(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記バイパスラインから前記再生塔に導入される前記吸収液の流量が、前記吸収塔から前記第1の吸収液ラインに排出される前記吸収液の流量の80%以下になるように、前記吸収液用バルブの開度を制御する、請求項1から9のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0009】
図1の二酸化炭素回収システムは、吸収塔1と、ガスラインの例であるプロセス排ガスライン2と、リッチ液ポンプ3と、熱交換器の例である再生熱交換器4と、再生塔5と、加熱部の例であるリボイラ6と、リーン液ポンプ7と、冷却器8と、第1の吸収液ラインの例であるリッチ液ライン11と、第2の吸収液ラインの例であるリーン液ライン12、13とを備えている。
【0010】
吸収塔1は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。吸収塔1は、その下部から、二酸化炭素を含むプロセス排ガスが導入され、その上部から、二酸化炭素を吸収可能な吸収液(リーン液)が導入される。プロセス排ガスは、プロセス排ガスライン2から吸収塔1内に導入され、リーン液は、リーン液ライン12から吸収塔1内に導入される。
【0011】
吸収塔1は、プロセス排ガスと吸収液とを気液接触させる。そして、吸収塔1は、その下部から、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)を排出し、その上部から、二酸化炭素が除去されたプロセス排ガスを含む吸収塔排出ガスを排出する。リッチ液は、吸収塔1からリッチ液ライン11に排出される。
【0012】
本実施形態の吸収塔1は、上記の気液接触を効率よく進めるために、充填物またはトレイが1段以上配置された構造を有している。
図1の吸収塔1は、一例として1段の充填物1aを備えている。
【0013】
プロセス排ガスは、プロセス排ガスを発生する施設からプロセス排ガスライン2を介して吸収塔1内に導入される。このような施設の例は、火力発電所、製鉄所、ごみ焼却炉などである。
【0014】
また、吸収液の例は、モノエタノールアミン(monoethanolamin)やジエタノールアミン(diethanolamin)などのアミン系水溶液、アルカリ性水溶液、イオン性液体やその水溶液などであるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
リッチ液ポンプ3と再生熱交換器4は、リッチ液ライン11に設けられている。吸収塔1から排出された吸収液は、リッチ液ポンプ3によりリッチ液ライン11を介して再生塔5へ移送され、再生塔5内に導入される。この際、再生熱交換器4は、リッチ液ライン11を流れる吸収液とリーン液ライン12を流れる吸収液との間で熱交換を行い、リッチ液ライン11を流れる吸収液を加熱する。
【0016】
再生塔5は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。再生塔5は、リボイラ6からのガスとの気液接触により吸収液を加熱することで、吸収液から二酸化炭素および蒸気を放散させる。そして、再生塔5は、その上部から、放散された二酸化炭素および蒸気を含む再生塔排出ガスを排出し、その下部から、二酸化炭素を放散した吸収液(リーン液)を排出する。リーン液は、再生塔5からリーン液ライン12に排出される。
【0017】
リボイラ6は、リーン液ライン13に設けられている。リーン液ライン13は、リーン液ライン12から分岐しており、再生塔5から排出された吸収液の一部をリボイラ6を介して再生塔5内に戻す。この際、リボイラ6は、外部熱源である蒸気と吸収液との熱交換により吸収液を加熱することで、吸収液から二酸化炭素および蒸気を放散させる。これらのガスは、吸収液と共に再生塔5内に戻され、再生塔5内の吸収液を加熱するために使用される。
【0018】
本実施形態の再生塔5は、上記の気液接触を効率よく進めるために、充填物またはトレイが1段以上配置された構造を有している。
図1の再生塔5は、一例として2段の充填物5a、5bを備えている。
【0019】
リーン液ポンプ7、再生熱交換器4、および冷却器8は、リーン液ライン12に設けられている。再生塔5から排出された吸収液は、リーン液ポンプ7によりリーン液ライン12を介して吸収塔1へ移送され、吸収塔1内に導入される。この際、再生熱交換器4は、リーン液ライン12を流れる吸収液とリッチ液ライン11を流れる吸収液との間で熱交換を行い、リーン液ライン12を流れる吸収液を冷却する。リーン液ライン12を流れる吸収液はさらに、冷却器8により冷却される。
【0020】
再生塔5から排出された再生塔排出ガスは、使用目的に応じてその後の処理工程が異なるが、一般には冷却によりその水分が凝縮されて除去される。その後、水分が除去された再生塔排出ガスは、圧縮ポンプにより、超臨界状態や液体状態などの使用目的に応じた状態に転移され、タンク、ローリー、パイプラインなどにより保管、輸送される。
【0021】
図1の二酸化炭素回収システムはさらに、1つ以上の計測器の例である温度計21a〜21cと、1つ以上の吸収液用バルブの例である吸収液用バルブ22a〜22cと、制御部23と、バイパスラインの例であるリッチ液バイパスライン24とを備えている。
【0022】
以下の説明において、温度計21a〜21cのうちの任意の1つの温度計は、符号21で表すことにする。同様に、吸収液用バルブ22a〜22cのうちの任意の1つの吸収液用バルブは、符号22で表すことにする。
【0023】
[温度計21a〜21c]
温度計21a〜21cは、再生塔5内の温度を計測する。再生塔5内の温度は、再生塔5の状態を示す値の例である。再生塔5内の温度の例としては、再生塔5内の吸収液の温度や、再生塔5内の気温が挙げられる。本実施形態の温度計21a〜21cは、再生塔5内の異なる箇所の温度を計測する。具体的には、本実施形態の温度計21a、21b、21cはそれぞれ、充填物5a内の吸収液の温度、充填物5b内の吸収液の温度、再生塔5の底部に溜まった吸収液の温度を計測する。温度計21a〜21cは、計測した温度を含む信号を制御部23に出力する。
【0024】
[リッチ液バイパスライン24]
リッチ液バイパスライン(以下「バイパスライン」と呼ぶ)24は、吸収塔1と再生熱交換器4との間でリッチ液ライン11から分岐している。リッチ液ライン11からバイパスライン24に流入した吸収液(リッチ液)は、再生熱交換器4を介さずに再生塔5内に導入される。よって、バイパスライン24は、再生熱交換器4により加熱されていない低温の吸収液を再生塔5内に導入することができる。
【0025】
[吸収液用バルブ22a〜22c]
吸収液用バルブ22a〜22cは、バイパスライン24に設けられている。本実施形態のバイパスライン24は、第1から第3の分岐ラインに分岐しており、第1、第2、第3の分岐ラインがそれぞれ、充填物5aの上方、充填物5a、5bの間、充填物5bの下方において再生塔5に接続されている。そして、本実施形態の吸収液用バルブ22a〜22cはそれぞれ、第1から第3の分岐ラインに設けられている。本実施形態の吸収液用バルブ22a〜22cは、これらの開度の制御により吸収液の流量を調整可能な流量調整弁である。
【0026】
[制御部23]
制御部23は、温度計21a〜21cにより計測された温度に基づいて、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する。例えば、制御部23は、温度計21cの温度(温度値)が上昇した場合に、吸収液用バルブ22cの開度を増加させる。これにより、制御部23は、再生塔5の底部に溜まった吸収液を吸収液用バルブ22cからの吸収液により冷却することができ、温度計21cの温度を低下させることができる。このように、本実施形態によれば、二酸化炭素回収システム内の高温部分である再生塔5を、低温の吸収液の導入により速やかに冷却することができる。
【0027】
本実施形態の制御部23は、温度計21aの温度に基づいて吸収液用バルブ22aの開度を制御し、温度計21bの温度に基づいて吸収液用バルブ22bの開度を制御し、温度計21cの温度に基づいて吸収液用バルブ22cの開度を制御する。よって、本実施形態の制御部23は、ある温度計21の温度が上昇した場合に、この温度計21付近の吸収液用バルブ22の開度を増加させることで、この温度計21付近の吸収液を速やかに冷却することができる。
【0028】
本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22aの開度が温度計21aの温度の増加関数となるように、吸収液用バルブ22aの開度を制御する。すなわち、本実施形態の制御部23は、温度計21aの温度の上昇に伴い、吸収液用バルブ22aの開度を増加させる。これにより、温度計21a付近の吸収液の温度の上昇を抑制することができる。これは、吸収液用バルブ22b、22cについても同様である。
【0029】
以下、吸収塔1からリッチ液ライン11に排出される吸収液の流量を、リッチ液流量Aと表す。また、リッチ液ライン11から再生塔5に導入される吸収液の流量を、リッチ液流量Bと表す。また、バイパスライン24から再生塔5に導入される吸収液の流量を、バイパスリッチ液流量Cと表す。本実施形態では、これらの流量の間に「A=B+C」の関係が成り立つ。
【0030】
制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を調整することで、バイパスライン24から再生塔5に導入される吸収液の流量、すなわち、バイパスリッチ液流量Cを制御することができる。本実施形態の制御部23は、バイパスライン24から再生塔5に吸収液を導入する場合、バイパスリッチ液流量Cがリッチ液流量Aの80%以下になるように、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する(0<C≦0.8A)。
【0031】
バイパスリッチ液流量Cがリッチ液流量Aの80%よりも多い場合、リッチ液流量Bはリッチ液流量Aの20%よりも少なくなる。よって、再生熱交換器4に導入されるリッチ液の流量が少なくなり、再生熱交換器4での交換熱量が小さくなる。そのため、リーン液ライン12を流れるリーン液の温度が、再生熱交換器4を通過しても十分に低下しない。その結果、冷却器8での負荷が大きくなることや、十分に冷却されていないリーン液が吸収塔1に導入されることにより、吸収塔1や冷却器8の異常発熱や損傷を引き起こす可能性がある。
【0032】
そのため、本実施形態の制御部23は、バイパスリッチ液流量Cをリッチ液流量Aの80%以下に設定する。本実施形態のバイパスリッチ液流量Cは、リッチ液流量Aの50%程に設定することが望ましく(C≒0.5A)、例えば、リッチ液流量Aの40〜60%に設定することが望ましい(0.4A≦C≦0.6A)。
【0033】
制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を互いに異なる値に調整してもよい。例えば、温度計22aの温度が高く、温度計22cの温度が低い場合には、吸収液用バルブ22aの開度を大きく設定し、吸収液用バルブ22cの開度を小さく設定してもよい。これにより、バイパスライン24から再生塔5内の高温箇所に供給される吸収液の流量を増加させることができ、高温箇所を効率的に冷却することができる。
【0034】
本実施形態の制御部23は、二酸化炭素回収システムが設置されている施設(例えば発電プラント)が停止する際に、二酸化炭素回収システムを停止状態に移行させる。具体的には、制御部23は、温度計21a〜21cの温度が二酸化炭素回収システムの停止時の温度になるように、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する。そして、制御部23は、温度計21a〜21cの温度が二酸化炭素回収システムを安全に停止できる温度になったら、バイパスライン24から再生塔5内に導入される吸収液を減少させて停止し、その後、リッチ液ライン11およびリーン液ライン12を循環する吸収液を停止する。
【0035】
本実施形態の制御部23による制御は、二酸化炭素回収システムが設置されている施設の緊急時に、施設の低負荷運転のために二酸化炭素システムを低負荷で待機させる場合にも有効である。この場合、制御部23は、温度計21a〜21cの温度が二酸化炭素回収システムの待機運転時の温度になるように、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する。そして、制御部23は、温度計21a〜21cの温度が待機に適した温度になったら、バイパスライン24から再生塔5に導入される吸収液を減少させて停止するが、リッチ液ライン11およびリーン液ライン12の吸収液の循環は維持する。このような制御は例えば、吸収液の循環系を停止させずに、再生塔5内を急冷して再生塔5からの二酸化炭素放散を停止させたい場合や、再生塔5内を任意の温度まで急冷したい場合などに用いてもよい。
【0036】
なお、本実施形態のバイパスライン24には、バイパスライン24を流れる吸収液を冷却する冷却器や、バイパスライン24を流れる吸収液とその他の流体との熱交換を行う熱交換器が設けられていてもよい。このような流体の例としては、吸収塔排出ガス、再生塔排出ガス、吸収塔排出ガスから得られた凝縮水、再生塔排出ガスから得られた凝縮水などが挙げられる。
【0037】
また、本実施形態のバイパスライン24の吸収液は、再生塔5の冷却だけでなく、再生塔5以外の高温部分(機器や配管など)の冷却にも使用してもよい。このような高温部分の例としては、再生熱交換器4と再生塔5との間を流れるリッチ液の気液分離を行う気液分離器などが挙げられる。
【0038】
また、本実施形態の温度計21a〜21cの台数や、吸収液用バルブ22a〜22cの台数は、3台以外でもよい。例えば、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、第1から第N(Nは2以上の整数)の温度計21と、第1から第Nの吸収液用バルブ22とを備えていてもよい。この場合、制御部23は、第K(Kは1≦K≦Nを満たす任意の整数)の温度計21の温度に基づいて、第Kの吸収液用バルブ22の開度を制御してもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、バイパスライン24に設けられた1つ以上の吸収液用バルブ22と、再生塔5内の温度を計測する1つ以上の温度計21と、温度計21により計測された温度に基づいて、吸収液用バルブ22の開度を制御する制御部23とを備えている。よって、本実施形態によれば、二酸化炭素回収システム内の高温部分を速やかに冷却することが可能となり、二酸化炭素回収システムを安全な状態に速やかに移行させることが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0041】
図2の二酸化炭素回収システムは、
図1の二酸化炭素回収システムと同様の構成を有している。ただし、
図2においては、温度計21a〜21cが流量計25に置き換えられている。流量計25は、1つ以上の計測器の例である。
【0042】
流量計25は、再生塔5から排出された再生塔排出ガスの流量を計測する。再生塔排出ガスの流量は、再生塔5の状態を示す値の例である。流量計25は、計測した流量を含む信号を制御部23に出力する。
【0043】
制御部23は、流量計25により計測された流量に基づいて、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する。一般に、再生塔5内の温度が上昇すると、再生塔排出ガスの流量は増加する。よって、本実施形態の制御部23は、流量計25の流量(流量値)が増加した場合、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を増加させる。これにより、制御部23は、再生塔5内の吸収液を吸収液用バルブ22a〜22cからの吸収液により冷却することができ、再生塔5内の温度を低下させることができる。その結果、流量計25の流量が減少することとなる。このように、本実施形態によれば、二酸化炭素回収システム内の高温部分である再生塔5を、低温の吸収液の導入により速やかに冷却することができる。
【0044】
一般に、再生塔5内の温度が低下すると、再生塔排出ガスの流量は減少し、再生塔5内の温度が十分に低くなると、再生塔排出ガスの流量は検出可能な最小流量よりも小さくなる。よって、本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cの開度が流量計25の流量の増加関数となるように、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する。すなわち、本実施形態の制御部23は、流量計25の流量の低下に伴い、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を減少させる。そして、本実施形態の制御部23は、流量計25の流量が検出可能な最小流量よりも小さくなると、再生塔5が十分に冷却されたと判断し、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を全閉し、バイパスライン24から再生塔5内への吸収液の導入を停止する。
【0045】
本実施形態の制御部23は、第1実施形態の制御部23と同様に動作可能である。例えば、本実施形態の制御部23は、バイパスリッチ液流量Cをリッチ液流量Aの80%以下に設定する。また、本実施形態の制御部23による制御は、二酸化炭素回収システムを停止状態や待機運転可能な状態に移行させる際に適用可能である。
【0046】
なお、本実施形態の吸収液用バルブ22a〜22cの台数は、1台でもよいし、複数台でもよい。後者の場合、制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を互いに異なる値に調整してもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、バイパスライン24に設けられた1つ以上の吸収液用バルブ22と、再生塔5から排出されたガスの流量を計測する1つ以上の流量計25と、流量計25により計測された流量に基づいて、吸収液用バルブ22の開度を制御する制御部23とを備えている。よって、本実施形態によれば、二酸化炭素回収システム内の高温部分を速やかに冷却することが可能となり、二酸化炭素回収システムを安全な状態に速やかに移行させることが可能となる。
【0048】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0049】
図3の二酸化炭素回収システムは、
図1の二酸化炭素回収システムと同様の構成を有している。ただし、
図3においては、温度計21a〜21cが圧力計26に置き換えられている。圧力計26は、1つ以上の計測器の例である。
【0050】
圧力計26は、再生塔5内の圧力(再生塔内部圧力)を計測する。再生塔内部圧力は、再生塔5の状態を示す値の例である。圧力計26は、計測した圧力を含む信号を制御部23に出力する。
【0051】
制御部23は、圧力計26により計測された圧力に基づいて、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する。一般に、大気圧よりも高い圧力が再生塔5の運転圧力として設定されている場合には、再生塔5内で二酸化炭素が連続して放出されているときに、再生塔内部圧力が圧力調整弁などにより設定圧力に維持される。本実施形態の制御部23は、圧力計26の圧力(圧力値)が設定圧力である場合において、再生塔5を冷却する必要があるときには、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を増加させる。これにより、制御部23は、再生塔5内の吸収液を吸収液用バルブ22a〜22cからの吸収液により冷却することができ、再生塔5内の温度を低下させることができる。その結果、二酸化炭素の放出反応が止まり、再生塔内部圧力が設定圧力に維持されなくなるため、圧力計26の圧力が減少することとなる。このように、本実施形態によれば、二酸化炭素回収システム内の高温部分である再生塔5を、低温の吸収液の導入により速やかに冷却することができる。
【0052】
一般に、再生塔5内の温度が低下すると、再生塔内部圧力は減少し、再生塔5内の温度が十分に低くなると、圧力調整弁が全開となり、再生塔内部圧力が大気圧または再生塔排出ガスラインの下流の圧力と等しくなる。よって、本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cの開度が圧力計26の圧力の増加関数となるように、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を制御する。すなわち、本実施形態の制御部23は、圧力計26の圧力の低下に伴い、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を減少させる。そして、本実施形態の制御部23は、圧力計26の圧力が設定圧力よりも小さくなると、再生塔5が十分に冷却されたと判断し、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を全閉し、バイパスライン24から再生塔5内への吸収液の導入を停止する。
【0053】
本実施形態の制御部23は、第1実施形態の制御部23と同様に動作可能である。例えば、本実施形態の制御部23は、バイパスリッチ液流量Cをリッチ液流量Aの80%以下に設定する。また、本実施形態の制御部23による制御は、二酸化炭素回収システムを停止状態や待機運転可能な状態に移行させる際に適用可能である。
【0054】
なお、本実施形態の吸収液用バルブ22a〜22cの台数は、1台でもよいし、複数台でもよい。後者の場合、制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cの開度を互いに異なる値に調整してもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、バイパスライン24に設けられた1つ以上の吸収液用バルブ22と、再生塔5内の圧力を計測する1つ以上の圧力計26と、圧力計26により計測された圧力に基づいて、吸収液用バルブ22の開度を制御する制御部23とを備えている。よって、本実施形態によれば、二酸化炭素回収システム内の高温部分を速やかに冷却することが可能となり、二酸化炭素回収システムを安全な状態に速やかに移行させることが可能となる。
【0056】
(第4〜第8実施形態)
第4〜第8実施形態の二酸化炭素回収システムは、第1〜第3実施形態の二酸化炭素回収システムの変形例である。第4〜第8実施形態のシステムは、第1実施形態のシステムと同様に、温度計21a〜21cと、吸収液用バルブ22a〜22cと、制御部23と、リッチ液バイパスライン24とを備えている(
図4〜
図8参照)。ただし、第4〜第8実施形態の温度計21a〜21cは、第2実施形態の流量計25または第3実施形態の圧力計26に置き換えてもよい。
【0057】
図4は、第4実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0058】
図4のシステムは、冷却器31と、冷媒用バルブ32とを備えている。冷却器31は、バイパスライン24に設けられており、バイパスライン24を流れる吸収液を冷媒により冷却する。冷媒の例は冷却水である(以下同様)。冷媒用バルブ32は、冷却器31に冷媒を供給するためのラインに設けられており、冷却器31に供給する冷媒の流量を調整するために使用される。本実施形態の冷媒用バルブ32は、その開度の制御により冷媒の流量を調整可能な流量調整弁である。
【0059】
本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cだけでなく、冷媒用バルブ32も制御する。具体的には、制御部23は、温度計21a〜21cにより計測された温度に基づいて、冷媒用バルブ32の開度を制御する。例えば、制御部23は、温度計21a〜21cの平均温度に基づいて開度を制御してもよいし、温度計21a〜21cの最高温度に基づいて開度を制御してもよい。本実施形態の制御部23は例えば、冷媒用バルブ32の開度が温度計21a〜21cの平均温度または最高温度の増加関数となるように、冷媒用バルブ32の開度を制御する。また、制御部23は、温度計21a〜21cのうちの1つの温度に基づいて開度を制御してもよいし、温度計21a〜21cのうちの2つの平均温度または最高温度に基づいて開度を制御してもよい。
【0060】
本実施形態の制御部23は、二酸化炭素回収システムが設置されている施設の停止指示を受信すると、再生塔5を冷却するためにバイパスライン24から再生塔5内にリッチ液を導入する。この際、リッチ液ライン11やバイパスライン24のリッチ液は、吸収塔1内での二酸化炭素の吸収反応が発熱反応であることから、リーン液ライン12のリーン液よりも高温になる。そのため、本実施形態では、再生塔5内の温度をより速やかに冷却させるために、バイパスライン24を流れるリッチ液を冷却器31で冷却している。
【0061】
図5は、第5実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0062】
図5のシステムは、冷媒用バルブ33を備えている。冷媒用バルブ33は、リーン液ライン12の冷却器8に冷媒を供給するためのラインに設けられており、冷却器8に供給する冷媒の流量を調整するために使用される。本実施形態の冷媒用バルブ33は、その開度の制御により冷媒の流量を調整可能な流量調整弁である。
【0063】
本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cだけでなく、冷媒用バルブ33も制御する。具体的には、制御部23は、温度計21a〜21cにより計測された温度に基づいて、冷媒用バルブ33の開度を制御する。例えば、制御部23は、温度計21a〜21cの平均温度に基づいて開度を制御してもよいし、温度計21a〜21cの最高温度に基づいて開度を制御してもよい。本実施形態の制御部23は例えば、冷媒用バルブ33の開度が温度計21a〜21cの平均温度または最高温度の増加関数となるように、冷媒用バルブ33の開度を制御する。また、制御部23は、温度計21a〜21cのうちの1つの温度に基づいて開度を制御してもよいし、温度計21a〜21cのうちの2つの平均温度または最高温度に基づいて開度を制御してもよい。
【0064】
バイパスライン24から再生塔5内にリッチ液を導入する場合、再生熱交換器4を通過するリッチ液の流量が減少し、再生熱交換器4での交換熱量が減少する。そのため、リーン液ライン12を流れるリーン液は、再生熱交換器4でリッチ液と十分に熱交換できず、高温のまま再生熱交換器4から排出される。その結果、リーン液ライン12の冷却器8の冷却負荷が増加する。しかしながら、冷却器8の負荷が急激に増加すると、負荷の増加に対する冷却の追従が難しくなる。そこで、本実施形態では、温度計21a〜21cの温度に基づいて、吸収液用バルブ22a〜22cと冷媒用バルブ33とを制御する。よって、本実施形態によれば、冷却器8の動作を制御部23の動作に連動させることができ、冷却器8による冷却の追従性を向上させることができる。
【0065】
図6は、第6実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0066】
図6のシステムは、排ガス用バルブ34を備えている。排ガス用バルブ34は、プロセス排ガスライン2に設けられており、プロセス排ガスライン2を流れるプロセス排ガスの流量を調整するために使用される。本実施形態の排ガス用バルブ34は、その開度の制御によりプロセス排ガスの流量を調整可能な流量調整弁である。
【0067】
本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cだけでなく、排ガス用バルブ34も制御する。具体的には、制御部23は、温度計21a〜21cにより計測された温度に基づいて、排ガス用バルブ34の開度を制御する。例えば、制御部23は、温度計21a〜21cのうちの1つの温度に基づいて開度を制御してもよいし、温度計21a〜21cのうちの2つ以上の平均温度または最高温度に基づいて開度を制御してもよい。
【0068】
本実施形態の制御部23は、二酸化炭素回収システムが設置されている施設の停止指示や低負荷運転指示を受信すると、吸収液用バルブ22a〜22cの開度の制御と、排ガス用バルブ34の開度の制御とを連動して実行する。具体的には、制御部23は、バイパスライン24から再生塔5内への吸収液の導入を開始すると共に、プロセス排ガスの流量を減少させるか導入を停止する。
【0069】
プロセス排ガスの導入を停止する場合、吸収塔1内で発熱反応である二酸化炭素の吸収反応が起きなくなり、バイパスライン24を流れる吸収液の温度が低下する。そのため、より効率的に再生塔5内の温度を低下させることができる。
【0070】
一方、本実施形態の制御部23は、二酸化炭素回収システムを待機運転可能な状態に移行させる場合、プロセス排ガスの流量を減少させる。例えば、施設内の吸収液に二酸化炭素を十分に吸収させたい場合、制御部23は、再生塔5内の温度を低下させて再生塔5からの二酸化炭素の放散を止め、吸収塔1内で吸収反応を進めさせる。この場合、リーン液ライン12から吸収塔1内に導入される吸収液の温度が高温になる可能性がある。そのため、大量のプロセス排ガスを吸収塔1内に導入すると、吸収塔1内の温度が高温になるおそれがある。そこで、本実施形態の制御部23は、二酸化炭素回収システムを待機運転可能な状態に移行させる場合、プロセス排ガスの流量を減少させる。これにより、再生塔5内の温度を低くしつつ、吸収塔1内で好適に吸収反応を進めることができる。
【0071】
図7は、第7実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0072】
図7のシステムは、蒸気用バルブ35を備えている。蒸気用バルブ35は、リボイラ6に熱源となる蒸気を供給するためのラインに設けられており、リボイラ6に供給する蒸気の流量を調整するために使用される。本実施形態の蒸気用バルブ35は、その開度の制御により蒸気の流量を調整可能な流量調整弁である。
【0073】
本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cだけでなく、蒸気用バルブ35も制御する。具体的には、制御部23は、温度計21a〜21cにより計測された温度に基づいて、蒸気用バルブ35の開度を制御する。例えば、制御部23は、温度計21a〜21cのうちの1つの温度に基づいて開度を制御してもよいし、温度計21a〜21cのうちの2つ以上の平均温度または最高温度に基づいて開度を制御してもよい。本実施形態の制御部23は、蒸気用バルブ35の開度を制御することで、リボイラ6への投入熱量を制御することができる。
【0074】
本実施形態の制御部23は、二酸化炭素回収システムが設置されている施設の停止指示や低負荷運転指示を受信すると、吸収液用バルブ22a〜22cの開度の制御と、蒸気用バルブ35の開度の制御とを連動して実行する。具体的には、制御部23は、バイパスライン24から再生塔5内への吸収液の導入を開始すると共に、リボイラ6に供給する蒸気の流量を減少させるか供給を停止する。
【0075】
例えば、低負荷運転のために再生塔5を冷却した後、再生塔5内の温度を設定温度に維持する場合、本実施形態の制御部23は、バイパスライン24の吸収液流量とリボイラ6用の蒸気流量の制御を連動させることで、再生塔5の冷却と再生塔5の温度維持とを効率的に行うことができる。この場合、制御部23は例えば、バイパスライン24の吸収液により再生塔5内の温度を設定温度近傍まで冷却する動作に連動して、リボイラ6用の蒸気流量の低減により急速に再生塔5を冷却する。その後、制御部23は、温度計21a〜21cの温度に基づいて吸収液流量および蒸気流量を調整することで、再生塔5内の温度を設定温度に維持することができる。
【0076】
本実施形態のリボイラ6は、蒸気の熱により吸収液を加熱する代わりに、電気ヒーターの熱により吸収液を加熱してもよい。この場合、制御部23は、電気ヒーターに供給する電力を制御することで、リボイラ6への投入熱量を制御することができる。本実施形態のリボイラ6は、再生塔5内の温度を制御可能なその他の加熱部に置き換えてもよい。この場合、制御部23は、温度計21a〜21cにより計測された温度に基づいて、この加熱部への投入熱量を制御する。
【0077】
図8は、第8実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略図である。
【0078】
図8のシステムは、冷却器36と、冷媒用バルブ37とを備えている。冷却器36と冷媒用バルブ37は、冷却部の例である。冷却器36は、吸収塔1から吸収液を抜き出し、抜き出した吸収液を冷媒により冷却し、冷却した吸収液を吸収塔1に戻す。冷媒用バルブ37は、冷却器36に冷媒を供給するためのラインに設けられており、冷却器36に供給する冷媒の流量を調整するために使用される。本実施形態の冷媒用バルブ37は、その開度の制御により冷媒の流量を調整可能な流量調整弁である。
【0079】
本実施形態の制御部23は、吸収液用バルブ22a〜22cだけでなく、冷媒用バルブ37も制御する。具体的には、制御部23は、温度計21a〜21cにより計測された温度に基づいて、冷媒用バルブ37の開度を制御する。例えば、制御部23は、温度計21a〜21cのうちの1つの温度に基づいて開度を制御してもよいし、温度計21a〜21cのうちの2つ以上の平均温度または最高温度に基づいて開度を制御してもよい。本実施形態の制御部23は、冷媒用バルブ37の開度を制御することで、冷却器36および冷媒用バルブ37を備える冷却部の動作を制御することができる。
【0080】
本実施形態の制御部23は、冷媒の流量を増加させることで、吸収塔1内の吸収液の温度を低下させることができる。これにより、制御部23は、バイパスライン24から再生塔5内に導入される吸収液の温度を低下させることができ、より効率的に再生塔5を冷却することができる。
【0081】
なお、本実施形態の冷却器36は、吸収液と冷媒との熱交換により吸収液を冷却する熱交換器であるが、その他の方式で吸収液を冷却する装置でもよい。
【0082】
また、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、1台の吸収塔1用に1台の冷却器36を備えているが、1台の吸収塔1用に複数の冷却器36を備えていてもよい。この場合、本実施形態の制御部23は、複数の冷却器36のすべてを制御してもよいし、複数の冷却器36のうちの一部のみを制御してもよい。
【0083】
本実施形態によれば、第1〜第3実施形態と同様に、二酸化炭素回収システム内の高温部分を速やかに冷却することが可能となり、二酸化炭素回収システムを安全な状態に速やかに移行させることが可能となる。
【0084】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。