(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム組成物を用いて作製されたビードエイペックス、クリンチエイペックス及び導電部材からなる群より選択される少なくとも1種の部材を有する空気入りタイヤである請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の空気入りタイヤは、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体(以下においては、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ともいう)の共役ジエン部が水素添加され、水素添加率が75モル%以上である水添共重合体を、ゴム成分100質量%中に75質量%以上含み、体積固有抵抗が1.0×10
10Ω・cm以下であるゴム組成物を用いて作製したものである。
【0019】
本発明におけるゴム組成物は、体積固有抵抗を1.0×10
10Ω・cm以下とすることで、電気伝導性を確保できる(静電気の蓄積を防止できる)だけでなく、共役ジエン部の水素添加率を75モル%以上とした特定の水添共重合体をゴム成分100質量%中に75質量%以上含むことで、ゴム破壊強度、低燃費性及び操縦安定性を良好に改善できる。その結果、電気伝導性、ゴム破壊強度、低燃費性及び操縦安定性(特に、ゴム破壊強度)を顕著に改善できる。
【0020】
本発明におけるゴム組成物は、ゴム成分として、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の共役ジエン部が水素添加された水添共重合体を含んでいることを特徴としている。
【0021】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点及び本発明の効果がより好適に得られるという理由からスチレンが特に好ましい。
【0022】
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点及び本発明の効果がより好適に得られるという理由から1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0023】
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体としては、スチレン及び1,3−ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)が好ましい。従って、水添共重合体としては、水添スチレンブタジエン共重合体が好ましい。
【0024】
上記スチレンブタジエン共重合体は、スチレン及び1,3−ブタジエンを共重合させるものである限り、共重合させる順序に特に限定はなく、ランダム共重合でもブロック共重合でもよいが、ランダム共重合が好ましい。スチレンブタジエン共重合体以外の芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の場合も同様である。
【0025】
水添共重合体の水素添加率(芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の共役ジエン部に対して水素添加された割合)は75モル%以上であり、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは93モル%以上である。水素添加率が75モル%未満では、低燃費性及び操縦安定性の改善が困難である。また、水添共重合体の水素添加率は、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下である。水素添加率が99モル%を超えると、ゴム組成物が硬くなるおそれがある。
なお、水素添加率は、H
1−NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0026】
水添共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200,000以上、より好ましくは400,000以上である。Mwが200,000未満では、良好なゴム破壊強度が得られないおそれがある。また、水添共重合体のMwは、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下であり、更に好ましくは700,000以下である。Mwが2,000,000を超えると、加工性が低下する傾向がある。
【0027】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0028】
水添共重合体が水添スチレンブタジエン共重合体である場合、水添スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは25質量%以上である。スチレン含有量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、水添スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。スチレン含有量が40質量%を超えると、充分なゴム破壊強度が得られず、低燃費性も悪化するおそれがある。スチレン含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、スチレン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0029】
上記水添共重合体のムーニー粘度(ML
1+4、100℃)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、50以上が好ましく、70以上がより好ましく、80以上が更に好ましく、また、140以下が好ましく、120以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。
なお、水添共重合体のムーニー粘度(ML
1+4、100℃)は、後述の実施例の記載の方法により測定される。
【0030】
上記水添共重合体は、粘弾性測定チャートにおけるtanδ(損失正接)のピークが−40℃以上30℃以下に単一に表れるものであることが好ましい。tanδのピークが複数存在すると、ポリマー構成ユニットがブロック化してポリマー中に非相溶成分が複数存在することになり、耐破壊性が低下する傾向がある。また、tanδピーク温度が−40℃未満であると剛性が劣る傾向があり、30℃超であると低燃費性に劣る傾向がある。tanδピーク温度は、−35℃以上であることがより好ましく、−30℃以上であることが更に好ましい。また、tanδピーク温度は、20℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることが更に好ましく、0℃以下であることが特に好ましい。
【0031】
水添共重合体のtanδピーク温度は、次の条件で測定することができる。すなわち、所定サイズの試験片(加硫水添共重合体)を作製し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で温度−100〜100℃のtanδの温度分散曲線を測定し、温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度をtanδピーク温度とする。なお、上記試験片は、未加硫の水添共重合体を160℃で20分間間プレス加硫し、加硫サンプルを作製することにより得られる。
【0032】
上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を重合して得られた重合体に水素添加処理を施すことで合成でき、具体的には以下の方法で合成できる。
【0033】
<共重合体の製造方法>
(重合方法)
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0034】
溶液重合法を用いた場合には、溶媒中のモノマー濃度(スチレンブタジエン共重合体の場合はスチレン、1,3−ブタジエンの合計)は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる共重合体の量が少なく、コストが高くなる傾向がある。また、溶媒中のモノマー濃度は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。溶媒中のモノマー濃度が50質量%をこえると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0035】
(アニオン重合における重合開始剤)
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。前記有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルーフェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性等の観点からn−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0036】
(アニオン重合の方法)
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、例えばブチルリチウムを重合開始剤とし、必要に応じてランダマイザーの存在下でスチレン及び1,3−ブタジエン等をアニオン重合させることにより、スチレンブタジエン共重合体等の目的の共重合体を得ることができる。
【0037】
(アニオン重合における炭化水素系溶剤)
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
(アニオン重合におけるランダマイザー)
また、前記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1,2−結合、イソプレンにおける3,4−結合の増加など、あるいは共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばスチレンブタジエン共重合体におけるスチレン単位、ブタジエン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、ランダム化しにくい傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量をこえると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、逆にランダム化しにくくなる傾向がある。
【0039】
(反応温度)
アニオン重合の際の反応温度は、好適に反応が進行する限り特に限定はないが、通常−10℃〜100℃であることが好ましく、25℃〜70℃であることがより好ましい。
【0040】
(反応停止)
上記アニオン重合は、この分野で通常使用する反応停止剤の添加により、停止させることができる。そのような反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは酢酸などの活性プロトンを有する極性溶媒およびこれらの混液、またはそれらの極性溶媒とヘキサン、シクロヘキサンなどの無極性溶媒との混液が挙げられる。反応停止剤の添加量は、通常、アニオン重合開始剤に対し、同モル量もしくは2倍モル量程度で充分である。
【0041】
(カップリング)
上記共重合体の製造方法においては、単量体の重合開始から、後述する重合体の回収までに、共重合体の炭化水素溶液にカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、下記式(1−1)で表される化合物を挙げることができる。
R
1aML
4−a (1−1)
(式(1−1)中、R
1はアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基またはアリール基を表し、Mはケイ素原子またはスズ原子を表し、Lはハロゲン原子またはヒドロカルビルオキシ基を表し、aは0〜2の整数を表す。)
【0042】
上記式(1−1)で表されるカップリング剤としては、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化スズ、メチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、トリメチルクロロスズ、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエトキシジエチルシランなどを挙げることができる。
【0043】
カップリング剤の添加量は重合体の加工性を高めるために、アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属1mol当たり、好ましくは0.03mol以上、より好ましくは0.05mol以上である。また低燃費性を高めるために、好ましくは0.4mol以下、より好ましくは0.3mol以下である。
【0044】
(水素添加方法)
水添共重合体の製造方法においては、これまでに説明した共重合体を水素添加して、水素添加率が75モル%以上の水添共重合体を得る。共重合体を水素添加することによって、耐熱性が向上するという利点がある。また、水素添加率が低いと、低燃費性及び操縦安定性の改善効果が充分に得られない。
【0045】
水素添加の方法、反応条件については特に限定はなく、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4〜11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
【0046】
これらのうち、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。更に、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特に、チタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は、安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。具体的な例として、例えば、特開平1−275605号公報、特開平5−271326号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−222115号公報、特開平11−292924号公報、特開2000−37632号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭63−5401号公報、特開昭62−218403号公報、特開平7−90017号公報、特公昭43−19960号公報、特公昭47−40473号公報に記載の水添触媒を挙げることができる。なお、これらの水添触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
ゴム成分100質量%中の水添共重合体の含有量は、75質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。水添共重合体の含有量が75質量%未満であると、ゴム破壊強度、低燃費性及び操縦安定性(特に、ゴム破壊強度)の改善効果が得られにくい傾向がある。
【0048】
特に、上記水添共重合体が水添スチレンブタジエン共重合体である場合、ゴム成分100質量%中の水添スチレンブタジエン共重合体の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
【0049】
上記水添共重合体以外に使用できるその他のゴム成分としては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、従来のスチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、熱可塑性エラストマー(TPE)などが挙げられる。これらは、変性されていても良く、単独で用いても2種以上を併用してもよい。上記ゴム成分のなかでは、水添共重合体との相溶性が良いことから、SBR、SIBR、芳香族ビニル成分をハードセグメントとするTPE等が好ましい。
【0050】
本発明におけるゴム組成物は、充填剤を更に含むことが好ましい。本明細書において、充填剤は、ゴムの補強を目的にゴム組成物に配合されるものであり、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタン、マイカ等の白色充填剤;カーボンブラック等が挙げられる。これらの充填剤は、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明におけるゴム組成物は、充填剤として、カーボンブラックを含むことが好ましく、カーボンブラック及び白色充填剤を含むことがより好ましく、カーボンブラック及びシリカを含むことが更に好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。特に、カーボンブラックを含むことにより、良好な電気伝導性が得られる。
【0051】
本発明におけるゴム組成物がカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイトなどをあげることができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
本発明におけるゴム組成物は、電気伝導性を向上させるために、窒素吸着比表面積(N
2SA)が400m
2/g以上のカーボンブラック(以下、高比表面積カーボンブラックともいう)を含んでもよい。高比表面積カーボンブラックのN
2SAは、400m
2/g以上が好ましく、500m
2/g以上がより好ましく、700m
2/g以上が更に好ましく、900m
2/g以上が特に好ましい。400m
2/g未満では、充分な導電性(静電気の蓄積の防止)や低燃費性、ゴム破壊強度、操縦安定性の向上が得られないおそれがある。該N
2SAは、2000m
2/g以下が好ましく、1500m
2/g以下がより好ましく、1350m
2/g以下が更に好ましい。2000m
2/gを超えると、高比表面積カーボンブラックの分散が困難となり、低燃費性、ゴム破壊強度、操縦安定性が悪化し、また、経時でのタイヤの電気抵抗の上昇も大きくなる傾向がある。また、このようなカーボンブラックを製造することは困難であり、不必要にコストが上昇するおそれもある。
なお、カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0053】
本発明におけるゴム組成物は、上記高比表面積カーボンブラックのみを含んでいてもよく、高比表面積カーボンブラック以外のカーボンブラックを更に含んでいてもよい。また、本発明におけるゴム組成物は、高比表面積カーボンブラックを含まず、高比表面積カーボンブラック以外のカーボンブラックのみを含んでいてもよい。
【0054】
高比表面積カーボンブラック以外のカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、300m
2/g以下が好ましく、200m
2/g以下がより好ましく、100m
2/g以下が更に好ましく、80m
2/g以下が特に好ましい。300m
2/gを超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。該N
2SAは、30m
2/g以上が好ましく、35m
2/g以上がより好ましく、55m
2/g以上が更に好ましい。30m
2/g未満では、充分な補強効果が得られず、充分なゴム破壊強度、操縦安定性が得られないおそれがある。
【0055】
本発明におけるゴム組成物が高比表面積カーボンブラックを含まない場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。10質量部未満であると、電気伝導性、ゴム破壊強度及び操縦安定性に劣る傾向がある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。100質量部を超えると、低燃費性、ゴム破壊強度、操縦安定性が悪化する傾向がある。そのため、上記範囲内であると、良好な電気伝導性、ゴム破壊強度、低燃費性及び操縦安定性が得られる。
【0056】
本発明におけるゴム組成物が高比表面積カーボンブラックを含む場合、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、高比表面積カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0057】
本発明におけるゴム組成物が高比表面積カーボンブラックを含む場合、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、高比表面積カーボンブラック及び他のカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。高比表面積カーボンブラックを用いることで、ゴム組成物中のカーボンブラックの合計含有量を少なくしても、所望の体積固有抵抗を得ることができ、タイヤの重量を低減でき、より良好な低燃費性が得られる。
【0058】
上述のとおり、本発明におけるゴム組成物は、白色充填剤を含むことが好ましく、シリカを含むことがより好ましい。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0059】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは40m
2/g以上、より好ましくは50m
2/g以上、更に好ましくは100m
2/g以上、特に好ましくは150m
2/g以上である。40m
2/g未満であると、ゴム破壊強度、低燃費性、操縦安定性が悪化するおそれがある。また、シリカのN
2SAは、好ましくは300m
2/g以下、より好ましくは250m
2/g以下、更に好ましくは200m
2/g以下である。300m
2/gを超えると、シリカの分散が困難であり、低燃費性、加工性が悪化するおそれがある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0060】
本発明におけるゴム組成物がシリカを含む場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは13質量部以上である。該シリカの含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。40質量部を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。シリカの含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0061】
本発明におけるゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を併用することが好ましい。本発明では、水素添加率の高い上記水添共重合体を使用するため、充分な架橋密度が得られないおそれがあるが、上記水添共重合体と共に、シリカ、シランカップリング剤を配合することにより、良好な架橋ネットワークを形成でき、本発明の効果がより好適に得られる。
【0062】
シランカップリング剤としては、従来から公知のものを用いることができ、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン等のクロロ系が挙げられる。なお、上記のシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、シランカップリング剤によるカップリング効果、加工性、コストの観点から、スルフィド系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0063】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。0.5質量部未満であると、高いシリカ分散が得られない傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは13質量部以下である。20質量部を超えても、シリカの分散を向上させる効果が得られにくく、コストが不必要に増大する傾向がある。また、スコーチタイムが短くなり、混練りや押し出しでの加工性が低下する傾向がある。
【0064】
上記ゴム組成物が高比表面積カーボンブラックを含まない場合、高比表面積カーボンブラック以外のカーボンブラック及び白色充填剤(好ましくはシリカ)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは70質量部以上である。該合計含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは95質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、良好なゴム破壊強度、電気伝導性、低燃費性及び操縦安定性が得られる。
【0065】
上記ゴム組成物が高比表面積カーボンブラックを含む場合、高比表面積カーボンブラック、他のカーボンブラック及び白色充填剤(好ましくはシリカ)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。該合計含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは65質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、良好なゴム破壊強度、電気伝導性、低燃費性及び操縦安定性が得られる。特に、高比表面積カーボンブラックを配合することにより、少量のカーボンブラックにより良好な電気伝導性が得られるため、充填剤の使用量を上記量に低減でき、タイヤの重量を低減でき、より良好な低燃費性が得られる。
【0066】
本発明におけるゴム組成物には、前記成分以外にも、硫黄などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;伸展油(オイル)、滑剤などの加工助剤;老化防止剤などの従来ゴム工業で使用される配合剤を用いることができる。
【0067】
伸展油(オイル)としては、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900〜1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850〜0.899)、パラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790〜0.849)などを挙げることができる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。これらの伸展油は、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
【0068】
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドがより好ましい。また、更にグアニジン系加硫促進剤を併用することも好ましい。加硫促進剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜4質量部である。
【0069】
加硫剤としては、特に限定されないが、硫黄を好適に使用できる。硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0070】
本発明におけるゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで上記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0071】
本発明におけるゴム組成物(加硫ゴム組成物)は、体積固有抵抗が1.0×10
10Ω・cm以下であることを特徴としている。これにより、優れた電気伝導性(帯電防止効果)が得られる。体積固有抵抗は、好ましくは1.0×10
9Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10
8Ω・cm以下、更に好ましくは1.0×10
7Ω・cm以下、特に好ましくは1.0×10
6.5Ω・cm以下、最も好ましくは1.0×10
6Ω・cm以下であり、また、好ましくは1.0×10
3Ω・cm以上、より好ましくは1.0×10
4Ω・cm以上である。体積固有抵抗が上記範囲内であれば、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、体積固有抵抗は、後述する実施例に記載の方法により測定される。また、以下、本発明において、単に体積固有抵抗と記載した場合には、10Vで測定した体積固有抵抗を意味することとする。
【0072】
充填剤の種類、ゴム組成物の配合比を調整することによって、ゴム組成物の体積固有抵抗を調整することができる。例えば、カーボンブラックを増量することにより、ゴム組成物の体積固有抵抗を小さくすることができる。
【0073】
本発明におけるゴム組成物(加硫ゴム組成物)は、ゴム硬度が50〜95であることが好ましい。
本発明におけるゴム組成物が、ビードエイペックス及び/又はクリンチエイペックスとして用いられる場合、ゴム組成物のゴム硬度は、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは60以上であり、特に好ましくは70以上である。50未満であると、操縦安定性が悪化するおそれがある。また、該ゴム硬度は、好ましくは95以下、より好ましくは93以下、更に好ましくは90以下である。95を超えると、他のゴム部材との剥離が起こったり、ゴム強度が低下したりするおそれがある。
また、本発明におけるゴム組成物が、アンダートレッドやインナーサイドウォール等、トレッドやサイドウォール内部の導電部材として用いられる場合、ゴム組成物のゴム硬度は、好ましくは50以上、より好ましくは52以上である。また、該ゴム硬度は、好ましくは95以下、より好ましくは65以下、更に好ましくは60以下である。上記範囲内であれば、他部材との硬度差が小さく、操縦安定性、ゴム破壊強度に優れる。
なお、ゴム硬度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0074】
本発明におけるゴム組成物は、タイヤの各部材(トレッド、サイドウォール、カーカス、ベルト、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、導電部材等)に使用でき、なかでも、ビードエイペックス、クリンチエイペックス及び導電部材からなる群より選択される少なくとも1種の部材として好適に用いられる。
【0075】
ビードエイペックスとは、ビードコアから半径方向外側にのびるように、タイヤクリンチの内側に配されるゴム部であり、具体的には、特開2008−38140号公報の
図1〜3、特開2004−339287号公報の
図1などに示される部材である。
【0076】
クリンチエイペックスとは、サイドウォールの内方端に配されるゴム部であり、具体的には、例えば、特開2008−75066号公報の
図1、特開2004−106796号公報の
図1等に示される部材である。
【0077】
導電部材とは、内層サイドウォール(インナーサイドウォール)、アンダートレッドのような部材である。内層サイドウォールとは、多層構造を有するサイドウォールの内層部であり、具体的には、特開2007−106166号公報の
図1等に示される部材である。また、アンダートレッドとは、トレッドゴムとブレーカー(ベルト)ゴムとの間に位置し、ブレーカーゴムのタイヤ表面側部分を被覆する部材であり、具体的には、特開2009−191132号公報の
図1等に示される部材である。
【0078】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、水添共重合体を含むゴム成分及び必要に応じて上記各種配合剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でビードエイペックス、クリンチエイペックス、導電部材などの各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、本発明の空気入りタイヤが得られる。
【0079】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0080】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0081】
以下、合成、重合時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
THF:関東化学(株)製の無水テトラヒドロフラン
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
ブタジエン:東京化成工業(株)製の1,3−ブタジエン
n−ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
アルコール:東京化成工業(株)製のメタノール
【0082】
また、得られた共重合体の評価方法について、以下にまとめて説明する。
【0083】
(共重合体の共役ジエン部の水素添加率の測定)
四塩化炭素を溶媒として用いて15質量%濃度の溶液を調製して、100MHzのH
1−NMRの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
【0084】
(スチレン含有量の測定)
25℃にてJEOL JNM−A 400NMR装置を用いてH
1−NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5〜7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9〜5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からスチレン含有量を決定した。
【0085】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定)
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0086】
(ムーニー粘度(ML
1+4、100℃))
JIS K 6300:2001−1に従い、(株)島津製作所製のムーニー粘度計(SMV−200)を使用して、100℃で1分間予熱したのち、4分間測定して共重合体のムーニー粘度(ML
1+4、100℃)を測定した。
【0087】
<共重合体の製造例>
合成例1(共重合体(1)の合成:水素添加率0モル%)
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn−ヘキサン2000ml、スチレン60g、1,3−ブタジエン140g、THF1.75g、n−ブチルリチウム0.45mmolを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により共重合体(1)を得た。得られた共重合体(1)は重量平均分子量(Mw)490,000、スチレン含有量30質量%であった。
【0088】
合成例2(共重合体(2)の合成:水素添加率60モル%)
得られた重合体を水素添加する以外は、共重合体(1)と同様の処方にて共重合体(2)を得た。すなわち、共重合体(1)において重合転化反応後、アルコールを加えて重合反応を停止させず、次いで、水素ガスを0.4MPa−Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa−Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、水添共重合体を得た。得られた共重合体(2)の水素添加率は60モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
【0089】
合成例3(共重合体(3)の合成:水素添加率80モル%)
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、共重合体(2)と同様の処方により、共重合体(3)を得た。得られた共重合体(3)の水素添加率は80モル%であり、重量平均分子量(Mw)は480,000であった。
【0090】
合成例4(共重合体(4)の合成:水素添加率95モル%)
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、共重合体(2)と同様の処方により、共重合体(4)を得た。得られた共重合体(4)の水素添加率は95モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
【0091】
【表1】
【0092】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴム:TSR20
共重合体(1)〜(4):上記方法で合成
カーボンブラック(1):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(N
2SA:75m
2/g)
カーボンブラック(2):デグッサ社製のPRINTEX XE2B(N
2SA:1000m
2/g、DBP:420ml/100g)
シリカ:EVONIK社製のULTRASIL VN3(N
2SA:180m
2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン3C
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):住友化学(株)製のソクシノールCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):住友化学(株)製のソクシノールD(1,3−ジフェニルグアニジン)
【0093】
(実施例及び比較例)
表2及び表3に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物(表2の配合)をビードエイペックス及びクリンチエイペックスの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。更に、得られた未加硫ゴム組成物(表3の配合)をアンダートレッド及びインナーサイドウォールの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
【0094】
<評価項目及び試験方法>
得られた加硫ゴム組成物及び試験用タイヤについて、下記の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0095】
(体積固有抵抗)
上記加硫ゴム組成物を用いて厚さ2mm、15cm×15cmの試験片を作製し、ADVANTEST社製の電気抵抗測定R8340Aを用いて、電圧10V、気温23℃、湿度55%の条件で加硫ゴム組成物の体積固有抵抗(Ω・cm)を測定した。その結果の常用対数を表2及び表3に示す。数値が大きいほどゴム組成物の体積固有抵抗が高く、電気伝導性が悪いことを示す。
【0096】
(ゴム破壊強度)
上記加硫ゴム組成物について、JIS K 6251に準じて引張試験を行い、破断伸びを測定した。測定結果を、比較例1−1又は2−1を100とした指数で示した。指数が大きいほどゴム破壊強度が大きいことを示している。
(ゴム破壊強度指数)=(各配合のゴム破壊強度)/(比較例1−1又は2−1のゴム破壊強度)×100
【0097】
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃で加硫ゴム組成物のtanδを測定した。tanδの逆数の値について比較例1−1又は2−1を100として指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示している。
【0098】
(操縦安定性)
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着してテストコースを実車走行し、ドライバーの官能評価により操縦安定性を評価した。その際に、比較例1−1又は2−1の操縦安定性を100として各試験用タイヤの操縦安定性の相対評価を行った。数値が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
【0099】
(ゴム硬度)
JIS K 6253「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に従い、タイプAデュロメーターにて加硫ゴム組成物のゴム硬度を測定した。数値が大きいほど、ゴム硬度が高く、操縦安定性に優れることを示す。
【0100】
【表2】
【表3】
【0101】
表2及び表3より、水素添加率が75モル%以上である水添スチレンブタジエン共重合体を、ゴム成分100質量%中に75質量%以上含み、ゴム組成物の体積固有抵抗が1.0×10
10Ω・cm以下であるゴム組成物を用いた実施例1−1〜1−3、2−1及び2−2では、電気伝導性、ゴム破壊強度、低燃費性及び操縦安定性を顕著に改善できることが明らかとなった。
【0102】
更に、表3より、カーボンブラック(1)に加えて、N
2SAが1000m
2/gの高比表面積カーボンブラック(カーボンブラック(2))を含む実施例2−1及び2−2では、カーボンブラックの含有量を少なくしても、カーボンブラック(1)のみを用いた実施例1−1〜1−3と同程度の性能が得られることが明らかとなった。
【0103】
本願表2のゴム組成物は、ビードエイペックス、クリンチエイペックスに、本願表3のゴム組成物は、導電部材に好適に使用できる。