特許第6356517号(P6356517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356517
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】系統監視制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20180702BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H02J3/00 170
   H02J13/00 311R
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-150062(P2014-150062)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-25799(P2016-25799A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 忠義
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝弘
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−304403(JP,A)
【文献】 特開2001−103681(JP,A)
【文献】 特開平09−046894(JP,A)
【文献】 特開2011−061931(JP,A)
【文献】 特開2000−354329(JP,A)
【文献】 特開2006−094611(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0197702(US,A1)
【文献】 特開平6−141467(JP,A)
【文献】 特開平11−289662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配電線のそれぞれが電力系統に接続されており、前記複数の配電線の間に、平常時に開放される融通用開閉器が設けられており、前記複数の配電線のそれぞれが、平常時に投入される複数の配電用開閉器により分割可能な複数の区間を含み、前記複数の配電線の監視および制御を行う系統監視制御装置であって、
前記複数の配電線内の区間に接続されている負荷の消費電力と、前記複数の配電線内の区間に接続されている分散電源の発電電力とを受信する通信部と、
前記複数の配電線内の事故を検出した場合、前記事故が発生した区間を事故区間として特定し、前記事故区間を含む配電線内で前記事故区間以外の区間を復電区間として選択する演算部と、
を備え、
前記通信部は、前記事故区間と前記復電区間の間の配電用開閉器へ開放の指示を送信することにより、前記事故区間と前記復電区間の間を切断し、
前記演算部は、前記複数の融通用開閉器の情報に基づいて、前記複数の配電線の中の前記事故区間として特定された配電線以外の配電線と前記復電区間との間の融通用開閉器を含む融通経路の候補である複数の融通経路候補を決定し、前記複数の融通経路候補のそれぞれの融通経路候補に対し、前記融通経路候補へ供給されている電力の増加可能分である予備力を算出し、前記事故前の前記復電区間内の負荷の消費電力の合計を需要電力として算出し、前記複数の融通経路候補の中で前記需要電力より大きい予備力を有する融通経路候補を融通経路として選択し、
前記通信部は、前記融通経路に含まれる融通用開閉器へ投入の指示を送信することにより、前記融通経路から前記復電区間へ電力を融通
前記融通中、前記演算部は、前記復電区間内の負荷の消費電力の合計から前記復電区間内の分散電源の発電電力の合計を減じた値を前記需要電力として算出し、前記演算部が、前記融通経路の予備力が前記需要電力より小さく、且つ前記複数の融通経路候補の中に、前記需要電力より大きい予備力を有する第一融通経路候補があると判定した場合、前記演算部は、前記第一融通経路候補を前記融通経路として変更し、前記通信部は、前記融通経路の変更に関する融通用開閉器へ指示を送信することにより、前記融通経路を用いて前記復電区間へ電力を融通し、
前記融通中、前記演算部が、前記複数の融通経路候補の中に、前記融通経路の予備力より小さく前記需要電力より大きい予備力を有する第二融通経路候補があると判定した場合、前記演算部は、第二融通経路候補を前記融通経路として変更し、前記通信部は、前記融通経路の変更に関する融通用開閉器へ指示を送信することにより、前記融通経路を用いて前記復電区間へ電力を融通し、
前記融通中、前記演算部が、前記融通経路が前記複数の融通経路候補の中で最小の予備力を有すると判定した場合、前記演算部は、前記復電区間および前記融通経路の何れかに接続されている分散電源の中から対象分散電源を選択し、前記融通経路の予備力および前記需要電力に応じて必要な前記対象分散電源の発電電力を示す制御値を算出し、前記通信部は、前記制御値を含む指示を前記対象分散電源へ送信することにより、前記対象分散電源の発電電力を減少させる
系統監視制御装置。
【請求項2】
前記演算部が、前記融通経路の予備力が前記需要電力より小さく、且つ前記融通経路が前記複数の融通経路候補の中で最大の予備力を有すると判定した場合、前記演算部は、前記需要電力が前記融通経路の予備力以下になるように、対象負荷の需要抑制量を算出し、前記需要抑制量に基づいて、前記復電区間および前記融通経路の何れかに接続されている負荷の中から対象負荷を選択し、前記通信部は、前記対象負荷を有する需要家設備へ、需要抑制を示す指示を送信することにより、前記需要電力を減少させ、
前記融通中、前記演算部が、前記融通経路の予備力が前記需要電力より大きいと判定した場合、前記通信部は、前記対象負荷を有する需要家設備へ、前記需要抑制を解除する指示を送信する、
請求項に記載の系統監視制御装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記複数の融通経路候補のそれぞれの融通経路候補に対し、前記電力系統から前記融通経路候補へ供給されている電力である送電電力と、前記電力系統から前記融通経路候補へ供給可能な最大の電力である最大送電可能電力とを取得し、前記最大送電可能電力から前記送電電力を減じた値を系統予備力として算出し、融通元分散電源から前記融通経路候補へ供給されている電力である発電電力と、前記融通元分散電源から前記融通経路候補へ供給可能な最大の電力である最大発電可能電力とを取得し、前記最大発電可能電力から前記発電電力を減じた値を分散電源予備力として算出し、前記系統予備力と前記分散電源予備力の和を前記予備力として算出する、
請求項1または2に記載の系統監視制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統の監視および制御を行う系統監視制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷と太陽光発電設備などの分散電源とが混在する配電系統において、事故による停電状態が発生した場合、分散電源は安全のために自動的に停止する。その後、事故復旧操作が行われても、分散電源の起動には時間が掛かる。したがって、事故復旧操作の瞬間に過負荷状態となって再停電する恐れがある。
【0003】
特許文献1には、配電線が過負荷状態にならないように、特定需要家の負荷を遮断した状態で、分散電源が存在する配電線の配電線遮断器を投入して事故復旧を行う配電系統監視制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4711651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、分散電源が回復するまで特定需要家の負荷を連系させないため、特定需要家の停電状態が長時間に渡り、不便を強いられる事となる。自動回復機能が有効である小型の分散電源は数分で回復するが、大型の分散電源は管理者により手動で回復されるため、特定需要家の停電状態が数時間に及ぶ場合も考えられる。本発明の目的は、負荷と太陽光発電設備などの分散電源とが混在する配電系統において、事故による停電状態が発生した場合に、各需要家に平等に電力を復電させる電力融通手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の系統監視制御装置は、複数の配電線のそれぞれが電力系統に接続されており、前記複数の配電線の間に、平常時に開放される融通用開閉器が設けられており、前記複数の配電線のそれぞれが、平常時に投入される複数の配電用開閉器により分割可能な複数の区間を含み、前記複数の配電線の監視および制御を行う系統監視制御装置であって、前記複数の配電線内の区間に接続されている負荷の消費電力と、前記複数の配電線内の区間に接続されている分散電源の発電電力とを受信する通信部と、前記複数の配電線内の事故を検出した場合、前記事故が発生した区間を事故区間として特定し、前記事故区間を含む配電線内で前記事故区間以外の区間を復電区間として選択する演算部と、を備える。前記通信部は、前記事故区間と前記復電区間の間の配電用開閉器へ開放の指示を送信することにより、前記事故区間と前記復電区間の間を切断し、前記演算部は、前記複数の融通用開閉器の情報に基づいて、前記複数の配電線の中の前記特定配電線以外の配電線と前記復電区間との間の融通用開閉器を含む融通経路の候補である複数の融通経路候補を決定し、前記複数の融通経路候補のそれぞれの融通経路候補に対し、前記融通経路候補へ供給されている電力の増加可能分である予備力を算出し、前記事故前の前記復電区間内の負荷の消費電力の合計を需要電力として算出し、前記複数の融通経路候補の中で前記需要電力より大きい予備力を有する融通経路候補を融通経路として選択し、前記通信部は、前記融通経路に含まれる融通用開閉器へ投入の指示を送信することにより、前記融通経路から前記復電区間へ電力を融通する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、復電時の過負荷を防止するとともに、停電による需要家の不便を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の配電系統の構成を示す。
図2】配電系統監視制御装置500の機能構成を示す。
図3】電力融通方法計算手段505の動作を示す。
図4】電力融通ルート候補リスト614を示す。
図5】電力融通中電力監視手段511の動作を示す。
図6】電力融通と需要抑制と発電抑制の関係を示す。
図7】最大発電可能電力把握手段507の第一具体例を示す。
図8】最大発電可能電力把握手段507の第二具体例を示す。
図9】最大発電可能電力把握手段507の第三具体例を示す。
図10】第一ケースのタイミングチャートを示す。
図11】第二ケースのタイミングチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、次の用語により表現されることがある。電力系統は、変電所301、配電用変電所302、303、304などに対応する。融通用開閉器は、気中開閉器351、352、352、354、355、356などに対応する。配電用開閉器は、気中開閉器311、312、313、314などに対応する。融通経路は、電力融通ルートなどに対応する。融通経路候補は、電力融通ルート候補などに対応する。予備力は、合計予備力Y1+Y2などに対応する。系統監視制御装置は、配電系統監視制御装置500などに対応する。通信部は、通信部553などに対応する。演算部は、演算部552および記憶部551などに対応する。
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、実施例の配電系統の構成を示す。
【0012】
変電所301は、上位変電所と配電用変電所302、303、304に接続されており、上位変電所からの電圧100kVを66kVに下げて配電用変電所302−304に送電する。以下の説明において配電用変電所302−304から上流を電力系統と呼び、それより下流を配電系統と呼ぶことがある。
【0013】
配電用変電所302は、上位変電所と配電線に接続されており、電圧をさらに6.6kVまで下げて配電線802へ送電する。配電線802上には、所々に配電用の気中開閉器311−314が設置されている。気中開閉器311−314は、平常時はON(投入)であるが、停電発生時に停電区間を最小限の区間に限定する。配電線802のうち、気中開閉器311の下流には、柱上変圧器321を通して、エリア401内の一般家庭の負荷や50kW未満の小型の太陽光発電装置が接続されている。配電線802のうち、気中開閉器312の下流には、受電キュービクル111を通して、エリア402内の50kW以上2MW未満の大型の太陽光発電装置101が接続されている。配電線802のうち、気中開閉器313の下流には、柱上変圧器322を通して、エリア403内の一般家庭の負荷201、202、203や小型の太陽光発電装置102、103が接続されている。なお、1つの柱上変圧器に接続されている一般家庭や太陽光発電装置は、通常、この図に示されている数よりも多いが、ここでは省略している。
【0014】
配電用変電所303は、上位変電所と配電線に接続されており、電圧を6.6kVまで下げて配電線803へ送電する。配電線803には、受電キュービクル112を通して、エリア404内の大型の太陽光発電装置104や工場などの大型の負荷204が接続されている。その下流の配電線803には、柱上変圧器323を通して、エリア405内の一般家庭の負荷や小型の太陽光発電装置105、106が接続されている。
【0015】
配電用変電所304は、上位変電所と配電線に接続されており、電圧を6.6kVまで下げて配電線804へ送電する。
【0016】
配電線802、803の間は、電力融通用の気中開閉器351、352によって接続されている。配電線803、804の間は、電力融通用の気中開閉器353、356によって接続されている。配電線802、804の間は、電力融通用の気中開閉器355によって接続されている。配電線802と、図示しない他の配電線との間は、電力融通用の気中開閉器354によって接続されている。気中開閉器351、352、353、354、355、356は、平常時にはOFF(開放)の状態であり、配電線間は切り離されている。このように平常時には各配電線(支線)が独立していることで、停電発生時の停電箇所を迅速に同定できるという利点がある。
【0017】
配電系統監視制御装置500は、変電所301毎に、変電所301を管理する事業所に設けられていても良いし、中央給電指令所に設けられていても良い。配電系統監視制御装置500は、通信ネットワーク800を介して変電所301に接続されている。配電系統監視制御装置500は更に、通信ネットワーク800を介して、配電用変電所302、302、304、その下流の気中開閉器、一般家庭、太陽光発電装置、受電キュービクル、太陽光発電装置などに接続されている。通信ネットワーク800は、電力線と共に設けられていても良いし、インターネットや無線通信回線など、他の通信回線であっても良い。
【0018】
配電系統監視制御装置500は、管理下の配電線802、803、804内の負荷や発電機から測定値を受信し、測定値に基づいて事故を検出する。更に、配電系統監視制御装置500は、事故の検出時や復旧時において、気中開閉器や太陽光発電装置や負荷へ指令を送信することによりこれらを制御する。太陽光発電装置は、太陽光発電パネルと、太陽光発電パネルにより発電された電力を変換するPCS(Power Conditioning Subsystem)とを含む。PCSは、配電系統監視制御装置500からの指令を受信し、指令に従って配電線へ出力する電力を制御し、電力に関する計測値を配電系統監視制御装置500へ送信する。
【0019】
太陽光発電装置が大量に普及した場合、配電線の電圧や電力系統全体の周波数の変化を低減するために太陽光発電装置の出力を抑制する場合がある。本実施例において、配電系統監視制御装置500は、発電抑制率を指令として太陽光発電装置へ送信することにより、太陽光発電装置の出力を抑制する。
【0020】
配電系統監視制御装置500は、配電線802の電圧に基づいて事故を検出すると、配電線802上のすべての気中開閉器311、312、313、314をOFFにする。その後、配電系統監視制御装置500は、上流の気中開閉器から順にONにすることにより、再び電力が供給される区間を追加し、再度事故が検出された場合、追加された区間を停電区間(事故区間)として特定する。
【0021】
図2は、配電系統監視制御装置500の構成を示す。
【0022】
配電系統監視制御装置500は、例えばコンピュータであり、メモリなどの記憶部551と、CPU(Central Processing Unit)などの演算部552と、NIC(Network Interface Card)などの通信部553とを含む。記憶部551は、配電系統監視制御機能のためのプログラムおよびデータを格納する。演算部552は、記憶部551に格納されているプログラムおよびデータに従って、配電系統監視制御機能を実行する。通信部553は、演算部552からの指示に従って通信ネットワーク800との通信を行う。なお、配電系統監視制御機能のためのプログラムが、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に格納され、コンピュータが記憶媒体からプログラムを読み出しても良い。
【0023】
配電系統監視制御装置500は、機能として、消費電力監視手段501と、分散電源発電電力監視手段502と、区間電力計算手段503と、区間電力データベース504と、電力融通方法計算手段505と、最大発電可能電力把握手段507と、開閉器操作手段508と、発電抑制率設定手段509と、需要抑制率通知手段510と、電力融通中電力監視手段511と、最大送電可能電力把握手段512とを含む。
【0024】
消費電力監視手段501は、負荷201、202、203など、管理下の全区間内の負荷から、通信ネットワーク800および通信部553を介して消費電力の測定値を受信する。分散電源発電電力監視手段502は、太陽光発電装置101、102、103、104、105、106など、管理下の全区間の分散電源から、通信ネットワーク800および通信部553を介して分散電源の発電電力の測定値を受信する。区間電力計算手段503は、区間毎に、区間内の負荷の消費電力の合計である合計消費電力を算出し、区間内の分散電源の発電電力の合計である合計発電電力を算出し、合計消費電力から合計発電電力を減じた値を需要電力として算出する。言い換えれば、或る区間の需要電力は、当該区間が当該区間外から受電する電力である。区間電力計算手段503は、合計消費電力、合計発電電力、需要電力を区間電力データベース504に記録する。
【0025】
消費電力監視手段501、分散電源発電電力監視手段502、区間電力計算手段503の動作は、停電の発生と関係なく、常時一定時間毎に計測し、区間電力データベース504を更新していく。
【0026】
区間電力データベース504は更に、配電線内の気中開閉器と、配電線間の気中開閉器の情報とを格納する。
【0027】
最大送電可能電力把握手段512は、通信ネットワーク800および通信部553を介して、配電用変電所302、303、304のそれぞれから、最大送電可能電力と、現在の送電電力との測定値を受信する。なお、管理者が、電力会社等から通知された最大送電可能電力および送電電力を、最大送電可能電力把握手段512へ入力しても良い。最大発電可能電力把握手段507は、通信ネットワーク800および通信部553を介して、分散電源により発電可能な電力である最大発電可能電力を取得する。最大発電可能電力把握手段507の詳細については後述する。
【0028】
電力融通方法計算手段505は、電力融通を行う際、区間電力データベース504から、電力融通による復電の対象となる区間である復電区間の停電直前の合計消費電力を読み取る。配電線802と柱上変圧器321の間で短絡801が発生したケースにおいて、復電区間は、気中開閉器312、314の間の区間であり、エリア402、403を含む。電力融通方法計算手段505は、電力系統からの最大送電可能電力と、送電電力とを、最大送電可能電力把握手段512から入手する。更に、電力融通方法計算手段505は、復電区間へ電力融通可能な最大発電可能電力を最大発電可能電力把握手段507から入手し、分散電源の発電電力を分散電源発電電力監視手段502から入手する。電力融通方法計算手段505は、これらのデータより、電力融通ルートを選定する。開閉器操作手段508は、選定された電力融通ルートに従い、通信ネットワーク800および通信部553を介して、気中開閉器を操作することにより、電力融通を実行する。これにより、電力系統から融通元の配電線へ導電電力が増加するため、発電抑制率設定手段509は、通信ネットワーク800および通信部553を介して、融通元の配電線内の太陽光発電装置の発電抑制率を減少させる指示を送信する。また、電力融通だけで復電区間の電力を賄えない場合、需要抑制率通知手段510は、通信ネットワーク800および通信部553を介して、復電区間内の負荷、もしくは融通元の配電線に接続されている負荷の消費電力を抑制する指示を送信する。
【0029】
電力融通方法計算手段505の処理が終わると、電力融通中電力監視手段511が動作を開始する。電力融通中電力監視手段511は、電力融通中の合計消費電力と合計発電電力とを監視し、発電抑制率設定手段509、需要抑制率通知手段510を用いて融通元および融通先の配電線の電圧が所定の電圧範囲内になるように調整を行う。また、電力融通中電力監視手段511は、融通する電力を縮小できると判定した場合、電力融通方法計算手段505に処理を戻して、電力融通ルートの再設定を行う。
【0030】
以下、事故を検出した場合に行われる電力融通方法計算手段505の動作について説明する。
【0031】
図3は、電力融通方法計算手段505の動作を示す。
【0032】
工程601で電力融通方法計算手段505は、事故発生に応じて動作を開始する。
【0033】
工程602で電力融通方法計算手段505は、停電箇所の同定を行い、停電区間前後の気中開閉器311、312をOFFとし、配電線802において気中開閉器311、312より上流の開閉器が存在すればONにする。工程603で電力融通方法計算手段505は、気中開閉器の情報に基づいて、復電区間への電力融通ルートの候補である電力融通ルート候補を選定し、電力融通ルート候補リスト614を作成し、電力融通ルート候補の中から一つの電力融通ルートを選択する。
【0034】
図4は、電力融通ルート候補リスト614を示す。
【0035】
電力融通ルート候補リスト614は、電力融通ルート候補毎のエントリを有する。或る電力融通ルート候補のエントリは、電力融通ルート候補を示す候補番号と、当該電力融通ルート候補を接続するために閉じられる気中開閉器を示す開閉器番号と、電力系統からの電力融通の予備力である系統予備力Y1[MW]と、分散電源からの電力融通の予備力である分散電源予備力Y2[MW]と、合計予備力Y1+Y2[MW]とを示す。電力系統または分散電源を供給元とする予備力は、当該供給元から当該電力融通ルート候補へ供給可能な最大の電力から、当該供給元から当該電力融通ルート候補へ供給されている電力を減じた値であり、当該供給元から当該電力融通ルート候補へ供給されている電力の増加可能分である。電力融通ルート候補の合計予備力は、当該電力融通ルート候補へ供給されている電力の増加可能分である。この合計予備力を、電力融通ルート候補から復電区間へ融通する電力に充てることができる。
【0036】
電力融通方法計算手段505は、電力融通ルート候補毎に、最大送電可能電力把握手段512により得られる最大送電可能電力から送電電力を減じた値を、系統予備力Y1として算出する。電力融通方法計算手段505は、電力融通ルート候補毎に、分散電源の最大発電可能電力把握手段507により得られる最大発電可能電力から、分散電源発電電力監視手段502により得られる発電電力を減じた値を、分散電源予備力Y2として算出する。電力融通方法計算手段505は、電力融通ルート候補毎に、系統予備力Y1と分散電源予備力Y2の和を合計予備力として算出する。
【0037】
例えば、工程603で電力融通方法計算手段505は、電力融通ルート候補リスト614の中で最も合計予備力の小さい電力融通ルート候補を電力融通ルートとして選択し、次の工程に進む。工程604で電力融通方法計算手段505は、区間電力データベース504から融通先である復電区間の需要電力D1を求める。ここで、電力融通方法計算手段505は、復電区間内の負荷が復旧し、復電区間内の分散電源は復旧していないとして、復電区間内の合計消費電力を停電前の合計消費電力とし、復電区間内の合計発電電力を0とする。したがって、ここでの需要電力D1は、停電前の復電区間内の合計消費電力に等しい。工程605で電力融通方法計算手段505は、電力融通ルート候補リスト614から電力融通ルートに対応する系統予備力Y1を読み取り、工程606では電力融通ルートに対応する分散電源予備力Y2を読み取り、合計予備力Y1+Y2を算出する。工程607で電力融通方法計算手段505は、復電区間の需要電力D1と合計予備力Y1+Y2の大小比較を行う。
【0038】
工程607においてD1<Y1+Y2と判定された場合(YES)、復電区間の需要電力が電力融通ルートの合計予備力(供給能力)より小さいため、工程612で電力融通方法計算手段505は、配電線803の各所の電圧が所定の電圧範囲内に収まるように融通元の配電線803の分散電源の発電抑制率を再設定する。これにより、電力融通方法計算手段505は、復電区間の需要電力に合わせて、融通元の分散電源の発電を抑制する。その後、工程613で電力融通方法計算手段505は、電力融通ルートに従って開閉器の操作を行い、動作を終了する。このとき、開閉器操作手段508は、電力融通ルートに従って電力融通用の気中開閉器に対し、ONにする指示を送信する。
【0039】
工程607においてD1≧Y1+Y2と判定された場合(NO)、復電区間の需要電力が電力融通ルートの合計予備力以上であるため、工程608で電力融通方法計算手段505は、電力融通ルート候補リスト614の中に電力融通ルートよりも合計予備力の大きい電力融通ルート候補が存在するかどうかを判定する。工程607において合計予備力の大きい電力融通ルート候補が存在すると判定された場合(YES)、工程609で電力融通方法計算手段505は、他の電力融通ルート候補の中で電力融通ルートの次に合計予備力の大きい電力融通ルート候補を新たな電力融通ルートとして選択して工程605に戻る。工程607において合計予備力の大きい電力融通ルート候補が存在しないと判定された場合(NO)、電力融通方法計算手段505は、これ以上合計予備力を拡大できないと判断し、需要抑制を行う。需要抑制対象は、融通先の復電区間に限定されても良いし、融通元の配電線を含んでも良い。
【0040】
需要抑制対象が復電区間である場合、工程610で電力融通方法計算手段505は、需要抑制対象の需要抑制率Rを、D1*R<Y1+Y2を満たすように設定し、工程611で需要抑制率通知手段510は、需要抑制対象の需要家へ需要抑制率、または需要抑制の指示を通知する。負荷毎、または需要家毎に、予め優先度が設定されていても良い。この場合、電力融通方法計算手段505は例えば、需要抑制率または需要抑制量に基づいて、優先度が高い負荷から順に、受電電力が合計予備力より小さくなるまで、需要抑制対象を選択する。その後、電力融通方法計算手段505は、前述の工程612、613を実行して動作を終了する。
【0041】
需要抑制率を通知された需要家は、需要を抑制する。なお、需要抑制率通知手段510が、需要家との契約に基づき、直接、負荷を制御しても良い。
【0042】
以上が電力融通方法計算手段505の動作である。
【0043】
電力融通方法計算手段505の動作によれば、これにより、電力融通ルート候補毎に、融通元の配電線により復電区間へ供給可能な電力を算出し、復電区間における需要電力を算出することにより、融通元の供給能力と融通先の需要に基づいて、電力融通ルートを決定し、過負荷を防止することができる。また、融通元の供給能力が過多である場合、発電抑制により供給能力を減少させることができる。また、融通元の供給能力が不足する場合、需要抑制により需要を減少させることができる。また、過負荷を防ぎつつ、融通元の配電線の数をできるだけ少なく保つことができる。新たな停電区間の特定のためには、融通元として必要のない配電線を独立させておくことが望ましい。したがって、融通元の配電線の数は少ないことが望ましい。また、管理下の融通元および融通先以外の配電線の予備力を最大に保つことができ、その予備力を新たな事故の復電区間への電力融通に用いることができる。
【0044】
以下、電力融通中に行われる電力融通中電力監視手段511の動作について説明する。
【0045】
図5は、電力融通中電力監視手段511の動作を示す。
【0046】
工程702で電力融通中電力監視手段511は、区間電力データベース504から復電区間の現在の合計消費電力を読み出し、復電区間の需要電力D1を計算する。工程703で電力融通中電力監視手段511は、電力融通ルートの合計予備力が、電力融通ルート候補リスト614の中の合計予備力の最大値かどうかを判定する。
【0047】
工程703で電力融通ルートの合計予備力が最大値であると判定された場合(YES)、工程704で電力融通中電力監視手段511は、復電区間の需要電力D1と合計予備力Y1+Y2の大小比較を行う。
【0048】
工程704でD1≧Y1+Y2であると判定された場合(NO)、復電区間の需要電力が電力融通ルートの合計予備力以上であるため、工程705で電力融通中電力監視手段511は、需要抑制率Rを条件D1*R<Y1+Y2となるように設定し、工程706で需要抑制対象の需要家に通知する。工程704でD1<Y1+Y2であると判定された場合(YES)、復電区間の需要電力が電力融通ルートの合計予備力より小さいため、工程707で電力融通中電力監視手段511は、合計予備力を縮小する電力融通ルートの選択が可能か判定する。工程707で設定が可能であると判定された場合(YES)、工程708で電力融通中電力監視手段511は、電力融通ルート候補リスト614の中から合計予備力を縮小する電力融通ルート候補を新たな電力融通ルートとして再選択し、処理をスタートへ戻す。このとき、開閉器操作手段508は、再選択された電力融通ルートに従って、電力融通用の気中開閉器に対し、状態を変更する指示を送信する。工程707で設定が不可能であると判定された場合(NO)、電力融通中電力監視手段511は、処理をスタートへ戻す。電力融通中電力監視手段511は、一定時間毎にスタートから動作する。
【0049】
工程703で電力融通ルートの合計予備力が最大値でないと判定された場合(NO)、工程709で電力融通中電力監視手段511は、復電区間の需要電力D1と合計予備力Y1+Y2の大小比較を行う。
【0050】
工程709でD1<Y1+Y2であると判定された場合(YES)、復電区間の需要電力が電力融通ルートの合計予備力より小さいため、工程710で電力融通中電力監視手段511は、電力融通ルートの合計予備力が、電力融通ルート候補リスト614の中の合計予備力の最小値かどうかを判定する。
【0051】
工程710で電力融通ルートの合計予備力が最小値であると判定された場合(YES)、工程711で電力融通中電力監視手段511は、これ以上、合計予備力を下げられないので、融通元の配電線803内の分散電源の発電抑制率を再設定し、処理をスタートへ戻す。
【0052】
工程710で電力融通ルートの合計予備力が最小値でないと判定された場合(YES)、電力融通中電力監視手段511は、処理を工程707へ移行させる。
【0053】
工程709でD1≧Y1+Y2であると判定された場合(NO)、復電区間の需要電力が電力融通ルートの合計予備力以上であるため、工程712で電力融通中電力監視手段511は、電力融通ルート候補リスト614の中から合計予備力を拡大する電力融通ルート候補を新たな電力融通ルートとして再選択し、処理をスタートに戻す。このとき、開閉器操作手段508は、再選択された電力融通ルートに従って、電力融通用の気中開閉器に対し、状態を変更する指示を送信する
【0054】
停電区間が復旧したことを検出すると、電力融通中電力監視手段511は動作を終了させ、開閉器操作手段508は、気中開閉器311、312をONにすることにより停電区間と復電区間を接続し、電力融通を終了させる。
【0055】
以上の電力融通中電力監視手段511の動作によれば、電力融通中に、電力融通開始から遅れて分散電源が復旧する場合や、太陽光発電のように分散電源の発電電力が変化する場合であっても、分散電源の発電電力の変化に応じて、電力融通ルート、発電抑制率、需要抑制率を変更することができる。
【0056】
以下、電力融通方法計算手段505および電力融通中電力監視手段511により決定される電力融通と需要抑制と発電抑制の関係について説明する。
【0057】
図6は、電力融通と需要抑制と発電抑制の関係を示す。
【0058】
この図の各行は、電力融通方法計算手段505および電力融通中電力監視手段511により決定される需要抑制率と、電力融通ルート候補の合計予備力と、発電抑制率との組み合わせを示す。行が上に行くほど、復電区間の需要電力から電力融通ルートの合計予備力を減じた値(D1−(Y1+Y2))である不足電力が大きい状態を示す。ここでは、5個の電力融通ルート候補が決定され、最大、大、中、小、最小の5段階の合計予備力がそれぞれ算出されたとする。需要抑制率として、大、中、小、なしの4段階の値が設定されるとする。発電抑制率として、大、中、小、なしの4段階の値が設定されるとする。
【0059】
復電区間の需要電力が電力融通ルート候補の中の最大の合計予備力より大きい場合、配電系統監視制御装置500は、電力融通ルート候補の中から最大の合計予備力を有する電力融通ルートを選択して電力融通を行うと共に、復電区間の需要電力と電力融通ルートの合計予備力との差に応じて需要抑制を行い、発電抑制を行わない。この場合、不足電力は正になり、不足電力が大きくなるほど、配電系統監視制御装置500は需要抑制率を大きくする。
【0060】
復電区間の需要電力が電力融通ルート候補の中の最大の合計予備力より小さく、且つ復電区間の需要電力が電力融通ルート候補の中の最小の合計予備力より大きい場合、配電系統監視制御装置500は、復電区間の需要電力に応じて電力融通ルートを選択して電力融通を行い、需要抑制および発電抑制を行わない。この場合、配電系統監視制御装置500は、電力融通ルート候補の中から、復電区間の需要電力以上で最小の合計予備力を有する電力融通ルートを選択する。
【0061】
復電区間の需要電力が電力融通ルート候補の中の最小の合計予備力より小さい場合、配電系統監視制御装置500は、電力融通ルート候補の中から最小の合計予備力を有する電力融通ルートを選択して電力融通を行うと共に、電力融通ルートの合計予備力と復電区間の需要電力との差に応じて発電抑制を行い、需要抑制を行わない。この場合、不足電力は負になり、不足電力が小さくなるほど、配電系統監視制御装置500は発電抑制率を大きくする。
【0062】
以下、最大発電可能電力把握手段507について説明する。
【0063】
現在の太陽光発電装置の殆どは最大電力で発電し、系統に逆潮流を行っている。将来、配電系統に太陽光発電装置が大量普及した場合、系統保護の目的で太陽光発電装置の発電電力を抑制する場合が想定される。発電抑制運転を行っている際、本来発電できる最大電力(=最大発電可能電力)を知る事は一般的には難しい。以下、分散電源の最大発電可能電力を把握するための幾つかの具体例について説明する。
【0064】
図7は、最大発電可能電力把握手段507の第一具体例を示す。
【0065】
ここでは、分散電源900が太陽光発電装置である場合について説明する。第一具体例において、分散電源900は、太陽光発電パネル901と、太陽光発電パネル901の制御や電力変換を行うPCS902と、通信ネットワーク800と接続されている通信装置903と、配電系統と分散電源900の間で送受される電力を示す電力計測器904とを含む。通信装置903は、電力計測器により測定される分散電源の発電電力と、PCS902により算出される分散電源の最大発電可能電力とを配電系統監視制御装置500へ送信する。配電系統監視制御装置500において、分散電源発電電力監視手段502は、各分散電源900から発電電力を受信し、最大発電可能電力把握手段507は、各分散電源900から最大発電可能電力を受信する。
【0066】
分散電源900は更に、日射量計906と、日射量計906および通信装置903に接続されたEMS(Energy Management System)905とを含んでいても良い。この場合、EMS905が日射量に基づいて最大発電可能電力を算出する。
【0067】
分散電源900は、PCS902と通信装置903の間に接続された計算装置907を含んでもいても良い。この場合、計算装置907が最大発電可能電力を算出する。
【0068】
図8は、最大発電可能電力把握手段507の第二具体例を示す。
【0069】
第二具体例において、分散電源900は、太陽光発電パネル901と、PCS902と、通信装置903とを含む。通信装置903は、PCS902の動作電圧および電流と、太陽光発電パネル901のパネル温度などを配電系統監視制御装置500へ送信する。配電系統監視制御装置500は、動作電圧、電流、パネル温度に基づいて、最大発電可能電力を算出する。
【0070】
パネル温度毎に、日射量と最大発電可能電力の関係が予め定められている。日射量が大きくなるほど、最大発電可能電力が大きくなる。また、パネル温度が低いほど、最大発電可能電力は大きくなる。
【0071】
また、日射量毎に、PCS902により太陽光発電パネル901に印加されている動作電圧と、太陽光発電パネル901を流れる電流との関係が予め定められている。この関係によれば、特定の動作電圧で発電電力が最大になる。このときの発電電力を最大発電可能電力とし、発電抑制率に応じてPCS902の動作電圧を変化させることにより発電電力を変化させることができる。
【0072】
したがって、最大発電可能電力把握手段507は、動作電圧、電流、パネル温度から、最大発電可能電力および発電電力を算出することができる。
【0073】
図9は、最大発電可能電力把握手段507の第三具体例を示す。
【0074】
第三具体例において、配電系統監視制御装置500の管理下の各エリアには、通信ネットワーク800に接続された通信装置913と、日射量計916とが設けられている。通信装置913は、日射量計916により測定された日射量の情報を配電系統監視制御装置500へ送信する。配電系統監視制御装置500の最大発電可能電力把握手段507は、受信した日射量の情報に基づいて、各エリアの最大発電可能電力を計算する。
【0075】
第一ケースの動作によれば、太陽光発電装置が大量に普及した場合でも、配電系統監視制御装置500は、停電後に、過負荷を発生させることなく、且つ特定の需要家に不便を強いることなく、復電させることができる。
【0076】
以下、配電系統監視制御装置500の動作の具体例として二つのケースについて説明する。
【0077】
第一ケースとして、配電線802と柱上変圧器321の間で短絡801が発生し、配電線802が停電したとする。配電系統監視制御装置500は、配電線802上のすべての気中開閉器311、312、313、314をOFFにし、気中開閉器311をONにしたときに再び停電するので、気中開閉器311および312の間の区間を停電区間として特定する。配電系統監視制御装置500は、再び気中開閉器311をOFFにする。このままでは配電線802において、停電区間以外の気中開閉器312および314の間の区間も停電したままなので、配電系統監視制御装置500は、この区間を復電区間とする。配電系統監視制御装置500は、停電区間のすぐ下流の気中開閉器312をOFFに保ったまま、その下流の気中開閉器313、314をONにし、電力融通用の気中開閉器352、353をONにすることにより、図1における破線の矢印に示されるように、融通元の配電線803、804から融通先の配電線802の復電区間へ電力を融通する。
【0078】
図10は、第一ケースのタイミングチャートを示す。
【0079】
この図は、復電区間の需要電力と、太陽光発電装置101、102、104、105、106の発電抑制率と、気中開閉器311、312、313、314、314、352、353のそれぞれのON/OFF状態との時間変化を示す。
【0080】
時刻0〜t1の期間は、平常時を表す。このときの復電区間内の負荷である負荷201、202、203の消費電力の合計をP1とする。復電区間の需要電力P2は、P1から、復電区間内の太陽光発電装置101、102、103の発電電力の合計G1を減じた値であり、配電用変電所302から配電線802を介して復電区間が受電している電力である。復電区間の需要電力は、気中開閉器312、314における測定値により測定される。このとき、太陽光発電装置101、102、103の発電抑制率は50%に設定されている。
【0081】
時刻t1において短絡801が発生すると、配電系統監視制御装置500は、停電区間を同定し、電力融通ルートの選定と融通元の発電抑制率の緩和量の算出を行う。このとき、復電区間内の分散電源は復旧していないため、復電区間の需要電力P1は、停電前の消費電力P1に等しい。配電線803、804から配電線802への電力融通ルートが選定されたとする。この場合、融通元の配電線803の太陽光発電装置104、105、106の発電抑制率が緩和される。
【0082】
時刻t2において配電系統監視制御装置500は、各配電線の情報に基づいて電力融通ルートを決定し、決定された電力融通ルートに従って気中開閉器313、314、352、353をONにする。これにより、配電線803、804からの電力融通により復電区間へ再び電力が供給される(復電)。配電系統監視制御装置500は、配電線803、804から配電線802へ経路を電力融通ルート候補とし、電力融通ルート候補の合計予備力を算出し、合計予備力が復電区間の需要電力より大きい電力融通ルート候補を電力融通ルートとして選択する。ここでは、配電線803、804から復電区間への電力融通ルートが選択されている。電力融通の開始により、配電用変電所303からの配電線803の需要電力が大きくなるため、配電系統監視制御装置500は、配電線803に連系している太陽光発電装置104、105、106の発電抑制率を緩和する(減少させる)ことにより、発電電力を増加させる。このケースにおいて、発電抑制率は、50%から0%(抑制なし)へと緩和される。
【0083】
時刻t3において小型の太陽光発電装置102、103が自動復帰し、復電区間の発電電力が増加することにより復電区間の需要電力が低下する。このとき、配電系統監視制御装置500は、配電線803の下流の電圧が所定の電圧範囲を逸脱しないように、太陽光発電装置104、105、106の発電抑制率を求める。このケースにおいて、配電系統監視制御装置500は、太陽光発電装置102、103の復帰に応じて、太陽光発電装置104、105、106の発電抑制率を10%、20%と徐々に大きくしていく。ここで、配電系統監視制御装置500は、太陽光発電装置102、103の発電抑制率も太陽光発電装置104、105、106に合わせる。
【0084】
時刻t4で大型の太陽光発電装置101が復帰すると、復電区間の需要電力が大きく低下する。配電系統監視制御装置500は、配電線804を用いない配電線803から配電線802への電力融通ルート候補の合計予備力を算出する。復電区間の需要電力が、この電力融通ルート候補の合計予備力を下回ると、配電系統監視制御装置500は、この電力融通ルート候補を電力融通ルートとして選択し、気中開閉器353をOFFにすることにより、配電線804から配電線802への電力融通を停止し、配電線803から配電線802への電力融通だけを継続する。このとき、配電系統監視制御装置500は、融通元の配電線803内の各所の電圧が所定の電圧範囲を逸脱しないように、太陽光発電装置101、102、103、104、105、106の発電抑制率を求める。このケースにおいて、配電系統監視制御装置500は、これらの発電抑制率を20%のままに維持している。
【0085】
配電線803、804から配電線802へ電力を融通する場合や、配電線804から配電線803へ電力を融通する場合、配電系統監視制御装置500は、電力融通用の気中開閉器356をONにしても良い。配電線804から配電線802へ電力を融通し、且つ配電線803から配電線802へ電力を融通しない場合、配電系統監視制御装置500は、電力融通用の気中開閉器355をONにしても良い。配電線802において、気中開閉器311の上流に停電区間がある場合、配電系統監視制御装置500は、電力融通用の気中開閉器351をONにしても良い。
【0086】
以上の第一ケースの動作によれば、配電線802に短絡801が発生した場合に、融通元の配電線803、804から融通先の復電区間へ電力融通を行うことにより、融通元の過負荷状態を防ぎつつ、復電区間における停電から復電までの時間を短縮することができる。
【0087】
第二ケースは、第一ケースと同様の短絡801が発生し、停電前の復電区間の消費電力が第一ケースより大きいケースである。配電系統監視制御装置500は、復電時に電力融通用の気中開閉器352、353、354をONにし、配電線803、804と外部の配電線とから、配電線802へ電力融通を行う。
【0088】
図11は、第二ケースのタイミングチャートを示す。
【0089】
時刻t2までは第一ケースと同様である。
【0090】
時刻t2において気中開閉器313、314、352、353、354がONになっても復電区間の需要電力が電力融通ルートの合計予備力を上回るため、需要抑制が必要となる。このケースでは、復電区間であるエリア402、403を需要抑制対象とするが、電力融通ルートに関連する区間全域(融通元と融通先)を抑制対象としても良い。停電発生時には復電区間の需要電力が0なので、需要抑制率を100%と表現する。時刻t2で配電系統監視制御装置500は、復電区間の需要抑制率を50%に設定し、過負荷を予防する。配電系統監視制御装置500は、管理下の負荷毎に、需要家により設定される優先度を記憶する。配電系統監視制御装置500は、需要抑制率を満たすまで、優先度が高い順に負荷を需要抑制対象として選択する。配電系統監視制御装置500は、需要抑制対象を直接制御して需要抑制対象の消費電力を低減してもよい。また、配電系統監視制御装置500は、需要抑制対象の通知を、需要家に通知し、需要家が通知に応じて需要抑制対象の抑制率を設定してもよい。
【0091】
時刻t3で小型の太陽光発電装置102、103が自動復帰し、復電区間の発電電力が増加する。これに伴い、配電系統監視制御装置500は、復電区間の需要抑制率を減少させる。
【0092】
時刻t4で大型の太陽光発電装置101が復帰すると、復電区間の需要電力が大きく低下する。復電区間の需要電力が、配電線803から配電線802への電力融通ルート候補の合計予備力を下回ると、配電系統監視制御装置500は、気中開閉器354をOFFにすることにより、外部の配電線から気中開閉器354を介して配電線802への電力融通を停止し、配電線803から配電線802への電力融通だけを継続する。このとき、配電系統監視制御装置500は、融通元の配電線803内の各所の電圧が所定の電圧範囲を逸脱しないように、太陽光発電装置101、102、103、104、105、106の発電抑制率を求める。このケースにおいて、配電系統監視制御装置500は、これらの発電抑制率を10%に設定する。
【0093】
以上の第二ケースの動作によれば、停電後に、過負荷を発生させることなく、且つ需要家の不便を最小限にして、復電させることができる。
【0094】
本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、その趣旨から逸脱しない範囲で、他の様々な形に変更することができる。
【符号の説明】
【0095】
101、102、103、104、105…太陽光発電装置 111、112…受電キュービクル 201、202、203、204…負荷 301…変電所 302、303、304…配電用変電所 311、312、313…気中開閉器 321、322、323…柱上変圧器 351、352、353、354、355、356…気中開閉器 500…配電系統監視制御装置 800…通信ネットワーク 802、803、804…配電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11