(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像処理部は、前記ラインプロファイルと前記近似曲線の候補との差分の自乗和を取ることで前記ラインプロファイルと前記近似曲線の候補との誤差値を算出することを特徴とする請求項3に記載のパターン高さ測定装置。
前記画像処理部は、前記ラインプロファイルの立下りの傾きが最も大きい部分を前記パターンのエッジの上端の位置として検出し、前記パターンのエッジの上端の位置よりも外側の領域で、前記近似曲線の候補の算出及び前記誤差値の算出を行うことを特徴とする請求項4に記載のパターン高さ測定装置。
前記ラインプロファイルと前記近似曲線の候補との差分の自乗和を取ることで前記ラインプロファイルと前記近似曲線の候補との誤差値を算出することを特徴とする請求項10に記載のパターン高さ測定方法。
前記ラインプロファイルの立下りの傾きが最も大きい部分を前記パターンのエッジの上端の位置として検出し、前記パターンのエッジの上端よりも外側の領域で、前記近似曲線の候補の算出及び前記誤差値の算出を行うことを特徴とする請求項11に記載のパターン高さ測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るパターン高さ測定装置100を示すブロック図である。
【0014】
図示のようにパターン高さ測定装置100は、試料8を収容するチャンバー2と、試料8に電子ビーム31を照射する電子ビーム走査部1と、パターン高さ測定装置100の各部の制御及び測定データの処理を行うデータ処理部10とを備えている。
【0015】
このうち、チャンバー2には、支持体7aを介してウェハやフォトマスクなどの試料8を保持するステージ7が設けられている。このステージ7は、データ処理部10からの制御信号に基づいて動作し、試料8の観察領域を電子ビーム走査部1による電子ビーム照射範囲に移動させる。
【0016】
電子ビーム走査部1は電子銃3を有し、この電子銃3から所定の加速電圧で電子ビーム31を放出させる。電子ビーム31はコンデンサレンズ4で収束され、対物レンズ6で焦点合わせされて試料8の表面に照射される。そして、電子ビーム31の照射位置を偏向器5によって走査させる。
【0017】
このようにして電子ビーム31を照射すると、試料8の表面から二次電子32が放出される。放出された二次電子32は、試料8の上方に配置された二次電子検出器9で検出される。
【0018】
図2は、パターン高さ測定装置100の二次電子検出器9を示す模式図である。
【0019】
図2に示すように、二次電子検出器9は、電子ビーム31の光軸付近に設けられた円形の穴9fと、その周りに円盤状に形成されたシンチレータ9a〜9dとを備えている。この円盤状のシンチレータ9a〜9fは、周方向に均等の角度(90°)で4分割されており、それぞれが独立した検出信号を出力する。ここでは、4分割された二次電子検出器9の各領域を、それぞれ第1〜第4検出器9a〜9dと呼ぶ。
【0020】
電子ビーム31の走査は、試料8の表面に設定された矩形状の観察領域81と呼ばれる領域で行われる。第1〜第4の検出器9a〜9dは、その観察領域81の四隅の方向に配置されている。それぞれの検出器9a〜9dから得られる二次電子像は、パターンの影が異なる向きに現れるため、これらの二次電子像を利用することでパターンの3次元的な情報が得られる。
【0021】
図1に示すように、二次電子検出器9の信号はデータ処理部10によって処理されて、二次電子像の生成やパターンの高さ測定等に用いられる。
【0022】
第1〜第4検出器9a〜9d(
図2参照)から送出された信号ch1〜ch4はデータ処理部10の信号処理部11に入力される。信号処理部11は、入力された検出信号をデジタルの輝度値データに変換する。また、信号処理部11は、輝度値データと、電子ビーム31の照射位置座標のデータとを対応付けることで二次電子像を生成して表示部20に表示させる。さらに、信号処理部11が生成した二次電子像は後述するパターン高さ測定処理に利用するべく記憶部13に格納される。
【0023】
画像処理部12は、生成された二次電子像を記憶部13から読み出して、パターン高さの測定に必要な各種画像の生成、輝度値分布(ラインプロファイル)の抽出及びパターン高さを測定するための処理を行う。
【0024】
図3(a)〜(c)は、画像処理部12が生成する二次電子像とラインプロファイルの一例を示す図である。
【0025】
図3(a)は、左下の第1検出器9aと左上の第2検出器9bの検出信号とを加算して得られる二次電子像である。この二次電子像は、紙面左側に配置した二次電子検出器から得られる二次電子像と同等のものとなるため、ここでは左画像と呼ぶ。左画像では、パターン91の右側のエッジ付近で二次電子の検出量が低下し、輝度値の低下が影として現れる。
【0026】
図3(b)は、右上の第3検出器9cと右下の第4検出器9dの検出信号を合成した二次電子像である。この二次電子像は、紙面右側に二次電子検出器を配置したときに得られる二次電子像と同等であり、ここでは右画像と呼ぶものとする。右画像では、パターン91の左側のエッジ付近で二次電子の検出量が低下し、輝度値の低下が影として現れる。
【0027】
図3(c)は、パターン91に電子ビームを照射したときの輝度値の分布(ラインプロファイル)を示しており、
図3(a)、(b)の線分Bの部分に相当する。
【0028】
図中、ラインプロファイルLは、左画像から抽出したラインプロファイルであり、ラインプロファイルRは右画像から抽出したラインプロファイルであり、曲線L+RはラインプロファイルLとラインプロファイルRとを加算して得られるラインプロファイルである。
【0029】
また、ラインプロファイルL−Rは、ラインプロファイルLからラインプロファイルRの値を減算したラインプロファイル(差分プロファイル)である。
【0030】
差分プロファイルでは、平坦な部分の輝度値が打ち消され、試料表面の凹凸に応じた輝度値の変化が現れる。図示のように、差分プロファイル(L−R)では、パターン91の左側のエッジ付近で輝度値の変化が正側に強調され、右側のエッジ付近では輝度値が負側に強調されて表示される。このように、差分画像では、パターン91の凹凸情報を強調した画像が得られるため、パターン91の高さ測定に好適である。以下の説明では、この差分画像を利用してパターンの高さを求める例について説明する。
【0031】
以下、本実施形態のパターンの高さ測定の原理について説明する。
【0032】
図4は、パターン91の左側のエッジ91a付近の電子の動きを示す図である。
【0033】
右画像のラインプロファイルRに着目すると、パターン91のエッジ91aの下端部よりも左側の領域Iにおいて、右側の二次電子検出器の二次電子32の検出量が低下し、ラインプロファイルに凹部が現れる。これは、試料表面から放出された二次電子32の一部がパターン91のエッジ91a(側壁)に遮られることで、右側の二次電子検出器で検出されにくくなるためである。パターンの側壁の領域IIでは、エッジ91a付近で二次電子の放出部分の面積が増加するため、二次電子の放出量が増加してラインプロファイルにピークが現れる。また、パターンの上端の領域IIIでは、輝度値が一定の値に落ち着く。
【0034】
左画像のラインプロファイルLに着目すると、領域Iでは二次電子が遮られることなく検出されるため、ラインプロファイルLには凹部は表れない。領域Iでは、エッジ91aに当たった二次電子や反射電子が左側の二次電子検出器に向かうことで、検出量が増加し、電子ビーム31の位置がパターン91のエッジ91aに近づくにつれて徐々に輝度値が増加する。
【0035】
このような領域Iにおけるラインプロファイルの変化は、差分プロファイル(L−R)にも反映されて輝度値の増加として現れる。
【0036】
図5(a)は、試料表面から放出される二次電子の分布を示す図であり、
図5(b)は電子ビーム31の照射位置と二次電子の検出量の変化を示す図である。
【0037】
図5(a)に示すように、試料表面から放出され、検出器に到達する二次電子の大部分は、電子ビーム31の照射位置を頂点とし、電子ビーム31に対する所定の角度θの円錐状の放出領域33に放出される。
【0038】
この放出領域33の測定対象パターンの高さHでの断面に着目すると二次電子の分布は曲線34に示すように、電子ビーム31の照射位置を中心とするガウス分布関数で表される。このガウス分布関数の広がりを表す分散σの値はパターンの高さHに応じて変化する。
【0039】
図5(b)に示すように、電子ビーム31をパターン91に向けて走査させると、円錐状の放出領域33がパターン91と重なることで、右側の検出器に到達する二次電子の量が減少して差分プロファイルの輝度値が変化する。差分プロファイルの輝度値の変化量は、放出領域33の二次電子の分布関数と、パターン91とが重なりに応じて変化する。すなわち、放出領域33とパターン91との重複領域35に存在する二次電子が、パターン91の側壁に当たって妨げられる。差分プロファイルでは右側の検出器の輝度値の減少が反転された上で加算されるため、差分プロファイルにおいて左側のエッジでは輝度値が増加する。
【0040】
このときの差分プロファイルの輝度値は、二次電子の分布を表すガウス分布関数を重複領域35の範囲で積分(ガウス積分)することで求まる。ガウス分布関数の中心の位置を差分プロファイルのライン状に沿って移動させながら、ガウス積分値を算出することで、差分プロファイルの近似関数(ガウス積分プロファイル)が求まる。
【0041】
なお、ガウス積分プロファイルI(x)は、誤差関数を用いて以下の式で求めることができる。
【0042】
ここで、xは電子ビームの照射位置であり、μはパターン91のエッジの上端の位置であり、mは係数であり、σは正規分布の分散の値である。
【0043】
二次電子の分布関数の広がりを表す分散σの値は、測定対象となるパターン91の高さHに応じて変化する。
【0044】
図6は、パターンの高さHによる分散σの変化を示す図である。
【0045】
図示のように、比較的高い高さH
1のパターンの場合には、より広い範囲で発生した二次電子が遮られる。このため、輝度分布に影響を与える二次電子の分布関数の広がりを表す分散σ
1の値は大きくなる。
【0046】
一方、比較的低い高さH
2のパターンの場合には、二次電子を遮る範囲が狭くなり、輝度分布に影響を与える分散σ
2の値は小さくなる。
【0047】
図7は、様々な高さのパターンのエッジ付近の差分プロファイルと、近似曲線の算出結果とを示すグラフである。
【0048】
図示のように、二次電子のガウス分布関数とパターンとの重なりに基づいて求めた近似曲線は、パターンのエッジの外側の領域において、差分プロファイルとよく一致することがわかる。また、近似曲線の分散σの値は、パターンの高さに比例して変化することがわかる。
【0049】
パターン91の高さHは下記の(2)式のように分散σの1次関数で表すことができる。
【0050】
そこで、本実施形態では、分散σとパターン91の高さHとの間の相関関係を示す係数kを予め実験的に求めておく。
【0051】
以下、パターン高さ測定装置100(
図1参照)で行われるパターンの高さ測定方法について説明する。
【0052】
図8は、本実施形態に係るパターン高さ測定方法を示すフローチャートである。
【0053】
まず、ステップS11において、パターン高さ測定装置100は、電子走査部1で電子ビーム31を照射及び走査させて試料表面の観察を行う。試料表面から放出された二次電子は二次電子検出器9で検出する。その検出信号は、データ処理部10の信号処理部11がデジタル信号の輝度値データに変換され、電子ビーム31の照射位置と輝度値データとが対応づけられて二次電子像が生成され記憶部13に格納される。
【0054】
次に、ステップS12に移行し、データ処理部10の画像処理部12において、パターンの高さの測定に必要な画像データを生成する。例えばパターンのエッジが上下方向に延在している場合には、左画像及び右画像を生成したのち、左画像の輝度値から右画像の輝度値を差し引いた差分画像を生成する。その後、生成した差分画像を記憶部13に格納する。
【0055】
次に、ステップS13に移行し、画像処理部12において、計測対象となるパターンの差分プロファイルを抽出する。ここでは、計測対象パターンのエッジと交差するラインを設定する。次いで、そのラインに沿った差分画像の輝度値の分布である差分プロファイルを抽出する。
【0056】
次に、ステップS14に移行し、データ処理部10が差分プロファイルから分散σの値を求める。
【0057】
図9は、本実施形態において差分プロファイルから分散σを求める方法を示すフローチャートである。
【0058】
まず、
図9のステップS21に移行し、画像処理部12において、差分プロファイルの切り出しを行う。ここでは、差分プロファイルの中から、輝度値のピーク位置を検出する。次いで、そのピークの近傍の差分プロファイルを微分することで、微分プロファイルを求め、その微分プロファイルの極小値からエッジの上端の位置(X
max)を検出する。このエッジの上端の位置を、差分プロファイルの切り出し範囲の一方の端部X
maxとする。
【0059】
また、差分プロファイルのピークを挟んで反対側に輝度値を検出してゆき、輝度値が0付近となった部分を差分プロファイルの切り出し範囲の他方の端部X
minとして検出する。その後、上記の始端及び終端の範囲の差分プロファイルを抽出して記憶部13に格納する。
【0060】
次に、ステップS22に移行し、画像処理部12が、カウンタnの値を1とし、二次電子のガウス積分の分散σ
nに所定の初期値σ
minを入力する。
【0061】
次に、ステップS23に移行し、画像処理部12において輝度値の近似関数I(x)をX
minからX
maxまでの範囲で求める。ここでは、式(1)に分散σ
nの値を代入し、μにはX
maxを代入して計算する。係数mは差分プロファイルとの差が最も小さくなる条件を探索して決定する。
【0062】
次に、ステップS24に移行して、画像処理部12がステップS23で求めた近似曲線と差分プロファイルとの誤差値E
nを算出する。ここでは、近似関数I(x)の輝度値と差分プロファイルの輝度値との差分の二乗和を切り出し範囲で積算することで誤差値E
nを求める。
【0063】
その後、ステップS25において、誤差値E
nと分散σ
nとを記憶部13に格納する。
【0064】
次に、ステップS26に移行して、画像処理部12が分散σ
nの値が所定の探索範囲の最大値σ
maxよりも大きいか否かを判定する。
【0065】
ステップS26において、分散σ
nの値が所定の最大値σ
max以下の場合には(NO)、ステップS27に移行してカウンタnの値を1増加させる。その後、ステップS28において分散σ
nの値をΔσだけ増加させた後、ステップS23に戻る。以後、ステップS23〜S28の処理を繰り返す。
【0066】
一方、ステップS26において、分散σ
nの値が所定の最大値σ
maxよりも大きい場合には(YES)、探索範囲の分散σすべてについて近似曲線の算出が完了したと判断してステップS23〜ステップS28のループを抜けてステップS29に移行する。
【0067】
ステップS29では、画像処理部12は記憶部13から誤差値E
1〜E
n及び分散σ
1〜σ
nを格納した配列を読みだし、最も小さい誤差値Eに対応する分散σの値を抽出する。
【0068】
ここで抽出した分散σの値を、対象とするパターンにおける分散σの値として
図8のステップS15の処理に用いる。
【0069】
その後、ステップS15に移行し、画像処理部12は、パターンの高さHと分散σとの相関関係を表す式(2)に、ステップS27の分散σの値を代入しパターンの高さHを求める。
【0070】
以上の処理によって、パターン測定装置100によるパターン高さの測定が完了する。
【0071】
(パターンの高さと分散との相関関係の求め方)
図10は、パターン高さHと分散σとの相関関係の求め方を示すフローチャートである。
【0072】
まず、高さが異なるパターンを有する校正用試料を用意する。ここで使用する校正用試料には例えば原子間力顕微鏡で高さを求めたパターンが形成されている。校正用試料としては、高さの異なるパターンが形成されたものを複数用意しておくことが好ましい。
【0073】
次に、ステップS31において、測定装置100で校正用試料を観察し、差分プロファイルを抽出する。差分プロファイルの抽出までの処理は、
図8のステップS11〜S13と同様である。
【0074】
次に、ステップS32に移行し、画像処理部12において、差分プロファイルから分散σの値を求める。分散σの求め方は、
図9のステップS21〜S29で説明した方法で行う。
【0075】
次に、ステップS33に移行し、全ての校正用試料について測定が完了したか判定する。
【0076】
ステップS33において、全ての校正用試料での分散σの測定が完了していない場合(No)には、ステップS31に戻り、他の校正用試料での分散σの測定を繰り返す。一方、全ての校正用試料の測定が完了した場合には、ステップS34に移行する。
【0077】
ステップS34では、校正用試料のパターンの高さHと分散σの値の測定結果とから、最小二乗法により、パターンの高さHと分散σとの相関関係を表す係数k((2)式参照)を求める。
【0078】
以上により、パターンの高さHと分散σとの相関関係を表す係数kが求まる。このようなパターン高さHと分散σの値との相関関係は、試料の材質によっても変わるため、材質毎に応じて予め求めておくことが好ましい。
【0079】
以上で説明したように、本実施形態によるパターンの高さの測定では、切り出した範囲の差分プロファイルを利用して二次電子の分布関数の広がり(分散σ)を求め、その広がりに基づいてパターンの高さを求める。そのため、ノイズの影響を受けにくく、測定精度及び再現性に優れるパターンの高さ測定を行うことができる。また、本実施形態のパターン高さ測定では、パターンの高さを1nm〜2nm程度の精度で測定することができることが確認できており、原子間力顕微鏡や断面観察法に近い精度でパターンの高さを求めることができる。
【0080】
(第2実施形態)
本実施形態では、
図1に示すパターン高さ測定装置100を用いて隣接するパターン間のスペース狭い場合のパターンの高さの測定方法について説明する。
【0081】
図11は、隣接するパターン同士の間隔が狭い試料の差分プロファイルの一例を示す図である。
【0082】
図11に示すように、隣接するパターン91同士の間隔が狭い場合には、隣接するエッジの影響が及ぶため、パターン間のスペース92の部分に差分プロファイルの平坦な部分が現れない。
【0083】
このような場合には、
図9で説明した方法で求めた近似曲線では差分プロファイルをうまく近似できず、正確な高さを求めることができない。
【0084】
そこで、本実施形態では、スペース92の右側のエッジのみによる近似曲線と、左側のエッジのみによる近似曲線とを別々に計算した上で、両者を合成することで、スパース92の部分の近似曲線を求める。
【0085】
以下、具体的な手順について説明する。
【0086】
図12は、パターン間隔が狭い場合の近似曲線の求め方を示すフローチャートである。
【0087】
まず、ステップS41において、画像処理部12が対象とする差分プロファイルの切り出しを行う。ここでは、スペース92の左側のエッジの上端の位置X
minを始端とし、右側のエッジの上端の位置X
maxを終端とする領域の差分プロファイルを切り出す。左右のエッジの上端の位置は、差分プロファイルにおいて、立下りの傾斜が最も急な部分を求めることで検出できる。
【0088】
次に、ステップS42において、画像処理部12が、カウンタnの値を1とし、二次電子のガウス分布の分散σ
nに所定の初期値σ
minを入力する。
【0089】
次に、ステップS43に移行し、画像処理部12が、右側のエッジのみを考慮した差分プロファイルの近似関数I
R(x)を始端X
minから終端X
maxまでの範囲で求める。ここでは、式(1)にステップS42で設定した分散σ
nの値を代入し、μにはX
maxを代入してX座標に対する輝度値の値を算出することで、近似関数I
R(x)が求まる。
【0090】
次に、ステップS44に移行して、画像処理部12が右側のエッジのみを考慮した差分プロファイルの近似関数I
L(x)を求める。近似関数I
L(x)は、(1)式を用いて算出してもよいが、左右のパターンの高さが同じ場合には、近似関数I
R(x)を反転させて求めてもよい。すなわち、差分プロファイルは左右のエッジで対称な形となることに着目し、近似関数I
R(x)をX
minとX
maxとの間の中間の部分を中心にしてX方向に反転させ、さらに輝度値の符号を反転させることで近似関数I
L(x)が求まる。
【0091】
次に、ステップS45に移行し、画像処理部12が右側のエッジを考慮した近似関数I
R(x)と左側のエッジを考慮した近似関数I
L(x)とを加算して全体の近似関数I(x)を求める。
【0092】
図13は、隣接するパターン間の差分プロファイルの近似曲線の一例を示している。
【0093】
近似関数I
R(x)と左側のエッジを考慮した近似関数I
L(x)とを加算することで、
図13において実線で示すような近似関数I(x)が得られる。
【0094】
次に、
図12のステップS46において、画像処理部12がステップS24で求めた近似関数I(x)と差分プロファイルとの誤差値E
nを算出する。ここでは、近似関数I(x)の輝度値と差分プロファイルの輝度値との差分の二乗和を各x座標で求めて加算することで、差分プロファイルと近似関数I(x)との誤差値E
nを求める。
【0095】
その後、ステップS47において、誤差値E
nと分散σ
nとを記憶部13に格納する。
【0096】
次に、ステップS48に移行して、画像処理部12が分散σ
nの値が所定の最大値σ
maxよりも大きいか否かを判定する。
【0097】
ステップS48において、分散σ
nの値が所定の最大値σ
max以下の場合には(NO)、ステップS49に移行してカウンタnの値を1増加させる。その後、ステップS50において分散σnの値をΔσだけ増加させた後、ステップS43に戻る。
【0098】
一方、ステップS48において、分散σ
nの値が所定の最大値σ
maxよりも大きい場合には(YES)、設定範囲の分散σすべてについて近似曲線の算出が完了したもの判断してステップS43〜ステップS50のループを抜け、ステップS51に移行する。
【0099】
ステップS51では、画像処理部12は記憶部13から誤差値E
1〜E
n及び分散σ
1〜σ
nを格納した配列を読みだし、最も小さい誤差値Eに対応する分散σの値を抽出する。
【0100】
以上の処理により、パターン間隔が狭い場合における分散σが求まったことになる。その後、
図8のステップS15で説明したように、パターンの高さHと分散σの相関関係を表す式(2)に基づいて、パターン高さHを求めることができる。
【0101】
(パターンの断面形状の再現方法)
以下、
図1のパターン高さ測定装置100において、差分プロファイルを用いて追加的に行われるパターンの断面形状の再現機能について説明する。
【0102】
従来より、差分プロファイルを積分することで、パターンの断面形状を再現する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0103】
しかし、パターンのエッジの影の輝度値が積分値に累積されることにより、試料表面の断面形状が正しく再現できないという問題がある。
【0104】
そこで、パターン高さ測定装置100では、パターンのエッジの影の影響を考慮して差分画像を補正することで、断面形状の再現をより正確に行うこととした。すなわち、
図9を参照しつつ説明した方法で求めた近似曲線を、差分プロファイルから減算することで、影の影響を除去した補正プロファイルを求める。そして補正プロファイルを積分することで、パターンの断面形状を再現する。
【0105】
以下、具体的な処理内容について説明する。
【0106】
図14は、本実施形態に係るパターンの断面形状の再現方法を示すフローチャートである。また、
図15(a)は、差分プロファイルの一例を示し、
図15(b)は近似曲線を示し、
図15(c)は差分プロファイルから近似曲線を減算した補正プロファイルを示し、
図15(d)は差分プロファイルから再構成したパターンの断面形状を示す。
【0107】
まず、
図14のステップS61において、画像処理部12がパターンの差分プロファイルを抽出する。この処理により、
図15(a)に示すような差分プロファイルが得られる。
【0108】
次いで、ステップS62に移行し、画像処理部12においてパターンの左側のエッジの近似曲線を求める。この近似曲線の求め方は、
図9を参照しつつ説明した方法で行う。
【0109】
次に、ステップS63において、画像処理部13がパターンの右側のエッジの近似曲線を求める。このパターンの右側のエッジの近似曲線は、ステップS52で求めた近似曲線を反転させた上で、近似曲線の左端を右側のエッジの上端位置に配置して得られる。
【0110】
ステップS62及びステップS63の処理により、
図15(b)に示す近似曲線が得られる。
【0111】
次に、ステップS64において、画像処理部12は、ステップS52で差分プロファイルからステップS62、S63で求めた近似曲線を減算する。これにより、差分プロファイルから影の影響を除去され、
図15(c)に示すような補正プロファイルが得られる。
【0112】
その後、ステップS65において、近似曲線の分を減算した差分プロファイルに対して積分処理を行う。
【0113】
これにより、影の影響を含まない形で、正確なパターンの断面形状が再現できる。
【0114】
図15(d)は、差分プロファイルに基づいて再構成されたパターンの断面形状を示す図である。図中の実線は本実施形態の方法でエッジ付近の影の影響を除去して再構成された断面形状を示しており、破線は
図15(a)の差分プロファイルをそのまま積分処理して再構成された断面形状を示している。図示のように、差分プロファイルをそのまま用いて断面形状を再構成した場合には、エッジの裾の部分に実際のパターンには存在しないはずの膨らみが現れており、正確な断面形状を再現できない。
【0115】
これに対し、エッジ付近の影の影響を除去して再構成された断面形状では、エッジ付近の膨らみを除去でき、より正確な断面形状を再現することができることが確認できた。また、本実施形態によれば、エッジ近傍の膨らみが除去されることにより、従来の方法では困難であったエッジの近傍の微細な凹凸に関する知見が得られる。
【0116】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、対向する2方向の検出器が捉えた画像からの差分プロファイルに基づいて、パターンの高さを測定する内容について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0117】
1方向の検出器が捉えた画像に基づいてパターンの高さを求めてもよい。
【0118】
すなわち、影の部分のラインプロファイルは、
図4及び
図5で説明したように、円錐状に分布する二次電子の放出領域33とパターン91との重複領域35の積分によって求められる。そして、この値は、
図4において影となる側のラインプロファイルRの領域Iの輝度値の分布に反映される。
【0119】
そこで、
図4のラインプロファイルRの領域Iの部分を抽出し、その値の符号を反転させたプロファイルを求める。そして、抽出したプロファイルについて、
図8〜
図10を参照した処理を行うことで、近似関数を求め、σ値の値からパターンの高さを算出できる。
【0120】
以上のように、ラインプロファイルから影となる側のエッジ付近のプロファイルを抽出することで、1方向の検出器がとらえた画像に基づいてパターンの高さを求めることができる。