【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発/次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されるものではない。
第一実施形態では、粘着シートを用いて、フレキシブル基板をリジット基板に仮固定する仮固定方法を例に挙げて、図面に基づいて説明する。まず、本実施形態に係る粘着シートについて説明する。
【0016】
(粘着シート)
本実施形態に係る粘着シート1は、
図1に示すように、感温型粘着剤層11と、エネルギー線硬化型粘着剤層12と、これらの外側に設けられた剥離フィルム13,14と、を備えている。
【0017】
感温型粘着剤層11は、温度変化により剥離力が変化する層であり、例えば温度を所定温度以下とすれば、剥離力が低下する層である。
感温型粘着剤層11は、側鎖結晶性ポリマーを含有し、かつ前記側鎖結晶性ポリマーの融点以下の温度で剥離力が低下する層が好ましい。
側鎖結晶性ポリマーは、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こすポリマーである。感温型粘着剤層11は、この側鎖結晶性ポリマーを主成分として含有する。
融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていたポリマーの特定部分が無秩序状態となる温度を意味するものとする。融点は、示差熱走査熱量計(DSC)によって10℃/分の測定条件で測定して得られる値である。
感温型粘着剤層11の融点の範囲としては、好ましくは室温(例えば25℃)以下、より好ましくは0℃以上15℃以下が挙げられる。融点の温度が高すぎると、仮固定を行っている間に意図しない剥離が起こってしまう可能性がある。また、融点が低すぎると、結露や霜付着による不良が起こらないよう特別な対策が必要となる場合がある。
【0018】
側鎖結晶性ポリマーは、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー(以下、「モノマー」と言うことがある。)を重合させて得られる重合体からなる。モノマーとしては、例えば炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、極性モノマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどの炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
極性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーなどが挙げられる。
【0020】
モノマーの重合割合としては、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを30〜100質量部、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを0〜70質量部、極性モノマーを0〜10質量部とすることが好ましい。モノマー種や重合割合としては、重合して得られる側鎖結晶性ポリマーの融点が前記所定の温度となるように選択することが好ましい。
【0021】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。例えば溶液重合法を採用する場合には、上述したモノマーを溶剤に加えて混合し、40〜90℃程度で2〜10時間程度攪拌すればよい。
【0022】
側鎖結晶性ポリマーを構成する重合体の質量平均分子量としては、20万以上100万以下であることが好ましく、40万以上70万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0023】
一方、このような側鎖結晶性ポリマーとともに感温型粘着剤層11を構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が挙げられる。
【0024】
感温型粘着剤層11の厚みは、特に限定されないが、通常、2μm以上200μm以下である。厚みが前記下限未満では、仮固定のための剥離力が十分に得られなくなる可能性があり、他方、前記上限を超えると、熱処理により粘着剤層が変形しやすくなる傾向がある。
【0025】
エネルギー線硬化型粘着剤層12は、エネルギー線により硬化して剥離力が低下する層である。
エネルギー線硬化型粘着剤層12は、初期の剥離力が大きく、しかもエネルギー線照射後には剥離力が大きく低下する、エネルギー線硬化型の粘着剤からなる層であることが好ましい。
【0026】
エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化)型の粘着剤としては、特に紫外線硬化型の粘着剤を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型の粘着剤は、一般的には、アクリル系粘着剤と、エネルギー線重合性化合物とを主成分としてなる。エネルギー線硬化型の粘着剤に用いられるエネルギー線重合性化合物としては、例えば、光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が用いられる。
【0027】
アクリル系粘着剤はアクリル共重合体を主成分とする。アクリル共重合体としては、例えば、主成分である(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、これと共重合し得る極性単量体(官能基含有単量体)とを重合した重合体が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが好適に用いられ、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリルなどが挙げられる。極性単量体(官能基含有単量体)としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。アクリル共重合体は1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
アクリル共重合体の分子量は、10万以上であることが好ましく、15万以上200万以下であることがより好ましい。また、アクリル共重合体のガラス転移温度は、通常20℃以下であり、好ましくは−70℃以上10℃以下である。
【0030】
分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物としては、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどを用いることができる。
【0031】
さらに、エネルギー線重合性化合物として、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアネートなど)を反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートまたはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
【0032】
また、エネルギー線硬化型粘着剤層12は、側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型共重合体(以下「アダクトポリマー」と言うことがある。)から形成されていてもよい。このようなエネルギー線硬化型共重合体は、粘着性とエネルギー線硬化性とを兼ね備える性質を有している。側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型共重合体としては、公知のものを適宜用いることができる。
【0033】
エネルギー線硬化型共重合体は、側鎖に官能基含有単量体を有するアクリル共重合体と、当該官能基に反応する置換基とエネルギー線重合性基を有する化合物とを反応させることにより得られる。このようなアクリル共重合体としては、前述したアクリル共重合体において例示した(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと官能基単量体の共重合体が挙げられる。また、置換基とエネルギー線重合性基を有する化合物の例としては、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、メタクリロイルイソシアナート、アリルイソシアナート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などがある。
【0034】
エネルギー線硬化型共重合体の分子量は、10万以上であることが好ましく、15万〜200万であることがより好ましい。また、アクリル共重合体のガラス転移温度は、通常20℃以下であり、好ましくは−70℃以上10℃以下である。
【0035】
エネルギー線硬化型粘着剤には、アクリル系粘着剤とエネルギー線重合性化合物、あるいはエネルギー線硬化型共重合体に、さらに光重合開始剤が配合されることが好ましい。エネルギー線硬化型粘着剤層に光重合開始剤を用いることで、照射するエネルギー線として紫外線(UV)を用いた場合であっても十分な硬化性が得られ、基板との剥離性が向上する。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、2−クロールアンスラキノンあるいは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}などが挙げられる。光重合開始剤は単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
また、エネルギー線硬化型粘着剤には、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分が配合されていてもよい。他の成分としては、架橋剤、硬化剤、無機充填材、有機充填剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
エネルギー線硬化型粘着剤層12の厚みは、特に限定されないが、通常、2μm以上200μm以下である。厚みが前記下限未満では、仮固定のための剥離力が十分に得られなくなる可能性があり、他方、前記上限を超えると、熱処理により粘着剤層が変形しやすくなる傾向がある。
【0038】
剥離フィルム13,14は、保管時や輸送時における粘着面の保護のため、或いは貼付時のキャリアとして、それぞれの粘着面に積層される。剥離フィルム13,14としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの寸法安定性のあるプラスチックフィルムにシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し層を形成したものが使用される。
粘着シート1の貼付作業を円滑に行うためには、感温型粘着剤層11の面に積層した剥離フィルム13およびエネルギー線硬化型粘着剤層12の面に積層した剥離フィルム14との剥離力に差を設けることが好ましい。基板のうち先に貼付する側の粘着面には剥離力が小さい(軽剥離)側の剥離フィルムが積層され、後に貼付する側の粘着面には剥離力の大きい(重剥離)側の剥離フィルムが積層された構成を有する。このような構成であることによって、粘着シート1を2つの基板2,3へ貼付する作業がスムーズに行えるようになる。感温型粘着剤層11の面に積層した剥離フィルム13が軽剥離の剥離フィルムであり、エネルギー線硬化型粘着剤層12に積層した剥離フィルム14が重剥離の剥離フィルムであってもよいし、その反対の組み合わせであってもよい。剥離フィルムと粘着剤層との対応は、作業工程がスムーズとなるよう貼付装置などの機能に合わせて適宜選択すればよい。
なお、剥離フィルムとしては、プラスチックフィルムの両面に剥離剤層を形成した1枚のフィルムを用い、その片面に感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12を積層しロール状に巻き取ることによって、粘着面の両面が保護される形態としてもよい。
【0039】
このような粘着シート1は、例えば、感温型粘着剤層11からなるシートと、エネルギー線硬化型粘着剤層12なるシートをそれぞれ製膜し、それぞれの片面を貼り合わせることによって製造することが好ましい。
まず、感温型粘着剤またはエネルギー線硬化型粘着剤について、それぞれを形成する成分を溶媒に溶解して適度な粘度を有する塗布剤を用意する。次に、剥離フィルム13の剥離面に感温型粘着剤を形成する塗布剤を塗布し、乾燥して、感温型粘着剤層11を形成する。他方で、剥離フィルム14の剥離面にエネルギー線硬化型粘着剤を形成する塗布剤を塗布し、乾燥して、エネルギー線硬化型粘着剤層12を形成する。塗布処理の手段としては、例えばナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。続いて、感温型粘着剤層11の露出面とエネルギー線硬化型粘着剤層12の露出面を対向させ、貼り合わせる。これにより、剥離フィルム13、感温型粘着剤層11、エネルギー線硬化型粘着剤層12および剥離フィルム14の順となる粘着シート1が得られる。
【0040】
また、上記の製造方法では感温型粘着剤層11またはエネルギー線硬化型粘着剤層12を塗布乾燥の後に直接貼り合わせる製造方法を示した。この製造方法に換えて、感温型粘着剤層11またはエネルギー線硬化型粘着剤層12のいずれか一方または両方が、塗布乾燥された後、粘着剤層の露出面に別の剥離フィルムを貼り合せて、所定の期間保管した後、当該別の剥離フィルムを剥離してもう一方の粘着剤層に貼り合わせる製造方法を採用してもよい。この場合、塗布剤を塗布する剥離フィルムを別の剥離フィルムに換えて、露出した粘着面に貼り合わせる剥離フィルムを剥離フィルム13または剥離フィルム14としてもよい。また、一方の粘着剤層は別の剥離フィルムを貼り合せて所定期間を保管したものを使用し、もう一方の粘着剤層を塗布乾燥した直後の粘着剤層面に、別の剥離フィルムを剥離しながら貼り合わせる製造方法が採用されてもよい。
【0041】
さらに粘着シート1は、感温型粘着剤層11とエネルギー線硬化型粘着剤層12を別途に製膜せず、2層が積層されたシートとして一括で製膜する方法が採用されてもよい。2層を一括で製膜する方法としては、吐出口が複数組み込まれた塗工ヘッドを有するダイコーターやカーテンコーターを用い、それぞれの塗布剤を別の吐出口から剥離フィルム13または剥離フィルム14の剥離面に塗布し、一括で乾燥する。得られた感温型粘着剤層11とエネルギー線硬化型粘着剤層12の積層体の露出面に、もう一方の剥離フィルムを積層して、粘着シート1を得る製造方法が挙げられる。
【0042】
感温型粘着剤層11の剥離力については、下記に示す条件(A1)、(A2)および(A3)の全てを満たすことが好ましい。このような場合、感温型粘着剤層11は、常温であれば、十分な剥離力を有している。そして、例えば温度を所定温度以下(例えば10℃以下)とすれば、感温型粘着剤層11の剥離力が低下するので、この感温型粘着剤層11から基板を容易に剥離できる。なお、基板は、感温型粘着剤層11が粘着する対象物であり、その材質は、ガラス、シリコン、プラスチックなどである。
条件(A1):温度23℃における基板に対する剥離力が、700mN/25mm以上(より好ましくは1000mN/25mm以上10000mN/25mm以下)である。
条件(A2):感温型粘着剤層11に対して熱処理(例えば150℃1時間)を施した場合に、温度23℃における基板に対する剥離力が、700mN/25mm以上(より好ましくは1000mN/25mm以上20000mN/25mm以下)である。
条件(A3):感温型粘着剤層11に対して熱処理(例えば150℃1時間)を施した場合に、温度5℃における基板に対する剥離力が、500mN/25mm以下(より好ましくは10mN/25mm以上300mN/25mm以下)である。
なお、剥離力(180°剥離強度)は、JIS Z0237に記載に準拠する方法により測定できる。
【0043】
エネルギー線硬化型粘着剤層12の剥離力については、下記に示す条件(B1)〜(B4)のうち、条件(B1)〜(B3)の全てを満たすことが好ましく、条件(B1)〜(B4)の全てを満たすことが特に好ましい。このような場合、エネルギー線硬化型粘着剤層12は、エネルギー線を照射する前であれば、十分な剥離力を有している。そして、エネルギー線硬化型粘着剤層12にエネルギー線を照射した後であれば、このエネルギー線硬化型粘着剤層12の剥離力が低下するので、このエネルギー線硬化型粘着剤層から基板を容易に剥離できる。なお、基板は、エネルギー線硬化型粘着剤層12が粘着する対象物であり、その材質は、ガラス、シリコン、プラスチックなどである。
条件(B1):温度23℃における基板に対する剥離力が、800mN/25mm以上(より好ましくは1000mN/25mm以上10000mN/25mm以下)である。
条件(B2):エネルギー線硬化型粘着剤層12に対して熱処理(例えば150℃1時間)を施した場合において、温度23℃における基板に対する剥離力が、800mN/25mm以上(より好ましくは1000mN/25mm以上20000mN/25mm以下)である。
条件(B3):エネルギー線硬化型粘着剤層12に対して熱処理(例えば150℃1時間)を施した場合において、温度5℃における基板に対する剥離力が、800mN/25mm以上(好ましくは1000mN/25mm以上10000mN/25mm以下)である。
条件(B4):エネルギー線硬化型粘着剤層12に対して熱処理(例えば150℃1時間)を施し、温度5℃20分放置した後、さらにエネルギー線(例えば光量200mJ/cm
2の紫外線)を照射した場合において、温度23℃における基板に対する剥離力が、700mN/25mm以下(より好ましくは10mN/25mm以上600mN/25mm以下)である。
【0044】
(仮固定方法)
次に、本実施形態に係る仮固定方法について説明する。
図2は、第一実施形態に係る仮固定方法、およびこの仮固定方法により仮固定した2つの基板をそれぞれ剥離する方法を示す説明図である。
本実施形態に係る仮固定方法においては、
図2(B)に示すように、フレキシブル基板2およびリジット基板3の間に、エネルギー線硬化型粘着剤層12と、感温型粘着剤層11と、を設け、フレキシブル基板2およびリジット基板3を仮固定する(仮固定工程)。
また、本実施形態においては、感温型粘着剤層11に積層される剥離フィルム13が軽剥離を示す剥離フィルムであり、エネルギー線硬化型粘着剤層12に積層される剥離フィルム14が重剥離を示す剥離フィルムである粘着シート1が使用される。
仮固定工程においては、粘着シート1から剥離フィルム13が剥離され感温型粘着剤層11を表出してフレキシブル基板2に貼付する。続いて、剥離フィルム14を剥離してエネルギー線硬化型粘着シートを表出してリジット基板3へ対向させ、双方を貼り合せて、フレキシブル基板2およびリジット基板3を仮固定する(
図2(A)および(B)参照)。
【0045】
フレキシブル基板2およびリジット基板3の材質は、特に限定されず、ガラス、シリコン、プラスチックなどが挙げられる。プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフテート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。これらは、以下に説明する各種製品の製造のために、適宜表面コート処理がなされた基板が使用されてもよい。
なお、本実施形態では、フレキシブル基板2およびリジット基板3は、いずれもエネルギー線を透過させる透明基板を用いている。また、フレキシブル基板2の材質は、プラスチックであり、リジット基板3の材質は、ガラスである。
【0046】
本実施形態に係る仮固定方法により仮固定したフレキシブル基板2およびリジット基板3を、各種製品の製造工程に応じて加工する(加工工程)。
ここで、各種製品としては、特に限定されないが、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)、発光素子(LED)、フラットパネルディスプレイ(FPD)などが挙げられる。例えば、有機TFTを製造する場合の加工工程としては、フレキシブル基板2上に、ソース・ドレイン電極、半導体層、絶縁層およびゲート電極などの機能性膜を、湿式方式(印刷法、スピンコート法、ディスペンサー法、スプレー法など)により形成する工程などが挙げられる。
このような加工工程では、上記のような機能製膜を焼結したり配向を制御する目的で熱処理が施されてもよい。熱処理としては、例えば、100℃以上220℃以下で、1分間以上120分間以下の熱処理などを採用できる。
【0047】
次に、加工工程後のフレキシブル基板2およびリジット基板3から、
図2(C)に示すように、フレキシブル基板2を剥離する(第一剥離工程)。
第一剥離工程においては、まず、加工工程後のフレキシブル基板2およびリジット基板3の温度を所定温度以下(例えば10℃以下)とし、その後、当該温度下でフレキシブル基板2を剥離する。このようにすれば、感温型粘着剤層11の剥離力が低下するので、この感温型粘着剤層11からフレキシブル基板2を容易に剥離できる。
第一剥離工程後のリジット基板3には、
図2(D)に示すように、リジット基板3上に感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12が残っている。
【0048】
次に、第一剥離工程後のリジット基板3上のエネルギー線硬化型粘着剤層12に対し、エネルギー線を照射する(エネルギー線照射工程)。なお、このエネルギー線照射工程は、第一剥離工程前に行ってもよいが、このような場合、感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12の剥離力については、下記に示す条件(C1)を満たすことが好ましい。下記に示す条件(C1)を満たす場合には、フレキシブル基板2と感温型粘着剤層11とを容易に剥離できる。
条件(C1):粘着シート1の感温型粘着剤層11側とフレキシブル基板2において、条件(A3)における剥離力が、粘着シート1のエネルギー線硬化型粘着剤層12側とリジット基板3において、条件(B3)における剥離力よりも小さい。
エネルギー線硬化型粘着剤層12は、エネルギー線の照射により、剥離力が大幅に低下する。エネルギー線としては、紫外線、電子線などが用いられる。また、その照射量は、エネルギー線の種類によって様々であり、特に限定されない。例えば紫外線を用いる場合には、通常、照度が1mW/cm
2以上1000mW/cm
2以下であり、光量40mJ/cm
2以上1000mJ/cm
2以下である。
【0049】
次に、エネルギー線照射工程後のリジット基板3から、
図2(E)に示すように、感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12を剥離する(第二剥離工程)。
第二剥離工程においては、エネルギー線照射工程によりエネルギー線硬化型粘着剤層12の剥離力が低下しているので、このエネルギー線硬化型粘着剤層12をリジット基板3から容易に剥離できる。また、このエネルギー線硬化型粘着剤層12は、感温型粘着剤層11を担持可能な薄膜となっている。そして、この薄膜をリジット基板3から剥離することで、担持されている感温型粘着剤層11を一緒にリジット基板3から剥離できる。
【0050】
(第一実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)フレキシブル基板2およびリジット基板3を仮固定し、加工を行った後に、温度を所定温度以下とすれば、感温型粘着剤層11の剥離力が低下するので、フレキシブル基板2を容易に剥離できる。
(2)エネルギー線照射工程によりエネルギー線硬化型粘着剤層12の剥離力を低下させ、さらに、エネルギー線硬化型粘着剤層12を感温型粘着剤層11が担持可能な薄膜としているので、リジット基板3から感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12を一緒に剥離し、リジット基板3から粘着剤を容易に除去できる。それ故、支持体基板として利用したリジット基板3を再利用できる。
(3)フレキシブル基板2をリジット基板3に仮固定することで、各種製品の製造工程での加工や搬送をしやすくできる。
(4)粘着シート1では、エネルギー線硬化型粘着剤層12および感温型粘着剤層11が剥離フィルム13に覆われているので、使用前におけるこれらの粘着剤層の表面汚染を抑制できる。
(5)粘着シート1では、芯材を設けないので、粘着シートの構成が簡易となり、また、熱処理などによる温度変化を要因とする芯材の形状変化がなく、これによる基板への負荷を抑制できる。
【0051】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態の第1の粘着シート4および第2の粘着シート5は、前記第一実施形態における感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12とそれぞれ実質的に同様であるから、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図3は、第二実施形態に係る仮固定方法を示す説明図である。
前記第一実施形態では感温型粘着剤層11とエネルギー線硬化型粘着剤層12とが積層された粘着シート1が使用された。これに対し、第二実施形態では、感温型粘着剤層11とその両面に積層される軽剥離フィルム15および重剥離フィルム16とからなる第1の粘着シート4、並びに、エネルギー線硬化型粘着剤層12とその両面に積層される軽剥離フィルム17および重剥離フィルム18とからなる第2の粘着シート5が使用される。
【0052】
本実施形態に係る仮固定方法においては、第1の粘着シート4の軽剥離フィルム15が剥離されて表出した感温型粘着剤層11とフレキシブル基板2を貼り合わせるとともに、他方で、第2の粘着シート5の軽剥離フィルム17が剥離されて表出したエネルギー線硬化型粘着剤層12とリジット基板3を貼り合わせる。さらに、感温型粘着剤層11上の重剥離フィルム16およびエネルギー線硬化型粘着剤層12上の重剥離フィルム18をそれぞれ剥離し、表出した感温型粘着剤層11とエネルギー線硬化型粘着剤層12を貼り合せて、フレキシブル基板2とリジット基板3を仮固定する(
図3(A)および(B)参照)。
【0053】
本実施形態に係る仮固定方法においては、次に、仮固定工程後のフレキシブル基板2およびリジット基板3を、各種製品の製造工程に応じて加工する(加工工程)。
次いで、フレキシブル基板2およびリジット基板3から、所定の温度に冷却することによりフレキシブル基板2を剥離する(第一剥離工程)。そして、感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12が残っているリジット基板3に対し、エネルギー線を照射することにより、リジット基板3から感温型粘着剤層11およびエネルギー線硬化型粘着剤層12を一緒に剥離する(第二剥離工程)。
本実施形態によれば、前記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前述の実施形態では、フレキシブル基板2に感温型粘着剤層11が積層し、リジット基板3にエネルギー線硬化型粘着剤層12が積層する仮固定方法が示された。これに対し、フレキシブル基板2とエネルギー線硬化型粘着剤層12、リジット基板3と感温型粘着剤層11が積層する仮固定方法であってもよい。
【0055】
また、前述の実施形態では、所定温度に冷却することにより感温型粘着剤層11と基板との界面の剥離操作を先に行い、エネルギー線照射によりエネルギー線硬化型粘着剤層12を硬化してからエネルギー線硬化型粘着剤層12と基板との界面の剥離操作を後に行う仮固定方法が示されている。これに対し、エネルギー線照射によるエネルギー線硬化型粘着剤層を硬化し、エネルギー線硬化型粘着剤層12と基板との界面を先に剥離し、所定温度に冷却することにより感温型粘着剤層11と基板との界面の剥離操作を後に行ってもよい。また、エネルギー線照射によるエネルギー線硬化型粘着剤層12を硬化したままエネルギー線硬化型粘着剤層12を剥離せず、所定温度に冷却することにより感温型粘着剤層11と基板との界面の剥離操作を行い、その次にエネルギー線硬化型粘着剤層12と基板との界面を剥離してもよい。この場合、エネルギー線照射は剥離操作の直前ではなく、各種製品に対する加工工程または熱処理などが行われる前に行われてもよい。
【0056】
さらに、前述の実施形態では、粘着シート1には芯材が用いられなかったが、感温型粘着剤層11とエネルギー線硬化型粘着剤層12の層間に芯材が積層された粘着シートが用いられてもよい。各種製品の製造工程に応じて採用される加工条件に対し、当該芯材が必要十分な耐性を有していれば、それぞれの基板かへの負荷を抑制できる。この場合、粘着シートの引張強度が増すため、剥離操作による粘着剤層の破断が起こりにくくなる。
【0057】
前述の実施形態では、フレキシブル基板2とリジット基板3とを仮固定しているが、これに限定されない。つまり、前述の実施形態では、各種製品の製造工程での加工や搬送のしやすさの観点から、フレキシブル基板2をリジット基板3に仮固定しているが、仮固定の目的は限定されない。仮固定の目的に拘わらず、様々な基板同士を仮固定できる。
前述の実施形態では、フレキシブル基板2およびリジット基板3として透明基板を用いているが、これに限定されない。例えば、フレキシブル基板2およびリジット基板3の両方の基板が不透明な基板であってもよい。しかし、このような場合には、一方の基板を剥離して、感温型粘着剤層11またはエネルギー線硬化型粘着剤層12を露出させた後でなければ、エネルギー線硬化型粘着剤層12にエネルギー線を照射できない。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
ブチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびヒドロキシアクリレートからなる共重合体(質量比:62/10/28)100質量部にメタクリロイルオキシエチルイソシアネート22.4質量部を反応させ、側鎖にメタクリロイル基が導入されたアダクトポリマー(Mw:600,000)を得た。このアダクトポリマーの固形分30質量部、イソシアネート架橋剤(トーヨーケム社製、商品名:BHS−8515)1質量部および光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)3質量部を希釈溶剤として酢酸エチルを用いて希釈混合し、濃度26質量%の粘着剤用の塗液を用意した。
この粘着剤用の塗液を剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP−PE3811(S))の剥離面にナイフコーターにより塗布し、加熱乾燥してエネルギー線硬化型粘着剤層(紫外線硬化型)を形成した。得られたエネルギー線硬化型粘着剤層の膜厚は25μmであった。
一方、感温型粘着シート(ニッタ社製、商品名:インテリマーテープ、クールオフタイプ、融点7℃)から片面の剥離フィルムを剥離して粘着面を表出し、この粘着面に上記で得られたエネルギー線硬化型粘着剤層の表面をラミネータにより積層し、感温型粘着剤層およびエネルギー線硬化型粘着剤層からなる粘着シートを得た。
【0059】
[実施例2]
実施例1におけるエネルギー線硬化型粘着剤層の塗液を次の組成に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
ブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートの共重合体(質量比:85/15)100質量部にメタクリロイルオキシエチルイソシアネート12質量部を反応させ、側鎖にメタクリロイル基が導入されたアダクトポリマー(Mw:600,000)を得た。このアダクトポリマーの固形分35質量部、イソシアネート架橋剤(トーヨーケム社製、商品名:BHS−8515)1質量部および光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)4質量部を希釈溶剤として酢酸エチルを用いて希釈混合し、濃度30質量%の粘着剤用の塗液を用意した。
【0060】
[比較例1]
感温型粘着シート(ニッタ社製、商品名:インテリマーテープ、クールオフタイプ、融点7℃)を感温型粘着剤層が単層からなる粘着シートとした。
[比較例2]
実施例1で作成したエネルギー線硬化型粘着剤層の露出した面に剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP−PET50C)を積層して、エネルギー線硬化型粘着剤層が単層からなる粘着シートとした。
[比較例3]
実施例2で作成したエネルギー線硬化型粘着剤層の露出した面に剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP−PET50C)を積層して、エネルギー線硬化型粘着剤層が単層からなる粘着シートとした。
【0061】
[剥離力試験]
実施例および比較例の粘着シートの一方の面(実施例については、エネルギー線硬化型粘着剤層側の面)の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤面にポリエチレンテレフタレート(PET)粘着テープ(PET厚25μm、強粘着タイプ)を積層し、幅25mmに切断し、その後、反対面(実施例については、感温型粘着剤層側の面)の剥離フィルムを剥離して、フレキシブル基板として厚さ125μmのPENフィルム(帝人デュポン社製、商品名:テオネックスPQDA5)を被着体として、23℃50RH%環境下にて1kgロールで貼付して、PENフィルムに対する剥離力試験用のサンプルを得た。その後、各サンプルに下記負荷条件1〜3および5のいずれかを施した後、下記測定条件1〜3および5のいずれかにて、万能引張試験機により180°方向に300mm/分で被着体から剥離を行い、PENフィルムに対する剥離力(単位:mN/25mm)を測定した。得られた結果を表1に示す。
一方で、実施例および比較例の粘着シートの他方の面(実施例については、感温型粘着剤層側の面)の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤面にPET粘着テープ(PET厚25μm、強粘着タイプ)を積層し、幅25mmに切断し、その後、反対面(実施例については、エネルギー線硬化型粘着剤層側の面)の剥離フィルムを剥離して、リジット基板としてガラス板(無アルカリガラス、Corning社製、商品名:EagleXG)を被着体として、23℃50RH%環境下にて1kgロールで貼付して、ガラス板に対する剥離力試験用のサンプルを得た。その後、各サンプルに下記負荷条件1〜4のいずれかを施した後、下記測定条件1〜4のいずれかにて、万能引張試験機により180°方向に300mm/分で被着体から剥離を行い、ガラス板に対する剥離力(単位:mN/25mm)を測定した。得られた結果を表1に示す。
(負荷条件/測定条件)
条件1:負荷なし/23℃50RH%(注1)
条件2:150℃1時間の熱処理/23℃50RH%(注1)
条件3:150℃1時間の熱処理/5℃(注2)
条件4:150℃1時間の熱処理−5℃20分の冷却処理−常温にて光量200mJ/cm
2の紫外線(UV)照射/23℃50RH%(注1)
条件5:150℃1時間の熱処理−常温にて光量200mJ/cm
2のUV照射/23℃50RH%(注1)
(注1)「23℃50RH%」は、23℃50RH%環境下に20分放置した後に、同環境下で剥離力試験を行った。
(注2)「5℃」は、5℃の環境試験室に20分放置した後に、同環境下で剥離力試験を行った。
【0062】
【表1】
【0063】
(注3)比較例2および比較例3のPENフィルムへの剥離力については、上記条件3の代わりに、上記条件5での剥離力を測定している。なお、比較例2および比較例3のPENフィルムへの上記条件3での剥離力(150℃1時間の熱処理後における5℃での剥離力)は、上記条件2での剥離力(150℃1時間の熱処理後における23℃50RH%での剥離力)とほぼ同等である。このように、熱処理後に温度5℃としても剥離力が低下しないため、PENフィルムを容易には剥離できない。そこで、比較例2および比較例3については、熱処理後にUV照射して剥離力を低下させた上記条件5にて評価している。
[剥離性の評価]
PET粘着テープを積層しない以外は上記の剥離力試験でのサンプル作成と同じ操作を行ってサンプルを作成した。そして、被着体がPENフィルムの場合は、上記条件3にて剥離力試験を行い、被着体がガラス板の場合は、上記条件4にて剥離力試験を行った。なお、比較例2および比較例3のPENフィルムへの剥離力については、上記条件5にて剥離力試験を行った。この剥離力試験後のサンプルについて、被着体の糊残り状態および粘着シートの状態を観察した。剥離性の評価基準は次の通りとした。得られた結果を表2に示す。
A:剥離後の被着体に糊残りがなく、粘着シートに破断などの損傷がない。
B:剥離後の被着体に糊残りは観察されないが、粘着シートが一部破断する。
C:糊残りおよび粘着シートの損傷が起こる。
【0064】
[総合剥離性]
上記剥離性の評価において、PEN面およびガラス面での評価がともにAであり、それぞれの剥離操作で問題が発生しなかった場合の総合剥離性の評価をAとし、それ以外の場合の総合剥離性の評価をBとした。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示す結果からも明らかなように、実施例1,2においては、PEN面およびガラス面の剥離性、並びに剥離バランスが全て良好であることが確認された。このことから、2つの基板の間に、エネルギー線硬化型粘着剤層および感温型粘着剤層の両方が設けられている場合(実施例1,2)には、熱処理後に温度5℃とすることで、感温型粘着剤層からPENフィルムを糊残りもなく剥離でき、さらにUV照射により、ガラス板から粘着シートを糊残りもなく剥離できる。つまり、このような場合には、仮固定後の基板の剥離が容易であり、かつ仮固定後の粘着剤の除去が容易であることが確認された。すなわち、リジット基板を仮固定の支持体基板に使用した場合に、次の仮固定における支持体基板として再利用が可能であることがわかった。
これに対し、2つの基板の間に、感温型粘着剤層のみが設けられている場合(比較例1)には、ガラス板上での糊残りおよび粘着シートの損傷が起こることが分かった。
また、2つの基板の間に、エネルギー線硬化型粘着剤層のみが設けられている場合(比較例2,3)には、UV照射後に剥離すれば、剥離後の被着体に糊残りは観察されないが、粘着シートが一部破断することが分かった。