特許第6356615号(P6356615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356615
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】半導体製造装置および半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   H01L21/302 103
   H01L21/302 105A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-22096(P2015-22096)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-146384(P2016-146384A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】317006041
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】石川 勝朗
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−501532(JP,A)
【文献】 特開2003−092286(JP,A)
【文献】 特開2001−044171(JP,A)
【文献】 特開2014−007432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工層をエッチングする第1工程と、前記第1工程と異なる処理を行う第2工程とを複数サイクル繰り返すサイクルエッチングにおいて、各サイクルの前記第1工程における発光強度を抽出する抽出部と、
第1回目に行われる第1サイクルの前記発光強度に対する各サイクルの前記発光強度のピーク値または平均値の減少量または減少率に基づいて、前記サイクルエッチングにおける前記被加工層のエッチング終点を検知する検知部と、
を備える半導体製造装置。
【請求項2】
前記第2工程は、前記被加工層上に膜を形成する工程を含む、請求項に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記第1工程は、前記膜をマスクとして前記被加工層をエッチングする工程を含む、請求項に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
第Kサイクル(Kは2以上の整数)の前記第1工程では、第1から第K−1サイクルの前記第1工程で前記被加工層に形成された凹部の底面を低下させる、請求項1からのいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記検知部は、
前記第1サイクルの前記発光強度に対する第2から第Nサイクル(Nは3以上の整数)の前記発光強度のピーク値または平均値の減少量または減少率を算出し、
前記第2から第N−1サイクルの前記発光強度の減少量または減少率が閾値に到達しておらず、前記第Nサイクルの前記発光強度の減少量または減少率が前記閾値に到達した場合には、前記サイクルエッチングが前記第Nサイクルで前記エッチング終点に到達したと判断する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
被加工層をエッチングする第1工程と、前記第1工程と異なる処理を行う第2工程とを複数サイクル繰り返すサイクルエッチングにおいて、各サイクルの前記第1工程における発光強度を抽出し、
第1回目に行われる第1サイクルの前記発光強度に対する各サイクルの前記発光強度のピーク値または平均値の減少量または減少率に基づいて、前記サイクルエッチングにおける前記被加工層のエッチング終点を検知する、
ことを含む半導体製造方法。
【請求項7】
前記エッチング終点の検知では、
前記第1サイクルの前記発光強度に対する第2から第Nサイクル(Nは3以上の整数)の前記発光強度のピーク値または平均値の減少量または減少率を算出し、
前記第2から第N−1サイクルの前記発光強度の減少量または減少率が閾値に到達しておらず、前記第Nサイクルの前記発光強度の減少量または減少率が前記閾値に到達した場合には、前記サイクルエッチングが前記第Nサイクルで前記エッチング終点に到達したと判断する、
請求項6に記載の半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクルエッチングは、エッチング工程と他の工程(例えば堆積工程)とを交互に複数サイクル繰り返して、被加工層を所望の形状に加工する手法である。サイクルエッチングのエッチング工程は例えば、被加工層を1層または数層の原子層ずつエッチングするALE(Atomic Layer Etching)により実行される。
【0003】
一般的なエッチングでは、被加工層のエッチング時間が十分に確保されている。そのため、一般的なエッチングでは、エッチング中の発光強度の時間変化を容易に検出することができ、発光強度の変化に基づいてエッチング終点(End Point)を容易に検知することができる。一方、サイクルエッチングでは通常、半導体装置の微細化に対応するため、各サイクルのエッチング工程が短時間で実行される。そのため、サイクルエッチングでは、サイクルエッチング中の発光強度の時間変化を安定的に検出することが難しく、発光強度の変化に基づいてサイクルエッチングのエッチング終点を検知することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−150149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイクルエッチングのエッチング終点を正確に検知可能な半導体製造装置および半導体製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の実施形態によれば、半導体製造装置は、被加工層をエッチングする第1工程と、前記第1工程と異なる処理を行う第2工程とを複数サイクル繰り返すサイクルエッチングにおいて、各サイクルの前記第1工程における発光強度を抽出する抽出部を備える。前記装置はさらに、複数サイクル分の前記発光強度に基づいて、前記サイクルエッチングにおける前記被加工層のエッチング終点を検知する検知部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の半導体製造装置の構成を示す概略図である。
図2】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(1/2)である。
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(2/2)である。
図4】第1実施形態の変形例の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図5】第1実施形態の半導体製造方法を説明するためのグラフ(1/4)である。
図6】第1実施形態の半導体製造方法を説明するためのグラフ(2/4)である。
図7】第1実施形態の半導体製造方法を説明するためのグラフ(3/4)である。
図8】第1実施形態の半導体製造方法を説明するためのグラフ(4/4)である。
図9】第1実施形態の半導体製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の半導体製造装置の構成を示す概略図である。図1の半導体製造装置は、サイクルエッチング用に使用される。
【0010】
図1の半導体製造装置は、ステージ11と、チャンバ12と、ガス供給部13と、抽出部の例であるモニタPC(Personal Computer)14と、検知部および表示部の例であるメインPC15とを備えている。
【0011】
[ステージ11]
ステージ11は、チャンバ12内に配置されており、チャンバ12内のウェハ(基板)1を設置するために使用される。ステージ11は、ウエハ1を上下方向に移動させることや、ウエハ1を水平面内で回転させることが可能である。図1は、ステージ11上に設置されたウェハ1と、ウェハ1上に形成された下地層2と、下地層2上に形成された被加工層3とを示している。
【0012】
ウェハ1の例は、シリコン基板などの半導体基板である。図1は、ウェハ1の表面に平行で、互いに垂直なX方向およびY方向と、ウェハ1の表面に垂直なZ方向とを示している。本明細書においては、+Z方向を上方向として取り扱い、−Z方向を下方向として取り扱う。例えば、ウェハ1と被加工層3との位置関係は、ウェハ1が被加工層3の下方に位置していると表現される。なお、本実施形態の−Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向と一致していなくてもよい。
【0013】
被加工層3は、サイクルエッチングで加工される層である。被加工層3は、単一の材料で形成された単一の層でもよいし、複数の層を含む積層層でもよい。
【0014】
下地層2は、ウェハ1と被加工層3との間に形成されている。下地層2は、単一の材料で形成された単一の層でもよいし、複数の層を含む積層層でもよい。下地層2の例は、被加工層3のエッチング用のエッチングストッパ層である。下地層2の別の例は、被加工層3の後に加工される下地被加工層である。
【0015】
なお、本実施形態の被加工層3は、ウェハ1上に下地層2を介して形成されているが、ウェハ1上に直接形成されていてもよい。また、本実施形態においては、ウェハ1を被加工層としてもよい。例えば、ウェハ1にサイクルエッチングにより素子分離溝を形成する場合には、ウェハ1が被加工層となる。
【0016】
[チャンバ12]
チャンバ12は、ウェハ1を収容するために使用される。本実施形態のサイクルエッチングは、このチャンバ12内で実行される。
【0017】
本実施形態のサイクルエッチングにおいては、被加工層3をエッチングするエッチング工程と、被加工層3上に炭素膜などの膜を堆積する堆積工程と、被加工層3上に形成された不要な酸化膜を除去するブレークスルー工程とを複数サイクル繰り返して、被加工層3を所望の形状に加工する。エッチング工程は、第1工程の例である。堆積工程とブレークスルー工程は、第1工程と異なる処理を行う第2工程の例である。エッチング工程、堆積工程、およびブレークスルー工程の詳細は、後述する。
【0018】
[ガス供給部13]
ガス供給部13は、チャンバ12内にガスを供給する。ガス供給部13は例えば、エッチング工程用のガスや、堆積工程用のガスや、ブレークスルー工程用のガスを供給する。
【0019】
本実施形態の半導体製造装置は例えば、ガス供給部13からチャンバ12内にガスを供給し、チャンバ12内でこのガスからプラズマを生成し、このプラズマによりエッチング工程または堆積工程を実行する。
【0020】
[モニタPC14]
本実施形態のサイクルエッチングにおいては、エッチング工程、堆積工程、およびブレークスルー工程の際の化学反応により光が発生する。モニタPC14は、この光の強度の変化をモニタリングするために設置されている。モニタPC14によるモニタリング結果は、メインPC15へと送信される。
【0021】
本実施形態においては、エッチング工程における発光強度に基づいて、サイクルエッチングのエッチング終点を検知する。理由は、エッチング工程における発光強度は、被加工層3のエッチング量に応じて変化するため、エッチング終点の検知に利用可能であるからである。そのため、モニタPC14は、サイクルエッチングの各サイクルのエッチング工程における発光強度を抽出し、抽出した発光強度をメインPC15に送信する。
【0022】
[メインPC15]
メインPC15は、第1サイクルのエッチング工程における発光強度、第2サイクルのエッチング工程における発光強度、、、第Nサイクル(Nは2以上の整数)のエッチング工程における発光強度など、複数サイクル分の発光強度をモニタPC14から受信する。
【0023】
そして、メインPC15は、複数サイクル分の発光強度に基づいて、サイクルエッチングにおける被加工層3のエッチング終点を検知する。本実施形態においては、メインPC15によりエッチング終点が検知された場合に、サイクルエッチングを終了する。
【0024】
[第1実施形態の半導体装置の製造方法]
図2および図3は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0025】
図2(a)は、図1のウェハ1上に形成された下地層2および被加工層3を示す。下地層2の例は、シリコン窒化膜である。被加工層3の例は、シリコン酸化膜である。被加工層3は、サイクルエッチングにより次のように加工される。
【0026】
まず、不図示のレジスト膜をマスクとするALEにより、被加工層3に凹部4aを形成する(図2(b))。この工程が、第1サイクルのエッチング工程である。その後、レジスト膜を除去する。
【0027】
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)により、被加工層3上に膜5aを堆積する(図2(c))。その結果、凹部4aの側面や底面に膜5aが形成される。この工程が、第1サイクルの堆積工程である。膜5aの例は、炭素膜である。炭素膜は例えば、フロロカーボンガスと酸素ガスとを用いて形成される。
【0028】
本実施形態の膜5aは、炭素膜と、炭素膜の表面に形成された不要な酸化膜とを含んでいる。この酸化膜は、堆積工程で用いる酸素ガスにより形成される。そこで、本実施形態においては、堆積工程後にこの酸化膜を除去する。この工程が、第1サイクルのブレークスルー工程である。なお、ブレークスルー工程は、不要な場合には省略してもよい。
【0029】
次に、凹部4aの底面から膜5aをエッチングにより除去する(図2(d))。その結果、凹部4aの底面に被加工層3が露出する。
【0030】
次に、膜5aをマスクとするALEにより、凹部4aの底面の被加工層3をエッチングする(図3(a))。その結果、凹部4aの下に、凹部4aよりも低い底面を有する凹部4bが形成される。この工程が、第2サイクルのエッチング工程である。その後、膜5aを除去する。
【0031】
次に、CVDにより、被加工層3上に膜5bを堆積する(図3(b))。その結果、凹部4a、4bの側面や底面に膜5bが形成される。この工程が、第2サイクルの堆積工程である。膜5bの例は、膜5aと同様に炭素膜である。次に、第2サイクルのブレークスルー工程を実行する。
【0032】
その後、本実施形態においては、図2(d)、図3(a)、および図3(b)の工程を繰り返し実行する。図3(c)は、凹部4bの下に形成された凹部4cと、凹部4a〜4cの側面や底面に形成された膜5cを示している。このようにして、被加工層3の凹部の底面が徐々に低下していく。例えば、第Kサイクル(Kは2以上の整数)のエッチング工程においては、第1から第K−1サイクルのエッチング工程で被加工層3に形成された凹部の底面が低下することとなる。
【0033】
その結果、被加工層3を貫通する穴4が形成される(図3(d))。図3(d)は、一例として、4つの凹部4a〜4dにより形成された穴4を示している。なお、穴4が被加工層3を貫通するまでに形成される凹部4a〜4dの個数は、4個以外でもよい。
【0034】
本実施形態のエッチング終点は、被加工層3を貫通する穴4が形成された時点である。本実施形態においては、各サイクルのエッチング工程における発光強度に基づいて、このエッチング終点を検知する。エッチング終点の検知方法の詳細は、後述する。
【0035】
図4は、第1実施形態の変形例の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0036】
図4(a)の被加工層3は、層3aと層3bとを含む積層層である。図4(b)の被加工層3は、第1の材料で形成された第1層3a、3cと、第2の材料で形成された第2層3b、3dとを交互に含む積層層である。第1層3a、3cの例は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの絶縁膜である。第2層3b、3dの例は、ポリシリコン層などの半導体層やタングステン層などの金属層である。このように、本実施形態の被加工層3は、複数の層を含む積層層でもよい。
【0037】
[第1実施形態の半導体製造方法]
図5図8は、第1実施形態の半導体製造方法を説明するためのグラフである。本実施形態の半導体製造方法は、図1の半導体製造装置により実行され、図2および図3に示す半導体装置を製造する。
【0038】
図5の縦軸は、第N1サイクル、第N2サイクル、および第N3サイクルのエッチング工程と堆積工程における発光強度を表す。ただし、N1<N2<N3である。図5の横軸は、時間を表す。
【0039】
本実施形態のエッチング工程の光は、次のように発生する。まず、エッチングプラズマと被加工層3が凹部の底面で反応して、反応化合物が発生する。次に、この反応化合物が解離して、プラズマが発生する。そして、このプラズマが励起状態から基底状態に遷移して、光が発生する。例えば、エッチングプラズマがCl(塩素)プラズマ、被加工層3がSi(シリコン)層の場合、反応化合物としてSiClが発生し、SiClがSi2+とClとに解離する。Si2+およびClが励起状態から基底状態に遷移すると、光が発生する。
【0040】
図5に示すように、本実施形態のエッチング工程の発光強度は、サイクルエッチングが進行するほど低下する。例えば、第N2サイクルのエッチング工程における発光強度は、第N1サイクルのエッチング工程における発光強度よりも低い。また、第N3サイクルのエッチング工程における発光強度は、第N2サイクルのエッチング工程における発光強度よりも低い。
【0041】
このように発光強度が低下する理由は、次のように予想される。上述の反応化合物から発生したプラズマの一部は、励起状態から基底状態に遷移せずに、再び凹部の側面や底面に付着してしまう。このようなプラズマは、光を発生しない。そして、プラズマが凹部の側面や底面に付着する確率は、凹部の底面が深くなるほど高くなる。これが、本実施形態のエッチング工程の発光強度が、サイクルエッチングが進行するほど低下する理由であると予想される。
【0042】
一方、本実施形態の堆積工程の発光強度は、サイクルエッチングが進行しても低下せず一定である(図5)。これは、本実施形態の堆積工程の光が、原料ガスのプラズマの遷移により発生し、凹部の底面の深さに影響されないためであると予想される。なお、本実施形態のブレークスルー工程の発光強度も、サイクルエッチングが進行しても低下せず一定である。
【0043】
このように、本実施形態のエッチング工程の発光強度は、サイクルエッチングの進行に伴い変化するため、エッチング終点の検知に利用可能である。よって、本実施形態のモニタPC14は、エッチング終点の検知のために、サイクルエッチングの各サイクルのエッチング工程における発光強度を抽出する。具体的には、本実施形態のモニタPC14は、各サイクルのエッチング工程における発光波形を抽出し、この発光波形から発光強度を抽出する。
【0044】
なお、エッチングプラズマがClプラズマ、被加工層3がSi層の場合、エッチング工程における光は、Si2+の遷移に関連する波長の光と、Clの遷移に関連する波長の光とを含んでいる。この場合、前者の光は、被加工層3のエッチングが終了すると観測されなくなるのに対し、後者の光は、被加工層3のエッチングが終了しても観測される。そのため、エッチング工程の発光強度を抽出する際に、Si2+の遷移に関連する波長域の発光強度だけを抽出すれば、エッチング終点をより正確に検知可能となる。これは、被加工層3がSi層以外の場合にも同様である。
【0045】
そのため、本実施形態のモニタPC14は、エッチング工程における発光強度を抽出する際に、被加工層3を構成する原子の遷移に関連する波長域の発光強度だけを抽出してもよい。
【0046】
図6は、第N1、第N2、および第N3サイクルのエッチング工程における発光強度のピーク値AN1、AN2、AN3を示す。時間tN1、tN2、tN3はそれぞれ、発光強度がピーク値AN1、AN2、AN3に達する時間を表す。
【0047】
図6はさらに、第N1、第N2、および第N3サイクルのエッチング工程における発光強度の平均値BN1、BN2、BN3を示す。平均値BN1、BN2、BN3は、各サイクルのエッチング工程のエッチング開始(プラズマ発生開始)からエッチング終了(プラズマ発生終了)までの発光強度の時間平均値を表す。
【0048】
なお、本実施形態の各サイクルのエッチング工程の実行時間の例は、7秒程である。また、本実施形態の各サイクルの堆積工程の実行時間の例は、5秒程である。
【0049】
本実施形態のモニタPC14は、各サイクルのエッチング工程における発光強度を抽出する際に、発光強度のピーク値または平均値を抽出する。抽出されたピーク値または平均値は、モニタPC14からメインPC15に送信される。そして、本実施形態のメインPC15は、後述するように、受信したピーク値または平均値に基づいて、サイクルエッチングのエッチング終点を検知する。
【0050】
エッチング終点の検知にピーク値を使用することには例えば、ピーク値の方が一般に平均値よりも簡単に抽出できるという利点がある。一方、エッチング終点の検知に平均値を使用することには例えば、各サイクルの発光強度が飽和状態まで上昇しない場合にも正確な発光強度を抽出できるという利点がある。例えば、各サイクルのエッチング工程の実行時間が短い場合には、各サイクルの発光強度が飽和状態まで上昇しない可能性がある。
【0051】
図7は、第1から第8サイクルのエッチング工程における発光強度のピーク値A〜Aを示す。時間t〜tはそれぞれ、発光強度がピーク値A〜Aに達する時間を表す。
【0052】
本実施形態のメインPC15は、第1サイクルのピーク値A、第2サイクルのピーク値A、、、第Nサイクル(Nは2以上の整数)のピーク値Aなど、複数サイクル分の発光強度のピーク値をモニタPC14から受信する。
【0053】
そして、本実施形態のメインPC15は、これらのピーク値のグラフをメインPC15の画面上に表示する。図7は、このグラフの一例を示す。図7では、ピーク値A〜Aが時間順にプロットされ、ピーク値A〜Aが線で結ばれている。本実施形態の半導体製造装置のユーザは、このグラフを見て、サイクルエッチングのエッチング工程の発光強度が変化(低下)する様子を確認することができる。
【0054】
なお、本実施形態のメインPC15は、発光強度の平均値を使用してこのグラフを生成してもよい。
【0055】
図8は、本実施形態のエッチング終点の検知方法を説明するためのグラフである。
【0056】
本実施形態のメインPC15は、複数サイクル分の発光強度に基づいて、サイクルエッチングのエッチング終点を検知する。具体的には、本実施形態のメインPC15は、第1サイクル(初期サイクル)の発光強度のピーク値に対する各サイクルの発光強度のピーク値の減少量に基づいて、エッチング終点を検知する。すなわち、本実施形態のメインPC15は、A−A、A−A、A−A、、、などの値に基づいて、エッチング終点を検知する。第1サイクルは、所定サイクルの例である。
【0057】
符号Δは、この減少量の閾値を表す。本実施形態の閾値Δは、定数であり、メインPC15にあらかじめ設定されている。メインPC15は、各サイクルのピーク値の減少量を閾値Δと比較する。そして、メインPC15は、あるサイクルのピーク値の減少量が閾値Δに達した場合に、サイクルエッチングがそのサイクルでエッチング終点に到達したと判断する。図8は、第7サイクルのピーク値Aの減少量A−Aが閾値Δに達した様子を示している。本実施形態のメインPC15は、このようにしてエッチング終点を検知することができる。
【0058】
本実施形態のメインPC15は、エッチング終点を検知した場合、ガス供給部13やチャンバ12の動作を停止することでサイクルエッチングを自動的に終了する。一方、本実施形態のメインPC15は、エッチング終点を検知した場合、サイクルエッチングがエッチング終点に到達したことを画面上に表示してもよい。この場合には、ユーザがサイクルエッチングを手動で終了してもよい。
【0059】
なお、本実施形態のメインPC15は、第1サイクルのピーク値に対する各サイクルのピーク値の減少率に基づいて、エッチング終点を検知してもよい。すなわち、本実施形態のメインPC15は、(A−A)/A、(A−A)/A、(A−A)/A、、、などの値に基づいて、エッチング終点を検知してもよい。この場合、閾値Δは、減少率の閾値に置き換えられる。
【0060】
また、本実施形態のメインPC15は、第1サイクルの平均値に対する各サイクルの平均値の減少量または減少率に基づいて、エッチング終点を検知してもよい。この場合のエッチング終点の検知方法は、ピーク値を使用する場合と同様である。
【0061】
また、本実施形態のメインPC15は、比較の基準となる所定サイクルとして、第1サイクル以外のサイクルを採用してもよい。
【0062】
図9は、第1実施形態の半導体製造方法を示すフローチャートである。図9は、図5図8で説明した半導体製造方法のフローの一例を示す。
【0063】
まず、第1サイクルのエッチング工程を実行する(ステップS1)。この際、モニタPC14は、エッチング工程の発光強度をモニタリングし、発光強度のモニタリング結果をメインPC15に送信する(ステップS2)。モニタリング結果の例は、発光強度のピーク値または平均値である。そして、メインPC15は、第1サイクルのエッチング工程における発光強度のピーク値または平均値をグラフにプロットする(ステップS3)。次に、ステップS4を実行または省略し、第1サイクルの堆積工程を実行する(ステップS5)。
【0064】
次に、第2サイクルが第1サイクルと同様に実行される。まず、第2サイクルのエッチング工程を実行する(ステップS1)。この際、モニタPC14は、エッチング工程の発光強度をモニタリングし、発光強度のモニタリング結果をメインPC15に送信する(ステップS2)。そして、メインPC15は、第2サイクルのエッチング工程における発光強度のピーク値または平均値をグラフにプロットする(ステップS3)。
【0065】
次に、メインPC15は、第2サイクルの発光強度が所定の発光強度に達しているか否かを判断する(ステップS4)。例えば、メインPC15は、第2サイクルの発光強度のピーク値の減少量が閾値Δに達しているか否かを判断する。減少量が閾値Δに達していない場合には、第2サイクルの堆積工程が実行される(ステップS5)。ステップS1〜S5の処理は、この減少量が閾値Δに達するまで繰り返される。
【0066】
一方、メインPC15は、この減少量が閾値Δに達した場合には、サイクルエッチングがエッチング終点に到達したと判断し、サイクルエッチングを終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態の半導体製造装置は、各サイクルのエッチング工程における発光強度を抽出し、抽出された複数サイクル分の発光強度に基づいて、サイクルエッチングのエッチング終点を検知する。
【0068】
例えば、サイクルエッチングの発光強度をエッチング工程、堆積工程、およびブレークスルー工程を区別せずに計測する場合、発光強度は急激な増加および減少を繰り返す。この場合、サイクルエッチングのエッチング終点をこの発光強度から正確に検知することは困難である。
【0069】
一方、本実施形態の半導体製造装置は、サイクルエッチングの発光強度から、各サイクルのエッチング工程の発光強度を抽出する。よって、本実施形態においては、図7図8に示すように、サイクルエッチングの進行に伴う発光強度の変化(低下)を容易に検出することができる。よって、本実施形態によれば、抽出された複数サイクル分の発光強度に基づいてエッチング終点を検知することで、サイクルエッチングのエッチング終点を正確に検知することが可能となる。
【0070】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0071】
1:ウェハ、2:下地層、3:被加工層、
4:穴、4a、4b、4c、4d:凹部、5a、5b、5c:膜、
11:ステージ、12:チャンバ、13:ガス供給部、
14:モニタPC、15:メインPC
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9