(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る測温モジュールは、絶縁フィルム及びこの絶縁フィルムの表面側に積層され、1又は複数のランド部を有する導電パターンを有するプリント配線板と、上記1又は複数のランド部に実装される1又は複数の温度センサーとを備え、上記プリント配線板の裏面のうち、上記温度センサーが実装される1又は複数のランド部の投影領域の少なくとも一部に導電パターン裏面に至る凹部を有し、この凹部に熱伝導性接着剤が充填されている測温モジュールである。
【0012】
当該測温モジュールは、上記プリント配線板の裏面のうち、上記温度センサーが実装される1又は複数のランド部の投影領域の少なくとも一部に導電パターン裏面に至る凹部を有し、この凹部に熱伝導性接着剤が充填されていることによって、測温対象物や測温対象物の熱を伝達する部材に熱伝導性接着剤を密着させることで、この熱伝導性接着剤及びランド部を介して温度センサーに熱を効率よく伝達することができる。このため、当該測温モジュールは、測温対象物の温度を高精度に検出できる。なお、「表面」及び「裏面」は、絶縁フィルムの導電パターンが積層される側を「表面」とし、その反対側を裏面とするものであって、使用状態における位置関係を限定するものではない。
【0013】
上記凹部が、その底面に位置するランド部に実装される上記温度センサーの投影領域と重複する領域に形成されているとよい。このように、上記凹部が上記温度センサーの投影領域と重複する領域に形成されていることによって、熱伝導性接着剤から伝導する熱が導電パターンを厚さ方向に貫流することにより温度センサーに伝達されるので、熱伝達効率が高く、測温対象物の温度をより高精度に検出できる。
【0014】
上記プリント配線板が、絶縁フィルムの裏面に積層され、合成樹脂組成物から形成されるコート層をさらに備えるとよい。このように、絶縁フィルムの裏面にコート層を備えることによって、このコート層が熱伝導性接着剤と共に測温対象物の外面に当接するので、当該測温モジュールを安定して測温対象物の外面に取り付けることができる。
【0015】
上記凹部の開口径が、裏側のコート層で大きく、表側の絶縁フィルムで小さくなるよう段階的に拡径されているとよい。このように、上記凹部の開口径が段階的に拡径されていることによって、熱伝導性接着剤を凹部に充填することが容易となる。なお、「開口径」とは、円相当径(凹部の開口と面積が等しい円の直径)をいう。
【0016】
上記プリント配線板が凹部底面に貫通孔を有し、上記熱伝導性接着剤が、上記貫通孔を通してプリント配線板の表面側に漏出するよう充填されるとよい。このように、上記熱伝導性接着剤が上記貫通孔を通してプリント配線板の表面側に漏出するよう充填されることによって、上記熱伝導性接着剤から温度センサーの裏面に直接熱を伝達することができるので、測温対象物の温度をさらに高精度に検出できる。
【0017】
上記導電パターンと温度センサーとが半田により接続され、この半田に上記熱伝導性接着剤が当接するとよい。このように、上記導電パターンと温度センサーとを接続する半田に熱伝導性接着剤が当接することによって、熱伝導性接着剤から半田を介して温度センサーに熱を伝達することができ、測温対象物の温度をさらに高精度に検出できる。
【0018】
上記プリント配線板が可撓性を有するとよい。このように、上記プリント配線板が可撓性を有することによって、測温対象物の湾曲した外面にも当該測温モジュールを密着するよう接着できる。
【0019】
上記絶縁フィルムの主成分が、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートであるとよい。このように、上記絶縁フィルムの主成分としてこれらの樹脂を用いることによって、絶縁フィルムの絶縁性を向上できる。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。また、「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基で置換されたものをいう。
【0020】
上記熱伝導性接着剤の熱伝導率としては、1W/mK以上が好ましい。このように、熱伝導性接着剤の熱伝導率を上記下限以上とすることによって、測温対象物の温度検出精度をさらに向上できる。なお、「熱伝導率」とは、JIS−A1412−2(1999)に準拠して測定される値である。
【0021】
上記熱伝導性接着剤の裏面に積層される熱伝導性基板をさらに備えるとよい。このように、上記熱伝導性接着剤の裏面に積層される熱伝導性基板をさらに備えることによって、熱伝導性基板を伝導する熱を検出することにより温度センサーから離れた位置の測温対象物の温度を検出することができる。
【0022】
上記プリント配線板の導電パターンの外縁部に実装されるコネクターを備えるとよい。このように、プリント配線板の導電パターンの外縁部に実装されるコネクターを備えることによって、当該測温モジュールの電子機器への組み込みが容易となる。
【0023】
また、本発明の別の態様に係るプリント回路板は、上記測温モジュールと、この測温モジュールにおける上記導電パターンに実装される1又は複数の発熱部品とを備える。
【0024】
当該プリント回路板は、熱伝導性基板及び熱伝導性接着剤を介して発熱部品の温度を温度センサーに伝達し、温度センサーによって発熱部品の温度を高精度に検出できる。
【0025】
また、本発明のさらに別の態様に係る測温モジュールの製造方法は、フィルム及びこの絶縁フィルムの表面側に積層され、1又は複数のランド部を有する導電パターンを有するプリント配線板と、上記1又は複数のランド部に実装される1又は複数の温度センサーとを備える測温モジュールの製造方法であって、上記1又は複数のランド部に1又は複数の温度センサーを実装する工程と、上記プリント配線板の裏面のうち、上記温度センサーが実装される1又は複数のランド部の投影領域の少なくとも一部に導電パターン裏面に至る凹部を形成する工程と、この凹部に熱伝導性接着剤を充填する工程とを備える。
【0026】
当該測温モジュールの製造方法は、プリント配線板の裏面のうち、温度センサーが実装される1又は複数のランド部の投影領域の少なくとも一部に導電パターン裏面に至る凹部を形成して、この凹部に熱伝導性接着剤を充填するので、導電パターンのランド部の裏面に当接する熱伝導性接着剤を有する測温モジュールを製造できる。当該測温モジュールの製造方法により製造される測温モジュールは、熱伝導性接着剤及びランド部を介して測温対象物から温度センサーに熱を効率よく伝達することができるため、測温対象物の温度を高精度に検出できる。
【0027】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0028】
[第一実施形態]
図1に示す測温モジュール1は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2と、このフレキシブルプリント配線板2に実装される温度センサー3とを備える。
【0029】
<フレキシブルプリント配線板>
フレキシブルプリント配線板2は、絶縁フィルム4と、この絶縁フィルム4の表面に積層され、温度センサー3が実装される複数のランド部5を有する導電パターン6と、この導電パターン6の表面に積層されるカバーレイ7とを備える。このフレキシブルプリント配線板2は、裏面のうち温度センサー3が実装される複数のランド部5の投影領域の少なくとも一部に導電パターン6の裏面に至る凹部8を有し、この凹部8に熱伝導性接着剤9が充填されている。また、フレキシブルプリント配線板2は、上記絶縁フィルム4の裏面に熱伝導性接着剤9を囲繞するように積層され、合成樹脂組成物から形成されるコート層10を有する。なお、導電パターン6は絶縁フィルム4の表面に塗工された接着剤を介して積層されていてもよい。
【0030】
(絶縁フィルム)
上記フレキシブルプリント配線板2の絶縁フィルム4は、絶縁性及び可撓性を有するシート状部材で構成されている。また、絶縁フィルム4は、凹部8の表側部分81を画定する開口が形成されている。
【0031】
この絶縁フィルム4を構成するシート状部材としては、具体的には樹脂フィルムを採用可能である。この樹脂フィルムの主成分としては、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンナフタレートが好適に用いられる。なお、絶縁フィルム4は、充填材、添加剤等を含んでもよい。
【0032】
上記液晶ポリマーは、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック型と、溶液状態で液晶性を示すリオトロピック型があるが、本発明ではサーモトロピック型液晶ポリマーを用いることが好ましい。
【0033】
上記液晶ポリマーは、例えば芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸等のモノマーとを合成して得られる芳香族ポリエステルである。その代表的なものとしては、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)とテレフタル酸と4,4’−ビフェノールとから合成される下記式(1)、(2)及び(3)のモノマーを重合した重合体、PHBとテレフタル酸とエチレングリコールとから合成される下記式(3)及び(4)のモノマーを重合した重合体、PHBと2,6−ヒドロキシナフトエ酸とから合成される下記式(2)、(3)及び(5)のモノマーを重合した重合体等を挙げることができる。
【0035】
この液晶ポリマーとしては、液晶性を示すものであれば特に限定されず、上記各重合体を主体(液晶ポリマー中、50モル%以上)とし、他のポリマー又はモノマーが共重合されていてもよい。また、液晶ポリマーは液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。
【0036】
液晶ポリエステルアミドは、アミド結合を有する液晶ポリエステルであり、例えば下記式(6)並びに上記式(2)及び(4)のモノマーを重合した重合体を挙げることができる。
【0038】
液晶ポリマーは、それを構成する構成単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより製造することが好ましい。これにより、耐熱性、強度、剛性等が高い高分子量の液晶ポリマーを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0039】
上記フッ素樹脂は、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等が挙げられる。
【0040】
「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味し、「パーフルオロアルキル基」を包含する。具体的には、「フルオロアルキル基」は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルキル基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を包含する。
【0041】
「フルオロアルコキシ基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基を意味し、「パーフルオロアルコキシ基」を包含する。具体的には、「フルオロアルコキシ基」は、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルコキシ基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を包含する。
【0042】
「フルオロポリエーテル基」とは、繰り返し単位として複数のアルキレンオキシド鎖を有し、末端にアルキル基又は水素原子を有する1価の基であって、アルキレンオキシド鎖及び/又は末端のアルキル基若しくは水素原子中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された基を有する1価の基を意味する。「フルオロポリエーテル基」は、繰り返し単位として複数のパーフルオロアルキレンオキシド鎖を有する「パーフルオロポリエーテル基」を包含する。
【0043】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フルオロエラストマー、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体(TFE/PDD)が好ましい。
【0044】
上記絶縁フィルム4の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。一方、絶縁フィルム4の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、25μmがより好ましい。絶縁フィルム4の平均厚さが上記下限に満たない場合、絶縁フィルム4の強度が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁フィルム4の平均厚さが上記上限を超える場合、フレキシブルプリント配線板2のフレキシブル性を損なうおそれがある。
【0045】
(導電パターン)
導電パターン6は、複数のランド部5及びそれらに接続される配線部を含む平面形状(パターン)を有する。この導電パターン6は、導電性を有する材料で形成可能であるが、好ましくは金属、一般的には例えば銅によって形成される。導電パターン6は、例えば絶縁フィルム4の表面に積層された金属層をエッチングすることによって形成される。
【0046】
上記導電パターン6の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、8μmがより好ましい。一方、導電パターン6の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、35μmがより好ましい。導電パターン6の平均厚さが上記下限に満たない場合、導通性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン6の平均厚さが上記上限を超える場合、フレキシブルプリント配線板2のフレキシブル性を損なうおそれがある。
【0047】
(カバーレイ)
フレキシブルプリント配線板2の表面の温度センサー3が実装される部分(ランド部5の表面側)を除いた部分には、カバーレイ7が積層される。このカバーレイ7は絶縁機能及び接着機能を有し、絶縁フィルム4及び導電パターン6の表面に接着される。カバーレイ7が絶縁層と接着層とを有する場合、絶縁層としては、絶縁フィルム4と同じ材質を用いることができ、平均厚さも絶縁フィルム4と同様とすることができる。また、カバーレイ7の接着層を構成する接着剤としては、例えばエポキシ系接着剤等が好適に用いられる。接着層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、12.5μm以上60μm以下が好ましい。
【0048】
(コート層)
コート層10は、合成樹脂組成物によって形成され、熱伝導性接着剤9を取り囲むことにより熱伝導性接着剤9の外側への移動を防止する。コート層10は、絶縁フィルム4を測温対象物等に接着可能な接着剤を主成分とすることが好ましい。この接着剤としては特に限定されず、例えばエポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤等の熱硬化性接着剤を用いることができる。コート層10には、必要に応じて添加剤を含有させることができる。ただし、当該測温モジュール1は、熱伝導性接着剤9を備えるため、コート層10に熱伝導性を付与する必要はない。
【0049】
上記コート層10の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、コート層10の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、25μmがより好ましい。コート層10の平均厚さが上記下限に満たない場合、当該測温モジュール1と測温対象物等との接着強度が不十分となるおそれがある。逆に、コート層10の平均厚さが上記上限を超える場合、当該測温モジュール1が不必要に厚くなるおそれや、導電パターン6と測温対象物との距離が大きくなって熱伝達性が不十分となるおそれがある。
【0050】
コート層10には、熱伝導性接着剤9が充填される凹部8の裏側部分82を画定する開口が形成されている。この裏側部分82、つまりコート層10における凹部8の裏側部分82の開口径は、凹部8の表側部分81、つまり絶縁フィルム4における凹部8の開口径よりも大きい。このようにコート層10における凹部8の開口径を大きくすることによって、熱伝導性接着剤9の充填作業を容易化することができる。また、絶縁フィルム4を除去して凹部8の表側部分81を形成してから凹部8の裏側部分82を画定する開口を形成したコート層10を積層する場合、これらの位置合わせが容易となる。
【0051】
絶縁フィルム4における凹部8の開口径(表側部分81の径)とコート層10における凹部8の開口径(裏側部分82の径)との差の下限としては、2μmが好ましく、40μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。一方、絶縁フィルム4における凹部8の開口径とコート層10における凹部8の開口径との差の上限としては、1000μmが好ましく、600μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。絶縁フィルム4における凹部8の開口径とコート層10における凹部8の開口径との差が上記下限に満たない場合、熱伝導性接着剤9の充填作業の容易化が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁フィルム4における凹部8の開口径とコート層10における凹部8の開口径との差が上記上限を超える場合、熱伝導性接着剤9の充填量が増加し、当該測温モジュール1のコストが不必要に大きくなる。
【0052】
(凹部)
凹部8は、その底面に位置するランド部5に実装される温度センサー3の投影領域と重複する領域に形成されている。つまり、凹部8の表側部分81は、温度センサー3の投影領域を覆う領域の絶縁フィルム4を除去して形成されている。また、凹部8の裏側部分82は、表側部分81の投影領域を覆う領域に形成されている。これによって、凹部8の開口径は、上述のように、厚さ方向に裏側のコート層10の位置(表側部分81)で大きく、表側の絶縁フィルム4の位置(裏側部分82)で小さくなるよう段階的に拡径されている。
【0053】
このように、
図1の測温モジュール1では、複数のランド部5の投影領域が全て絶縁フィルム4での凹部8の開口領域(表側部分81)と平面視で重複しているが、本発明の熱伝達促進効果を奏する範囲であれば、ランド部5の投影領域の一部が絶縁フィルム4での凹部8の開口領域と重複しなくてもよい。絶縁フィルム4での凹部8とランド部5と重複面積のランド部5の総面積に対する割合の下限としては、80%が好ましく、90%がより好ましく、95%がさらに好ましい。上記面積割合が上記下限に満たない場合、当該測温モジュール1の熱伝達効果が不十分となるおそれがある。
【0054】
絶縁フィルム4での凹部8の開口面積(表側部分81の面積)の上限としては、温度センサー3の投影面積の2倍が好ましく、1.8倍がより好ましく、1.5倍がさらに好ましい。絶縁フィルム4での凹部8の開口面積が上記上限を超える場合、絶縁フィルム4の除去領域が大きくなり、当該測温モジュール1を屈曲面等に積層した場合等の絶縁信頼性が不十分となるおそれがある。
【0055】
<熱伝導性接着剤>
熱伝導性接着剤9は、フレキシブルプリント配線板2の凹部8に充填され、複数のランド部5を含む導電パターン6の裏面に当接している。
【0056】
熱伝導性接着剤9は、接着性樹脂成分と熱伝導性フィラーとを含有する。
【0057】
接着性樹脂成分としては、例えばポリイミド、エポキシ、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム等が使用できる。接着性樹脂成分としてアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とする粘着剤を用いれば、当該測温モジュール1を測温対象物等に簡単に貼着できる。
【0058】
上記熱伝導性フィラーとしては、例えば金属酸化物、金属窒化物等を挙げることができる。上記金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。これらの中でも、電気絶縁性、熱伝導性、価格等の観点から酸化アルミニウムが好ましい。また、上記金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等を用いることができる。これらの中でも、電気絶縁性、熱伝導性、低誘電率の観点から窒化ホウ素が好ましい。なお、上記金属酸化物及び金属窒化物は、2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
熱伝導性接着剤9における熱伝導性フィラーの含有量の下限としては、40体積%が好ましく、45体積%がより好ましい。一方、熱伝導性フィラーの含有量の上限としては、85体積%が好ましく、80体積%がより好ましい。熱伝導性フィラーの含有量が上記下限に満たない場合、熱伝導性接着剤9の熱伝導性が不十分となるおそれがある。逆に、熱伝導性フィラーの含有量が上記上限を超える場合、上記接着性樹脂成分と熱伝導性フィラーとの混合時に気泡が入り易くなり、耐電圧性が低下するおそれがある。なお、熱伝導性接着剤9は、熱伝導性フィラー以外に硬化剤等の添加剤を含有してもよい。
【0060】
熱伝導性接着剤9の熱伝導率の下限としては、1W/mKが好ましく、3W/mKがより好ましい。一方、熱伝導性接着剤9の熱伝導率の上限としては、20W/mKが好ましい。熱伝導性接着剤9の熱伝導率が上記下限に満たない場合、当該測温モジュール1の熱伝達効果が不十分となるおそれがある。逆に、熱伝導性接着剤9の熱伝導率が上記上限を超える場合、熱伝導性フィラーの含有量が過多となり、上記接着性樹脂成分と熱伝導性フィラーとの混合時に気泡が入り易くなって耐電圧性が低下するおそれや、コストが過大となるおそれがある。
【0061】
熱伝導性接着剤9は高絶縁性であることが好ましい。具体的には、熱伝導性接着剤9の体積抵抗率の下限としては、1×10
8Ωcmが好ましく、1×10
10Ωcmがより好ましい。熱伝導性接着剤9の体積抵抗率が上記下限に満たない場合、熱伝導性接着剤9の絶縁性が低下し、導電パターン6が絶縁フィルム4の裏面側に積層される測温対象物等と導通してしまうおそれがある。なお、体積抵抗率とは、JIS−C2139(2008)に準拠して測定される値である。
【0062】
熱伝導性接着剤9の平均厚さ(熱伝導性接着剤9の裏面から導電パターン6の裏面までの平均距離)は、絶縁フィルム4の平均厚さとコート層10の平均厚さとの合計よりも大きいことが好ましい。具体的には、熱伝導性接着剤9の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、熱伝導性接着剤9の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。熱伝導性接着剤9の平均厚さが上記下限に満たない場合、熱伝導性接着剤9が絶縁フィルム4の裏面側に積層される測温対象物と接触せず、熱伝達効果が不十分となるおそれがある。逆に、熱伝導性接着剤9の平均厚さが上記上限を超える場合、熱伝導性接着剤9の充填量が増加しコストが嵩むおそれや、当該測温モジュール1が不必要に厚くなるおそれがある。
【0063】
<温度センサー>
温度センサー3は、フレキシブルプリント配線板2のランド部5に実装されている。この温度センサー3としては、例えばサーミスター、測温抵抗体、熱電対等が挙げられる。当該測温モジュール1において、温度センサー3は、半田11によってランド部5へ接続されている。ただし、温度センサー3のランド部5への接続方法は半田付けに限定されず、例えば導電性ペーストを用いたダイボンディング、金属線を用いたワイヤボンディング等も用いることができる。
【0064】
〔測温モジュールの製造方法〕
当該測温モジュール1は、フレキシブルプリント配線板2の裏面のうち、温度センサー3が実装される複数のランド部5の投影領域の少なくとも一部に導電パターン6の裏面に至る凹部8の表側部分81を形成する工程と、絶縁フィルム4の裏面に凹部8の裏側部分82を形成するようコート層10を積層する工程と、凹部8を形成したフレキシブルプリント配線板2の複数のランド部5に温度センサー3を実装する工程と、上記凹部8に熱伝導性接着剤9を充填する工程とを備える製造方法によって製造することができる。
【0065】
(凹部表側部分形成工程)
凹部表側部分形成工程では、
図2Aに示すように温度センサー3の複数のランド部5の投影領域の少なくとも一部を含む領域の絶縁フィルム4を除去することによって、凹部8の表側部分81を形成する。絶縁フィルム4の除去方法としては、例えば凹部形成予定領域以外をマスクした上でエッチング液に浸漬する方法、凹部形成予定領域にレーザーを照射する方法等を用いることができる。
【0066】
(コート層積層工程)
コート層積層工程では、
図2Bに示すように絶縁フィルム4を除去した領域を含む領域に凹部8の裏側部分82を画定するよう開口したコート層10を絶縁フィルム4に積層する。この工程は、例えば以下の手順で実施できる。まず、離型フィルム、この離型フィルムの表面に塗工により積層されたBステージ状態(半硬化状態)の接着剤、及びこの接着剤の表面に積層された離型フィルムを有する接着剤シートを用意する。次に、この接着剤シートのコート層10における開口領域に相当する部分を離型フィルムごと打抜き加工等で除去する。その後、上記接着剤シートの一方の離型フィルムを剥がし、接着剤シートの除去部分(開口部分)が絶縁フィルム4の除去領域を覆うように、接着剤シートの接着剤表出面を絶縁フィルム4の裏面に向けて積層(仮貼り)する。なお、接着剤シートを絶縁フィルム4に積層した後、開口部分を除去してもよいが、打抜き加工が利用できないため、上述した方法を用いた方が作業性がよい。
【0067】
(温度センサー実装工程)
温度センサー実装工程では、
図2Cに示すように凹部8を形成したフレキシブルプリント配線板2の複数のランド部5に温度センサー3の複数の端子を接続し、温度センサー3をフレキシブルプリント配線板2に実装する。温度センサー3のランド部5への接続方法は、例えば半田リフロー、導電性ペーストを用いたダイボンディング、金属線を用いたワイヤボンディング等を用いることができる。なお、
図2Cでは半田11で温度センサー3を実装した例を示している。
【0068】
(熱伝導性接着剤充填工程)
熱伝導性接着剤充填工程では、上記絶縁フィルム4及びコート層10の除去部分として画定される凹部8に熱伝導性接着剤9を充填することで、
図1の測温モジュール1を得る。熱伝導性接着剤9の充填方法としては、例えばスクリーン印刷によって熱伝導性接着剤9を印刷する方法、ディスペンサで熱伝導性接着剤9を吐出する方法、熱伝導性接着剤9を離型フィルムに積層した接着シートを貼付する方法等を用いることができる。なお、コート層積層工程と熱伝導性接着剤充填工程とは順序を入れ替えて行ってもよい。
【0069】
<利点>
上記製造方法により得られる当該測温モジュール1は、温度センサー3が実装されるランド部5の投影領域の少なくとも一部に導電パターン6の裏面に至る凹部8を有し、この凹部8に熱伝導性接着剤9が充填されているため、フレキシブルプリント配線板2の導電パターン6に熱伝導性接着剤9が直接積層される。そのため、当該測温モジュール1は、測温対象物の外面に配設された際に、導電パターン6と測温対象物とが熱伝導性接着剤9のみを介して接続されるため、測温対象物から導電パターン6と導通される温度センサー3への熱伝達を著しく促進することができる。
【0070】
当該測温モジュール1は、凹部8が、その底面に位置するランド部5に実装される温度センサー3の投影領域と重複する領域に形成されていることによって、熱伝導性接着剤9から伝導する熱が導電パターン6のランド部5を厚さ方向に貫流して温度センサー3に伝達される。このため、当該測温モジュール1は、熱伝達効率が高く、測温対象物の温度をより高精度に検出できる。
【0071】
また、当該測温モジュール1において、凹部8の開口径が、裏側のコート層10で大きく、表側の絶縁フィルム4で小さくなるよう段階的に拡径されていることによって、コート層積層工程における絶縁フィルム4とコート層10との位置合わせ作業を容易にすることができると共に、熱伝導性接着剤充填工程における凹部8への熱伝導性接着剤9の充填作業を容易にすることができる。
【0072】
また、当該測温モジュール1は、フレキシブルプリント配線板2がコート層10を備えることによって、このコート層10が熱伝導性接着剤9と共に測温対象物の外面に当接するため、安定して測温対象物の外面に取り付けることができる。
【0073】
また、当該測温モジュール1は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2を有するため、湾曲面等を有する測温対象物に容易に密着させて配設することができる。
【0074】
また、当該測温モジュール1において、絶縁フィルム4の主成分が、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートであることによって、絶縁フィルム4の絶縁性が高い。
【0075】
なお、当該測温モジュール1は、熱伝導性接着剤9及びコート層10の裏面に離型フィルムを有する状態で提供されてもよい。この離型フィルムは、樹脂フィルムの表面に離型処理を施したものを用いることができる。この離型フィルムは、測温対象物等に当該測温モジュール1を接着する際に剥離される。
【0076】
[第二実施形態]
図3に示す測温モジュール1aは、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2と、このフレキシブルプリント配線板2に実装される温度センサー3と、フレキシブルプリント配線板2のコート層10及び熱伝導性接着剤9の裏面に積層される熱伝導性基板12とを備える。
図3の測温モジュール1aにおけるフレキシブルプリント配線板2及び温度センサー3は、
図1の測温モジュール1におけるフレキシブルプリント配線板2及び温度センサー3と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0077】
<熱伝導性基板>
熱伝導性基板12は、高い熱伝導率を有する板状部材である。この熱伝導性基板12の材質としては、例えば金属、セラミックス、カーボン等が挙げられ、中でも金属が好適に用いられる。熱伝導性基板12を形成する金属としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン等を用いることができる。これらの中でも伝熱性、加工性及び軽量性に優れるアルミニウムが特に好ましい。
【0078】
熱伝導性基板12の平均厚さの下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、熱伝導性基板12の平均厚さの上限としては、5mmが好ましく、3mmがより好ましい。熱伝導性基板12の平均厚さが上記下限に満たない場合、熱伝導性基板12の強度が不十分となるおそれがある。逆に、熱伝導性基板12の平均厚さが上記上限を超える場合、熱伝導性基板12の加工が困難になるおそれがあるほか、当該測温モジュール1aの重量や体積が不必要に大きくなるおそれがある。
【0079】
熱伝導性基板12の熱伝導率の下限としては、100W/mKが好ましく、200W/mKがより好ましい。熱伝導性基板12の熱伝導率が上記下限に満たない場合、測温対象物の熱を熱伝導性接着剤9、ひいては温度センサー3に十分に伝達することができず当該測温モジュール1aの検出精度が不十分となるおそれがある。
【0080】
〔測温モジュールの製造方法〕
当該測温モジュール1aは、フレキシブルプリント配線板2の複数のランド部5に温度センサー3を実装する工程と、フレキシブルプリント配線板2の裏面のうち、温度センサー3が実装される複数のランド部5の投影領域の少なくとも一部に導電パターン6の裏面に至る凹部8の表側部分81を形成する工程と、絶縁フィルム4の裏面に凹部8の裏側部分82を形成するようコート層10を積層する工程と、形成された凹部8に熱伝導性接着剤9を充填する工程と、コート層10及び熱伝導性接着剤9の裏面に熱伝導性基板12を積層する工程とを備える製造方法によって製造することができる。当該測温モジュール1aは、フレキシブルプリント配線板2の複数のランド部5に温度センサー3を実装する工程の製造方法における温度センサー実装工程、凹部表側部分形成工程、コート層積層工程及び熱伝導性接着剤充填工程は、
図1の測温モジュール1の製造方法における温度センサー実装工程、凹部表側部分形成工程、コート層積層工程及び熱伝導性接着剤充填工程と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0081】
(熱伝導性基板積層工程)
熱伝導性基板積層工程では、凹部8に熱伝導性接着剤9を充填したフレキシブルプリント配線板2の裏面側に熱伝導性基板12を積層する。具体例としては、熱硬化性の熱伝導性接着剤9及びコート層10を用い、フレキシブルプリント配線板2に熱伝導性基板12を積層(仮貼り)して積層体を得る。その後、例えば真空容器中でこの積層体を比較的低温で加圧し、仮圧着する。仮圧着後、上記積層体を高温で加熱することで熱伝導性接着剤9及びコート層10が硬化し、当該測温モジュール1aが得られる。
【0082】
上記積層体の仮圧着時の圧力としては、例えば0.05MPa以上1MPa以下とすることができる。また、この仮圧着時の温度としては、例えば70℃以上120℃以下が好ましい。
【0083】
さらに、仮圧着時の熱伝導性接着剤9の粘度の下限としては、100Pa・sが好ましく、500Pa・sがより好ましい。一方、仮圧着時の熱伝導性接着剤9の粘度の上限としては、10000Pa・sが好ましく、5000Pa・sがより好ましい。仮圧着時の熱伝導性接着剤9の粘度が上記下限に満たない場合、熱伝導性接着剤9を硬化させる前に熱伝導性接着剤9が流動して熱伝導性接着剤9の充填性が低下するおそれがある。逆に、仮圧着時の熱伝導性接着剤9の粘度が上記上限を超える場合、熱伝導性接着剤9の上記絶縁フィルム4及びコート層10の除去部分への充填が不十分となるおそれがある。
【0084】
上記積層体の高温加熱時の温度としては、例えば120℃以上200℃以下とすることができる。また、高温加熱の時間としては、例えば30分以上600分以下とすることができる。
【0085】
<利点>
当該測温モジュール1aは、熱伝導性接着剤9の裏面に積層される熱伝導性基板12を備えることによって、熱伝導性基板12を伝導する熱を検出することにより、平面視で温度センサー3から離れた位置の測温対象物の温度を検出することができる。
【0086】
[第三実施形態]
図4に示す測温モジュール1bは、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2bと、このフレキシブルプリント配線板2bに実装される温度センサー3とを備える。
図4の測温モジュール1bにおける温度センサー3は、
図1の測温モジュール1における温度センサー3と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0087】
<フレキシブルプリント配線板>
フレキシブルプリント配線板2bは、絶縁フィルム4と、この絶縁フィルム4の表面に積層され、温度センサー3が実装される複数のランド部5を有する導電パターン6と、この導電パターン6の表面に積層されるカバーレイ7と、絶縁フィルム4の裏面に積層されるコート層10とを備える。このフレキシブルプリント配線板2bは、裏面のうち温度センサー3が実装される複数のランド部5の投影領域の少なくとも一部に導電パターン6の裏面に至る凹部8を有する。この凹部8には、底面(導電パターン6の裏面に沿う面)にフレキシブルプリント配線板2の表面に開口する貫通孔13が形成されている。凹部8及び貫通孔13には、熱伝導性接着剤9が充填されている。
【0088】
図4の測温モジュール1bのフレキシブルプリント配線板2bにおける絶縁フィルム4、導電パターン6、カバーレイ7及びコート層10は、上記貫通孔13が形成されること以外は、
図1の測温モジュール1のフレキシブルプリント配線板2における絶縁フィルム4、導電パターン6、カバーレイ7及びコート層10と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0089】
(貫通孔)
貫通孔13は、平面視で複数のランド部5の間に形成され、カバーレイ7を貫通している。
図4では貫通孔13は1つのみ形成されているが、複数の貫通孔13を1つの凹部8の底面に形成してもよい。
【0090】
貫通孔13の平均面積の下限としては、0.005mm
2が好ましく、0.01mm
2がより好ましい。一方、貫通孔13の平均面積の上限としては、1mm
2が好ましく、0.5mm
2がより好ましい。貫通孔13の平均面積が上記下限に満たない場合、熱伝達効果の促進が不十分となるおそれがある。逆に、貫通孔13の平均面積が上記上限を超える場合、フレキシブルプリント配線板2の強度が低下するおそれがある。
【0091】
貫通孔13は、絶縁フィルム4を除去して凹部8を形成する前又は後、あるいは凹部8の形成と同時に形成することができる。貫通孔13の形成方法としては、絶縁フィルム4の除去方法と同様の方法を用いることができる。
【0092】
<熱伝導性接着剤>
熱伝導性接着剤9は、凹部8及び貫通孔13に充填され、フレキシブルプリント配線板2bの表面側に漏出し、温度センサー3の裏面、及び温度センサー3とランド部5とを接続する半田11に当接している。なお、
図4の測温モジュール1bにおける熱伝導性接着剤9の組成については、
図1の測温モジュール1における熱伝導性接着剤9の組成と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0093】
<利点>
当該測温モジュール1bは、上記貫通孔13を有するため、熱伝導性接着剤9の充填時に熱伝導性接着剤9が平面視で凹部8の外側に漏出することを防止することができる。また、熱伝導性接着剤9を貫通孔13及びその上部にも充填し、温度センサー3の裏面に当接させることによって、測温対象物から温度センサー3へ直接熱を伝達することができ、当該測温モジュール1bの検出精度を向上させる。
【0094】
また、熱伝導性接着剤9は、温度センサー3とランド部5とを接続する半田11にも当接するため、この半田11を介しても熱を伝達でき、当該測温モジュール1bの検出精度をさらに向上させる。
【0095】
[第四実施形態]
図5に示す測温モジュール1cは、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2と、このフレキシブルプリント配線板2に実装される温度センサー3と、フレキシブルプリント配線板2の表面に配設され、温度センサー3を覆うケース14と、ケース内に充填される充填剤15とを備える。
図5の測温モジュール1cにおけるフレキシブルプリント配線板2及び温度センサー3は、
図1の測温モジュール1におけるフレキシブルプリント配線板2及び温度センサー3と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0096】
<ケース>
ケース14は、温度センサー3を覆うことにより、温度センサー3の熱が雰囲気中に放散することを抑制する。
【0097】
ケース14は、樹脂組成物で形成されることが好ましい。ケース14を形成する樹脂組成物の主成分としては、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール等が挙げられる。また、ケース14は、多孔質体で形成してもよい。
【0098】
ケース14の平均厚さとしては、その形状を保持できればよく、特に限定されないが、例えば0.1mm以上2mm以下とすることができる。
【0099】
ケース14と温度センサー3との平均間隔の下限としては、0.2mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、ケース14と温度センサー3との平均間隔の上限としては、3mmが好ましく、2mmがより好ましい。ケース14と温度センサー3との平均間隔が上記下限に満たない場合、半田11のはみ出し等によりケース14をフレキシブルプリント配線板2に密着できないおそれや、充填剤15の充填が困難となるおそれがある。逆に、ケース14と温度センサー3との平均間隔が上記上限を超える場合、当該測温モジュール1cが不必要に大きくなるおそれがある。
【0100】
ケース14の配設方法としては、例えば接着剤を用いてフレキシブルプリント配線板2の表面に接着する方法が挙げられる。また、充填剤15として接着剤を用いることにより、充填剤15によってケース14をフレキシブルプリント配線板2に接着することができる。
【0101】
(充填剤)
充填剤は、水分等がケース14の内部に侵入することを防止し、温度センサー3の故障や異常な冷却を防止する。
【0102】
充填剤としては、熱伝導率を低減するフィラーを含む樹脂組成物が好適である。充填剤のマトリックスとなる樹脂としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、熱伝導率を低減するフィラーとしては、例えば中空フィラー等が挙げられる。
【0103】
<利点>
当該測温モジュール1cは、ケース14及び充填剤15を備えることにより、温度センサー3の熱が雰囲気中に放散することが抑制されるので、温度センサー3の温度と熱伝導性接着剤9の温度ひいては測温対象物の温度との差が小さくなり、測温対象物の温度をより高精度に検出できる。
【0104】
[第五実施形態]
図6に示す測温モジュール1dは、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2dと、このフレキシブルプリント配線板2dに実装される温度センサー3及びコネクター16とを備える。
図6の測温モジュール1dにおける温度センサー3は、
図1の測温モジュール1における温度センサー3と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0105】
<フレキシブルプリント配線板>
フレキシブルプリント配線板2dは、絶縁フィルム4と、この絶縁フィルム4の表面に積層され、半田11によって温度センサー3が実装される複数の第1ランド部5及び半田11によってコネクター16が実装される第2ランド部5dを有する導電パターン6dと、この導電パターン6dの表面に積層されるカバーレイ7とを備える。このフレキシブルプリント配線板2dは、裏面のうち温度センサー3が実装される複数の第1ランド部5の投影領域の少なくとも一部に導電パターン6dの裏面に至る凹部8を有し、この凹部8に熱伝導性接着剤9が充填されている。また、フレキシブルプリント配線板2の上記絶縁フィルム4の裏面における温度センサー3の投影領域近傍には、合成樹脂組成物から形成されるコート層10が積層されている。
図6の測温モジュール1dにおける絶縁フィルム4、第1ランド部5、カバーレイ7、熱伝導性接着剤9及びコート層10は、
図1の測温モジュール1における絶縁フィルム4、第1ランド部5、カバーレイ7、熱伝導性接着剤9及びコート層10と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0106】
フレキシブルプリント配線板2dの絶縁フィルム4、導電パターン6d及びカバーレイ7は、コート層10が積層される領域から延出し、この延出部の先端近傍における導電パターン6dの外縁部に第2ランド部5dを有している。
【0107】
<コネクター>
コネクター16は、フレキシブルプリント配線板2dの導電パターンを他の構成要素に電気的に接続するものであって、例えばフレキシブルプリント配線板用コネクターとして市販されている各種のコネクターが利用できる。
【0108】
このコネクター16は、導電パターン6dの第2ランド部5dに半田11により接続されている。
【0109】
<利点>
当該測温モジュール1dは、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2dの外縁部の第2ランド部5dにコネクター16が実装されているので、電子機器への組み込みが容易である。
【0110】
[第六実施形態]
図7に示すプリント回路板は、測温モジュール1eと、この測温モジュール1eに実装される発熱部品17とを備える。
【0111】
<測温モジュール>
測温モジュール1eは、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板2eと、このフレキシブルプリント配線板2eに実装される温度センサー3及び発熱部品17と、フレキシブルプリント配線板2eの裏面に積層される熱伝導性基板12とを備える。
図6の測温モジュール1eにおける温度センサー3及び熱伝導性基板12は、
図3の測温モジュール1aにおける温度センサー3及び熱伝導性基板12と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0112】
<フレキシブルプリント配線板>
フレキシブルプリント配線板2eは、絶縁フィルム4と、この絶縁フィルム4の表面に積層され、温度センサー3が実装される複数の第1ランド部5及び発熱部品17が実装される複数の第2ランド部5eを有する導電パターン6eと、この導電パターン6eの表面に積層されるカバーレイ7とを備える。このフレキシブルプリント配線板2eは、裏面のうち第1ランド部5の投影領域の少なくとも一部に導電パターン6eの裏面に至る第1凹部8を有し、この第1凹部8には、熱伝導性接着剤9が充填されている。また、フレキシブルプリント配線板2eは、裏面のうち複数の第2ランド部5eの投影領域の少なくとも一部に導電パターン6eの裏面に至る第2凹部8eを有し、この第2凹部8eには、熱伝導性接着剤9が充填されている。また、フレキシブルプリント配線板2は、上記絶縁フィルム4の裏面に積層されるコート層10を有する。
図6の測温モジュール1eにおけるフレキシブルプリント配線板2eの構成は、第2ランド部5e、第2凹部8eが設けられていることを除き、絶縁フィルム4、第1ランド部5、カバーレイ7、第1凹部8及び熱伝導性接着剤9並びにコート層10は、
図3の測温モジュール1aにおけるフレキシブルプリント配線板2の絶縁フィルム4、ランド部5、カバーレイ7、凹部8及び熱伝導性接着剤9並びにコート層10と同様であるため、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0113】
(第2ランド部)
第2ランド部5eは、発熱部品の端子配置に対応して導電パターン6eの一部として形成される。
【0114】
(第2凹部)
第2凹部8eは、第1凹部8と同様に構成され、フレキシブルプリント配線板2eの裏面のうち複数の第2ランド部5eの投影領域の少なくとも一部に導電パターン6eの裏面に至るよう形成される。
【0115】
<発熱部品>
発熱部品17は、熱を発生する部品であり、例えば発光ダイオード(LED)、集積回路(IC)、マイクロプロセッサー(MPU)等が挙げられる。
【0116】
<利点>
当該プリント回路板は、温度センサー3を備える測温モジュール1eに発熱部品17が実装されており、発熱部品17が温度センサー3と同様に熱伝導性接着剤9を介して熱伝導性基板12に熱的に接続されている。このため、当該プリント回路板は、発熱部品17の熱が熱伝導性接着剤9及び熱伝導性基板12を介して温度センサー3に伝達されるので、温度センサー3によって発熱部品17の温度を高精度に検出することができる
【0117】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0118】
当該測温モジュールにおいて、プリント配線板の凹部の開口径が、絶縁フィルムの位置とコート層の位置とで同じであってもよい。
【0119】
また、当該測温モジュールにおけるプリント配線板は、可撓性を有しないものであってもよい。
【0120】
また、当該測温モジュールは、コート層を有しないものであってもよく、カバーレイを有しないものであってもよい。
【0121】
また、当該測温モジュールにおいて、凹部は、一つの温度センサーを接続するための複数のランド部の内の少なくとも一つのランド部の投影領域に形成されればよく、一つの温度センサーに対して複数の凹部が形成されてもよい。
【0122】
また、当該測温モジュールにおいて、温度センサーの種類等の諸条件に応じて、ランド部の数は1以上の任意の数とすることができる。
【0123】
また、当該測温モジュールにおいて、凹部は、温度センサーの投影領域と重複しない領域に形成されてもよい。
【0124】
また、当該測温モジュールは、複数の温度センサーが実装されていてもよく、当該プリント回路板は、複数の発熱部品が実装されていてもよい。
【0125】
また、当該測温モジュールを貼着する測温対象物又は伝熱部材の形状は板状に限定されない。例えば、柱状、錐台状、球状等の物体の外面に当該測温モジュールを貼着してその温度を測定してもよい。
【0126】
また、当該測温モジュールの製造方法において、温度センサー実装工程の順序は他の工程と前後してもよい。例えば、温度センサー実装工程は、凹部表側部分形成工程の前に行ってもよく、熱伝導性接着剤充填工程の後に行ってもよい。