(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用するとき、用語
「a」、「an」、及び「the」は互換可能に使用され、1又はそれよりも多くを意味する。
「及び/又は」は、記載される事例の一方又は両方が起こり得ることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。
【0012】
本明細書においては更に、端点による範囲の記載には、その範囲内に含まれる全ての数値が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等が含まれる)。
【0013】
本明細書においては更に、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)。
【0014】
本開示の目標は、高フッ素化ポリマー分散液を調製することにありこの分散は、安定化されていて、フッ素化乳化剤を実質的に含まない。
【0015】
本開示において、酸官能基モノマー(本明細書において重合性フッ素化乳化剤と呼ばれる)は、得られた最終的なフルオロポリマーにそれぞれの特性を付与するためではなく、フルオロポリマー分散を安定化するために用いられる。理論に束縛されるものではないが、少量の重合性フッ素化乳化剤を水性フルオロポリマー重合に加えることによって、これらの酸官能基モノマーは重合を安定化できる一方、結果として得られるフルオロポリマーの特性は付与されないと考えられる。なお、酸官能基モノマーはフルオロポリマーに重合されるため、それらの酸官能基モノマーを水性分散液及び/又は廃水から除去することは不要であり得る。更なる実施形態においては、得られた高フッ素化ポリマーをポストフッ素化することにより、ポリマー(例えば、熱による劣化、退色、膨れなど)の全体的な最終用途特性が向上し得る。
【0016】
本開示は、過フッ素化モノマーと重合性フッ素化乳化剤とを含む、水性乳化重合に関する。式(I)の乳化剤が、フルオロポリマーの水性乳化重合を安定化させるうえで有効であることが見出されてきた。
【0017】
本開示の重合性フッ素化乳化剤は、式(I):
X
2C=CX(CF
2)
m(CH
2)
n[O−(CX
2)
p]
q−[O−(CX
2)
r]
s−[O−(CX
2−CX
2)]
t−[(O)
w−(CX
2)
u]
v−[CH
2]
z−Y
(式中、Xは独立にH、F、又はCF
3から選択され、YはCOOM又はSO
3Mであり、重合性フッ素化乳化剤が少なくとも1つのフッ素原子を含む)に対応するものである。MはH、アルカリ金属(例えば、Na、Caなど)、又はNH
4である。添え字mは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字nは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字pは、少なくとも1、2、3、4、又は更には5であるか、20以下、10以下、8以下、又は更には6である。添え字qは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字rは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字sは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字tは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字uは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字vは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。添え字wは0又は1である。添え字zは0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、又は更には0〜2である。m、n、q、s、t、u、v、及びzのうちの少なくとも1つは、少なくとも1である。
【0018】
本明細書において開示されている重合性フッ素化乳化剤は、酸形態である場合もあれば、又は例えば、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウム塩などの塩である場合もある。
【0019】
本開示において用いられる重合性乳化剤はフッ素化されているため、重合性乳化剤に少なくとも1つのフッ素原子が必然的に含まれる。得られた本開示のポリマーは高フッ素化されるため、重合性フッ素化乳化剤の少なくとも50%、75%、90%、95%、又は更には99%の炭素−水素結合が、炭素−フッ素結合で置換されることが所望される。一実施形態において、本開示の重合性乳化剤は、過フッ素化されている(又は完全にフッ素化されている)。
【0020】
一実施形態において、重合性フッ素化乳化剤は、(i)フッ素化ビニルエーテル、(ii)フッ素化アリルエーテル、及び(iii)フッ素化オレフィンからなる群から選択される。
【0021】
一実施形態において、重合性フッ素化乳化剤は線状分子であり、如何なる分岐も含まない(例えば、分子の主鎖から離れて結合された炭素置換基、例えば、CF
2=CF−O−CF(CF
3)−Yの場合は、分枝状である)。
【0022】
フッ素化ビニルエーテルには、次式
CF
2=CF−O−(CF
2)
p−O−(CF
2)
r−Y
CF
2=CF−O−(CF
2)
p−[O−CF[CF
3]−CF
2]
t−O−CF(CF
3)−Y
CF
2=CF−O−(CF
2)
p−O−CHF−CF
2−Y
CF
2=CF−O−(CF
2)
p−O−CHF−Y
CF
2=CF−O−(CF
2)
p−CH
2−Y及び
CF
2=CF−O−(CH
2)
p−(CF
2)
r−CH
2−Y
(式中、YはCOOM又はSO
3Mである)のフッ素化ビニルエーテルが含まれる。MはH、アルカリ金属、又はNH
4である。添え字rは、少なくとも0又は1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。添え字tは、少なくとも0又は1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。添え字pは、少なくとも1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。
【0023】
例示的なフッ素化ビニルエーテルには、CF
2=CF−O−(CF
2)
3−O−CF
2−COOM、CF
2=CF−O−(CF
2)
2−O−CF
2−COOM、CF
2=CF−O−(CF
2)−(O−CF[CF
3]−CF
2)−O−CF(CF
3)−COOM、CF
2=CF−O−(CF
2)
2−(O−CF[CF
3]−CF
2)−O−CF(CF
3)−COOM、CF
2=CF−O−(CF
2)
3−(O−CF[CF
3]−CF
2)−O−CF(CF
3)−COOM、CF
2=CF−O−(CF
2)
2−CH
2−COOM、CF
2=CF−O−(CH
2)−(CF
2)
2CH
2−COOM、CF
2=CF−O−(CF
2)
4−SO
3M、及びこれらの組み合わせ(式中、MはH、アルカリ金属、又はNH
4である)のような、部分フッ素化ビニルエーテル及び過フッ素化ビニルエーテルが含まれる。
【0024】
フッ素化アリルエーテルには、次式
CF
2=CF−(CF
2)
m−O−(CF
2)
p−O−(CF
2)
r−Y
CF
2=CF−(CF
2)
m−O−(CF
2)
p−[O−CF[CF
3]−CF
2]
t−O−CF(CF
3)−Y
CF
2=CF−(CF
2)
m−O−(CF
2)
p−O−CHF−CF
2−Y
CF
2=CF−(CF
2)
m−O−(CF
2)
p−O−CHF−Y
CF
2=CF−(CF
2)
m−O−(CF
2)
p−CH
2−Y及び
(式中、YはCOOM又はSO
3Mである)のフッ素化アリルエーテルが含まれる。MはH、アルカリ金属、又はNH
4である。添え字mは、少なくとも1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。添え字rは、少なくとも0又は1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。添え字tは、少なくとも0又は1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。添え字pは、少なくとも1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。
【0025】
例示的なフッ素化アリルエーテルには、CF
2=CFCF
2−O−(CF
2)
3−O−CF
2−COOM、CF
2=CFCF
2−O−(CF
2)
2−O−CF
2−COOM、CF
2=CFCF
2−O−(CF
2)−[O−CF(CF
3)−CF
2]−O−CF(CF
3)−COOM、CF
2=CFCF
2−O−(CF
2)
2−[O−CF(CF
3)]−CF
2]−O−CF(CF
3)−COOM、CF
2=CFCF
2−O−(CF
2)
3−[O−CF(CF
3)−CF
2]−O−CF(CF
3)−COOM、CF
2=CFCF
2−O−(CF
2)
2−CH
2−COOM、CF
2=CFCF
2−O−(CF
2)
2−O−CHF−COOM、及びこれらの組み合わせ(式中、MはH、アルカリ金属、又はNH
4である)のような部分フッ素化アリルエーテル及び過フッ素化アリルエーテルが含まれる。
【0026】
フッ素化オレフィンには、次式:
CX
2=CX−(CF
2)
m−Y及び
CF
2=CF−(CF
2)
m−Y
(式中、Xは独立にH、F、又はCF
3から選択され、かつYはCOOM又はSO
3Mである)のフッ素化オレフィンが含まれる。MはH、アルカリ金属、又はNH
4である。添え字mは、少なくとも1及び多くて6、5、4、3、又は更には2から選択される整数である。一実施形態において、フッ素化オレフィン中のXのうちの少なくとも1つはHである。一実施形態において、フッ素化オレフィン中のXのうちの少なくとも1つにはF原子が含有される。
【0027】
例示的なフッ素化オレフィンには、CH
2=CF−(CF
2)−COOM、CF
2=CH−(CF
2)−COOM、CH
2=CF−(CF
2)
2−COOM、CF
2=CF−(CF
2)−COOM、CF
2=CF−(CF
2)−SO
3M、及びこれらの組み合わせ(式中、MはH、アルカリ金属、又はNH
4である)のような部分フッ素化オレフィン及び過フッ素化オレフィンが含まれる。
【0028】
一実施形態において、重合性フッ素化乳化剤は、
CF
2=CF−(CF
2)
m−O−(CF
2)
p−[O−(CF
2)
r]
s−Y(II)
CF
2=CF−(CF
2)
m−O−(CF
2)
p−[O−(CF(CF
3)−CF
2)]
t−[O−CF(CF
3)]
v−Y(III)、及び
CX
2=CX−(CF
2)
m−Y (IV)
(式中、XはH、F、又はCF
3から独立に選択され、YはCOOM又はSO
3Mであり、mは0〜5から選択される整数であり、ただし、式(IV)の場合、mは1〜5から選択される整数であり、pは少なくとも1であり、rは0〜5から選択される整数であり、sは1〜5から選択される整数であり、tは1〜5から選択される整数であり、vは1〜5から選択される整数であり、かつMはH、アルカリ金属、又はNH
4から選択される整数である)からなる群から選択される。
【0029】
本開示の例示的な重合性フッ素化乳化剤には、CF
2=CF−O(−CF
2)
p−O−CF
2−COOM(式中、pは1、2、3、4、5、又は6である);CF
2=CF−CF
2−O(−CF
2)
p−[O−CF
2−(CF
2)
u−COOM(式中、pは1、2、3、4、5、又は6であり、uは0又は1である);CF
2=CF−O−CF
2COOM;CF
2=CF−O−(CF
2)
p−O−CF(CF
3)−COOM(式中、pは1、2、3、4、5、又は6である);及びCF
2=CF−O−(CF
2)
p−SO
3M(式中、pは1、2、3、4、又は5である):及びCF
2=CF−O−(CF
2)
p−SO
3M(式中、pは1、2、3、4、5、又は6であり、かつMはH、アルカリ金属、又はNH
4である)が含まれる。
【0030】
本開示の重合性フッ素化乳化剤は、非テロゲン活性を有する。つまり、炭素結合のうち水素に対する結合は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、又は更にはゼロである。言い換えると、重合性フッ素化乳化剤が連鎖移動剤のようには作用しないため、結果として得られるポリマーの分子量は減少しないということである。本開示の重合性フッ素化乳化剤は、ポリマー主鎖に重合されるため、重合を停止させない。
【0031】
本開示の重合において、上述の重合性フッ素化乳化剤は、1種以上の過フッ素化モノマーの水性乳化重合に用いられる。
【0032】
重合性フッ素化乳化剤の使用量は、固体の量、粒径などのような所望の特性に応じて異なり得る。一般に、重合性フッ素化乳化剤の量は、フルオロポリマーの分散を安定させるのに十分なレベルに維持される。典型的に、重合性フッ素化乳化剤の量は、少なくとも50、100、200、300、400、又は更には500ppm(百万分率)であり、使用される過フッ素化モノマーの総量を基準とする。フッ素化重合性乳化剤を不必要に大量に使用すると、結果として得られるフルオロポリマーは、凝固及び/又はワークアップが困難になる場合があり、また、最終的なポリマーの特性、例えば、熱安定性又は退色に影響が及ぶ可能性もある。典型的に、重合性フッ素化乳化剤の量は、使用される過フッ素化モノマーの総量を基準として多くて750、1000、2000、4000、5000、又は更には10000ppmである。
【0033】
本開示の重合は水性乳化重合である。つまり、重合が起こるのは、水中に分散されていて、かつ乳化剤によって電子的に安定化されているポリマー粒子においてである。水性乳化重合は、連続的に行われることができ、例えば、得られる乳剤を連続的に除去しながら、モノマー、水、任意に更なる乳化剤、緩衝剤、及び触媒が、最適な圧力及び温度条件下で撹拌反応器に連続的に注がれる。代替技術は、成分を撹拌反応器に注ぎ、それらを設定温度で一定時間反応させるか、又は所望量のポリマーが形成されるまで、一定圧力を維持するように、成分を反応器内に装入し、モノマーを反応器に注ぐことを特徴とする、バッチ又は半バッチ(半連続的)重合である。重合は、ガス状フッ素化モノマーの乳化重合のために使用される標準容器又は従来型容器内で実施することができる。
【0034】
一実施形態において、重合性フッ素化乳化剤は、重合中に継続的に付加される。理論に束縛されるものではないが、重合中に、重合性フッ素化乳化剤を継続的に付加することによって、固体の収量を増やすことができると考えられる。安定化極性基は、成長中のポリマー鎖で被覆されることから、コロイドの安定性に影響を与えることはあり得ないため、ポリマー表面に安定化極性基を絶えず有することが重要になる場合があり、重合中には重合性フッ素化乳化剤を継続的に付加し得ると考えられている。一実施形態においては、重合の終了前に重合性フッ素化乳化剤の添加を中断することが好ましく、そうすることにより、重合性フッ素化乳化剤がポリマーに完全に混入されるようになり、かつ廃水流の処置が回避されることが保証される。
【0035】
一実施形態において、水性乳化の形態で重合にいくらかのモノマーを添加することが望ましい場合がある。例えば、重合条件下で液体である完全フッ素化されたコモノマーは、水性乳化の形態で有利に添加され得る。そのようなコモノマーの乳剤は、好ましくは重合性フッ素化乳化剤を用いて、調製される。重合性フッ素化乳化剤の一部が重合の開始前にバッチ充填された場合、任意選択的に「ドープされた」重合性フッ素化乳化剤が使用される。ドープされた重合性フッ素化乳化剤は、フッ素化された低テロゲン性の不活性液体を含み、沸点が100℃を超えるマイクロエマルションである。そのような液体の例としては、(i)オクタフルオロナフタレン、オクタフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン、ペルフルオロペルヒドロフェナントレン(C
14F
24)、ペルフルオロペルヒドロフルオレン(C
13F
22)、ペルフルオロデカリン(C
10F
18)、ペルフルオロメチルデカリン(C
11F
20)、ペルフルオロブチルデカリン(C
14F
26)、ペルフルオロジメチルシクロヘキサン(C
8F
16)、ペルフルオロメチルシクロヘキサン(C
7F
14)、ペルフルオロジメチルシクロブタン(C
6F
12)のようなフッ素化環状炭化水素;(ii)式CF
2=CF−(CF
2)
l−O(R
afO)
n(R
bfO)
mR
cf(式中、R
af及びR
bfはC原子数3〜6のそれぞれ異なるペルフルオロアルキレン基であり、R
cfはC原子数1〜6のペルフルオロアルキル基であり、lは0又は1であり、m及びnは独立に0〜10であり、n+mは2より大きいか又は3より大きく、例えば、CF
3−CF
2−CF
2−(O−CF(−CF
3)−CF
2)
2−O−CF=CF
2(PPVE−3)、CF
3−CF
2−CF
2−(O−CF(−CF
3)−CF
2)
3−O−CF=CF
2(PPVE−4)、CHF
2−CF
2−CF
2−(O−CF(−CF
3)−CF
2)−O−CF=CF
2(HPPVE−2)、CHF
2−CF
2−CF2−(O−CF(−CF
3)−CF
2)
2−O−CF=CF2(HPPVE−3))のフッ素化ポリオキシアルケン;(iii)式F
3C−C(R
df)=C(R
ef)(R
ff)(式中、R
df及びR
efは独立に互いにフッ素又は過フッ素化又は部分フッ素化、直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、好ましくは1〜6個、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する基を表し、R
ffは炭素原子数1〜6の過フッ素化、直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基、例えばC(−CF
3)(−CF
3)=CF−CF
2−CF
3(HFP二量体)、及びC(−CF
3)
2=C(−CF
2−CF
3)(−CF(−CF
3)
2)(HFPトリマー)のフッ素化アルケン、並びに(iv)式R
gf−O−R
hf−O−R
if)(式中、R
gf及びR
ifは独立にC原子数2〜5のフッ素化アルキル基であり、R
hfはC原子数2〜4の分岐鎖状過フッ素化アルキル基であり、例えば、CHF
2−CF
2−CF
2−O−CF(−CF
3)−CF
2−O−CFH−CF
3(HTFEE−2)、CHF
2−CF
2−CF
2−O−CF(−CF
3)−CF(−CF
3)−O−CF
2−CF
2−CHF
2、及びCF
3−CF
2−CF
2−O−CF(−CF
3)−CF(−CF3)−O−CF
2−CF
2−CF
3)のフッ素化ポリオキシアルカンが挙げられる。例えば、本明細書において参照により援用されている米国特許出願公開第2011/0294951号(Hintzer et al.)を参照のこと。
【0036】
水性乳化重合は、10〜100℃、又は更には30℃〜80℃の温度で実行することができ、圧力は、典型的には、2〜50バール(0.2〜5MPa)、又は更には5〜30バール(0.5〜3MPa)である。反応温度は、重合中、分子量分布に影響を及ぼす。即ち、広い分子量分布を得る、又は二峰性若しくは多峰性分子量分布を得るために変更され得る。
【0037】
水性乳化重合は、典型的には、フルオロモノマーのフリーラジカル重合を開始させることが公知である任意の反応開始剤を含む反応開始剤により開始される。重合系の反応開始剤は、ポリマー末端基が重合性フッ素化乳化剤と同じになるように、即ち、例えば、KMnO
4がCOO
−末端基を生成し、一方APS/重亜硫酸塩系が部分的にSO
3末端基を生成するように、選択される。
【0038】
好適な反応開始剤としては、過酸化物及びアゾ化合物及び酸化還元系反応開始剤が挙げられる。過酸化物反応開始剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム又は過酸化バリウム、過酸化ジアセチルのような過酸化ジアシル、過酸化ジスクシニル、ジプロピオニルペルオキシド、ジブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルアセチルペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド、及びジラウリルペルオキシド、並びに更には過酸及びその塩(例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩など)が挙げられる。過酸の例としては、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に用いることができ、これらの例としては、tert−ブチルペルオキシアセテート及びtert−ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。無機の反応開始剤の例としては、例えば、過硫酸塩、過マンガン酸、又はマンガン酸の、アンモニウム塩、アルカリ塩、アルカリ土類塩が挙げられる。過硫酸塩反応開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)はそのままで用いてもよく、又は還元剤と組み合わせて用いてもよい。好適な還元剤としては、例えば、重亜硫酸アンモニウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムのような重亜硫酸塩、例えば、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、又はチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、ヒドラジン、アゾジカルボン酸塩、及びアゾジカルボキシルジアミド(ADA)が挙げられる。更に、使用され得る還元剤としては、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(例えば、「RONGALIT」という商標表記で販売されているもの)、又は米国特許第5,285,002号(Grootaert)に開示されているスルフィン酸フルオロアルキルが挙げられる。還元剤により、典型的には、過硫酸塩反応開始剤の半減期が短縮される。更に、例えば、銅塩、鉄塩、又は銀塩のような金属塩触媒を添加してよい。反応開始剤の量は、(生成されるフルオロポリマー固体に基づいて)0.01重量%〜1重量%であり得る。1つの実施形態では、反応開始剤の量は0.05〜0.5重量%である。別の実施形態では、量は0.05〜0.3重量%であってよい。開始剤の全量は、重合の開始時に添加してもよいし、又は開始剤は、重合中に連続方式で重合に添加することができる。好ましくは、開始剤は、ポリマーへのモノマーの転化が70%〜80%達成されるまで添加される。また反応開始剤の一部を開始時に添加し、重合中に残りを1回の又は別々の追加分として添加することができる。
【0039】
水性乳化重合系は、更に、緩衝剤のような他の材料、及び必要に応じて錯体形成剤又は連鎖移動剤を含んでよい。用いてもよい連鎖移動剤の例としては、ジメチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エタン、プロパン、及びn−ペンタンのような1〜5個の炭素原子を有するアルカン、CCl
4、CHCl
3、及びCH
2Cl
2のようなハロゲン化炭化水素、CH
2F−CF
3(R134a);アルコール;エステルなどのようなヒドロフルオロカーボン化合物が挙げられる。
【0040】
重合性フッ素化乳化剤を乳化剤として用いて重合され得るフッ素化モノマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ジクロロジフルオロエチレン、過フッ素化ビニルエーテル(PVE)、及び過フッ素化アリルエーテルのような過フッ素化アルキルビニルモノマー、ペルフルオロ−5−オキサ−ヘプタ−6−エンスルホン酸フルオリド(MV4S)、CF
2=CFO(CF
2)
5CN(MV5CN)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
好適なペルフルオロアルキルビニルモノマーは、一般式:CF
2=CF−R
df又はCH
2=CH−R
df(式中、R
df(式中、炭素原子数1〜10、又は更には1〜5のペルフルオロアルキル基を表す))に対応する。
【0042】
本開示において使用され得るペルフルオロビニルエーテルの例としては、式:CF
2=CF−O−R
f(式中、R
fは0、1つ又はそれ以上の酸素原子と、最大12、10、8、6、又は更には4つの炭素原子と、を含み得る過フッ素化脂肪族基を表す)に対応するものが挙げられる。例示的な過フッ素化ビニルエーテルは、式:CF
2=CFO(R
afO)
n(R
bfO)
mR
cf(式中、R
af及びR
bfは、炭素原子数1〜6、特に、炭素原子数2〜6のそれぞれ異なる直鎖状若しくは分枝鎖状ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは独立に0〜10であり、かつR
cfは炭素原子数1〜6のペルフルオロアルキル基である)に対応する。全フッ素化ビニルエーテルの具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE−1)、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、及びCF
3−(CF
2)
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF=CF
2が挙げられる。
【0043】
本開示において使用され得るペルフルオロアリルエーテルの例としては、式:CF
2=CF(CF
2)−O−R
f(式中、R
fは0、1つ又はそれ以上の酸素原子、及び最大10、8、6、又は更には4つの炭素原子を含有し得る過フッ素化脂肪族基を表す)に対応する。過フッ素化アリルエーテルの具体例としては、CF
2=CF
2−CF
2−O−(CF
2)
nF(式中、nは1〜5の整数であり、かつCF
2=CF
2−CF
2−O−(CF
2)
x−O−(CF
2)
y−F(式中、xは2〜5の整数であり、yは1〜5の整数である)が挙げられる。
【0044】
結果として得られる本開示のフルオロポリマーは、高フッ素化されている。本明細書において「高フッ素化」とは、得られたポリマーの繰り返しモノマー単位が過フッ素化されている(即ち、炭素−水素結合を含まない)ことを意味するが、フルオロポリマーは、使用されたフッ素化重合性乳化剤、用いられた反応開始剤系、及び/又は連鎖移動剤(使用された場合)に由来するいくつかの炭素−水素結合を含み得る。
【0045】
結果として得られる高フッ素化ポリマーは、フッ素樹脂、非晶質フルオロポリマー、又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であり得る。本明細書において開示されている方法による利益を享受する例示的なポリマーとしては、TFEとHFPとのコポリマー(FEPポリマー);ペルフルオロアルコキシコポリマー(PFAポリマー);「TEFLON AF」という商標表記で入手可能なものなどの非晶質過フッ素化ポリマー;「HYFLON MFA」という商標表記で入手可能な溶融処理可能フルオロポリマー(Solvay S.A.(Ixelles,Belgium));PTFE微粉(即ち、例えば500万グラム/mol未満のPTFE);並びにPTFE細粉(即ち、500万グラム/mol超の低分子量のもの)が挙げられる。
【0046】
一実施形態において、本開示の重合は、非重合性フッ素化乳化剤(例えば、ペルフルオロアルカノン酸、フッ素化エーテル、及びアルコキシエーテル)を実質的に含まない。言い換えると、最終的なラテックス中に含まれる非重合性フッ素化乳化剤は、25ppm未満、10ppm未満、1ppm未満、又は更には0.1ppm未満である。
【0047】
本明細書に記載されている水性乳化重合を行うと、結果的として、高フッ素化ポリマー粒子を水中に分散させたもの(別名:ラテックス)が得られる。一般的に、重合から直接得られる分散液中に含まれるフルオロポリマーの固形分の量は、重合条件に応じて3重量%〜約40重量%で変動する。典型的な範囲は、5〜30重量%である。フルオロポリマーの粒径(z平均粒径)は、典型的には50nm〜350nmであり、典型的な粒径は100nm〜約300nmである。
【0048】
重合性フッ素化乳化剤は、本開示の高フッ素化ポリマーに重合されるため、一実施形態において、得られたラテックスは少量(つまり、最終的なラテックス中に含まれる重合性フッ素化乳化剤は、100ppm未満、50ppm未満、25ppm未満、10ppm未満、又は更には1ppm未満)であるか、又は重合性フッ素化乳化剤を実質的に含まない。
【0049】
重合後、得られたラテックスをアップコンセントレートすることにより、固形分を増加させ得る。当該技術分野において公知であるように、非イオン性界面活性剤(例えば、「TRITON」及び「GENAPOL」という商標表記で販売されているもの)を、非イオン性界面活性剤の2〜10重量%の量にて使用し、更に、ラテックスを固形分40〜60%にアップコンセントレートしてもよい。例えば、米国特許第6,833,403号(Bladel et al.)及びカナダ特許第2522837号(Bladel et al.)を参照のこと。
【0050】
ラテックスをアップコンセントレートする代わりに、又はそれに加えて、凝集及び乾燥によって、フルオロポリマー粒子を分散液から単離してもよい。そのような凝集方法は、当該技術分野において公知であり、例えば(HCl、H
2SO
4、HNO
3、H
3PO
4、Na
2SO
4、MgCl
2、炭酸アンモニウムなどのような)電解質又は無機塩を用い、結氷融解サイクルを使用し、高剪断力を印加して、かつ/又は超音波を適用する化学的及び物理的方法を含む。
【0051】
一実施形態において、本明細書に記述されているプロセスを用いてシードポリマー粒子を生成してもよく、このシードポリマー粒子を使用して引き続き重合を開始し得る。要するに、フルオロポリマー小粒子の調製には、本明細書に開示されている重合性フッ素化乳化剤を用いてもよい。これらのシード粒子は、典型的には、50〜100nm(ナノメートル)のz平均径を有する。そのようなシード粒子を別途の水性乳化重合で生成し、水性乳化重合中の水の重量を基準として5〜50重量%の量で使用してもよい。一実施形態においては、シード粒子を用いることで、その結果として、粒子のコアに粒子のシェル又は外側表面とは別の組成物を含む、コアシェル粒子が生成され得る。一実施形態において、シェルは、融点の低い(例えば、150℃未満の)フルオロポリマーを含むか、又は非晶質である。そのような実施形態は、本明細書において開示されている重合性フッ素化乳化剤をはじめとする更なる乳化剤、又は別の非テロゲン性、又は更にはテロゲン性乳化剤を加えることなしに、コアシェル粒子の製造を可能にしている。
【0052】
別の実施形態においては、本明細書に記述されているプロセスを用いることで、完全に重合されたポリマー粒子が生成され得るため、それ以降はもはやポリマー粒子の重合が行われない。
【0053】
本開示の重合性フッ素化乳化剤は、少なくとも1つのイオン基を含む。重合中には、これらの重合性フッ素化乳化剤が 得られたポリマーに混入されるが、それらの基のいくつかは、定量化及び熱的不安定化ためにアクセスできる場合がある。イオン基を検出する手段として、米国特許第3,085,083号(Schreyer)に開示されているフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法をはじめとする当該技術分野において公知の技術、又は滴定を用いてもよい。
【0054】
イオン基は、高い処理温度(例えば、350℃超)で分解、膨れ、又は侵食を来たす可能性があり、かつ/又は結果として、本開示の高フッ素化ポリマーから製造された物品の金属含量が高まる。それ故、得られた高フッ素化ポリマーを用いる必要のある用途の要件に応じて、本開示の高フッ素化ポリマーをポストフッ素化することにより、熱的に不安定な任意の基を、ポリマーからだけでなく如何なる残存重合性フッ素化乳化剤からも、安定なCF
3末端基に変換し得る。
【0055】
一実施形態においては、重合性フッ素化乳化剤が高フッ素化ポリマーに重合されるため、フルオロポリマーラテックス及び/又は廃水流から重合性フッ素化乳化剤を除去するための後処理は不要となっている。
【0056】
ポストフッ素化技術は、当該技術分野において公知であり、例えば、本明細書において参照により援用されている欧州特許第222945号(Buckmaster et al.)、米国特許第6,541,588号(Kaulbach)、又は独国特許第199 03 657号(Kaulbach et al.)に記載されている。簡潔に説明すると、凝固したフルオロポリマーは、フッ素(典型的には、窒素のようなキャリヤガス中に5〜20%まで希釈されたもの)を含有する雰囲気に曝すことにより、不安定な末端基(存在する量が不適当な場合)を安定なフッ素化末端基(−CF
3基など)に変換される。一般に、混合物は、ポリマーの溶融範囲未満の温度、例えば、50〜250℃、又は更には100〜180℃にて加熱される。フッ素化は、少なくとも90〜95%の全ての極性基が除去されるまで続行される。例えば、フルオロポリマーは、CF
3以外のフルオロポリマー中の極性末端基の量が、百万炭素原子当たり80ppm未満、百万炭素原子当たり40ppm未満、又は更には百万炭素原子当たり20ppm未満になるように、ポストフッ素化される。
【0057】
ポストフッ素化は、−C(O)OH及び−S(O)(O)OH基を除去するうえで役立つだけでなく、また、処理(例えば、熱又はアンモニアに対する曝露)の間に、又は使用された反応開始剤が存在することによって出現し得る−C(O)NH
2、−C(O)OR、CH
2OH、−CF=CF
2、及び−C(O)F基を含む基を処理することもできる。
【0058】
乾燥ポリマーのポストフッ素化は、凝集塊、溶融ペレット、又は更にはフィルムに対して実行され得る。凝集塊のポストフッ素化は、反応器からの研摩がないことから、金属含量を低減してフッ素化時間を短縮できるため、溶融されたペレットに比べて有益である。ポストフッ素化凝集塊は、後になってから、溶融させて小球形にされ得る。
【0059】
重合性フッ素化乳化剤を含有するSO
3−で重合されたポリマーがポストフッ素化された場合はフッ素化に要する時間が長引く可能性があるが、にもかかわらず、メルトフローインデックス(MFI)の変化率が非ポストフッ素化材料に比べて10%を超えることのないように、フッ素化条件を選択しなければならない。
【0060】
高フッ素化ポリマーをポストフッ素化することによってイオン末端基が除去されるため、一実施形態においては、結果として得られるポリマーの金属イオン含量が低くなる可能性があり、例えば、Na、Ca、Al、Fe、Cr、Ni、及びWのような金属イオンの500ppb(10億分の1)未満、又は更には100ppb未満である。金属イオン含量は、燃焼及び誘導結合プラズマ(ICP)分析で定量され得る。
【0061】
本開示において、重合性フッ素化乳化剤は、重合中に成長中のポリマーを安定化させるために使用される。そのうえ、低次の重合性フッ素化乳化剤は、ポストフッ素化と一緒に使用されるため、結果として得られる最終的な高フッ素化ポリマー特性は実質的に、非重合性フッ素化乳化剤で重合されたものと同じである。例えば、ポストフッ素化後、重合性フッ素化乳化剤を用いて本明細書において開示されているようにして製造された高フッ素化ポリマーの融点は、非重合性の非テロゲン性フッ素化乳化剤(例えば、ペルフルオロアルカノン酸及びそれらの塩又はフッ素化エトキシル化カルボン酸及びそれらの塩)で製造された同等なポリマーと実質的に同じ(即ち、差は5℃未満、4℃未満、3℃未満、又は更には2℃未満)でなければならない。
【0062】
本開示の一実施形態において、本明細書に開示されているプロセスにより製造され、得られた乾燥した高フッ素化ポリマーは、非重合性フッ素化乳化剤を実質的に含まない。言い換えると、高フッ素化ポリマーは、非重合性フッ素化乳化剤を10ppm未満、5ppm未満、1ppm未満、0.5ppm未満、0.1ppm未満、50ppb(10億分の1)未満含むか、又は更には一切の非重合性フッ素化乳化剤を含まない。当該技術分野において公知の技術を用いて、高フッ素化ポリマーから乳化剤を揮発させるか又は抽出することにより、ポリマー中の非重合性フッ素化乳化剤の量が定量され得る。
【実施例】
【0063】
本開示の利点及び実施形態を以下の実施例によって更に例示するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例では、比率、割合、及び比は全て、特に断らない限り、重量に基づいたものである。
【0064】
別途記載されるか又は明らかでない限り、全ての材料は市販(例えばSigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)製)であるか又は当業者に公知のものである。
【0065】
以下の実施例で使用される略語は次の通り:g=グラム、kg=キログラム、min=分、mol=モル、cm=センチメートル、mm=ミリメートル、mL=ミリリットル、L=リットル、psi=平方インチ当たりの圧力、MPa=メガパスカル、及びwt=重量。
【0066】
方法
メルトフローインデックス(MFI)
DIN EN ISO 1133に記載されている方法と類似する方法に従って、g/10min単位でレポートされたフルオロポリマーのMFIを372℃の温度で測定したところ、支持体重量は5.0kgであった。直径2.095mmかつ高さ8.0mmの標準化された押出ダイを用いてMFIが得られた。
【0067】
融点
ASTM 4591に記載されている方法と類似する方法に従い、Perkin−Elmer DSC 7.0(Perkin−Elmer(Waltham,MA))を用い、窒素流の下で、加熱速度10℃/minにてフルオロポリマーの溶融ピークを定量した。示された融点は、溶融ピーク極大に合致している。
【0068】
粒径の決定
ISO/DIS 13321に記載されている方法と類似する方法に従って、動的光散乱(Malvern Zetasizer 1000 HAS(Malvern,UK))によってラテックス粒径の定量を行った。報告された平均粒度は、z平均である。測定前に、重合で得られたラテックスを0.001mol/LのKCl溶液で希釈した。測定温度は、全ての場合において20℃であった。
【0069】
総末端基
欧州特許第222945号(Buckmaster et al.)、米国特許第4,687,708号(Betzar)、及び同第4,675,380号(Buckmaster et al.)に記載されている技術を利用し、Fa Nicolet DX510 FTIR分光計を用い、OMNICソフトウェア(ThermoFisher Scientific(Waltham,MA))を使用して、フルオロポリマーのFTIRスペクトルの吸光度比を積算することによってカルボニル(例えば、COO
−/COF)含量を測った。
【0070】
PPVE含量
FTIRを用い、993cm
−1におけるPPVEの吸光度と2365cm
−1における基準ピークとの比から、得られたポリマー中でインターポリマー化されたペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE)の量を計算した。これら2つのピークの比を0.95で乗算することより、%(m/m)PPVEが与えられた。得られたポリマーの残部は、インターポリマー化されたTFEであった。
【0071】
重合性フッ素化乳化剤の定量
BF
3メタノール錯体を用い、分散液中のCF
2=CF−O−(CF
2)
3−O−CF
2−COO
−分子をそのメチルエステル形態に誘導させた。ヘッドスペースガスクロマトグラフィを用い、質量分析検出を行って、ラテックス試料中に含まれる重合性フッ素化乳化剤含量を定量した。1%のビニル/5%のフェニル/94%のジメチルポリシロキサン(1.8μmフィルム厚)でコーティングされた内径0.32mmの溶融シリカ毛管カラムが用いられた。結果は、メチルエステル形態としてレポートされる。
【0072】
比較実施例A
重合実験は、インペラ撹拌器及びバッフルを備えた40Lのケトル中で行った。ケトルを排気し、30Lの脱イオン水で充填して、63℃に設定した。米国特許第7,671,112号(Hintzer,et al.)に記載されているようにして調製した210g(30%)の非重合性フッ素化乳化剤([CF
3−O−(CF
2)
3−O−CHF−CF
2−C(O)O
−NH
4+を撹拌しながら、酸素を含まないケトルに加えた。ケトルを最大13バール(1.3MPa)のTFEで加圧し、その後、0.1バール(0.01MPa)のエタン(連鎖移動剤)及び190gのPPVEを加えた。1.3gのAPS(過硫酸アンモニウム(NH
4)
2S
2O
8)を用い、重合を開始した。重合を通じて、4時間の間、7.5kgのTFE及び300gのPPVEを消費した。
【0073】
このプロセスでは、固形分21重量%、かつ平均粒径81nmのラテックスが生成された。得られたポリマーの組成を測定したところ、PPVE 4.3重量%、及びTFE 95.7重量%であった。
【0074】
ポリマーにHClを加えて洗浄した後で乾燥させることにより、凝固させた。乾燥したポリマーは、融点306℃、MFI(372℃/5kg)=1.9g/10min、かつ末端基総量70ppmである。
【0075】
(実施例1)
以下の例外を除き、比較例Aに記載されているものと同じ設定及び類似の条件を用いた。非重合性フッ素化乳化剤を、10.9gのCF
2=CF−O−(CF
2)
3−O−CF
2−COO
−Na
+(Anles(St.Petersburg,Russia)からそのメチルエステル形態で受領され、自社組織内でナトリウム塩形態に変換されたもの)で置き換えた。重合開始時に5gのCF
2=CF−O−(CF
2)
3−O−CF
2−COO
−Na
+をケトルに予め充填し、残部を2kgのTFEが消費されるまで反応器中に継続的に供給した。0.7gのAPSを用いて重合を開始した。4.5時間後、3.4kgのTFE及び120gのPPVEが消費された。
【0076】
このプロセスでは、固形分9.6重量%、かつ平均粒径75nmのラテックスが生成された。上記の重合性フッ素化乳化剤の定量法に従って、ラテックス中に含まれる重合性フッ素化乳化剤の量を定量した。ラテックスは、2μg/gの重合性フッ素化乳化剤を含むことが見出された。得られたポリマーの組成を測定したところ、PPVE 4.1重量%、かつTFE 95.9重量%であった。
【0077】
ポリマーにHClを加えて洗浄した後で乾燥させることにより、凝固させた。乾燥したポリマーは、融点302℃、MFI(372℃/5kg)=75g/10min、かつ末端基の総量が450ppmであった。
【0078】
上記の凝固した乾燥ポリマー100gを、215℃にてN
2とF
2を90対10の比で合計300分間ポストフッ素化した。得られたポリマーは、融点が303℃、MFI(372℃/5kg)=72、かつ末端基の総量が53であった。
【0079】
(実施例2)
以下の例外を除き、比較例Aに記載されているものと同じ設定及び類似の条件を用いた。非重合性フッ素化乳化剤を、米国特許第6,624,328号(Guerra)に開示されているように21gのCF
2=CF−O−(CF
2)
4SO
3NH
4(CF
2=CF−O−(CF
2)
4SO
2Fから調製されたもの)で置換し、アンモニウム塩形態に変換した。5時間後、3.8kgのTFE及び150gのPPVEが消費された。
【0080】
このプロセスでは、固形分12重量%、かつ平均粒径80nmのラテックスが生成された。得られたポリマーの組成を測定したところ、PPVE 3.9重量%及びTFE 6.1重量%であった。
【0081】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明に予測可能な改変及び変更を行い得ることは当業者には明らかであろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される実施形態に限定されるべきではない。本明細書において参照により援用されている仕様と開示とで不一致及び矛盾が存在する限りでは、本仕様によって制せられるものとする。
以下に、本願発明に関連する発明の実施形態について列挙する。
[実施形態1]
高フッ素化ポリマーの製造方法であって、
(i)水性乳化重合にて重合性フッ素化乳化剤の存在下で1種以上の過フッ素化モノマーを重合して前記高フッ素化ポリマーを形成する工程であって、前記重合性フッ素化乳化剤が次式:
X2C=CX(CF2)m(CH2)n[O−(CX2)p]q−[O−(CX2)r]s−[O−(CX2−CX2)]t−[(O)w−(CX2)u]v−[CH2]z−Y
(式中、Xは独立にH、F、又はCF3から選択され、YはCOOM又はSO3Mであり、MはH、アルカリ金属又はNH4であり、mは0〜5であり、nは0〜5であり、pは少なくとも1であり、qは0〜5であり、rは0〜5であり、sは0〜5であり、tは0〜5であり、uは0〜5であり、vは0〜5であり、wは0又は1であり、かつzは0〜5であり、m、n、q、s、t、u、v、及びzのうちの少なくとも1つは少なくとも1であり、前記重合性フッ素化乳化剤(a)は少なくとも1つのフッ素原子を含み、(b)はテロゲン活性を実質的に有さず、かつ(c)は使用されるモノマーの総重量を基準として1重量%未満である)を有する工程と、
(ii)前記高フッ素化ポリマーを単離する工程と、
(iii)単離された高フッ素化ポリマーをポストフッ素化する工程と、
を含む、高フッ素化ポリマーの製造方法。
[実施形態2]
前記重合性フッ素化乳化剤が過フッ素化されている、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記重合性フッ素化乳化剤が、
CF2=CF−(CF2)m−O−(CF2)p−[O−(CF2)r]s−Y (II)
CF2=CF−(CF2)m−O−(CF2)p−[O−(CF(CF3)−CF2)]t−[O−CF(CF3)]v−Y (III)、及び
CX2=CX−(CF2)m−Y (IV)
(式中、Xは独立にH、F、又はCF3から選択され、YはCOOM又はSO3Mであり、mは0〜5から選択される整数であり、pは少なくとも1であり、rは0〜5から選択される整数であり、sは1〜5から選択される整数であり、tは1〜5から選択される整数であり、vは1〜5から選択される整数であり、かつMはH、アルカリ金属、又はNH4である)からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
[実施形態4]
前記重合が非テロゲン性乳化剤を実質的に含まない、実施形態1〜3のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態5]
前記重合が非テロゲン性フッ素化乳化剤を実質的に含まない、実施形態1〜4のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態6]
前記重合性フッ素化乳化剤が前記重合中ずっと添加される、実施形態1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態7]
前記重合性フッ素化乳化剤の量が、前記使用される過フッ素化モノマーの量を基準として少なくとも50ppmで、かつ5000ppm以下である、実施形態1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態8]
前記重合性フッ素化乳化剤がマイクロエマルションを形成する、実施形態1〜7のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態9]
前記過フッ素化モノマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルケン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルコキシビニルエーテル、MV4S、MV5CN、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1〜8のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態10]
前記高フッ素化ポリマーがフッ素樹脂である、実施形態1〜9のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態11]
水性混合物であって、
過フッ素化モノマー及び重合性フッ素化乳化剤の重合生成物を含み、前記重合性フッ素化乳化剤が、次式:
X2C=CX(CF2)m(CH2)n[O−(CX2)p]q−[O−(CX2)r]s−[O−(CX2−CX2)]t−[(O)w−(CX2)u]v−[CH2]z−Y
を有し、式中、Xは独立にH、F、又はCF3から選択され、YはCOOM又はSO3Mであり、mは0〜5であり、nは0〜5であり、pは少なくとも1であり、qは0〜5であり、rは0〜5であり、sは0〜5であり、tは0〜5であり、uは0〜5であり、vは0〜5であり、wは0又は1であり、かつzは0〜5であり、m、n、q、s、t、u、v、及びzのうちの少なくとも1つは少なくとも1であり、かつMはH、アルカリ金属、又はNH4であり、前記重合性フッ素化乳化剤が少なくとも1つのフッ素原子を含み、得られたポリマーは過フッ素化主鎖を含む、水性混合物。
[実施形態12]
高フッ素化ポリマーを含むポリマーであって、前記高フッ素化ポリマーが非重合性フッ素化乳化剤を実質的に含まない、ポリマー。