特許第6356496号(P6356496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356496
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/02 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   D06F33/02 F
   D06F33/02 K
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-118208(P2014-118208)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229088(P2015-229088A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】辻 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓之
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−104684(JP,A)
【文献】 特開2010−194014(JP,A)
【文献】 特開平11−276757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00−51/02
D06F 58/00−60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機において、
筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、
前記ドラムの内周面に設けられるバッフルと、
前記ドラムの後部に配置され、表面に洗濯物と接触する突状部を有する回転体と、
前記回転体の回転速度が前記ドラムの回転速度と等しくなるよう前記ドラムと前記回転体とを一体的に回転させる一軸駆動形態と、前記回転体の回転速度が前記ドラムの回転速度より速くなるよう前記ドラムと前記回転体とを別々に回転させる二軸駆動形態とにより、前記ドラムおよび前記回転体を回転させることが可能な駆動部と、
前記駆動部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記駆動部に前記一軸駆動形態による前記ドラムおよび前記回転体の回転を行わせることにより、前記脱水工程を実行し、
前記脱水工程に続いて、前記駆動部の駆動形態を前記二軸駆動形態に切り替え、前記ドラムを、洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させるとともに前記回転体を前記ドラムより速い回転速度で回転させることにより、前記脱水工程で前記ドラムに張り付いた洗濯物を、当該洗濯物への前記回転体の接触により剥離する剥離工程を実行する、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載のドラム式洗濯機において、
前記脱水工程は、前記すすぎ工程の前に実行される中間脱水工程と、前記洗濯運転の最後に実行される最終脱水工程とを含み、
前記制御部は、前記最終脱水工程に続いて前記剥離工程を実行する、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記中間脱水工程に続き前記すすぎ工程の前に前記剥離工程を実行する、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記剥離工程において、前記駆動部に前記二軸駆動形態による前記ドラムおよび前記回転体の正転と逆転とを行わせる、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記駆動部に前記二軸駆動形態による前記ドラムおよび前記回転体の回転を行わせることにより、前記洗い工程および前記すすぎ工程を実行する、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。かかるドラム式洗濯機は、洗濯から乾燥まで連続的に行うものであっても良いし、洗濯は行うが乾燥は行わないものであっても良い。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム式洗濯機は、底部に水を溜めた外槽内で横軸型のドラムを回転させ、ドラム内に設けたバッフルにより洗濯物を持ち上げては落下させ、洗濯物をドラムの内周面に叩き付けることにより、洗濯物を洗濯する(特許文献1参照)。
【0003】
また、かかるドラム式洗濯機では、ドラムを高速で回転させ、遠心力によって洗濯物をドラムの内面面に押し付けることにより、洗濯物を脱水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−240577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ドラム式洗濯機では、脱水が終了したとき、洗濯物がドラムの内周面に張り付いた状態となりやすい。たとえば、洗濯運転での最終の脱水により洗濯物がドラムに張り付いた状態となった場合、洗濯運転が終了するまでに洗濯物がドラムに張り付いた状態を低減できれば、ドラムから洗濯物を剥す作業が低減されるので、ユーザは、洗濯物を容易に取り出すことができる。また、たとえば、ドラム式洗濯機に乾燥機能が備えられており、洗濯運転に続いて乾燥運転が行われる場合、乾燥運転の前に洗濯物がドラムに張り付いた状態を低減できれば、乾燥運転の開始当初から洗濯物を良好に撹拌することができ、乾燥性能の向上が期待できる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、脱水によりドラムに洗濯物が張り付いた状態となった場合に、その張り付きを低減できるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主たる態様は、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機に関する。本態様に係るドラム式洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、前記ドラムの後部に配置され、表面に洗濯物と接触する突状部を有する回転体と、前記回転体の回転速度が前記ドラムの回転速度と等しくなるよう前記ドラムと前記回転体とを一体的に回転させる一軸駆動形態と、前記回転体の回転速度が前記ドラムの回転速度より速くなるよう前記ドラムと前記回転体とを別々に回転させる二軸駆動形態とにより、前記ドラムおよび前記回転体を回転させることが可能な駆動部と、前記駆動部の動作を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記駆動部に前記一軸駆動形態による前記ドラムおよび前記回転体の回転を行わせることにより、前記脱水工程を実行する。さらに、前記制御部は、前記脱水工程に続いて、前記駆動部に前記二軸駆動形態による前記ドラムおよび前記回転体の回転を行わせることにより、前記脱水工程で前記ドラムに張り付いた洗濯物を、当該洗濯物への前記回転体の接触により剥離する剥離工程を実行する。
【0008】
上記の構成によれば、脱水工程に続く剥離工程によって、脱水工程でドラムに張り付いた洗濯物を剥離できるので、ドラムへの洗濯物の張り付きを低減することができる。
【0009】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記脱水工程は、前記すすぎ工程の前に実行される中間脱水工程と、洗濯運転の最後に実行される最終脱水工程とを含み得る。この場合、前記制御部は、前記最終脱水工程に続いて前記剥離工程を実行する構成とされ得る。
【0010】
上記の構成によれば、最終脱水工程で生じたドラムへの洗濯物の張り付きを低減できる。よって、洗濯運転の終了後に洗濯物が取り出される場合には、ユーザが洗濯物の取り出しを容易に行うことができる。また、洗濯運転に続いて乾燥運転が行われる場合には、乾燥性能の向上が期待できる。
【0011】
このような構成とされた場合、さらに、前記制御部は、前記中間脱水工程に続き前記すすぎ工程の前に前記剥離工程を実行する構成とされ得る。
【0012】
このような構成とされれば、中間脱水工程で生じたドラムへの洗濯物の張り付きを、すすぎ工程が開始される前に低減できる。よって、すすぎ工程において洗濯物を良好に撹拌でき、すすぎ性能の向上が期待できる。
【0013】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記制御部は、前記剥離工程において、前記駆動部に前記二軸駆動形態による前記ドラムおよび前記回転体の正転と逆転とを行わせる構成とされ得る。
【0014】
上記の構成によれば、ドラムおよび回転体を正転および逆転させることにより、ドラムに張り付いた洗濯物に、異なる2方向から回転体との接触による力を加えることができるので、洗濯物がドラムから剥離しやすくなる。
【0015】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記制御部は、前記駆動部に前記二軸駆動形態による前記ドラムおよび前記回転体の回転を行わせることにより、前記洗い工程および前記すすぎ工程を実行する構成とされ得る。
【0016】
上記の構成によれば、洗い工程およびすすぎ工程において、ドラム内の洗濯物が、ドラムの回転による撹拌によりドラムの内周面に叩き付けられるのみならず、回転する回転体の突状部によって擦られたり撹拌されたりする。よって、ドラムの回転によって洗濯物が撹拌されるだけの構成に比べて、洗浄性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、脱水によりドラムに洗濯物が張り付いた状態となった場合に、その張り付きを低減できるドラム式洗濯機を提供することができる。
【0018】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の構成を示す側面断面図である。
図2】実施の形態に係る、駆動ユニットの構成を示す断面図である。
図3】実施の形態に係る、駆動ユニットの構成を示す断面図である。
図4】実施の形態に係る、駆動モータのロータの構成を示す、ロータの正面図である。
図5】実施の形態に係る、スプラインが形成された軸受ユニットの後部の拡大斜視図である。
図6】実施の形態に係る、クラッチ機構部のクラッチ体の構成を示す図である。
図7】実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態に係る、洗濯運転における各工程を示す図である。
図9】実施の形態に係る、剥離工程における制御処理を示すフローチャートである。
図10】実施の形態に係る、剥離工程前、剥離工程中および剥離工程後におけるドラム内の洗濯物の状態を示す図である。
図11】変更例に係る、洗濯運転における各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0022】
ドラム式洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10の前面10aは、中央部から上部にかけて傾斜し、傾斜した面に洗濯物の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0023】
筐体10内には、外槽20が、複数のダンパー21により弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム22が回転自在に配される。外槽20およびドラム22は、水平方向に対し、後面側が低くなるよう傾斜する。これにより、ドラム22は、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。外槽20およびドラム22の傾斜角度は、10〜20度程度とされ得る。外槽20の前面の開口部20aおよびドラム22の前面の開口部22aは、投入口11に対向し、投入口11ともにドア12により閉鎖される。ドラム22の内周面には、多数の脱水孔22bが形成される。さらに、ドラム22の内周面には、3つのバッフル23が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。
【0024】
ドラム22の後部には、撹拌体24が回転自在に配される。撹拌体24は、ほぼ円盤形状を有する。撹拌体24の表面には、中央部から放射状に延びる複数の羽根24aが形成される。撹拌体24は、ドラム22と同軸に回転する。撹拌体24は、本発明の回転体に相当し、羽根24aは、本発明の突状部に相当する。
【0025】
外槽20の後方には、ドラム22および撹拌体24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配される。駆動ユニット30は、本発明の駆動部に相当する。駆動ユニット30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム22および撹拌体24を同一方向に異なる回転速度で回転させる。具体的には、駆動ユニット30は、ドラム22を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、撹拌体24を、ドラム22の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。一方、駆動ユニット30は、脱水工程時には、ドラム22および撹拌体24を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動ユニット30の詳細な構成は、追って説明される。
【0026】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0027】
筐体10内の前方上部には、洗剤ボックス50が配される。洗剤ボックス50には、洗剤が収容される洗剤容器50aが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス50は、筐体10内の後方上部に配された給水バルブ51に、給水ホース52によって接続される。また、洗剤ボックス50は、外槽20の上部に、注水管53により接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース52、洗剤ボックス50および注水管53を通じて外槽20内に供給される。この際、洗剤容器50aに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽20内に供給される。
【0028】
次に、駆動ユニット30の構成について詳細に説明する。
【0029】
図2および図3は、駆動ユニット30の構成を示す断面図である。図2は、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、図3は、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。図4は、駆動モータ100のロータ110の構成を示す、ロータ110の正面図である。図5は、スプライン514が形成された軸受ユニット500の後部の拡大斜視図である。図6(a)ないし(c)は、クラッチ機構部600のクラッチ体610の構成を示す図であり、それぞれ、クラッチ体610の正面図、右側面図および背面図である。
【0030】
駆動ユニット30は、駆動モータ100と、翼軸200と、ドラム軸300と、遊星歯車機構400と、軸受ユニット500と、クラッチ機構部600とを含む。駆動モータ100は、撹拌体24およびドラム22を駆動するためのトルクを発生する。翼軸200は、駆動モータ100のトルクにより回転し、当該回転を撹拌体24に伝達する。遊星歯車機構400は、翼軸200の回転、即ち駆動モータ100のロータ110の回転を減速してドラム軸300に伝達する。ドラム軸300は、遊星歯車機構400により減速された回転速度で翼軸200と同軸に回転し、当該回転をドラム22に伝達する。軸受ユニット500は、翼軸200およびドラム軸300を回転自在に支持する。クラッチ機構部600は、撹拌体24、即ち翼軸200を、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転させ、ドラム22、即ちドラム軸300を、遊星歯車機構400により減速された回転速度で回転させることが可能な二軸駆動形態と、撹拌体24およびドラム22、即ち、翼軸200、ドラム軸300および遊星歯車機構400を、駆動モータ100と等しい回転速度で一体的に回転させることが可能な一軸駆動形態との間で、駆動ユニット30の駆動形態を切り替える。
【0031】
駆動モータ100は、アウターロータ型のDCブラシレスモータであり、ロータ110とステータ120とを含む。ロータ110は、有底の円筒状に形成され、その内周面には、全周に亘って永久磁石111が配列される。図4に示すように、ロータ110の中央部には、円形のボス部112が形成される。ボス部112には、翼軸200を固定するためのボス孔113が形成されるとともに、ボス孔113の外周に環状の被係合凹部114が形成される。被係合凹部114の外周部は、全周に亘って凹凸部114aを有する。
【0032】
ステータ120は、外周部に巻線121を有する。後述するモータ駆動部からステータ120の巻線121に駆動電流が供給されると、ロータ110が回転する。
【0033】
ドラム軸300は、中空形状を有し、翼軸200と遊星歯車機構400とを内包する。ドラム軸300は、中央部が外側に膨出し、この膨出した部位が、遊星歯車機構400の収容部となる。
【0034】
遊星歯車機構400は、太陽歯車410と、太陽歯車410を囲む環状の内歯車420と、太陽歯車410と内歯車420との間に介在する複数組の遊星歯車430と、これら遊星歯車430を回転自在に保持する遊星キャリア440とを含む。
【0035】
太陽歯車410が翼軸200に固定され、内歯車420がドラム軸300に固定される。一組の遊星歯車430は、互いに噛み合い、相反する方向に回転する第1歯車と第2歯車とを含む。遊星キャリア440は、後方へ延びるキャリア軸441を含む。キャリア軸441は、ドラム軸300と同軸であり、翼軸200が挿入されるために内部が中空に形成される。
【0036】
翼軸200の後端部は、キャリア軸441から後方に突出し、ロータ110のボス孔113に固定される。
【0037】
軸受ユニット500には、中央部に円筒状の軸受部510が設けられる。軸受部510の内部には、前部および後部に転がり軸受511、512が設けられ、前端部に、メカニカルシール513が設けられる。ドラム軸300は、外周面が転がり軸受511、512により受けられ、軸受部510内において円滑に回転する。また、メカニカルシール513により、軸受部510とドラム軸300との間への水の侵入が防止される。図5に示すように、軸受部510の後端部には、内面に、全周に亘ってスプライン514が形成される。
【0038】
軸受ユニット500には、軸受部510の周囲に固定フランジ部520が形成される。固定フランジ部520の下端部に取付ボス521が形成される。
【0039】
軸受ユニット500は、固定フランジ部520において、ネジ止等の固定方法により、外槽20の後面に固定される。駆動ユニット30が外槽20に装着された状態において、翼軸200およびドラム軸300が外槽20の内部に臨む。ドラム22がドラム軸300に固定され、撹拌体24が翼軸200に固定される。
【0040】
クラッチ機構部600は、クラッチ体610と、クラッチスプリング620と、クラッチレバー630と、レバー支持部640と、クラッチ駆動装置650と、取付プレート660とを含む。
【0041】
図6(a)ないし(c)に示すように、クラッチ体610はほぼ円盤形状を有する。クラッチ体610の前端部には、外周面に、環状のスプライン611が形成される。スプライン611は、軸受ユニット500のスプライン514と係合するように形成される。また、クラッチ体610の外周面には、スプライン611の後方に、フランジ部612が形成される。さらに、クラッチ体610には後端部に、環状の係合フランジ部613が形成される。係合フランジ部613は、ロータ110の被係合凹部114と同じ形状を有し、外周部に全周に亘って凹凸部613aを有する。係合フランジ部613が、被係合凹部114に挿入されると、凹凸部613a、114a同士が係合する。
【0042】
クラッチ体610の軸孔614にキャリア軸441が挿入される。軸孔614の内周面に形成されたスプライン614aとキャリア軸441の外周面に形成されたスプライン441aとが係合する。これにより、クラッチ体610が、キャリア軸441に対して、前後方向への移動が許容され、且つ、周方向への回動が規制される状態となる。
【0043】
クラッチ体610には、軸孔614の外側に環状の収容溝615が形成され、この収容溝615に、クラッチスプリング620が収容される。クラッチスプリング620は、一端が軸受部510の後端部に接し、他端が収容溝615の底面に接する。
【0044】
クラッチレバー630の上端部には、クラッチ体610のフランジ部612の後面に接触し、フランジ部612を前方へ押す押圧部631が形成される。
【0045】
クラッチレバー630は、支軸632を有し、この支軸632がレバー支持部640に回動自在に支持される。クラッチレバー630とレバー支持部640の間に、スプリング641が介在する。スプリング641は、引張スプリングであり、クラッチレバー630は、スプリング641の弾性力により、その下端が前方に移動する方向に引かれる。
【0046】
クラッチ駆動装置650は、トルクモータ651と、トルクモータ651のトルクにより水平軸周りに回転する円盤状のカム652とを含む。カム652の上面が、クラッチレバー630の下端部に接触する。カム652の上面は、一端側に設けられる、高さの高い第1接触面652aと、他端側に設けられる、高さの低い第2接触面652bと、第1接触面652aと第2接触面652bとの間をつなぐ傾斜面652cとを含む。
【0047】
レバー支持部640およびクラッチ駆動装置650は、ネジ止等の固定方法により、取付プレート660に固定される。取付プレート660は、軸受ユニット500の取付ボス521にネジにより固定される。
【0048】
駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、図2に示すように、トルクモータ651により、第1接触面652aが上方に位置し、第2接触面652bが下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、傾斜面652cおよび第1接触面652aに順次押されて後方へ移動する。クラッチレバー630が支軸632を中心に前方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610を前方へ押す。クラッチスプリング620の弾性力に逆らって、クラッチ体610が前方へ移動し、クラッチ体610のスプライン611と軸受ユニット500のスプライン514とが係合する。
【0049】
スプライン611とスプライン514とが係合すると、クラッチ体610が、軸受ユニット500に対して周方向への回動が規制され、回動できない状態となるので、遊星歯車機構400のキャリア軸441、即ち遊星キャリア440が、回転できないよう固定された状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転し、翼軸200に連結されている撹拌体24もロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。翼軸200の回転に伴い、遊星歯車機構400では、太陽歯車410が回転する。上述の通り、遊星キャリア440は固定された状態にあるので、遊星歯車430の第1歯車および第2歯車が、それぞれ、太陽歯車410と同方向および逆方向に回転し、内歯車420が太陽歯車410と同方向に回転する。これにより、内歯車420に固定されたドラム軸300が翼軸200と同方向に、翼軸200よりも遅い回転速度で回転し、ドラム軸300に固定されたドラム22が、撹拌体24よりも遅い回転速度で撹拌体24と同方向に回転する。言い換えれば、撹拌体24がドラム22よりも速い回転速度でドラム22と同方向に回転する。
【0050】
一方、駆動ユニット30の形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、図3に示すように、トルクモータ651により、第2接触面652bが上方に位置し、第1接触面652aが下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、スプリング641の弾性力により、傾斜面652cおよび第2接触面652bに順次沿いながら前方へ移動する。クラッチレバー630が支軸632を中心に後方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610のフランジ部612から離れる。クラッチ体610が、クラッチスプリング620の弾性力によって後方へ移動し、クラッチ体610の係合フランジ部613とロータ110の被係合凹部114とが係合する。
【0051】
係合フランジ部613と被係合凹部114とが係合すると、ロータ110に対するクラッチ体610の周方向への回動が規制され、クラッチ体610は、ロータ110とともに回転可能な状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200およびクラッチ体610がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。このとき、遊星歯車機構400では、太陽歯車410と遊星キャリア440とがロータ110と等しい回転速度で回転する。これにより、内歯車420が、太陽歯車410および遊星キャリア440と等しい回転速度で回転し、内歯車420に固定されたドラム軸300がロータ110と等しい回転速度で回転する。即ち、駆動ユニット30では、翼軸200、遊星歯車機構400およびドラム軸300が一体となって回転する。これにより、ドラム22と撹拌体24が一体的に回転する。
【0052】
図7は、ドラム式洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0053】
ドラム式洗濯機1は、上述した構成に加え、制御部701、記憶部702、操作部703、水位センサ704、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708およびドアロック装置709を備える。
【0054】
操作部703は、電源ボタン703a、スタートボタン703b、コース選択ボタン703cを含む。電源ボタン703aは、ドラム式洗濯機1の電源を投入および遮断するためのボタンである。スタートボタン703bは、運転をスタートさせるためのボタンである。コース選択ボタン703cは、洗濯運転に係る複数の運転コースの中から任意の運転コースを選択するためのボタンである。操作部703は、ユーザに操作されたボタンに応じた入力信号を制御部701に出力する。
【0055】
水位センサ704は、外槽20内の水位を検知し、検知した水位に応じた水位検知信号を制御部701に出力する。
【0056】
モータ駆動部705は、制御部701からの制御信号に従って、駆動モータ100に駆動電流を供給する。給水駆動部706は、制御部701からの制御信号に従って、給水バルブ51に駆動電流を供給する。排水駆動部707は、制御部701からの制御信号に従って、排水バルブ40に駆動電流を供給する。
【0057】
クラッチ駆動装置650は、第1検知センサ653および第2検知センサ654を含む。第1検知センサ653は、駆動ユニット30の駆動形態が二軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。第2検知センサ654は、駆動ユニット30の駆動形態が一軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。クラッチ駆動部708は、第1検知センサ653および第2検知センサ654からの検出信号に基づいて制御部701から出力された制御信号に従い、トルクモータ651に駆動電流を供給する。
【0058】
ドアロック装置709は、制御部701からの制御信号に従ってドア12のロックおよびロック解除を行う。
【0059】
記憶部702は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部702には、各種洗濯運転コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部702には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0060】
制御部701は、操作部703、水位センサ704等からの各信号に基づいて、記憶部702に記憶されたプログラムに従い、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708、ドアロック装置709等を制御する。
【0061】
ドラム式洗濯機1は、コース選択ボタン703cによるユーザの選択操作に基づき、各種運転コースの洗濯運転を行う。図8に示すように、洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。なお、運転コースによっては、中間脱水工程とすすぎ工程とが2回以上行われる場合がある。
【0062】
洗い工程およびすすぎ工程では、ドラム22内の洗濯物が水に浸かるよう、投入口11の下縁に至らない所定の水位まで外槽20内に水が溜められ、この状態で、駆動モータ100が、交互に、正転および逆転する。これにより、ドラム22と撹拌体24とが、撹拌体24の回転速度がドラム22の回転速度より速い状態で、交互に正転および逆転する。このとき、ドラム22は、洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転する。
【0063】
ドラム22内の洗濯物が、バッフル23で掻き上げられては落とされることにより、ドラム22の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム22の後部では、回転する撹拌体24の羽根24aに洗濯物が接触し、羽根24aに洗濯物が擦られたり、羽根24aによって洗濯物が撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる、あるいは、すすがれる。
【0064】
中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動モータ100、即ち、ドラム22および撹拌体24は、ドラム22内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム22の内周面に押し付けられ、脱水される。
【0065】
中間脱水工程および最終脱水工程の後、洗濯物は、ドラム22の内周面に張り付いたままの状態となることが多い。洗濯物がドラム22に張り付いたまま洗濯運転が終了した場合、ユーザは、洗濯物を取り出す際に洗濯物をドラム22から剥がす作業を強いられることとなる。よって、洗濯物の取り出しが容易でなくなる。
【0066】
そこで、本実施の形態では、最終脱水工程に続いて剥離工程が実行される。剥離工程では、ドラム22内に水がない状態で、ドラム22と撹拌体24とが、撹拌体24の回転速度がドラム22の回転速度より速くなるように回転し、ドラム22に張り付いた洗濯物が、当該洗濯物への撹拌体24の接触により剥離される。
【0067】
剥離工程における、制御部701による制御処理について、図9および図10を参照し、詳細に説明する。
【0068】
図9は、剥離工程における制御処理を示すフローチャートである。図10(a)、(b)および(c)は、それぞれ、剥離工程前、剥離工程中および剥離工程後におけるドラム22内の洗濯物の状態を示す図である。
【0069】
図10(a)に示すように、剥離工程前には、最終脱水工程での脱水により、ドラム22内の洗濯物は、ドラム22の内周面に張り付いた状態にある。
【0070】
剥離工程が開始されると、制御部701は、トルクモータ651を動作させ、駆動ユニット30の駆動形態を二軸駆動形態に切り替える(S101)。第1検知センサ653の検出結果に基づき、二軸駆動形態への切替りを確認すると、制御部701は、駆動モータ100を正転させる(S102)。ドラム22が、洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で正転する。さらに、撹拌体24がドラム22より高速で正転する。制御部701は、予め定められた第1時間が経過すると(S103:YES)、駆動モータ100を停止させる(S104)。
【0071】
次に、制御部701は、駆動モータ100を正転時と同じ速度で逆転させる(S105)。ドラム22および撹拌体24が、正転時と同じ速度で逆転する。制御部701は、予め定められた第2時間が経過すると(S106:YES)、駆動モータ100を停止させる(S107)。第2時間は、第1時間と同じ時間であっても良いし、異なる時間であっても良い。
【0072】
ドラム22および撹拌体24が正転および逆転すると、図10(b)に示すように、ドラム22の内周面に張り付いた洗濯物が、ドラム22よりも早く回転する撹拌体24に接触して撹拌体24から力を受け、ドラム22の内周面から剥離する。
【0073】
制御部701は、ドラム22および撹拌体24の正転および逆転の回数が、所定回数(たとえば、2回)に達していなければ(S108:NO)、再び、ステップS102ないしステップS107の処理を行う。これにより、所定回数だけ、ドラム22および撹拌体24が正転および逆転を繰り返す。
【0074】
ドラム22および撹拌体24の正転および逆転の回数が、所定回数に達すると(S108:YES)、制御部701は、トルクモータ651を動作させ、駆動ユニット30の駆動形態を一軸駆動形態に切り替える(S109)。こうして、剥離工程の制御処理が終了する。図10(c)に示すように、剥離工程の後は、洗濯物がドラム22から剥離され、ほぐされた状態となる。
【0075】
<実施の形態の効果>
以上、説明した通り、本実施の形態によれば、最終脱水工程に続いて剥離工程を実行し、当該剥離工程において、ドラム22と撹拌体24とを、撹拌体24の回転速度がドラム22の回転速度より速くなるように回転させ、ドラム22に張り付いた洗濯物を、当該洗濯物への撹拌体24の接触により剥離するようにしている。これにより、ドラム22への洗濯物の張り付きを低減できるので、洗濯物を取り出す際のドラム22から洗濯物を剥離する作業が低減され、ユーザは、洗濯物の取り出しを容易に行うことができる。
【0076】
さらに、本実施の形態によれば、剥離工程において、ドラム22および撹拌体24を正転および逆転させるようにしているので、ドラム22に張り付いた洗濯物に、異なる2方向から撹拌体24との接触による力を加えることができ、洗濯物がドラム22から剥離しやすくなる。
【0077】
さらに、本実施の形態によれば、洗い工程およびすすぎ工程において、ドラム22と撹拌体24とが、撹拌体24の回転速度がドラム22の回転速度より速くなるように回転する。これにより、ドラム22内の洗濯物は、ドラム22の回転による撹拌によりドラム22の内周面に叩き付けられるのみならず、回転する撹拌体24の羽根24aによって擦られる。よって、ドラム22の回転によって洗濯物が撹拌されるだけの構成に比べて、洗浄性能を向上させることができる。
【0078】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0079】
たとえば、上記実施の形態では、最終脱水工程に続いて剥離工程が実行される。しかしながら、図11に示すように、剥離工程が、最終脱水工程の後だけでなく、中間脱水工程の後にも実行される構成が採られても良い。この場合、洗濯物がドラム22から剥離され、ほぐされた状態ですすぎ工程が開始されるので、すすぎ工程において洗濯物を良好に撹拌でき、すすぎ性能の向上が期待できる。
【0080】
さらに、剥離工程において、二軸駆動形態によりドラム22および撹拌体24を回転させる前に、駆動ユニット30に一軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の短時間の正転および逆転を行わせ、ドラム22を左右に揺らすようにしても良い。ドラム22を揺らす動作を行うことにより、ドラム22に張り付いた洗濯物を剥がれやすくさせることができるので、二軸駆動形態によりドラム22および撹拌体24を回転させたときの洗濯物の剥離効果を高めることができる。
【0081】
さらに、上記実施の形態では、ドラム22が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム22が、水平軸を中心に回転するような構成とされても良い。
【0082】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。この場合、剥離工程に続いて乾燥運転が行われる。洗濯物がドラム22から剥離され、ほぐされた状態で乾燥運転が開始されるので、乾燥運転において洗濯物を良好に撹拌でき、乾燥性能の向上が期待できる。
【0083】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 筐体
20 外槽
22 ドラム
24 撹拌体(回転体)
24a 羽根(突状部)
30 駆動ユニット(駆動部)
701 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11