特許第6356695号(P6356695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356695
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】カムシャフトの組立方法
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/04 20060101AFI20180702BHJP
   B23P 11/02 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   F01L1/04 E
   B23P11/02 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-548281(P2015-548281)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-506471(P2016-506471A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2013003843
(87)【国際公開番号】WO2014101991
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年12月12日
(31)【優先権主張番号】102012025442.3
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】308017180
【氏名又は名称】ティッセンクルップ プレスタ テックセンター アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Presta TecCenter AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】スタッペルン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーズナー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ムースフェルト,ファルク
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−262105(JP,A)
【文献】 特開平08−074870(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/160240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/04
B23P 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフト(2)を支持シャフト(5)と前記支持シャフト(5)に接続されるべき構成部品(17)から組み立てるための方法において、前記構成部品(17)が前記支持シャフト(5)を受けるための貫通穴(19)を有し、
a.前記構成部品(17)を固定することになる第一の領域(9)の第一の直径拡張部(11)と、前記構成部品(17)を予備位置付けすることになる第二の領域(13)の第二の直径拡張部(15)と、を有し、前記第二の領域(13)の直径(D2)が前記第一の領域(9)の直径(D1)より小さい支持シャフト(5)を提供するステップと、
.前記支持シャフト(5)を冷却し、および/または前記構成部品(17)を加熱して、前記支持シャフト(5)をその第一と第二の直径拡張部(11、13)と共に前記構成部品(17)の前記貫通穴(19)に押し込むことができるようにするステップと、
.前記支持シャフト(5)を前記貫通穴(19)に押し込み、各構成部品(17)が第二の領域に割り当てられるようにするステップと、
.前記支持シャフト(5)を加熱し、および/または前記構成部品(17)を冷却して、前記構成部品(17)の前記貫通穴(19)の直径(DB)がそれに割り当てられた前記第二の直径拡張部(15)の直径(D2)より小さくなるようにするステップと、
.前記構成部品(17)と前記構成部品(17)に割り当てられた前記第二の領域(13)との所定の重複を確立させて、前記構成部品(17)がそれに割り当てられた前記第二の領域(13)の中に解放可能に固定された状態で保持されるようにするステップと、
.前記構成部品(17)をそれに割り当てられた前記第一の直径拡張部(11)に圧着するか、前記第一の直径拡張部(11)を前記構成部品(17)のそれに割り当てられた前記貫通穴(19)に圧入して、前記支持シャフト(5)に関する各構成部品(17)の要求される角度位置がそれぞれ圧着または圧入の前、その間、またはその後に設定されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
軸受受容部(3)を持つ少なくとも1つのシリンダヘッドカバー(1)と前記軸受受容部(3)の中に取り付けられたカムシャフト(2)を含む自動車エンジン用モジュールを組み立てるための方法において、前記カムシャフト(2)が前記モジュールを前記支持シャフト(5)と前記支持シャフト(5)に接続されるべき構成部品(17)から組み立てる過程で構築され、前記構成部品(17)が前記支持シャフト(5)を受けるための貫通穴(19)を有し、
a.前記構成部品(17)を固定することになる第一の領域(9)の第一の直径拡張部(11)と、前記構成部品(17)を予備位置付けすることになる第二の領域(13)の第二の直径拡張部(15)と、を有し、前記第二の領域(13)の直径(D2)が前記第一の領域(9)の直径(D1)より小さく、また、完成後の前記カムシャフト(2)を前記軸受受容部の中に取り付けることになる領域の軸受部分(7)を有する支持シャフト(5)を提供するステップと、
b.前記支持シャフト(5)上に固定されるべき前記構成部品(17)を、それぞれの貫通穴(19)が前記シリンダヘッドカバー(1)の前記軸受受容部(3)と整列するように、所定の順序で位置付けるステップと、
c.前記支持シャフト(5)を冷却し、および/または前記構成部品(17)を加熱して、前記支持シャフト(5)をその第一と第二の直径拡張部(11、15)と前記軸受部分(7)と共に前記構成部品(17)の前記貫通穴(19)に押し込むことができるようにするステップと、
d.前記支持シャフト(5)を前記軸受受容部(3)と前記貫通穴(19)に押し込み、前記支持シャフト(5)の前記軸受部分(7)が各軸受受容部(3)の中に配置され、各構成部品(17)が第二の領域(13)に割り当てられるようにするステップと、
e.前記支持シャフト(5)を加熱し、および/または前記構成部品(17)を冷却して、前記構成部品(17)の前記貫通穴(19)の直径(DB)がそれに割り当てられた前記第二の直径拡張部の直径(D2)より小さくなるようにするステップと、
f.前記構成部品(17)と前記構成部品(17)に割り当てられた前記第二の領域(13)との所定の重複を確立させて、前記構成部品(17)がそれに割り当てられた前記第二の領域(13)の中に解放可能に固定された状態で保持されるようにするステップと、
g.前記構成部品(17)をそれに割り当てられた前記第一の直径拡張部(11)に圧着するか、前記第一の直径拡張部(11)を前記構成部品(17)のそれに割り当てられた前記貫通穴(19)に圧入して、前記支持シャフト(5)に関する各構成部品(17)の要求される角度位置がそれぞれ圧着または圧入の前、その間、またはその後に設定されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
方法ステップf)を方法ステップe)による温度均一化と同時に行うために、当該温度均一化の前に、前記構成部品(17)が位置付けられることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、
ステップg)で、前記支持シャフト(5)に関する各構成部品(17)のそれぞれの前記要求された角度位置が、単に前記支持シャフト(5)を特定の角度だけ回転させることによって、前記圧着または圧入の前に設定されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、
ステップg)で、各構成部品(17)がまず、それに割り当てられた前記第二の領域(13)から解放され、その後、前記支持シャフト(5)に関する前記構成部品(17)の前記角度位置が設定され、最後に前記構成部品(17)が圧着または圧入によって固定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、
ステップg)で、前記支持シャフト(5)に関する前記構成部品(17)の前記角度位置が、前記構成部品(17)がそれに割り当てられた前記第二の領域(13)に解放可能に固定されている間に設定され、最後に前記構成部品(17)が圧着または圧入によって固定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、
ステップg)で、前記支持シャフト(5)に関する前記構成部品(17)の前記角度位置が、前記構成部品(17)が前記第一の領域(9)に固定されている間に設定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、
前記支持シャフト(5)が中空シャフトとして形成され、その内部に内側シャフト(25)が前記中空シャフトに関して同心円状に配置され、前記内側シャフト(25)が前記中空シャフトに関して回転させることができることと、方法ステップe)による前記温度均一化の後に、前記支持シャフト(5)には接続されず、前記内側シャフト(25)にそれと共に回転するように接続される少なくとも1つの構成部品(27)が提供されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記構成部品(27)が前記内側シャフト(25)にピン接続によって接続され、開口部(29)が中空シャフトとして形成された前記支持シャフト(5)に設けられ、第一の穴(33)が前記内側シャフト(25)に設けられ、第二の穴(31)が前記構成部品(27)に設けられることと、前記開口部(29)と前記第一の穴(33)と前記第二の穴(31)が相互に整列するように位置付けられることと、接続ピン(35)が前記開口部(29)から前記第一の穴(33)と前記第二の穴(31)に押し込まれることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、
提供された前記支持シャフト(5)が前記第一の領域(9)にコーティング(23)を有し、および/または前記構成部品(17)が前記貫通穴(19)の中にコーティング(23)を有し、それによって前記支持シャフト(5)と前記構成部品(17)との間の接続の強度が増大されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、
ステップg)で、前記構成部品(17)が前記要求された角度位置の周囲で高周波数により回転されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムシャフトおよびシリンダヘッドカバーとシリンダヘッドカバーの中に回転可能に取り付けられたカムシャフトを含む自動車エンジン用エンジンモジュールの組立方法に関する。本発明は同様に、これらの方法のために特に形成されたカムシャフトにも関する。
【0002】
自動車エンジンの組立に関わる組立労力を軽減し、エンジンの組立において発生する在庫確保とロジスティクス関連の費用を削減するために、組立式のエンジンモジュールが供給業者から自動車製造業者に、直接組立ラインへと供給される。このようなエンジンモジュールは、例えばシリンダヘッドカバーとその中に取り付けられたカムシャフトからなる。すると、エンジンの組立過程ではこのモジュールをエンジンのシリンダヘッドに固定するだけでよくなる。
【0003】
シリンダヘッドカバーとその中に取り付けられたカムシャフトからなるエンジンモジュールの組立方法は、国際公開第2012/031770 A1号パンフレットに記載されている。この既知の組立方法の場合、シリンダヘッドカバーが提供され、これは後のカムシャフトの円筒形の支持シャフトが挿入される貫通部を有する。あらかじめ、固定されるべき構成部品、例えばカム、センサホイール等を、これらの構成部品が完成後のカムシャフト上で占める軸方向の位置に対応しない軸方向の位置に位置付ける。次のステップで、支持シャフトをシリンダヘッドカバーの貫通部と構成部品の貫通穴に押し込む。支持シャフトを押し込む前に、支持シャフトに固定されるべき構成部品をまず加熱し、支持シャフトを冷却することにより、確実に力を入れずに支持シャフトを圧入できるようにする。支持シャフトを圧入した後、構成部品をまず、それぞれに割り当てられた直径拡張部に解放可能に固定する。後のステップで、構成部品をそれに割り当てられた直径拡張部から解放して、それぞれの角度位置に設定する。その後、これらを圧着または圧入によって、同じ、割り当てられた直径拡張部に固定する。
【0004】
この方法には、直径拡張部が解放可能な固定の時点で、それによって変形するという欠点がある。この最初の変形により、最終的な圧入または圧着により得られる構成部品と支持シャフトとの間の接続の強度が低下する。貫通穴に鋸歯のある構成部品の場合、解放可能に固定している間に直径拡張部に鋸歯によって付けられた線状の痕が残るというまた別の欠点がある。これらの線状の痕により、後の角度位置の設定の精度が下がる。驚くべきことに、構成部品の圧着または圧入中に、鋸歯が当初付いてしまった線状の痕に戻る傾向があることがわかった。したがって、線状の痕によってさらに大きなトルクが発生し、これが圧入または圧着中の構成部品の角度位置を変化させ、それゆえ、要求された角度位置からのずれが生じる。
【0005】
本発明の目的は、構成部品が固定される直径拡張部が最初に変形しないという点で、上記の欠点を克服することである。
【0006】
この目的は、カムシャフトを支持シャフトと支持シャフトに接続されるべき構成部品から組み立てるための方法によって達成される。この場合、構成部品は支持シャフトを受けるための貫通穴を有する。この方法は、とりわけ、以下の方法ステップを含む。
■構成部品を固定することになる第一の領域の第一の直径拡張部と、構成部品を予備位置付けすることになる第二の領域の第二の直径拡張部と、を有し、第二の領域の直径が第一の領域の直径より小さい支持シャフトを提供するステップと、
■支持シャフトを冷却し、および/または構成部品を加熱して、支持シャフトをその第一と第二の直径拡張部と共に構成部品の貫通穴に押し込むことができるようにするステップと、
■支持シャフトを貫通穴に押し込み、各構成部品が第二の領域に割り当てられるようにするステップと、
■支持シャフトを加熱し、および/または構成部品を冷却して、構成部品の貫通穴の直径がそれに割り当てられた第二の直径拡張部の直径より小さくなるようにするステップと、
■構成部品と構成部品に割り当てられた第二の領域との所定の重複を確立させて、鵜精部品がそれに割り当てられた第二の領域の中に解放可能に固定された状態で保持されるようにするステップと、
■構成部品をそれに割り当てられた第一の直径拡張部に圧着するか、第一の直径拡張部を構成部品のそれに割り当てられた貫通穴に圧入して、支持シャフトに関する各構成部品の要求される角度位置がそれぞれ圧着または圧入の前、その間、またはその後に設定されるステップ。
【0007】
本発明による目的はまた、軸受受容部を持つ少なくとも1つのシリンダヘッドカバーと軸受受容部の中に取り付けられたカムシャフトを含む自動車エンジン用モジュールを組み立てるための方法によっても達成される。この場合、カムシャフトはモジュールを支持シャフトと支持シャフトに接続されるべき構成部品から組み立てる過程で構築される。ここで、構成部品は、支持シャフトを受けるための貫通穴を有する。この方法は、とりわけ、以下の方法ステップを含む。
■構成部品を固定することになる第一の領域の第一の直径拡張部と、構成部品を予備位置付けすることになる第二の領域の第二の直径拡張部と、を有し、第二の領域の直径が第一の領域の直径より小さく、また、完成後のカムシャフトを軸受受容部の中に取り付けることになる領域の軸受部分を有する支持シャフトを提供するステップと、
■支持シャフト上に固定されるべき構成部品を、それぞれの貫通穴がシリンダヘッドカバーの軸受受容部と整列するように、所定の順序で位置付けるステップと、
■支持シャフトを冷却し、および/または構成部品を加熱して、支持シャフトをその第一と第二の直径拡張部と軸受部分と共に構成部品の貫通穴に押し込むことができるようにするステップと、
■支持シャフトを軸受受容部と貫通穴に押し込み、支持シャフトの軸受部分が各軸受受容部の中に配置され、各構成部品が第二の領域に割り当てられるようにするステップと、
■支持シャフトを加熱し、および/または構成部品を冷却して、構成部品の貫通穴の直径がそれに割り当てられた第二の直径拡張部の直径より小さくなるようにするステップと、
■構成部品と構成部品に割り当てられた第二の領域との所定の重複を確立させて、構成部品がそれに割り当てられた第二の領域の中に解放可能に固定された状態で保持されるようにするステップと、
■構成部品をそれに割り当てられた第一の直径拡張部に圧着するか、第一の直径拡張部を構成部品のそれに割り当てられた貫通穴に圧入して、支持シャフトに関する各構成部品の要求される角度位置がそれぞれ圧着または圧入の前、その間、またはその後に設定されるステップ。
【0008】
支持シャフトが貫通穴に押し込まれている間に、支持シャフトと構成部品との間の温度差を保持するために追加のステップが実行されれば有利であるかもしれない。これは例えば、構成部品を断熱して、これらが急速に冷却され過ぎないようにすること、またはこれに対応して支持シャフトを断熱すること、という形態をとってもよい。あるいは、構成部品を、この構成部品を予熱するか、組立方法の間にこれを所定の温度に保温する加熱装置の中に導入してもよい。
【0009】
本発明の特別な発展形の場合、支持シャフトを加熱し、および/または構成部品を冷却する上記の温度均一化の前に、構成部品を、第二の領域への解放可能な固定を温度均一化と同時に行うように位置付ける。したがって、構成部品は第二の領域に焼嵌めされる。これには、追加の方法ステップを省くことができるという利点があり、方法は特に効率的に進展する。
【0010】
方法の1つの実施形態の場合、支持シャフトに関する各構成部品のそれぞれに要求される角度位置の設定は、圧着または圧入前に、単に支持シャフトを特定の角度だけ回転させることによって行われる。このようにして、この方法を特に適正に自動化することができる。
【0011】
支持シャフトに関する構成部品の角度位置を設定する前に、まず構成部品をそれに割り当てられた第二の領域から解放するか、または角度位置を、構成部品がそれに割り当てられた第二の領域に解放可能に固定されている間に設定してもよい。どちらの場合も、構成部品は後で圧着または圧入によって固定される。1つ目の場合には、構成部品と支持シャフトを相対的に回転させるのに大きな力を必要としないという利点があり、それは、その方法ステップ中に構成部品を自由に回転できるからである。これに対して、2つ目の場合、構成部品と軸を軸方向に相互に関して移動させなければならない追加の方法ステップが省略される。これによって、自動化の要求事項が軽減する。
【0012】
第三の代替案の場合、支持シャフトに関する構成部品の角度位置は、構成部品が第一の領域に固定されている間に設定される。これによってもまた、ある方法ステップを省略できる。特に、要求された角度位置の領域内での回転運動により接続の強度を高められることがわかっている。これは特に、提供される支持シャフトが第一の領域にコーティングを有し、および/または構成部品が貫通穴の内部にコーティングを有する場合に常に当てはまる。回転によってコーティングが構成部品と支持シャフトの、表面に近い領域内に拡散し、これがさらに接続の強度を高める。このようにして、製造されたカムシャフトは支持シャフトと構成部品との間でより大きなトルクを伝達できる。スチール製の支持シャフトと構成部品のための考えられるコーティングには、例えば亜鉛、リン酸塩、または銅が含まれる。
【0013】
この拡散は、最後のステップで構成部品を要求された角度位置の周囲で高い周波数で回転させてから、これらを要求された角度位置に残すようにすると、さらに強化されうる。この追加の回転はもちろん、要求された角度位置が第一または第二の代替案によって設定された後で行ってもよい。高周波数の回転は、エネルギーがコーティングの中に導入され、拡散が強化されるという効果を持つ。要求される回転振幅(すなわち、回転される角度)が周波数の増大とともに減少することがわかっている。回転の振幅は最大360°であってもよい。良好な結果は、振幅が30°〜60°の間の時に見られた。一般的な周波数は10Hz〜30Hzの間の範囲にある。最大100Hz、好ましくは150Hz以上の周波数も同様に可能である。
【0014】
場合によっては、構成部品は貫通穴の中に鋸歯を有していてもよい。その結果、伝達可能なトルクも同様に増大する。
【0015】
この方法を発展させた実施形態の場合、支持シャフトは中空シャフトとして形成され、その内部には内側シャフトが中空シャフトに関して同心円状に配置される。この場合、内側シャフトは中空シャフトに関して回転できる。さらに少なくとも1つの構成部品が提供され、これは温度均一化の後に、支持シャフトには接続されないが、内側シャフトにそれと共に回転するように接続される。特に、この構成部品は内側シャフトにピン接続によって接続される。この目的のために、中空シャフトとして形成された支持シャフトに開口部が設けられる。さらに、内側シャフトが第一の穴を有し、構成部品が第二の穴を有する。固定するためには、開口部と第一の穴と第二の穴を相互に整列した状態に位置付け、接続ピンを開口部から第一の穴と第二の穴に押し込む。
【0016】
本発明による目的は、上記の方法を実行するために特に形成されたカムシャフトによっても同様に達成される。このようなカムシャフトは、支持シャフトと、支持シャフトを受けるための貫通穴を持つ多数の構成部品と、を含む。ここで、支持シャフトは第一の領域を有し、そこに構成部品が固定される。これらの第一の領域には第一の直径拡張部がある。さらに、支持シャフトは、回転対称の第二の直径拡張部を持つ第二の領域を有する。この場合、第二の領域の直径は第一の領域の直径より小さい。第二の領域の直径は第一の領域の直径より小さいため、構成部品はまず第二の領域に解放可能に固定し、後に、大きな力を加えずに第二の領域から解放してもよい。さらに、構成部品のわずかな変形のみが貫通穴の中と、第二の領域との当初の重複領域でのみ生じる。構成部品の形状はしたがって、わずかしか損なわれない。後の固定領域における構成部品または支持シャフトの変形はすべて、より早い段階の方法ステップで回避するべきであり、それは、これが構成部品と支持シャフトとの間の接続の強度に不利な影響を与える可能性があるからである。構成部品が最終的に接続される第一の領域と解放可能な予備位置付けに使用される第二の領域に分けることによって、第一の領域が予備位置付け中に変化しないという効果が得られる。第二の領域の直径が第一の領域の直径より小さいという事実により、予備位置付け中の構成部品の変形も減少するという効果がさらに得られる。
【0017】
カムシャフトの発展形の場合、第二の領域は、少なくとも部分的に構成部品の貫通穴の中にある。ここで、必要な軸方向の空間全体を減少できる点が有利であり、この方法は、軸方向に相互に近い位置にある構成部品の場合にも使用できる。言うまでもなく、すると、ここでは、動作中に発生するトルクを、利用可能な第一の領域によって伝達できることが必要となる。
【0018】
他の実施形態において、第二の領域は第一の領域と直接隣接する。あるいは、第一の領域と第二の領域との間に軸方向の距離を設けてもよい。第一の選択肢では、特にコンパクトな構成が可能となるが、第二の選択肢には、割り当てられた第一の領域に最終的に固定するために、構成部品を対応する第二の領域を越えて移動させずに済むという利点がある。この選択肢の場合、構成部品はまず片側で第二の領域に解放可能に固定し、後で、反対側で割り当てられた第一の領域の反対側に圧着または圧入によって固定してもよい。これには、第二の領域を越えた移動中の貫通穴の変形を回避できるという利点がある。このような事前の変形は、構成部品の接続部の後の強度に影響を与えるであろう。この選択肢の場合、圧着または圧入によって割り当てられた第一の領域に固定している間に最終的な変形だけが起こる。
【0019】
以下に、具体的には次のような、本発明の原理を表す概略図に基づいて、本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、構成部品と支持シャフトを含むカムシャフトが取り付けられたシリンダヘッドカバーの形態の自動車用モジュールを示す。
図2図2は、カムシャフトの組立中に固定されるべきカムの形態の構成部品を示す。
図3図3は、第一と第二の直径拡張出を有する支持シャフトの詳細の拡大図を示す。
図4a図4aは、本発明の第一の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図4b図4bは、本発明の第一の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図4c図4cは、本発明の第一の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図4d図4dは、本発明の第一の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図5a図5aは、本発明の第二の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図5b図5bは、本発明の第二の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図5c図5cは、本発明の第二の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図6a図6aは、本発明の第三の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図6b図6bは、本発明の第三の実施形態の場合の構成部品の予備位置付けと固定との間の各種の方法ステップを示す。
図6c図6cは、螺旋運動によって角度設定と固定が行われる別の実施形態を示す。
図7図7は、貫通穴に鋸歯を有するカムの形態の構成部品を示す。
図8図8は、第二の領域が少なくとも部分的に貫通穴の中にある場合の、固定された構成部品を示す。
図9図9は、支持シャフトと構成部品との間にコーティングを有するカムシャフト部分の概略図を示す。
図10図10は、2つの異なる構成部品5を有する調整可能なカムシャフトのための中空の支持シャフトの概略図を示す。
図11図11は、中空の支持シャフトと、その中に同心円状に配置され、支持シャフトに関して回転可能な内側シャフトを有する、組み立てられた調整可能なカムシャフトを示す。
図12a図12aは、漏斗状の開口部を有する構成部品を示す。
図12b図12bは、漏斗状の開口部を有する構成部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、軸受受容部3を備えるシリンダヘッドカバー1が示されている。図はあくまでも略図にすぎず、理解しやすくするために、シリンダヘッドカバー1のそれ以外の部品や詳細は示されていない。支持シャフト5は軸受受容部3の中に保持される。支持シャフト5は軸受部分7を有し、これは軸受受容部3と共に支持シャフト5のための滑り軸受を形成する。支持シャフトの軸受部分は外径D3を有する。支持シャフトは直径DTを有する。軸受部分の直径D3は、支持シャフトの直径より大きくてもよい(図1に示す通り)。あるいは、2つの直径はまた、同じ大きさであってもよく、または軸受部分の直径D3はまた支持シャフトの直径DTより小さくてもよい。これは、例えば軸受位置が例えば研削によって加工された場合に常に当てはまる。
【0022】
支持シャフト5はまた、第一の領域9において第一の直径拡張部11を有する。第一の直径拡張部11は外径D1を有する。さらに、支持シャフトは、外径D2を有する第二の直径拡張部15を持つ第二の領域13を有する。第一の直径拡張部11と第二の直径拡張部15は、支持シャフト5の回転軸に関して回転対称である。第二の領域13の直径D2は第一の領域9の直径D1より小さい。図1の左側の部分では、第一の領域9が第二の領域13に直接隣接している。これに対して、図1の右側の部分では、軸方向の距離Aが第一の領域9と第二の領域13との間に設けられている。
【0023】
構成部品17は、支持シャフトの周囲に配置される。構成部品17はそれぞれ貫通穴19を有し、その中に支持シャフト5が導入される。構成部品の内径はDBで示されている。右側に示される構成部品17は第一の領域9と第二の領域13との間に配置されている。構成部品の内径DBは第一の領域の直径D1と第二の領域の直径D2より小さい。このようにして、構成部品17と第一の領域9または第二の領域13との重複を確立させることにより、構成部品17を固定できる。
【0024】
図1の左側に示されている直径拡張部11と15は、圧延によって生成されている。第一の領域9の幅B1は、第一の直径拡張部11に固定されるべき構成部品17の幅と一致するようになされている。これに対して、図1の右側に示されている直径拡張部11と15は切削加工によって生成されており、すなわち、支持シャフト5がより大きな直径から(例えば、圧延工法と同様)それぞれ直径D1とD2へと切削されている。しかしながら、以下に提示する本発明の例示的実施形態においては、圧延工法で生成された直径拡張部だけを示す。
【0025】
図1に示されているモジュールを形成するために支持シャフトとシリンダヘッドカバーと構成部品を組み立てる間に、支持シャフト5に固定されるべき構成部品17を、その貫通穴19がシリンダヘッドカバー1の軸受受容部3と整列して配置されるように所定の順序で位置付けられる。
【0026】
構成部品17の角度整合は後に行われるため、この方法ステップでは支持シャフト5に関する構成部品17の角度整合に注意を払う必要がない。しかしながら、別の方法では、たとえば、カムの先端のすべてが同じ方向を向いていれば有利である。次のステップで、支持シャフト5を冷却し、および/または構成部品17を加熱して、支持シャフト5を第一の直径拡張11と第二の直径拡張部15と軸受部分7と共に構成部品の貫通穴19と軸受受容部3に押し込むことができるようにする。適当な加熱工程は誘導加熱である。支持シャフト5は例えば、液体窒素またはその他の冷却剤で冷却してもよい。
【0027】
軸受受容部の直径DLと貫通穴の直径DBと第一の直径拡張部の直径D1は、製造中に、冷却された支持シャフト4の直径D1’とD3’が軸受受容部3の直径DLと加熱された構成部品17の直径DB’よりわずかに小さくなるような寸法とされる。このようにして、支持シャフト5を軸受受容部3と貫通穴19に容易に押し込むことができる。支持シャフト5の挿入中、構成部品17を、支持シャフト5の軸受部分7が各軸受受容部3の中に配置され、各構成部品17が第二の領域13に割り当てられるように位置付ける。この割当は例えば、各構成部品17が図1に示されているようにそれに割り当てられた第二の領域13と並んで配置されるか、または各構成部品17がそれに割り当てられた第二の領域13との重複部分を持つような形態をとってもよい。この選択肢が図4aに示されている。支持シャフト5を挿入した後に温度均一化を行い、その中で支持シャフト5を加熱し、および/または構成部品17を冷却して重複を確立させ、すなわち、構成部品17の貫通穴の直径DBがそれに割り当てられた第二の直径拡張部15の直径D2より小さくなるようにする。
【0028】
図2は、カムシャフトまたはモジュールの組立過程で支持シャフト5に固定されるべき、室温にある構成部品17を示している。構成部品の2つの直交する断面が示されている。例として示されている構成部品17はカムであり、これは直径DBの貫通穴19を有する。カムは軸方向の幅B3を有する。しかしながら、カムだけでなく、その他の構成部品、例えばセンサホイール等を本発明の方法によって支持シャフト5に位置的に正しく固定することができる。本発明の具体的な例示的実施形態のこの説明の中で、簡潔を期し、支持シャフトに固定されるべき構成部品としてカムの例だけを考える。
【0029】
図3には、第一の直径拡張部11と第二の直径拡張部15を有する支持シャフト5の一部の詳細の拡大図が示されている。直径拡張部11と15はどちらも、支持シャフトの回転軸の周囲で回転対称である。第一の直径拡張部11を有する第一の領域9は幅B1を有する。第二の直径拡張部15を有する第二の領域13は幅B2を有する。
【0030】
図4a〜4dは、構成部品17と支持シャフト5との間の角度設定のある選択肢の場合の他の各種の方法ステップを概略的に示す。図4aにおいて、構成部品17はそれに割り当てられた第二の領域13との重複部分を有し、それに割り当てられた第二の領域内に解放可能に固定されるようになっている。この初期状態は様々な方法で実現できる。1つの選択肢においては、構成部品17を支持シャフト5に関して位置付けてから、上記の温度均一化を、シャフト5と構成部品17との間の温度均一化の間に構成部品17とそれに割り当てられた第二の領域13との所定の重複が同時に確立されるように行う。または、換言すれば、構成部品17を第二の領域13に焼嵌めする。代替的な実施形態において、構成部品17を、温度均一化の後にこれらがそれぞれに割り当てられた第二の領域13と並んで配置されるように位置付ける。すると、重複させることによる解放可能な固定は、支持シャフト5または構成部品17を移動させることによって行われる。この状態で、構成部品17を支持シャフト5に予備位置付けする。この初期状態から始まり、図4a〜4dはその後の方法ステップを示す。図4aに示されるステップで、まず構成部品17をそれに割り当てられた第二の領域13から解放する。第二の領域19の直径が第一の領域9の直径より小さいため、構成部品17は大きな力を入れずに第二の領域13から解放できる。さらに、構成部品17は貫通穴19の中と、当所の重複領域でのみわずかに変形するだけである。したがって、構成部品17の形状はわずかしか損なわれない。後の固定領域における構成部品17または支持シャフト5の変形は、より早い段階の方法ステップで回避するべきであり、それは、これが構成部品17と支持シャフト5との間の接続の強度に不利な影響を与える可能性があるからである。
【0031】
構成部品17の解放は、図4aにおいて矢印で示されている。次に、支持シャフト5に関する構成部品17の角度位置を設定する。これは、支持シャフト5を回転させる(図4bの矢印で示される)か、構成部品17を回転させるかの何れかによって行われる。所望の角度位置に到達したところで、構成部品17をそれに割り当てられた第一の領域9に圧着するか、それに割り当てられた第一の領域9を構成部品17の貫通穴19に圧入する。図4cにおいて矢印で示される。上記の方法ステップの結果が図4dに示されている。図のカムシャフト部分は、支持シャフト5と、支持シャフト5を受ける貫通穴19を持つ構成部品17を含み、支持シャフト5は、構成要素17が固定される第一の領域9を有する。さらに、カムシャフト部分は第一の直径拡張部11と第二の直径拡張部15を有する。第二の直径拡張部15は、カムシャフトの回転軸に関して回転対称に、第二の領域13の位置に配置される。第二の領域13の直径はここでは、第一の領域9の直径より小さい。
【0032】
圧着または圧入(図4cに示される)の間に、構成部品を第二の領域13へと移動させる。これは、軸方向の距離Aが第一の割り当てられた領域9と第二の割り当てられた領域13との間に設けられていれば省くことができる。この選択肢は図1の右側部分に示されている。この選択肢の場合、構成部品17をまず、片側を第二の領域13に解放可能に固定して、後に反対側でそれに割り当てられた第一の領域9に圧着または圧入によって固定してもよい。これには、第二の領域13を越えて移動させている間の貫通穴19の変形を回避できるという利点がある。このような事前変形は、後の構成部品17の接続の強度に影響を与えるかもしれない。この選択肢の場合、圧着または圧入によってそれに割り当てられた第一の領域9に固定している間に最終的な変形だけが発生する。図4a〜4dに示される代替的な実施形態は、第一の領域9に直接隣接する第二の領域13を有する。これによって、非常にコンパクトなタイプの構成が可能となる。
【0033】
ごく一般的に、最終的に固定する前の予備位置付けと解放可能な固定の利点は、カムシャフトまたはエンジンモジュールの製造をより容易に自動化できる点である。例えば、構成部品17がカムにより形成される場合、カム17のすべてを支持シャフト5に、それらのカムローブが同じ方向を向くように解放可能に固定できる。この手順の利点は、カムを位置決めした後に行われるカム17と支持シャフト5との間の圧迫による接続を自動化された方法ステップで容易に行うことができる点である。構成部品/カム17と支持シャフト5とを、圧着または圧入装置を援用して圧迫により接続する自動化製造の過程では、構成部品/カム17の相対位置が事前に設定されていれば有利である。すると、装置には、各構成部品/カム17について、円周方向のその実際の相対位置を決定してから、支持シャフト5の上での構成部品/カム17の要求される角度位置が支持シャフトを構成部品/カム17に関して回転させることによって設定されるようにする手段が一切不要となる。
【0034】
換言すれば、支持シャフト5に関する構成部品/カム17の相対的な角度位置が、その位置決めの後、圧迫による接続の確立の前に、支持シャフト5の上に構成部品/カム17を仮固定することによってわかるようになっていない場合、構成部品/カム17の相対的な角度位置を、圧迫による接続を行う前にまず決定しなければ、支持シャフト5の上での構成部品/カム17の所望の角度位置を確保するために支持シャフト5をどの角度だけ回転させなければならないかを決定できない。その結果、構成部品/カム17の支持シャフト5への圧着または支持シャフト5の構成部品/カム17への圧入を自動化することがより困難となる。これに対して、位置決め後に構成部品/カム17が常に、例えばカムの先端がすべて同じ方向を向くように同じ角度位置で支持シャフト5に解放可能に固定されれば、相対的な角度位置がすでにわかっているため、支持シャフト5に関する構成部品/カム17の相対的な角度位置を決定する作業ステップを省くことができる。したがって、構成部品/カム17と支持シャフト5との間の圧迫による接続を確立するための装置を、はるかに単純な設計とすることができ、本発明によるカムシャフトの組立方法をより素早く進めることができる。サイクル時間が大幅に増大し、生産工場のより効率的な操業が実現される。
【0035】
図5a〜5cは、構成部品17と支持シャフト5との間の角度設定の代替的な選択肢の場合の各種の方法ステップを概略的に示す。この選択肢の場合、構成部品17の角度位置は、構成部品17がそれに割り当てられた第二の領域13に解放可能に固定されている間に設定される。図5aにおいて、これは矢印で示されている。これには、固定状態から解放する追加のステップ(図4aに示される)を省くことができるという利点があり、したがってこの方法をより効率的に実行できる。図5bと5cに示される他のステップは、前述の選択肢(図4cと4d参照)と同様の方法で行われる。
【0036】
構成部品17と支持シャフト5との間の角度設定の第三の実施形態が図6aと6bに示されている。この選択肢の場合、構成部品17をまず、第一の領域9に固定する(図6aにおいて矢印で示される)。その後で初めて角度位置の設定を行う(図6bにおいて矢印で示される)。
【0037】
図6cに示される別の設計の場合、これら2つの方法ステップもまた、圧着または圧入による固定中に構成部品17とシャフト5を相互に関して螺旋状に回転させるという点で一緒にする。これは、図6cにおいて矢印で示される。
【0038】
図7には別の実施形態が示されており、これは構成部品17が貫通穴19に鋸歯を有する。内径DBはこの場合、鋸歯21の先端によって形成される。
【0039】
本発明の具体的な設計が図8に示されている。この選択肢の場合、第二の領域13は少なくとも部分的に貫通穴21の中にある。図の実施形態の場合、貫通穴21は第一の領域9と完全に、また第二の領域14とは部分的に重複する。さらに、第二の領域13は第一の領域9と直接隣接する。B3>B1とB1+B2>B3の関係が当てはまる。別の選択肢(図示せず)の場合、第一と第二の領域は相互に隣接し、完全に貫通穴の中にある。すると、B3>B1+B2の関係が当てはまる。
【0040】
図9は、本発明のまた別の発展形を示す。コーティング23が構成部品17と支持シャフト5との間に配置されて、支持シャフト5と構成部品17との間の接続の強度を高めている。その結果、より高いトルクを構成部品17と支持シャフト5との間で伝達できる。このコーティング23はあるいは、構成部品17と支持シャフト5を組み立てる前に、第一の領域9に、または構成部品17の貫通穴の内側に、または第一の領域9と構成部品19の両方に塗布してもよい。言うまでもなく、コーティング23は支持シャフト5と構成部品17との間の後の接触領域に限定する必要はない。支持シャフト5の全体および構成部品17の全体のコーティングも同様に可能である。コーティング23は例えば亜鉛またはリン酸塩を含み、なぜなら、これらの材料が接続の強度を特によく改善することがわかっているからである。接続部の強度をさらに高めることは、構成部品17を要求された角度位置の周囲で高い周波数により回転させると実現される。ここで、圧着または圧入の後に、構成部品17を、要求された角度位置が設定される前に支持シャフト5に関して最大+/−20°だけ前後に回転させる。この回転は、図9において二重矢印で示されている。回転により、コーティングが構成部品17と支持シャフト5の、表面に近い領域に拡散し、これが接続の強度をさらに高める。
【0041】
図10と11は、本発明による方法が調整可能なカムシャフトの組立過程で使用される実施形態を示している。この実施形態の場合、支持シャフト5は中空シャフトとして形成される。支持シャフト5の内部には、内側シャフト25が支持シャフト5に関して同心円状に配置され、内側シャフト25は支持シャフト5に関して回転させることができる。構成部品17が提供され、支持シャフト5に、上述のような圧迫による接続によって接続される。構成部品17に加えて、支持シャフト5に接続されないが、内側シャフト25にそれと共に回転するために接続される少なくとも1つの他の構成部品27が提供される。構成部品27を内側シャフト25にそれと共に回転するように接続することは、例えばピン接続によって行われ、これについて以下により詳しく説明する。このようにして、構成部品27を内側シャフト25と共に、支持シャフト5と支持シャフト5に固定して接続された構成部品17に関して回転させることができる。
【0042】
構成部品17と27は好ましくはカムによって形成され、それによって内燃機関のガス交換バルブが作動される。支持シャフト5に関する内側シャフト25の相対的な回転により、カム27によって作動されるバルブの開閉時間を変化させる効果が得られる。このようにして、本発明による方法を使って製造された調整可能カムシャフトが提供される。
【0043】
図10に示される支持シャフト5は中空シャフトとして形成される。支持シャフト5の内部に、内側シャフト25がそれと同心円状に配置される(図11参照)。内側シャフト20は、支持シャフト5に関して回転させることができる。図10に示される支持シャフト5は、第一の直径拡張部11を持つ第一の領域9を有する。第一の領域9と直接隣接して、第二の直径拡張部15を持つ第二の領域13がある。これらの2つの直径拡張部11と15は構成部品17に割り当てられ、上述の方法で構成部品17との圧迫による接続を形成する目的に使用される。構成部品27と並んで、第二の直径拡張部15を持つ第二の領域13が配置される。この第二の直径拡張部15は構成部品27に割り当てられる。第二の直径拡張部15は、構成部品27を支持シャフト5に解放可能に固定するために使用され、これについて以下により詳しく説明する。さらに、支持シャフト5は開口部29を有する。構成部品27は、図の例示的な実施形態においてはカムとして形成され、穴31を有する。中空の支持シャフト5の中に配置されるべき内側シャフト25(図11参照)は、図10には示されていない。開口部29と穴31は、構成部品27を内側シャフト25にそれと共に回転するように固定するために使用される。これについて、図11に基づいて以下にさらに説明する。
【0044】
図10に示される調整可能カムシャフトの状態では、既に多数の方法ステップが実行されている。支持シャフト5はすでに冷却されており、および/または構成部品17、27は加熱されて、支持シャフト5をその第一の直径拡張部11とその第二の直径拡張部15と共に構成部品17、27の貫通穴19に押し込むことができている。押し込んだ後に温度均一化がすでに行われ、支持シャフト5が加熱され、および/または構成部品17、27が冷却された。
【0045】
構成部品17は図1〜9に関して上述したものと同様に処理されるが、構成部品27については異なる方法ステップが行われる。まず、構成部品27とそれに割り当てられた第二の領域13との所定の重複を確立させ、構成部品27がそれに割り当てられた領域13に解放可能に固定された状態で保持されるようにする。これは、温度均一化の前に構成部品27を支持シャフト5に関して移動させるか、または適当に位置決めして、割り当てられた直径拡張部15への焼嵌めが行われるようにすることにより実行できる。これは、図4aに関して詳しく説明されている。
【0046】
構成部品27は、直径拡張部から何の問題もなく再び押し下げて、支持シャフト5と内部シャフト25(図示せず)と構成部品27との間の所望の相対的な角度位置を設定することができる。構成部品17と27をこのようにして、支持シャフト5の所望の既知の相対的な角度位置に解放可能に固定された状態に保持できる。その結果、後に行われる支持シャフト5への構成部品17の圧着または後に行われる構成部品27と内部シャフト25(図示せず)との間のピン接続(図11参照)の自動化が容易となり、カムシャフトの組立のサイクル時間が増大する。
【0047】
構成部品27を直径拡張部15から押し下げると、支持シャフト5を構成部品27に関して自由に回転させることができる。その後、支持シャフト5と内部シャフト25(図示せず)を、開口部29と内部シャフト25(図示せず)の第一の穴33と、構成部品27の第二の穴31が相互に整列するようなに回転させる。その後、接続ピン35を開口部21から第一の穴33と第二の穴31に押し込み、それによって構成部品27が内側シャフト25にそれと共に回転するように接続される。すると、構成部品27は、内側シャフト25を回転させることによって支持シャフト5に関して回転させることができる。
【0048】
調整可能なカムシャフトの組立後の状態が図11に示されている。支持シャフト5の端において、内側シャフト25が支持シャフト5から突出する。構成部品17は、非確動的、または非確動的および確動的な圧迫接続によって支持シャフト5に接続される。構成部品27の領域において、シャフト配置は軸方向に半分に切断して示されている。中空の支持シャフト5は内側シャフト25を取り囲む。接続ピン35は支持シャフト5の開口部29(図11では見えていない)から内側シャフト25の第一の穴33と構成部品27の第二の穴31に押し込まれている。支持シャフト5と内側シャフト25との間には環状のギャップがある。接続ピン35によって、構成部品27が内側シャフト25にそれと共に回転するように接続される。構成部品27は、内側シャフト25を支持シャフト5に関して回転させるという点で、支持シャフト5に関して回転させることができる。図11において、構成部品27がそれ以前に解放可能に固定された状態でそこに保持されていた直径拡張部15が構成部品27の左に見られる。
【0049】
図12aと12bは、本発明の別の発展形を示している。この実施形態の場合、構成部品17は漏斗状に広がる部分37を有する。漏斗状に広がる部分37の外径はDTで示されている。広がる部分の直径DTは好ましくは、第一の領域の直径D1と第二の領域の直径D2より大きい。すると、構成部品17を第一と第二の領域に固定している間に、領域の変形は構成部品の周辺部分ではなく、漏斗状に広がる部分37の逃げ面において起こる。このように、構成部品の負荷は構成部品の中央に向かって移動する。その結果、構成部品の周辺領域での過剰な負荷が回避される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b