特許第6356502号(P6356502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6356502機器運転設定装置及び機器運転設定値決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356502
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】機器運転設定装置及び機器運転設定値決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/47 20180101AFI20180702BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20180702BHJP
【FI】
   F24F11/47
   F24F11/64
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-127613(P2014-127613)
(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-8725(P2016-8725A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】久田 永子
(72)【発明者】
【氏名】飯野 穣
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−161492(JP,A)
【文献】 特開2008−015748(JP,A)
【文献】 特開2009−216259(JP,A)
【文献】 特開2010−166636(JP,A)
【文献】 特開2011−036084(JP,A)
【文献】 特開2012−163304(JP,A)
【文献】 特表2013−533548(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/144629(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/47
F24F 11/64
H02J 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の運転制御を実行する制御装置に予め出力された設定値と前記機器の消費電力の実測値に基づいて補正値を予め算出し、算出された前記補正値と仮の設定値に基づく前記機器の消費電力値とから前記機器の仮の消費電力値を算出する算出部と、
予め定められた目標値と前記算出部により算出された前記機器の仮の消費電力値との差が所定範囲内となるように前記仮の設定値を変更し、変更された前記仮の設定値を、前記制御装置に出力される設定値と決定する決定部と、
を備える機器運転設定装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記仮の設定値が第1の範囲内となるように前記仮の設定値を変更する、請求項1に記載の機器運転設定装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記算出された仮の消費電力値が第2の範囲内となるように前記仮の設定値を変更する、請求項に記載の機器運転設定装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記仮の設定値を変更することにより前記機器の消費電力の実測値と前記算出された仮の消費電力値との差を前記所定範囲内にすることができるか否かを判定し、前記実測値と前記算出された仮の消費電力値との差を前記所定範囲内にすることができない場合、前記差が前記所定範囲内となるように他の機器を制御する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の機器運転設定装置。
【請求項5】
前記機器は、電動冷凍機であり、
前記他の機器は、蓄熱槽である、請求項に記載の機器運転設定装置。
【請求項6】
コンピュータに、
機器の運転制御を実行する制御装置に予め出力された設定値と前記機器の消費電力の実測値に基づいて補正値を予め算出し、算出された前記補正値と仮の設定値に基づく前記機器の消費電力値とから前記機器の仮の消費電力値を算出する手順と、
予め定められた目標値と算出された前記機器の仮の消費電力値との差が所定範囲内となるように前記仮の設定値を変更し、変更された前記仮の設定値を、前記制御装置に出力される設定値と決定する手順と、
を実行させるための機器運転設定値決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、機器運転設定装置及び機器運転設定値決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱源機器は、電力供給を受けて熱を発生させる。電源機器は、電力供給を受けて電気を発生させる。熱源機器や電源機器によって消費されるエネルギーは、工場やビルで消費されるエネルギーの中でも、大きな割合を占めている。機器運転設定装置は、機器の運転が最適となるように、機器の運転内容を決めることがある。機器運転設定装置は、機器の消費電力の実測値と、消費電力の目標値とが一致するように、デマンドレスポンス(需要応答)(DR:Demand Response)信号を受けた際に、機器の運転に係る設定値を決めることがある。機器運転設定装置は、決めた設定値に応じて機器を運転する。しかしながら、機器運転設定装置は、機器の劣化や環境条件によって、機器の消費電力の実測値と、決めた設定値に応じた機器の消費電力の目標値との差を、所定範囲内にすることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4396557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、機器の消費電力の実測値と、機器の消費電力の目標値との差を所定範囲内にすることができる機器運転設定装置及び機器運転設定値決定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の機器運転設定装置は、算出部と、決定部とを持つ。算出部は、機器の運転制御に関する設定値と機器の消費電力との関係に基づいて、機器の消費電力の目標値を算出する。決定部は、計測された機器の消費電力の実測値と、算出部により算出された機器の消費電力の目標値との差が所定範囲内となるように設定値を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の建物内の制御システムの図。
図2】第1の実施形態の制御システムの図。
図3】第1の実施形態の制御システムのハードウェアの図。
図4】第1の実施形態の制御システムの動作の図。
図5】第1の実施形態の算出部の動作の図。
図6】第1の実施形態の消費電力の変化の図。
図7】第2の実施形態の制御システムの図。
図8】第2の実施形態の発電装置の図。
図9】第2の実施形態の変数名の図。
図10】第2の実施形態の復水器の真空度を予測する性能を表す線の図。
図11】第2の実施形態の発電装置の推移の発電量の図。
図12】第3の実施形態の制御システムの図。
図13】第3の実施形態の電動冷凍機の推移の消費電力量の図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の機器運転設定装置及び機器運転設定値決定プログラムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の制御システム1の構成図である。制御システム1は、機器2と、制御装置3と、管理システム4(建物・エネルギー監視制御装置)とを備える。制御システム1は、複数の機器2を備えてもよい。制御システム1は、複数の制御装置3を備えてもよい。制御システム1は、建物Aに備えられてもよいし、建物A以外の所定の位置に備えられてもよい。制御システム1は、これらの機能ブロックが分散されて、所定の範囲に備えられてもよい。
【0008】
次に、制御システム1の構成例を説明する。
図2は、第1の実施形態の制御システムの図である。図3は、第1の実施形態の制御システムのハードウェアの図である。
【0009】
変圧器5は、構内配線6に接続されている。変圧器5は、受電電力7(二次側の電力)を構内配線6に出力する。構内配線6は、機器2に消費電力8を供給する。
機器2は、構内配線6を介して、消費電力8を取得する。他の消費電力9は、受電電力7から消費電力8を差し引いた残りの電力である。他の消費電力9は、他の電力負荷(不図示)によって消費される。機器2は、制御値を制御装置3から取得する。機器2は、制御値に基づいて所定の動作を実行する。機器2は、機器2の消費電力8や発電電力の実測値(センサ値)を示す情報を、通信回線10を介して、制御装置3と機器運転設定装置40とに出力する。通信回線10は、例えば、ビル内通信回路である。機器2は、例えば、電源機器、熱源機器である。機器2は、OA(Office Automation)機器でもよい。
制御装置3は、通信回線10を介して、設定値を管理システム4から取得する。制御装置3は、設定値に基づいて、制御値を決定する。制御装置3は、制御値を機器2に出力する。
【0010】
管理システム4は、外部から取得した情報に基づいて、設定値を定める。管理システム4は、設定値を制御装置3に出力することにより、機器2の消費電力8、発電電力や熱量を制御する。管理システム4は、デマンドレスポンス信号(DR信号)に基づいて、機器2の消費電力8、発電電力や熱量を制御する。デマンドレスポンス信号は、例えば、電力を抑制する指令情報や、電力のピークシフト目標を示す情報を含む。管理システム4は、天気予報信号に基づいて、機器2の消費電力8、発電電力や熱量を制御してもよい。
【0011】
管理システム4は、算出部400と、決定部410とを備える。算出部400と、決定部410との一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0012】
算出部400は、RAM(Random Access Memory)やレジスタ等の揮発性メモリを有する。算出部400は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、レジスタ等の不揮発性メモリ(非一時的な記憶媒体)を有してもよい。この不揮発性メモリは、CPU等のプロセッサを動作させるためのプログラムを記憶する。
【0013】
この不揮発性メモリは、機器2と制御装置3の動作を模擬するモデル(以下、「機器モデル」という。)を表す情報を記憶する。機器モデルは、設定値に応じて運転される機器2の電力の目標値と、その設定値との関係を表す。機器モデルは、機器2の電力や熱の特性を示す特性式で表されてもよいし、機器2の電力や熱の目標値と設定値とを対応付けた対応表で表されてもよい。機器モデルには、機器2と制御装置3の劣化や環境条件等が反映されていてもよい。
【0014】
算出部400は、機器2の消費電力8や発電電力の実測値(センサ値)を示す情報を、機器2から取得する。算出部400は、制御装置3が決定部410から取得した設定値を、決定部410から取得する。算出部400は、仮の設定値を、決定部410から取得する。仮の設定値は、機器モデルに基づいて目標値を算出するために、算出部400によって使用される設定値である。算出部400は、仮の設定値に応じて運転された場合の機器2の消費電力値(以下、「仮の消費電力値」という。)を、機器モデルに基づいて算出する。算出部400は、仮の消費電力値を示す情報を、決定部410に出力する。
【0015】
機器モデルを表す特性式は、どのような式でもよい。機器モデルを表す第1の特性式の一例は、式(1)により表される。
【0016】
y1=a×x1+b …(1)
【0017】
ここで、x1は、仮の設定値を示す。y1は、機器2の仮の消費電力の暫定値を示す。aは定数を示す。bは定数を示す。
機器モデルを表す第2の特性式の一例は、式(2)により表される。
【0018】
y2=a×x2+b …(2)
【0019】
ここで、x2は、制御値に対応付けられた値を示す。y2は、機器2の消費電力の実測値を示す。aは定数を示す。bは定数を示す。
機器モデルを表す第3の特性式の一例は、式(3)により表される。
【0020】
y3=a×x3+b …(3)
【0021】
ここで、x3は、設定値を示す。y3は、機器2の消費電力の実測値に対応付けられた値を示す。aは定数を示す。bは定数を示す。
【0022】
上述したように、機器モデルは、機器2と制御装置3の動作を模擬するモデルである。機器2と制御装置3の動作の模擬に誤差がない場合、機器2の消費電力の実測値y2と、機器2の消費電力の実測値に対応付けられた値y3とは一致する。また、この場合、制御値に対応付けられた値x2と、設定値x3とは一致する。
【0023】
機器2と制御装置3の動作の模擬に誤差がある場合、式(1)に示す仮の設定値x1を、決定部410が制御装置3に出力したとしても、機器2の消費電力の実測値は、機器2の仮の消費電力の暫定値y1とは一致しない。
【0024】
そこで、算出部400は、仮の消費電力の暫定値y1に基づく仮の消費電力値と、消費電力の実測値y2との誤差を小さくするように補正する。例えば、算出部400は、機器2の仮の消費電力の暫定値y1に、補正値Δyを加算することにより、機器2の消費電力の実測値y2との誤差を補正する。算出部400は、機器2の仮の消費電力の暫定値y1に、補正値Δyを減算、乗算又は除算することにより、機器2の消費電力の実測値y2との誤差を補正してもよい。補正値Δyは、式(4)により表される。
【0025】
Δy=y2−y3=y2−(a×x3+b) …(4)
【0026】
算出部400は、機器2の仮の消費電力の暫定値y1と、補正値Δyとを加算した値を、機器2の仮の消費電力値と定める。算出部400は、仮の消費電力値を示す情報を、決定部410に出力する。
【0027】
決定部410は、仮の消費電力値を示す情報を、算出部400から取得する。決定部410は、仮の消費電力値に基づいて、最適な設定値を算出する。最適な設定値とは、例えば、エネルギーコストが最小となる設定値である。決定部410は、最適な設定値をどのように算出してもよく、特定の算出方法に限定されない。例えば、決定部410は、設定値が第1の範囲内(上下限)となるように、設定値を決定する。例えば、決定部410は、仮の消費電力値(目標値)が第2の範囲内(上下限)となるように、設定値を決定する。決定部410は、最適な設定値を、算出部400と制御装置3とに出力する。決定部410は、最適な設定値を、所定周期で算出してもよい。この所定周期は、例えば、24時間周期でもよいし、10分周期でもよい。
【0028】
図4は、第1の実施形態の制御システム1の動作の図である。
決定部410は、仮の設定値を算出部400に出力する(ステップS101)。
算出部400は、機器2の電力の実測値を示す情報を、機器2から取得する(ステップS102)。
算出部400は、機器2の電力の実測値と、仮の設定値と、機器モデルとに基づいて、機器2の仮の消費電力値を算出する(ステップS103)。
【0029】
決定部410は、算出した仮の消費電力値のエネルギーコストが最小であるか否かを判定する(ステップS104)。エネルギーコストが最小でない場合(ステップS104:NO)、決定部410は、ステップS101に処理を戻す。エネルギーコストが最小である場合(ステップS104:YES)、決定部410は、直近に算出した仮の消費電力値に基づいて、制御装置3に出力する設定値決定する。決定部410は、決定した設定値を、制御装置3に出力する(ステップS105)。
【0030】
制御装置3は、決定した設定値と、機器2の電力の実測値とに基づいて、制御値を決定する。制御装置3は、制御値を機器2に出力する(ステップS106)。
機器2は、制御値に基づいて動作する(ステップS107)。機器2の電力の実測値と、機器2の電力の目標値との差は、所定範囲内に収まる。
【0031】
図5は、第1の実施形態の算出部400の動作の図である。
算出部400は、消費電力の実測値y2を取得する(ステップS201)。
算出部400は、消費電力の実測値y2に基づいて、制御値に対応付けられた値x2を算出する(ステップS202)。
算出部400は、直近の設定値x3を、決定部410から取得する(ステップS203)。
【0032】
算出部400は、設定値x3に基づいて、消費電力の実測値に対応付けられた値y3を算出する(ステップS204)。
算出部400は、仮の設定値x1を、決定部410から取得する(ステップS205)。
算出部400は、仮の消費電力の暫定値y1を算出する(ステップS206)。
算出部400は、機器2の仮の消費電力の暫定値y1と、補正値Δyとを加算した値を、機器2の仮の消費電力値と定める。算出部400は、仮の消費電力値を示す情報を、決定部410に出力する(ステップS207)。
【0033】
図6は、第1の実施形態の消費電力の変化の図である。図6の上段の縦軸は消費電力を示す。図6の上段の横軸は時間を示す。図6の上段の実線は、機器2の消費電力の実測値を示す。図6の上段の一点破線は、機器2の消費電力の目標値を示す。図6の下段の縦軸は、補正値Δyを示す。図6の下段の横軸は時間を示す。
【0034】
機器モデルと、機器2の動作とに誤差がある場合、機器2の仮の消費電力の暫定値y1に基づく仮の消費電力値(目標値)と、機器2の消費電力の実測値y2とは一致しない。算出部400は、機器2の仮の消費電力の暫定値y1に基づく仮の消費電力値(目標値)を示す情報と、機器2の消費電力の実測値y2の誤差を示す情報を、所定周期又は任意の時刻に取得する。算出部400は、取得したこれらの情報に基づいて、消費電力の補正値Δyを算出する。
【0035】
算出部400は、所定期間における、仮の設定値x1の平均値や、機器2の消費電力の実測値y2の平均値に基づいて、消費電力の補正値Δyを算出してもよい。この場合、算出部400は、補正値Δyのばらつきを抑えることができる。
【0036】
以上のように、第1の実施形態の機器運転設定装置40は、算出部400と、決定部410とを持つ。算出部400は、機器2の運転制御に関する設定値と、機器2の消費電力との関係に基づいて、機器2の消費電力の目標値を算出する。決定部410は、計測された機器2の消費電力の実測値と、算出部400により算出された機器2の消費電力の目標値との差が所定範囲内となるように、設定値を決定する。発電電力についても同様である。
【0037】
第1の実施形態の機器運転設定値決定プログラムは、コンピュータに、機器2の運転制御に関する設定値と、機器2の消費電力との関係に基づいて、機器2の消費電力の目標値を算出する手順を実行させる。また、第1の実施形態の機器運転設定値決定プログラムは、コンピュータに、計測された機器2の消費電力の実測値と、算出された機器2の消費電力の目標値との差が所定範囲内となるように、設定値を決定する手順を実行させる。
【0038】
この構成により、算出部400は、機器2の運転制御に関する設定値と、機器2の消費電力との関係に基づいて、機器2の消費電力の目標値を算出する。これにより、第1の実施形態の機器運転設定装置40及び機器運転設定値決定プログラムは、機器2の電力の実測値と、機器2の電力の目標値との差を所定範囲内にすることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、制御システム1が機器2としての発電装置2aを備える点が、第1の実施形態と相違する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0040】
図7は、第2の実施形態の制御システム1の図である。制御システム1は、機器2としての発電装置2aと、制御装置3と、管理システム4とを備える。発電装置2aは、構内配線6を介して、発電電力11を出力する。他の消費電力9は、受電電力7と発電電力11とを加算した電力である。
【0041】
図8は、第2の実施形態の発電装置2aの図である。発電装置2aは、タービン20aと、発電機21aと、復水器22aとを備える。タービン20aは、ボイラからの蒸気によって、発電機21aを駆動する。発電機21aは、タービン20aによる駆動に応じて発電する。復水器22aは、タービン20aから流入された蒸気を冷却して、水に変える。
【0042】
以下、第2実施形態における機器モデルを、「発電機モデル」という。以下、発電機モデルに基づいて算出された仮の消費電力値を、「現状値」という。以下、発電機モデルに基づいて決定された最適な設定値を、「最適値」という。
【0043】
図9は、第2の実施形態の変数名の図である。ボイラ主蒸気量(主蒸気流量)を示す変数を「GNoB」と表記する。タービン20aの発電量を示す変数を「ENoT」と表記する。タービン20aの復水器冷却水入口温度(冷却水温度)を示す変数を「TNoTVin 」と表記する。タービン20aのモデル化定数a0〜a7を示す変数を「aNoT」と表記する。タービン20aの復水器モデル化定数a0〜a7を示す変数を「aNoTV」と表記する。
【0044】
タービン20aの復水器流量定格を示す変数を「GNoTex0」と表記する。タービン20aの真空度基準値を示す変数を「VNoTV0」と表記する。
タービン20aの復水器上限モデル定数a0〜a4を示す変数を「cNoTV_h」と表記する。タービン20aの復水器下限モデル定数a0〜a4を示す変数を「cNoTV_l」と表記する。タービン20aの主蒸気最適化対象を示す変数を「flg_NoTOpt」と表記する。ボイラ主蒸気量最適値を示す変数を「GNoBOpt」と表記する。タービン20aの発電量最適値を示す変数を「ENoTOpt」と表記する。
【0045】
復水器22aへの流入量を示す変数を「GNoTex」と表記する。復水器22aへの流入量最適値を示す変数を「GnoTexOpt」と表記する。復水器22aの真空度最適値を示す変数を「VNoTVOpt」と表記する。電力量計算値を示す変数を「ENoTCal」と表記する。電力量最適値計算値を示す変数を「ENoTOptCal」と表記する。復水器22a真空度上限相当の復水器流入量を示す変数を「GNoTex_h」と表記する。復水器22a真空度下限相当の復水器流入量を示す変数を「GNoTex_l」と表記する。
【0046】
発電電力を示す変数を「ENoB」と表記する。真空度を示す変数を「VNoTV」と表記する。気流量最適値を示す変数を「NoBOpt」と表記する。発電電力最適値を示す変数を「ENoBOpt」と表記する。
【0047】
復水器22aへの流入量は、主蒸気量と同じである。算出部400は、復水器22aへの流入量を示す変数「GNoTex」に、ボイラ主蒸気量(主蒸気流量)を示す変数「GNoB」の値を代入する。算出部400は、復水器22aへの流入量最適値を示す変数「GnoTexOpt」に、ボイラ主蒸気量最適値を示す変数の値を代入する。タービン20aの蒸気の消費の特性は、Δ真空度(=真空度−真空度基準値)を用いて、式(5)により表される。
【0048】
主蒸気量=a0+a1×発電量+a2×Δ真空度 …(5)
【0049】
式(5)は、現状値と最適値とのいずれに対しても成立する。ただし、主蒸気量、発電量、Δ真空度(=真空度−真空度基準値)がいずれも実測値である場合には、発電装置2aと制御装置3の動作の模擬の誤差(発電機モデルの誤差)や、センサによる測定の誤差により、式(5)は成立しない。発電量は、操作端のように直接に操作される対象ではない。そこで、発電量には、電力量計算値を示す変数「ENoTCal」と、電力量最適値計算値「ENoTOptCal」とが、実測値に代えて使用される。これらの変数は、式(5)を成り立たせるための変数である。タービン20aの特性は、式(6)と式(7)により表される。
【0050】
GNoBOpt=aNoT[0]+aNoT[1]×ENoTOptCal+aNoT[2]×(VNoTVOpt−VNoTV0) …(6)
GNoB=NoT[0]+aNoT[1]×ENoTCal+aNoT[1]×(VNoTV−VNoTV0) …(7)
【0051】
電力量計算値を示す変数「ENoTCal」と、電力量最適値計算値「ENoTOptCal」との偏差は、実際の発電量での偏差と同じである場合、電力量最適値「ENoTOpt」は、式(8)により表される。
【0052】
ENoTOpt=ENoT+(ENoTOptCal−ENoTCal) …(8)
【0053】
算出部400は、復水器22aの真空度最適値を示す変数「VNoTVOpt」に基づいて、蒸気の消費の特性を算出する。算出部400は、この変数「VNoTVOpt」の値を、予測性能を表す線に基づいて算出する。
【0054】
図10は、第2の実施形態の復水器22aの真空度を予測する性能を表す線の図である。縦軸は真空度[mmHg]を示す。横軸は交換熱量[]を示す。真空度の近似値は、直線で近似されてもよいし、曲線で近似されてもよい。真空度の近似値は、一例として、式(9)で示される。av0は、任意の定数を示す。av1〜av4も同様である。
【0055】
真空度=av0
+av1×冷却水入口温度
+av2×交換熱量
+av3×冷却水入口温度×冷却水入り口温度
+av4×冷却水入口温度×交換熱量 …(9)
【0056】
復水器22aは、外気温への依存性が高い。このため、運転点が最適点に達する前後で冷却水入口温度は変化しない、と仮定する。式(9)は、最適点に達した後も成り立つ。
【0057】
真空度最適値=av0
+av1×冷却水入口温度
+av2×交換熱量最適値
+av3×冷却水入口温度×冷却水入口温度
+av4×冷却水入口温度×交換熱量最適値 …(10)
【0058】
式(9)と式(10)から、式(11)が成り立つ。
【0059】
(真空度最適値−真空度)=(av2+av4×冷却水入口温度)×交換熱量最適値−交換熱量) …(11)
【0060】
式(11)は、設計データに基づく計算値である。このため、式(11)が示す計算値と、真空度の実測値とには誤差がある。この誤差を補正するため、算出部400は、交換熱量定格に対する復水器流入量に交換熱量が比例すると仮定して、復水器22aの真空度最適値を示す変数「VNoTVOpt」を算出する。すなわち、算出部400は、設計データでの真空度の変化は実際の運転点での真空度の変化に等しいと仮定して、式(12)が成立するか否かを判定する。
【0061】
VNoTVOpt=VNoTV+(aNoTV[2]+aNoTV[5]×TNoTVin)×((GNoTexOpt−GNoTex)/GNoTex0) …(12)
【0062】
各最適値は、最適化の対象となる場合には、上限値と下限値が定められる。また、再熱蒸気量最適値「GNoBrhOpt」は、対応付けられた操作端が最適化の対象である場合には、上限値「GNoB_l」と下限値「GNoB_h」が定められる。発電量最適値「ENoTOpt」と、復水器流入量最適値「GNoTexOpt」とについても同様である。式(13)において、演算子「<=」は、等価比較演算子「小なりイコール」を示す。
【0063】
GNoB_l<=GNoBOpt<=GNoB_h …(13)
【0064】
図11は、第2の実施形態の発電装置2aの発電量の推移の図である。上段の縦軸は、タービン20aへの主蒸気量[kg/s]を示す。中段の縦軸は、電力[kW]を示す。下段の縦軸は、電力[kW]を示す。上段と中段と下段との各横軸は、時間を示す。以下、受電電力量を「受電量」という。以下、受電量の目標値を「受電量目標値」という。
【0065】
図11の上段には、消費電力が補正された場合の主蒸気量と、消費電力が補正されない場合の主蒸気量とが示されている。算出部400により消費電力が補正された場合の主蒸気量と、消費電力が補正されない場合の主蒸気量とには差がある。消費電力が補正されない場合、図11の中段に示すように、他の消費電力9から発電量を差し引いた電力である受電電力7と、受電量目標値とは、発電機モデルの誤差によって一致しない。
【0066】
消費電力が補正されない場合、図11の下段に示すように、他の消費電力9から発電量を差し引いた電力である受電電力7と、受電量目標値(仮の消費電力値)とは一致する。この一致の程度は、発電機モデルの誤差に依存する。算出部400は、発電量の実測値と設定値(主蒸気量設定値)と発電機モデルとに基づいて、消費電力の補正値を算出する。これにより、決定部410は、受電電力7と受電量目標値とを一致させる。
【0067】
以上のように、第2の実施形態の機器運転設定装置40は、算出部400と、決定部410とを持つ。算出部400は、発電装置2aの運転制御に関する設定値と、発電装置2aの消費電力との関係(発電機モデル)に基づいて、発電装置2aの消費電力の目標値を算出する。決定部410は、計測された発電装置2aの消費電力の実測値と、算出部400により算出された発電装置2aの消費電力の目標値との差が所定範囲内となるように、設定値を決定する。
【0068】
第2の実施形態の機器運転設定値決定プログラムは、コンピュータに、発電装置2aの運転制御に関する設定値と、発電装置2aの消費電力との関係(発電機モデル)に基づいて、発電装置2aの消費電力の目標値を算出する手順を実行させる。また、第2の実施形態の機器運転設定値決定プログラムは、コンピュータに、計測された発電装置2aの消費電力の実測値と、算出部400により算出された発電装置2aの消費電力の目標値との差が所定範囲内となるように、設定値を決定する手順を実行させる。
【0069】
この構成により、算出部400は、発電装置2aの運転制御に関する設定値と、発電装置2aの消費電力との関係に基づいて、発電装置2aの消費電力の目標値を算出する。これにより、第2の実施形態の機器運転設定装置40及び機器運転設定値決定プログラムは、発電装置2aの発電電力の実測値と、発電装置2aの発電電力の目標値との差を所定範囲内にすることができる。
【0070】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、制御システム1が機器2としての電動冷凍機2b(電動チラー)を備える点が、第1の実施形態及び第2の実施形態と相違する。第3の実施形態では、第1の実施形態及び第2の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0071】
図12は、第3の実施形態の制御システム1の図である。制御システム1は、機器2としての電動冷凍機2bと、制御装置3と、管理システム4とを備える。制御装置3は、バルブ13の制御値に応じて、バルブ13の開度を制御する。制御装置3は、バルブ14の制御値に応じて、バルブ14の開度を制御する。以下、文言「冷熱」は、温熱に読み替えられてもよい。
【0072】
蓄熱槽12は、バルブ13を介して、冷温熱を冷熱負荷に出力する。説明を簡便にするため、以下では、蓄熱槽12は十分な量の冷温熱が蓄熱していると仮定して説明を続ける。このように仮定しても、一般性は失われない。蓄熱槽12は、電動冷凍機2bなどによって、十分な量の冷温熱を事前に蓄熱すればよいからである。
【0073】
電動冷凍機2bは、構内配線6を介して、消費電力8を取得する。電動冷凍機2bは、バルブ14を介して、冷水を冷熱負荷に出力する。電動冷凍機2bが出力する冷水と、蓄熱槽12が出力する冷温熱とは、合流して冷温熱15となる。冷温熱15は、冷熱負荷に供給される。以下、第3実施形態における機器モデルを、「電動冷凍機モデル」という。
【0074】
決定部410は、他の消費電力9が一定である場合、受電電力7を調整することにより、受電電力7と受電量目標値とを一致させる。決定部410は、電動冷凍機2bの消費電力8を調整することにより、受電電力7を調整することが可能である。なお、電動冷凍機2bの消費電力8は、バルブ13やバルブ14などの操作端のように直接に操作される対象ではない。また、電動冷凍機2bの消費電力8は、冷水の負荷(以下、「冷水負荷」という。)に応じて異なる。このため、決定部410は、バルブ13やバルブ14などの操作端を適切に制御させることにより、電動冷凍機2bの消費電力8を制御する。
【0075】
算出部400は、消費電力の実測値と設定値と電動冷凍機モデルとに基づいて、消費電力の補正値を算出する。これにより、決定部410は、受電電力7と受電量目標値とを一致させる。電動冷凍機モデルを用いて算出した電動冷凍機2bの消費電力8と、電動冷凍機2bの消費電力8の実測値とは、電動冷凍機モデルの誤差により一致しない。算出部400は、消費電力の実測値と設定値(冷水負荷)と電動冷凍機モデルとに基づいて、消費電力の補正値を算出する。これにより、決定部410は、受電電力7と受電量目標値とを一致させる。
【0076】
図13は、第3の実施形態の電動冷凍機2bの消費電力量の推移の図である。上段の縦軸は、電動冷凍機2bの冷水負荷を示す。中段の縦軸は、電力[kW]を示す。下段の縦軸は、電力[kW]を示す。上段と中段と下段との各横軸は、時間を示す。
【0077】
図13の上段には、消費電力が補正された場合の冷水負荷と、消費電力が補正されない場合の冷水負荷とが示されている。算出部400により消費電力が補正された場合の冷水負荷と、消費電力が補正されない場合の冷水負荷とには差がある。消費電力が補正されない場合、図13の中段に示すように、他の消費電力9と消費電力8とを加算した電力である受電電力7と、受電量目標値とは、電動冷凍機モデルの誤差によって一致しない。
【0078】
消費電力が補正されない場合、図13の下段に示すように、他の消費電力9と消費電力8とを加算した電力である受電電力7と、受電量目標値(仮の消費電力値)とは一致する。この一致の程度は、電動冷凍機モデルの誤差に依存する。算出部400は、消費電力の実測値と設定値(冷水負荷)と電動冷凍機モデルとに基づいて、消費電力の補正値を算出する。これにより、決定部410は、受電電力7と受電量目標値とを一致させる。
【0079】
なお、決定部410は、設定値を変更することにより電動冷凍機2bの電力の実測値と目標値との差を所定範囲内にすることができるか否かを判定してもよい。冷熱負荷に供給される冷温熱15が不足する場合、蓄熱槽12が冷熱負荷に出力する冷温熱の量を増加してもよい。この場合、制御装置3は、設定値に応じた制御値に基づいて、バルブ13の開度を調整する。
【0080】
以上のように、第3の実施形態の機器運転設定装置40は、算出部400と、決定部410とを持つ。算出部400は、電動冷凍機2bの運転制御に関する設定値と、電動冷凍機2bの消費電力との関係(電動冷凍機モデル)に基づいて、電動冷凍機2bの消費電力の目標値を算出する。決定部410は、計測された電動冷凍機2bの消費電力の実測値と、算出部400により算出された電動冷凍機2bの消費電力の目標値との差が所定範囲内となるように、設定値を決定する。
【0081】
第3の実施形態の機器運転設定値決定プログラムは、コンピュータに、電動冷凍機2bの運転制御に関する設定値と、電動冷凍機2bの消費電力との関係(電動冷凍機モデル)に基づいて、電動冷凍機2bの消費電力の目標値を算出する手順を実行させる。また、第3の実施形態の機器運転設定値決定プログラムは、コンピュータに、計測された電動冷凍機2bの消費電力の実測値と、算出部400により算出された電動冷凍機2bの消費電力の目標値との差が所定範囲内となるように設定値を決定する手順を実行させる。
【0082】
この構成により、算出部400は、電動冷凍機2bの運転制御に関する設定値と、電動冷凍機2bの消費電力との関係に基づいて、電動冷凍機2bの消費電力の目標値を算出する。これにより、第3の実施形態の機器運転設定装置40及び機器運転設定値決定プログラムは、電動冷凍機2bの冷温熱の実測値と、電動冷凍機2bの冷温熱の目標値との差を所定範囲内にすることができる。
【0083】
決定部410は、設定値を変更することにより電動冷凍機2bの電力の実測値と算出された目標値との差を所定範囲内にすることができるか否か、を判定する。決定部410は、電動冷凍機2bの電力の実測値と算出された目標値との差を所定範囲内にすることができない場合、その差が所定範囲内となるように蓄熱槽12又はバルブ13を、制御装置3を介して制御する。
【0084】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、機器の運転制御に関する設定値と機器の消費電力との関係に基づいて機器の消費電力の目標値を算出する算出部を持つことにより、機器の電力の実測値と、機器の電力の目標値との差を所定範囲内にすることができる。
【0085】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1…制御システム、2…機器、2a…発電装置、2b…電動冷凍機、3…制御装置、4…管理システム、5…変圧器、6…構内配線、7…受電電力、8…消費電力、9…他の消費電力、10…通信回線、11…発電電力、12…蓄熱槽、13…バルブ、14…バルブ、15…冷温熱、20a…タービン、21a…発電機、22a…復水器、40…機器運転設定装置、400…算出部、410…決定部、A…建物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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