【実施例1】
【0019】
図1は本発明に係る異物検出装置10を適用した転がり案内装置の一つであるリニアガイド1の一実施形態を示す斜視図である。このリニアガイド1は、直線状に形成された軌道部材としての軌道レール3と、複数の転動体として複数のボールを介して軌道レール3にチャネル状に組み付けられると共に内部にボールの無限循環路を備えた移動部材としての移動ブロック2とから構成されており、ボールが移動ブロック2の無限循環路内を循環することで該移動ブロック2が軌道レール3上を長手方向に相対移動するようになっている。
【0020】
軌道レール3は断面略矩形状に形成される。また、軌道レール3の上面33から下面方向に、ボルト取付孔32が上面33の長手方向中心軸に沿って所定の間隔に形成されている。このボルト取付孔32に鋼製の固定ボルトを締結することで軌道レール3をベッド、コラム等の固定部材に対して固定することができる。更に、この軌道レール3の、ボルト取付孔32と干渉しない左右側面には、前記ボールが転走する二条のボール転走面31が長手方向に沿ってそれぞれ形成されており、当該軌道レール3には合計四条のボール転走面31が形成されている。尚、本実施形態に係る軌道レール3では四条のボール転走面31が形成されているが、これらボール転走面31の条数及び配置はリニアガイド1の用途及び負荷荷重の大きさに応じて適宜設定変更することができる。
【0021】
また、移動ブロック2は、テーブル等の可動体が固定される取付面41を有するブロック本体4と、このブロック本体4の相対移動方向の両端部41a、41bのそれぞれに装着される一対の蓋体としてのエンドプレート5と、から構成されている。なお、エンドプレート5には図示されないシール部材が装着されており、該シール部材がエンドプレート5と軌道レール3の上面33との隙間を密封し、軌道レール3に付着した塵芥等の異物が移動ブロック2の内部に進入するのを防止している。また、リニアガイド1が工作機械の内部等で利用されるときには、軌道レール3が、鉄片等の切削屑を含むクーラントに晒される場合もあり、このような切削屑等が異物として移動ブロック2の内部に進入するのを上記シール部材で防いでいる。
【0022】
ここで、上記の通り、リニアガイド1は、エンドプレート5に設けられたシール部材によって移動ブロック2の内部に異物が進入するのは阻止されるように構成されている。しかしながら、シール部材のシール能力によって全ての異物の進入を食い止めるのは容易ではない。また、長期間にわたってリニアガイド1が異物に晒される環境下に置かれると、シール部材の経年劣化等により移動ブロック2の内部に異物が進入しやすくなる。移動ブロック2の内部に異物が進入してしまうと、その直動動作に影響を及ぼし得る。そのため、異物の影響が表面化する前に、移動ブロック2がある程度異物に晒された状態にあることを検知し、リニアガイド1のメンテナンスをユーザに通知するのが好ましい。そこで、リニアガイド1には、ブロック本体4の両側端部に設けられたエンドプレート5のうち、端部41a側に設けられたエンドプレート5の外側に異物検出装置10が取り付けられている。
【0023】
異物検出装置10は、装置本体10aの内部に、永久磁石15からの磁束を利用して形成される磁気回路を用いて、鉄等の磁性体材料を含む異物の検出を可能とする装置である。なお、
図2は、異物検出装置10の内部に設けられた、磁気回路を形成するための主だった構成を可視化するために、装置本体10aの記載を省略した透視図である。また、
図3は、異物検出装置10の、移動ブロック2の相対移動方向(軌道レール3の長手方向)に沿った断面図である。したがって、
図3は、異物検出装置10をリニアガイド1の側方から見た場合の断面であり、
図3において異物検出装置10の右側には、異物検出装置10が取り付けられるエンドプレート5が存在することになる。
図3において、異物検出装置10の装置本体10aの下側の部分は、エンドプレート5に取り付けられた状態で、軌道レール3の上面33と対向する状態となる。
【0024】
ここで、異物検出装置10の詳細な構成について説明する。異物検出装置10は、上記磁気回路を形成するための構成として、装置本体10a内に、永久磁石15、第1ヨーク部11、第2ヨーク部12、迂回ヨーク部13を有している。永久磁石15は、磁性体材料を含む異物を検出するための磁束の供給源として機能する。本実施例における永久磁石15は矩形状に形成され、その一面である面152が第1ヨーク部11に完全に覆われるように、永久磁石15と第1ヨーク部11は、両者が接触、隣接した状態で装置本体10a内に配置される。更に、永久磁石15においては、第1ヨーク部11に覆われている面152と反対側の面151が第2ヨーク部12に完全に覆われるように、永久磁石15と第2ヨーク部12は、両者が接触、隣接した状態で装置本体10a内に配置される。
【0025】
そして、第1ヨーク部11は、一定の厚み(
図3における上下方向の寸法)を有する板状のヨーク部材である。その板状の第1ヨーク部11は、その一方の面111が上記の通り永久磁石15の面152を覆っており、また他方の面112が、後述するように第2ヨーク部12の端部12b及び迂回ヨーク部13と対向している。なお、各部材の相対的な位置関係及び寸法の詳細については、後述する。
【0026】
次に、第2ヨーク部12は、第1ヨーク部11と同じ一定の厚みを有し、
図3に示す断面においてU字型に湾曲した形状を有する。そのU字型形状において内側の面を番号121で参照し、外側の面を番号122で参照する。したがって、永久磁石15の面151と接触するのは、第2ヨーク部12の面121である。より具体的には、第2ヨーク部12は、当該断面における一方の端部12aにおいて、その内側の面121が永久磁石15の面151と接触し、そこを覆っている。そして、第2ヨーク部12は、当該端部12aからエンドプレート5に向かって所定長さ延在し、更に装置本体10aの下方向に湾曲し延在することで直線部12cが形成される。この直線部12cの長さは、その下方側の端が、
図3に示す断面において第1ヨーク部11より更に下方に位置する長さとされる。更に、第2ヨーク部12は、直線部12cの端からエンドプレート5から離れる方向、すなわち第1ヨーク部11の方向に向かって湾曲し延在することで、最終的に第2ヨーク部12の他方の端部12bに至る。なお、当該端部12bが本発明に係る第2ヨーク所定部位に相当し、端部12bにおいて、第2ヨーク部12の内側の面121が、第1ヨーク部11の面112と対向した位置関係に置かれる。換言すれば、第2ヨーク部12の端部12bにおいて面121が、第1ヨーク部11の面112に対して基準空間R0を挟んで離れた位置関係に置かれる。
【0027】
次に、迂回ヨーク部13は、概ね直方体の形状を有する。
図3に示す断面においては、迂回ヨーク部13の面131が、第1ヨーク部11の面112と対向した位置関係に置かれる。換言すれば、迂回ヨーク部13の面131が、第1ヨーク部11の面112に対して第1迂回空間R1を挟んで離れた位置関係に置かれる。なお、この第1ヨーク部11の面112に対して迂回ヨーク部13が対向する対向位置は、第2ヨーク部12の端部12bが面112と対向する対向位置とは異なっている。更に、
図3に示す断面において、迂回ヨーク部13の面131と隣接し向きが概ね90度異なる面132が、第2ヨーク部12の端部12bの端面123と対向した位置関係に置かれる。換言すれば、迂回ヨーク部13の面132が、第2ヨーク部12の端部12bの端面123に対して第2迂回空間R2を挟んで離れた位置関係に置かれる。
【0028】
また、第1ヨーク部11と迂回ヨーク部13との間の第1迂回空間R1には、磁束密度を検出可能なホール素子16が配置される。このホール素子16は本発明のセンサ素子に相当し、その出力は図示しない検出回路に送られ、検出された磁束密度に応じた検出信号が生成されることになる。このようにホール素子16及び対応する検出回路により、本発明の検出部が形成される。なお、磁束密度を検出可能なデバイスであれば、ホール素子1
6に代えて本発明のセンサ素子として採用することができる。更に、第2ヨーク部12と迂回ヨーク部13との間の第2迂回空間R2には、当該第2迂回空間R2のほとんどを占めるように、且つ、所定量の異物を貯留可能な容積を有する凹部である貯留部17が形成されている。貯留部17は、装置本体10aの下方に向かって開口する開口部分17aを有している。異物検出装置10がエンドプレート5に取り付けられたリニアガイド1の状態では、開口部分17aは軌道レール3の上面33に向かって開口した状態となる。そのため、上面33上に存在する異物が開口部分17aを経て貯留部17の内部に進入することが可能である。また、装置本体10aの下方の外表面に、移動ブロック2の相対移動方向に延在し、且つ貯留部17の開口部分17aに繋がる取り込み溝17bが形成されている。このような構成によれば、移動ブロック2が軌道レール3上を、
図3の左側に移動した場合(
図2においては、移動ブロック2が左下方向に移動した場合)、軌道レール3の上面33に存在する異物が取り込み溝17b、開口部分17aを介して貯留部17に進入し貯留されやすくなる。なお、貯留部17は概ね永久磁石15の下側に位置するため、貯留部17内には、永久磁石15の磁力が作用しやすい。その結果、貯留部17に進入した異物(磁性体材料を含む異物)は磁力により貯留部17内に保持されやすく、一度貯留部17に進入した異物は、開口部分17aから再び離脱しにくくなる。
【0029】
ここで、異物検出装置10においては、
図3において一点鎖線の矢印と実線の矢印で示される2つの磁気回路が形成される。具体的には、前者の磁気回路S1は、永久磁石15、第2ヨーク部12、基準空間R0、第1ヨーク部11を経て形成される磁気回路であり、基準磁気回路S1と称する。また、後者の磁気回路S2は、永久磁石15、第2ヨーク部12、第2迂回空間R2、迂回ヨーク部13、第1迂回空間R1、第1ヨーク部11を経て形成される磁気回路であり、迂回磁気回路S2と称する。そして、上述した貯留部17及びホール素子16は、当該迂回磁気回路S2上に配置されている。このことから、永久磁石15は、2つの磁気回路を形成するとともに、上述したように貯留部17において異物を保持する機能を有することにもなる。
【0030】
ここで、
図3に加えて、
図4A及び
図4Bに基づいて、基準磁気回路S1及び迂回磁気回路S2について説明する。
図4Aは、磁気回路を形成する永久磁石15や各ヨーク部等の構成を、
図3と同じ断面上で概略的に示すとともに、各構成の寸法や相対的な位置関係を示す図である。また、
図4Bは、磁気回路を形成する永久磁石15や各ヨーク部等の構成を概略的に示す斜視図である。
【0031】
基準磁気回路S1において、当該回路を形成する構成のうち基準空間R0における磁気抵抗mr0は、第1ヨーク部11、第2ヨーク部12における磁気抵抗よりも高い。したがって、基準磁気回路S1における磁束の流れは、基準空間R0の磁気抵抗mr0の影響を受けやすい。また、迂回磁気回路S2において、当該回路を形成する構成のうち第1迂回空間R1における磁気抵抗mr1及び第2迂回空間R2における磁気抵抗mr2は、第1ヨーク部11、第2ヨーク部12、迂回ヨーク部13における磁気抵抗よりも高い。したがって、迂回磁気回路S2における磁束の流れは、第1迂回空間R1の磁気抵抗mr1及び第2迂回空間R2の磁気抵抗mr2の影響を受けやすい。そこで、基準空間R0の磁気抵抗mr0、第1迂回空間R1の磁気抵抗mr1及び第2迂回空間R2の磁気抵抗mr2に着目して、各磁気回路について説明する。なお、磁気抵抗mr2は、貯留部17に磁性体材料を含む異物が貯留されていない状態での磁気抵抗である。
【0032】
図4Aに示すように、基準空間R0を挟んで対向して配置される第1ヨーク部11と第2ヨーク部12との相対的な位置関係は、両ヨーク部間の距離が最短となる
図4A中の上下方向(すなわち、異物検出装置10の上下方向)での離間距離がL0であり、且つ、その上下方向に垂直な
図4A中の左右方向(すなわち、移動ブロック2の相対移動方向)での、両ヨーク部が重なる重複距離がa0である。なお、
図4Bに示すように、第1ヨーク
部11、第2ヨーク部12、迂回ヨーク部13の幅は、全て同一のWとされる。したがって、基準空間R0における磁気抵抗mr0は、以下の式1の関係を満たす。
【数1】
【0033】
同じように、第1迂回空間R1を挟んで対向して配置される第1ヨーク部11と迂回ヨーク部13との相対的な位置関係は、両ヨーク部間の距離が最短となる
図4A中の上下方向での離間距離がL1であり、且つ、その上下方向に垂直な
図4A中の左右方向での、両ヨーク部が重なる重複距離がa1である。したがって、第1迂回空間R1における磁気抵抗mr1は、以下の式2の関係を満たす。
【数2】
更に、第2迂回空間R2を挟んで対向して配置される第2ヨーク部12と迂回ヨーク部13との相対的な位置関係は、両ヨーク部間の距離が最短となる
図4A中の左右方向での離間距離がL2であり、且つ、その左右方向に垂直な
図4A中の上下方向での、両ヨーク部が重なる重複距離がa2である。したがって、第2迂回空間R2における磁気抵抗mr2は、以下の式3の関係を満たす。
【数3】
【0034】
そして、異物検出装置10では、基準空間R0の磁気抵抗mr0、第1迂回空間R1の磁気抵抗mr1及び第2迂回空間R2の磁気抵抗mr2に関し、以下の式4に示す関係が成立する。
【数4】
【0035】
式4に従い、基準空間R0の磁気抵抗mr0が、第1迂回空間R1の磁気抵抗mr1と第2迂回空間R2の磁気抵抗mr2の和より小さい関係(mr0 < mr1+mr2となる関係)が成立している状態は、貯留部17に磁性体材料を含む異物が貯留されていない場合の、基準磁気回路S1における磁束の流れやすさと迂回磁気回路S2における磁束の流れやすさの関係を表している。そのため、貯留部17に磁性体材料を含む異物が貯留されていない場合には、永久磁石15からの磁束は、迂回磁気回路S2よりも基準磁気回路S1の方を流れやすい状況が形成されていることになる。
【0036】
一方で、式4に従い、第1迂回空間R1の磁気抵抗mr1が、基準空間R0の磁気抵抗mr0より小さい関係(mr1 < mr0となる関係)が成立している状態は、貯留部17に磁性体材料を含む異物が貯留されている状態を想定したものである。すなわち、貯留部17に異物が貯留していくと、貯留部17に概ね重なる第2迂回空間R2に異物が存
在していくことになる。そのため、異物の貯留量が増加すると、第2迂回空間R2の磁気抵抗は低下することになる。そして、貯留部17が異物で占有されると、第2迂回空間R2の磁気抵抗は、第2ヨーク部12や迂回ヨーク部13内の磁気抵抗に近づき、理想的には同程度の磁気抵抗となる。このような状態は、貯留部17に異物が貯留されることで、磁気的に第2迂回空間R2の磁気抵抗を無視し得る状態であると言える。そのような状態において、第1迂回空間R1の磁気抵抗mr1が、基準空間R0の磁気抵抗mr0より小さい関係が成立すると、永久磁石15からの磁束は、基準磁気回路S1よりも迂回磁気回路S2の方を流れやすい状況が形成されていることになる。
【0037】
このように異物検出装置10において形成されている2つの磁気回路は、貯留部17での異物の貯留量に応じて、各磁気回路を流れる磁束の量が変化することになる。ここで、所定の磁力を有する永久磁石15を用いて異物検出装置10を構成したときの、各ヨーク部や各空間を流れる磁束の流れに関する、コンピュータによる数値解析の結果を
図5及び
図6に示す。
図5及び
図6の異物検出装置10の構成に関する条件(永久磁石15の磁力や、各ヨーク部の寸法等)は、同一である。
図5は貯留部17に異物が貯留されていない状態での数値解析の結果を示し、
図6は貯留部17に異物が十分に貯留されている状態での数値解析の結果を示す。
【0038】
具体的には、
図5の上段(a)に、貯留部17に異物が貯留されていない状態での、所定の軸線Xに沿った磁束密度の推移を表し、下段(b)に、モデル化された異物検出装置(
図3と同じ断面で表示された異物検出装置)内での磁束密度を概略的に示している。なお、所定の軸線Xは、第1迂回空間R1における第1ヨーク部11と迂回ヨーク部13との概ね中間位置から、第2ヨーク部12に向かって移動ブロック2の相対移動方向に沿って延在する仮想の線である。また、下段(b)で示される磁束密度は、その磁束の向きが矢印の向きに対応し、磁束密度の大きさが矢印の大きさに対応している。また、
図6の上段(a)に、貯留部17に異物が十分に貯留された状態での、所定の軸線Xに沿った磁束密度の推移を表し、下段(b)に、モデル化された異物検出装置内での磁束密度を概略的に示している。
【0039】
図5と
図6の比較から理解できるように、貯留部17に異物が存在していない場合には、各ヨーク部内の磁気抵抗より大きい第2迂回空間R2の磁気抵抗と、第1迂回空間R1の磁気抵抗との存在により、基準空間R0を含む基準磁気回路S1の方に多くの磁束が流れていく。その結果、第1迂回空間R1に設けられたホール素子16による検出値は、比較的低くなる(
図5(a)を参照)。一方で、貯留部17に異物が進入しその貯留量が増加していくと、第2迂回空間R2の磁気抵抗が各ヨーク部内の磁気抵抗に近づいていくため、第1迂回空間R1を含む迂回磁気回路S2の方に多くの磁束が流れていく。その結果、第1迂回空間R1に設けられたホール素子16による検出値は、
図5に示す場合よりも大きくなる(
図6(a)を参照)。このように、異物検出装置10では、貯留部17に異物が貯留していくことで、ホール素子16の検出値の変動幅が大きくなる。これは、上記の式4で示される各空間の磁気抵抗の関係により、貯留部17の異物の貯留量がある程度増加すると、磁束の流れが大きく切替るからである。この結果、異物の貯留量に応じた磁束密度の変化を第1迂回空間R1に設けられたホール素子16で検出することで、貯留部17における異物の貯留量、すなわち異物の貯留状態を高精度に検出できる。また、上記の通り、異物検出装置10では異物の貯留量に従って大きな磁束密度の変化が得られることから、少ない貯留量でも異物の存在を的確に検出することが可能となる。
【0040】
また、
図2に示すように、異物検出装置10における貯留部17の開口部分17aは、移動ブロック2が軌道レール3上を相対移動する際に、軌道レール3の上面33に設けられたボルト取付孔32と重ならず、軌道レール3の長手方向の中心軸より該軌道レール3の幅方向にずれた位置に来るように、異物検出装置10がエンドプレート5に取り付けら
れている。これは、ボルト取付孔32で軌道レール3の固定のために使用されるボルトが磁性体材料で形成されている場合、そのボルトの存在により、開口部分17aの近傍の貯留部17内分の磁気抵抗、すなわち第2迂回空間R2の磁気抵抗が乱され、その結果、貯留部17における異物の貯留量に関連性の無い磁束密度の変化がホール素子16によって検出され、誤った異物検出が行われる可能性があることを考慮したものである。したがって、上記のように開口部分17aの位置をボルト取付孔32からずれた位置とすることで、より正確な異物検出が実現される。
【0041】
また、異物検出装置10から出力される異物の検出信号は、貯留部17での異物の貯留量に応じた検出信号であってもよく、別法として、所定の貯留量に対応した基準値と比較し、貯留部17に所定の貯留量以上の異物が貯留しているか否かを意味する信号であってもよい。また、当該検出信号は、異物検出装置10から外部の装置に対して、無線で送信されてもよく、また、有線で送信されてもよい。ユーザは、異物検出装置10から送信されてきた検出信号に基づいて、リニアガイド1のメンテナンスに関する判断を行うことが可能となる。仮に当該検出信号に基づいてリニアガイド1のメンテナンスを行う場合には、そのメンテナンスに併せて貯留部17内に貯留している異物を洗浄によって洗い流すことで、再び異物検出装置10を利用することができる。
【0042】
<変形例>
上記の実施例では、ホール素子を第1迂回空間R1に配置したが、その態様に代えて、基準空間R0に配置してもよい。
図5及び
図6に示すように、貯留部17での異物の貯留量が増加していくことで、基準磁気回路S1から迂回磁気回路S2への磁束の流れの切り替えが生じるため、基準空間R0での磁束密度の変化も比較的大きくなる。すなわち、異物の貯留量が増加すると、基準空間R0での磁束密度が比較的大きい状態から小さい状態へと大きく変化する。この大きな磁束密度の低下をホール素子16で検出することで、上記実施例と同じように、貯留部17における異物の貯留量、すなわち異物の貯留状態を高精度に検出できるとともに、少ない貯留量でも異物の存在を的確に検出することが可能となる。更に別法として、ホール素子を第1迂回空間R1及び第2迂回空間R2の両方に配置して、両空間での磁束密度の変化を利用して貯留部17における異物の貯留状態を検出するようにしてもよい。