【文献】
Alan Dyer et al.,MICROPOROUS AND MESOPOROUS MATERIAS,2009年 4月15日,Vol.120,Issue3,p.272-277
【文献】
Z.Zheng et al.,Ind.Eng.Chem.Res,1997年,Vol.36,No.6,p.2427-2434
【文献】
Brian R. Cherry et al.,Journal of Solid State Chemistry,2004年,Vol.177,No.6,p.2079-2093
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、放射性物質を含む排水の処理技術としては共沈処理が知られている(下記特許文献1参照)。しかし、水溶性である放射性セシウム及び放射性ストロンチウムについては、前記共沈処理は有効ではなく、現在、ゼオライトなどの無機系吸着材による吸着除去が行われている(下記特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、海水中に放射性セシウム及び放射性ストロンチウムが流出した場合においては、海水成分のナトリウム濃度の増加はセシウムと吸着材とのイオン交換反応を抑制する方向に作用する(下記非特許文献1参照)といった問題が知られている。
【0004】
セシウム及び/又はストロンチウムの吸着性についてこれまでに研究されている無機系吸着材の一つとして、結晶性シリコチタネートが挙げられる。結晶性シリコチタネートは、Ti/Si比が1:1のもの、5:12のもの、2:1のもの等、複数種類の組成のものが知られているが、その他に、Ti/Si比が4:3である結晶性シリコチタネートが存在することが知られている。非特許文献2には、Ti源としてTi(OET)
4というアルコキシドを用い、Si源としてコロイダルシリカを用いて水熱処理により製造される製造物3B及び3Cは、そのX線回折パターンから、3次元的な8員環構造を有していること、この構造の結晶性シリコチタネートは、理想的にはM
4Ti
4Si
3O
16(MはNa、K等)で表される組成を有することを報告し、この構造の結晶性シリコチタネートにGrace titanium silicate(GTS−1)と名付けている。また、非特許文献3にはTi/Si比が4:3である結晶性シリコチタネートを、Ti源として四塩化チタンを含有し、Si源として高分散SiO
2粉末を含有する混合溶液に水熱処理を施すことにより製造した旨が記載されている。同文献には、合成した結晶性シリコチタネートが、ストロンチウムイオン交換能を有する旨が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の結晶性シリコチタネートの製造方法における第一工程は、ケイ酸源、カリウム化合物、四塩化チタン及び水を混合し混合ゲルを製造する工程である。
【0013】
第一工程において用いられるケイ酸源としては、例えば、ケイ酸カリウムが挙げられる。また、ケイ酸アルカリ(すなわちケイ酸のアルカリ金属塩)をカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸も挙げられる。
【0014】
活性ケイ酸は、ケイ酸アルカリ水溶液を例えばカチオン交換樹脂に接触させてカチオン交換して得られるものである。ケイ酸アルカリ水溶液の原料としては、通常水ガラス(水ガラス1号〜4号等)と呼ばれるケイ酸ナトリウム水溶液が好適に用いられる。このものは比較的安価であり、容易に手に入れることができる。また、Naイオンを嫌う半導体用途では、ケイ酸カリウム水溶液が原料としてふさわしい。固体状のメタケイ酸アルカリを水に溶かしてケイ酸アルカリ水溶液を調製する方法もある。メタケイ酸アルカリは晶析工程を経て製造されるので、不純物の少ないものがある。ケイ酸アルカリ水溶液は、必要に応じて水で希釈して使用する。
【0015】
活性ケイ酸を調製するときに使用するカチオン交換樹脂は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に制限されない。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触工程では、例えばケイ酸アルカリ水溶液をシリカが濃度3質量%以上10質量%以下となるように水に希釈し、次いで、希釈したケイ酸アルカリ水溶液をH型強酸性又は弱酸性カチオン交換樹脂に接触させて脱アルカリする。更に必要に応じてOH型強塩基性アニオン交換樹脂に接触させて脱アニオンすることができる。この工程によって、活性ケイ酸水溶液が調製される。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触条件の詳細については、従来、様々な提案が既にあり、本発明ではそれら公知のいかなる接触条件も採用することができる。
【0016】
第一工程において用いられるカリウム化合物としては、例えば、水酸化カリウム、炭酸カリウムが挙げられる。これらのカリウム化合物のうち、炭酸カリウムを用いると炭酸ガスが発生するため、そのようなガスの発生がない水酸化カリウムを用いることが、中和反応を円滑に進める観点から好ましい。
【0017】
本発明の結晶性シリコチタネートの製造方法においては、チタン源として四塩化チタンを用いることも特徴の1つである。酸化チタン等の他のチタン化合物をチタン源とした場合には、未反応の酸化チタンが残存したり或いはTi:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコネートが生成しやすい。そこで本発明ではチタン源として四塩化チタンを用いている。
【0018】
第一工程において用いられる四塩化チタンは、工業的に入手可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0019】
ケイ酸源及び四塩化チタンの添加量を、混合ゲル中の四塩化チタン由来のTiとケイ素源由来のSiとのモル比であるTi/Siが特定比となる量とすることも、本発明の結晶性シリコチタネートの製造方法の特徴の一つである。例えば、非特許文献3においては、チタン源として四塩化チタンを用いているが、ケイ酸源及び四塩化チタンは、Ti/Si比が0.32となる量で混合溶液に添加されている。これに対し、本発明では、Ti/Si比が0.5以上3.0以下となるような量でケイ酸源及び四塩化チタンを添加する。本発明者らが検討した結果、混合ゲル中のTi/Si比を前記のモル範囲に設定することで、K
4Ti
4Si
3O1
6・nH
2Oで表さされる結晶性シリコチタネートとして結晶化度の高いものが得られやすく、この結晶性シリコチタネートを吸着材として用いた場合に特にセシウムの吸着性能が向上することを見出した。この観点から、混合ゲル中のTi/Si比は、1.0以上3.0以下であることが好ましく、1.1以上2.5以下であることがより好ましく、1.2以上2.2以下であることが更に好ましい。
【0020】
また、混合ゲルに占めるSiO
2換算のケイ酸源濃度とTiO
2換算の四塩化チタン濃度の総量が2.0質量%以上40質量%以下、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%であることが、収率よく結晶性シリコチタネートを得る観点から好ましい。
【0021】
本発明において、混合ゲル中のK
2O/SiO
2のモル比が0.5以上3.0以下、好ましくは0.7以上1.5以下、より好ましくは0.9以上1.5以下とすることも本発明の結晶性シリコチタネートの製造方法の特徴の一つである。本発明者らが検討した結果、混合ゲル中のK
2O/SiO
2の比を前記のモル範囲に設定することで、K
4Ti
4Si
3O1
6・nH
2Oで表さされる結晶性シリコチタネートとして、より結晶化度の高いものが収率よく得られ、この結晶性シリコチタネートを吸着材として用いた場合に特にセシウムの吸着性能が更に向上することを見出した。
【0022】
第一工程において、ケイ酸源、カリウム化合物及び四塩化チタンは、それぞれ水溶液の形態で反応系に添加することができる。場合によっては固体の形態で添加することもできる。更に第一工程では、得られた混合ゲルに対して、必要があれば純水を用いて該混合ゲルの濃度を調整することができる。
【0023】
第一工程において、ケイ酸源、カリウム化合物及び四塩化チタンは、種々の添加順序で添加することができる。例えば(1)ケイ酸源、カリウム化合物及び水を混合したものに、四塩化チタンを添加することにより混合ゲルを得ることができる(この添加順序のことを、以下、単に「(1)の実施」ということもある。)。この(1)の実施は、四塩化チタンから塩素の発生をおさえる点で好ましい。
【0024】
第一工程における別の添加順序として、(2)ケイ酸アルカリをカチオン交換することによって得られる活性ケイ酸(以下、単に「活性ケイ酸」ということもある。)水溶液と四塩化チタンと水とを混合したものに、カリウム化合物を添加する、という態様を採用することもできる。この添加順序を採用しても、(1)の実施と同様に混合ゲルを得ることができる(この添加順序のことを、以下、単に「(2)の実施」ということもある。)。四塩化チタンはその水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。同様に、カリウム化合物も、その水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。
【0025】
(1)及び(2)の実施において、カリウム化合物は、混合ゲル中のカリウム濃度がK
2O換算で0.5質量%以上15.0質量%以下、特に0.7質量%以上13質量%以下となるように添加されることが好ましい。混合ゲル中におけるカリウムのK
2O換算重量及び混合ゲル中におけるカリウムのK
2O換算の濃度(以下「カリウム濃度」と言う)は、以下の式で計算される。
混合ゲル中におけるカリウムのK
2O換算重量(g)
=ケイ酸カリウム由来のカリウムイオンのモル数+水酸化カリウム等のカリウム化合物由来のカリウムイオンのモル数−四塩化チタン由来の塩化物イオンのモル数)×0.5×K
2O分子量
混合ゲル中におけるカリウムのK
2O換算の濃度(質量%)
=混合ゲル中におけるカリウムのK
2O換算重量/(混合ゲル中の水分量+混合ゲル中におけるカリウムのK
2O換算重量)×100
【0026】
本発明において、混合ゲル中には実質的にNaを含まないものであることがあることが目的とする結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネートの生成を抑制する上で好ましい。
本発明において、実質的にNaを含まないとは、Na
2O換算の濃度で、混合ゲル中の濃度が0.5質量%未満を意味する。
【0027】
ケイ酸源の選択と混合ゲル中のカリウム濃度の調整を組み合わせるにより、Ti:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネートの生成を抑制することが出来る。ケイ酸源としてケイ酸カリウムを用いた場合、K
2O換算で2.8質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のカリウム濃度をK
2O換算で6質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。また、ケイ酸源としてケイ酸アルカリをカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸を用いた場合、K
2O換算で1質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のカリウム濃度をK
2O換算で6質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。
【0028】
なお、ケイ酸源としてケイ酸カリウムを用いた場合は、ケイ酸カリウム中のカリウム成分は、同時に混合ゲル中のカリウム源となる。したがって、ここで言う「混合ゲル中におけるカリウムのK
2O換算重量(g)」とは、混合ゲル中のすべてのカリウム成分の和として計数される。
【0029】
(1)及び(2)の実施において、四塩化チタンの添加は、均一なゲルを得るため一定の時間をかけて、四塩化チタン水溶液として段階的又は連続的に行うことが望ましい。このため、四塩化チタンの添加にはペリスタポンプ等を好適に用いることができる。
【0030】
第一工程により得られた混合ゲルは、後述する第二工程である水熱反応を行う前に、0.1時間以上5時間以下の時間にわたり、10℃以上100℃以下で熟成を行うことが、均一な生成物を得る点で好ましい。熟成工程は、例えば静置状態で行ってもよく、あるいはラインミキサーなどを用いた撹拌状態で行ってもよい。
【0031】
本発明においては第一工程において得られた前記混合ゲルを、第二工程である水熱反応に付して結晶性シリコチタネートを得る。水熱反応としては、結晶性シリコチタネートが合成できる条件であれば、いかなる条件であってもよく制限されない。通常、オートクレーブ中で好ましくは120℃以上200℃以下、更に好ましくは140℃以上180℃以下の温度において、好ましくは6時間以上72時間以下、更に好ましくは12時間以上36時間以下の時間にわたって、加圧下に反応させる。反応時間は、合成装置のスケールに応じて選定できる。
【0032】
前記第二工程で得られた含水状態の結晶性シリコチタネートは乾燥させ、得られた乾燥物を必要により解砕又は粉砕して粉末状(粒状を含む)とすることができる。また、含水状態の結晶性シリコチタネートを複数の開孔が形成された開孔部材から押出成形して棒状成形体を得、得られた該棒状成形体を乾燥させて柱状にしてもよいし、乾燥させた該棒状成形体を球状に成形したり、解砕又は粉砕して粒子状としてもよい。後者の場合つまり乾燥前に押出成形を行う場合、後述する分級方法により回収される結晶性シリコチタネートの収率を高めることができる。ここで、解砕とは、細かい粒子が集まって一塊になっているものをほぐす操作をいい、粉砕とはほぐされた固体粒子に対し,機械的な力を作用させさらに細かくする操作をいう。
【0033】
開孔部材に形成された孔の形状としては、円形、三角形、多角形、環形等を挙げることができる。開孔の真円換算径は0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましい。ここでいう真円換算径は、孔一つの面積を円面積とした場合の該面積から算出される円の直径である。押出成形後の乾燥温度は例えば例えば50℃以上200℃以下とすることができる。また乾燥時間は1時間以上120時間以下とすることができる。
【0034】
乾燥させた棒状成形体は、そのままでも吸着材として用いることができるし、軽くほぐして用いてもよい。また乾燥後の棒状成形体は粉砕して用いてもよい。これら各種の方法で得られた粉末状の結晶性シリコチタネートは、更に分級してから吸着材として用いることが、セシウム及び/又はストロンチウムの吸着効率を高める等の観点から好ましい。分級は、例えばJISZ8801−1に規定する公称目開きが1000μm以下、特に710μm以下の第1の篩を用いることが好ましい。また前記の公称目開きが100μm以上、特に300μm以上の第2の篩を用いて行うことも好ましい。更に、これら第1及び第2の篩を用いて行うことが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートは、一般式;K
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、nは0〜8を示す。)で表される。本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートの第一の特徴は、前記一般式から明らかなように、Ti:Siのモル比が4:3である点にある。前記結晶性シリコチタネートにおけるTi:Siのモル比がこの値であることは、該結晶性シリコチタネートをX線回折による構造解析及びICPによる組成分析で確認することができる。
【0036】
本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートの第二の特徴は、不純物として酸化チタンを含まない点にある。酸化チタンを含まないことは、前記結晶性シリコチタネートをX線回折測定して得られる回折ピーク中に、酸化チタンのピークである2θ=25°が検出されないことによって確認することができる。
【0037】
本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートは、特にセシウムの吸着除去特性に優れ、これに加えてストロンチウムの吸着除去特性も高い。この特性を利用して、この結晶性シリコチタネートを必要に応じて常法に従い成形加工し、それによって得られた成形体をセシウム及び/又はストロンチウムの吸着材として好適に用いることができる。
【0038】
前記の成形加工としては、例えば粉末状の結晶性シリコチタネート又はそれを含む粉末状の吸着材を顆粒状に成型するための造粒加工や粉末状の結晶性シリコチタネートをスラリー化して塩化カルシウム等の硬化剤を含む液中に滴下して結晶性シリコチタネートをカプセル化する方法、樹脂芯材の表面に結晶性シリコチタネートの粉末を添着被覆処理する方法、天然繊維または合成繊維で形成されたシート状基材の表面及び/又は内部に粉末状の結晶性シリコチタネート又はそれを含む粉末状の吸着材を付着させて固定化してシート状にする方法などを挙げることができる。造粒加工の方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば攪拌混合造粒、転動造粒、押し出し造粒、破砕造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒(スプレードライ)、圧縮造粒等を挙げることができる。造粒の過程において必要に応じバインダーや溶媒を添加、混合してもよい。バインダーとしては、公知のもの、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。溶媒としては水性溶媒や有機溶媒等各種のものを用いることができる。
【0039】
本発明の製造方法によって得られる含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工した顆粒状のものは、放射性物質吸着材を充填してなる吸着容器及び吸着塔を有する水処理システムの吸着材として好適に使用することが出来る。
この場合、含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工して得られる顆粒状のものの形状や大きさは、吸着容器や充填塔に充填して、セシウム及び/又はストロンチウムを含む処理水を通水するのに適応するようにその形状及び大きさを適宜調整することが好ましい。
【0040】
また、本発明の製造方法によって得られる含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工した顆粒状のものは、更に磁性粒子を含有させることにより、セシウム及び/又はストロンチウムを含む水から磁気分離で回収可能な吸着材として使用することが出来る。磁性粒子としては、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の金属またはこれらを主成分とする磁性合金の粉末、四三酸化鉄、三二酸化鉄、コバルト添加酸化鉄、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の金属酸化物系磁性体の粉末が挙げられる。
含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工した顆粒状のものに磁性粒子を含有させる方法としては、例えば、前述した造粒加工操作を磁性粒子を含有させた状態で行えばよい。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り「%」は「質量%」を表す。実施例及び比較例で使用した評価装置及び使用材料は以下のとおりである。
【0042】
<評価装置>
X線回折:Bruker社 D8 AdvanceSを用いた。線源としてCu−Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secとした。
ICP−AES:Varian社720−ESを用いた。
Csの測定波長は697.327nm、Srの測定波長は216.596nmとしてCs及びSrの吸着試験を行った。標準試料はNaClを0.3%含有したCs:100ppm、50ppm及び10ppmの水溶液、並びにNaClを0.3%含有したSr:100ppm、10ppm及び1ppmの水溶液を使用した。
【0043】
<使用材料>
・ケイ酸カリウム:日本化学工業株式会社製(SiO
2:26.5%、K
2O:13.5%、H
2O:60.00%、SiO
2/K
2O=3.09)。
・ケイ酸ナトリウム:日本化学工業株式会社製(SiO
2:28.96%、Na
2O:9.37%、H
2O:61.67%、SiO
2/Na
2O=3.1)。
・苛性カリ:固体試薬 水酸化カリウム(KOH:85%)
・苛性ソーダ水溶液;工業用25%水酸化ナトリウム(NaOH:25%、H
2O:75%)
・四塩化チタン水溶液:株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ社製36.48%水溶液
・二酸化チタン:石原産業ST−01
・模擬海水:Cs及びSrをそれぞれ100ppm含有した0.3%NaCl水溶液を模擬海水とした。模擬海水はNaCl(99.5%):3.0151g、SrCl・6H
2O(99%):0.3074g、CsNO
3(99%):0.1481g、H
2O:996.5294gを混合して得た。
【0044】
〔実施例1〕
<結晶性シリコチタネートの合成>
(1)第一工程
ケイ酸カリウム114.5g、85%苛性カリ336.0g及び純水635.4gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液527.1gをペリスタポンプで0.5時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。このとき混合ゲル中のTiとSiとのモル比はTi:Si=2:1であった。また混合ゲル中のSiO
2の濃度は1.88%、TiO
2の濃度は5.00%、K
2Oの濃度は5.41%であった。
【0045】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて140℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造及びICP−AESによる組成分析から判断される組成を以下の表1に示す。また、得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを
図1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<Cs及びSrの吸着試験>
得られた塊状の結晶性シリコチタネートを乳鉢粉砕および600μmと300μmのフルイによる分級により顆粒状(300〜600μm)とした。この顆粒状の結晶性シリコチタネートを、100mlのポリ容器に0.5g取り、模擬海水100.00gを添加し、蓋をした後、内容物を振り混ぜた。内容物の振り混ぜは、ポリ容器の倒立を10回行うことにより行った(以下同様)。その後、静置して1時間経過した後、再び内容物を振り混ぜ、約50mlを5Cのろ紙でろ過し、ろ過によって得られたろ液を採取した。また、残りの50mlはそのまま静置し、更に23時間後(最初に振り混ぜてから24時間後)に再び振り混ぜた。そして、5Cのろ紙でろ過し、ろ過によって得られたろ液を採取した。採取されたろ液を対象として、ICP−AESを用い、ろ液中のCs及びSrの含有量を測定した。その結果を以下の表6に示す。
【0048】
〔実施例2〕
<結晶性シリコチタネートの合成>
(1)第一工程
ケイ酸カリウム163.6g、85%苛性カリ322.4g及び純水744.8gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液502.0gをペリスタポンプで0.5時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。このとき混合ゲル中のTiとSiとのモル比はTi:Si=1:0.75であった。また混合ゲル中のSiO
2の濃度は2.50%、TiO
2の濃度は4.43%、K
2Oの濃度は5.35%であった。
【0049】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、2時間かけて140℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に18時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造及びICP−AESによる組成分析から判断される組成を以下の表2に示す。また、得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを
図2に示す。得られた結晶性シリコチタネートの吸着試験の結果を表6に併せて示す。
【0050】
【表2】
【0051】
〔実施例3〕
<結晶性シリコチタネートの合成>
(1)第一工程
ケイ酸カリウム129.0g、85%苛性カリ380.6g及び純水635.4gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液600.0gをペリスタポンプで0.5時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。このとき混合ゲル中のTiとSiとのモル比はTi:Si=2:1であった。また混合ゲル中のSiO
2の濃度は1.96%、TiO
2の濃度は5.26%、K
2Oの濃度は5.68%であった。
【0052】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて140℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造及びICPによる元素分析から判断される組成を以下の表3に示す。また、得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを
図3に示す。得られた結晶性シリコチタネートの吸着試験の結果を表6に併せて示す。
【0053】
【表3】
【0054】
〔実施例4〕
<結晶性シリコチタネートの合成>
(1)第一工程
ケイ酸カリウム114.5g、85%苛性カリ300.6g及び純水670.8gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液527.1gをペリスタポンプで0.5時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。このとき混合ゲル中のTiとSiとのモル比はTi:Si=2:1であった。また混合ゲル中のSiO
2の濃度は1.88%、TiO
2の濃度は5.00%、K
2Oの濃度は3.23%であった。
【0055】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、2時間かけて140℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に18時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造及びICPによる元素分析から判断される組成を以下の表4に示す。また、得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを
図4に示す。得られた結晶性シリコチタネートの吸着試験の結果を表6に併せて示す。
【0056】
【表4】
【0057】
〔比較例1〕
3号ケイ酸ソーダ90g、苛性ソーダ水溶液121.2g及び純水776.1gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、二酸化チタン68.2gにイオン交換水270gに混合分散したスラリーを前記混合液に5分間にわたり連続的に添加し混合ゲルを得た。当該混合ゲルは、二酸化チタンの添加後、1時間にわたり室温で熟成した。この混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行い、反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して結晶性シリコチタネートを得た。混合ゲル中のTiとSiとのモル比はTi:Si=2:1であった。混合ゲル中のSiO
2の濃度は1.97%、TiO
2の濃度は5.15%、Na
2Oの濃度は2.59%であった。得られた結晶性シリコチタネートについて実施例1と同様の分析及び吸着試験を行った。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造及びICP−AESによる組成分析から判断される組成を以下の表3に示す。結果として、不純物として酸化チタンの存在が確認された。またCs及びSrの吸着試験の結果を以下の表6に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
表1〜4及び表6に示す結果から明らかなとおり、本実施例によれば、K
4Ti
4Si
3O
16・6H
2Oで表される結晶性シリコチタネートを得られることが判り、この結晶性シリコチタネートは模擬海水中に含まれるCs及びSrを高吸着率で吸着除去できることが判る。また、実施例の条件を採用することで、未反応のチタン源が残存したり或いはTi:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネートの副生を抑制し、単相の結晶性シリコチタネートを得ることができる。