特許第6356542号(P6356542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6356542発藻促進装置及び結露水の影響の確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356542
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】発藻促進装置及び結露水の影響の確認方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-177184(P2014-177184)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-49068(P2016-49068A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】島根 則明
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−022647(JP,A)
【文献】 特開平04−249764(JP,A)
【文献】 特開昭49−127688(JP,A)
【文献】 実開昭51−037991(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00−19/10
C12M 1/00−3/10
A01G 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱伝導性素材で構成された容器と、
前記容器の外表面に裏面が貼着された試験体と、を備え、
前記容器内の冷却水または冷気によって前記試験体の前記裏面を冷却し、前記試験体の表面温度を露点温度以下とすることで前記試験体の表面に結露現象を発生させて、前記試験体における藻の発生を促進することを特徴とする発藻促進装置。
【請求項2】
前記試験体は、板状の基板と前記基板の表面に塗布された塗膜とを有し、
前記結露現象は前記試験体の塗膜面に発生することを特徴とする請求項1に記載の発藻促進装置。
【請求項3】
記容器の内部には、前記冷却水が貯留されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発藻促進装置。
【請求項4】
記容器の内部には、前記冷気が流通することを特徴とする請求項1または2に記載の発藻促進装置。
【請求項5】
高熱伝導性素材で構成された容器の外表面に試験体の裏面を貼着する工程と、
前記容器の内部に冷却水を貯留するまたは冷気を流通させる工程と、を有し、
前記容器内の冷却水または冷気によって試験体の裏面を冷却し、前記試験体の表面温度を露点温度以下とすることで前記試験体の表面に結露現象を発生させて、前記試験体における藻の発生を促進することを特徴とする結露水の影響の確認方法。
【請求項6】
前記試験体は、板状の基板と前記基板の表面に塗布された塗膜とを有し、前記結露現象を前記試験体の塗膜面に発生させることを特徴とする請求項5に記載の結露水の影響の確認方法。
【請求項7】
位が前記試験体の略中間位置となるように前記容器に前記冷却水を貯留する工程と、
所定時間経過後に前記試験体における前記水位以下の領域と前記水位以上の領域とを目視により対比する工程と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の結露水の影響の確認方法。
【請求項8】
異なる材質または異なる層構成を有する複数の前記試験体を前記容器の外表面に貼着して、複数の前記試験体の表面を目視により対比することを特徴とする請求項5または6に記載の結露水の影響の確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験体における発藻を促進させる発藻促進装置、及び、試験体に対する結露水の影響の確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような分野の技術として、下記特許文献1がある。特許文献1には、壁面試験体を垂直または傾斜状態に立設して取り付ける架台と、栄養水を散水する散水手段とを有し、散水した栄養水を壁面試験体の表面に流下せしめて藻類の発生を促進させる外壁汚れ試験装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−022647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の装置では、散水手段によって栄養水を散水し流下させるため、給水や排水処理の設備が必要になる。そのため、装置が大がかりなものとなりコストがかさむという問題や、装置の設置の自由度が低いという問題があった。また、実環境では発藻しない壁面試験体でも栄養水を散布すると発藻してしまうという問題もあった。
【0005】
本発明は、より簡易な構成で、設置位置の自由度も高い発藻促進装置、及び、この装置を用いた結露水の影響の確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発藻促進装置は、高熱伝導性素材で構成された容器と、容器の外表面に裏面が貼着された試験体と、を備え、容器内の冷却水または冷気によって試験体の裏面を冷却し、試験体の表面温度を露点温度以下とすることで試験体の表面に結露現象を発生させて、試験体における藻の発生を促進することを特徴とする。
【0007】
この発藻促進装置によれば、結露現象により試験体上に結露水を発生させ、この結露水により、試験体における藻の発生が促進される。よって、従来行われていた散水等は不要であり、より簡易な構成で、設置位置の自由度も高い発藻促進装置が実現される。また、実環境に存在する藻の発育助長要因のうちの水分のみを結露水として供給し発育を促進するため、試験体の持っている本来の発藻に対する抵抗性を評価することができる。
【0008】
試験体は、板状の基板と基板の表面に塗布された塗膜とを有し、結露現象は試験体の塗膜面に発生する。この場合、試験体が基板と塗膜とを有し、試験体の塗膜面に結露現象が発生するため、塗膜の違いまたは基板の違いに応じた発藻状態が実現され、試験体の発藻し易さ、または発藻し難さを容易に試験することができる。
【0009】
上記の装置において、容器の内部には、冷却水が貯留されている。この場合、容器は高熱伝導性素材で構成されるため、容器内の冷却水によって、容器の壁部を介して試験体の裏面が冷却され易い。試験体の裏面が冷却されることにより、試験体に結露水を発生させることができる。このように、容器に冷却水を貯留するという簡易な構成で、発藻促進装置が実現される。
【0010】
上記の装置において、容器の内部には、冷気が流通する。この場合、容器は高熱伝導性素材で構成されるため、容器内の冷気よって、容器の壁部を介して試験体の裏面が冷却され易い。試験体の裏面が冷却されることにより、試験体に結露水を発生させることができる。このように、容器に冷気を流通させるという簡易な構成で、発藻促進装置が実現される。
【0011】
本発明の結露水の影響の確認方法は、高熱伝導性素材で構成された容器の外表面に試験体の裏面を貼着する工程と、容器の内部に冷却水を貯留するまたは冷気を流通させる工程と、を有し、容器内の冷却水または冷気によって試験体の裏面を冷却し、試験体の表面温度を露点温度以下とすることで試験体の表面に結露現象を発生させて、試験体における藻の発生を促進することを特徴とする。
【0012】
この結露水の影響の確認方法によれば、結露現象により試験体上に結露水を発生させ、この結露水により、試験体における藻の発生が促進される。よって、従来行われていた散水等は不要であり、より簡易な構成で、設置位置の自由度も高い発藻促進装置が実現され、この装置を用いて、試験体に対する結露水の影響を容易に確認することができる。
【0013】
試験体は、板状の基板と基板の表面に塗布された塗膜とを有し、結露現象を試験体の塗膜面に発生させる。この場合、試験体が基板と塗膜とを有し、試験体の塗膜面に結露現象が発生するため、塗膜の違いまたは基板の違いに応じた発藻状態が実現され、試験体の発藻し易さ、または発藻し難さを容易に試験することができる。特に、複数の試験体に関して、結露水の影響を容易に確認することができる。
【0014】
上記の方法は、水位が試験体の略中間位置となるように容器に冷却水を貯留する工程と、所定時間経過後に試験体における水位以下の領域と水位以上の領域とを目視により対比する工程と、を含む。この場合、容器は高熱伝導性素材で構成されるため、容器内の冷却水によって、容器の壁部を介して試験体の裏面のうち水位以下の領域が冷却され易い。試験体の裏面のうち水位以下の領域が冷却されることにより、試験体の水位以下の領域に結露水を発生させることができる。このように、容器に冷却水を貯留するという簡易な方法で、試験体に対する結露水の影響を確認することができる。特に、試験体の水位以下の領域には結露水が発生し易く、試験体の水位以上の領域には結露水が発生し難い。よって、一個の試験体に対して、領域ごとに異なる結露現象を生じさせることができ、結露水の影響を効率的に試験することができる。
【0015】
上記の方法において、異なる材質または異なる層構成を有する複数の試験体を容器の外表面に貼着して、複数の試験体の表面を目視により対比する。この場合、容器は高熱伝導性素材で構成されるため、容器内の冷却水または冷気よって、容器の壁部を介して試験体の裏面が冷却され易い。試験体の裏面が冷却されることにより、試験体に結露水を発生させることができる。このように、容器に冷却水を貯留するまたは冷気を流通させるという簡易な方法で、試験体に対する結露水の影響を確認することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より簡易な構成で、設置位置の自由度も高く、実態に即した発藻促進装置が実現される。また、この装置を用いて、試験体に対する結露水の影響を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る発藻促進装置の斜視図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3】(a)および(b)は、異なる試験体を用いて発藻試験を行った場合における、発藻状態の例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る発藻促進装置の斜視図である。
図5】2種類の試験体を用いて発藻試験を行った場合における、発藻状態の例を示す図である。
図6】第1実施形態の変形例に係る発藻促進装置の試験体周辺部を示す斜視図である。
図7】第1実施形態の他の変形例に係る発藻促進装置の試験体周辺部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、発藻促進装置1について説明する。図1に示されるように、発藻促進装置1は、直方体状の容器2と、容器2に貯留された冷却水3とを備える。容器2は、高熱伝導性素材で構成されており、その上面が開口されている。容器2は、ガラス製であってもよく、鉄、銅またはアルミ等の金属製であってもよい。容器2の側面を構成する壁部2aの外表面2bには、薄板状の試験体4が貼着されている。冷却水3の水位5は、試験体4の鉛直方向の略中間位置となるように、容器2内に貯留されている。容器2は、水を供給するための給水口2cおよび給水管15と、余剰の水を排出し水位を一定に保つための排水口2dおよび排水管16とを備える。
【0020】
図2に示されるように、試験体4は、薄板状の基板6と、基板6の表面に塗布された塗膜7とを有する。容器2の外表面2bには、基板6の裏面6c(すなわち試験体4の裏面4c)が貼着されている。試験体4の基板6は、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。基板6は、たとえば、建物の壁面に用いられる材料からなる。塗膜7は、特に限定されるものではないが、たとえばアクリルエマルション系、アクリル溶剤系、コロイダルシリカ系、有機無機ハイブリッド系、光触媒系等の塗料からなる。言い換えれば、塗膜7は、建物の壁面に用いられる塗料からなる。このような2層構成を有する試験体4は、たとえば接着剤によって容器2の外表面2bに貼着される。なお、試験体4の層構成は、上記した構成に限られるものではない。
【0021】
発藻促進装置1では、冷却水3の水位5が試験体4の略中間位置となるように設定されているので、試験体4は、水位5以下の領域である下部表面(塗膜面)4aと、水位5以上の領域である上部表面(塗膜面)4bとを有することになる。
【0022】
容器2内の冷却水3は、試験体4の下部表面4aの温度を露点温度以下に冷却できる温度に設定されている。冷却水3には、冷温を維持できるように冷却器を設けてもよく、冷却器を設けなくてもよい。冷却水3として、たとえば井戸水を用いてもよい。冷却水3は、同じ水を貯留したままでもよく、貯留される水が入れ替わるように水を常時給水し続けてもよいし、電磁弁とタイマーを用いて水の供給時間や供給量を制御できるようにしても良い。冷却水3によって、試験体4の下部表面4aには、結露現象が発生し、結露水8が、たとえば水滴となって付着する。すなわち、発藻促進装置1では、試験体4上の結露現象を利用している。
【0023】
図1及び図2に示されるように、発藻促進装置1では、試験体4が、冷却水3によって冷却される下部の部分と冷却水3によって直接は冷却されない上部の部分とを有するため、下部表面4aには結露水8が形成され易く、上部表面4bには結露水8が形成され難くなっている。下部表面4aには、結露水8が一様に形成される。
【0024】
次に、図3を参照して、結露水の影響の確認方法について説明する。発藻促進装置1を用いた結露水の影響の確認方法では、まず、容器2の外表面2bに試験体4の裏面4cを貼着する。次に、水位5が試験体4の略中間位置となるように、容器2に冷却水3を貯留する。次に、冷却水3を貯留してから所定時間経過後に、試験体4の下部表面4aと上部表面4bとを目視により対比する。なお、試験体4を貼着する工程と、冷却水3を貯留する工程の順序は、上記の順序と逆であってもよい。
【0025】
図3(a)及び図3(b)は、異なる試験体4A,4Bを用いて発藻試験を行った場合における、発藻状態の例を示す図である。試験体4Aと試験体4Bとでは、基板6の材質若しくは組成・成分等が異なっていてもよいし、塗膜7における塗料若しくは塗布厚さが異なっていてもよい。図3(a)に示されるように、試験体4Aの下部表面4aには、結露水8の大部分を覆うようにして藻Aが発生している。試験体4Aの上部表面4bには、ほとんど藻Aが発生していない。一方、図3(b)に示されるように、試験体4Bの下部表面4aには、僅かに藻Aが発生している。試験体4Bの上部表面4bには、ほとんど藻Aが発生していない。以上の結果から、試験体4Aよりも試験体4Bの方が、藻Aを発生させ難いことがわかる。
【0026】
このようにして、試験体4Aおよび試験体4Bの下部表面4aに結露現象を発生させることにより、試験体4Aおよび試験体4Bにおける発藻を促進する。そして、図3(a)及び(b)に示されるような目視確認を行うことにより、試験体4A,4Bに対する結露水の影響を確認することができる。
【0027】
発藻促進装置1および発藻促進装置1を用いた結露水の影響の確認方法によれば、結露現象により試験体4上に結露水8を発生させ、この結露水8により、試験体4における藻Aの発生が促進される。よって、従来行われていた散水等は不要であり、より簡易な構成で、設置位置の自由度も高い発藻促進装置1が実現され、この発藻促進装置1を用いて、試験体4(たとえば、試験体4A,4B)に対する結露水8の影響を容易に確認することができる。
【0028】
また、試験体4が基板6と塗膜7とを有し、試験体4の塗膜面である下部表面4aに結露現象が発生するため、塗膜7の違い(たとえば、塗料若しくは塗布厚さ等)または基板6の違い(たとえば、材質若しくは組成等)に応じた発藻状態が実現され、試験体4の発藻し易さ、または発藻し難さを容易に試験することができる。特に、複数の試験体4(たとえば、試験体4A,4B)に関して、結露水8の影響を容易に確認することができる。
【0029】
また、容器2は高熱伝導性素材で構成されるため、容器2内の冷却水3によって、容器2の壁部2aを介して試験体4の裏面4cのうち水位5以下の領域が冷却され易い。試験体4の裏面4cのうち水位5以下の領域が冷却されることにより、試験体4の下部表面4aに結露水8を発生させることができる。このように、容器2に冷却水3を貯留するという簡易な構成かつ方法で、試験体4に対する結露水8の影響を確認することができる。特に、試験体4の水位5以下の領域である下部表面4aには結露水8が発生し易く、試験体4の水位5以上の領域である上部表面4bには結露水8が発生し難い。よって、一個の試験体4に対して、領域ごとに異なる結露現象を生じさせることができ、結露水8の影響を効率的に試験することができる。なお、発藻促進装置1に対して、複数枚の試験体4を貼着することもできる。その場合、異なる試験体4における発藻促進を同時に行うことができ、異なる試験体4に対する結露水8の影響を同時に確認することができる。
【0030】
図4を参照して、第2実施形態に係る発藻促進装置10について説明する。発藻促進装置10が第1実施形態の発藻促進装置1と違う点は、上面が開口された容器2に代えて、金属製の容器2Aを備えた点と、容器2A内に冷気を送り込むための冷風発生装置12を備えた点である。容器2Aは、高熱伝導性素材で構成されていればよく、たとえばガラス製であってもよい。冷風発生装置12は、たとえば空気冷却装置およびブロワ等を有している。
【0031】
容器2Aは、6面に壁部2aを有して閉じた空間を形成する容器であり、その一方の側面に一本の通気管11を有しており、その他方の側面に一本の排気管13を有している。冷風発生装置12は通気管11を通じて容器2A内に冷気を流通させる。冷気は、容器2A内に所定時間滞留して壁部2aを冷却し、排気管13を通じて容器2Aから排出される。容器2Aの外表面2bには、複数の試験体4A,4Bの裏面4cを貼着することができる。なお、図4では2枚の試験体4A,4Bを貼着する例について示しているが、2枚に限られず、1枚であってもよく、3枚以上であってもよい。
【0032】
発藻促進装置10では、試験体4の表面4dの温度を露点温度以下に冷却できるように、冷気が流通される。これにより、試験体4A,4Bのそれぞれが均一に冷却されるので、試験体4A,4Bのそれぞれにおいて、表面4dに略一様に結露水8が発生する。
【0033】
この発藻促進装置10を用いた結露水の影響の確認方法では、容器2内に冷気を流通させながら、複数の試験体4(たとえば、試験体4A,4B)の表面4dを目視により対比する。その結果、図5に示されるように、たとえば、試験体4Aの表面4dには結露水8の大部分を覆うようにして藻Aが発生し、試験体4Bの表面4dには僅かに藻Aが発生する。
【0034】
このような発藻促進装置10および発藻促進装置10を用いた結露水の影響の確認方法によっても、発藻促進装置1と同様の作用・効果が奏される。また、容器2Aに冷気を流通させるという簡易な構成かつ方法で、試験体4(たとえば、試験体4A,4B)に対する結露水8の影響を確認することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、発藻促進装置1において、冷却水3の水位5は試験体4の中間位置である場合に限られず、試験体4の中間位置よりも上であってもよい。試験体4の上方に水位5を設定することにより、試験体4の全体を冷却することができ、第2実施形態の発藻促進装置10と同様の効果が得られる。
【0036】
また、発藻促進装置10において、容器2Aの内部に冷却水3を貯留してもよい。この場合も、上記したのと同様の作用・効果を得ることができる。
【0037】
また、発藻促進装置1において、試験体4は、容器2Aの壁部2aに貼着される場合に限られず、容器2Aの壁部2aの一部を構成するように設置されてもよい。すなわち、図6に示されるように、容器2Aは、壁部2aの一部に切欠部21を設け、切欠部21の周縁部に沿って枠体22が固定された構成としてもよい。この場合、切欠部21および枠体22は、試験体4の側辺および下辺に沿った形状(上方が開放された矩形状)とすることができる。枠体22は、容器2Aの外側に突出するようにして壁部2aに取り付けられており、試験体4の周縁部が嵌め込まれる溝を有している。試験体4は、たとえば下方にスライドされて、枠体22の溝にはめ込まれる。枠体22と試験体4との間には、定型の止水材23が介装される。試験体4の裏面は、容器2内に貯留された冷却水に直接触れ、試験体4の表面は、枠体22から露出する。試験体4は、水圧によって止水材23に押し付けられる。これにより、試験体4の表面と止水材23の間で止水が図られる。
【0038】
上記の構成によれば、試験体4が直接冷却水3に触れるので、結露をより促進することができる。また、試験体4が壁部2aに貼着されていないので、結露水により接着力が低下して試験体4が剥がれ落ちるといったことがない。しかも、試験体4を枠体22に対してスライドさせるだけで試験体4を設置または取り外しできるため、試験体4の交換作業が容易である。
【0039】
壁部2aの一部に切欠部21および枠体22を設ける構成において、図7に示されるように、壁部2aと試験体4との間に定型の止水材24を介装し、試験体4の周縁部に沿ってフラットバー25が配置された構成を採用してもよい。この場合、フラットバー25を介して、ねじ部材(たとえば枠体22の外面側に設けられたボルト28およびナット27)により、止水材24に対して試験体4を機械的に押圧してもよい。このような構成によっても、試験体4の裏面と止水材24の間で止水が図られ、上記と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0040】
1,10…発藻促進装置、2…容器、2a…壁部、2b…外表面、3…冷却水、4…試験体、4a…下部表面(水位以下の領域)、4b…上部表面(水位以上の領域)、4c…裏面、4d…表面、5…水位、6…基板、7…塗膜、8…結露水、A…藻。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7