【文献】
ZHANG G et al,Composites Science and Technology,2008年,Vol 68,Pages 3073-3080
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光散乱法により求められる径の分布が1〜300μm、光散乱法により求められる最大頻度となる径が10〜50μm、光散乱法により求められる最大頻度となる径の割合が8%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の板状樹脂粉体。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[板状樹脂粉体]
本発明の板状樹脂粉体は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂を含み、かつ板状(扁平状又は薄片状)である。
【0033】
(芳香族ポリエーテルケトン樹脂)
本発明において、板状樹脂粉体を構成する樹脂(又は樹脂成分)は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂で構成されている。
【0034】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(又はポリアリールエーテルケトン樹脂)は、通常、アリーレン基とエーテル基[−O−]とカルボニル基[−C(=O)−]とで構成された繰り返し単位を含んでいる場合が多い。このような樹脂としては、特に制限されないが、例えば、下記式(a1)〜(a5)のいずれかで表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
[−Ar−O−Ar−C(=O)−] (a1)
[−Ar−O−Ar−C(=O)−Ar−C(=O)−] (a2)
[ −Ar−O−Ar−O−Ar−C(=O)−] (a3)
[−Ar−O−Ar−C(=O)−Ar−O−Ar−C(=O)−Ar−C(=O)−](a4)
[−Ar−O−Ar−O−Ar−C(=O)−Ar−C(=O)−] (a5)
(式中、Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基を表す)
Arで表される2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニレン基(o−、m−又はp−フェニレン基など)、ナフチレン基などのC
6−10アリーレン基、ビフェニレン基(2,2’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基など)などのビC
6−10アリーレン基、o−、m−又はp−ターフェニレン基などのターC
6−10アリーレン基などが例示できる。これらの芳香族炭化水素環基は、置換基、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル基など)、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルコキシ基など)、メルカプト基、アルキルチオ基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、N−置換アミノ基、シアノ基などを有していてもよい。なお、繰り返し単位(a1)〜(a5)において、各Arの種類は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
好ましいArは、フェニレン基(例えば、p−フェニレン基)、ビフェニレン基(例えば、4,4’−ビフェニレン基)である。
【0036】
繰り返し単位(a1)を有する樹脂としては、ポリエーテルケトン(例えば、Victrex社製「PEK-HT」)などが例示できる。繰り返し単位(a2)を有する樹脂としては、ポリエーテルケトンケトン(例えば、Arkema+Oxford Performance Material社製「PEKK」)などが例示できる。繰り返し単位(a3)を有する樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン(例えば、Victrex社製「VICTREX PEEK」、Evonik社製「Vestakeep(登録商標)」、ダイセル・エボニック社製「Vestakeep-J」、Solvay Advanced Polymers社製「Ketaspire(登録商標)」)、ポリエーテル−ジフェニル−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル(例えば、Solvay Advanced Polymers社製「Kadel(登録商標)」)などが例示できる。繰り返し単位(a4)を有する樹脂としては、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(例えば、Victrex社製「VICTREX ST」)などが例示できる。繰り返し単位(a5)を有する樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトンケトンなどが例示できる。
【0037】
アリーレン基とエーテル基とカルボニル基とで構成された繰り返し単位において、エーテルセグメント(E)とケトンセグメント(K)との割合(個数割合)は、例えば、前者/後者(E/K)=0.5/1〜2/1、好ましくは1/1〜2/1程度である。エーテルセグメントは分子鎖に柔軟性を付与し、ケトンセグメントは分子鎖に剛直性を付与するため、エーテルセグメントが多いほど結晶化速度は速く、最終的に到達可能な結晶化度も高くなり、ケトンセグメントが多いほどガラス転移温度及び融点が高くなる傾向にある。
【0038】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂の中でも、繰り返し単位(a1)〜(a3)のいずれかを有する芳香族ポリエーテルケトン樹脂、特に、ガラス転移温度や融点の高さと、結晶化速度の速さとのバランスに優れる点から、繰り返し単位(a3)を有する芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン)が好ましい。
【0039】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0040】
なお、芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、前記のような市販品を利用してもよく、慣用の方法(例えば、芳香族ジオール成分と芳香族ジハライド成分とを縮合させる方法、芳香族モノハライドモノオール成分を自己縮合させる方法などの求核置換反応を利用した方法)により合成したものを利用してもよい。
【0041】
芳香族ジオール成分としては、ジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノンなど)、ジヒドロキシベンゾフェノン(4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなど)などが例示できる。芳香族ジハライド成分としては、ジハロベンゾフェノン(4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンなど)などが例示できる。芳香族モノハライドモノオール成分としては、ハロ−ヒドロキシベンゾフェノン(4−フルオロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンなど)などが例示できる。
【0042】
縮合反応は、塩基及び/又は溶媒の存在下で行ってもよい。塩基としては、アルカリ金属塩、例えば、(無水)炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などが例示できる。溶媒としては、高沸点溶媒、例えば、ジフェニルスルホン、スルホランなできる。反応温度は、例えば、150〜400℃、好ましくは200〜350℃程度であってもよい。
【0043】
なお、反応生成物は、慣用の分離手段、例えば、濾過、濃縮、晶析、クロマトグラフィーなどにより分離精製できる。また、反応生成物は、必要により洗浄し、乾燥してもよい。洗浄溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、これらの混合溶媒などが例示できる。さらに、固形状の反応生成物は、粒度を調整するため、粉砕してもよく、分級してもよい。
【0044】
反応生成物の末端基(ハロゲン原子など)は、結晶化温度の調整などの点から、例えば、アルカリスルホネート基(リチウムスルホネート基、ナトリウムスルホネート基、カリウムスルホネート基など)などで修飾されていてもよい。
【0045】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、5,000以上(例えば、5,000〜1,000,000)、好ましくは8,000以上(例えば、10,000〜500,000)、さらに好ましくは15,000以上(例えば、20,000〜100,000)であってもよい。このような分子量とすることで、芳香族ポリエーテルケトン樹脂を板状化しやすい。
【0046】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、100℃以上(例えば、120〜250℃)、好ましくは120〜200℃(例えば、130〜190℃)、さらに好ましくは140〜180℃程度であってもよい。
【0047】
また、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン)の融点は、例えば、300℃以上、好ましくは310〜400℃、さらに好ましくは320〜380℃程度であってもよい。
【0048】
ガラス転移温度及び融点は、例えば、示差走査熱量分析(DSC)により測定できる。
【0049】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂の溶融粘度は、特に限定されないが、塗料用などとして用いる場合には、適度な粘度を有しているのが好ましい場合がある。特に、本発明の板状樹脂粉体では、板状形状にするともに、適度な溶融粘度を選択することにより、相乗的に基材に対する密着性を向上できる場合がある。
【0050】
このような観点から、芳香族ポリエーテルケトン樹脂の380℃、剪断速度36.48s
−1における溶融粘度は、例えば、100〜3000Pa・s、好ましくは150〜2500Pa・s、さらに好ましくは180〜2000Pa・s、特に200〜1900Pa・s程度であってもよい。溶融粘度は、慣用の装置、例えば、キャピラリーレオメーターを用いて測定できる。
【0051】
(他の樹脂)
なお、板状樹脂粉体を構成する樹脂成分は、少なくとも芳香族ポリエーテルケトン樹脂で構成すればよく、例えば、芳香族ポリエーテルケトン樹脂のみで構成してもよく、本発明の効果を害しない範囲であれば、他の樹脂(樹脂成分)を含んでいてもよい。他の樹脂(芳香族ポリエーテルケトン樹脂でない樹脂)としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂{例えば、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(又は液晶ポリマー、LCP)、芳香族ポリアミド[例えば、半芳香族ポリアミド(芳香族ジカルボン酸成分又は芳香族ジアミン成分を重合成分とするポリアミドなど)、全芳香族ポリアミドなど]、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリケトンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などのエンジニアリングプラスチック(特にスーパーエンジニアリングプラスチック)に分類される樹脂など}などが挙げられる。これらの他の樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0052】
他の樹脂を含む場合であっても、板状樹脂粉体を構成する樹脂全体に対する芳香族ポリエーテルケトン樹脂の割合は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に90重量%以上であってもよい。
【0053】
(添加剤)
板状樹脂粉体は、必要に応じて、本発明の効果を害しない範囲であれば、添加剤を含んでいてもよい。このような他の添加剤としては、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、安定剤(耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤など)、充填剤又はフィラー[例えば、ガラス繊維、ガラスパウダー、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化ホウ素など)などの無機フィラーなど]、可塑剤、滑剤、着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの添加剤の割合は、板状樹脂粉体全体に対して50重量%以下(例えば、0.01〜50重量%)、好ましくは10重量%以下(例えば、0.1〜10重量%)であってもよい。
【0054】
(板状樹脂粉体の形状)
本発明の板状樹脂粉体の形状は、板状(平板状)であればよく、面形状(板面の形状)は特に限定されない。面形状は、等方形状(例えば、略円形状、略正方形状などの正多角形状など)、異方形状(例えば、略楕円形状、略長方形状などの多角形状、不定形状など)のいずれであってもよい。
【0055】
このような板状樹脂粉体は、圧潰又は圧縮された形状であってもよい。このような板状の樹脂粉体において、平均厚みは、例えば、3μm以下(例えば、0.05〜2.5μm)、好ましくは2μm以下(例えば、0.1〜1.8μm)、さらに好ましくは1.5μm以下(例えば、0.15〜1.3μm)、特に1.2μm以下(例えば、0.2〜1.2μm)、特に好ましくは1μm以下(例えば、0.3〜0.9μm)であってもよく、通常0.1〜2μm(例えば、0.3〜1.8μm、好ましくは0.5〜1.6μm)であってもよい。本発明の板状樹脂粉体は、このように厚みが比較的小さいため、薄膜を形成しやすい。
【0056】
このような平均厚みは、特に限定されないが、例えば、電子顕微鏡写真より求めることができる。具体的には、電子顕微鏡写真から抽出(サンプリング)した任意の複数[例えば、10個以上(例えば、15〜100個、好ましくは20〜50個、さらに好ましくは30個程度)]の板状樹脂粉体について、それぞれの厚み(最大厚み)を測定し、これらの厚みの平均値を平均厚みとすることができる。
【0057】
板状樹脂粉体の平均径[又は平均長径、面(板面)方向(又は厚み方向に垂直な方向)の長さ(最大長さ又は長径)の平均値]は、1.5〜500μm(例えば、2〜300μm)の範囲から選択でき、例えば、3〜200μm、好ましくは4〜150μm、さらに好ましくは5〜100μm(例えば、6〜70μm)程度であってもよく、通常3〜50μm(例えば、4〜40μm、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは6〜25μm、特に7〜20μm)程度であってもよい。
【0058】
このような平均径(平均長径)は、特に限定されないが、平均厚みと同様にして、電子顕微鏡写真より求めることができる。具体的には、電子顕微鏡写真から抽出(サンプリング)した任意の複数[例えば、10個以上(例えば、15〜100個、好ましくは20〜50個、さらに好ましくは30個程度)]の板状樹脂粉体について、それぞれの径又は長さ(最大径又は最大長さ又は長径)を測定し、これらの径又は長さの平均値を平均径(又は平均長さ又は平均長径)とすることができる。
【0059】
板状の樹脂粉体において、平均厚みと平均径(又は平均長径)との割合(比)は、例えば、前者/後者=1/2〜1/200(例えば、1/2.5〜
1/150)、好ましくは1/3〜1/100、さらに好ましくは1/4〜1/80(例えば、1/5〜1/60)程度であってもよく、通常1/2〜1/50(例えば、1/2.5〜1/30、好ましくは1/3〜1/25、さらに好ましくは1/3.5〜1/20、特に1/5〜1/15程度)であってもよい。なお、このような割合において、平均厚みおよび平均径は、前記のようにして測定した値を用いることができる。
【0060】
板状樹脂粉体の面形状が異方形状である場合、面形状における短径に対する長径の比(長径/短径)(アスペクト比)は、1〜100程度の範囲から選択でき、例えば、1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜2(特に1〜1.5)程度である。
【0061】
板状樹脂粉体の径やその分布は、光散乱(動的光散乱)法により求める(測定する)ことができる。例えば、光散乱法による板状樹脂粉体の径(径の分布)は、0.01〜700μm(例えば、0.05〜600μm)、好ましくは0.1〜500μm(例えば、0.3〜400μm)、さらに好ましくは0.5〜300μm(例えば、0.8〜250μm)程度であってもよく、通常1〜300μm程度であってもよい。
【0062】
また、光散乱法により板状樹脂粉体の最大頻度(頻度が最大)となる径(頻度最大径、頻度最大粒子径)は、例えば、0.5〜100μm、好ましくは1〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm(例えば、5〜50μm)程度であってもよく、特に10〜50μm(例えば、15〜30μm)程度であってもよい。
【0063】
また、光散乱法による板状樹脂粉体の最大頻度(頻度が最大)となる径の割合は、例えば、1〜20%、好ましくは1.5〜15%、さらに好ましくは2〜12%(例えば、3〜10%)程度であってもよく、通常12%以下[例えば、1〜12%、好ましくは10%以下(例えば、2〜10%)、さらに好ましくは8%以下(例えば、3〜8%)程度]であってもよい。
【0064】
なお、本発明の板状樹脂粉体は、後述するように、特に、複数の樹脂粒子(又は樹脂粒子の集合体又は樹脂粒子の凝集物、以下、単に樹脂粒子ということがある)を板状化処理して得られる粉体であってもよい。
【0065】
このような粉体では、通常、芳香族ポリエーテルケトン樹脂で構成された樹脂粒子(各樹脂粒子、単一の樹脂粒子)が独立して板状化されて(又は板状を有して)いてもよい。なお、本発明の板状樹脂粉体において、複数の板状の樹脂粒子は、凝集(又は積層)していてもよいが、通常、凝集力は弱く、合成時や使用時において、容易に分離できる場合が多い。
【0066】
(板状樹脂粉体の製造方法)
本発明の板状樹脂粉体(板状樹脂粒子)の製造方法は、特に限定されず、例えば、(A)原料樹脂粉体(板状化されていない(非板状の)樹脂粉体)を板状化処理する方法、(B)樹脂(又は樹脂組成物)で形成されたフィルム(又はシート又はフィルム状物)を、粉砕(又は破砕)する方法などが挙げられる。本発明では、特に、方法(A)を好適に使用できる。方法(A)では、フィルムを形成する必要がない上、比較的大きさ(厚みや粒径)においてバラツキの小さい粉体を効率よく得やすい。
【0067】
方法(A)において、原料樹脂粉体(又は原料樹脂粒子)としては、特に限定されず、例えば、重合直後の樹脂粉体(ぺレット化などされていない粉体又は粒子)、ペレット状の樹脂(又は樹脂組成物)を粉砕(例えば、冷凍粉砕など)した粉体(又は粒子)などを用いてもよい。
【0068】
原料樹脂粉体(板状化処理前の樹脂粉体)の平均粒子径は、0.1〜500μm程度の範囲から選択でき、例えば、0.2〜300μm(例えば、0.3〜200μm)、好ましくは0.5〜100μm(例えば、1〜70μm)、さらに好ましくは2〜50μm(例えば、3〜40μm)、通常4〜30μm(例えば、5〜30μm)程度であってもよい。特に、原料樹脂粒子の平均粒子径は、50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下であってもよい。このような粒子径の原料樹脂粒子を使用すると、効率よく板状化しやすい。
【0069】
また、原料樹脂粉体が、非球状(例えば、略楕円球状、略円柱状、略多角柱状などの異方形状)である場合、アスペクト比[長径(平均長径)と短径(平均短径)との割合(比)]は、例えば、2未満(例えば、1.01〜1.9)、好ましくは1.05〜1.8(例えば、1.1〜1.5)程度であってもよい。原料樹脂粉体の形状としては、前記アスペクト比の小さい略球状が好ましい。
【0070】
方法(A)において、板状化処理方法としては、特に限定されないが、原料樹脂粉体(特に原料樹脂粒子)を押しつぶす(圧潰する)方法が挙げられる。本発明では、原料樹脂粉体(又は原料樹脂粒子)を押しつぶすことで、意外にも、割れを生じることなく板状化できる。このような方法では、物理的な力で押しつぶすことが可能な種々の装置又は手段(扁平化装置又は扁平化手段)を用いることができる。このような装置又は手段としては、ミル(メディア分散機)、ロール[圧延ロール(二本ロール、三本ロールなど)]、メディアレス分散機[例えば、高圧衝突式分散機(ナノマイザー、アルチマイザーなど)、超音波分散機など]などが挙げられる。
【0071】
中でも、ミルは比較的操作性に優れ、利用しやすい。
【0072】
ミル(媒体ミル)としては、液体などの媒体を介在させるいわゆる湿式媒体ミルと、液体を介在させない乾式媒体ミルとに大別できるが、本発明ではいずれも利用可能である。
【0073】
湿式媒体ミルとしては、ボールミル、サイドグラインダー、ダイノミル、スパイクミル、DCPミル、バスケットミル、ペイントコンディショナーなどが挙げられる。また、乾式媒体ミルとしては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、乾式ビーズミルなどが挙げられる。
【0074】
媒体ミルに使われる容器の材質としては、例えば、焼き入れ鋼、ステンレス鋼、SUSクロムメッキ、アルミナセラミックス、窒化珪素セラミックス、ジルコニアセラミックス、炭化珪素セラミックス、ジルコニア強化アルミナセラミックス、サイアロンなどが挙げられるが、特に、これらに制限されるものではない。
【0075】
また、媒体ミルに用いられる媒体粒子としては、形状としては球形のものが一般的に使用され、その素材としては、ガラスビーズ、低アルカリガラスビーズ、無アルカリガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコニアイットリアビーズ、チタニアビーズ、高純度アルミナビーズ、スチールボールなどが挙げられる。なお、媒体粒子(ビーズ)の比重は、例えば、2.0以上、好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であってもよい。
【0076】
また、媒体粒子(ビーズ)の大きさは、板状化処理に供する樹脂粒子の大きさなどに応じて適宜選択でき、例えば、0.05〜5mm(例えば、0.1〜3mm)程度であってもよい。
【0077】
なお、湿式媒体ミルにおいて、媒体(液体)としては、主に水を用いることができるが、水と水性溶媒[又は水溶性溶媒、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルカノール類;1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどのジオール類)、ジオールモノエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル)]との混合溶媒を用いてもよい。水性溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0078】
上記のようにして、板状の樹脂粉体が得られる。なお、湿式において、板状の樹脂粉体を製造する場合、媒体を含む形態(すなわち、板状樹脂粉体が媒体に分散した分散液の形態)で、各種用途(塗料など)に用いてもよい。
【0079】
[塗料]
本発明の板状樹脂粉体は、種々の用途に使用できるが、特に、塗料(塗布剤、コーティング剤)として好適に用いることができる。以下、塗料について詳述する。
【0080】
塗料(塗布剤)は、塗料成分として、本発明の板状樹脂粉体(板状の樹脂粒子)を含む。すなわち、本発明の板状樹脂粉体は、塗装用(粉体塗料又は粉体塗装用)樹脂粉体として用いることができる。
【0081】
このような塗料(粉体塗料)を構成する塗料成分(樹脂粉体)は、本発明の板状樹脂粉体を含んでいればよい。すなわち、塗料を構成する樹脂粉体(樹脂粉体A)は、本発明の板状樹脂粉体(板状の樹脂粉体A1)のみで構成してもよく、必要に応じて、本発明の効果を害しない範囲であれば、他の樹脂粉体(樹脂粉体A2)を含んでいてもよい。また、本発明の板状樹脂粉体A1として、2種以上の板状の樹脂粉体を用いてもよい。例えば、厚みの異なる板状の樹脂粉体を2種以上組みあわせてもよく、樹脂の種類において異なる板状の樹脂粉体を2種以上組み合わせてもよい。
【0082】
他の樹脂粉体A2としては、芳香族ポリエーテルケトン樹脂以外の樹脂で構成された樹脂粉体(板状又は非板状の樹脂粉体)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂で構成された非板状の樹脂粉体(板状でない樹脂粉体)などが挙げられる。他の樹脂粉体A2は、代表的には、芳香族ポリエーテルケトン樹脂で構成された非板状の樹脂粉体で構成してもよい。このような非板状の粉体の樹脂粉体を併用することで、塗膜の厚みを効率よく調整しやすい。例えば、板状樹脂粉体の厚みよりも大きい厚みの塗膜を形成する場合には、塗膜の厚みよりも粒径(又は厚み)の大きい非板状粉体を併用することで、本発明の効果(優れた密着性や塗膜の平滑性、ピンホールの発生抑制など)を実現しつつ、所望の厚みの塗膜を効率よく形成できる。
【0083】
非板状の樹脂粉体(芳香族ポリエーテルケトン樹脂で構成された非板状樹脂粉体)としては、前記方法(A)において記載の原料樹脂粉体(原料樹脂粒子)が挙げられる。例えば、非板状の樹脂粉体の粒子径(平均粒子径)は、塗膜の厚みなどに応じて適宜選択でき、例えば、1〜500μm(例えば、2〜200μm)、好ましくは3〜100μm、さらに好ましくは5〜80μm(例えば、8〜50μm)程度であってもよい。
【0084】
また、非板状の樹脂粉体が、非球状(例えば、略楕円球状、略円柱状、略多角柱状などの異方形状)である場合、アスペクト比[長径(平均長径)と短径(平均短径)との割合(比)]は、例えば、2未満(例えば、1.01〜1.9)、好ましくは1.05〜1.8(例えば、1.1〜1.5)程度であってもよい。非板状の樹脂粉体の形状としては、前記アスペクト比の小さい略球状が好ましい。
【0085】
他の樹脂粉体A2を使用する場合、本発明の板状樹脂粉体A1と、他の樹脂粉体A2との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜5/95(例えば、98/2〜10/90)、好ましくは97/3〜20/80(例えば、96/4〜30/70)、さらに好ましくは95/5〜40/60(例えば、93/7〜50/50)程度であってもよく、通常99/1〜50/50(例えば、97/3〜60/40、好ましくは95/5〜65/35)程度であってもよい。
【0086】
塗料は、塗料成分としての樹脂粉体Aに加えて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、前記例示の添加剤の他、例えば、レベリング剤、粘度調整剤、消泡剤、分散剤などが挙げられる。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0087】
特に、本発明では、添加剤として、分散剤を好適に用いてもよい。本発明の板状樹脂粉体は、分散剤を使用しなくても、分散媒(水など)に分散可能であるが、意外なことに、樹脂粉体を板状の形態とすることと相まって分散剤により塗膜の形成性をより一層向上又は改善しやすい。例えば、界面活性剤を用いることで、板状樹脂粉体を、板状樹脂粉体の板面に沿って塗布面に積層させやすいためか、均一な塗膜を効率よく形成できる。
【0088】
分散剤としては、例えば、水溶性高分子、界面活性剤などが挙げられる。分散剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0089】
水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩などのセルロースエーテル類;ビスコースなど)、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ゴム(アラビアゴム、トラガントゴムなど)、リグニンスルホン酸塩、でんぷん誘導体(ヒドロキシアルキルでんぷん、酢酸でんぷん、架橋でんぷん、デキストリン、カチオンでんぷん、リン酸でんぷん、カルボキシメチルでんぷん塩など)などの天然高分子又はその誘導体;(メタ)アクリル酸を重合成分とする重合体又はその塩[例えば、ポリアクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−(メタ)アクリル酸塩共重合物、スチレン(又はα−メチルスチレン)−(メタ)アクリル酸共重合体、又はこれらの塩]、イタコン酸を重合成分とする重合体又はその塩[例えば、イタコン酸エステル-イタコン酸共重合体、スチレン(又はα−メチルスチレン)−イタコン酸共重合体、ビニルナフタレン−イタコン酸共重合体、又はこれらの塩]、マレイン酸を重合成分とする重合体又はその塩[例えば、スチレン(又はα−メチルスチレン)−マレイン酸共重合体又はその塩]、ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物など)、ビニルピロリドン系重合体(例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体など)、ビニルエーテル系重合体(ポリビニルメチルエーテルなど)、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、アクリルアミドの単独又は共重合体(ポリアクリルアミドなど)、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、ポリアミンサルホンなどの合成高分子(又はその誘導体)などが挙げられる。
【0090】
水溶性高分子は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0091】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(例えば、カルボン酸塩、アルキルスルホネート、変性アルキルスルホネート、アルキルアリルスルホネート、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸エステル、硫酸化脂肪酸モノグリセライド、硫酸化アルカノールアミド、硫酸化エーテル、アルキルリン酸エステル塩、アルキルベンゼンフォスフォン酸塩、ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物など)、カチオン界面活性剤(アミン塩、変性アミン塩、テトラアルキル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキルベンジル第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、変性アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルフォスフォニウム塩、アルキルスルホニウム塩など)、両性界面活性剤(ベタイン、スルホベタインなど)、ノニオン界面活性剤{例えば、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸エチレンオキサイド付加体、脂肪酸アミンエチレンオキサイド付加体、脂肪酸メルカプタンエチレンオキサイド付加体、アセチレンアルコール系化合物[例えば、アセチレンジオール(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールなど)、アセチレンジオールのアルキレンオキサイド付加物などのアセチレンジオール系化合物)など]など}などが挙げられる。
【0092】
界面活性剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0093】
これらの分散剤のうち、界面活性剤が好ましく、特に、ノニオン界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)を好適に使用してもよい。このような分散剤は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂を含む板状樹脂粉体との組み合わせにおいて、塗膜形成性や高温焼付に伴う着色抑制などの観点から好適である。
【0094】
分散剤の割合は、その種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、板状樹脂粉体100重量部に対して、0.001〜100重量部(例えば、0.005〜50重量部)、好ましくは0.01〜30重量部(例えば、0.02〜25重量部)、さらに好ましくは0.05〜20重量部(例えば、0.1〜15重量部)程度であってもよく、通常0.5〜30重量部(例えば、1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部)程度であってもよい。
【0095】
また、分散剤の割合は、板状樹脂粉体および分散媒(水など後述の分散媒)の総量100重量部に対して、例えば、0.005〜40重量部、好ましくは0.01〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜20重量部(例えば、0.1〜15重量部)程度であってもよい。
【0096】
分散剤を水溶性高分子で構成する場合、分散剤の割合は、特に、板状樹脂粉体および分散媒の総量100重量部に対して、0.01〜20重量部程度であってもよい。また、分散剤を界面活性剤で構成する場合、分散剤の割合は、特に、板状樹脂粉体および分散媒体の総量100重量部に対して、10重量部以下(例えば、0.01〜8重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度)であってもよい。
【0097】
塗料は、分散媒を含んでいてもよい。換言すれば、塗料において、板状樹脂粉体は、分散媒に分散していてもよい(板状樹脂粉体が分散媒に分散したエマルションの形態であってもよい)。分散媒としては、板状樹脂粉体を分散できれば特に限定されないが、水を好適に用いることができる。なお、水と他の溶媒(例えば、アルコール類などの前記例示の水性溶媒など)との混合溶媒を用いてもよい。他の溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0098】
分散媒を含む場合、分散媒の割合は用途や所望の塗膜厚みなどに応じて適宜選択でき、板状樹脂粉体1重量部に対して、例えば、0.1〜1000重量部(例えば、0.3〜500重量部)、好ましくは0.5〜300重量部、さらに好ましくは1〜100重量部(例えば、1.5〜80重量部)、特に2〜50重量部(例えば、3〜40重量部)程度であってもよく、通常2〜50重量部(例えば、5〜30重量部、好ましくは10〜25重量部)程度であってもよい。
【0099】
なお、本発明の塗料(分散液又は板状樹脂粉体)は、チキソトロピック性(チキソトロピー性)を有していてもよい。
【0100】
このような本発明の塗料は、基材(被塗布基材、被コーティング基材)上に塗膜を形成できる。そのため、本発明には、このような塗膜および塗膜が形成された基材[詳細には、基材と、この基材上に前記塗料で形成された塗膜(基材を被覆する塗膜)とで構成された複合基材(塗料被覆基材、コーティング処理基材)]も含まれる。
【0101】
基材[又は基材のうち、塗布面(塗布部位)]の材質は、例えば、金属[アルミニウム、鉄、チタン、ニッケル、合金(ステンレス)など]、セラミックス(ガラスなど)、プラスチック、木材などが挙げられる。本発明では、特に、金属基材(金属で形成された基材)を好適に使用してもよい。換言すれば、本発明の塗料は、過酷な条件(高温や高圧など)に耐えうる芳香族ポリエーテルケトン樹脂で構成されているため、特に、金属塗装(又は金属被覆)用の塗料として好適に用いてもよい。
【0102】
なお、基材(又は、基材のうち塗布面)は、必要に応じて、表面処理(ブラスト処理など)がなされて(施されて)いてもよい。
【0103】
塗膜(又は複合基材)は、基材上に、塗料をコーティング(塗布又は塗装)するコーティング工程を含む製造方法により、得ることができる。
【0104】
塗装方法(塗膜の形成方法、コーティング方法)としては、塗料の態様(分散媒の有無など)などに応じて選択でき、例えば、スプレー(吹き付け)、静電塗装、流動浸漬法などが挙げられる。
【0105】
なお、塗膜の厚みなどに応じて、複数回、塗布してもよい。
【0106】
塗布(コーティング)後、必要に応じて、塗膜を乾燥処理する乾燥工程や塗膜を焼付処理(加熱処理)する焼付工程を行ってもよい。焼付処理において、塗膜の加熱温度は、板状樹脂粉体を構成する樹脂に応じて適宜選択できるが、例えば、300〜500℃、好ましくは320〜450℃、さらに好ましくは350〜400℃程度であってもよい。焼付処理時間は、特に限定されず、例えば、30秒〜30分[例えば、1〜25分(例えば、2〜20分)、好ましくは3〜15分(例えば、5〜12分)程度]であってもよい。
【0107】
塗膜の厚み(平均厚み)は、塗布法(コーティング法)や塗料における樹脂成分の割合などに応じて選択でき、例えば、0.5〜2000μm(例えば、1〜1500μm)、好ましくは2〜1000μm(例えば、3〜800μm)、さらに好ましくは5〜500μm(例えば、10〜300μm)程度であってもよい。
【0108】
特に、塗膜を薄膜とする場合、厚みは100μm以下(例えば、1〜70μm)、好ましくは50μm以下(例えば、2〜40μm)、さらに好ましくは30μm以下(例えば、5〜25μm)であってもよく、通常1〜40μm(例えば、3〜30μm、好ましくは5〜20μm)であってもよい。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、各種物性の測定方法は以下の通りである。
【0110】
(板状樹脂粉体の平均厚みおよび平均径)
試料(サンプル)9.5gを、2Lの蒸留水で3回洗い、濾過、減圧乾燥機で乾燥させた。
【0111】
そして、濾紙に付着しているパウダーを無作為に3箇所、スパチュラでサンプリングし、で観察台に載せ、観察台上のサンプルを金で蒸着させた。
【0112】
そして、キーエンス社の走査型電子顕微鏡(SEM)VE−8800を用い、所定の倍率(1000倍、2000倍、3000倍、5000倍)で、3Dモードで測定、観察を行った。
【0113】
得られた電子顕微鏡写真から、観察視野の中の粒子をランダムに60粒(厚み方向および長手方向(板面方向)のそれぞれにおいて測定しやすい粒子を30粒ずつ)選択し、解析モードを用いて、各粒子の厚み(最大厚み)や径(粒子の長手方向の最大長さ)を測定した。
【0114】
なお、板状化処理前の粒子については、板状ではないため、長径と短径とを測定した。
【0115】
なお、板状の粒子は、上記の測定条件では、見かけ上、凝集し、厚みなどを測定しがたい場合があったため、倍率は、測定しやすいものを適宜選択した。
【0116】
(板状樹脂粉体の径(又は径の分布))
試料(サンプル)を水に分散し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製、LA920)を用いて測定した。
【0117】
(ピンホールの数)
塗膜のうち、中央に位置する1cm四方の部分について、ピンホールの数を目視で数えた。
【0118】
(表面平滑性)
塗膜全体を目視観察、以下の基準で表面平滑性を評価した。
【0119】
A:凹凸が全くないか又はほとんどなく、かつ表面全体が均一である
B:凹凸がほとんどない
C:凹凸が多い
D:凹凸が非常に多い。
【0120】
(実施例1)
板状化処理されていない非板状PEEK粉体a(ダイセル・エボニック(株)製、「VESTAKEEP 2000UFP−20」、溶融粘度(380℃、剪断速度36.48s
−1)790Pa・s)を10重量%の割合で水に分散させた状態で、ボールミルを用いて押し潰すことで板状化した。なお、この際に使用したボールミルのメディア種には、高純度アルミナビーズ(粒径0.5mm)を用い、分散液とメディアの体積は同体積とした。
【0121】
得られた板状粉体Aの電子顕微鏡写真(3000倍)を
図1に示す。
【0122】
なお、板状粉体Aの平均厚みは0.8μmであり、平均径は8.0μmであり(従って、平均厚み/平均径=10.0)、径の分布は2.2〜210.0μm、頻度最大となる径(頻度最大粒子径)は20μm、頻度最大となる径の割合は6.5%であった。
【0123】
そして、得られた板状粉体Aを3重量%の割合で水に分散させ、分散液を得た。分散液において、板状粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、板状粉体の沈降は見られなかった。
【0124】
得られた分散液を、ステンレス(SUS420)板(10cm角)の片面全面に、塗膜厚みが20μmとなるようにスプレーした。なお、ステンレス板は、ブラスト処理後、脱脂したものを用いた。また、スプレー後、液だれは生じなかった。
【0125】
スプレー後、80℃で15分乾燥し、水分を蒸発させた。なお、乾燥処理後の塗膜は、指で擦っても剥離せず、ステンレス板に密着していた。
【0126】
そして、乾燥後の塗膜を380℃で10分間加熱し、焼付塗膜を得た。この塗膜について、ピンホールの数は0個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はAであった。なお、焼付後の塗膜の写真を
図2に示す。
【0127】
(実施例2)
実施例1において、板状粉体Aに代えて、実施例1で得られた板状粉体Aと板状化処理されていない非板状PEEK粉体b(ダイセル・エボニック(株)製、「VESTAKEEP 4000UFP−10」、溶融粘度(380℃、剪断速度36.48s
−1)1800Pa・s)とを、前者/後者(重量比)=70/30の割合で含む粉体(混合粉体、粉体混合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0128】
そして、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は5個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はBであった。
【0129】
(実施例3)
実施例1において、板状粉体Aに代えて、実施例1で得られた板状粉体Aと板状化処理されていない非板状PEEK粉体c(ダイセル・エボニック(株)製、「VESTAKEEP 2000UFP−10」、溶融粘度(380℃、剪断速度36.48s
−1)790Pa・s)とを、前者/後者(重量比)=80/20の割合で含む粉体(混合粉体、粉体混合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0130】
そして、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は1個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はAであった。
【0131】
(実施例4)
実施例1において、板状粉体Aに代えて、実施例1で得られた板状粉体Aと板状化処理されていない非板状PEEK粉体aとを、前者/後者(重量比)=70/30の割合で含む粉体(混合粉体、粉体混合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0132】
そして、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は10個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はBであった。
【0133】
(実施例5)
実施例1において、板状粉体Aに代えて、実施例1で得られた板状粉体Aと板状化処理されていない非板状PEEK粉体cとを、前者/後者(重量比)=65/35の割合で含む粉体(混合粉体、粉体混合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0134】
そして、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は15個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はBであった。
【0135】
(比較例1)
実施例1において、板状粉体に代えて、板状化処理されていない非板状PEEK粉体aを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。
【0136】
そして、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は250個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はDであった。
【0137】
なお、焼付後の塗膜の写真(拡大写真)を
図3に示す。
【0138】
(比較例2)
実施例1において、板状粉体に代えて、板状化処理されていない非板状PEEK粉体bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。
【0139】
そして、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は88個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はCであった。
【0140】
(比較例3)
実施例1において、板状粉体に代えて、板状化処理されていない非板状PEEK粉体cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。
【0141】
そして、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は76個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はCであった。
【0142】
(実施例6)
実施例1において、非板状PEEK粉体aに代えて非板状PEEK粉体bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、板状粉体Bを得た。なお、板状粉体Bの平均厚みは1.5μmであり、平均径は6.1μmであり(従って、平均厚み/平均径=4.1)、径の分布は3.0〜201.2μm、頻度最大粒子径は15μm、頻度最大となる径の割合は7.0%であった。
【0143】
そして、得られた板状粉体Bを用いて、実施例1と同様にして分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0144】
さらに、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は0個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はAであった。
【0145】
(実施例7)
実施例1において、メディアの体積を、同体積から分散液の1.2倍の体積[すなわち、分散液/メディア(体積比)=40/60]としたこと以外は、実施例1と同様にして、板状粉体Cを得た。なお、板状粉体Cの平均厚みは0.60μmであり、平均径は10.2μmであり(従って、平均厚み/平均径=1/17)、径の分布は1.1〜230.5μm、頻度最大粒子径は25μm、頻度最大となる径の割合は5.0%であった。
【0146】
そして、得られた板状粉体Cを用いて、実施例1と同様にして分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0147】
さらに、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした後、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は0個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はAであった。
【0148】
(実施例8)
実施例1において、10重量%の割合の非板状PEEK粉体aに加えて、1重量%の割合(すなわち、PEEK粉体100重量部に対して10重量部の割合)でノニオン界面活性剤(日信化学工業(株)製、「サーフィノール485」)を加えて分散させたこと以外は、実施例1と同様にして、板状粉体を得た。板状粉体の平均厚みなどは、板状粉体Aと同じであった。
【0149】
そして、得られた板状粉体を用いて、実施例1と同様にして分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0150】
さらに、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした。なお、スプレー後の塗膜の均一性は、実施例1よりもさらに高かった。
【0151】
スプレー後、実施例1と同様にして、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は0個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はAであった。
【0152】
(実施例9)
実施例1において、10重量%の割合の非板状PEEK粉体aに加えて、0.6重量%の割合(すなわち、PEEK粉体100重量部に対して6重量部の割合)でノニオン界面活性剤(日信化学工業(株)製、「サーフィノール485」)を加えて分散させたこと以外は、実施例1と同様にして、板状粉体を得た。板状粉体の平均厚みなどは、板状粉体Aと同じであった。
【0153】
そして、得られた板状粉体を用いて、実施例1と同様にして分散液を得た。分散液において、混合粉体は、均一に分散していた。また、分散液を静置しても、混合粉体の沈降は見られなかった。
【0154】
さらに、実施例1と同様にして、分散液をスプレーした。なお、スプレー後の塗膜の均一性は、実施例1よりもさらに高かった。
【0155】
スプレー後、実施例1と同様にして、焼付を行った。焼付塗膜について、ピンホールの数は0個であり、塗膜全体の表面平滑性の評価はAであった。
【0156】
表1に実施例および比較例で用いた樹脂粉体、表2に実施例および比較例の結果をまとめたものと示す。なお、表1において、
非板状粉体
a〜
cについては板状でないため、「平均厚み」を長径の平均値とし、「平均径」を長径と短径との平均値(平均粒径)とした。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】