特許第6356677号(P6356677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356677
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20180702BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180702BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J11/06
   C09J11/04
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-529669(P2015-529669)
(86)(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公表番号】特表2015-530436(P2015-530436A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】KR2013007703
(87)【国際公開番号】WO2014038811
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0097729
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE−CHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ハンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジヘ
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−258717(JP,A)
【文献】 特開2009−079205(JP,A)
【文献】 特開2008−069261(JP,A)
【文献】 特開2011−225764(JP,A)
【文献】 特開2009−173875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式で表されるビニル基を有するイオン性単量体含有し、水素イオン発生単量体を含有しないアクリル系共重合体、および
イオン性帯電防止剤を含有し、
前記イオン性帯電防止剤は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩よりなる群から選択された陽イオンと;
フッ素含有無機塩、フッ素含有有機塩およびヨウ化イオンよりなる群から選択された陰イオンとからなるイオン性塩類である
粘着剤組成物。
【化1】
【請求項2】
前記アクリル系共重合体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体およびビニル基を有するイオン性単量体を含有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ビニル基を有するイオン性単量体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体100重量部に対して0.1〜10重量部を含有する、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記イオン性帯電防止剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部を含有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤と、酸を含有しないアクリル系共重合体の相溶性を高めて、帯電防止剤のブリードアウト(Bleed out)を抑制することによって、耐久性、帯電防止性および腐食防止性を同時に向上させることができる粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶表示装置(Liquid crystal display device、LCD)は、液晶を含んでいる液晶セルと偏光板が具備され、これを接合するための適切な粘着剤層が使用される。粘着剤は、粘着性および透明性に優れたアクリル系共重合体をベースとするアクリル系粘着剤が多く使用される。
【0003】
偏光板を液晶セルに付着する工程で粘着剤層から離型フィルムを剥離すれば、静電気が発生し、発生した静電気は、液晶の配向に影響を与えて不良を誘発するか、または静電気的引力によって液晶セルと粘着剤との間に流入された異物によって汚染を誘発する。
これを改善するために、粘着剤組成物にイオン性帯電防止剤を混合使用するが、前記イオン性帯電防止剤の表面移行により析出されるブリードアウト(Bleed out)現象で、浮き立ち、気泡および剥離などを発生させることがある。特にこのような問題は、高温または高温多湿な環境に露出した場合、さらに悪くなることがある。
【0004】
また、ITOなどの金属層を含む液晶セルは、粘着剤の内部に含有されたHOおよびOによって腐食が発生し、金属酸化物、水酸化物、その他腐食性生成物が形成される。これらは、液晶表示装置の電気的または機械的安定性を低下させるか、または視認性確保および信頼性に問題を発生させることがある。
金属の腐食性を改善するために、粘着剤組成物の耐久性向上のために必須に使用される水素イオン発生単量体(例えば、カルボキシ基を有する単量体)の使用を排除している傾向がある。
【0005】
以上のように、最近、水素イオン発生単量体を使用せず、帯電防止性および耐久性に優れた粘着剤組成物に対する要求が増大している実情である。
これと関連して、水素イオン発生単量体を排除しながら、アミン基またはポリエチレングリコール基を導入し、帯電防止剤との相溶性を増加させたアクリル系共重合体を使用する方法が提案されている(特許文献1、2参照)。しかし、前記方法は、ブリードアウト現象による耐久性低下を改善するには非常に不足な効果を示しているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2009−132564号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2011−136760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、帯電防止剤の表面移行による浮き立ち、気泡および剥離などの現象がなく、且つ耐久性だけでなく、帯電防止性に優れ、別に腐食防止剤成分を含有せず、金属層の腐食を効果的に抑制することができる粘着剤組成物を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、ビニル基を有するイオン性単量体が含有されたアクリル系共重合体と、イオン性帯電防止剤を含有する粘着剤組成物を提供する。
【0009】
前記ビニル基を有するイオン性単量体は、下記化学式で表されることができる。
【0010】
【化1】
【0011】
前記アクリル系共重合体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体およびビニル基を有するイオン性単量体を含有することができる。
【0012】
前記ビニル基を有するイオン性単量体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体100重量部に対して0.1〜10重量部を含有することができる。
【0013】
前記イオン性帯電防止剤は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩よりなる群から選択された陽イオンと;フッ素含有無機塩、フッ素含有有機塩およびヨウ化イオンよりなる群から選択された陰イオンからなるイオン性塩類であることができる。
【0014】
前記イオン性帯電防止剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部を含有することができる。
【0015】
前記粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含有することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤の表面移行による浮き立ち、気泡および剥離などの現象がなく、且つ耐久性に優れていると共に、帯電防止性を満足させることができる利点がある。
本発明の粘着剤組成物は、別に腐食防止剤成分を含有せずに、金属層の腐食を効果的に抑制することができる利点がある。
したがって、前記粘着剤組成物は、静電気が発生しやすいプラスチック製品、特に電気/電子機器などの分野で静電気回避用途にその活用度が高いものと予想される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、帯電防止剤と、酸を含有しないアクリル系共重合体の相溶性を高めて、帯電防止剤のブリードアウト(Bleed out)を抑制することによって、耐久性、帯電防止性および腐食防止性を同時に向上させることができる粘着剤組成物に関する。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、ビニル基を有するイオン性単量体が含有されたアクリル系共重合体と、イオン性帯電防止剤を含有する。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の重合反応によって固定化されたイオン性単量体によってイオン性帯電防止剤の相溶性が向上する。
前記相溶性の向上により帯電防止剤成分が表面に移動して析出されるブリードアウト(Bleed out)現象が抑制され、耐久性に優れる。このような現象は、高温または高温・多湿な環境の下でも抑制され、優れた耐久性の維持が可能である。
また、本発明の粘着剤組成物は、イオン性帯電防止剤とともにイオン性単量体が帯電防止性を有するので、従来、帯電防止剤のみを利用した粘着剤組成物に比べてその性能が格別に向上する。
アクリル系共重合体に含有されるイオン性単量体は、アクリレート系単量体と共重合が可能になるようにビニル基を含み、イオン性帯電防止剤とイオン結合を形成できるものを使用する。
【0019】
具体的に、イオン性単量体は、下記化学式で表されることができる。
【0020】
【化2】
これらイオン性単量体は、市販の製品または合成によって製造されることができ、一例として合成は、米国特許第3,226,881号公報の方法が使用されることができる。
【0021】
本発明のアクリル系共重合体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体およびビニル基を有するイオン性単量体を含有することが好ましい。本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。
【0022】
前記炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのうち、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートまたはこれらの混合物が好ましい。これらは、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
前記ビニル基を有するイオン性単量体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体100重量部に対して0.1〜10重量部を含有することが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部であることがよい。含量が0.1重量部未満であると、帯電防止剤の相溶性向上効果が不十分で、耐久性の確保が困難となることがあり、10重量部を超過する場合には、親水性が過度に高くて、耐湿熱性の確保が困難となることがある。
【0024】
本発明のアクリル系共重合体は、前記ビニル基を有するイオン性単量体以外に架橋可能な官能基を有する重合性単量体をさらに含有することができる。前記架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、化学結合によって粘着剤組成物の凝集力または粘着強度を補強して、耐久性と切断性を付与することができるものであって、水素イオン(H)を発生させない成分を使用する。
【0025】
ヒドロキシ基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アルキレン基の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、7−ヒドロキシヘブチルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、10−ヒドロキシデシルビニルエーテルなどが挙げられ、これらのうち、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。
【0026】
アミド基を有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−3次ブチルアクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、これらのうち、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0027】
3次アミン基を有する単量体としては、例えば、N,N−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
このような架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体100重量部に対して0.05〜10重量部で含まれることが好ましく、より好ましくは、0.1〜8重量部であることがよい。含量が0.05重量部未満の場合、粘着剤の凝集力が小さくなって、耐久性が低下することがあり、10重量部超過の場合、高いゲル分率によって粘着力が劣って、耐久性に問題を引き起こすことがある。
【0029】
また、本発明のアクリル系共重合体は、前記単量体以外に他の重合性単量体を粘着力を低下させない範囲、例えば全体量に対して10重量部以下でさらに含有することができる。
【0030】
アクリル系共重合体は、ゲル透過クロマトグラフィ(Gel permeation chromatography、GPC)によって測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算、Mw)が5万〜200万であることが好ましく、より好ましくは、40万〜200万であることがよい。重量平均分子量が5万未満の場合、共重合体間の凝集力が不足で、粘着耐久性に問題を引き起こすことができ、200万超過の場合、塗工時に工程性を確保するために多量の希釈溶媒を必要とすることがある。
【0031】
イオン性帯電防止剤は、陰イオンと陽イオンで構成されたイオン性塩類であって、粘着剤にイオン伝導性を付与することができるものなら特にその種類を限定しない。
具体的には、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩よりなる群から選択された陽イオンと;フッ素含有無機塩、フッ素含有有機塩およびヨウ化イオンよりなる群から選択された陰イオンからなるイオン性塩類であることができる。
【0032】
このようなイオン性帯電防止剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部含有することが好ましく、0.5〜3重量部含有することがより好ましい。含量が0.1重量部未満の場合、帯電防止性が不十分であることがあり、10重量部を超過する場合には、耐久性の確保が困難となることがある。
【0033】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含有することができる。
【0034】
架橋剤は、密着性および耐久性を向上させることができ、高温での信頼性および粘着剤の形状を維持させることができる。
【0035】
前記架橋剤は、イソシアネート系、エポキシ系、メラミン系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系などが使用されることができ、1種または2種以上を混合使用することができる。このうち、イソシアネート系またはエポキシ系が好ましい。
【0036】
前記イソシアネート系は、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;トリメチロールプロパンなどの多価アルコール系化合物1モルにジイソシアネート化合物3モルを反応させた付加体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させたイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モルのうち2モルから得られるジイソシアネートウレアに残りの1モルのジイソシアネートが縮合されたビュレット体、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネートなどの3個の官能基を含有する多官能イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0037】
前記エポキシ系は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどが挙げられる。
【0038】
前記メラミン系は、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなどが挙げられる。
【0039】
このような架橋剤は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して0.1〜15重量部含有することが好ましく、より好ましくは、0.1〜5重量部である。含有量が0.1重量部未満であると、不足な架橋度によって凝集力が小さくなって、粘着耐久性および切断性の物性を損傷させるおそれがあり、15重量部を超過する場合には、過多架橋反応による残留応力緩和に問題が発生することがある。
【0040】
前記のような成分以外に、粘着剤組成物は、用途によって要求される粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調節するために、シランカップリング剤、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、染料、顔料、消泡剤、充填剤、光安定剤などの添加剤をさらに含有することができる。
このような添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で適切に含量を調節することができる。
【0041】
本発明の粘着剤組成物は、特に液晶セルとの接合のための偏光板用粘着剤、表面保護フィルム用粘着剤として使用することができる。また、保護フィルム、反射シート、構造用粘着シート、写真用粘着シート、車線表示用粘着シート、光学用粘着製品、電子部品用粘着剤だけでなく、一般商業用粘着シート製品として使用可能である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明白であり、このような変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することは当然なことである。
【0043】
製造例:アクリル系共重合体製造
製造例1
窒素ガスが還流され、温度調節が容易になるように冷却装置を設置した1Lの反応器にn−ブチルアクリレート(BA)85重量部、メチルアクリレート(MA)8重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.0重量部、下記化学式で表されるイオン性単量体5重量部からなる単量体混合物を投入した後、溶剤としてアセトン100重量部を投入した。次に、酸素を除去するために窒素ガスを1時間パージングした後、62℃に維持した。前記混合物を均一にした後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.07重量部を投入し、6時間反応させて、重量平均分子量が約100万であるアクリル系共重合体を製造した。
【0044】
【化3】
【0045】
製造例2
前記製造例1と同一に実施するが、下記化学式([化4])で表される単量体の代わりに、下記化学式([化5])で表される単量体を使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0046】
【化4】
【化5】
【0047】
製造例3
前記製造例1と同一に実施するが、下記化学式で表される単量体を使用せず、n−ブチルアクリレート(BA)を90重量部使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0048】
【化6】
【0049】
製造例4
前記製造例1と同一に実施するが、n−ブチルアクリレート(BA)89.95重量部、メチルアクリレート(MA)8重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.0重量部、下記化学式で表されるイオン性単量体0.05重量部からなる単量体混合物を使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0050】
【化7】
【0051】
製造例5
前記製造例1と同一に実施するが、n−ブチルアクリレート(BA)89重量部、メチルアクリレート(MA)8重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.0重量部、下記化学式で表されるイオン性単量体1重量部からなる単量体混合物を使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0052】
【化8】
【0053】
製造例6
前記製造例1と同一に実施するが、n−ブチルアクリレート(BA)81重量部、メチルアクリレート(MA)8重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.0重量部、下記化学式で表されるイオン性単量体9重量部からなる単量体混合物を使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0054】
【化9】
【0055】
製造例7
前記製造例1と同一に実施するが、n−ブチルアクリレート(BA)75重量部、メチルアクリレート(MA)8重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.0重量部、下記化学式で表されるイオン性単量体15重量部からなる単量体混合物を使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0056】
【化10】
【0057】
製造例8
前記製造例1と同一に実施するが、下記化学式で表される単量体の代わりに、アクリルアミドを5重量部使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0058】
【化11】
【0059】
製造例9
前記製造例1と同一に実施するが、下記化学式で表される単量体の代わりに、メトキシエチルアクリレートを5重量部使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0060】
【化12】
【0061】
製造例10
前記製造例1と同一に実施するが、下記化学式で表される単量体の代わりに、アクリル酸を5重量部使用してアクリル系共重合体を製造した。
【0062】
【化13】
【0063】
実施例1〜8および比較例1〜4
下記表1のようにアクリル系共重合体、イオン性帯電防止剤、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、CORONATE−L、0.5重量部)およびシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM−403、0.5重量部)を混合した後、エチルアセテートで希釈して、固形分の濃度15重量%の粘着剤組成物を製造した。この際、表1は、アクリル系共重合体およびイオン性帯電防止剤を記載し、その他の架橋剤およびシランカップリング剤は、同一の成分および含量を使用した。
【0064】
前記で製造された粘着剤組成物をシリコーン離型剤がコーティングされた離型フィルム上に厚さが25μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させて粘着層を形成した。
厚さ185μmのヨード系偏光板に前記製造した粘着層を粘着加工で積層して、粘着剤付き偏光板を製造した。製造した偏光板を23℃、60%RHの条件下で20日間保管した。
【0065】
【表1】
【0066】
試験例
前記実施例および比較例で製造された粘着剤組成物、粘着剤付き偏光板の物性を下記の方法で測定し、その結果を下記表2に示した。
【0067】
1.表面比抵抗(Ω/□)
製造された粘着剤付き偏光板を表面抵抗測定器(MCP−HT450、Mitsubishi chemical社製)を利用して粘着剤層の3地点をそれぞれ10回ずつ測定し、その平均値で示した。
その後、粘着剤付き偏光板を60℃で24時間放置した後、前記と同一の方法で測定した。
【0068】
2.耐熱性/耐湿熱性
粘着剤付き偏光板の離型フィルムを剥離し、粘着剤層の表面とコーニングガラスを接合した後、80℃(耐熱性)/60℃、90RH%(耐湿熱性)で300時間放置した後、見掛けを確認した。
<評価基準>
気泡と剥離現象が視認される:×
気泡や剥離現象が若干視認されるが、偏光板性能は維持する:○
気泡と剥離現象が視認されない:◎
【0069】
3.金属層の耐腐食性
粘着剤付き偏光板の離型フィルムを剥離した後、粘着剤層の表面とアルミニウム板を接合した後、60℃、95%RHの雰囲気の下で250時間放置し、試験片を製造した。
前記積層体から粘着剤層を剥離し、前記粘着剤層と接触したアルミニウム板の表面を目視で観察し、腐食の有無を評価した。
<評価基準>
アルミニウム板表面が全く腐食されない:◎
アルミニウム板表面が若干腐食されるが、アルミニウム板の機能は維持する:○
アルミニウム板表面が腐食される:×
【0070】
【表2】
【0071】
前記表2のように、本発明によってビニル基を有するイオン性単量体が含有されたアクリル系共重合体およびイオン性帯電防止剤を含有する実施例1〜8の粘着剤組成物は、比較例1〜4に比べて耐久性(耐熱および耐湿熱)、帯電防止性および腐食防止性に同時に優れていることを確認することができた。