(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、入力回転体または太陽輪の回転軸と平行な方向を「軸方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。また、以下では、説明の便宜上、
図1または
図10中の右側を「入力側」、
図1または
図10中の左側を「出力側」、とそれぞれ称する。
【0012】
<1.第1実施形態>
<1−1.減速機の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る減速機1を、回転軸90を含む平面で切断した縦断面図である。
図2は、
図1中のA−A位置から見た減速機1の横断面図である。
【0013】
この減速機1は、第1回転数の回転運動を第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換する、内接遊星式の減速機である。減速機1は、例えば、ロボット、工作機、X−Yテーブル、材料の切断装置、コンベアライン、ターンテーブル、圧延ローラなどの駆動機構に、組み込まれて使用される。ただし、本発明の減速機は、他の用途に使用されるものであってもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の減速機1は、入力回転体10、減速機構20、および出力回転体30を有する。
【0015】
入力回転体10は、外部から入力される回転数である第1回転数で回転する部材である。本実施形態では、回転軸90に沿って配置された円筒状の部材が、入力回転体10となっている。入力回転体10の入力側の端部101は、直接または他の動力伝達機構を介して、駆動源であるモータに接続される。モータを駆動させると、回転軸90を中心として、入力回転体10が第1回転数で回転する。
【0016】
入力回転体10は、第1偏心部11と、第1偏心部11よりも入力側に位置する第2偏心部12と、を有する。第1偏心部11は、回転軸90から外れた位置で回転軸90と平行に延びる第1中心軸91を中心とする、円筒状の外周面を有する。第2偏心部12も、回転軸90から外れた位置で回転軸90と平行に延びる第2中心軸92を中心とする、円筒状の外周面を有する。第1中心軸91と第2中心軸92とは、回転軸90を挟んで互いに反対側に位置する。また、入力回転体10が回転すると、第1中心軸91および第2中心軸92の位置も、回転軸90を中心として回転する。
【0017】
減速機構20は、入力回転体10と出力回転体30との間に介在し、入力回転体10の回転運動を、減速させつつ出力回転体30へ伝達する機構である。本実施形態の減速機構20は、第1外歯歯車21、第2外歯歯車22、およびフレーム23を有する。
【0018】
第1外歯歯車21は、第1偏心部11の外周面に、ローラベアリング24を介して、取り付けられている。したがって、第1外歯歯車21は、第1偏心部11の第1中心軸91を中心として、回転自在に支持される。第2外歯歯車22は、第2偏心部12の外周面に、ローラベアリング25を介して、取り付けられている。したがって、第2外歯歯車22は、第2偏心部12の第2中心軸92を中心として、回転自在に支持される。
【0019】
図2中に拡大して示したように、第1外歯歯車21は、その外周部に、径方向外側へ向けて突出する複数の外歯41を有する。また、隣り合う外歯41の間には、径方向内側へ向けて凹む外歯間溝42が設けられている。外歯41と外歯間溝42とは、第1中心軸91を中心として、周方向に交互に並んでいる。また、第2外歯歯車22も、第1外歯歯車21と同じように、外周部に複数の外歯41と複数の外歯間溝42とを有する。
【0020】
また、
図1および
図2に示すように、第1外歯歯車21は、複数(
図2の例では8つ)の挿通孔43を有する。複数の挿通孔43は、第1中心軸91を中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各挿通孔43は、外歯41および外歯間溝42よりも径方向内側において、第1外歯歯車21を軸方向に貫通する。また、第2外歯歯車22も、第1外歯歯車21と同じように、複数の挿通孔43を有する。
【0021】
なお、本実施形態の減速機構20は、2枚の外歯歯車21,22を有しているが、外歯歯車の数は、1枚であってもよく、3枚以上であってもよい。
【0022】
フレーム23は、入力回転体10、出力回転体30、および2つの外歯歯車21,22を内部に収容する略円筒状の部材である。
図2中に拡大して示したように、フレーム23は、その内周部に、径方向内側へ向けて突出する複数の内歯51を有する。また、隣り合う内歯51の間には、径方向外側へ向けて凹む内歯間溝52が設けられている。内歯51と内歯間溝52とは、回転軸90を中心として、周方向に交互に並んでいる。
【0023】
各外歯歯車21,22の複数の外歯41と、フレーム23の複数の内歯51とは、互いに噛み合う。すなわち、減速機1の動作時には、フレーム23の内歯間溝52に各外歯歯車21,22の外歯41が嵌り、各外歯歯車21,22の外歯間溝42にフレーム23の内歯51が嵌りながら、各外歯歯車21が回転する。このように、本実施形態では、フレーム23が、内歯歯車としての機能を果たしている。ただし、フレーム23とは別に、フレーム23の内周部に、内歯歯車が別部材として設けられていてもよい。
【0024】
第1外歯歯車21および第2外歯歯車22は、入力回転体10の動力によって回転軸90の周りを公転しながら、フレーム23の内歯51と噛み合うことによって自転する。ここで、フレーム23が有する内歯51の数は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の各々が有する外歯41の数よりも、多い。このため、各外歯歯車21,22の1公転ごとに、フレーム23の同じ位置の内歯51に噛み合う外歯41の位置がずれる。これにより、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22が、入力回転体10の回転方向とは逆の方向へ、第1回転数よりも低い第2回転数で、ゆっくりと自転する。したがって、各外歯歯車21,22の挿通孔43の位置も、第2回転数で、ゆっくりと回転する。
【0025】
第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の各々が有する外歯41の数をNとし、フレーム23が有する内歯51の数をMとすると、減速機構20の減速比Pは、P=(第1回転数)/(第2回転数)=N/(M−N)となる。
図2の例では、N=59,M=60なので、この例における減速機構20の減速比は、P=59である。すなわち、第2回転数は、第1回転数の1/59の回転数となる。ただし、本発明における減速機構の減速比は、他の値であってもよい。
【0026】
出力回転体30は、減速後の第2回転数で、回転軸90を中心として回転する。
図1に示すように、本実施形態の出力回転体30は、第1円板体31、第2円板体32、および複数(本実施形態では8本)のピン33を有する。
【0027】
第1円板体31は、回転軸90に対して垂直に配置された、円環状の部材である。第1円板体31は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22よりも、出力側に配置されている。第1円板体31と入力回転体10との間、および、第1円板体31とフレーム23との間には、それぞれボールベアリング60が介在する。これにより、第1円板体31は、フレーム23および入力回転体10に対して、相対的に回転自在に支持される。
【0028】
また、第1円板体31には、複数のピン33を圧入するための複数(本実施形態では8つ)の被圧入孔311が、設けられている。複数の被圧入孔311は、回転軸90を中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各被圧入孔311は、第1円板体31を軸方向に貫通する。
【0029】
第2円板体32は、回転軸90に対して垂直に配置された、円環状の部材である。第2円板体32は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22よりも、入力側に配置されている。第2円板体32と入力回転体10との間、および、第2円板体32とフレーム23との間には、それぞれボールベアリング60が介在する。これにより、第2円板体32は、フレーム23および入力回転体10に対して、相対的に回転自在に支持される。
【0030】
また、第2円板体32には、複数のピン33の入力側の端部を挿入するための、複数(本実施形態では8つ)の固定用孔321が設けられている。複数の固定用孔321は、回転軸90を中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各固定用孔321は、第2円板体32を軸方向に貫通する。
【0031】
複数のピン33は、第1円板体31と第2円板体32とを接続する、円柱状の部材である。各ピン33は、回転軸90と略平行に配置される。また、複数のピン33は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の複数の挿通孔43に、それぞれ挿入される。複数のピン33は、第1円板体31の複数の被圧入孔311に、それぞれ圧入される。また、各ピン33の出力側の端部には、拡径されたフランジ部331が、設けられている。フランジ部331は、第1円板体31と軸方向に接触する。これにより、各ピン33の入力側への抜けが防止される。また、各ピン33の入力側の端部は、第2円板体32の固定用孔321に挿入され、ナットによって、第2円板体32に固定される。
【0032】
図2に示すように、各挿通孔43を構成する面と、ピン33の外周面との間には、隙間が介在する。そして、当該隙間には、円環状のブッシュリング61が挿入されている。第1外歯歯車21および第2外歯歯車22が減速後の第2回転数で自転すると、当該動力がブッシュリング61を介して各ピン33に伝達する。その結果、複数のピン33、第1円板体31、および第2円板体32が、回転軸90を中心として、第2回転数で回転する。
【0033】
<1−2.第1円板体と複数のピンとの固定構造について>
続いて、第1円板体31と複数のピン33との固定構造について、より詳細に説明する。
図3は、圧入前の第1円板体31および複数のピン33の斜視図である。
図4は、圧入後の第1円板体31および複数のピン33の斜視図である。
図5は、ピン33の側面図である。
【0034】
図3に示すように、複数のピン33は、第1円板体31の出力側から、第1円板体31の複数の被圧入孔311に、それぞれ圧入される。複数のピン33が圧入されると、
図4に示すように、各ピン33の入力側の端部は、第1円板体31の入力側の面よりも、入力側へ突出する。また、各ピン33のフランジ部331が、第1円板体31の出力側の面に接触することで、複数のピン33の圧入が完了する。
【0035】
図5に示すように、圧入完了後のピン33の一部分は、被圧入孔311内に位置する圧入部71となる。
図5の例では、ピン33のうち、フランジ部331の入力側に隣接した部分が、圧入部71となっている。また、ピン33のうち、圧入部71の入力側に隣接した一部分は、被圧入孔311の外部に位置する回転伝達部72となる。回転伝達部72は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の複数の挿通孔43に挿入され、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22から、ブッシュリング61を介してトルクを受ける。
【0036】
本実施形態では、被圧入孔311の内径は、軸方向の位置によらず一定となっている。これに対し、ピン33の圧入部71は、外径が互いに異なる強圧入部711と軽圧入部712とを有する。強圧入部711は、フランジ部331の入力側に隣接する。軽圧入部712は、強圧入部711の入力側かつ回転伝達部72の出力側に位置する。
図5中に拡大して示したように、軽圧入部712の外径Rbは、強圧入部711の外径Raよりも、小さい。このため、被圧入孔311に対する強圧入部711の圧入の締め代を「第1の締め代」とし、被圧入孔311に対する軽圧入部712の圧入の締め代を「第2の締め代」とすると、第2の締め代は、第1の締め代よりも小さい。
【0037】
なお、本実施形態では、軽圧入部712の外径Rbと、回転伝達部72の外径とが、同一となっている。しかしながら、軽圧入部712の外径Rbと、回転伝達部72の外径とは、必ずしも同一でなくてもよい。
【0038】
表1は、第1円板体31に対する複数のピン33の圧入後に、ピン33の入力側の端部が径方向にどれだけ変位するかを、構造解析ソフトウエアを用いて調べた結果を示している。表1中のケース1では、ピン33の圧入部71の外径を一定とし、表1中のケース2では、強圧入部711の外径Raよりも軽圧入部712の外径Rbを小さく設定した。なお、表1の例では、第1円板体31よりも入力側に突出したピン33の軸方向の長さを40.5mm、圧入部71の軸方向の長さを16.5mm、ケース2における強圧入部711の軸方向の長さを11.0mm、ケース2における軽圧入部712の軸方向の長さを5.5mmとした。
【0040】
解析の結果、ケース1では、ピン33の入力側の端部の径方向の変位量が、0.0173mmとなった。これに対し、ケース2では、ピン33の入力側の端部の径方向の変位量が0.0014mmとなった。すなわち、ケース1よりもケース2の方が、ピン33の入力側の端部の径方向の変位量は小さくなった。被圧入孔311の内径、ピン33の各部の軸方向の長さ、第1円板体31における被圧入孔311の位置などを変えて、同様に解析をした場合にも、同じように、圧入部71の外径が一定の場合よりも、強圧入部711と軽圧入部712とで外径を変化させた場合の方が、ピン33の入力側の端部の径方向の変位量は小さくなった。
【0041】
この解析の結果から、ピン33に強圧入部711と軽圧入部712とを設けたことによって、圧入後のピン33の軸方向に対する傾斜を抑制できることが分かった。ピン33の傾斜を抑制できれば、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22に対して、ピン33の回転伝達部72を、精度よく組み付けることができる。
【0042】
ピン33に強圧入部711と軽圧入部712とを設けると、圧入後のピン33の傾斜を抑制できるのは、次の理由によるものと推測される。すなわち、上記のケース1のように、圧入部71の全体を強圧入にすると、被圧入孔311の軸方向の全体において、強圧入による歪みが生じる。これに対し、上記のケース2のように、強圧入部711よりも入力側に軽圧入部712を設ければ、軽圧入部712の外周面は、第1円板体31の被圧入孔311を構成する面に接触するものの、被圧入孔311に歪みを生じさせにくい。このため、強圧入部711の周囲において、被圧入孔311に歪みが生じたとしても、当該歪みによるピン33の傾斜は、軽圧入部712において矯正される。その結果、圧入後のピン33の傾斜が、抑制されると考えられる。
【0043】
特に、本実施形態のように、複数の外歯歯車が軸方向に配列されている場合には、外歯歯車が1枚の場合よりも、ピン33の軸方向の長さを長くする必要がある。このため、複数の外歯歯車にピン33の回転伝達部72を、精度よく組み付けるために、ピン33の傾斜を抑制することが、より重要となる。
【0044】
また、
図3に示すように、本実施形態の第1円板体31は、被圧入孔311の径方向内側に肉厚部312を有し、被圧入孔311の径方向外側に肉薄部313を有する。肉薄部313の径方向の厚みは、肉厚部312の径方向の厚みよりも、薄い。このようにすれば、複数の被圧入孔311および複数のピン33を、径方向外側寄りに配置できる。したがって、ピッチ円直径が広がり、ピン33にかかる荷重を小さくすることができる。ただし、第1円板体31のこのような肉薄部313は、圧入により歪みやすい。このため、当該構造において、ピン33の傾斜を抑制することは、より重要となる。
【0045】
特に、本実施形態では、肉薄部313の径方向外側に、ボールベアリング60が配置されている。このため、ボールベアリング60の配置のために、肉薄部313の径方向の厚みは、より薄くなっている。したがって、当該構造において、ピン33の傾斜を抑制することが、さらに重要となる。
【0046】
図5の例では、強圧入部711の軸方向の長さLaよりも、軽圧入部712の軸方向の長さLbの方が、小さい。すなわち、軽圧入部712の軸方向の長さLbは、圧入部71全体の軸方向の長さLoの半分以下となっている。しかしながら、強圧入部711の軸方向の長さLaよりも、軽圧入部712の軸方向の長さLbの方が、大きくてもよい。また、強圧入部711の軸方向の長さLaと、軽圧入部712の軸方向の長さLbとが、等しくてもよい。
【0047】
図6〜
図9のグラフは、圧入部71全体の軸方向の長さLoに対する軽圧入部712の軸方向の長さLbの比率を変えて、ピン33の入力側の端部の変位量がどのように変化するかを、表1と同じ構造解析ソフトウエアを用いて調べた結果を示している。
図6〜
図9の例では、被圧入孔311の内径を、それぞれ、8mm、10mm、12mm、16mmとした。また、
図6〜
図9において、記号◇,□,△でプロットされた各データ系列は、強圧入部711と軽圧入部712の締め代の差を、それぞれ0.005mm、0.010mm、0.015mmとしたときのデータである。
【0048】
図6〜
図9のいずれの結果においても、Lb/Loが50%前後のときに、ピン33の入力側の端部の変位量が最も小さくなり、Lb/Loが0%または100%に近づくにつれて、ピン33の入力側の端部の変位量が大きくなることが分かった。
【0049】
図6〜
図9の結果から、軽圧入部712の軸方向の長さLbは、圧入部71全体の軸方向の長さLoの、0.2倍以上であることが好ましく、0.3倍以上であればより好ましい、と言える。軽圧入部712の軸方向の長さLbをある程度確保することによって、軽圧入部712によるピン33の傾斜矯正の作用を、より効果的に得ることができる。また、加工誤差が生じたときにも、軽圧入部712の軸方向の長さが短くなり過ぎないため、ピン33の傾斜を、より確実に抑制できる。
【0050】
また、
図6〜
図9の結果から、強圧入部711の軸方向の長さLaは、圧入部71全体の軸方向の長さLoの、0.2倍以上であることが好ましく、0.3倍以上であればより好ましい、と言える。強圧入部711の軸方向の長さを、ある程度確保することによって、第1円板体31に対するピン33の固定強度を高めることができる。また、加工誤差が生じた場合にも、強圧入部711の軸方向の長さが短くなり過ぎないため、ピン33の傾斜を、より確実に抑制できる。
【0051】
<2.第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態に係る減速機1Aを、回転軸90Aを含む平面で切断した縦断面図である。この減速機1Aは、1つの太陽歯車14Aと複数の遊星歯車26Aとを含む、いわゆる遊星歯車機構を用いた減速機である。本実施形態の減速機1Aは、入力回転体10A、減速機構20A、および出力回転体30Aを有する。
【0052】
入力回転体10Aは、外部から入力される回転数である第1回転数で回転する。本実施形態の入力回転体10Aは、入力シャフト13Aと、太陽輪である太陽歯車14Aとを有する。入力シャフト13Aは、回転軸90Aに沿って配置された円筒状の部材である。入力シャフト13Aの入力側の端部131Aは、直接または他の動力伝達機構を介して、駆動源であるモータに接続される。モータを駆動させると、回転軸90Aを中心として、入力回転体10が第1回転数で回転する。
【0053】
太陽歯車14Aは、入力シャフト13Aの外周面に固定されて、入力シャフト13Aとともに、回転軸90Aを中心として回転する。太陽歯車14Aは、径方向外側へ向けて突出した複数の太陽歯141Aを有する。
【0054】
減速機構20Aは、入力回転体10Aと出力回転体30Aとの間に介在し、入力回転体10Aの回転運動を、減速させつつ出力回転体30Aへ伝達する機構である。本実施形態の減速機構20Aは、複数の遊星輪である遊星歯車26Aと、フレーム23Aとを有する。
【0055】
複数の遊星歯車26Aは、太陽歯車14Aの周りに、等間隔に配置されている。各遊星歯車26Aは、中央に挿通孔260Aを有する。当該挿通孔260Aには、後述するピン33Aが挿入される。各遊星歯車26Aは、このピン33Aによって、回転自在に支持される。また、各遊星歯車26Aの外周部には、太陽歯141Aと噛み合う複数の遊星歯261Aが設けられている。
【0056】
フレーム23Aは、入力回転体10A、出力回転体30A、および複数の遊星歯車26Aを内部に収容する略円筒状の部材である。フレーム23Aは、その内周部に、遊星歯261Aと噛み合う複数の内歯51Aを有する。すなわち、複数の遊星歯車26Aは、それぞれ、太陽歯車14Aの太陽歯141Aと、フレーム23Aの内歯51Aと、の双方と常に噛み合っている。このため、太陽歯車14Aが回転すると、複数の遊星歯車26Aは、ピン33Aを中心として自転しながら、フレーム23Aの内周面に沿って、第1回転数よりも低い第2回転数で、ゆっくりと公転する。
【0057】
このように、本実施形態では、フレーム23Aが、遊星歯車26Aと接触する外輪体としての機能を果たしている。ただし、フレーム23Aとは別に、フレーム23Aの内周部に、遊星歯車26Aと接触する環状の外輪体が、別部材として設けられていてもよい。
【0058】
出力回転体30Aは、減速後の第2回転数で、回転軸90Aを中心として回転する。
図1に示すように、本実施形態の出力回転体30Aは、第1円板体31A、第2円板体32A、および複数のピン33Aを有する。
【0059】
第1円板体31Aは、回転軸90Aに対して垂直に配置された、円環状の部材である。第1円板体31Aは、複数の遊星歯車26Aよりも、出力側に配置されている。第1円板体31Aと入力シャフト13Aとの間、および、第1円板体31Aとフレーム23Aとの間には、それぞれボールベアリング60Aが介在する。これにより、第1円板体31Aは、フレーム23Aおよび入力シャフト13Aに対して、相対的に回転自在に支持される。
【0060】
また、第1円板体31Aには、複数のピン33Aを圧入するための複数の被圧入孔311Aが、設けられている。複数の被圧入孔311Aは、回転軸90Aを中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各被圧入孔311Aは、第1円板体31Aを軸方向に貫通する。
【0061】
第2円板体32Aは、回転軸90Aに対して垂直に配置された、円環状の部材である。第2円板体32Aは、複数の遊星歯車26Aよりも、入力側に配置されている。第2円板体32Aと入力シャフト13Aとの間、および、第2円板体32Aとフレーム23Aとの間には、それぞれボールベアリング60Aが介在する。これにより、第2円板体32Aは、フレーム23Aおよび入力シャフト13Aに対して、相対的に回転自在に支持される。
【0062】
また、第2円板体32Aには、複数のピン33Aの入力側の端部を挿入するための、複数の固定用孔321Aが設けられている。複数の固定用孔321Aは、回転軸90Aを中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各固定用孔321Aは、第2円板体32Aを軸方向に貫通する。
【0063】
複数のピン33Aは、第1円板体31Aと第2円板体32Aとを接続する、円柱状の部材である。各ピン33Aは、回転軸90Aと略平行に配置される。複数のピン33Aは、第1円板体31Aの複数の被圧入孔311Aに、それぞれ圧入されるとともに、複数の遊星歯車26Aの挿通孔260Aに、それぞれ挿入される。各ピン33Aの出力側の端部には、拡径されたフランジ部331Aが、設けられている。フランジ部331Aは、第1円板体31Aと軸方向に接触する。これにより、各ピン33Aの入力側への抜けが防止される。また、各ピン33Aの入力側の端部は、第2円板体32Aの固定用孔321Aに挿入され、ナットによって、第2円板体32Aに固定される。
【0064】
複数の遊星歯車26Aが減速後の第2回転数で公転すると、当該動力が各ピン33Aに伝達する。その結果、複数のピン33A、第1円板体31A、および第2円板体32Aが、回転軸90Aを中心として、第2回転数で回転する。
【0065】
このように、本実施形態の減速機1Aは、減速機構の構造は第1実施形態と異なるものの、出力回転体30Aのみに着目すれば、第1実施形態の出力回転体30と類似の構造を有する。各ピン33Aは、被圧入孔311Aの内部に位置する圧入部71Aと、被圧入孔311Aの外部に位置して遊星歯車26Aを支持する支持部72Aと、を有する。このため、第1実施形態と同様に、ピン33Aの圧入部71Aに、強圧入部と軽圧入部とを設ければ、圧入後のピン33Aの傾斜を抑制できる。そして、ピン33Aの傾斜を抑制すれば、複数のピン33Aの各支持部72Aと遊星歯車26Aとを、精度よく組み付けることができる。
【0066】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0067】
図11は、一変形例に係る第1円板体31Bの部分断面図である。
図11の例では、ピン33Bの圧入部71Bの外径は、軸方向の位置によらず一定となっている。これに対し、第1円板体31Bの被圧入孔311Bのうち、軽圧入部712Bに接触する部分の内径Rdは、強圧入部711Bに接触する部分の内径Rcよりも大きくなっている。このように、被圧入孔311Bの内径に変化をつけることで、強圧入部711Bの圧入の締め代よりも、軽圧入部712Bの圧入の締め代を、小さくするようにしてもよい。ただし、加工のしやすさの観点では、被圧入孔の内径よりも、ピンの外径に変化をつける方が、容易である。
【0068】
減速機を構成する各部材の材料には、例えば、高強度の金属を用いればよい。ただし、各部材の材料は、使用時の負荷に耐えうるものであればよく、必ずしも金属には限定されない。
【0069】
また、上記の各実施形態では、フランジ部が、ピンの一部分となっていた。すなわち、ピンの圧入部とフランジ部とが、一繋がりの部材となっていた。しかしながら、フランジ部は、ピンとは別の部材であってもよい。
【0070】
また、上記の各実施形態では、複数のピンの出力側の端部が、第1円板体に対して圧入され、複数のピンの入力側の端部が、第2円板体に対してナットにより固定されていた。しかしながら、複数のピンの入力側の端部が、第2円板体に対して圧入され、複数のピンの出力側の端部が、第1円板体に対してナットにより固定される構造であってもよい。その場合、第2円板体に対して圧入されるピンに、強圧入部と、強圧入部よりも出力側に位置する軽圧入部と、を設ければよい。
【0071】
また、上記の第2実施形態では、太陽輪として太陽歯車を用い、遊星輪として遊星歯車を用いていた。そして、両者の噛み合いによって動力を伝達していた。しかしながら、太陽輪として太陽ローラを用い、遊星輪として遊星ローラを用い、両者の接触による摩擦力によって動力を伝達する構造であってもよい。
【0072】
また、上記の第2実施形態では、フレームの位置が固定され、当該フレームに対して複数のピンが回転していた。しかしながら、複数のピンの位置を固定して、当該複数のピンに対して、フレームが回転するようになっていてもよい。すなわち、フレームとピンとが、回転軸を中心として相対的に回転する構造であればよい。
【0073】
また、減速機の細部の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。