特許第6356509号(P6356509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本プラスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6356509-ハンドル 図000002
  • 特許6356509-ハンドル 図000003
  • 特許6356509-ハンドル 図000004
  • 特許6356509-ハンドル 図000005
  • 特許6356509-ハンドル 図000006
  • 特許6356509-ハンドル 図000007
  • 特許6356509-ハンドル 図000008
  • 特許6356509-ハンドル 図000009
  • 特許6356509-ハンドル 図000010
  • 特許6356509-ハンドル 図000011
  • 特許6356509-ハンドル 図000012
  • 特許6356509-ハンドル 図000013
  • 特許6356509-ハンドル 図000014
  • 特許6356509-ハンドル 図000015
  • 特許6356509-ハンドル 図000016
  • 特許6356509-ハンドル 図000017
  • 特許6356509-ハンドル 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356509
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20180702BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B62D1/06
   H05B3/20 347
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-141657(P2014-141657)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-16790(P2016-16790A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関 崇朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−157365(JP,U)
【文献】 特開2012−171551(JP,A)
【文献】 特開2007−062422(JP,A)
【文献】 特開昭61−218475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部芯金と、
この把持部芯金を覆って形成され少なくとも一部が曲がった被覆部と、
この被覆部に取り付けられるヒータ装置と、
このヒータ装置を覆う表皮部とを具備し、
前記ヒータ装置は、
少なくとも両縁部側に伸張可能で、かつ、両縁部に向かって徐々に伸張率が大きくなるように形成され、これら両縁部を前記被覆部の曲がりの内側に互いに対向させて前記被覆部に沿って巻き付けられるシート状の基材と、
この基材に一体的に保持され通電により発熱するヒータ線と、
拡大された拡大部を先端側に有し、前記基材の両縁部にそれぞれ切り込み形成された複数の切込部とを備えた
ことを特徴とするハンドル
【請求項2】
基材は、両縁部のそれぞれに沿って複数の孔部を備えた
ことを特徴とする請求項記載のハンドル。
【請求項3】
被覆部は、目印部を備え、
基材は、前記被覆部に巻き付けられた状態で前記目印部を露出させる開口部を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆部に取り付けられるヒータ装置を備えたハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を保全し温室効果ガスの発生を抑制する取り組みの一環として、ガソリンエンジン車に代わる環境負荷の少ない、電気自動車(EV)の普及が進んできている。このような電気自動車の場合、蓄電池とモータとの組み合わせにより構成されており、基本的に外部充電器からエネルギーを補充しなければならないことから、蓄電力の消費を抑制する施策が必須であり、その中でも消費電力が大きい暖房(エアコン)用の電力消費を抑制することが最も有効な手段である。
【0003】
そこで、乗員(運転手)が直接触れるステアリングホイールによって直接暖かさを伝える手段をとることが進められてきており、その一つとして、ステアリングホイールに発熱体としてのヒータ線を埋め込む構成が知られている。
【0004】
すなわち、ステアリングホイールにヒータ装置を組み込み、始動から間もない、まだ各種機関が充分に温まらないときでもステアリングホイールを温めることで、例えば冬季の屋外に駐車していた車両である自動車を始動して運転するとき、ハンドルすなわちステアリングホイールが冷たいことに起因する操作のしづらさや不快感を軽減しつつ、暖房の使用を抑制して電力の消費を抑制可能な構成が知られている。
【0005】
このような構成として、例えばシート状の基材にヒータ線を保持したヒータ装置を直線状、あるいは円環状などの立体的な被覆部に巻き付けるものが知られている。例えば、円環状に湾曲した被覆部にヒータ装置を巻き付ける場合、被覆部の内周側と外周側との円周長の差により、内周側の位置で基材に皺が発生する。このような皺は、ヒータ装置を表皮体によって覆った状態で外観に凹凸として現れ、また、ステアリングホイールを握った際の触感も低下するので、例えば基材の両縁に切込部を形成することで、円周長の差を吸収する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、基材の両縁に単純なV字形状、あるいはU字形状のスリット(切り込み)を形成しただけでは、被覆部にヒータ装置を巻き付けたときに切込部の頂部の周囲の位置に皺が生じたり、基材の浮きが生じたりするため、皺の発生を防止するのに充分とはいえない。
【0007】
また、ヒータ線を熱プレス加工などによってシート状の基材に埋め込んだ構成も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
この構成の場合には、ヒータ装置が伸びにくく、被覆部に巻き付けた状態で皺が生じやすい。
【0009】
さらに、自動二輪車などのハンドルとして、直線円筒状の被覆部に対してシート状のヒータ装置を巻き付ける際に、被覆部に突設した突起部を、基材に設けた開口に合わせて位置決めする構成も知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
しかしながら、自動車用のステアリングホイールの場合、乗員が握り込んで操作するため、被覆部に突設した突起部が例えば革やウレタンなどの軟質の表皮体を通じて乗員に感じられ、良好な感触を得ることが容易でなく、ステアリングホイールに採用することができない。
【0011】
また、シート状のヒータ装置の基材に多数のスリットを設け、屈曲した被覆部の形状に追従させて貼り付ける構成も知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【0012】
この構成では、屈曲形状の外側の位置でスリットの縁部が浮き、皺が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭61−218475号公報 (第2−3頁、第1図−第4図)
【特許文献2】特開2011−121477号公報 (第4−6頁、図1−3)
【特許文献3】実開平4−51886号公報 (第17−18頁、第5図−第6図)
【特許文献4】実開平4−128991号公報 (第5−6頁、図2−8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、シート状のヒータ装置を被覆部に巻き付けるハンドルにおいて、良好な外観及び把持したときの感触を得られる構成が望まれている。
【0015】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、良好な外観及び把持したときの感触を得られるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載のハンドルは、把持部芯金と、この把持部芯金を覆って形成され少なくとも一部が曲がった被覆部と、この被覆部に取り付けられるヒータ装置と、このヒータ装置を覆う表皮部とを具備し、前記ヒータ装置は、少なくとも両縁部側に伸張可能で、かつ、両縁部に向かって徐々に伸張率が大きくなるように形成され、これら両縁部を前記被覆部の曲がりの内側に互いに対向させて前記被覆部に沿って巻き付けられるシート状の基材と、この基材に一体的に保持され通電により発熱するヒータ線と、拡大された拡大部を先端側に有し、前記基材の両縁部にそれぞれ切り込み形成された複数の切込部とを備えたものである。
【0017】
求項記載のハンドルは、請求項記載のハンドルにおいて、基材は、両縁部のそれぞれに沿って複数の孔部を備えたものである。
【0018】
請求項記載のハンドルは、請求項1または2記載のハンドルにおいて、被覆部は、目印部を備え、基材は、前記被覆部に巻き付けられた状態で前記目印部を露出させる開口部を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載のハンドルによれば、シート状の基材を少なくとも両縁部側に伸張可能とし、かつ、両縁部に向かって徐々に伸張率が大きくなるように形成し、その両縁部に切り込み形成された複数の切込部の先端側に拡大された拡大部を形成し、この基材の両縁部を被覆部の曲がりの内側に互いに対向させて被覆部に沿って巻き付けることで、基材の両縁部側への伸張と拡大部によって被覆部の曲がりによる外側と内側との長さの差を吸収して基材の皺の発生を効果的に抑制でき、このヒータ装置を表皮部により覆った状態で、良好な外観及び把持したときの感触を得ることができるとともに、基材の巻き付けの作業性をより向上できる
【0020】
求項記載のハンドルによれば、請求項記載のハンドルの効果に加え、基材の両縁部のそれぞれに沿って複数の孔部を設けることで、基材を両縁部側により効果的に伸張させることができ、被覆部に沿って巻き付けたときの皺をより効果的に抑制できる。
【0021】
請求項記載のハンドルによれば、請求項1または2記載のハンドルの効果に加え、被覆部に設けた目印部を露出させる開口部を基材に設けることで、基材を被覆部に巻き付ける際に開口部から目印部を目視しつつ開口部と目印部とを位置合わせすることにより、作業性が良好であるとともに、ヒータ装置を被覆部に対して所望の位置に確実に取り付けでき、ヒータ装置の位置ずれに起因する基材の皺をより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は本発明のハンドルの第1の関連技術の一部を示す斜視断面図、(b)は第1の比較例としての従来例のハンドルの一部を示す斜視断面図、(c)は第2の比較例としての従来例のハンドルの一部を示す斜視断面図である。
図2】同上ハンドルのヒータ装置を示す平面図である。
図3】同上ハンドルの製造方法の一部を示す斜視図である。
図4】同上ハンドルの製造方法の図3に続く工程を(a)ないし(d)の順に示す斜視断面図である。
図5】同上ハンドルの一部を示す斜視断面図である。
図6】同上ハンドルの正面図である。
図7】本発明のハンドルの第2の関連技術の製造方法の一部を拡大して示す斜視図である。
図8】同上ハンドルの製造方法の一部を示す斜視図である。
図9】本発明のハンドルの第3の関連技術の開口部を示す平面図である。
図10】本発明のハンドルの第4の関連技術の開口部を示す平面図である。
図11】本発明のハンドルの第5の関連技術の開口部を示す平面図である。
図12】本発明のハンドルの第の実施の形態のヒータ装置を示す平面図である。
図13】同上ハンドルの製造方法を(a)ないし(c)の順に示す斜視断面図である。
図14】本発明のハンドルの第の実施の形態のヒータ装置を示す平面図である。
図15】本発明のハンドルの第の実施の形態のヒータ装置を示す平面図である。
図16】本発明のハンドルの第の実施の形態のヒータ装置を示す平面図である。
図17】本発明のハンドルの第の実施の形態のヒータ装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のハンドルの第1の関連技術を図面を参照して説明する。
【0024】
図1ないし図6において、10は例えば車両としての自動車の(ステアリング)ハンドルであるステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるパッド体としてのセンタパッドであるエアバッグ装置(エアバッグモジュール)12、及び、装飾部材としてのフィニッシャ13などを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、エアバッグ装置12の乗員側すなわち正面側を上側(矢印U方向)、ステアリングシャフト側すなわち背面側を下側(矢印D方向)、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側、車両の後側すなわち後側下方を後側あるいは手前側として説明する。
【0025】
そして、ステアリングホイール本体11は、少なくとも一部が円周に沿って形成された、本関連技術では円環状(ドーナツ状)をなす把持部としてのリム部(リング部)15と、このリム部15の内側に位置するボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結する複数の、本関連技術では3本のスポーク部17とから構成されている。また、このステアリングホイール本体11は、金属製の芯金18と、この芯金18の一部を一体的に覆う軟質の合成樹脂製の被覆部19と、この被覆部19を覆うヒータ装置20と、このヒータ装置20を覆う表皮部21と、芯金18の背面側を覆う図示しない被覆部材としてのカバー体となどを備えている。
【0026】
芯金18は、例えばマグネシウムアルミニウム(MgAl)合金や鉄などにより形成され、ボス部16の車体側となる下部に、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えた略円筒状のボス25を備えているとともに、このボス25に、ハブコアとも呼ばれる芯体を構成するボスプレート26が一体的に固着されている。そして、ボスプレート26から、スポーク部17に対応するスポーク芯金27が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部17のスポーク芯金27に、リム部15に対応する把持部芯金としてのリム芯金28が溶接などして固着されている。
【0027】
被覆部19は、リム部15のリム芯金28の全周の表面側と、スポーク部17のスポーク芯金27のリム部15側の部分との表面側を覆って形成されており、この被覆部19を覆って、ヒータ装置20が配設されているとともに、このヒータ装置20及び被覆部19を覆って、表皮部21が設けられている。このため、この被覆部19は、リム芯金28に沿って円弧状(円環状)、すなわち円弧の少なくとも一部に沿って湾曲して(曲がって)いる。また、この被覆部19の表面には、ヒータ装置20を位置合わせするための目印部22が設けられている。そして、この被覆部19は、本関連技術では、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものを使用し、上下方向に分割される図示しない成形型(金型)を用いて成形されている。
【0028】
目印部22は、リム部15の位置での被覆部19の周である緯線L(大径)方向の内周に沿って形成された、例えば罫書線などである。すなわち、この目印部22は、被覆部19の成形時に被覆部19の緯線L方向の内周側及び外周側に形成される、換言すれば被覆部19の上下方向の中心線となるパーティングラインのうち、内周側の位置、すなわち被覆部19の曲がりの内側の位置に沿って形成されている。なお、この目印部22は、被覆部19を成形する際に同時に形成してもよいし、被覆部19の成形後に形成してもよい。
【0029】
ヒータ装置20は、シート状の基材31と、この基材31に保持されたヒータ線32とを一体的に備えている。
【0030】
基材31は、例えば不織布などであり、全体として長方形状をなしリム部15(リム芯金28)に対応する位置で被覆部19を覆う第1の本体部としてのリム部被覆部33と、各スポーク部17(スポーク芯金27)に対応する位置で被覆部19を覆う第2の本体部としてのスポーク部被覆部34とを一体に備えている。そして、この基材31は、リム部15の位置での被覆部19の断面周である経線M(小径)に沿って巻き付けるように湾曲されて配置されている。
【0031】
リム部被覆部33は、長手方向に沿う一対の長辺である両縁部33a,33aを備え、被覆部19に取り付ける際には両端部が互いに連結されて円環状となっている。両縁部33a,33aは、基材31の両縁部をなすもので、これら両縁部33a,33aには、開口部としての切込部36がそれぞれ複数ずつ形成されている。
【0032】
各切込部36は、ヒータ装置20を巻き付けた際の緯線L(大径)方向の外周と内周との周長差を吸収するもので、両縁部33a,33aから、リム部被覆部33の短手方向の中心側に向けて、短手方向に沿って略直線状に形成された切込部本体36aと、この切込部本体36aの先端部に一体に設けられた拡大部36bとを備えた、いわゆる鍵穴状となっている。そして、両縁部33a,33aに位置する切込部36,36は、例えば短手方向に互いに対向する位置に配置されている。
【0033】
切込部本体36aは、例えば基端側から先端側(拡大部36b)へと、徐々に幅狭となるように形成されている。そして、この切込部本体36aの基端側の位置(拡大部36bと反対側の位置)では、ヒータ装置20を被覆部19に巻き付ける際に目印部22を露出させてこの目印部22を目視可能としている。
【0034】
拡大部36bは、例えば円形状に形成されており、切込部本体36aの最大幅以上の幅寸法を有している。すなわち、この拡大部36bは、切込部本体36aに対して段差状に拡開されて形成されている。
【0035】
スポーク部被覆部34は、リム被覆部33の両縁部33a,33aからそれぞれ略四角形状に突出している。これらスポーク部被覆部34,34は、スポーク部17の本数に対応して設けられ、本関連技術では、3本のスポーク部17に対応する3対設けられている。
【0036】
ヒータ線32は、通電時に発熱する、例えばニッケルなどを含む抵抗線である芯線の表面に、絶縁膜を設けたものである。このヒータ線32は、例えばリム部15の略全周に亘って、緯線Lに対して交互に交差する波状、すなわち基材31の短手方向に交互に波状となるように配置されている。そして、このヒータ線32は、図示しない制御回路と接続され、この制御回路により通電されることにより発熱するように構成されている。
【0037】
表皮部21は、ヒータ装置20を覆ってステアリングホイール10のリム部15の最外郭を構成するものである。この表皮部21は、ヒータ装置20を内部に埋め込むように例えばウレタンなどの軟質の合成樹脂などにより成形されて被覆部19と一体となっていてもよいし、別体の革などのシート状の軟質の部材を、ヒータ装置20を覆うように巻き付けて形成されていてもよい。
【0038】
制御回路は、例えばサーモスタットなどを備え、図示しない給電線を介してヒータ線32の両端部と電気的に接続されている。そして、この制御回路は、例えばカバー体とステアリングホイール本体11のスポーク部17のスポーク芯金27との間に収容されている。
【0039】
また、カバー体は、裏カバー、下部カバーあるいはボディカバーとも呼ばれ、合成樹脂などにより形成され、ボス部16の下側部を覆っている。
【0040】
エアバッグ装置12は、袋状のエアバッグ、折り畳んだエアバッグを覆う樹脂製のカバー体、ガスを噴射するインフレータなどを備えており、自動車が衝突した際などに、インフレータからエアバッグの内部にガスを急速に噴射し、折り畳んで収納したエアバッグを急激に膨張させ、カバー体を開裂させて、エアバッグを乗員の前側に膨張展開させて、乗員を保護するようになっている。なお、このエアバッグ装置12は、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構を一体的に組み込んでもよい。
【0041】
さらに、フィニッシャ13は、例えば合成樹脂などにより形成されており、例えばエアバッグ装置12の両側に沿って上下方向に長手状に形成され、両側部のスポーク部17の乗員側を覆って配置されている。このフィニッシャ13には、各種操作用のスイッチ装置などを組み込んでもよい。
【0042】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、まず、開いた成形型に芯金18をセットし、合成樹脂原料を攪拌混合してキャビティ内に射出することで、合成樹脂原料がキャビティ内で反応してポリウレタンとなり、被覆部19を成形する。
【0043】
次いで、成形型を開き、被覆部19を形成した中間体38を脱型する。
【0044】
一方、帯状の基材31に対してヒータ線32を、例えば接着、溶着、あるいは縫製などによって長手方向に対して交互に交差する波状に固着してヒータ装置20を構成する。
【0045】
そして、上記の中間体38の被覆部19に対して、ヒータ装置20を、基材31の両縁部33a,33aが内周側、すなわち被覆部19の曲がりの内側にて互いに対向するように巻き付ける(図3図4(a)ないし図4(d))。このとき、各切込部36により目印部22を目視しながら(図4(c))、この目印部22に沿って基材31の両縁部33a,33aが互いに対向するように巻き付けることでヒータ装置20(基材31)が被覆部19(中間体38)と位置合わせされて、ヒータ装置20の位置ずれが防止される。この結果、各切込部36により、緯線L方向の内周側と外周側との円周長の差が吸収されるとともに、各切込部36近傍の位置では、これら切込部36の先端の拡大部36bの形状により、基材31が先端側に寄り集まらず、皺が生じることが防止される。
【0046】
この後、ヒータ装置20は、基材31の両縁部33a,33aを縫製などによって接合して被覆部19に固定し、このヒータ装置20を固定した中間体に対して、ヒータ装置20を覆う表皮部21を被覆部19と一体に成形、または、被覆部19に巻き付けて縫製などによって固定するとともに、ヒータ線32を制御回路と電気的に接続し、中間体38にエアバッグ装置12及びフィニッシャ13を取り付けて、ステアリングホイール10が完成する。
【0047】
すなわち、図1(b)及び図1(c)に示すように、シート状の基材31の両縁部33a,33aに単なるV字状あるいはU字状の切込部36を形成しただけでは、被覆部19の曲がりによる外側と内側との長さの差(円弧状の被覆部19の外周と内周との円周長の差)により切込部36の先端部に皺Cが生じ、このような皺Cは、表皮部21を巻き付けたときに、リム部15の外観に現れるとともに、リム部15を握り込んだ際の触感も低下する。これに対して、本関連技術によれば、シート状の基材31の両縁部33a,33aに切り込み形成された複数の切込部36の先端側に拡大された拡大部36bを形成し、この基材31の両縁部33a,33aを被覆部19の曲がりの内側に互いに対向させて被覆部19に沿って巻き付けることで、拡大部33bによって被覆部19の曲がりによる外側と内側との長さの差(円弧状の被覆部19の外周と内周との円周長の差)を吸収して基材31の皺の発生を抑制でき(図1(a))、このヒータ装置20を表皮部21により覆った状態で、良好な外観及びリム部15を把持した(握り込んだ)ときの感触を得ることができる。
【0048】
また、被覆部19に設けた目印部22を切込部36によって露出させることで、基材31を被覆部19に巻き付ける際に切込部36から目印部22を目視しつつこの切込部36と目印部22とを位置合わせすることにより、作業性が良好であるとともに、ヒータ装置20を被覆部19に対して所望の位置に確実に取り付けでき、ヒータ装置20の位置ずれに起因する基材31の皺をより効果的に抑制できる。
【0049】
次に、第2の関連技術図7及び図8を参照して説明する。なお、上記の第1の関連技術と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
この第2の関連技術は、上記の第1の関連技術において、ヒータ装置20の基材31に、位置合わせ用の開口部41を備えるものである。
【0051】
開口部41は、例えば基材31の短手方向の中央部に沿って、長手方向に互いに離間されて複数開口されている。すなわち、これら開口部41は、ヒータ装置20を被覆部19に巻き付けた状態で、緯線L(大径)方向の外周側の位置となっている。また、これら開口部41は、例えば円形状に形成されている。
【0052】
さらに、被覆部19には、これら開口部41から露出するように、目印部43が設けられている。この目印部43は、被覆部19の緯線L方向に形成された外周側のパーティングラインPLである。
【0053】
そして、中間体38の被覆部19に対して、ヒータ装置20(基材31)を巻き付ける際、各開口部41により目印部43を目視しながら作業することで(図7)、ヒータ装置20(基材31)が被覆部19(中間体)と位置合わせされて、ヒータ装置20の位置ずれが防止される。
【0054】
このように、第2の関連技術によれば、被覆部19に形成されたパーティングラインPLである目印部43を複数の開口部41によって露出させることで、基材31を被覆部19に巻き付ける際に各開口部41から目印部43を目視しつつこれら開口部41と目印部43とを位置合わせすることにより、作業性が良好であるとともに、ヒータ装置20を被覆部19に対して所望の位置に確実に取り付けでき、ヒータ装置20の位置ずれに起因する基材31の皺をより効果的に抑制できる。
【0055】
また、ヒータ装置20を被覆部19に取り付けようとする際には、被覆部19の中心線となる被覆部19の外周側のパーティングラインPLがヒータ装置20によって隠れてしまい、ヒータ装置20(基材31)の中心位置と被覆部19の中心位置との位置合わせが容易でなく、ヒータ装置20が被覆部19に対して所望の位置からずれた位置に配置されることで、品質が作業者の勘によって左右されるおそれがあるだけでなく、切込部36の拡大部36bによる皺の低減効果も、ヒータ装置20の位置がずれて意味を成さなくなるおそれがある。そこで、被覆部19の中心位置となるパーティングラインPLである目印部43を、基材31の中心位置に沿って開口した各開口部41によって露出させることで、この目印部43を介してヒータ装置20の位置合わせ(センター出し)を正確にできるので、ヒータ装置20を被覆部19に取り付ける作業者による個人差を低減して、作業未成熟者でも容易な施工を可能にしつつ皺を抑制でき、品質の向上が可能になる。
【0056】
なお、上記の第2の関連技術において、開口部41の形状は、例えば図9に示す第3の関連技術のように、基材31の長手方向に沿って長軸を有する長円(楕円)形状としてもよいし、図10に示す第4の関連技術のように、基材31の長手方向に沿う細長いスリット状としてもよいし、図11に示す第5の関連技術のように、基材31の長手方向に沿って長い菱形(四角形状)としてもよい。これらの場合、それぞれ緯線Lに沿って線状に伸びる目印部43と開口部41の中心位置とをより容易に位置合わせでき、作業性がより良好であるとともに、ヒータ装置20を被覆部19に対して所望の位置へとより確実に取り付けできる。したがって、開口部41は、目印部43を露出させて目視可能とすることができれば任意の形状とすることができる。
【0057】
次に、第の実施の形態を図12及び図13を参照して説明する。なお、上記の各関連技術と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
この第の実施の形態は、上記の各関連技術のヒータ装置20の基材31が、少なくとも両側縁33a,33a方向、すなわち短手方向に伸張可能に形成されているものである。
【0059】
具体的に、基材31には、切込部36に加えて、多数の孔部45が両縁部33a,33a近傍に形成されている。これら孔部45は、例えば円形状に形成されており、基材31の長手方向に沿って直線状に列をなし、短手方向に複数列配置されている。また、互いに隣接する列の孔部45は、基材31の長手方向にずれている。したがって、各孔部45は、ヒータ線32と干渉しない位置において、いわば千鳥状(基材31の長手方向に互い違い)に配置されている。さらに、これら孔部45は、基材31に波状に配置されたヒータ線32の交互に折り返された両端部よりも短手方向の中心側から、これら両端部よりも両縁部33a,33a寄りの位置に亘って配置されている。したがって、基材31は、短手方向の中心側から両縁部33aへと、徐々に伸張率が大きくなるようになっている。すなわち、基材31は、短手方向の中心の位置から短手方向の所定幅の領域A1が伸びにくく、この領域A1から孔部45までの領域A2,A2が領域A1よりも伸びやすく、孔部45及びヒータ線32の折り返された端部が位置する両縁部33a,33aまでの領域A3,A3が最も伸びやすくなっている。
【0060】
そして、中間体38の被覆部19に対して、ヒータ装置20を、基材31の両縁部33a,33aを引っ張って伸ばし、張力(テンション)を掛けながら、両縁部33a,33aが内周側、すなわち被覆部19の曲がりの内側にて互いに対向するように巻き付け、基材31の両縁部33a,33aを縫製などによって接合して被覆部19に固定する(図13(a)ないし(c))。なお、ヒータ装置20の位置合わせについては、図示しないが、上記の各関連技術と同様に、切込部36と目印部22、あるいは開口部41と目印部43とを用いることで、容易に中心位置を被覆部19の中心位置と位置合わせできる。
【0061】
このように、第の実施の形態によれば、基材31を両縁部33a,33a側に伸張可能とすることで、被覆部19に沿って巻き付けたときの基材31の皺をより効果的に抑制できる。
【0062】
また、基材31の中心位置などに大きなスリットを設ける場合、ヒータ装置20(基材31)を被覆部19に巻き付ける際によれが生じやすく、かつ、基材31が変形しやすく張力を掛けて巻き付けにくいとともに、スリット面積が大きい場合には基材31が変形しすぎてしまい、元の形状を維持できず、皺の発生に繋がるおそれがある。そこで、基材31の両縁部33a,33aのそれぞれに沿って複数の孔部45を設けることで、基材31を両縁部33a,33a側により効果的に伸張させることができるとともに皺の起点を作りにくくするとともに皺が仮に形成されても最小限に留めることができ、両縁部33a,33aを縫製した箇所に張力が加わっても基材31が皺になりにくい。したがって、被覆部19に沿って巻き付けたときの皺をより効果的に抑制できる。
【0063】
さらに、ヒータ装置20を被覆部19に巻き付ける際の基準となる基材31の短手方向の中心側の領域A1を相対的に伸びにくくすることで、特に上記の第2ないし第5の関連技術のように、被覆部19の外周側のパーティングラインPLである目印部43と基材31の短手方向の中心位置に沿って開口された各開口部41との位置合わせによってヒータ装置20を被覆部19に対して位置合わせする場合に、各開口部41周辺での基材31の伸びを抑制できるので、より作業性が良好になるとともに、位置合わせの精度をより向上できる。
【0064】
しかも、基材31の全体が伸びると、この基材31を被覆部19に巻き付ける際に伸び過ぎてしまい両縁部33a,33aの合わせが悪くなるおそれがあるので、両縁部33a,33a近傍の領域A3,A3の伸びを相対的に大きくすることで、基材31の巻き付けの作業性をより向上できる。
【0065】
そして、被覆部19を覆ってヒータ装置20を固定する際に基材31の両縁部33a,33aを例えば縫製する場合でも、この縫製する両縁部33a,33aの近傍に複数の孔部45を設けたので、ヒータ線32も基材31に追従して伸び、縫製の作業性をより向上できる。
【0066】
また、孔部45を基材31に千鳥状(長手方向に互い違い)に設けることで、基材31の領域A3の位置での伸びをより向上できる。
【0067】
さらに、孔部45は、比較的小さいため、基材31が伸びたときの型崩れを抑制でき、被覆部19に対してヒータ装置20(基材31)をより巻き付けやすい。
【0068】
なお、上記の第の実施の形態において、孔部45は、例えば図14に示す第の実施の形態のように、基材31の短手方向の中心側から両縁部33a,33aに向けて徐々に大きさを大きくするようにして、両縁部33a,33aに接近する位置ほど基材31の伸張性が大きい(伸びやすい)形状とすることもできる。また、これら第及び第の実施の形態において、孔部45の形状は、例えば図15に示す第の実施の形態のように、長方形状としてもよいし、図16に示す第の実施の形態のように正方形(菱形)状としてもよい。
【0069】
さらに、上記の各関連技術及び各実施の形態において、基材31の両縁部33a,33aの切込部36は、図17に示す第の実施の形態のように、千鳥状、すなわち長手方向に互いにずれた位置に交互に配置されるように設けてもよい。
【0070】
また、切込部36の切込部本体36aは、例えば基端側から先端側(拡大部)へと略一定の幅寸法を有する直線状に形成されていてもよい。
【0071】
さらに、ヒータ線32の基材31に対する配置は、波状に限定されず、例えば渦巻状など、基材31の形状や被覆部19の形状に対応した任意の配置とすることができる。
【0072】
また、ヒータ装置20としては、基材31を例えばポリ塩化ビニル(PVC)により形成しヒータ線32をヒータ箔として一体化したものや、基材31をシリコンラバーとし平坦なヒータ線32を保持したいわゆるシリコンラバーヒータなどの高ワット数を要する瞬間暖房が可能なものなどでも対応させて用いることができる。
【0073】
さらに、リム部15(リム芯金28及び被覆部19)は、円環状に形成したが、少なくとも一部が曲がって形成されていれば、例えば円弧の一部に沿って湾曲するように形成されていてもよいし、直線状で一部が屈曲するように形成されていてもよい。すなわち、リム部15(リム芯金28及び被覆部19)は、少なくとも一部が曲がって(湾曲あるいは屈曲して)形成されていればよく、これらのいずれの場合でも、ヒータ装置20は、基材31の両縁部33a,33aをこの曲がりの内側に対向させるように巻き付けることで、上記の各関連技術及び各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
また、ステアリングホイール10は、3本のスポーク部17を備えた構成に限られず、少なくとも両側に2本を備える構成に適用できる。
【0075】
さらに、ステアリングホイール10は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いることができる。
【0076】
そして、エアバッグ装置12に代えて、例えば衝撃吸収体を収納したパッド体を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば自動車のステアリングホイールとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 ハンドルであるステアリングホイール
19 被覆部
20 ヒータ装置
21 表皮部
22,43 目印部
28 把持部芯金としてのリム芯金
31 基材
32 ヒータ線
36 開口部としての切込部
36b 拡大部
41 開口部
45 孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17