をあけて配置された複数のロープ等を支持する構造部が、構造部自身の昇降動作に伴って当該間隔を変化させる機構を有し、昇降する構造部自体の昇降動作だけに基づいて複数のロープ等の間隔を変化させるようにしたため、間隔変化のための駆動装置および駆動制御装置を設ける必要はなく、昇降する複数のロープ等の間隔が簡単な機構により上下の各移動位置に応じて変化することができ、安価なコストで間隔調整機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構を示し、ロープが上昇してホーム柵が開いた状態(A)と、ロープが下降してホーム柵が閉じた状態(B)を示す内部構造を示した正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構の要部の構造を示す部分断面拡大図である。
【
図3】本発明に係る間隔調整機構の構成を原理的に説明するための図である。
【
図4】第1の実施形態に係る間隔調整機構を用いて構成される昇降式ホーム柵の下降状態(閉じた状態)を示す正面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構を示し、ロープが上昇してホーム柵が開いた状態(A)と、ロープが下降してホーム柵が閉じた状態(B)を示す内部構造を示した要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜
図3を参照して本発明に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構の第1の実施形態を説明する。
【0019】
図1において、10は昇降式ホーム柵を示す。昇降式ホーム柵10において、11は支柱であり、12は昇降部を示している。支柱11はホーム床面13に固定されている。昇降部12は、支柱11において、ガイド機構(図示せず)によって支持され、かつこのガイド機構によって支柱11の高さ方向に昇降移動(上昇(A)または下降(B))するように設けられている。支柱11の内部には、昇降部12を昇降させる駆動部14が設けられている。上記のガイド機構を介して、駆動部14が上昇駆動14Aを行うと、昇降部12を上昇(A)させ、下降駆動14Bを行うと、昇降部12を下降(B)させる。駆動部14の構成、およびガイド機構の構成については、従来から良く知られた公知の装置構成を用いることができ、また任意に設計することができる。
【0020】
昇降部12には、外観部をなすケース15の内部において、自在に回転する2つのプーリ16,17が上下の位置関係にて設けられており、さらに2つのプーリ16,17の間には環状のベルト18が架け渡されている。環状のベルト18の所定の箇所は、支柱11の上側箇所に固定して設けられた連結部19の先端部が結合されている。
【0021】
昇降部12の内部には、さらに、上下方向の位置関係に基づいて、例えば4つのロープ保持具21A,21B,21C,21Dが上から順次に設けられている。ロープ保持具21Aでは最上位のロープ22Aが結合され、ロープ保持具21Aはロープ22Aを水平に保持する。ロープ保持具21Bでは上から2番目のロープ22Bが結合され、ロープ保持具21Bはロープ22Bを水平に保持する。ロープ保持具21Cでは上から3番目のロープ22Cが結合され、ロープ保持具21Cはロープ22Cを水平に保持する。ロープ保持具21Dは最下位(上から4番目)のロープ22Dに結合され、ロープ保持具21Dはロープ22Dを水平に保持する。
図2に示した23は、ロープ保持具21A〜21Dとロープ22A〜22Dの間のそれぞれの結合部を示している。ロープ保持具21Aの形状は例えば台状であり、ロープ保持具21B〜21Dの各形状は例えば幅が狭い板形状である。ロープ保持具21A〜21Dの形状は目的や条件に応じて任意に設計することができる。
【0022】
またこの昇降式ホーム柵10では、昇降する防護柵部として、間隔をあけて水平方向に架設された例えば4本のロープ22A〜22Dを用いる構成としている。4本のロープ22A〜22Dの各々の間の間隔はその高さ位置に応じて可変となっている。なお防護柵部としては、その他にバー等、類似した形状や構造を有する任意の部材を用いることができる。
【0023】
上記のロープ保持具21A〜21Cの各々の下面における任意の所定位置には下方に向けられた棒状部材21A−1,21B−1,21C−1が設けられている。棒状部材21A−1〜21C−1の各々の下端部は拡径部として形成されている。
図1の要部を拡大して示した
図2に示されるように、棒状部材21A−1は、ロープ保持具21Aの下側のロープ保持具21Bに形成された孔21B−2に挿通されている。棒状部材21B−1は、ロープ保持具21Bの下側に配置されたロープ保持具21Cに形成された孔21C−2に挿通されている。棒状部材21C−1は、ロープ保持具21Cの下側に配置されたロープ保持具21Dに形成された孔21D−2に挿入されている。
【0024】
上記ロープ保持具21A〜21Dの取付け位置に関して、最上位に位置するロープ保持具21Aは昇降部12のケース15の上部に固定されている。従って、ロープ保持具21Aは、昇降部12のケース15内において一定位置に固定され、常に静止状態にある。最下位に位置するロープ保持具21Dは、前述したベルト18の所定の位置に結合されている。従って、ロープ保持具21Dは、ベルト18の移動と共に移動する。中間に位置する2つのロープ保持具21B,21Cは、上記の棒状部材21A−1,21Bー1,21C−1によって上記のロープ保持具21A,21Dに対してリンク機構的に関係付けられており、その移動が規制される。すなわち、最下位のロープ保持具21Dがベルト18の動きに対応して上昇すると、これに連動してロープ保持具21Dによって上方に押し上げられ、ロープ保持具21B,21Cも棒状部材21A−1〜21C−1によって横方向の動きを規制されつつロープ保持具21Aに接近するように上昇する。反対にロープ保持具21Dがベルト18の動きに対応して下降すると、ロープ保持具21B,21Cは棒状部材21A−1〜21C−1によって横方向の動きを規制されつつ自重により下方に移動する。
【0025】
図1の(A)に示した状態は、駆動部14による上昇駆動14Aに基づいて、昇降部12をもっとも高い位置に上昇(A)させた状態を示している。このとき、ベルト18は連結部19に結合されているので、ベルト18は反時計方向に回転移動し、その結果、ベルト18に結合されたロープ保持具21Dは、昇降部12が上昇する動きに連動して、昇降部12のケース15内にて上昇する。ロープ保持具21Dが上昇すると、ロープ保持具21Dによって押し上げられてロープ保持具21B,21Cも上昇する。最終的に、ロープ保持具21Aに対してロープ保持具21Dが押し付け、4つのロープ保持具21A,21B,21C,21Dが互いにほぼ接触した状態で静止する。この結果、昇降部12が上昇した状態では、4本のロープ22A,22B,22C,22Dの間隔が狭くなった状態になる。これによって、昇降部12が上昇したときには、ロープ22A〜22Dの下側空間が開放され、昇降式ホーム柵10は開いた状態になる。
【0026】
図1の(B)に示した状態は、駆動部14による下降駆動14Bに基づいて、昇降部12をもっとも低い位置に下降(B)させた状態を示している。このとき、ベルト18は連結部19に結合されているので、ベルト18は時計方向に回転移動し、その結果、ベルト18に結合されたロープ保持具21Dは、昇降部12が下降する動きに連動して、昇降部12のケース15内にて下降する。ロープ保持具21Dが下降すると、ロープ保持具21B,21Cもその自重によって下降する。最終的に、ロープ保持具21Dが最下位の位置に来ると、中間のロープ保持具21B,21Cは、それぞれ、係合関係にある棒状部材21A−1,21B−1に規制されて、棒状部材の長さで決まる下方位置に静止される。また最下位のロープ保持具21Dの位置も棒状部材21C−1の長さによって決まる。この結果、昇降部12が下降した状態では、4本のロープ22A,22B,22C,22Dの間隔が上下方向にて広がり、所望の間隔で離れた状態になる。これによって、昇降部12が下降したときには、4本のロープ22A〜22Dが適切な間隔で配置され、昇降式ホーム柵10は閉じた状態になる。
【0027】
上記の
図1に示された上昇状態(A)と下降状態(B)は、必要とされる適宜なタイミングで、交互に繰り返される。すなわち、昇降部12が上昇駆動されるときには
図1の(B)から(A)に変化し、昇降部12が下降駆動されるときには
図1の(A)から(B)に変化する。昇降部12が昇降するとき、4本のロープ22A〜22Dの間隔は変化するように構成される。すなわち、下降状態にあるときにはロープ22A〜22Dの間隔は広くなり、上昇状態になったときにはロープ22A〜22Dの間隔は狭くなる。これにより昇降式ホーム柵10の開閉が行われる。
【0028】
上記のごとく、防護柵部である複数のロープ22A〜22Dの間隔が上昇時に狭くなるように構成することにより、支柱11と昇降部12から成る昇降式ホーム柵10の筐体部分の全体の高さを低く抑えることができるという利点がある。
【0029】
次に
図3を参照して、上記昇降式ホーム柵10のロープ22A〜22Dの間隔調整機構を概念的に説明する。すなわち、図示しない駆動装置に基づいて構造部31(昇降部12に対応する)に対して昇降動作32を実施すると、構造部31の当該昇降動作32に伴う関係33(ベルト18、連結部19、ロープ保持具21D等に対応する)に基づいて、間隔を変化させる機構34(ロープ保持具21A〜21D、棒状部材21A−1〜21C−1等に対応する)が、少なくとも2つの防護柵部35,36(ロープ22A〜22Dに対応する)の間隔37を調整する。換言すれば、昇降式ホーム柵10の間隔調整機構は、構造部31の昇降動作に基づいて防護柵部35,36の間隔37を変化させるという構成に特徴を有し、当該間隔37を変化させるための専用の駆動機構および制御部を必要としない点に利点を有している。
【0030】
図1に示した昇降式ホーム柵10の支柱11と昇降部12から成る筐体部分は、駅ホームの軌道側縁部に沿って必要な複数台が設置され、それぞれにおいてその昇降部12が4本のロープ22A〜22Dを保持し、ロープの架設状態を形成している。
図4は、2台の昇降式ホーム柵10の配置状態を示す図である。2台の昇降式ホーム柵10の各昇降部12を介して4本のロープ22A〜22Dが保持され、各昇降部12は下降した状態にあって、昇降式ホーム柵10は閉じた状態にある。
【0031】
次に
図5を参照して本発明に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構の第2の実施形態を説明する。
図5の(A)は
図1の(A)に対応し、
図5の(B)は
図1の(B)に対応している。
図5において、
図1で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。また
図5において、支柱11の下部はその図示を省略する。
【0032】
図5において、支柱11の形状および内部構造、連結部19の取付け位置、昇降部12のケース15、ケース15内のプーリ16,17、2つのプーリ16,17の間に架け渡されたベルト18についての構成は、
図1等で説明した第1の実施形態の場合と同じである。従って、昇降部12の昇降動作、当該昇降動作に伴うベルト18の回転動作は第1の実施形態で説明した通りである。
【0033】
昇降部12のケース15内の上部には取付け台40が設けられている。取付け台40の下側には、上下方向の位置関係に基づいて、例えば4つのロープ保持具41A,41B,41C,41Dが上から順次に配置されている。ロープ保持具41A〜41Dのそれぞれにはロープ22A〜22Dが結合されており、各ロープ保持具41A〜41Dは対応する各ロープ22A〜22Dを水平に保持している。最上位のロープ保持具41Aは取付け台40に固定されており、最下位のロープ保持具41Dはその一端部がベルト18に結合されている。ロープ保持具41A〜41Dは、例えば幅の狭い板形状を有している。また4つのロープ保持具41A〜41Dは、各々の間において、その一側面を利用して所謂マジックハンド構造を作るリンク機構42を備えており、これらの3つのリンク機構42によって連結されている。3つのリンク機構42の各々において、ロープ保持具41A〜41Dとの結合部は、
図5中で横方向(水平方向)に摺動するように設けられている。
【0034】
上記のリンク機構42で連結されたロープ保持具41A〜41Dは、
図5の(A)に示すように、昇降部12が上昇すると、ベルト18に結合されたロープ保持具41Dが、ベルト18の反時計方向の回転移動に伴って上昇し、各リンク機構42が閉じてロープ保持具41A〜41Dがほぼ接触した状態になる。その結果、4本のロープ22A〜22Dは上昇すると共に、その間隔が狭くなる。また
図5の(B)に示すように、昇降部12が下降すると、ベルト18に結合されたロープ保持具41Dが、ベルト18の時計方向の回転移動に伴って下降し、各リンク機構42が上下方向にて開いてロープ保持具41A〜41Dの間隔が所望の距離になるように広くなる。その結果、4本のロープ22A〜22Dは下降すると共に、その間隔が広くなる。
【0035】
上記のごとく、第2の実施形態のリンク機構42に基づく構成においても、防護柵部である複数のロープ22A〜22Dの間隔が上昇時に狭くなるようにすることができ、これにより、支柱11と昇降部12から成る昇降式ホーム柵10の筐体部分の全体の高さを低く抑えることができるという利点がある。
【0036】
本発明に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構は次のように構成することもできる。上記の各実施形態によれば、ロープの上昇時にロープの間隔を狭くしてロープの下側にホーム柵の開放状態を作り、ロープの下降時にロープの間隔を広くしてホーム柵の閉状態を作るように構成されていた。これに対して、ロープの上昇時にロープの間隔を広くしてホーム柵の閉状態を作り、ロープの下降時にロープの間隔を狭くしてホーム柵の開放状態を作るように構成することもできる。この場合には、複数本のロープは、閉動作時には下方の所定位置から上昇させ、開動作時には下方の所定位置に下降させるように構成されている。
【0037】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る昇降式ホーム柵の間隔調整機構は、昇降式ホーム柵における昇降する複数のロープ等の間隔を調整するのに利用され、簡単な機構によって昇降部が昇降するのに連動してロープ等の間隔を可変にするのに利用される。
【符号の説明】
【0039】
10 昇降式ホーム柵
11 支柱
12 昇降部
13 ホーム床面
14 駆動部
15 ケース
16,17 プーリ
18 ベルト
19 連結部
21A〜21D ロープ保持具
21A−1 棒状部材
21B−1 棒状部材
21C−1 棒状部材
21B−2 孔
21C−2 孔
21D−2 孔
22A〜22D ロープ
23 結合部
31 構造部
32 昇降動作
40 取付け台
41A〜41D ロープ保持具
42 リンク機構