特許第6356587号(P6356587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356587
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20180702BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20180702BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20180702BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20180702BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180702BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20180702BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20180702BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08J5/24CFC
   C09J7/25
   C09J163/00
   C09J11/06
   H05K1/03 610L
   H05K1/03 610S
   H05K3/46 T
   H05K3/46 B
   H05K3/38 A
   H05K3/38 E
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-242415(P2014-242415)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-127410(P2015-127410A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2017年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-248201(P2013-248201)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】溝部 昇
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−171887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/
C08L
C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物と、硬化促進剤とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を表し、R、R、およびRは、同一または異なって、水素原子、メルカプトメチル基、2−メルカプトエチル基または3−メルカプトプロピル基を表し、nは0〜2の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を支持ベースフィルム上に薄膜形成して得られることを特徴とする接着フィルム。
【請求項3】
請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材に含浸および/または塗工して得られることを特徴とするプリプレグ。
【請求項4】
請求項1記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物の一方の面にメッキ導体層が形成され、他面はパターン加工された内層回路基板に密着して積層されていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項5】
請求項1記載のエポキシ樹脂組成物をパターン加工された内層回路基板に塗工し、加熱硬化させた後、酸化剤により得られた硬化物の表面を粗化し、その粗化面に導体層をメッキにより形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項2記載の接着フィルムを、パターン加工された内層回路基板に加圧、加熱下でラミネートし、必要により支持ベースフィルムを剥離し、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた後、酸化剤により得られた硬化物の表面を粗化し、その粗化面に導体層をメッキにより形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項3記載のプリプレグを、パターン加工された内層回路基板に加圧、加熱下で積層し、一体化させた後、酸化剤により該プリプレグ表面を粗化し、その粗化面に導体層をメッキにより形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に塗工し、加熱硬化して得られることを特徴とする積層板。
【請求項9】
請求項2記載の接着フィルムを両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、加圧、加熱下でラミネートし、必要により支持ベースフィルムを剥離し、加熱硬化して得られることを特徴とする積層板。
【請求項10】
請求項3記載のプリプレグを両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、加圧、加熱下で積層して得られることを特徴とする積層板。
【請求項11】
請求項3記載のプリプレグを加圧、加熱下で積層して得られることを特徴とする積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、多層プリント配線板の製造方法および積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器類の進歩に伴い、半導体などの電子部品を実装するプリント配線板も、軽薄短小化や高密度実装化への対応が求められている。高密度実装のためには、プリント配線板全体を貫通させるスルーホールではなく、特定の層間を導通させる必要がある。多層プリント配線板の新しい製造方法として、内層回路板の導体層上にエポキシ樹脂などの有機絶縁層を交互に積み上げていくビルドアップ方式の製造技術が主に使われるようになっている。
特許文献1および特許文献2には、内層回路板にエポキシ樹脂組成物を塗布、加熱硬化後、粗化剤により表面に凹凸の粗化面を形成し、導体層をメッキにより形成するビルドアップ方式の多層プリント配線板の製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、フィルム状アディティブ接着剤を貼り合わせて加熱硬化させた後、アルカリ性酸化剤で粗化し、導体層をメッキにより形成する多層プリント配線板の製造方法が開示されている。
【0003】
このような用途に使用されるエポキシ樹脂組成物では、硬化剤として、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物のようなアミン系硬化剤やフェノール系硬化剤を使用するのが一般的であった。特許文献4には、トリアジン構造を有するフェノール系硬化剤を使用し、高い耐熱性と酸化剤による粗化性を両立させた層間絶縁材用エポキシ樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、ジシアンジアミド硬化剤を使用する場合は、耐熱性の向上が必要であった。また、フェノール系硬化剤を使用する場合は、その樹脂組成物にゴム成分などの粗化成分が必須であるため、より微細なファインパターン化、絶縁層の薄膜化が要求される分野では、耐熱性や電気絶縁性が問題となる場合があった。
【0004】
また、難燃性エポキシ樹脂として、臭素系エポキシ樹脂の代わりにリン原子含有エポキシ樹脂を使用した場合、既存の樹脂組成物では良好な粗化面が得られず、その後のメッキ導体層ピール強度が弱いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−304931号公報
【特許文献2】特開平7−304933号公報
【特許文献3】特開平8−64960号公報
【特許文献4】特開平11−1547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱性に優れ、且つ、酸化剤により粗化することで、メッキ導体層との密着性に優れた硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、該エポキシ樹脂組成物を利用した接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、多層プリント配線板の製造方法、および積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のグリコールウリル化合物を含有するエポキシ樹脂組成物とすることにより、所期の目的を達成することを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、第1の発明は、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物と、硬化促進剤とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【0008】
【化1】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を表し、R、R、およびRは、同一または異なって、水素原子、メルカプトメチル基、2−メルカプトエチル基または3−メルカプトプロピル基を表し、nは0〜2の整数を表す。)
【0009】
第2の発明は、第1の発明のエポキシ樹脂組成物を支持ベースフィルム上に薄膜形成して得られることを特徴とする接着フィルムである。
第3の発明は、第1の発明のエポキシ樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材に含浸および/または塗工して得られることを特徴とするプリプレグである。
第4の発明は、第1の発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の一方の面にメッキ導体層が形成され、他面はパターン加工された内層回路基板に密着して積層されていることを特徴とする多層プリント配線板である
第5の発明は、第1の発明のエポキシ樹脂組成物をパターン加工された内層回路基板に塗工し、加熱硬化させた後、酸化剤により得られた硬化物の表面を粗化し、その粗化面に導体層をメッキにより形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
の発明は、第2の発明の接着フィルムを、パターン加工された内層回路基板に加圧、加熱下でラミネートし、必要により支持ベースフィルムを剥離し、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた後、酸化剤により得られた硬化物の表面を粗化し、その粗化面に導体層をメッキにより形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
の発明は、第3の発明のプリプレグを、パターン加工された内層回路基板に加圧、加熱下で積層し、一体化させた後、酸化剤により該プリプレグ表面を粗化し、その粗化面に導体層をメッキにより形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
の発明は、第1の発明のエポキシ樹脂組成物を両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に塗工し、加熱硬化して得られることを特徴とする積層板である。
の発明は、第2の発明の接着フィルムを両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、加圧、加熱下でラミネートし、必要により支持ベースフィルムを剥離し、加熱硬化して得られることを特徴とする積層板である。
10の発明は、第3の発明のプリプレグを両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、加圧、加熱下で積層して得られることを特徴とする積層板である。
11の発明は、第3の発明のプリプレグを加圧、加熱下で積層して得られることを特徴とする積層板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性に優れ、且つ、酸化剤により粗化することで、メッキ導体層との密着性に優れた硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
また、該エポキシ樹脂組成物を利用した接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、多層プリント配線板の製造方法および積層板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(以下、単に「エポキシ樹脂」と云うことがある)と、前記の化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物(以下、単に「グリコールウリル化合物」と云うことがある)と、硬化促進剤とを含有する。
【0012】
本発明の実施において使用するエポキシ樹脂は、硬化して重合物(樹脂)になる物質であるから、本来エポキシ化合物と云うべきであるが、慣用的にエポキシ樹脂と称されている。このようなエポキシ樹脂により、層間絶縁材として求められる耐熱性、耐薬品性や電気特性などの諸物性を発現させることができる。
【0013】
前記のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとが縮合したエポキシ化合物や脂環式エポキシ樹脂の他、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルグリコールウリル化合物などが挙げられる。
また、反応性希釈剤として、フェニルグリシジルエーテルなどの単官能エポキシ樹脂を含有していてもよい。
【0014】
前記のグリシジルグリコールウリル化合物としては、
1,3−ジグリシジルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジルグリコールウリル、
1,3−ジグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,3−ジグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3−ジグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリルなどが挙げられる。
【0015】
本発明の実施においては、これらのエポキシ樹脂から選択される1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらのエポキシ樹脂は、リン原子を含有していてもよく、例えば、特開平4−11662号公報や特開平11−166035号公報に記載されているものが挙げられる。
【0017】
本発明の実施において使用するグリコールウリル化合物としては、
1−メルカプトメチルグリコールウリル、
1−(2−メルカプトエチル)グリコールウリル、
1−(3−メルカプトプロピル)グリコールウリル、
1,3−ビス(メルカプトメチル)グリコールウリル、
1,3−ビス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル、
1,3−ビス(3−メルカプトプロピル)グリコールウリル、
1,4−ビス(メルカプトメチル)グリコールウリル、
1,4−ビス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル、
1,4−ビス(3−メルカプトプロピル)グリコールウリル、
1,6−ビス(メルカプトメチル)グリコールウリル、
1,6−ビス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル、
1,6−ビス(3−メルカプトプロピル)グリコールウリル、
1,3,4−トリス(メルカプトメチル)グリコールウリル、
1,3,4−トリス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル、
1,3,4−トリス(3−メルカプトプロピル)グリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(メルカプトメチル)グリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(3−メルカプトプロピル)グリコールウリル、
1−メルカプトメチル−3a−メチルグリコールウリル、
1−メルカプトメチル−6a−メチルグリコールウリル、
1−(2−メルカプトエチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1−(2−メルカプトエチル)−6a−メチルグリコールウリル、
1−(3−メルカプトプロピル)−3a−メチルグリコールウリル、
1−(3−メルカプトプロピル)−6a−メチルグリコールウリル、
1,3−ビス(メルカプトメチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,3−ビス(2−メルカプトエチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,3−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,4−ビス(メルカプトメチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,4−ビス(2−メルカプトエチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,4−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,6−ビス(メルカプトメチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,6−ビス(メルカプトメチル)−6a−メチルグリコールウリル、
1,6−ビス(2−メルカプトエチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,6−(2−ビスメルカプトエチル)−6a−メチルグリコールウリル、
1,6−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,6−ビス(3−メルカプトプロピル)−6a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(メルカプトメチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(メルカプトメチル)−6a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(2−メルカプトエチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(2−メルカプトエチル)−6a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(3−メルカプトプロピル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(3−メルカプトプロピル)−6a−メチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(メルカプトメチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(3−メルカプトプロピル)−3a−メチルグリコールウリル、
1−メルカプトメチル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1−(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1−(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3−ビス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3−ビス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,4−ビス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,4−ビス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,4−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,6−ビス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,6−ビス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,6−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1−メルカプトメチル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1−(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1−(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3−ビス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3−ビス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,4−ビス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,4−ビス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,4−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,6−ビス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,6−ビス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,6−ビス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4−トリス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(メルカプトメチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラキス(3−メルカプトプロピル)−3a,6a−ジフェニルグリコールウリルなどが挙げられる。
本発明の実施においては、これらのグリコールウリル化合物から選択される1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物における、前記のグリコールウリル化合物の含有量は、エポキシ樹脂の1エポキシ当量に対して、0.1〜3.0チオール基当量の割合であることが好ましく、0.5〜2.0チオール基当量の割合であることがより好ましい。
【0019】
本発明の実施において使用する硬化促進剤としては、従来公知のイミダゾール類や三級アミン類、グアニジン類、またはこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したものの他、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートなどの有機ホスフィン系化合物等が挙げられ、これらから選択される1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物における、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.05〜10重量部の割合であることが好ましい。0.05重量部未満の場合には、硬化不足となる虞があり、一方、10重量部を超える場合には、硬化促進の向上効果がほぼ頭打ちとなり、使用期限の短縮や、耐熱性、機械強度を損なう虞がある。
【0021】
更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記の成分の他に、熱硬化性樹脂や従来公知の添加剤を含有させることができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、シリコン樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、BTレジン、ブロックイソシアネート樹脂などが挙げられる。
添加剤としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、無定形シリカ、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機充填剤、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダーの如き有機充填剤、アスベスト、オルベン、ベントンなどの増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの密着性付与剤、リン系難燃剤等が挙げられる。また、必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、酸化チタン、カーボンブラックなどの従来公知の着色剤を使用することができる。
【0022】
本発明の接着フィルムは、前記エポキシ樹脂組成物を支持ベースフィルム上に薄膜形成することで得られる。
この接着フィルムの製造方法としては、支持ベースフィルムを支持体とし、その表面に、所定の有機溶剤に該エポキシ樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを塗布後、加熱および/または熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させて薄膜とし、接着フィルムを製造する方法がある。
支持ベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔の如き金属箔等が挙げられる。なお、支持ベースフィルムにはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してもよい。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテートなどの酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらから選択される1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
具体的には、厚み10〜200μmの支持ベースフィルムに、該エポキシ樹脂組成物層の厚みがラミネートする内層回路板の導体厚以上で、10〜150μmの範囲であり、該エポキシ樹脂組成物層の他の面に厚み1〜40μmの支持フィルムの如き保護フィルムを更に積層して製造される。
【0023】
本発明のプリプレグは、前記エポキシ樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法またはソルベント法により含浸させ、加熱、半硬化させることにより作製することができる。
繊維からなるシート状補強基材としては、ガラスクロスやアラミド繊維など、従来公知のプリプレグ用繊維を使用することができる。ホットメルト法では、無溶剤の樹脂を使用して、樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをラミネートする方法や、ダイコーターにより直接塗工する方法などが知られている。また、ソルベント法は、接着フィルムと同様に有機溶剤に該エポキシ樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスに、シート状補強基材を浸漬、含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0024】
本発明の多層プリント配線板は、前記エポキシ樹脂組成物層の硬化層(硬化物)の粗化された面にメッキ導体層が形成され、他面はパターン加工された内層回路基板に密着して積層されている。
先ず、該エポキシ樹脂組成物をパターン加工された内層回路基板に塗工し、有機溶剤を含有している場合には乾燥した後、加熱硬化させる。内層回路基板としては、ガラスエポキシ基板や金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板などを使用することができ、回路表面は予め粗化処理されていてもよい。乾燥条件は70〜130℃で5〜40分間、加熱硬化条件は130〜180℃で15〜90分間の範囲とすることが好ましい。加熱硬化後、必要に応じて所定のスルーホール、ビアホール部などにドリルおよび/またはレーザー、プラズマにより穴開けを行う。次いで、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸などの酸化剤で粗化処理し、硬化物表面に凹凸のアンカーが形成される。更に、無電解および/または電解メッキにより導体層を形成するが、このとき導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。このように導体層が形成された後、150〜180℃で20〜60分間アニール処理することにより、残留している未反応のエポキシ樹脂が硬化し、導体層のピール強度を更に向上させることもできる。
【0025】
本発明の接着フィルムを使用して多層プリント配線板を製造するには、パターン加工された内層回路基板に該接着フィルムをラミネートする。ラミネートは、該接着フィルムに保護フィルムが積層している場合には保護フィルムを除去後、接着剤の性能を有する該エポキシ樹脂組成物の薄膜を加圧、加熱しながら貼り合わせる。ラミネート条件は、フィルムおよび内層回路基板を必要によりプレヒートし、圧着温度が70〜130℃、圧着圧力が1〜11kgf/cm2であって、減圧下で積層するのが好ましい。なお、ラミネートはバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。ラミネート後、室温付近に冷却してから支持フィルムを剥離し、内層回路基板上に該エポキシ樹脂組成物を転写した後、加熱硬化させる。また、離型処理の施された支持フィルムを使用した場合には、加熱硬化させた後に支持フィルムを剥離してもよい。その後、前記と同様にして、酸化剤により得られた硬化物の表面を粗化処理し、導体層をメッキにより形成することで、多層プリント配線板を製造することができる。
【0026】
一方、本発明のプリプレグを使用して多層プリント配線板を製造するには、パターン加工された内層回路基板に該プリプレグを1枚あるいは所定の必要枚数重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧、加熱下、積層プレスする。加圧条件は5〜40kgf/cm2、加熱条件は120〜180℃で20〜100分間の範囲で成型するのが好ましい。また、前記のラミネート方式によっても製造可能である。その後、前記と同様にして、酸化剤により該プリプレグ表面を粗化処理し、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。製造された多層プリント配線板は、内層回路基板がパターン加工された内層回路を同方向に2層以上有する場合には、該内層回路間に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物である絶縁層を有していることになる。本発明で云うパターン加工された内層回路基板は、多層プリント配線板に対する相対的な呼称である。例えば、基板両面に回路を形成し、更に、その両回路表面にエポキシ樹脂組成物の硬化した薄膜を絶縁層として各々形成した後、その両表面に各々回路を形成すると4層プリント配線板が形成できる。この場合の内層回路基板とは、基板上に形成された両面に回路形成されたプリント配線板を云う。更に、この4層プリント配線板の両表面に、絶縁層を介して各々1層の回路を追加形成すれば、6層プリント配線板ができる。この場合の内層回路基板とは、前記の4層プリント配線板を云うことになる。
【0027】
本発明の積層板は、前記エポキシ樹脂組成物を、両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、塗工、加熱硬化させることにより得ることができる。前記アンクラッド板は、銅張積層板製造時に、銅箔の代わりに離型フィルムなどを使用することにより得られる。
このようにして得られた積層板は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸などの酸化剤で粗化処理を行うことにより、積層板表面に凹凸のアンカーが形成され、更に無電解および/または電解メッキにより、積層板表面に直接導体層を形成することができる。
【0028】
また、本発明の積層板は、本発明の接着フィルムを、両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、ラミネートし、加熱硬化させることにより得ることができる。
このようにして得られた積層板は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸などの酸化剤で粗化処理を行うことにより、積層板表面に凹凸のアンカーが形成され、更に無電解および/または電解メッキにより、積層板表面に直接導体層を形成することができる。
【0029】
更に、本発明の積層板は、本発明のプリプレグを、所定の枚数を重ねるか、または両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に載せ、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧、加熱下、積層プレスすることにより得ることができる。
このようにして得られた積層板は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸などの酸化剤で粗化処理を行うことにより、積層板表面に凹凸のアンカーが形成され、更に無電解および/または電解メッキにより、積層板表面に直接導体層を形成することができる。
【0030】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、実施例および比較例において採用した評価試験は、以下のとおりである。
【0031】
[評価試験]
(1)ピール強度の測定
JIS C6481に準拠して測定を行った。導体メッキ厚は約30μm。
【0032】
(2)煮沸耐熱性試験
試験片を2時間煮沸処理した後、260℃のはんだ浴に60秒間浸漬し、外観を目視により確認した。下記評価基準に従い判定した。
○;良好、×;ふくれ、はがれ発生。
【0033】
[実施例1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製jER828、エポキシ当量185)100重量部と、1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル(四国化成工業社製)55重量部を撹拌しながら加熱溶解させた後、室温まで冷却する。続いて、2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(四国化成工業社製2PHZ−PW)0.8重量部と、微粉砕シリカ2重量部を添加してエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を銅箔35μmのガラスエポキシ両面銅張積層板に塗布し、170℃で30分間加熱硬化させた。次いで、過マンガン酸塩のアルカリ性酸化剤で得られた樹脂層(硬化物)の表面を粗化処理した後、無電解メッキしてサブトラクティブ法に従ってプリント配線板を作製した。その後、更に170℃で30分間アニール処理を行い、これを試験片とした。
この試験片についてピール強度の測定および煮沸耐熱性試験を行ったところ、得られた結果は表1に示したとおりであった。
【0034】
[比較例1]
1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)グリコールウリルの代わりにフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業社製フェノライト)30重量部使用した以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、評価試験を行ったところ、得られた結果は表1に示したとおりであった。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示した試験結果によれば、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いることにより、ピール強度が高く、耐熱性に優れた多層プリント配線板を製造することができる。